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特開2025-19490過酸化水素濃度測定システム及び過酸化水素濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019490
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】過酸化水素濃度測定システム及び過酸化水素濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20250131BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20250131BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
C02F1/00 V
G01N31/00 M
G01N31/00 L
G01N33/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123125
(22)【出願日】2023-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中田 耕次
(72)【発明者】
【氏名】藤平 卓也
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA07
2G042BB11
2G042CA02
2G042DA07
2G042EA08
2G042FA07
2G042FB05
(57)【要約】
【課題】 測定系統の切り替え後の測定値が安定するまでの時間を短縮することができ、検体水の消費量が少ない過酸化水素濃度の測定システムを提供する。
【解決手段】 検体水採取管3は、第一の経路4と第二の経路5とに分岐していて、第一の経路4は溶存酸素濃度測定流路7と、第一の循環流路9とに切り替え可能となっている。また、前記第二の経路5は、過酸化水素分解流路11と、第二の循環流路13とに切り替え可能となっている。さらに、溶存酸素濃度測定流路7は、排出管14と第二の循環流路13とに切り替え可能となっている。さらにまた、過酸化水素分解流路11は、排出管14と第一の循環流路9とに切り替え可能となっている。これらにより、検体水Wが溶存酸素濃度計8から触媒樹脂カラム12に連続して流通するか、触媒樹脂カラム12から溶存酸素濃度計8に連続して流通するか、切り替え可能となっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プロセスの通水路の所定の位置で採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定システムであって、
前記検体水を採取する検体水採取管と、
前記検体水採取管は、第一の経路と第二の経路とに分岐していて、
前記第一の経路には、溶存酸素濃度測定手段を有する溶存酸素濃度測定流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられており、
前記第二の経路には、過酸化水素分解手段を有する過酸化水素分解流路と第二の循環流路とが切り替え可能に設けられており、
前記過酸化水素分解流路は、排出管と前記第一の循環流路とに切り替え可能に分岐している一方、溶存酸素濃度測定流路は、排出管と第二の循環流路とに切り替え可能に分岐しており、
前記検体水が、前記溶存酸素濃度測定手段から前記過酸化水素分解手段に連続して流通するか、前記過酸化水素分解手段から前記溶存酸素濃度測定手段に連続して流通するか、変更可能となっている、過酸化水素濃度測定システム。
【請求項2】
前記水処理プロセスの通水路の検体水の採取位置より前段に膜式脱気装置を有する、請求項1に記載の過酸化水素濃度測定システム。
【請求項3】
水処理プロセスの通水路の所定の位置で採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する方法であって、
前記水処理プロセスの通水路の所定の位置で検体水を採取する検体水採取工程と、
この採取した検体水を過酸化水素分解手段を有する過酸化水素分解流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられた第一の経路と、溶存酸素濃度測定手段を有する溶存酸素濃度測定流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられた第二の経路とのいずれか一方に供給する経路選択工程と、
前記経路選択工程で第一の経路側に検体水を導入して溶存酸素濃度測定手段で該検体水中の溶存酸素濃度を測定した後、前記検体水を過酸化水素分解手段を通過させて排出する検体水測定工程と、
前記経路選択工程で第二の経路側に検体水を導入して過酸化水素分解手段で処理して処理水を得た後、前記溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の溶存酸素濃度を測定する処理水測定工程と、
前記検体水中の溶存酸素濃度と前記処理水中の溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算工程と、
を含む、過酸化水素濃度測定方法。
【請求項4】
前記検体水採取工程の前に該検体水の脱気工程を有する、請求項3に記載の過酸化水素濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水・超純水などの検体水中の微量な過酸化水素濃度を測定するための測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水製造装置及び一次純水を処理するサブシステム(二次純水製造装置)で構成される超純水製造システムで原水を処理することにより製造されている。
【0003】
この電子産業分野用の超純水の製造工程において、過酸化水素は超純水の送水管理項目の中でも非常に重要な要素である。例えば代表的な配線金属である銅等は数ΜG/L程度の過酸化水素水で腐食してしまい、表面平坦性に影響を及ぼしたり、溶解したりして半導体製品の電気特性に影響を及ぼし歩留まりを低下させる。その一方で純水や超純水の製造設備において有機物の分解を目的として設置される紫外線照射設備等で過酸化水素が発生することが知られている。このため過酸化水素濃度を分析(モニタリング)する必要がある。
【0004】
従来、この過酸化水素の濃度の分析方法としては、試験紙または試験試薬による方法、比色法、酸化還元滴定法などが一般に知られているが、純水や超純水の製造設備で過酸化水素の濃度分析を行うには、分析値がΜG/Lレベル程度の微量分析が要求される。上述した各種分析方法のうち、試験紙または試験試薬による方法では、分析値がΜG/Lレベルの測定は困難である。
【0005】
また、比色法や酸化還元滴定法は、比色分析や滴定の操作が複雑であり、また、インラインの自動分析が困難であって、特に人間の介在を極力排除したい純水または超純水製造設備に不向きである。さらに、試薬を必要とするため、薬品コスト、メンテナンスおよび分析後の廃液処理などのために、コストが高くなる。
【0006】
そこで、水中の微量の過酸化水素を簡便に且つ高感度に分析できる過酸化水素分析システムとして、図4及び図5に示すように、溶存酸素濃度計によって検体水中の過酸化水素濃度を算出するものが知られている。このシステムは、水処理プロセスの処理水(検体水)Wの供給源31に連通した通水路32の所定の箇所に検体水採取管33を接続し、この検体水採取管33は、第一の経路34と第二の経路35とに分岐した後、合流管36において再度合流し、この合流管36に溶存酸素測定手段としての溶存酸素濃度計37が設けられている。そして、第二の経路35には、過酸化水素分解手段としての触媒樹脂カラム38が設けられている。なお、39は第一の経路34の第一開閉バルブであり、40は第二の経路35の第二開閉バルブである。なお、図中において、液体が流通する流れを太線で示している。
【0007】
上述したような過酸化水素分析システムにおいて、まず図4に示すように第一開閉バルブ39を開成するとともに第二開閉バルブ40を閉鎖して第一の経路34に検体水Wを供給することで検体水Wの溶存酸素濃度を溶存酸素濃度計37で計測する(検体水測定工程)。次に図5に示すように第一開閉バルブ39を閉鎖するとともに第二開閉バルブ40を開成して第二の経路35に検体水Wを供給することで、触媒樹脂カラム38による処理水W1に含まれる溶存酸素濃度を測定する(処理水測定工程)。
【0008】
そして、測定された検体水Wの溶存酸素濃度と処理水W1の溶存酸素濃度から検体水W中の過酸化水素濃度を求めるには、以下のようにして行う。すなわち、まず、触媒樹脂カラム38に導入された検体水W中に含まれる過酸化水素は、下記式(1)のように分解され、酸素が生成する。そして、生成した酸素は水中に溶け込み、溶存酸素となる。
2H → 2HO + O ・・・(1)
【0009】
ここで、検体水W中の溶存酸素濃度値(検体水DO)をM1とし、処理水測定工程で得られた処理水W1中の溶存酸素濃度値(処理水DO)をM2とすると、処理水W1と検体水W中の溶存酸素濃度値の差分は(M2-M1)なので、検体水W中の過酸化水素濃度は下記式(2)により算出することができる。
(M2-M1)×(68/32)・・・(2)
(ここで68は式(1)左辺の過酸化水素の分子量(2分子なので2倍)、32は式(1)右辺の酸素分子量である。左辺の単位は右辺のDOの単位と同じである。)
【0010】
この図4及び図5に示す従来技術の構成では、測定精度は高いが、1台の溶存酸素濃度計を用いて検体水Wと処理水W1に含まれる溶存酸素濃度を交互に測定することにより、検体水W中に含まれる過酸化水素濃度を算出する。しかしながら、検体水Wと処理水W1の測定系統の切り替えを行ってから、溶存酸素濃度の測定値が安定するまでに時間を要し、その間は過酸化水素濃度の算出ができなかった。
【0011】
そこで、特許文献1には、図6及び図7に示すような過酸化水素分析システムが提案されている。このシステムは、水処理プロセスの処理水(検体水)Wの供給源51に連通した通水路52の所定の箇所に検体水採取管53を接続し、この検体水採取管53は、第一の経路54と第二の経路58とに分岐していて、第一の経路54の後段部は溶存酸素濃度測定部55となっていて、溶存酸素濃度測定部55には溶存酸素濃度計56が配置されていて、溶存酸素濃度測定部55より上流側には第一開閉バルブ57が設けられている。また、第二の経路58の後段部は排出部59となっているとともに前段部分には触媒樹脂カラム60が配置されていて、触媒樹脂カラム60の下流側には第二開閉バルブ61が設けられている。そして、第一の経路54の第一開閉バルブ57の上流側と、第二の経路58の第二開閉バルブ61の下流側とを連通する、第一連通バルブ63を有する第一連通配管62が接続されているとともに、第二の経路58の第二開閉バルブ61の上流側と、第一の経路54の第一開閉バルブ57の上流側とを連通する、第二連通バルブ65を有する第二連通配管64とを有する。
【0012】
上述したような過酸化水素分析システムにおいて、まず、図6に示すように第一開閉バルブ57及び第二開閉バルブ61を開成するとともに、第一連通バルブ63及び第二連通バルブ65を閉鎖した状態で、検体水採取管53から第一の経路54及び第二の経路58に検体水Wを供給することで、第一の経路54を流通する検体水Wの溶存酸素濃度を溶存酸素濃度計56で計測する。このとき、第二の経路58から触媒樹脂カラム60にも検体水Wの通水を継続し、これをそのまま排出部59から排出する。次に、図7に示すように第一開閉バルブ57及び第二開閉バルブ61を閉鎖するとともに、第一連通配管62及び第二連通配管64を開成した状態で、検体水採取管53から第一の経路54及び第二の経路58に検体水Wを供給する。これにより、第二の経路58を流通する検体水Wは、触媒樹脂カラム60で処理され、処理水W1は第二連通配管64を通って、第一の経路53の溶存酸素濃度測定部55から溶存酸素濃度計56において溶存酸素濃度を測定する。そして、測定された検体水Wの溶存酸素濃度と処理水W1の溶存酸素濃度から検体水W中の過酸化水素濃度を算出する。このとき、第一の経路54の検体水Wは、第一連通配管62を経由して排出部59から排出する。
【0013】
そして、測定された検体水Wの溶存酸素濃度と処理水W1の溶存酸素濃度から検体水W中の過酸化水素濃度を算出する。この際、触媒樹脂カラム60には常時検体水Wを通水しているので、処理水W1の溶存酸素濃度を立ち上がりよく測定することができる。
【0014】
さらに、特許文献2には、図8図10に示すような過酸化水素分析システムが提案されている。このシステムは、水処理プロセスの処理水(検体水)Wの供給源71に連通した通水路72の所定の箇所に検体水採取管73を接続し、この検体水採取管73は、第一の経路74と第二の経路77とに分岐していて、第一の経路74の後段部には、第一溶存酸素濃度計75が配置されていて、第一溶存酸素濃度計75より上流側には第一開閉バルブ76が設けられている。また、第二の経路77の前段部には触媒樹脂カラム78が設けられている一方、後段部には第二溶存酸素濃度計79が配置されていて、触媒樹脂カラム78と第二溶存酸素濃度計79の間には第二開閉バルブ80が設けられている。そして、第一の経路74の第一開閉バルブ76の下流側と、第二の経路77の第二開閉バルブ80の下流側とを連通する、連通バルブ82を有する連通配管81が接続されている。
【0015】
上述したような過酸化水素分析システムにおいて、まず、図8に示すように第一開閉バルブ76及び第二開閉バルブ80を開成するとともに、連通バルブ82を閉鎖した状態で、検体水採取管73から第一の経路74及び第二の経路77に検体水Wを供給することで、第一の経路74の検体水Wの溶存酸素濃度をそのまま第一溶存酸素濃度計75で計測する。一方、第二の経路77の検体水Wは、触媒樹脂カラム78で処理された処理水W1の溶存酸素濃度を第二溶存酸素濃度計79で計測する。
【0016】
また、図9に示すように第二開閉バルブ80を閉鎖するとともに連通バルブ82を開成することで、検体水Wの溶存酸素濃度を第一溶存酸素濃度計75で計測するとともに第二溶存酸素濃度計79でも計測することができる。さらに図10に示すように第一開閉バルブ76を閉鎖するとともに連通バルブ82を開成することで、触媒樹脂カラム78で処理された処理水W1の溶存酸素濃度を第一溶存酸素濃度計75で計測するとともに第二溶存酸素濃度計79でも計測することができる。
【0017】
そして、測定された検体水Wの溶存酸素濃度と処理水W1の溶存酸素濃度から検体水W中の過酸化水素濃度を算出する。この際、検体水Wの溶存酸素濃度を第一溶存酸素濃度計75で計測するとともに第二溶存酸素濃度計79でも計測するとともに処理水W1の溶存酸素濃度を第一溶存酸素濃度計75で計測するとともに第二溶存酸素濃度計79でも計測することで溶存酸素濃度計の個体差による誤差を補正して、検体水Wの溶存酸素濃度と処理水W1の溶存酸素濃度を精度よく計測し、ひいては検体水W中の過酸化水素濃度を精度よく算出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2019-144143号公報
【特許文献2】特開2019-132677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に記載された過酸化水素濃度測定システムでは、触媒樹脂を使用しない際も検体水Wを供給することで検出の立ち上りを早めることができるが、計測時には検体水Wを第一の経路54及び第二の経路58の両方に常時流通しているので、検体水採取管53から採取する検体水Wの水量が2倍量必要になるため、計器入出の漏水リスクや検体水Wの消費量が多くなる、という問題点がある。
【0020】
また、特許文献2に記載された過酸化水素濃度測定システムでは、検体水Wと処理水W(触媒樹脂カラム78)側の両方に溶存酸素濃度計75,79を用いることで、常時検体水Wと処理水W1の過酸化水素濃度を測定することができるが、溶存酸素濃度計を2台用いる必要があるばかりか、溶存酸素濃度計間の誤差を修正するための送さが必要となる、という問題点がある。
【0021】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、測定系統の切り替え後の測定値が安定するまでの時間を短縮することができ、検体水の消費量が少ない過酸化水素濃度の測定システムおよび過酸化水素濃度の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、第一に本発明は、水処理プロセスの通水路の所定の位置で採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定システムであって、前記検体水を採取する検体水採取管と、前記検体水採取管は、第一の経路と第二の経路とに分岐していて、前記第一の経路には、溶存酸素濃度測定手段を有する溶存酸素濃度測定流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられており、前記第二の経路には、過酸化水素分解手段を有する過酸化水素分解流路と第二の循環流路とが切り替え可能に設けられており、前記過酸化水素分解流路は、排出管と前記第一の循環流路とに切り替え可能に分岐している一方、溶存酸素濃度測定流路は、排出管と第二の循環流路とに切り替え可能に分岐しており、前記検体水が、前記溶存酸素濃度測定手段から前記過酸化水素分解手段に連続して流通するか、前記過酸化水素分解手段から前記溶存酸素濃度測定手段に連続して流通するか、変更可能となっている、過酸化水素濃度測定システムを提供する(発明1)
【0023】
かかる発明(発明1)によれば、検体水を分流して供給することなく、酸素濃度測定手段に流通して、検体水の溶存酸素濃度を測定し、その後過酸化水素分解手段に流通して排出する。また、溶存酸素濃度測定手段から前記過酸化水素分解手段に流通して、過酸化水素分解手段で処理した検体水(処理水)の溶存酸素濃度を測定する。そして、これら検体水の溶存酸素濃度と処理水の溶存酸素濃度とから検体水中の過酸化水素濃度を算出することができる。これにより、検体水の使用量が少なく、立ち上りの安定したシステムとなっている。
【0024】
上記発明(発明1)においては、前記水処理プロセスの通水路の検体水の採取位置より前段に膜式脱気装置を有することが好ましい(発明2)。
【0025】
かかる発明(発明2)によれば、検体水をあらかじめ膜式脱気装置で脱気することにより、検体水中の過酸化水素濃度をより精度よく算出することができる。
【0026】
また、本発明は第二に、水処理プロセスの通水路の所定の位置で採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する方法であって、前記水処理プロセスの通水路の所定の位置で検体水を採取する検体水採取工程と、この採取した検体水を過酸化水素分解手段を有する過酸化水素分解流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられた第一の経路と、溶存酸素濃度測定手段を有する溶存酸素濃度測定流路と第一の循環流路とが切り替え可能に設けられた第二の経路とのいずれか一方に供給する経路選択工程と、前記経路選択工程で第一の経路側に検体水を導入して溶存酸素濃度測定手段で該検体水中の溶存酸素濃度を測定した後、前記検体水を過酸化水素分解手段を通過させてそのまま排水する検体水測定工程と、前記経路選択工程で第二の経路側に検体水を導入して過酸化水素分解手段で処理して処理水を得た後、前記溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の溶存酸素濃度を測定する処理水測定工程と、前記検体水中の溶存酸素濃度と前記処理水中の溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算工程とを含む、過酸化水素濃度測定方法を提供する(発明3)。
【0027】
かかる発明(発明3)によれば、検体水測定工程において、溶存酸素濃度測定手段で検体水中の溶存酸素濃度を測定した後、前記検体水を過酸化水素分解手段を通過させて、検体水を排出する。また、流路を切り替えて過酸化水素分解手段で処理した検体水(処理水)を溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の溶存酸素濃度を測定する。そして、これら測定した検体水溶存酸素濃度と処理水中の溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する算出することができる。これにより、少ない検体水の使用量で安定した立ち上がりで検体水中の過酸化水素濃度を測定することが可能となる。
【0028】
上記発明(発明3)においては、前記検体水採取工程の前に該検体水の脱気工程を有することが好ましい(発明4)。
【0029】
かかる発明(発明4)によれば、脱気工程で検体水をあらかじめ脱気することにより、検体水中の過酸化水素濃度をより精度よく算出することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、1台の溶存酸素濃度計を用い、検体水を分流して供給することなく、検体水の溶存酸素濃度の測定と、過酸化水素分解手段で処理した検体水(処理水)の溶存酸素濃度の測定とを行うことができ、これら検体水の溶存酸素濃度と処理水の溶存酸素濃度とから検体水中の過酸化水素濃度を算出することができ、検体水の使用量が少なく、立ち上りの安定した過酸化水素濃度の測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態における過酸化水素濃度測定システムの構成図である。
図2】前記実施形態における検体水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図3】前記実施形態における処理水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図4】従来の過酸化水素濃度測定システムによる検体水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図5】従来の過酸化水素濃度測定システムによる処理水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図6】特許文献1の過酸化水素濃度測定システムによる検体水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図7】特許文献1の過酸化水素濃度測定システムによる処理水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図8】特許文献2の過酸化水素濃度測定システムによる検体水及び処理水の溶存酸素濃度の測定工程を示す概略図である。
図9】特許文献1の過酸化水素濃度測定システムによる検体水の溶存酸素濃度の補正のための測定工程を示す概略図である。
図10】特許文献1の過酸化水素濃度測定システムによる処理水の溶存酸素濃度の補正のための測定工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について図1図3を参照して説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0033】
[過酸化水素濃度測定システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る過酸化水素濃度測定システムの構成を示す概略図である。図1において、過酸化水素濃度測定システムは、水処理プロセスの処理水(検体水)Wの供給源1に連通した通水路2の所定の箇所に検体水採取管3を接続し、この検体水採取管3は、第一の経路4と第二の経路5とに分岐していて、第一の経路4の途中には切り替え手段としての第一の三方弁6が設けられていて、この第一の三方弁6により溶存酸素濃度測定手段としての溶存酸素濃度計8を有する溶存酸素濃度測定流路7と、第一の循環流路9とに切り替え可能となっている。また、前記第二の経路5の途中には切り替え手段としての第二の三方弁10が設けられていて、この第二の三方弁10により過酸化水素分解手段としての触媒樹脂カラム12を備えた過酸化水素分解流路11と、第二の循環流路13とに切り替え可能となっている。
【0034】
溶存酸素濃度測定流路7の末端部には第三の三方弁15が設けられていて、排出管14側と第二の循環流路13とに切り替え可能となっている。さらに、過酸化水素分解流路11の末端部には第四の三方弁16が設けられていて、排出管14側と第一の循環流路9とに切り替え可能となっている。
【0035】
そして、第一の三方弁6、第二の三方弁10、第三の三方弁15及び第四の三方弁16を切り替えることによって、検体水Wが溶存酸素濃度計8から触媒樹脂カラム12に連続して流通するか、触媒樹脂カラム12から溶存酸素濃度計8に連続して流通するか、切り替え可能となっている。
【0036】
溶存酸素濃度測定手段としての溶存酸素濃度計8は、所定の流量範囲で最も誤差が少ないように調整されているため、その範囲に流量を調節することが好ましい。そのため、溶存酸素濃度計の後段には、流量計を設けてもよい。また、溶存酸素濃度計8は、あらかじめ校正をして用いることが望ましい。
【0037】
触媒樹脂カラム12は、白金族金属が担持された触媒金属担持体(白金族金属触媒)を充填したものを用いることが好ましい。被処理水(検体水)W中の過酸化水素を白金族金属触媒と接触させ、触媒分解によって過酸化水素を分解できる。白金族金属触媒は、例えば、アニオン交換体に担持されている。アニオン交換体は、粒状のアニオン交換樹脂であってもよい。
【0038】
[過酸化水素濃度測定方法]
次に、上述したような過酸化水素濃度測定システムによる本実施形態の過酸化水素濃度測定方法について説明する。
【0039】
(検体水採取工程及び経路選択工程)
まず、水処理プロセスの処理水(検体水)Wを通水路2の接続した検体水採取管3から採取する。この採取した検体水Wは、第一の三方弁6の第一の経路4側又は第二の三方弁10の第二の経路5側のいずれか一方を閉鎖することにより、第一の経路4又は第二の経路5のいずれに供給するかを選択して切り替える。
【0040】
(検体水測定工程)
検体水測定工程においては、図2に示すように第一の三方弁6は、第一の経路4及び溶存酸素濃度測定流路7側を開成する一方、第一の循環流路9側を閉鎖し、第二の三方弁10は、第二の経路5側を閉鎖する一方、過酸化水素分解流路11側及び第二の循環流路13側を開成する。また、第三の三方弁15は、溶存酸素濃度測定流路7側及び第二の循環流路13側を開成する一方、排出管14側を閉鎖し、第四の三方弁16は、過酸化水素分解流路11側及び排出管14側を開成する一方、第一の循環流路9側を閉鎖する。
【0041】
この状態において、検体水採取管3で採取された検体水Wを供給すると、第二の三方弁10は第二の経路5側を閉鎖しているので、検体水Wは、第一の経路4側を流通し、第一の三方弁6を経由して、溶存酸素濃度測定流路7に流入し、溶存酸素濃度計8において検体水Wの溶存酸素濃度(M1)が測定される。そして、この検体水Wは、溶存酸素濃度測定流路7の末端に設けられた第三の三方弁15に到達する。このとき第三の三方弁15は、溶存酸素濃度測定流路7側及び第二の循環流路13側を開成する一方、排出管14側が閉鎖しているので、検体水Wは、第二の循環流路13を流れて、第二の三方弁10に到達する。そして、第二の三方弁10から過酸化水素分解流路11に流入して、触媒樹脂カラム12で過酸化水素を分解処理した後、処理水W1が過酸化水素分解流路11の末端に設けられた第四の三方弁16に到達する。このとき第四の三方弁16は、排出管14側が開成しており、第一の循環流路9側は閉鎖しているので、処理水W1は排出管14から系外に排出される。このようにして検体水Wの溶存酸素濃度(M1)を測定する。
【0042】
(処理水測定工程)
検体水測定工程においては、図3に示すように第一の三方弁6は、溶存酸素濃度測定流路7側及び第一の循環流路9側を開成する一方、第一の経路4側を閉鎖し、第二の三方弁10は、第二の経路5側及び過酸化水素分解流路11側を開成する一方、第二の循環流路13側を閉鎖する。また、第三の三方弁15は、溶存酸素濃度測定流路7側及び排出管14側を開成する一方、第二の循環流路13側を閉鎖し、第四の三方弁16は、過酸化水素分解流路11側及び第一の循環流路9側を開成する一方、排出管14側を閉鎖する。
【0043】
この状態において、検体水採取管3で採取された検体水Wを供給すると、第一の三方弁6は第一の経路4側を閉鎖しているので、検体水採取管3で採取された検体水Wは、第二の経路5側を流通し、第二の三方弁10を経由して、過酸化水素分解流路11に流入し、触媒樹脂カラム12で処理された後、処理水W1が過酸化水素分解流路11の末端に設けられた第四の三方弁14に到達する。このとき第四の三方弁14は、排出管14側が閉鎖しており、第一の循環流路9側が開成しているので、処理水W1は第一の循環流路9を流れて、第一の三方弁6に到達する。そして、第一の三方弁6から溶存酸素濃度測定流路7に流入し、溶存酸素濃度計8において処理水W1の溶存酸素濃度が測定される。その後、この処理水W1は溶存酸素濃度測定流路7の末端に設けられた第三の三方弁15に到達する。このとき第三の三方弁15は、排出管14側が開成しており、第二の循環流路13側は閉鎖しているので、処理水W1は排出管14から系外に排出される。このようにして処理水W1の溶存酸素濃度(M2)を測定する。
【0044】
(演算工程)
そして、測定された検体水Wの溶存酸素濃度M1と処理水W1の溶存酸素濃度M2から検体水W中の過酸化水素濃度を求めるには、以下のようにして行う。すなわち、まず、触媒樹脂カラム12に導入された検体水W中に含まれる過酸化水素は、下記式(1)のように分解される。そして、生成した酸素は水中に溶け込み、溶存酸素となる。
2H → 2HO + O ・・・(1)
【0045】
ここで、処理水W1と検体水W中の溶存酸素濃度値の差分は(M2-M1)なので、検体水W中の過酸化水素濃度は下記式(2)により算出することができる。
(M2-M1)×(68/32)・・・(2)
(ここで68は式(1)左辺の過酸化水素の分子量(2分子なので2倍)、32は式(1)右辺の酸素分子量である。左辺の単位は右辺のDOの単位と同じである。)
【0046】
なお、本実施形態においては検体水Wの採取位置より前段に膜式脱気装置を設けて検体水採取工程の前に脱気工程を行い、検体水Wの溶存酸素濃度やその他の溶存気体を低減させることにより、検体水W中の過酸化水素濃度の検出精度をさらに向上させることができる。
【0047】
上述したとおり、本実施形態においては、1台の溶存酸素濃度計8を用い、検体水Wを分流して供給することなく、検体水Wの溶存酸素濃度M1の測定と、触媒樹脂カラム12で処理した検体水(処理水)W1の溶存酸素濃度M2の測定とを行うことができる。そして、これら検体水Wの溶存酸素濃度M1と処理水W1の溶存酸素濃度M2とから検体水W中の過酸化水素濃度を算出することができる。このため検体水Wの使用量が少なく、触媒樹脂カラム12に常時通水するので立ち上りの安定した過酸化水素濃度の測定システムとなっている。
【0048】
以上、本発明について前記実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施形態においては、検体水測定工程の後、処理水測定工程を行っているが、これらの工程は順番を逆にしてもよい。また、水処理プロセスの装置としては、特に制限はないが、純水製造装置、超純水製造装置などの微量の過酸化水素濃度の定量が必要とされるものに特に好適である。
【実施例0049】
以下の具体例を実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
図1に示す過酸化水素濃度測定システムに過酸化水素濃度約15ΜG/Lに調整した超純水を検体水Wとして導入し、過酸化水素濃度を測定した。
【0051】
なお、調整前の超純水としては、抵抗率:18.1MΩ・CM以上、微粒子:粒径50NM以上で1000個/L以下、生菌:1個/L以下、TOC(TOTAL ORGANIC CARBON):1ΜG/L以下、全シリコン:0.1ΜG/L以下、金属類:1NG/L以下、イオン類:10NG/L以下、水温:25±2℃のものを用いた。
【0052】
まず、図2に示すように第一の三方弁6は、第一の経路4及び溶存酸素濃度測定流路7側を開成し、第一の循環流路9側を閉鎖した。第二の三方弁10は、第二の経路5側を閉鎖し、過酸化水素分解流路11側及び第二の循環流路13側を開成した。また、第三の三方弁15は、溶存酸素濃度測定流路7側及び第二の循環流路13側を開成し、排出管14側を閉鎖した。第四の三方弁16は、過酸化水素分解流路11側及び排出管14側を開成し、第一の循環流路9側を閉鎖した。この状態において、検体水Wを第一の経路4から溶存酸素濃度計8に導入して溶存酸素濃度(M1)を測定し、続いて検体水Wをこの触媒樹脂カラム12に導入して処理した後、処理水W1を排出管14から系外に排出した。
【0053】
次に図3に示すように各三方弁を切り替えた。すなわち、第一の三方弁6は、溶存酸素濃度測定流路7側及び第一の循環流路9側を開成し、第一の経路4側を閉鎖した。第二の三方弁10は、第二の経路5側及び過酸化水素分解流路11側を開成し、第二の循環流路13側を閉鎖した。また、第三の三方弁15は、溶存酸素濃度測定流路7側及び排出管14側を開成し、第二の循環流路13側を閉鎖した。第四の三方弁16は、過酸化水素分解流路11側及び第一の循環流路9側を開成し、排出管14側を閉鎖した。この状態において、検体水Wを第二の経路5から触媒樹脂カラム12で処理した後、処理水W1は第一の循環流路9を経由して溶存酸素濃度測定流路7に流入させ、溶存酸素濃度計8に導入して溶存酸素濃度(M2)を測定した後、処理水W1を排出管14から系外に排出した。
【0054】
このようにして測定した検体水Wの溶存酸素濃度(M1)と処理水W1の溶存酸素濃度(M2)の値は安定しており、これらの値から算出される検体水Wの過酸化水素濃度は15ΜG/Lに近似するものであった。また、実施例1の過酸化水素濃度測定システム運転に伴う検体水Wの流量は1L/分であり、測定時間は2分/サイクルであった。
【0055】
(比較例1)
図4及び図5に示す過酸化水素濃度測定システムにより実施例1と同じ検体水Wを用いて過酸化水素濃度を測定した。
【0056】
まず、図4に示すように第一開閉バルブ39を開成するとともに第二開閉バルブ40を閉鎖して第一の経路34に検体水Wを供給することで検体水Wの溶存酸素濃度(M1)を溶存酸素濃度計37で計測した。次に図5に示すように第一開閉バルブ39を閉鎖するとともに第二開閉バルブ40を開成して、触媒樹脂カラム38に検体水Wを導入することで処理し、この処理水W1に含まれる溶存酸素濃度(M2)を溶存酸素濃度計37で計測した。
【0057】
このようにして測定した検体水Wの溶存酸素濃度(M1)と処理水W1の溶存酸素濃度(M2)の値は、処理水W1の溶存酸素濃度(M2)の値が安定するまでに少なくとも2分以上かかり、検体水Wの過酸化水素濃度を精度よく算出できるまでの時間を要した。これは最初に触媒樹脂カラム38への給水を停止しているので、立ち上げ時に安定するまでに時間を要したためであると考えられる。また、比較例1の過酸化水素濃度測定システムの運転に伴う検体水Wの流量は1L/分であり、測定時間は10分/サイクルであった。
【0058】
(比較例2)
図6及び図7に示す過酸化水素濃度測定システムにより実施例1と同じ検体水Wを用いて過酸化水素濃度を測定した。
【0059】
まず、図6に示すように第一開閉バルブ57及び第二開閉バルブ61を開成するとともに、第一連通バルブ63及び第二連通バルブ65を閉鎖した状態で、検体水採取管53から第一の経路54及び第二の経路58に検体水Wを供給することで、第一の経路54の検体水Wの溶存酸素濃度(M1)を溶存酸素濃度計56で計測した。この間、第二の経路58にも検体水Wを供給し触媒樹脂カラム60に通水した後排出した。
【0060】
次に、図7に示すように第一開閉バルブ57及び第二開閉バルブ61を閉鎖するとともに、第一連通配管62及び第二連通配管64を開成した状態で、検体水採取管53から第一の経路54及び第二の経路58に検体水Wを供給した。これにより、第二の経路58の検体水Wは、触媒樹脂カラム60で処理された後、第二連通配管64を通って、第一の経路53の溶存酸素濃度測定部55から溶存酸素濃度計56に導入され、溶存酸素濃度(M2)を測定した。この間、第一の経路54にも検体水Wを供給し、第一連通配管62を経由して排出部59から排出した。
【0061】
このようにして測定した検体水Wの溶存酸素濃度(M1)と処理水W1の溶存酸素濃度(M2)の値は安定しており、これらの値から算出される検体水Wの過酸化水素濃度は実施例1と同程度で15ΜG/Lに近似するものであった。また、比較例2の過酸化水素濃度測定システム運転に伴う検体水Wの流量は2L/分であり、測定時間は2分/サイクルであった。
【0062】
(比較例3)
図8に示す過酸化水素濃度測定システムにより実施例1と同じ検体水Wを用いて過酸化水素濃度を測定した。
【0063】
まず、図8に示すように第一開閉バルブ76及び第二開閉バルブ80を開成するとともに、連通バルブ82を閉鎖した状態で、検体水採取管73から第一の経路74及び第二の経路77に検体水Wを供給することで、第一の経路74の検体水Wの溶存酸素濃度M1を第一溶存酸素濃度計75で計測した。また、第二の経路77の検体水Wは、触媒樹脂カラム78で処理し、この処理水W1の溶存酸素濃度M2を第二溶存酸素濃度計79で計測した。
【0064】
このようにして測定した検体水Wの溶存酸素濃度(M1)と処理水W1の溶存酸素濃度(M2)の値は安定していたが、これらの値から算出される検体水Wの過酸化水素濃度は実施例1、比較例1及び比較例2に比べて誤差が大きかった。これは第一溶存酸素濃度計75と第二溶存酸素濃度計79の間の誤差に起因すると考えられる。また、比較例3の過酸化水素濃度測定システム運転に伴う検体水Wの流量は2L/分であり、測定時間は1分/サイクルであった。
【0065】
なお、比較例3では図9及び図10に示すように第一溶存酸素濃度計75と第二溶存酸素濃度計79の両方に検体水Wを同時に供給し、さらに処理水W1を同時に供給して、第一溶存酸素濃度計75と第二溶存酸素濃度計79間の計測値の差異から両者における誤差を補正することで、過酸化水素濃度の算出精度を向上させることができたが、その場合には比較例3の過酸化水素濃度測定システム運転に伴う検体水Wの測定時間が約3倍以上必要となった。
【0066】
これら実施1、比較例1~3における検体水Wの流量、測定時間、構成機器数(触媒樹脂カラムの数+溶存酸素濃度計の数)を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から明らかなように実施例1の過酸化水素濃度測定システムは、検体水Wの流量
及び測定時間が小さいだけでなく、構成機器数も少なく、最も総合的に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 処理プロセスの処理水(検体水)Wの供給源
2 通水路
3 検体水採取管
4 第一の経路
5 第二の経路
6 第一の三方弁
7 溶存酸素濃度測定流路
8 溶存酸素濃度計(溶存酸素濃度測定手段)
9 第一の循環流路
10 第二の三方弁
11 過酸化水素分解流路
12 触媒樹脂カラム(過酸化水素分解手段)
13 第一の循環流路
14 排出管
15 第三の三方弁
16 第四の三方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10