(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019549
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20250131BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/032 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123211
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB03
2H250AC53
2H250AC62
2H250AC63
2H250AC64
2H250AC66
2H250AC84
2H250AC94
2H250AC96
2H250AC98
2H250AF04
2H250AF23
2H250AF28
(57)【要約】
【課題】高機能または多機能なマルチコアファイバを提供すること。
【解決手段】マルチコアファイバは、複数のコア部を備え、前記複数のコア部は、空孔コア部である。前記空孔コア部は、アンチレゾナント型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められてもよい。前記空孔コア部の周囲を取り囲み、アンチレゾナント現象によって前記空孔コア部に光を閉じ込める作用を有する複数の管状体を備えてもよい。前記複数の管状体の少なくとも一つが、前記複数の空孔コア部の少なくとも二つの間で共有されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア部を備え、
前記複数のコア部は、空孔コア部である
マルチコアファイバ。
【請求項2】
前記空孔コア部は、アンチレゾナント型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められる
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記空孔コア部の周囲を取り囲み、アンチレゾナント現象によって前記空孔コア部に光を閉じ込める作用を有する複数の管状体を備える
請求項2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記複数の管状体の少なくとも一つが、前記複数の空孔コア部の少なくとも二つの間で共有されている
請求項3に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記複数の管状体を取り囲むとともに、前記複数の管状体の少なくとも一つを支持する外側管状体を備える
請求項3に記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記外側管状体に支持されるとともに、前記複数の管状体の少なくとも一つを支持する支持体を備える
請求項5に記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
前記支持体は、前記複数の管状体の少なくとも一つを収容する管状の構造を有する
請求項6に記載のマルチコアファイバ。
【請求項8】
前記空孔コア部は、フォトニックバンドギャップ型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められる
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のコア部を有するマルチコアファイバとして、コア部の間に空孔を設けることで特性を改善する技術が検討されている(非特許文献1~3)。これらのコア部は、ガラスのような固体の媒質からなるので、ソリッドコア部とも呼ばれる。
【0003】
一方、空孔コアファイバも盛んに検討されている。空孔コアファイバとは、固体の媒質で満たされていない空孔状のコア部(空孔コア部)を有する光ファイバである。空孔コアファイバの種類には、アンチレゾナント型と呼ばれるものや、フォトニックバンドギャップ型と呼ばれるものがある(特許文献1,2、非特許文献4)。空孔コアファイバは、その革新的な高機能性にため、盛んに検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-520804号公報
【特許文献2】国際公開第2009/040902号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Saitoh et al, “Multi-core hole-assisted fibers for high core density space division multiplexing”, OECC 2010, 7C2-1 (2010).
【非特許文献2】B. Yao et al., “Reduction of Crosstalk by Hole-Walled Multi-Core Fiber”, OFC 2012, paper OM2D.5. (2012).
【非特許文献3】K. Mukasa et al, “Uncoupled 6-core Fibers with a Standard 125mm Cladding, ITU-T G.652 Optical Properties, and Low XT”, OFC 2023, paper M3B.2 (2023).
【非特許文献4】Gregory T. Jasion et al., “0.174 dB/km Hollow Core Double Nested Antiresonant Nodeless Fiber (DNANF)”, OFC 2022, paper Th4C.7 (2022).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光伝送技術の高機能化に伴い、マルチコアファイバにも従来にない高機能または多機能が要求されている。しかしながら、公知のマルチコアファイバは、その要求を十分に満たしているとはいえなかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、高機能または多機能なマルチコアファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、複数のコア部を備え、前記複数のコア部は、空孔コア部であるマルチコアファイバである。
【0009】
前記空孔コア部は、アンチレゾナント型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められてもよい。
【0010】
前記空孔コア部の周囲を取り囲み、アンチレゾナント現象によって前記空孔コア部に光を閉じ込める作用を有する複数の管状体を備えてもよい。
【0011】
前記複数の管状体の少なくとも一つが、前記複数の空孔コア部の少なくとも二つの間で共有されてもよい。
【0012】
前記複数の管状体を取り囲むとともに、前記複数の管状体の少なくとも一つを支持する外側管状体を備えてもよい。
【0013】
前記外側管状体に支持されるとともに、前記複数の管状体の少なくとも一つを支持する支持体を備えてもよい。
【0014】
前記支持体は、前記複数の管状体の少なくとも一つを収容する管状の構造を有してもよい。
【0015】
前記空孔コア部は、フォトニックバンドギャップ型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高機能または多機能なマルチコアファイバを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態3に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態4に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態5に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態6に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態7に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態8に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態9に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態10に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態11に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態12に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
公知のマルチコアファイバは、コア部が、ガラスのような固体の媒質で構成されていた。これに対して、本発明者は、複数のコア部として複数の空孔コア部を採用する従来にない構成によって、従来にない高機能または多機能なマルチコアファイバを実現できることに想到し、本発明を完成させた。
【0019】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、本明細書においては、カットオフ波長または実効カットオフ波長とは、国際通信連合(ITU)のITU-T G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長(λcc)をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはG.650.1およびG.650.2における定義、測定方法に従うものとする。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100は、10本の管状体10と、2つの空孔コア部20と、2本の支持体30と、外側管状体40と、を備えている。10本の管状体10、2つの空孔コア部20、2本の支持体30は、それぞれ、複数の管状体、複数のコア部としての空孔コア部、複数の支持体の一例である。
【0021】
以下では、はじめに管状体10および空孔コア部20について説明し、つぎに支持体30について説明し、最後に外側管状体40について説明する。
【0022】
[管状体および空孔コア部]
10本の管状体10は、円管状であり、断面において六角格子を2つ形成するように配置されている。当該六角格子は、たとえば正六角格子である。管状体10は、たとえば所定の厚さを有する石英系ガラス管である。
【0023】
2つの空孔コア部20は、それそれ、6本の管状体10に囲まれた領域に形成される。すなわち、管状体10は空孔コア部20の周囲を取り囲む。複数の管状体10は、反共鳴現象(アンチレゾナント現象)によって、空孔コア部20に光を閉じ込める作用を有する。これにより、空孔コア部20は、それぞれ、アンチレゾナント型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められて伝搬する。たとえば、空孔コア部20には、それぞれを伝搬する光のフィールドの80%以上が存在し、その他の20%以下の光のフィールドは、管状体10などに存在する。
図1において、フィールドFは、空孔コア部20がそれぞれ伝搬する光のフィールドを示している。フィールドFでは、フィールドの強度がドット模様の濃淡で示されており、ドット密度の濃いほどフィールドの強度が高い。空孔コア部20がそれぞれ伝搬する光の波長は、管状体10の肉厚の調整によって変更することができる。すなわち、管状体10の肉厚は、空孔コア部20で伝搬させる光の波長に応じて設定される。空孔コア部20が伝搬する光の波長はたとえば1.55μm帯のような通信波長帯に含まれる波長であるが、特に限定はされない。たとえば、空孔コア部20が伝搬する光およびその波長は、光給電のようなパワー伝送に利用される光およびその波長でもよい。また、2つの空孔コア部20で伝搬する光の波長が互いに異なっていてもよい。このように波長が互いに異なる場合、当該波長に対して適正になるように、各管状体10の肉厚や外径などの構造パラメータがそれぞれ異なっていてもよい。
【0024】
なお、管状体10は、互いに適正な大きさの隙間を空けて配置されている。当該隙間が無く管状体10が互いに接触していると、空孔コア部20を伝搬する光が、管状体10が接触した部分を経由して漏洩するおそれがある。また、当該隙間が過度に大きいと、当該隙間からの光の漏洩が過度に大きくなる。
【0025】
また、10本の管状体10は、4本の管状体11と、4本の管状体12と、2本の管状体13とを含む。4本の管状体11は、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、外側管状体40により直接支持される。4本の管状体12は、支持体30に溶着などによって機械的に接続され、支持体30により支持される。2本の管状体13は、支持体30に溶着などによって機械的に接続されているとともに、2つの空孔コア部20の間で共用されている。すなわち、2本の管状体13は、いずれも、2つの空孔コア部20のそれぞれの光閉じ込めに寄与している。管状体13は、複数の空孔コア部の少なくとも二つの間で共有されている管状体一例である。
【0026】
[支持体]
2本の支持体30は、断面が円状の棒状体である。支持体30は、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。支持体30は、外側管状体40に溶着などによって機械的に接続され。外側管状体40により支持される。また、上述したように、支持体30は管状体12、13を支持している。
【0027】
[外側管状体]
外側管状体40は、円管状である。外側管状体40は、たとえば所定の厚さを有する石英系ガラス管である。外側管状体40は、管状体10、空孔コア部20、および支持体30を収容している。すなわち、外側管状体40は管状体10の周囲を取り囲む。また、上述したように、外側管状体40は、管状体10のうち管状体11を直接支持する。また、外側管状体40は、支持体30が介在する状態で、管状体12、13を間接的に支持するとも言える。
【0028】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100は、複数の空孔コア部20を備えている。これにより、マルチコアファイバ100は、公知のマルチコアファイバでは実現できない高機能または多機能を実現できる。
【0029】
たとえば、空孔コア部20のような空孔コア部およびこれを用いた光伝送技術は、ガラスのような固体の媒質に起因する様々な制限を解消した革新的な高機能を実現できる。なお、このような制限としては、光遅延、パワー耐性限界、媒質による吸収・散乱損失、過酷環境耐性等がある。したがって、空孔コア部20は、たとえば光給電や超低遅延光伝送にも好適に使用できる。
【0030】
さらに、マルチコアファイバ100では、管状体10のうち管状体12や13は支持体30で支持されている。これにより、管状体10がすべて外側管状体40により直接支持されている場合に比べて、管状体10の配置や形状をより自由度高く設定できる。その結果、空孔コア部20の配置や形状をより自由度高く設定できる。
【0031】
さらに、マルチコアファイバ100では、2つの空孔コア部20の間で管状体13が共有されているので、使用する管状体の数やマルチコアファイバ100の断面積を削減できる。
【0032】
なお、外側管状体40の外径すなわちマルチコアファイバ100のファイバ径は、公知の多くの光ファイバとの適合性の観点から、125μmが好ましい。管状体10の肉厚は、波長1.55μm帯の光を閉じ込める観点から、たとえば0.65μmである。管状体10の外径は、たとえば35μmである。このように例示された構造のマルチコアファイバ100について、空孔コア部20の波長1550nmにおける閉じ込め損失を計算したところ、0.3dB/kmと十分小さい値であった。また、コア間クロストークは、波長1550nmにおいて100km当たりで-30dB以下と十分に低い値であった。
【0033】
マルチコアファイバ100は、たとえば以下のように製造できる。まず、支持体30となるガラスロッドを準備する。ガラスロッドは、たとえば公知のVAD(Vapor Axial Deposition)法やMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法やOVD(Outside Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。つづいて、管状体10となる第1ガラス管および外側管状体40となる第2ガラス管を準備する。第1ガラス管および第2ガラス管としては、市販のガラス管を用いてもよいし、たとえばVAD法により製造したガラスロッドに孔を穿設して製造したガラス管を用いてもよい。つづいて、
図1に示すような構造を形成し、光ファイバ母材とする。つづいて、この光ファイバ母材を、公知のマルチコアファイバと同様に線引きすることで、マルチコアファイバ100を製造することができる。なお、管状体10としては比較的肉厚が薄いことが要求されるので、第1ガラス管として比較的肉厚が厚いものを準備し、線引きの際に線引き条件と調整して、所望の管状体10の肉厚を実現してもよい。
【0034】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Aは、実施形態1に係るマルチコアファイバ100に10本の管状体10Aを追加した構成を有する。10本の管状体10Aは、それぞれ、管状体10に収容されている。管状体10Aの肉厚も、空孔コア部20で伝搬させる光の波長に応じて、アンチレゾナント型の光閉じ込めを実現するように設定される。
【0035】
マルチコアファイバ100Aでは、管状体10、10Aが、空孔コア部20に対するアンチレゾナント型の2重の光閉じ込め構造を構成する。
【0036】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Aによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。さらに、管状体10、10Aが、空孔コア部20に対する2重の光閉じ込め構造を構成するので、たとえば管状体10から漏洩した光のフィールドも管状体10Aにより閉じ込められる。これにより、マルチコアファイバ100Aでは、マルチコアファイバ100の場合よりも空孔コア部20の閉じ込め損失を低減できる。
【0037】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Bは、実施形態1に係るマルチコアファイバ100に4本の支持体30Bを追加した構成を有する。支持体30Bは、断面が円状の棒状体であるが、支持体30とは直径が異なる。支持体30Bは、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。支持体30Bは、外側管状体40に溶着などによって機械的に接続され、外側管状体40により支持される。また、管状体11は支持体30Bと外側管状体40とにより支持されている。また、管状体12は支持体30、30Bにより支持されている。支持体30と支持体30Bとは、形状またはサイズが互いに異なる支持体の一例である。
【0038】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Bによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバと同様の、高性能または多機能効果を実現できる。さらに、マルチコアファイバ100Bでは、支持体30の他に支持体30Bを備えるため、機械的強度がより高くなるとともに、管状体10の配置のし易さや自由度が向上する。
【0039】
(実施形態4)
図4は、実施形態4に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Cは、実施形態3に係るマルチコアファイバ100Bに10本の管状体10Aを追加した構成を有する。また、マルチコアファイバ100Cは、実施形態2に係るマルチコアファイバ100Aに4本の支持体30Bを追加した構成を有するとも言える。
【0040】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Aによれば、上述したような、実施形態2、3に係るマルチコアファイバ100A、100Bの両方の利点を実現できる。
【0041】
(実施形態5)
図5は、実施形態5に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Dは、15本の管状体10Dと、3つの空孔コア部20Dと、10本の支持体30Dと、外側管状体40と、を備えている。外側管状体40は、管状体10D、空孔コア部20D、および支持体30Dを収容している。
【0042】
10本の支持体30Dは、断面が円状の棒状体であり、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。10本の支持体30Dは、断面において3本の線分を形成するように配置されている。3本の線分は中心軸の周りで略等角度を成し、かつ中心軸から外側管状体40に延びている。12本の支持体30Dのうち3本は外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続されている。また線分上で互いに隣接する支持体30Dは溶着などによって互いに機械的に接続されている。これにより、支持体30Dは外側管状体40により直接的または間接的に支持されている。また、10本の支持体30Dは、外側管状体40の内部の空間を3つに区画するように配置されている。
【0043】
15本の管状体10Dは、その5本ずつが上述した3つの区画のそれぞれに配置されている。同じ区画内の5本の管状体10Dは、断面において五角格子を形成するように配置されている。当該五角格子は、たとえば正五角格子である。これにより、空孔コア部20Dが、管状体10Dに囲まれた領域に形成される。フィールドFDは、空孔コア部20Dが伝搬する光のフィールドを示している。管状体10Dの肉厚は、空孔コア部20Dで伝搬させる光の波長に応じて設定される。
【0044】
また、管状体10Dは、それぞれ、支持体30Dまたは外側管状体40に溶着などによって機械的に接続され、支持体30Dまたは外側管状体40によって支持される。具体的には、管状体10Dのうち管状体11Dは外側管状体40に接続され、管状体10Dのうち管状体12Dは支持体30Dに接続される。また、管状体10Dは、互いに直径などのサイズが異なる管状体を含む。
【0045】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Dによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。特に、マルチコアファイバ100Dはマルチコアファイバ100よりもさらに多い3つの空孔コア部20Dを有するので、マルチコアファイバ100よりもさらに高性能または多機能を実現できる。
【0046】
また、マルチコアファイバ100Dでは、支持体30Dが外側管状体40の内部の空間を3つに区画し、区画内で管状体10Dが空孔コア部20Dを形成しており、空孔コア部20Dが比較的対称性高く配置される。
【0047】
さらに、マルチコアファイバ100Dでは、管状体10Dが、互いに直径などのサイズが異なる管状体を含むので、空孔コア部20Dのサイズや位置などの設定の自由度が高い。
【0048】
(実施形態6)
図6は、実施形態6に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Eは、20本の管状体10Eと、4つの空孔コア部20Eと、12本の支持体30Eと、外側管状体40と、を備えている。外側管状体40は、管状体10E、空孔コア部20E、および支持体30Eを収容している。
【0049】
12本の支持体30Eは、断面が円状の棒状体であり、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。12本の支持体30Eは、断面において4本の線分を形成するように配置されている。4本の線分は中心軸の周りで略等角度を成し、かつ中心軸から外側管状体40に延びている。12本の支持体30Eのうち4本は外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続されている。また線分上で互いに隣接する支持体30Eは溶着などによって互いに機械的に接続されている。これにより、支持体30Eは外側管状体40により直接的または間接的に支持されている。また、12本の支持体30Eは、外側管状体40の内部の空間を4つに区画するように配置されている。
【0050】
20本の管状体10Eは、その5本ずつが上述した4つの区画のそれぞれに配置されている。同じ区画内の5本の管状体10Eは、断面において五角格子を形成するように配置されている。当該五角格子は、たとえば正五角格子である。これにより、空孔コア部20Eが、管状体10Eに囲まれた領域に形成される。フィールドFEは、空孔コア部20Eが伝搬する光のフィールドを示している。管状体10Eの肉厚は、空孔コア部20Eで伝搬させる光の波長に応じて設定される。
【0051】
また、管状体10Eは、それぞれ、支持体30Eまたは外側管状体40に溶着などによって機械的に接続されている。これにより、管状体10Eは支持体30Eまたは外側管状体40によって支持される。具体的には、管状体10Eのうち管状体11Eは外側管状体40に機械的に接続され、管状体10Eのうち管状体12Eは支持体30Dに機械的に接続される。
【0052】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Eによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。特に、マルチコアファイバ100Eは5つの空孔コア部20Eを有するので、マルチコアファイバ100よりもさらに高性能または多機能を実現できる。
【0053】
また、マルチコアファイバ100Eでは、支持体30Eが外側管状体40の内部の空間を4つに区画し、区画内で管状体10Eが空孔コア部20Eを形成しており、空孔コア部20Eが比較的対称性高く配置される。
【0054】
(実施形態7)
図7は、実施形態7に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Fは、17本の管状体10Fと、4つの空孔コア部20Fと、6本の支持体30Fと、外側管状体40と、を備えている。外側管状体40は、管状体10F、空孔コア部20F、および支持体30Fを収容している。
【0055】
6本の支持体30Fは、断面が円状の棒状体であり、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。6本の支持体30Fは、互いに直径が異なる棒状体を含む。6本の支持体30Fは、1本の支持体31Fと、3本の支持体32Fと、2本の支持体33Fとを含む。1本の支持体31Fは、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、支持されているとともに、他の支持体33Fに溶着などによって機械的に接続され、これを支持している。すなわち、支持体31Fは、外側管状体に支持されるとともに、複数の管状体の少なくとも一つを支持する支持体の一例である。3本の支持体32Fは、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、支持されている。2本の支持体33Fは、異なる直径を有しており、互いに溶着などによって機械的に接続されるとともに、直径の大きい方が支持体31Fに溶着などによって機械的に接続される。
【0056】
また、17本の管状体10Fは、互いに直径などのサイズが異なる管状体を含む。管状体10Fは、管状体11Fと管状体12Fとを含む。管状体11Fは外側管状体40に溶着などによって機械的に接続され、管状体12Fは支持体30Fに溶着などによって機械的に接続される。
【0057】
また、4つの空孔コア部20Fは、3つの空孔コア部21Fと1つの空孔コア部22Fとを含む。3つの空孔コア部21Fは、それぞれ、互いに直径などのサイズが異なる5本の管状体10Fによって取り囲まれている。空孔コア部21Fには、それぞれ、伝搬する光のフィールドFFである五角形状のフィールドFF1が形成される。また、1つの空孔コア部22Fは、それぞれ、互いに直径などのサイズが異なる4本の管状体10Fによって取り囲まれている。空孔コア部22Fには、それぞれ、伝搬する光のフィールドFFである四角形状のフィールドFF2が形成される。管状体10Fの肉厚は、空孔コア部20Fで伝搬させる光の波長に応じて設定される。また、17本の管状体10Fは、複数の空孔コア部20Fの少なくとも二つの間で共有されている管状体10Fを含んでいる。
【0058】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Fによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。特に、マルチコアファイバ100Fは互いにサイズが異なる管状体10Fや支持体30Fによって構成されているので、4つの空孔コア部20Fのサイズや形状や配置の自由度が高い。また、マルチコアファイバ100Fは、複数の空孔コア部20Fの少なくとも二つの間で共有されている管状体10Fを含むので、使用する管状体の数やマルチコアファイバ100Fの断面積が削減される。
【0059】
(実施形態8)
図8は、実施形態8に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Gは、17本の管状体10Gと、4つの空孔コア部20Gと、9本の支持体30Gと、外側管状体40と、を備えている。外側管状体40は、管状体10G、空孔コア部20G、および支持体30Gを収容している。
【0060】
9本の支持体30Gは、断面が円状の棒状体であり、たとえば石英系ガラスのような固体の媒質からなる。9本の支持体30Gは、互いに直径などのサイズが異なる棒状体を含む。9本の支持体30Gは、1本の支持体31Gと、6本の支持体32Gと、2本の支持体33Gとを含む。1本の支持体31Gは、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、支持されているとともに、他の支持体33Gに溶着などによって機械的に接続され、これを支持している。6本の支持体32Gは、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、支持されている。2本の支持体33Gは、異なる直径を有しており、互いに溶着などによって機械的に接続されるとともに、直径の大きい方が支持体31Gに溶着などによって機械的に接続される。
【0061】
また、17本の管状体10Gは、互いに直径などのサイズが異なる管状体を含む。管状体10Gは、管状体11Gと管状体12Gとを含む。管状体11Gは外側管状体40に溶着などによって機械的に接続され、管状体12Gは支持体30Gに溶着などによって機械的に接続される。
【0062】
また、4つの空孔コア部20Gは、それぞれ、互いに直径などのサイズが異なる5本の管状体10Gによって取り囲まれている。空孔コア部21Gには、それぞれ、伝搬する光のフィールドである五角形状のフィールドFGが形成される。管状体10Gの肉厚は、空孔コア部20Gで伝搬させる光の波長に応じて設定される。また、17本の管状体10Gは、複数の空孔コア部20Gの少なくとも二つの間で共有されている管状体10Gを含んでいる。
【0063】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Gによれば、上述したような、実施形態7に係るマルチコアファイバ100Fと同様の、高性能、多機能、空孔コア部20Gのサイズや形状や配置の高い自由度、使用する管状体の数やマルチコアファイバ100Gの断面積の削減などが実現される。
【0064】
(実施形態9)
図9は、実施形態9に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Hは、15本の管状体10Hと、3つの空孔コア部20Hと、3本の管状支持体30Hと、外側管状体40と、を備えている。外側管状体40は、管状体10H、空孔コア部20H、および管状支持体30Hを収容している。
【0065】
3本の管状支持体30Hは、円管状の構造を有しており、断面において三角格子を形成するように配置されている。当該三角格子は、たとえば正三角格子である。管状支持体30Hは、たとえば所定の厚さを有する石英系ガラス管である。管状支持体30Hは、外側管状体40の内壁に溶着などによって機械的に接続され、支持されているとともに、互いに溶着などによって機械的に接続されている。
【0066】
3本の管状支持体30Hは、それぞれ、5本の管状体10Hを収容している。各管状支持体30H内の5本の管状体10Hは、断面において五角格子を形成するように配置されている。当該五角格子は、たとえば正五角格子である。これにより、各管状支持体30H内で、空孔コア部20Hが、管状体10Hに囲まれた領域に形成される。フィールドFHは、空孔コア部20Hが伝搬する光のフィールドを示している。管状体10Hの肉厚は、空孔コア部20Hで伝搬させる光の波長に応じて設定される。
【0067】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Hによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。また、マルチコアファイバ100Hでは、それぞれが1本の管状支持体30Hと5本の管状体10Hによって構成された3本の構造体が、同じ形状なので、製造の際、構造体の母材となる母構造体を1本用意し、これを3本に切割することで母構造体を準備することができる。
【0068】
(実施形態10)
図10は、実施形態10に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Iは、実施形態9に係るマルチコアファイバ100Hに15本の管状体10Iを追加した構成を有する。15本の管状体10Iは、それぞれ、管状体10Hに収容されている。管状体10Iの肉厚も、空孔コア部20Hで伝搬させる光の波長に応じて、アンチレゾナント型の光閉じ込めを実現するように設定される。
【0069】
マルチコアファイバ100Iでは、管状体10H、10Iが、空孔コア部20Hに対するアンチレゾナント型の2重の光閉じ込め構造を構成する。
【0070】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Iによれば、上述したような、実施形態10に係るマルチコアファイバ100Hと同様の、高性能または多機能を実現できる。さらに、管状体10H、10Iが、空孔コア部20に対する2重の光閉じ込め構造を構成するので、マルチコアファイバ100Hの場合よりも空孔コア部20Hの閉じ込め損失を低減できる。
【0071】
(実施形態11)
図11は、実施形態11に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Jは、3つの空孔コア部20Jと、外側構造部50Jと、フォトニックバンドギャップ構造体60Jと、を備えている。
【0072】
外側構造部50Jは、フォトニックバンドギャップ構造体60Jの周囲を取り囲んでマルチコアファイバ100Jの外周面を形成する、円管状の構造部である。外側構造部50Jは、たとえば石英系ガラスからなる。
【0073】
フォトニックバンドギャップ構造体60Jは、マルチコアファイバ100Jの長手方向に延びている。フォトニックバンドギャップ構造体60Jは、空孔コア部20Jの周囲を取り囲んでおり、多数の空孔を有するガラスからなる。この多数の空孔は、空孔コア部20Jを結晶欠陥とするフォトニック結晶を形成するように、たとえば三角格子状に配列されている。空孔間の間隔は、空孔コア部20Jで伝搬させる光の波長に応じて設定される。
【0074】
3つの空孔コア部20Jは、断面において三角格子を形成するように配置されている。当該三角格子は、たとえば正三角格子である。フィールドFJは、空孔コア部20Jが伝搬する光のフィールドを示している。
【0075】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Jでは、空孔コア部20Jは、フォトニックバンドギャップ型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められて伝搬する。
【0076】
マルチコアファイバ100Jによれば、上述したような、実施形態1に係るマルチコアファイバ100と同様の、高性能または多機能を実現できる。
【0077】
(実施形態12)
図12は、実施形態12に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ100Kは、7つの空孔コア部20Kと、外側構造部50Kと、フォトニックバンドギャップ構造体60Kと、を備えている。
【0078】
外側構造部50Kは、フォトニックバンドギャップ構造体60Kの周囲を取り囲んでマルチコアファイバ100Kの外周面を形成する、円管状の構造部である。外側構造部50Kは、たとえば石英系ガラスからなる。
【0079】
フォトニックバンドギャップ構造体60Kは、マルチコアファイバ100Kの長手方向に延びている。フォトニックバンドギャップ構造体60Kは、空孔コア部20Kの周囲を取り囲んでおり、多数の空孔を有するガラスからなる。この多数の空孔は、空孔コア部20Kを結晶欠陥とするフォトニック結晶を形成するように、たとえば三角格子状に配列されている。空孔間の間隔は、空孔コア部20Kで伝搬させる光の波長に応じて設定される。
【0080】
7つの空孔コア部20Kは、断面において三角格子を形成するように配置されている。当該三角格子は、たとえば正三角格子である。フィールドFKは、空孔コア部20Kが伝搬する光のフィールドを示している。
【0081】
以上のように構成されたマルチコアファイバ100Kでは、空孔コア部20Kは、フォトニックバンドギャップ型の光閉じ込め作用により光が閉じ込められて伝搬する。
【0082】
マルチコアファイバ100Kによれば、上述したような、実施形態11に係るマルチコアファイバ100Jと同様の、高性能または多機能を実現できる。特に、マルチコアファイバ100Kはマルチコアファイバ100Jよりもさらに多い7つの空孔コア部20Kを有するので、マルチコアファイバ100Jよりもさらに高性能または多機能を実現できる。
【0083】
なお、マルチコアファイバ100J、100Kでは、フォトニックバンドギャップ型の空孔コア部の数は3または7であるが、当該数はこれに限定されず、たとえば19でもよい。
【0084】
また、上記実施形態において、管状体や支持体や管状支持体は断面が円形であるが、断面が多角形などでもよい。また、支持体は板状などの他の形状でもよい。また、支持体は中実構造や中空構造などであり、特に限定されない。
【0085】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10、10A、10D、10E、10F、10G、10H、10I、11、11D、11E、11F、11G、12、12D、12E、12F、12G、13 :管状体
20、20D、20E、20F、20G、20H、20J、20K、21F、21G、22F :空孔コア部
30、30B、30D、30E、30F、30G、31F、31G、32F、32G、33F、33G :支持体
30H :管状支持体
40 :外側管状体
50J、50K :外側構造部
60J、60K :フォトニックバンドギャップ構造体
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、100H、100I、100J、100K :マルチコアファイバ
F、FD、FE、FF、FF1、FF2、FG、FH、FJ、FK :フィールド