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特開2025-19707無線通信システム、無線捕捉装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
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  • 特開-無線通信システム、無線捕捉装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019707
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線捕捉装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/10 20090101AFI20250131BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20250131BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20250131BHJP
   H04W 84/12 20090101ALN20250131BHJP
【FI】
H04W24/10
H04W64/00
H04B17/309
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123462
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】石田 繁巳
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067BB21
5K067DD43
5K067DD44
5K067DD45
5K067HH22
5K067LL05
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】対象エリアにおける物体の動きがある時間における伝搬チャネル情報を測定可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の無線通信システムは、基地局と無線端末と音検知装置と、無線フレームを捕捉する無線捕捉装置とを備える。音検知装置は、無線通信の対象エリアで発生する音を検知する。無線捕捉装置は、音検知装置において音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線通信システムであって、
前記基地局と、
前記無線端末と、
音検知装置と、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置と、
を備え、
前記音検知装置は、前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する処理を実行するように構成され、
前記無線捕捉装置は、前記音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行するように構成される、無線通信システム。
【請求項2】
前記無線捕捉装置は、前記音検知装置において音が検知される時間に前記無線フレームを捕捉する処理をさらに実行する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記音検知装置を複数備え、
前記無線捕捉装置は、前記抽出処理においては、
既定の個数の音検知装置において同時に音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線端末を複数備え、
前記無線端末は、各々の設置位置が既知の複数の第一端末と、設置位置が未知の第二端末とを含み、
前記無線捕捉装置は、
前記第二端末と前記複数の第一端末から前記基地局にそれぞれ送信される無線フレームに対して前記抽出処理を実行し、
前記複数の第一端末に由来する複数の伝搬チャネル情報と、前記第二端末に由来する伝搬チャネル情報との相関を第一端末ごとに判定する処理と、
前記第二端末に由来する伝搬チャネル情報との相関が最も高い伝搬チャネル情報の送信元である第一端末を特定する処理と、
特定された第一端末の近傍に、前記第二端末が存在すると推定する処理と、
をさらに実行するように構成される、請求項1から3いずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームを捕捉し、前記無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線捕捉装置であって、
前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行するように構成される、無線捕捉装置。
【請求項6】
前記無線端末は、各々の設置位置が既知の複数の第一端末と、設置位置が未知の第二端末とを含み、
前記抽出処理は、前記第二端末と前記複数の第一端末から前記基地局にそれぞれ送信される無線フレームに対して実行され、
前記複数の第一端末に由来する複数の伝搬チャネル情報と、前記第二端末に由来する伝搬チャネル情報との相関を第一端末ごとに判定する処理と、
前記第二端末に由来する伝搬チャネル情報との相関が最も高い伝搬チャネル情報の送信元である第一端末を特定する処理と、
特定された第一端末の近傍に、前記第二端末が存在すると推定する処理と、
をさらに実行するように構成される、請求項5に記載の無線捕捉装置。
【請求項7】
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線通信方法であって、
音検知装置が、前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知することと、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置が、前記音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出することと、
を含む、無線通信方法。
【請求項8】
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームを捕捉し、前記無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線捕捉装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
無線捕捉装置に、
前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行させるプログラムを含む、無線通信用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝搬チャネル情報を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
設置位置が既知の複数の無線端末および設置位置が未知の無線端末が、無線基地局との間でやり取りする伝搬チャネル情報(Channel State Information、以下CSIと称する)を利用して、設置位置が未知の無線端末の位置を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。各々の設置位置が既知の無線端末に由来するCSIと、設置位置が未知の無線端末に由来するCSIとの相関から、設置位置が未知の無線端末の位置を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2023-019158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、対象エリアにおける物体の動きが小さいまたは物体の動きが無い時間にも、CSIが測定される。そのような時間に測定されたCSIは変動が小さく、無線端末の位置の推定に利用しても推定精度は低いと言える。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するため、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線通信システムを提供することを第一の目的とする。
【0006】
また本開示は、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線捕捉装置を提供することを第二の目的とする。
【0007】
また本開示は、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線通信方法を提供することを第三の目的とする。
【0008】
また本開示は、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線通信用プログラムを提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第一の態様は、
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線通信システムであって、
前記基地局と、
前記無線端末と、
音検知装置と、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置と、
を備え、
前記音検知装置は、前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する処理を実行するように構成され、
前記無線捕捉装置は、前記音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行するように構成されることが好ましい。
【0010】
また第二の態様は、
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームを捕捉し、前記無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線捕捉装置であって、
前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行するように構成されることが好ましい。
【0011】
また第三の態様は、
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線通信方法であって、
音検知装置が、前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知することと、
前記無線フレームを捕捉する無線捕捉装置が、前記音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出することと、
を含むことが好ましい。
【0012】
また第四の態様は、
基地局と無線端末の無線通信において送受信される無線フレームを捕捉し、前記無線フレームに含まれる伝搬チャネル情報を測定する無線捕捉装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
無線捕捉装置に、
前記無線通信の対象エリアで発生する音を検知する音検知装置において音が検知される時間に捕捉された前記無線フレームを対象に、該無線フレームから伝搬チャネル情報を抽出する抽出処理を実行させるプログラムを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示では、対象エリアにおける物体の動きを音として検知し、音が検知されている時間に捕捉された無線フレームを対象に、該無線フレームからCSIを抽出する。これにより、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線通信システム、無線捕捉装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの構成例である。
図2】従来の無線通信システムの構成を説明する図である。
図3】従来の無線通信システムにおいて測定されるCSIの一例を説明する図である。
図4】従来の無線通信システムにおける課題を説明する図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る、無線通信システムにおけるCSIの抽出方法を説明する図である。
図6】本開示の実施の形態1に係る、無線捕捉装置の構成例を示すブロック図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る、記憶部が記憶するデータの例である。
図8】本開示の実施の形態1に係る、圧縮されたCSIの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0016】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る無線通信システム100の構成例である。無線通信システム100は、無線LAN基地局(以下、基地局と称する)110、複数の無線LAN端末(以下、無線端末と称する)120、および複数の音検知装置130を備える。ただし複数の無線端末120には、各々の設置位置が既知の既知端末121(1)、121(2)、・・・121(6)と、設置位置が未知の未知端末122が含まれる。既知端末121と未知端末122の構成は同じでもよいし異なっていてもよい。また、ここでは未知端末122は1台としているが、複数でもよい。
【0017】
基地局110は、無線LAN規格のIEEE802.11ac/axに基づく無線LAN通信を行う。基地局110は1以上のアンテナを備える。基地局110はこれらのアンテナを同時に使用して、複数の無線端末120との間で通信を行う。
【0018】
基地局110は、無線端末120に対し既知のフレームを含む無線信号を送信する。基地局110から無線端末120に送信される無線信号は、伝搬路に存在する物体の動きの影響により変動する。
【0019】
無線端末120は、1以上のアンテナを用いて基地局110からの無線信号を受信する。さらに、無線端末120は、受信した無線信号に基づき、既知のフレームとの差分を計算し、圧縮されたCSIを導出する。圧縮されたCSIとは、無線伝搬路の情報のことである。無線伝搬路の情報は、基地局110のアンテナと無線端末120のアンテナとの間の伝搬路におけるOFDMのサブキャリアごとの振幅情報、位相情報、さらに各アンテナ間の相対値の情報を含む。
【0020】
さらに、無線端末120は、圧縮されたCSIをCompressed Beamforming Report(CBFR)の無線フレームに格納して基地局110のアンテナにフィードバックする。
【0021】
なお、無線端末120に関する上述の説明は既知端末121にも未知端末122にも共通である。以降でも、既知端末121と未知端末122を区別する必要が無い場合は、単に無線端末120と表記して説明する。
【0022】
無線捕捉装置140は、複数の無線端末120から基地局110へそれぞれフィードバックされる無線フレームを捕捉する。さらに、後述する音検知装置130において音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、該無線フレームから圧縮されたCSIを抽出する処理(以下、抽出処理と称する)を実行する。圧縮されたCSIの抽出は、IEEE802.11ac/axの規格に基づく。圧縮されたCSIは、対象エリア10内に存在する物体の動きに応じた時間変動を示すことから、既知端末121に由来するCSIと未知端末122に由来するCSIとの相関を判定することで、未知端末122の位置を推定することが可能となる。
【0023】
音検知装置130は、基地局110と無線端末120が無線通信を行う対象エリア10で発生する音を検知するスマートスピーカー等の装置である。音検知装置130は音の検知を知らせる通知を無線捕捉装置140に送信する。なお、図1の例では、複数の音検知装置130が配置されているが、対象エリア10で発生する音を1台で検知できる場合は、音検知装置130は複数なくともよい。また、音検知装置130は無線端末120に内蔵されていてもよい。例えば無線端末120がスマートホンである場合は、マイク機能を利用して音検知装置130とすることができる。
【0024】
このように、本開示の無線通信システム100においては、音検知装置130において音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、無線捕捉装置140が該無線フレームから圧縮されたCSIを抽出する。
【0025】
〈比較例〉
ここでは、本開示の比較例として、従来技術における未知端末122の位置推定方法を説明する。図2は、従来の無線通信システム200の構成を説明する図である。ここでは従来の無線通信システム200が、6台の既知端末121(1)、121(2)、・・・121(6)および1台の未知端末122を備える場合を示す。
【0026】
図3は、従来の無線通信システム200において測定されるCSIの一例を説明する図である。従来技術においても、既知端末121のそれぞれに由来するCSIと、未知端末122に由来するCSIが時間の関数として測定される。位置推定においては、未知端末122由来のCSIと同様に時間変化する既知端末121(6)のCSIが、未知端末122由来のCSIとの相関が最も高いと判定される。したがって、未知端末122は、既知端末121(6)の近傍に存在すると推定される。
【0027】
図4は、従来の無線通信システム200における課題を説明する図である。従来の無線通信システム200においては、対象エリア10における物体の動きが小さいまたは物体の動きが無い時間(以下、非活動時間と称する)Aでも、CSIが測定される。非活動時間Aに測定されたCSIは、物体の動きがある時間(以下、活動時間と称する)Bに測定されたCSIに比べて変動が小さい。
【0028】
従来の無線通信システム200においては非活動時間AにおけるCSIを含むCSIを用いて既知端末121と未知端末122の相関判定を行うため、未知端末122の位置の推定精度は低いと言える。
【0029】
図5は、本開示の実施の形態1に係る、無線通信システム100におけるCSIの抽出方法を説明する図である。本開示の無線通信システム100では、音検知装置130により対象エリア10で発生する音をモニターしている。これにより、物体の動きにより生ずる音を検知することができる。音検知装置130において音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、無線捕捉装置140が該無線フレームから圧縮されたCSIを抽出するため、活動時間BにおけるCSIのみを測定することが可能となる。活動時間BにおけるCSIのみを未知端末122の位置推定に利用することで、位置推定の精度の向上が期待される。さらには、非活動時間AにおけるCSIの測定に係る消費電力を低減することも可能となる。
【0030】
図6は、本開示の実施の形態1に係る、無線捕捉装置140の構成例を示すブロック図である。無線インターフェース部41は、アンテナを備え、IEEE802.11ac/ax(Wi-Fi5/Wi-Fi6)標準仕様に従って無線フレームを捕捉する。受付部42は、複数の音検知装置130から音の検知を知らせる通知を受け付ける。通知を受け付けるに伴い、受付部42はキャプチャ部43に対して無線フレームの取得を指示する。
【0031】
キャプチャ部43は受付部42からの指示が無い間は無線フレームの取得を停止している。しかしながら、受付部42から指示が出た場合は、無線インターフェース部41により捕捉された無線フレームを取得し、フィルタリング部44に出力する。これにより、無線インターフェース部41により捕捉される無線フレームの中から、音が検知される時間に捕捉された無線フレームのみをフィルタリング部44に出力することが可能となる。
【0032】
フィルタリング部44は、キャプチャ部43から受け付けた無線フレームについて、所定の条件に合致したフレームのみを抽出部45に出力する。所定の条件とは、無線フレームの種類が、対象のCSIを含んだフレーム、すなわちCBFRフレームであること等を含む。
【0033】
抽出部45は、フィルタリング部44から出力されたCBFRフレームから、圧縮されたCSIを抽出する。前処理部46は、圧縮されたCSIに対して極座標表示から直交座標表示への変換等の前処理を行う。さらに前処理部46は、圧縮されたCSIとその取得時間を記憶部47に出力する。
【0034】
位置推定部48は記憶部47を参照し、既知端末121由来のCSIと未知端末122由来のCSIとの相関を判定し、未知端末122の位置を推定する。位置推定部48が行う処理は、統計処理と比較処理とを含む。統計処理では、既知端末121由来のCSIと未知端末122由来のCSIとに対して、所定時間におけるCSIの変動を示す統計値が計算される。統計値とは、例えば分散値である。分散値は、直交座標表示においてはCSIのx成分とy成分のそれぞれに対して存在する。またOFDMのサブキャリアごとにも分散値が存在する。
【0035】
比較処理では、既知端末121由来のCSIに対する統計処理で得られた統計値と、未知端末122由来のCSIに対する統計処理で得られた統計値の類似度が、既知端末121ごとに算出される。例えば、統計値が分散値である場合には、分散値が規定値より大きい部分が周波数軸上・時間軸上で抽出される。さらに、所定時間および所定周波数における分散値が所定の閾値を超えた成分(以下、変動成分と称する)の個数が計算される。
【0036】
2つのCSI間で変動成分の個数の差が小さければ、CSIの変動状況も近いと考えることができる。したがって、位置推定部48は、既知端末121由来のCSIに含まれる変動成分の個数と、未知端末122由来のCSIに含まれる変動成分の個数との差を既知端末121ごとに計算する。さらに、位置推定部48は、未知端末122由来のCSIとの比較において変動成分の個数の差が最も小さいCSIの送信元である既知端末121を特定する。さらに位置推定部48は、特定された既知端末121の近傍に、未知端末122が存在すると推定する。
【0037】
なお、無線捕捉装置140が行う処理は、CPUとメモリを備え、メモリにプログラムを記憶したコンピュータを用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、通信用プログラムで実行するようにしてもよい。尚、通信用プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。この点は以下の全ての実施の形態においても共通である。
【0038】
図7は、本開示の実施の形態1に係る、記憶部47が記憶するデータの例である。記憶部47は圧縮されたCSIとその取得時刻を、該CSIを送受信した基地局110および無線端末120のペアごとに記憶する。
【0039】
図8は、本開示の実施の形態1に係る、圧縮されたCSIの例を示す図である。送信機のアンテナ数(iとする)と受信機のアンテナ数(jとする)の組合せと、該組合せに応じて得られる圧縮されたCSIの数と種類が示されている。ここで、φijは、送信機のアンテナと受信機のアンテナ間における無線信号の位相差である。また、Ψijは送信機のアンテナと受信機のアンテナ間における無線信号の振幅比の絶対値を逆正接で示した値である。φijおよびΨijは角度であり、定義域はそれぞれφij∈[0,2π)、Ψij∈[0,π/2)である。
【0040】
以上説明したように、本開示によれば、対象エリアにおける物体の動きがある時間におけるCSIを測定可能な無線通信システム、無線捕捉装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【0041】
〈変形例1〉
なお、上述では未知端末122と複数の既知端末121から基地局110にそれぞれ送信される無線フレームを無線捕捉装置140が捕捉し、未知端末122の位置を推定することを説明した。しかしながら、基地局110と無線端末120とが1台ずつあれば、対象エリア10における物体の動きがある時間におけるCSIを測定する、上述の効果を得ることが可能である。この場合、位置の推定は必ずしも行われなくともよい。
【0042】
〈変形例2〉
また、上述では音検知装置130において音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、無線捕捉装置140が該無線フレームから圧縮されたCSIを抽出することを説明した。しかしながら、音検知装置130が複数ある場合は、既定の個数の音検知装置130において同時に音が検知される時間に捕捉された無線フレームを対象に、CSIを抽出してもよい。これにより、対象エリア10における物体の動きと関連の無い雑音などが1台の音検知装置130において検知された場合に、無線捕捉装置140が即座にCSIの測定を開始することを防ぐことができる。
【0043】
〈変形例3〉
なお、図6では、音検知装置130からの音検知の通知が無い間においても無線インターフェース部41が無線フレームの捕捉をしていることを説明した。しかしながら、音検知装置130において音が検知される時間を対象に無線インターフェース部41が無線フレームを捕捉するようにしてもよい。これにより、活動時間BにおけるCSIを含む無線フレームのみを捕捉することができ、消費電力のさらなる低減といった効果が得られる。
【0044】
〈変形例4〉
また、図6では位置推定部48が行う比較処理において、変動成分の個数の差に基づき、統計処理で得られた統計値の類似度を算出することを述べた。しかしながら、統計値の類似度を算出する方法はこれに限らなくともよい。例えば既知端末121由来のCSIに対する統計処理で得られた統計値と、未知端末122由来のCSIに対する統計処理で得られた統計値の相互相関値を計算してもよい。この方法によっても、未知端末122の位置の推定が可能である。
【0045】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。
【0046】
〈請求項で使用する用語との対応〉
既知端末121を請求項では第一端末と称する。また未知端末122を請求項では第二端末と称する。
【符号の説明】
【0047】
10 対象エリア、41 無線インターフェース部、42 受付部、43 キャプチャ部、44 フィルタリング部、45 抽出部、46 前処理部、47 記憶部、48 位置推定部、100 無線通信システム、110 基地局、120 無線端末、121 既知端末、122 未知端末、130 音検知装置、140 無線捕捉装置、200 従来の無線通信システム、A 非活動時間、B 活動時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8