(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019834
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】含ニッケル酸化鉱石の製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/02 20060101AFI20250131BHJP
C22B 1/24 20060101ALI20250131BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20250131BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
C22B23/02
C22B1/24
C22B1/02
C22B5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123675
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA09
4K001CA11
4K001CA25
4K001DA05
4K001DA10
4K001GA01
4K001GA13
4K001HA09
4K001KA02
4K001KA07
(57)【要約】
【課題】CO
2発生量が低減され、かつニッケル回収率の高い含ニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供する。
【解決手段】本発明は、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法であって、管状の反応容器を用い、含ニッケル酸化鉱石を含む原料を反応容器内において上方から下方に移動するように装入し、その原料に対して還元剤として水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理を行う工程と、記還元処理により得られた還元物を熔融処理する工程と、熔融処理により得られた熔融物からスラグを分離し、ニッケルを含むメタルを回収する工程と、を有し、原料に対して下方から供給するガスは、常温で供給される。また、原料に対して側方から供給するガスは、300℃以上の温度であり、還元処理が終了した原料が貯留されている位置よりも上側の位置の側方から供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含ニッケル酸化鉱石の製錬方法であって、
管状の反応容器を用い、前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料を該反応容器内において上方から下方に移動するように装入し、該原料に対して還元剤として水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理を行う工程と、
前記還元処理により得られた還元物を熔融処理する工程と、
前記熔融処理により得られた熔融物からスラグを分離し、ニッケルを含むメタルを回収する工程と、を有し、
前記原料に対して下方から供給する前記ガスは、常温で供給され、
前記原料に対して側方から供給する前記ガスは、300℃以上の温度であり、還元処理が終了した原料が貯留されている位置よりも上側の位置の側方から供給される、
含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項2】
前記含ニッケル酸化鉱石は、鉄品位が5質量%以上30質量%以下である、
請求項1に記載の含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項3】
前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化する工程をさらに有し、
ペレット化した原料を、前記還元処理を行う工程に供する、
請求項1に記載の含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項4】
前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料を、300℃以上1200℃以下の温度で熱処理する工程をさらに有し、
前記熱処理により得られた熱処理物である含ニッケル酸化鉱石を、前記還元処理を行う工程に供する、
請求項1に記載の含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項5】
前記熔融処理における前記還元物を含む熔融処理物中のMgO/SiO2質量比が0.5以上0.7以下である、
請求項1に記載の含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルを含む酸化鉱石(含ニッケル酸化鉱石)の製錬方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気候変動問題解決に向けて、2015年のCOP21で「パリ協定」が採択され、これにより産業革命前の世界平均気温に比べプラス2℃より低く保つべく各国が最大限の努力を講じることとなった。2021年には、IPCC(International Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書にて、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と明記され、その後COP26では「世界の平均気温の上昇を産業革命前の世界平均気温に比べプラス1.5℃に抑える努力を追求することを決意する」ことが合意された。
【0003】
こうした国際的な動きの中、日本政府は2016年に「温暖化ガス排出量1990年度比で2030年26%削減、2050年80%削減」を目標として設定し、さらに2020年に「2050年に排出量実質ゼロ」、2021年に「2030年度に2013年度比46%削減」とする目標を新たに掲げ、日本国内においても温暖化ガス排出量削減の動きは加速している。
【0004】
非鉄製錬業においても目標値に沿った排出量削減と2050年のカーボンニュートラルプロセスへの転換が求められており、低エネルギーや化石燃料使用量が少ない新プロセスの開発が行われている。
【0005】
例えば、フェロニッケル製錬業においては、現在、エルケム法が主流となっている。エルケム法は、酸化ニッケルを含むサプロライト鉱石をロータリーキルン方式のドライヤーで予備乾燥し、さらにロータリーキルンにて徐々に昇温しながら結晶水まで脱水した後に、鉱石中では3価で存在している鉄を2価まで還元し、その後、電気炉にてほぼ全量のニッケルと一部の鉄をメタルに還元して合金として得るプロセスである。ところが、エルケム法では、ドライヤーで予備乾燥する工程、並びにロータリーキルンで還元する工程において、微粉炭や重油等の化石燃料のバーナーを使用しており、また、還元剤及び熱源として石炭を使用していることから、多量のCO2発生を伴う。なお、CO2発生量は、およそ22.4tCO2/tNiと示されている。
【0006】
このようなCO2発生量の低減策として考えられているのが、水素による還元である。ニッケル酸化物単独では、水素により容易に還元されてメタルになることが知られている。しかしながら、サプロライトやリモナイトという含ニッケル酸化鉱石中のニッケルの水素還元においては、還元度が10%~70%程度であり、エルケム法の95%以上という値より大幅に低い。これは、ニッケルがOlivine相((Mg,Fe)2SiO4)やMagnesiowustite相((Mg,Fe)O)中に広く分散し、かつ活量が低いことによる。そのため、単純に水素で還元するだけではニッケル回収率が低く、工業的に成立しない。
【0007】
水素還元時のニッケル回収率の向上策として、ナトリウム化合物添加法が提案されている。ところが、その化合物の添加量が莫大であり、薬剤コストが高すぎて工業的に成立しないという問題がある。
【0008】
特許文献1には、シャフト炉に装入された酸化鉄を還元することで還元鉄を製造する還元鉄の製造方法について開示されている。具体的には、水素ガスを90体積%以上含有する還元ガスと窒素ガスとを含み、かつ加熱された混合ガスをシャフト炉に吹き込むことによって酸化鉄を還元する方法が示されている。しかしながら、上述したように、ニッケルの水素還元においては、還元度が10%~70%程度と従来法であるエルケム法の95%以上に対して大幅に低い。含ニッケル酸化鉱石の製錬におけるCO2発生量削減への水素還元法の適用は困難性を有しており、水素還元法を適用してもニッケル回収率が高く、コストが工業的に見合う方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報2021/230307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、CO2発生量が低減され、かつニッケル回収率の高い含ニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、管状の反応容器を用い、含ニッケル酸化鉱石を含む原料を上方から下方に移動するように装入し、その原料に対して還元剤として水素を含むガスを下方、並びに側方からそれぞれ所定のガス温度で供給して還元処理を行い、その後、得られた還元物に対して熔融処理を行うことで、ニッケルの還元率を向上でき高い回収率でニッケルを回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明の第1の発明は、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法であって、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法であって、管状の反応容器を用い、前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料を該反応容器内において上方から下方に移動するように装入し、該原料に対して還元剤として水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理を行う工程と、前記還元処理により得られた還元物を熔融処理する工程と、前記熔融処理により得られた熔融物からスラグを分離し、ニッケルを含むメタルを回収する工程と、を有し、前記原料に対して下方から供給する前記ガスは、常温で供給され、前記原料に対して側方から供給する前記ガスは、300℃以上の温度であり、還元処理が終了した原料が貯留されている位置よりも上側の位置の側方から供給される、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【0013】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記含ニッケル酸化鉱石は、鉄品位が5質量%以上30質量%以下である、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【0014】
(3)本発明の第3の発明は、第1の発明において、前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化する工程をさらに有し、ペレット化した原料を、前記還元処理を行う工程に供する、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【0015】
(4)本発明の第4の発明は、第1の発明において、前記含ニッケル酸化鉱石を含む原料を、300℃以上1200℃以下の温度で熱処理する工程をさらに有し、前記熱処理により得られた熱処理物である含ニッケル酸化鉱石を、前記還元処理を行う工程に供する、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【0016】
(5)本発明の第5の発明は、第1の発明において、前記熔融処理における前記還元物を含む熔融処理物中のMgO/SiO2質量比が0.5以上0.7以下である、含ニッケル酸化鉱石の製錬方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、CO2発生量が低減され、かつニッケル回収率の高い含ニッケル酸化鉱石の製錬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】含ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。
【
図2】水素還元処理後(熔融処理前)の試料断面のSTEM写真図である。
【
図3】管状の還元反応容器の模式図であり、含ニッケル酸化鉱石を含む原料の装入方向、水素を含むガスの供給方法を説明するための図である。
【
図4】水素還元処理後(熔融処理前)の試料断面(メタル粒が見られない箇所を含む)のSTEM写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」ともいう)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
本実施の形態に係る方法は、ニッケルを含有する酸化鉱石(含ニッケル酸化鉱石)からニッケルを分離回収する製錬方法である。
【0021】
原料となる含ニッケル酸化鉱石としては、特に限定されず、例えば、サプロライト鉱、リモナイト鉱等が挙げられる。含ニッケル酸化鉱石は、構成成分として、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe2O3)とを含有する。
【0022】
また、含ニッケル酸化鉱石は、鉄品位が5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。鉄品位が5質量%未満であると、後述する還元工程S3での水素還元の処理において還元される鉄量が少なくなり、熔融工程S4での熔融処理に際して還元剤として寄与する鉄メタルが少なくなり、ニッケルの還元率が向上せず、ニッケル回収率が低下する可能性がある。また、鉄品位が30質量%を超えると、回収されるニッケルメタル(合金)のニッケル品位の低下やスラグ量の増加を招く可能性がある。
【0023】
具体的に、
図1は、本実施の形態に係る含ニッケル酸化鉱石の製錬方法(以下、単に「製錬方法」ともいう)の流れの一例を示す工程図である。この方法は、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に還元剤として水素を特定の割合で含むガスを供給しながら還元処理を行う還元工程S3と、還元処理により得られた還元物を熔融処理する熔融工程S4と、熔融処理により得られた熔融物からスラグを分離しニッケルを含むメタルを回収する回収工程S5と、を有することを特徴としている。
【0024】
また、含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化する工程(ペレット化工程S1)をさらに設け、ペレット化した原料を還元処理に供するようにしてよい。
【0025】
また、含ニッケル酸化鉱石を含む原料、あるいはペレット化工程S1にて原料をペレット化する場合にはそのペレット化した原料を、特定の温度で熱処理する工程(熱処理工程S2)をさらに設け、熱処理後の熱処理物である含ニッケル酸化鉱石を還元処理に供するようにしてもよい。
【0026】
このように、本実施の形態に係る製錬方法は、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して還元剤として水素を含むガスを用いた還元処理(水素還元処理)を施し、その後、得られた還元物に対して熔融処理を施すようにしている。これにより、含ニッケル酸化鉱石に含まれるニッケルを効果的に還元でき、高い回収率でニッケルを含むメタルを回収することができる。
【0027】
特に、本実施の形態に係る製錬方法では、還元工程S3において、管状の反応容器(還元反応容器)を用い、含ニッケル酸化鉱石を含む原料を、管状の反応容器内を上方から下方に移動するように装入し、その原料に対して水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理を行うようにしている。そして、原料に対して下方から供給するガスは、常温で供給されるようにし、また、原料に対して側方から供給するガスは、300℃以上の温度として、還元処理が終了した原料が貯留されている位置よりも上側の位置の側方から供給されるようにしている。
【0028】
このようにして水素還元処理を行うことで、還元が不十分となることを抑制するとともに、還元されて生成したニッケルや鉄のメタルの酸化(再酸化)を防ぐことができ、より一層に高い回収率でニッケルを含むメタルを回収することができる。
【0029】
[ペレット化工程]
必須の態様ではないが、本実施の形態に係る製錬方法では、含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化する工程(ペレット化工程S1)を設けることができる。含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化し、そのペレット化した原料(原料ペレット)に対して水素を含むガスを供給して還元処理を施すことで、その原料が、未反応の水素と共に、あるいは、反応後の水蒸気を含む排ガスと共に、キャリーオーバーする割合を抑えることができる。
【0030】
原料をペレット化する方法は、特に限定されない。例えば、原料である含ニッケル酸化鉱石を粉末にし、その鉱石の粉末にペレット化に必要な水分を添加して、転動造粒機や圧縮成形機、押出成形機等の公知のペレット製造装置により所定の大きさや形状のペレットに成形することで得られる。あるいは作業者の手によってペレットに成形してもよい。
【0031】
ペレットの形状としては、特に限定されないが、例えば球状とすることができる。
【0032】
ペレットの大きさとしては、特に限定されないが、例えば、還元工程S3における還元反応容器等に装入されるペレットの大きさ(球状のペレットの場合には直径)で5mm以上50mm以下程度とすることが好ましい。また、ペレットの大きさは、8mm以上40mm以下であることがより好ましく、10mm以上35mm以下であることがさらに好ましい。ペレットの大きさが5mm未満であると、直径が小さすぎることにより、あるいは直径の小さなペレットが割れてしまうことにより、これらの原料が還元処理の反応容器に満たされたとき、そのペレット同士の隙間(間隙)が少なくなり、還元剤である水素を含むガスの通りが悪くなることがある。このような場合、供給されるガスの圧力が一定の値を超えると、原料を一気に押し上げ、ほとんどのガスが未反応のまま抜けてしまう現象が起こり易くなる。一方で、ペレットの大きさが50mmを超えると、ペレットとガスとの接触面積が小さくなり、還元反応に時間がかかり、効率的な処理を行うことができない可能性がある。
【0033】
なお、含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化した後、そのペレットを乾燥することが好ましい。原料をペレットにするにあたり、ペレット化に必要な水分を添加している場合には、添加した水分によりべたべたした状態となっている。そのため、その後の取り扱いを容易にする点でも、ペレットに乾燥処理を施すことにより、ペレットに付着した水分を除去することができる。乾燥処理の方法としては、特に限定されないが、例えば300℃~400℃の熱風をペレットに対して吹き付けて行うことができる。
【0034】
[熱処理工程]
また、必須の態様ではないが、本実施の形態に係る製錬方法では、含ニッケル酸化鉱石を含む原料、あるいはペレット化工程S1を設けた場合にはそのペレット化した原料(原料ペレット)を特定の温度で熱処理する熱処理工程S2を設けることができる。
【0035】
具体的に、熱処理工程S2では、含ニッケル酸化鉱石を含む原料ペレットを、300℃以上1200℃以下の温度に昇温して熱処理する。熱処理は、続く水素還元処理の工程(還元工程S3)、さらに還元物を熔融する工程(熔融工程S4)に先立って行う前処理である。このように、含ニッケル酸化鉱石に対して熱処理を施すことによって、その含ニッケル酸化鉱石に含まれる結晶水を除去することができる。
【0036】
熱処理は、上述したように300℃以上1200℃以下の温度条件で行う。熱処理の温度が1200℃を超えると、次の還元工程S3における水素還元処理の際に、含ニッケル酸化鉱石に含まれる鉄メタルが生成する前にファイアライトスラグが生成する可能性がある。ファイアライトスラグが生成すると、熔融工程S4において還元剤として寄与する鉄メタルの量が減少してニッケルの還元率が向上しない可能性がある。一方で、熱処理の温度が300℃未満であると、還元工程S3での還元反応、あるいは含ニッケル酸化鉱石に含まれる結晶水の除去が妨げられ、ニッケルの還元率が低下する可能性がある。
【0037】
また、熱処理の温度は、400℃以上1000℃以下の範囲とすることがより好ましい。好ましくはこのような温度範囲で熱処理を施すことで、含ニッケル酸化鉱石に含まれる結晶水の大部分を効果的に除去できるとともに、エネルギーコストの増加を抑えることができる。
【0038】
[還元工程]
本実施の形態に係る製錬方法は、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に、還元剤として水素を特定の割合で含むガスを供給しながら還元処理(水素還元処理)を行う還元工程S3を有する。
【0039】
なお、上述した熱処理工程S2を設けて、原料の含ニッケル酸化鉱石を熱処理する場合には、得られた熱処理物に対して水素還元処理を行う。また、「含ニッケル酸化鉱石を含む原料」とは、ペレット化工程S1を設けた場合には原料ペレットを意味する。
【0040】
このように、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して水素還元処理を施すことで、含ニッケル酸化鉱石中のニッケルを金属に還元するとともに、3価で存在する鉄の大部分あるいは全てを2価の酸化物に、さらにその鉄の一部を金属まで還元する。
【0041】
水素を含むガスを還元剤とした用いた還元処理(水素還元処理)によれば、カーボンニュートラルな還元剤による処理となり、従来の技術に比べて、CO2発生量を効果的に低減することができる。なお、「カーボンニュートラルな還元剤」とは、炭素成分をほとんど含まない還元剤であり、温室効果ガスの排出量削減に寄与する還元剤であることを意味する。具体的には例えば、H2/(H2+H2O+CO2+O2)<0.9の関係で示される割合で水素を含むガスは、カーボンニュートラルな還元剤である。
【0042】
ここで、上述したように、含ニッケル酸化鉱石に対する水素還元処理は、エルケム法に比べてニッケルメタルへの還元率が低い。ところが、
図2の水素還元処理後(後述する熔融処理前)の試料断面のSTEM写真図に示されるように、水素還元処理によって、微細であり多くはないものの、ニッケルや鉄のメタル粒の生成を確認することができる。詳しくは後述するように、水素還元処理により得られた還元物を熔融処理することで、生成した微細なメタル粒(メタル微粒子)が沈降し、凝集して回収することが可能となるが、このとき、水素還元処理によって生成したニッケルや鉄のメタル粒を有効に活かして熔融処理を行うことが望ましい。
【0043】
そこで、本実施の形態に係る方法では、還元工程S3において、管状の反応容器(還元反応容器)を用い、含ニッケル酸化鉱石を含む原料を、管状の反応容器内を上方から下方に移動するように装入し、その原料に対して還元剤として水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理を行うことを特徴としている。そして、原料に対して下方から供給するガスについては、常温で供給するようにし、原料に対して側方から供給するガスについては、300℃以上のガス温度として、還元処理が終了した原料が貯留されている位置よりも上側の位置の側方から供給するようにする。
【0044】
図3は、管状の還元反応容器の模式図であり、含ニッケル酸化鉱石を含む原料の装入方向、水素を含むガスの供給方法を説明するための図である。
【0045】
還元処理では、管状の還元反応容器1内において、含ニッケル酸化鉱石を含む原料(以下、「原料M」ともいい、主として還元未反応の原料を指す)が容器1の上部(
図3中の符号11で示す付近の位置)から装入され、その原料Mが上方から順次下方に向かって移動する間に還元反応が進行していく。そして、還元処理が終了した原料(以下、この還元処理が終了した原料を「原料M’」ともいう)は、還元反応容器1の下方の位置(
図3中の符号12で示す付近の位置)に貯留される。
【0046】
一方、管状の還元反応容器1内において、水素を含むガスが、原料に対して下方(
図3中の符号13で示す付近の位置)から供給される。その下方から供給される水素を含むガス(以下、「ガスD」ともいう)は、常温である。そのため、原料に対して下方から供給されるガスDは、還元反応容器1の下方から常温で導入された後、還元処理が終了した直後の原料M’(
図3の符号12の位置で貯留されている原料)と接触して冷却しながら上昇していく。そして、その下方から供給されたガスDは、還元処理が終了した原料M’を通過した直後の時点では、およそ300℃以上の温度になっており、さらに上方に上昇していく過程で原料M(還元処理が終了していない新たな原料)を還元していき、その後、排ガスとして還元反応容器1の上部から排出される。このように、原料に対して下方から常温のガスDを供給することで、還元処理が終了した原料M’を還元雰囲気に保持するとともに冷却することができ、その還元処理が終了した原料M’の酸化(再酸化)を抑えることができる。
【0047】
また、管状の還元反応容器1内において、水素を含むガスが、還元処理が終了した原料M’が貯留されている位置(
図3の符号12の位置)よりも上側の位置の側方(
図3の符号14の位置)からも供給される。その側方から供給する水素を含むガス(以下、「ガスS」ともいう)は、300℃以上のガス温度を有している。このガスSは、未反応の原料Mの還元処理に用いられる。水素による還元反応は、吸熱反応であることから、300℃以上の温度とした水素を含むガス(ガスS)を用いることで、原料Mを昇温することができ、還元反応を効率的に進行させることができる。したがって、還元不十分な原料が生じることを防ぐために、管状の還元反応容器1の下方に貯留されている還元処理が終了した原料M’の位置(
図3の符号12の位置)よりも、可能な限り近いその上方の位置の側方(
図3の符号14の位置)から、300℃以上の温度とした水素を含むガスSを導入することが好ましい。また、そのガスSを、還元処理が終了した原料M’が貯留されている位置よりも上側の位置の側方(
図3の符号14の位置)から供給しているため、還元処理が終了した原料M’にはほとんど接触せず、したがって、冷却の妨げにもならない。
【0048】
側方から供給するガスSの温度としては、好ましくは600℃以上であり、より好ましくは800℃以上である。好ましくはこのようなガス温度で水素を含むガスSを供給することで、原料の還元反応をより円滑に進めることができる。
【0049】
なお、供給するガスを加熱する手段としては、電気式ヒーター等を用いることができる。このように、電気によりガスを加熱することによってガスの温度を例えば300℃以上の温度に調整することができる。あるいは、熱交換式ヒーター等の熱交換器を用いてガスを加熱するようにしてもよい。なお、熱源としてバーナー燃焼ガスを用いてガスを加熱すると、燃焼ガス中に含まれるH2OやCO2が炉内で酸化剤として作用し、生成したニッケルメタル粒や鉄メタル粒を再酸化して、ニッケル回収率を低下させることがある。
【0050】
このように、還元剤として水素を含むガスを、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して下方から常温で供給(ガスD)、並びに側方から300℃以上のガス温度で供給(ガスS)して水素還元処理を行うことで、還元が不十分となることを抑制するとともに、還元され生成したニッケルや鉄のメタルの酸化(再酸化)を防ぐことができる。つまり、水素還元処理により生成した還元物中のニッケルメタル粒や鉄メタル粒が再酸化されることを防ぐことができる。ニッケルメタル粒は、次工程の熔融処理において沈降及び凝集するための、いわゆる核となるものであり、そのニッケルメタル粒の再酸化を防ぐことで、熔融処理を経て高い回収率でニッケルメタルを回収することが可能となる。また、鉄メタル粒は、次工程の熔融処理において還元剤として寄与するものであり(詳しくは後述する)、その鉄メタル粒の再酸化を防ぐことで、熔融処理時におけるニッケルの還元を促進させ、その結果ニッケルメタルの回収率を向上させることができる。
【0051】
また、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して水素を含むガスを下方、並びに側方から供給して還元処理することで、生成する排ガスを上方に導くことができる。これにより、酸化ニッケルの濃度が低くなったところに水素濃度の高い供給ガスを導入でき、また、酸化ニッケル濃度が高いところに水素濃度の低い供給ガスを導入できることから、効率よく還元反応を進めることができる。
【0052】
さらに、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して側方から供給するガスSの温度を300℃以上とし、好ましくは例えば600℃以上の温度とすることで、上昇するガス流が効率的に生じるため、より一層にスムーズなガスの流れを作ることができる。その結果として、効率よく供給ガス、あるいは排ガスを流すことができ、水素還元反応をより効率的に進行させることができる。
【0053】
またさらに、上述したように、管状の還元反応容器1において、含ニッケル酸化鉱石を含む原料Mを上方から下方に移動するように装入し、つまりは、水素を含むガスの供給方向とは逆方向となるように装入しているため、水素を含むガスと向流で接触させることができるようになり、より効率的に還元反応が進行する。すなわち、上方から下方に向かって供給される原料に対して、水素を含むガスを下方から供給して排ガスを上方に導くことで、酸化ニッケルの濃度が低くなったところに水素濃度の高い供給ガスを導入でき、酸化ニッケル濃度が高いところに水素濃度の低い供給ガスを導入することができる。
【0054】
水素還元処理において供給する水素量は、含ニッケル酸化鉱石中の還元すべき鉄とニッケルとを還元するのに必要な水素量の1.2倍当量以上とすることが好ましい。供給する水素量が、上述した必要な水素量の1.2倍未満であると、還元が不十分となる可能性がある。なお、供給する水素量の上限について特に限定されず、水素の供給コスト、還元反応容器内での原料と水素とが接触する形態(すなわち反応効率)等を考慮して適宜設定すればよい。
【0055】
水素還元処理に用いる還元反応容器としては、上述したように、管状の容器であれば特に限定されない。例えば、縦型シャフト炉等を用いることができる。
【0056】
さて、上述したように、一般的に含ニッケル酸化鉱石に対する水素還元処理では、従来法のエルケム法に比べてニッケルメタルへの還元率が低い。この点、以下に説明するように、本実施の形態に係る方法では、含ニッケル酸化鉱石を含む原料に対して水素還元処理を行った後、得られた還元物に対して熔融処理(熔融工程S4)を行うようにしている。これにより、ニッケルの還元率を向上させることができる。
【0057】
[熔融工程]
熔融工程S4では、水素還元処理を施して得られる還元物を、例えば電気炉等に装入して、熔融処理する。このように、得られた還元物(水素還元物)に対して熔融処理を行うことで、ニッケルの回収率を向上させることができる。
【0058】
ニッケルは鉄よりも還元されやすい。そのため、水素還元物に対して熔融処理を施すことで、水素還元処理を経ても未反応のまま残存した酸化ニッケルと、還元された鉄メタルや2価の酸化鉄とが接触して、下記の式[1]、[2]で示すような酸素置換反応が生じ、酸化ニッケルからニッケルメタルへと還元されるようになると推測される。つまり、鉄の還元物である鉄メタルや2価の酸化鉄を還元剤として有効に作用させて、酸化ニッケルを還元することができる。
Fe+NiO → Ni+FeO ・・・式[1]
2FeO+NiO → Ni+Fe2O3 ・・・式[2]
【0059】
すなわち、水素還元した後の試料は固体状態であるため、上記の式[1]、[2]の反応は非常に進みにくいが、水素還元物を熔融することでスラグ中のメタルが移動し易くなって、式[1]、[2]の反応が促進されることになると考えられる。これにより、ニッケルのメタル化率が高まり、熔融工程S4での処理を経て回収されるニッケルの回収率を向上させることができる。
【0060】
また、水素還元物を熔融することで、非常に微細であるために磁力選別等の物理分離では回収が困難なニッケルメタル粒の沈降及び凝集を促進させることができ、これによってもニッケルの回収率を向上させることができる。
【0061】
なお、
図4は、水素還元処理後(熔融処理前)の試料断面におけるメタル粒が見られない箇所を含むSTEM写真図(図中に元素分析(EDX分析)結果を併記する)である。
図4に示されるように、メタル粒が見られない箇所(図中(2)、(3)の箇所)においても1~2%程度のニッケルが検出された。この結果からも、水素還元処理によって生成するメタル成分の沈降だけでは高いニッケル回収率は得られず、原料中の一部のニッケルは、上記の式[1]や[2]の反応に基づきニッケル酸化物が鉄メタルや2価の酸化鉄によって還元されていると推察される。
【0062】
熔融処理では、水素還元物を熔融させることができればその温度条件は特に限定されないが、例えば1400℃以上1600℃以下であることが好ましい。熔融温度を1400℃以上とすることで、良好な性状のスラグを得ることができ、スラグとメタルとを効率よく分離することができる。また、熔融温度を1600℃以下とすることで、熔融炉を構成する耐火物の損耗や、エネルギーコストを抑制することができる。
【0063】
ここで、上述したように、本実施の形態に係る方法において用いる原料の含ニッケル酸化鉱石としては、鉄品位が5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。鉄品位が5質量%未満であると、還元工程S3における還元時に還元される鉄量が少なくなり、熔融工程S4での熔融時に還元剤として寄与する鉄メタルが少なくなり、その結果、ニッケル回収率が低下する可能性がある。
【0064】
また、熔融処理に際しては、熔融対象である還元物を含む熔融処理物中のMgO/SiO2質量比が0.5以上0.7以下であることが好ましい。MgO/SiO2質量比が0.5未満、あるいは0.7を超えるような場合では、いずれもスラグ融点の上昇を招く可能性がある。
【0065】
熔融処理においてMgO/SiO2質量比が上述した範囲となるように、処理対象の原料を準備し調製することが好ましい。また、熔融処理においては、SiO2等のフラックスを添加してもよく、その場合、フラックスの添加量を考慮して、熔融処理物中のMgO/SiO2質量比が上述した範囲となるようにする。なお、フラックスは、スラグの熔融温度を低下させてスラグ中のメタル(ニッケルメタル)の沈降を促すことができる。
【0066】
[回収工程]
回収工程S5では、熔融処理により得られた熔融物からスラグを分離し、ニッケルを含むメタル(合金)を回収する。例えば電気炉等で還元物を熔融して得られた熔融物は、比重によって、スラグが上層に、メタルが下層に、それぞれ分離(比重分離)される。スラグから分離したニッケルを含むメタルついては、炉の側壁に設けられたメタルホールからタッピング等の操作を行うことによって、効率的に回収することができる。
【0067】
なお、上述した熱処理工程S2、還元工程S3、熔融工程S4、及び回収工程S5のすべて、あるいはそのうちの複数の工程の処理を、一つの炉を使用し、炉内の異なる範囲で区分けして実行することができる。あるいは、バッチ式で行ってもよい。例えば、シャフト炉又は溶鉱炉を使用して、上側の層から順に、熱処理工程S2の処理、還元工程S3の処理、熔融工程S4の処理、回収工程S5の処理を行う範囲にそれぞれ分け、最終的に、炉底部の熔体が貯められる部分においてスラグとメタルとを比重分離するようにしてもよい。
【実施例0068】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
下記表1の組成の含ニッケル酸化鉱石(サプロライト鉱)を原料として、その原料粉末に水を添加して、直径10mmの球状のペレットに成形した。
【0070】
【0071】
得られたペレット(原料ペレット)に対して、
図5の模式図に示す試験装置を用いて水素還元処理した。具体的には、原料ペレットを網カゴに装入し、窒素中で800℃に昇温した後、濃度100%の水素ガス(ガス温度:800℃)を、網カゴ内の原料ペレットに対して下方から流しながら、120分間保持して還元処理(水素還元処理)を行った。水素還元処理後、炉の電源を切り、濃度100%の水素(ガス温度:常温)を炉に供給しながら得られた還元物試料を300℃未満に冷却した後、回収した。なお、供給した水素量は、含ニッケル酸化鉱石中のニッケルと鉄を還元するのに必要な量に対して10倍以上の大過剰量とした。
【0072】
回収した還元物試料を、少量のフラックス(SiO2)と共にアルミナるつぼに装入し、窒素中で1600℃に昇温して熔融させた。60分間保持して熔融処理を施した後、冷却し、生成したスラグとボタン状に生じたメタルとを回収した。なお、フラックスであるSiO2は、スラグの熔融温度を低下させてスラグ中のメタル(ニッケルメタル)の沈降を促すために添加した。また、フラックスの添加量は、還元物を含む熔融処理する試料中のMgO/SiO2質量比が0.6になる量とした。
【0073】
図6は、熔融処理を経て回収した試料の状態を示した写真図である。
図6の写真図に示されるように、スラグが熔融しており、目視でスラグ中にメタルは確認できなかった。メタルはボタン状に塊化して得られていることがわかる。
【0074】
また、下記表2に、得られたメタルの重量とICPによる化学分析から算出されたメタル化率の結果を示す。表2に示すように、得られたニッケルのメタル化率は95%以上と高い値であった。なお、メタル化率は、原料の含ニッケル酸化鉱石に含まれていたニッケル(又は鉄)の質量に対する、回収されたニッケルメタル(又は鉄メタル)の質量の百分率で示される。
【0075】
【0076】
また、下記表3に、水素還元処理後(熔融処理前)の還元物試料を、ブロムメタノール法を用いて化学分析して算出されたメタル化率を示す。上記の表2に示したように、下記の表3に示す結果と比べて、ニッケルメタル化率と鉄メタル化率が大幅に増加した。
【0077】
なお、熔融処理時に還元剤を添加していないにもかかわらずメタル化率が増加した理由は、化学分析の際に微細なニッケル及び鉄のメタル成分がケイ酸塩中に取り込まれ、ブロムメタノール溶液がメタルに接触できずに溶解できなかった可能性が考えられる。水素還元処理後(熔融処理前)の試料断面をSTEMにより観察すると、
図2の写真図に示したように、ケイ酸塩中に微細なニッケル及び鉄のメタル粒が取り込まれていることを確認できた。このことから、水素還元処理後に熔融処理を行うことによって、水素還元によって生成したメタル微粒子が沈降及び凝集して、回収できるようになったと考えられる。なお、
図2の写真図に示される試料のマトリックスは、MgO-SiO
2-FeO系のスラグであると考えられる。
【0078】
また、水素還元処理後(熔融処理前)の試料について、メタル粒が見られない箇所(
図4中(2)、(3)の箇所)を分析すると、
図4の写真図に示したように1~2%程度のニッケルが検出された。このため、上述したメタル成分の沈降だけでは上記表2のNiメタル化率が得られないと考えられる。このことから、一部のニッケルは、上述した式[1]や[2]の反応等によって、ニッケル酸化物が鉄メタルもしくは2価の鉄酸化物によって還元されていると考えられる。
【0079】
【0080】
表2、3に示す結果からわかるように、含ニッケル酸化鉱石からのニッケルの回収において、含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化し、その原料ペレットに対して水素還元処理を施した後に熔融処理を施すことで、その水素還元処理による、すなわちカーボンニュートラルな還元剤による還元によっても、例えば95%以上の高いニッケル回収率を達成できることが確認された。
【0081】
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同様にして含ニッケル酸化鉱石を含む原料をペレット化し、その原料ペレットに対して800℃の温度で水素還元した。その後、得られた還元物試料を振動ミルにて粉砕し、ブロムメタノール法にてメタル分の分析を行った。すなわち、比較例1では、水素還元後に熔融処理を行わなかった。
【0082】
その結果は、上記の表3に示したとおり、ニッケルのメタル化率は約3%であった。なお、これらメタルを全て回収しても工業的に成り立たないものであった。