(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019851
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】製造支援方法、製造支援プログラム、及び、製造支援装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20250131BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123701
(22)【出願日】2023-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日 2023年(令和5年)7月5日 展示会名 コンクリートテクノプラザ2023 開催場所 福岡国際会議場(福岡県福岡市博多区石城町2-1) ウェブサイトの掲載日 2023年(令和5年)7月20日 ウェブサイトのアドレス https://www.mu-cc.com/information/20230720_01.html 発行日 2023年(令和5年)7月27日 刊行物 コンクリート新聞 令和5年7月27日付け発行,第1面
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 庸行
(72)【発明者】
【氏名】玉滝 浩司
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA18
5L096DA02
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】生コンクリートの品質管理を容易にする。
【解決手段】本開示の一側面に係る製造支援方法は、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、を含む。前記品質予測工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、製造支援方法。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する方法であって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、
前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、を含み、
前記品質予測工程は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、
製造支援方法。
【請求項2】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する方法であって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、
前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、を含み、
前記品質予測工程は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測工程と、を含む、
製造支援方法。
【請求項3】
前記品質を示す値は、骨材の粗粒率、骨材の過大粒量、又は、骨材の過小粒量である、請求項2に記載の製造支援方法。
【請求項4】
前記配合は、細骨材率、粗骨材かさ容積、又は、コンクリートの単位水量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造支援方法。
【請求項5】
前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、
前記配合は、細骨材率、又は粗骨材かさ容積であり、
前記配合算出工程では、
前記品質予測工程での粗粒率の予測結果が基準値よりも小さい場合には、粗粒率の予測結果と前記基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が小さくなるように前記補正値が算出され、
前記品質予測工程での粗粒率の予測結果が前記基準値よりも大きい場合には、粗粒率の予測結果と前記基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が大きくなるように前記補正値が算出される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造支援方法。
【請求項6】
前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、
前記品質予測工程において評価対象の骨材の粗粒率を算出する度に、粗粒率の予測結果に対して前記撮像画像データを対応付けたうえで、粗粒率の予測結果と前記撮像画像データとを記録する記録工程を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造支援方法。
【請求項7】
評価対象の骨材に対する複数回の撮像を実行する撮像工程と、
品質予測出力工程と、を更に含み、
前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、
前記複数回の撮像それぞれについて、前記評価情報取得工程及び前記予測工程が実行され、
前記品質予測出力工程では、前記複数回の撮像それぞれについての前記予測工程での粗粒率の算出結果の平均値が、粗粒率の予測結果として出力される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造支援方法。
【請求項8】
前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、
前記製造支援方法は、
評価対象の骨材に対応する実測対象の骨材から得られる粗粒率の実測値と、当該実測値に対応付けられた、実測対象の骨材の画像データと、を取得する実測情報取得工程と、
前記実測情報取得工程で得られたデータに基づいて、前記予測モデルを更新するモデル更新工程と、を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造支援方法。
【請求項9】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援するためのプログラムであって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、
前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、
をコンピュータに実行させ、
前記品質予測工程は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、
製造支援プログラム。
【請求項10】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援するためのプログラムであって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、
前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、
をコンピュータに実行させ、
前記品質予測工程は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測工程と、を含む、
製造支援プログラム。
【請求項11】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する装置であって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測部と、
前記品質予測部による予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出部と、を備え、
前記品質予測部は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得部と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を有する、
製造支援装置。
【請求項12】
細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する装置であって、
評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測部と、
前記品質予測部による予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出部と、を備え、
前記品質予測部は、
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得部と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測演算部と、を有する、
製造支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造支援方法、製造支援プログラム、及び、製造支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土の粒度分布の推定方法が開示されている。特許文献2には、骨材の品質推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-117625号公報
【特許文献2】特開2021-135199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用な製造支援方法、製造支援プログラム、及び、製造支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する方法であって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、を含み、前記品質予測工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、製造支援方法。
粒度に係る品質について、ふるいを用いて実測した値を利用して、コンクリートの配合の補正値を算出したうえで、その配合を調整することも考えられる。一方、ふるいを用いて粒度に係る品質を実測するのは時間がかかるため現実的ではない。これに対して、上記製造支援方法では、予測モデルMを利用して、画像データから粒度に係る品質の予測値が得られており、その予測値に応じて、配合の補正を行うための補正値が算出されている。予測モデルMを利用した品質の予測作業は、数秒程度と実測する場合に比べてはるかに簡便であり、予測値を得る頻度を増やすことも容易である。その結果、骨材の品質に応じたコンクリートの配合の調整を行っても、作業工数が大幅に増加しない。従って、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【0006】
[2]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する方法であって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、を含み、前記品質予測工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測工程と、を含む、製造支援方法。
この製造支援方法は、上記[1]に記載の方法と同様に、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【0007】
[3]前記品質を示す値は、骨材の粗粒率、骨材の過大粒量、又は、骨材の過小粒量である、上記[2]に記載の製造支援方法。
この場合、コンクリート材料における配合を適切に調整(補正)することができる。
【0008】
[4]前記配合は、細骨材率、粗骨材かさ容積、又は、コンクリートの単位水量である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造支援方法。
この場合、骨材の粒度に係る品質を適切な管理範囲に収めるような調整が可能となる。
【0009】
[5]前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、前記配合は、細骨材率、又は粗骨材かさ容積であり、前記配合算出工程では、前記品質予測工程での粗粒率の予測結果が基準値よりも小さい場合には、粗粒率の予測結果と前記基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が小さくなるように前記補正値が算出され、前記品質予測工程での粗粒率の予測結果が前記基準値よりも大きい場合には、粗粒率の予測結果と前記基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が大きくなるように前記補正値が算出される、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造支援方法。
この場合、評価対象の骨材の粗粒率を適切な管理範囲に収めるような調整が可能となる。
【0010】
[6]前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、前記品質予測工程において評価対象の骨材の粗粒率を算出する度に、粗粒率の予測結果に対して前記撮像画像データを対応付けたうえで、粗粒率の予測結果と前記撮像画像データとを記録する記録工程を更に含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の製造支援方法。
この場合、ユーザは、粗粒率の予測結果が得られた要因となる入力に関する情報を容易に把握することができる。
【0011】
[7]評価対象の骨材に対する複数回の撮像を実行する撮像工程と、品質予測出力工程と、を更に含み、前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、前記複数回の撮像それぞれについて、前記評価情報取得工程及び前記予測工程が実行され、前記品質予測出力工程では、前記複数回の撮像それぞれについての前記予測工程での粗粒率の算出結果の平均値が、粗粒率の予測結果として出力される、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造支援方法。
この場合、撮像及び予測ごとにバラつきがあっても、安定した予測値の算出結果を得ることができる。
【0012】
[8]前記予測工程では、評価対象の骨材の粗粒率が算出され、前記製造支援方法は、評価対象の骨材に対応する実測対象の骨材から得られる粗粒率の実測値と、当該実測値に対応付けられた、実測対象の骨材の画像データと、を取得する実測情報取得工程と、前記実測情報取得工程で得られたデータに基づいて、前記予測モデルを更新するモデル更新工程と、を更に含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造支援方法。
この場合、粗粒率の実測値を利用することで、予測精度が向上し得るモデルの更新を容易に行うことができる。
【0013】
[9]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援するためのプログラムであって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、をコンピュータに実行させ、前記品質予測工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、製造支援プログラム。
この製造支援プログラムは、上記[1]に記載の方法と同様に、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【0014】
[10]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援するためのプログラムであって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測工程と、前記品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出工程と、をコンピュータに実行させ、前記品質予測工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測工程と、を含む、製造支援プログラム。
この製造支援プログラムは、上記[2]に記載の方法と同様に、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【0015】
[11]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する装置であって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測部と、前記品質予測部による予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出部と、を備え、前記品質予測部は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得部と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を有する、製造支援装置。
この製造支援装置は、上記[1]に記載の方法と同様に、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【0016】
[12]細骨材及び粗骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置を支援する装置であって、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する品質予測部と、前記品質予測部による予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する配合算出部と、を備え、前記品質予測部は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する評価情報取得部と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記評価入力情報と、に基づいて、評価対象の骨材の前記品質を示す値を算出する予測演算部と、を有する、製造支援装置。
この製造支援装置は、上記[2]に記載の方法と同様に、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、生コンクリートの品質管理を容易にするのに有用な製造支援方法、製造支援プログラム、及び、製造支援装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、生コンクリートの製造システム、及び製造支援装置を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、製造支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、製造支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は、予測モデルを用いた予測演算の一例を模式的に示す図である。
図4(b)は、学習用の画像データを取得する様子を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、学習用の画像データの一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、製造支援装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、モニタ上の表示画面の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、それぞれ、製造支援装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、製造支援装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1には、一実施形態に係る製造支援装置と、その製造支援装置が用いられる生コンクリートの製造システムが模式的に示されている。
【0020】
[生コンクリートの製造システム]
最初に、生コンクリートの製造システムについて、その概要を説明する。
図1に示される製造システム100(製造装置)は、生コンクリートを製造するシステムである。製造システム100は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造(生成)する。
【0021】
製造システム100において用いられるコンクリート材料は、セメント、混和材、粗骨材、細骨材、水、及び混和剤等を含む。粗骨材としては、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、再生粗骨材、回収骨材、又はこれらを混合した粗骨材が挙げられる。砂利は、山砂利、陸砂利、川砂利、又は海砂利などである。スラグ粗骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量粗骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。粗骨材は、砕岩砕石、又は石灰砕石を含んでもよい。
【0022】
細骨材としては、例えば、砂、砕砂、スラグ細骨材、軽量細骨材、再生細骨材、回収骨材、又はこれらを混合した細骨材が挙げられる。砂は、山砂、陸砂、川砂、又は海砂などである。スラグ細骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量細骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。
【0023】
砕石、及び砕砂の岩種には、例えば、火成岩類、堆積岩類、変成岩類、珪石、石灰岩、ドマロイト、又はかんらん岩などがある。火成岩類は、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、ひん岩、輝緑岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、又は蛇紋岩などである。堆積岩類は、礫岩、砂岩、頁岩、粘板岩、又は凝灰岩などである。変成岩類は、片麻岩、又は結晶片岩などである。本開示では、粗骨材及び細骨材を総称して、「骨材」と称する場合がある。この場合、「骨材」は、粗骨材、細骨材、又は、粗骨材及び細骨材の両方を意味する。
【0024】
製造システム100は、製造した生コンクリートを運搬車200に積み込む。運搬車200は、生コンクリートが積み込まれた後に、生コンクリートが使用される現場(例えば、工事現場)まで生コンクリートを運搬する。運搬車200としては、例えば、アジテータ車(ミキサ車)、又はダンプトラックが挙げられる。製造システム100は、現場ごとに設定された目標品質(要求品質)を満たすように、コンクリート材料から生コンクリートを製造してもよい。一例では、生コンクリートの目標品質は、スランプ、又はスランプフローの目標値を含む。製造システム100は、例えば、材料置場101と、運搬装置104と、製造装置110と、を備える。
【0025】
材料置場101は、コンクリート材料を貯蔵する場所である。材料置場101は、複数のサイロ102を含む。複数のサイロ102は、コンクリート材料の少なくとも一部を、材料の種類ごとに貯蔵する容器である。複数のサイロ102は、粗骨材を貯蔵するサイロ102と、細骨材を貯蔵するサイロ102と、セメントを貯蔵するサイロ102とを含む。
【0026】
運搬装置104は、複数のサイロ102に貯蔵されたコンクリート材料を、製造装置110まで運搬する装置である。運搬装置104は、例えば、コンクリート材料を搬送するベルトコンベアを含む。運搬装置104は、互いに異なるタイミングで、材料の種類ごとにコンクリート材料を運搬してもよい。一例では、製造システム100が備える制御装置による動作指示に基づいて、各種コンクリート材料のうちの特定の材料が運搬装置104に移され、製造装置110まで搬送される。
【0027】
製造装置110は、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する装置である。製造装置110は、例えば、貯蔵瓶111と、計量瓶112と、集合ホッパ113と、ミキサ114と、積込ホッパ115と、を備える。
【0028】
貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を一時的に貯蔵する。貯蔵瓶111には、材料置場101から、運搬装置104によって各種のコンクリート材料が運搬(搬送)される。貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を個別に貯蔵するように構成されている。以下、「コンクリート材料」を単に「材料」と表記する場合がある。貯蔵瓶111に貯蔵されている各種材料は、必要に応じて計量瓶112に供給される。
【0029】
計量瓶112は、貯蔵瓶111の下方に配置されている。計量瓶112は、制御装置からの動作指示に基づいて動作し、各種材料を個別に計量する。計量瓶112は、制御装置から指示された目標量の材料を検知すると、その材料を集合ホッパ113に供給する。水が計量瓶112に供給される際に、その水に混和剤が混合されてもよい。集合ホッパ113は、計量瓶112の下方に配置されている。集合ホッパ113は、計量瓶112から排出される各種材料を集約し、集約した各種材料をミキサ114に供給する。なお、集合ホッパ113が備えられなくてもよく、この場合、計量瓶112から各種材料がミキサ114に供給される。
【0030】
ミキサ114は、集合ホッパ113の下方に配置されている。ミキサ114は、コンクリート材料を練り混ぜる装置である。ミキサ114は、骨材、セメント、水、及び混和剤等を練り混ぜる(混練する)ことで、生コンクリートを製造する。ミキサ114の底部から、生コンクリートが積込ホッパ115に排出される。積込ホッパ115は、ミキサ114の下方に配置されており、生コンクリートを一時的に収容する。積込ホッパ115は、一時的に収容した生コンクリートを運搬車200に供給する。
【0031】
以上に説明した製造システム100は、生コンクリートの製造システムの一例であり、生コンクリートの製造システムは、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造可能であれば、どのように構成されていてもよい。
【0032】
[製造支援装置]
製造支援装置1は、製造システム100による生コンクリートの製造を支援する装置である。製造支援装置1は、評価対象の骨材の粒度に係る品質(例えば、粗粒率)を予測することと、その品質の予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する。製造支援装置1は、上記品質を予測する品質予測装置でもある。
【0033】
製造支援装置1は、1以上のコンピュータによって構成されている。製造支援装置1を構成するコンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ(タブレット端末)、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、ワークステーション、サーバコンピュータ、又は、汎用コンピュータであってもよい。製造支援装置1は、有線又は無線を介して、通信ネットワークに接続されてもよい。製造支援装置1が2以上のコンピュータによって構成される場合には、それらのコンピュータ同士が、有線、無線、又は通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続される。
【0034】
製造支援装置1は、例えば、本体10と、入力デバイス12と、モニタ14と、カメラ16と、を備える。本体10は、製造支援装置1を構成するコンピュータの主たる機能を実行する装置(コンピュータ本体)である。
【0035】
入力デバイス12は、本体10に情報を入力するための装置である。入力デバイス12は、所望の情報を入力可能であればいかなるものであってもよく、その具体例としては、キーパッド、マウス、及び操作コントローラなどの操作インターフェースが挙げられる。
【0036】
モニタ14は、本体10から出力された情報を表示するための装置である。モニタ14は、グラフィック表示が可能であればいかなるものであってもよく、その具体例としては液晶パネルが挙げられる。モニタ14及び入力デバイス12は、タッチパネルとして一体化されていてもよい。
【0037】
カメラ16は、骨材を撮像することが可能な装置である。カメラ16は、骨材を撮像することで画像データを生成する。カメラ16は、例えば、可視光に基づき撮像範囲を撮像するデジタルカメラ、又はビデオカメラである。カメラ16によって生成された画像データは、骨材の品質を予測する際に用いられる。カメラ16が、撮像対象の動画を生成する場合、その動画に含まれる静止画が画像データとして取得されてもよい。
【0038】
カメラ16は、製造システム100において、特定箇所にある骨材を撮像することができるように配置されてもよい。カメラ16は、例えば、運搬装置104によって運搬されている骨材を撮像可能となるように配置されてもよい。カメラ16は、持ち運び可能であってもよく、作業員等のユーザが、カメラ16を撮像位置まで運んでもよい。ドローン等の移動体にカメラ16が搭載されてもよく、ユーザによる移動体の操縦等により、製造システム100における任意の箇所においてカメラ16が撮像を行ってもよい。
【0039】
製造支援装置1において、カメラが内蔵(搭載)されたスマートフォン、又はカメラが内蔵されたタブレットコンピュータのように、本体10、入力デバイス12、モニタ14、及びカメラ16が一体化されてもよい。一例では、スマートフォンに対して、骨材の品質を予測するためのアプリケーションがインストールされることで、製造支援装置1が構成される。
【0040】
図2に示されるように、本体10は、回路50を備える。回路50は、プロセッサ51と、メモリ52と、ストレージ53と、入出力ポート54と、を有する。ストレージ53は、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の1以上の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。ストレージ53は、少なくとも、品質予測工程、及び配合算出工程をコンピュータに実行させる製造支援プログラムを記憶している。製造支援プログラムは、品質予測工程、及び配合算出工程に加えて、結果出力工程、記録工程、撮像工程、品質予測出力工程、実測情報取得工程、及びモデル更新工程のうちの1以上の工程をコンピュータに更に実行させてもよい。これらの工程の詳細については後述する。ストレージ53は、本体10の各機能ブロックを構成するための製造支援プログラムを記憶する。
【0041】
メモリ52は、例えばランダムアクセスメモリ等の1以上の揮発性メモリデバイスにより構成されている。メモリ52は、ストレージ53からロードされた製造支援プログラムを一時的に記憶する。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算デバイスにより構成されている。プロセッサ51は、メモリ52にロードされた製造支援プログラムを実行することで、本体10の各機能ブロックを構成する。プロセッサ51による演算結果は一時的にメモリ52に格納される。入出力ポート54は、プロセッサ51からの要求に応じ、入力デバイス12、モニタ14、及びカメラ16等との間で情報の入出力を行う。
【0042】
製造支援プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、製造支援プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。本体10(製造支援装置1)は、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータによって構成されてもよい。本体10(製造支援装置1)の少なくとも一部は、製造システム100に含まれる制御装置の一部の要素であってもよい。
【0043】
図3には、本体10が備える機能上の構成要素(本開示において「機能ブロック」という。)の一例が示されている。本体10は、機能ブロックとして、品質予測部21と、配合算出部42と、結果出力部44と、を備える。これらの機能ブロックが実行する処理は、本体10(製造支援装置1)が実行する処理に相当する。
【0044】
品質予測部21は、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測するように構成されている。品質予測部21によって予測される粒度に係る品質は、例えば、骨材の粗粒率、骨材の過大粒量、又は、骨材の過小粒量である。品質予測部21は、これらの3種類の粒度に係る品質のうちの2種以上の品質を予測してもよい。品質予測部21(品質予測装置)は、ユーザ入力取得部22と、画像データ取得部24と、評価情報取得部26と、予測モデル保持部28と、予測演算部30と、を有する。これらの機能ブロックが実行する処理は、品質予測部21(製造支援装置1)が実行する処理に相当する。
【0045】
ユーザ入力取得部22は、評価対象の骨材の品質の予測に必要なユーザからの入力を示すユーザ入力情報を取得するように構成されている。ユーザ入力取得部22は、モニタ14に表示されたインターフェース用の画面へのユーザ入力に基づいて、ユーザ入力情報を取得してもよい。
【0046】
画像データ取得部24は、評価対象の骨材を撮像して生成される画像データ(以下、「撮像画像データ」という。)を取得するように構成されている。画像データ取得部24は、カメラ16によって撮像して得られる撮像画像データ(撮像画像)を取得する。
【0047】
評価情報取得部26は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データに基づく評価入力情報を取得するように構成されている。評価情報取得部26は、例えば、撮像画像データをそのまま、評価入力情報として取得してもよく、撮像画像データに対して所定の加工が施されて得られる画像データを、評価入力情報として取得してもよい。ユーザ入力によって、撮像画像データに対して、評価入力情報を得るために加工を施すか否か、及び、どのように加工するかが決定されてもよい。
【0048】
予測モデル保持部28は、評価対象の骨材の粗粒率を予測するためのモデル(以下、「予測モデルM」という。)を保持するように構成されている。予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習用の画像データ(学習画像データ)に基づく入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の品質に関連する品質値の正解値とに基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、上記品質値の予測値を出力するように構築されたモデルである。上記品質値は、例えば、粗粒率、骨材の粒度区分に含まれる粒度区分ごとの質量分率、又は、粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率の両方である。予測モデルMの構築については、後述する。なお、予測モデルMは上記品質値に加えて、さらに過大粒量、過小粒量を品質値として出力して良い。
【0049】
機械学習とは、機械(コンピュータ)が与えられた情報に基づいて反復的に学習することで、法則又はルールを自律的に見つけ出す手法をいう。予測モデルMは、アルゴリズム及びデータ構造を用いて構築することができる。予測モデルMは、例えば、人間の脳神経の仕組みを模した情報処理のモデルであるニューラルネットワークを用いて実現される。予測モデルMを構築する際に行われる機械学習の具体的なアルゴリズムは特に限定されない。ニューラルネットワークは、入力層と、1以上の中間層と、出力層とを有する。1以上の中間層を含むことでより複雑な予測モデルMを構築でき、予測精度を向上できる。
【0050】
予測モデルMは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた機械学習により構築されていてもよい。予測モデルMは、上記品質値の正解値に基づく機械学習により構築される。予測モデルMは、上記入力情報に応じて、上記品質値として、粗粒率のみ、複数の粒度区分に含まれる粒度区分ごとの質量分率を示す値のみ、又は、粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率との双方を出力してもよい。粒度区分ごとの質量分率を出力する場合、予測モデルMは、複数の粒度区分について、それぞれが質量分率を示す複数の値を出力する。以下では、予測モデルMが、粗粒率、及び粒度区分ごとの質量分率の双方を出力する場合を例示する。
【0051】
予測モデルMは、例えば、機械学習の入力として与えられるデータと、機械学習の出力の正解データ(上記品質値の正解値)とを用いた機械学習が行われることで、上記品質値を予測するために構築される。機械学習の入力は、学習用の骨材を撮像して得られる学習用の画像データに基づく入力情報の種々のデータセットである。入力情報の種々のデータセットでは、入力情報に含まれる少なくとも画像データが互いに異なっている。機械学習の出力は、粗粒率等の品質値を示すデータ(数値)である。予測モデルMを構築する際には、入力情報及び粗粒率等の正解値の複数の組合せを用いて、上記品質値の予測値が出力されるモデルが反復的に学習される。
【0052】
予測モデルMを自律的に構築する段階は、学習フェーズに相当する。上記学習フェーズが、製造システム100において生コンクリートの製造を行う生産フェーズの前に行われてもよく、又は、生産フェーズの初期段階で行われてもよい。学習済みのモデルである予測モデルMは、コンピュータ間で移植可能である。従って、他の装置において構築された予測モデルMが、予測モデル保持部28に記憶されてもよい。品質予測部21が予測モデルMを用いて評価対象の骨材の粗粒率を予測する段階は、評価フェーズに相当する。
【0053】
予測演算部30は、評価入力情報を予測モデルMに対して入力して、予測モデルMから出力される予測値を取得するように構成されている。例えば、予測演算部30は、粗粒率を示す予測値を予測モデルMから取得する。また、予測演算部30は、複数の粒度区分について、それぞれが質量分率の値を示す複数の予測値を予測モデルMから取得してもよい。予測演算部30は、粒度区分ごとの質量分率に関する予測値(複数の予測値)から粗粒率を算出してもよい。なお、予測演算部30は、信頼性評価のため、予測モデルMから粗粒率、それぞれが質量分率の値を示す複数の予測値の両方を取得し、予測モデルM毎に予測される粗粒率の比較をしてもよい。以上のように、予測モデルMを用いて異なる2つの方法で粗粒率の算出(予測)が行われることで、粗粒率の予測値の信頼性を評価することができる。なお、後述する過大粒量、過小粒量については、粒度区分ごとの質量分率の予測値(複数の予測値)から算出しても良い。
【0054】
配合算出部42は、予測演算部30による予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出するように構成されている。配合算出部42は、例えば、予測演算部30による粗粒率の予測結果に応じて、標準配合どおりのコンクリートを製造するために管理対象の骨材(製造システム100で使用している骨材)の細骨材率、粗骨材かさ容積、又は、コンクリートの単位水量の少なくとも1つの補正値を算出してもよい。配合算出部42による補正値の算出の具体例については、後述する(後述する配合算出工程において説明する)。
なお、本実施形態において、コンクリートの配合の補正とは、コンクリートの配合の補正、修正、変更を含む。コンクリートの配合の補正(修正と称されることもある)とは、日常のコンクリート原料の品質変動、コンクリートの品質変動などに応じて配合を見直すことである。また、コンクリートの配合の修正とは、短・中期的なコンクリート原料の品質変動やコンクリートの品質変動などに基づいて配合を見直すことである。また、コンクリートの配合の変更とは、長期間なコンクリート原料の品質変動やコンクリートの品質変動などに基づいて配合を見直すことである。
【0055】
結果出力部44は、少なくとも、配合算出部42による補正値の算出結果を出力する。結果出力部44は、配合算出部42による補正値の算出結果を、自装置(製造支援装置1)にモニタ14に出力することで、その算出結果をモニタ14に表示させてもよい。結果出力部44は、他の装置にモニタに出力することで、補正値の算出結果を当該モニタに表示させてもよい。結果出力部44は、配合算出部42による補正値の算出結果に加えて、予測演算部30による予測結果(例えば、粗粒率の予測値)をモニタ14等に表示させてもよい。結果出力部44は、モニタに代えて、製造システム100における製造装置に対して、配合算出部42による補正値の算出結果を出力してもよい。
【0056】
<予測モデルM>
ここで、
図4及び
図5を用いて、粗粒率の予測に用いられる予測モデルMについて更に説明する。予測モデルMを構築する学習フェーズでは、製造システム100において用いられ、評価対象となり得る骨材と同じ種類の骨材が、学習用の骨材として用いられる。
図4(a)には、入力情報である画像Imから、予測モデルMを用いて粗粒率を予測する演算過程が模式的に示されている。予測モデルMの入力は、画像Imであり、予測モデルMの出力は、複数の粒度区分それぞれの質量分率の予測値、及び粗粒率の予測値である。
【0057】
予測モデルMを構築する際には、機械学習を行うための学習用のデータが準備される。学習用のデータは、学習用の骨材を撮像して得られる各種の画像データ(入力情報)と、各種の画像データそれぞれに対応付けられた正解データとを含む。学習用の画像の準備では、例えば、粒度区分ごとの質量分率が既知である各種骨材が準備される。上記の各種骨材とは、骨材の種類が異なることではなく、粒度が互いに異なる同じ種類の骨材であることを意味する。
【0058】
一例では、計測用のシート132上に積み重ねられた状態で、学習用の各種骨材がカメラ130によって個別に撮像される(
図4(b)を参照)。積み重ねられた状態(積み重なった状態)とは、鉛直上方から見て、骨材に含まれる一部の粒が、他の粒に重なっている状態をいう。カメラ130によって個別に撮像されることで、各種の骨材それぞれについて、学習用の画像データが得られる。カメラ130は、デジタルカメラであってもよく、計測用のシート132上の骨材から所定距離だけ離れた位置(例えば、上方の所定位置)から、積み重なった状態の骨材を含む範囲を撮像する。
【0059】
シート132は、ゴムシートであってもよい。
図4(b)に示されるように、シート132は、運搬装置104のベルトコンベアを模して湾曲するように形成されたシートであってもよく、
図4(b)に示される例とは異なり、フラット状に形成されたシートであってもよい。シート132に載せられる骨材の量は、特に限定されないが、1kg~10kg程度であってもよい。
図4(b)では、シート132上に骨材が堆積した様子が模式的に例示されており、骨材の量が2kg、5kg、及び8kgである場合の堆積状態が示されている。なお、シート132は、ゴムシート以外の容器を使用することができる。縁のある容器であれば、カメラから骨材までの距離を算出した後に、距離の算出結果に基づき画像データのサイズを補正して、撮像された骨材の大きさを一律に調整するために利用できる観点でも好ましい。
【0060】
一例では、下記の表1に示される条件で各種骨材の試料が準備され、準備した試料を撮像することで学習用の画像が取得される。表1に示される条件で準備された各種骨材における粒度区分ごとの質量分率、及び粗粒率は既知であり、その既知の値が機械学習における正解データである。
【0061】
【0062】
粗粒率(F.M)は、例えば、コンクリート標準仕方書で規定される下記の式(1)によって求められる。なお、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」に規定される計測では、式(1)における80mmを除いた9個のふるいが用いられる。本開示で予測される粗粒率は、いずれの方式によって規定されるものであってもよい。
【数1】
【0063】
表1においては、10水準の粒度(粗粒率)の骨材が準備されることを意味する。区分Iは、2.5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分Iには、2.5mmのふるいにとどまれない粒が分けられる。区分IIは、2.5mm以上、且つ5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIには、2.5mmのふるいにとどまるが、5mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。区分IIIは、5mm以上、且つ10mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIIには、5mmのふるいにはとどまるが、10mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。区分IVは、10mm以上、且つ20mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IVには、10mmのふるいにはとどまるが、20mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。
【0064】
水準1に関して、粒度区分ごとの質量分率(区分I~IVそれぞれの質量分率)から、粗粒率が以下のように求められる。水準1の骨材では、80mm、40mm、及び20mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ0であり、10mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が85であり、5mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が100(=15+85)である。また、5mmのふるいに全ての粒がとどまるので、2.5mm、1.2mm、600μm、300μm、及び150μmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ100である。そのため、粗粒率は、下記の式(2)のように演算される。
【数2】
【0065】
水準2~10に関しても、水準1での上記演算と同様にして粗粒率が求められる。なお、表1に示される学習用の骨材の条件は、あくまで一例であり、水準の個数、各水準での粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率、及び粒度区分の設定方法は、任意に設定されてもよい。表1に示される複数の粒度区分のように、最小の区分(<150μm)を含む複数の区分での粒度が、1つの粒度区分にまとめられてもよい。ある区分(例えば、20~40mm)以上での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。また、表1の設定方法と異なり、ある区分(例えば、1.2~2.5μm)以下での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。
【0066】
図5には、表1における水準1~10それぞれの条件に従って準備された学習用の骨材を撮像して得られる画像T1~T10が示されている。水準n(nは、1~10の整数)が、画像Tnに対応する。例えば、水準1に従って準備された学習用の骨材を撮像して画像T1が得られている。各水準nに従った学習用の骨材では、複数の粒度区分の粒が含まれている。このように、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材が準備され、当該学習用の骨材を撮像して得られる画像データに基づき入力情報が準備されてもよい。
【0067】
各水準nに関して、学習用の骨材の状態(より詳細には、堆積状態)が互いに異なる複数の画像Tnが準備されてもよい。一例では、計測用のシート132上に学習用の骨材が載せられた状態で、1回目の撮像が行われることで、1つの画像Tnが取得される。そして、学習用の骨材がシート132の上から一時的に取り除かれて、多数の粒同士の堆積状態が1回目の撮像時と異なるように、シート132上に再度、同じ学習用の骨材(同じ試料)が載せられる。そして、2回目の撮像が行われる。上記のような撮像が繰り返されることで、各水準nに関して複数の画像Tnが準備されてもよい。
【0068】
1つの画像Tnと、その画像Tnに対応付けられた水準nでの質量分率及び粗粒率の正解データとによって、1つのデータセットが構成される。学習用のデータとして、それぞれが、画像Tnと質量分率及び粗粒率の正解データとの組み合わせからなる複数のデータセットが準備される。そして、そのような学習用のデータを用いた機械学習が行われることで、予測モデルMが構築される。以上のように構築された予測モデルMは、例えば、4つの粒度区分に関する4つの質量分率の値と、粗粒率の値とを出力する。
【0069】
粗粒率の値を出力する点に着目すると、予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値とに基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築されたモデルである。粒度区分ごとの質量分率の値を出力する点に着目すると、予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値とに基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築されたモデルである。
【0070】
畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習による予測モデルMを用いた粗粒率の予測方法を検証するために、正解値が既知であるデータセットを用いて、予測モデルMによる予測結果と正解値との比較検証を行った。学習用の骨材は、上述の表1の条件に従って、粗粒率が互いに異なる10水準の骨材を準備した。1つの水準ごとに、計測用のシート132上での骨材の堆積状態が互いに異なる状態で、室内において10回の撮像を行って10個の画像を取得した。
【0071】
また、下記の表2に示す基準条件に従って、合計100枚の画像(10水準×10回の撮像)を準備した。これにより、学習用のデータとして、それぞれのデータセットにおいて画像と正解値とが対応付けられた100個のデータセットを準備した。
【0072】
【0073】
100個のデータセットのうちの80個のデータセットを用いて、上記予測モデルMを構築し、20個のデータセットを検証に用いた。各水準において、8個のデータをモデル構築に使用し、2個のデータセットを検証に使用した。20個のデータセットを用いた検証では、データセットごとに、画像と予測モデルMとを用いて演算された予測結果と、当該画像に対応付けられた粗粒率等の正解値とを比較した。予測モデルMは、畳み込み層とプーリング層とから構成される中間層を6層設けたのち、4層の全結合層を設けた畳み込みニューラルネットワークにより構成した。また、損失関数にはHuber関数を使用した。なお、それぞれのデータセットでは、Image Augmentation層により画像の数を増加させた。
【0074】
図6(a)は、上記表1での区分III及び区分IVにおける質量比率(%)の予測値と、対応する質量分率(%)の正解値との関係を示すグラフである。
図6(a)に示されるグラフにおいて、横軸が質量分率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される質量分率の予測値である。区分III(5mm~10mm)での予測結果が△印でプロットされており、区分IV(10mm~20mm)での予測結果が〇印でプロットされている。正解値と予測値とが一致する実線のラインが描かれており、プロットされた結果が、そのラインに近いほど、予測精度が高いことを意味する。
図6(a)に示される結果から、上記ラインの近傍に予測結果がプロットされており、予測モデルMにより、質量比率を精度良く予測できていることがわかる。なお、質量分率によって粗粒率を求めることができるので、予測モデルMにより質量分率を精度良く予測できれば、粗粒率も精度良く予測できる。
【0075】
図6(b)は、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値と、粗粒率の正解値との関係を示すグラフである。
図6(b)に示されるグラフにおいて、横軸が粗粒率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値である。予測結果が□印でプロットされている。実線のラインは、正解値と予測値とが一致するラインであり、そのラインから+0.10だけ縦方向にずれた破線の上限ラインと、-0.10だけ縦方向にずれた下限ラインとが描かれている。上限ラインと下限ラインとの間の領域に含まれる予測結果が、許容範囲内と定義している。現行の生コンクリート工場において許容されている粗粒率の誤差を参考に、±0.10の範囲を許容範囲として設定した。予測モデルMを用いた予測結果の全てが、許容範囲に含まれており、予測モデルMにより、粗粒率を精度良く予測できていることがわかる。
【0076】
[製造支援方法]
続いて、
図7及び
図8を参照しながら、製造支援装置1において実行される製造支援方法について説明する。以下、製造支援装置1が、カメラ付きのスマートフォンによって構成される場合を例に用いて、製造システム100による生コンクリートの製造を支援するための製造支援方法について説明する。この製造支援方法は、例えば、品質予測工程と、配合算出工程と、結果出力工程と、を含む。これらの工程は、製造支援装置1における対応する機能ブロックによって実行されてもよい。
【0077】
品質予測工程は、評価対象の骨材の粒度に係る品質を予測する工程である。品質予測工程では、例えば、粒度に係る品質として、評価対象の骨材の粗粒率が予測される。品質予測工程は、例えば、撮像データ取得工程と、評価情報取得工程と、予測工程と、を含む。
【0078】
撮像データ取得工程は、予測対象の粒度に係る品質が未知の評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データ(撮像画像)を取得する工程である。評価情報取得工程は、上記撮像画像データに基づく評価入力情報を取得する工程である。例えば、評価入力情報として、撮像画像データがそのまま取得され、あるいは、撮像画像に対して加工が施された後の画像データが取得される。
【0079】
予測工程は、予測モデルMと、評価入力情報とに基づいて、粒度に係る品質を示す値(例えば、粗粒率)を算出する工程である。予測工程では、予測モデルMに対して評価入力情報を入力して、粗粒率に関して予測モデルMから出力される予測値が取得されてもよい。また、予測工程では、予測モデルMに対して評価入力情報が入力されて、質量分率に関して予測モデルMから出力される予測値が粒度区分ごとに取得されてもよい。予測工程では、粒度区分ごとの質量分率の予測値から、評価対象の骨材の粗粒率が算出されてもよい。例えば、上記式(1)に従って、粒度区分ごとの質量分率の予測値から粗粒率が算出される。
【0080】
配合算出工程は、品質予測工程での予測結果に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出する工程である。コンクリートの配合としては、例えば、細骨材率、粗骨材かさ容積、又は、コンクリートの単位水量が挙げられる。これら3種の配合のうちの1種の配合の補正値が算出されてもよく、2種以上の配合の補正値が算出されてもよい。細骨材率は、コンクリート中の全骨材(細骨材+粗骨材)に対する細骨材の絶対容積比であり、例えば、百分率(%)で表される。粗骨材かさ容積は、コンクリート1m3を作るときの粗骨材のかさの容積である。コンクリートの単位水量は、コンクリート1m3あたりの水の質量である。以下、コンクリートの配合として、細骨材率の補正値を算出する場合を例示する。配合算出工程では、例えば、品質予測工程での粗粒率の予測値に応じて、細骨材率の補正値が算出される。細骨材率の補正値は、細骨材率そのものの値であってもよく、細骨材率の標準値からの増減幅であってもよい。
【0081】
上記製造支援方法における配合算出工程では、評価対象の骨材の粗粒率の予測値に応じて、細骨材率の配合の補正値が算出される。なお、補正値の算出には、細骨材率の変更が必要ない場合に、補正値を標準値として算出すること、又は、補正値として増減幅をゼロと算出することが含まれる。
【0082】
配合算出工程では、粗粒率の予測値が基準値と乖離する場合において、以下のように補正値が算出されてもよい。粗粒率の予測値(予測結果)が基準値よりも小さい場合には、粗粒率の予測値と当該基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が小さくなるように細骨材率の補正値が算出されてもよい。粗粒率の予測値(予測結果)が上記基準値よりも大きい場合には、粗粒率の予測値と基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が大きくなるように細骨材率の補正値が算出されてもよい。
【0083】
結果出力工程は、配合算出工程での補正値の算出結果を出力する工程である。例えば、配合の補正値の算出結果が、モニタ14等、又は、製造システム100における制御装置に対して出力される。補正値の算出結果がモニタ14に表示される場合には、オペレータ等のユーザが、その結果を見て、必要に応じて、コンクリートの配合の設定値を変更してもよい。あるいは、製造システム100における制御装置が、補正値の算出結果に応じて、コンクリートの配合の設定値を調整してもよい。
【0084】
図7には、上記製造支援方法において実行される一連の処理が示されている。製造支援装置1は、最初にステップS11,S12を実行する。ステップS11では、例えば、品質予測部21の画像データ取得部24が、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する。ステップS12では、例えば、評価情報取得部26が、ステップS11で得られた撮像画像データに基づいて、予測モデルMへの入力情報となる評価入力情報を取得する。
【0085】
次に、製造支援装置1は、ステップS13を実行する。ステップS13では、例えば、予測演算部30が、予測モデルMと、ステップS12で得られた評価入力情報とに基づいて、品質の予測値として粗粒率の予測値を算出する。予測演算部30は、予測モデルMから直接出力される粗粒率の予測値と、予測モデルMから出力される粒度区分ごとの質量比率から算出される粗粒率の予測値とに基づいて(例えば、平均値を求めることで)、粗粒率の予測値を算出してもよい。
【0086】
次に、製造支援装置1は、ステップS14を実行する。ステップS14では、例えば、配合算出部42が、ステップS13で算出された粗粒率に応じて、コンクリートの配合(例えば、細骨材率)の補正値を算出する。配合算出部42は、上記配合算出工程で説明したように、配合の変更後に管理対象の骨材の粗粒率が許容範囲内に収まるように、細骨材率の配合の補正値を算出してもよい。
【0087】
次に、製造支援装置1は、ステップS15を実行する。ステップS15では、例えば、結果出力部44が、ステップS14で算出された補正値と、ステップS13での予測結果とをモニタ14に表示させる。
図8には、ステップS15が実行されることで、モニタ14に表示される画面が例示されている。結果出力部44は、粗粒率の予測値を示す情報82bと、細骨材率の補正値を示す情報82cとをモニタ14に表示させてもよい。情報82cには、細骨材率の標準値が含まれてもよい。結果出力部44は、情報82b及び情報82cに加えて、ステップS11で得られた撮像画像データに係る撮像画像84をモニタ14に表示させてもよい。
【0088】
[変形例]
配合算出部42は、細骨材率に代えて、粗骨材かさ容積の補正値を算出してもよい。配合算出部42は、例えば、粗粒率の予測値が大きくなるに従って、補正後の粗骨材かさ容積が小さくなるように上記補正値を算出し、粗粒率の予測値が小さくなるに従って、補正後の粗骨材かさ容積が大きくなるように上記補正値を算出する。粗粒率の予測値(予測結果)が基準値よりも小さい場合には、粗粒率の予測値と当該基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が小さくなるように粗骨材かさ容積の補正値が算出されてもよい。粗粒率の予測値(予測結果)が上記基準値よりも大きい場合には、粗粒率の予測値と基準値との差分に応じて、骨材全体の量に対する細骨材の量の割合が大きくなるように粗骨材かさ容積の補正値が算出されてもよい。
【0089】
配合算出部42は、細骨材率に代えて、コンクリートの単位水量の補正値を算出してもよい。配合算出部42は、例えば、粗粒率の予測値が大きくなるに従って、補正後の単位水量が小さくなるように上記補正値を算出し、粗粒率の予測値が小さくなるに従って、補正後の単位水量が大きくなるように上記補正値を算出する。
【0090】
予測演算部30は、粗粒率に代えて又は加えて、骨材の過大粒量(細骨材[S]中の5mm以上分の質量割合)、及び、骨材の過小粒量(粗骨材[G]中の5mm以下分の質量割合)の少なくとも一方を、粒度に係る品質の予測値として算出してもよい。なお、過大粒量、過小粒量は、粒度区分ごとの質量分率から求めることができる。
予測演算部30は、予測モデルMから出力される粒度区分ごとの質量分率から、骨材の過大粒量、及び、骨材の過小粒量を算出してもよい。配合算出部42は、骨材の過大粒量の予測値に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出してもよく、骨材の過小粒量の予測値に応じて、コンクリートの配合の補正値を算出してもよい。
【0091】
例えば、過大粒量、及び、過小粒量に応じて、下記のようにコンクリートの配合が算出される。配合算出部42は、予測モデルMを用いて品質予測した細骨材の過大粒量、及び、粗骨材の過小粒量に基づき、コンクリート配合の計算(細骨材量または粗骨材量の補正値の算出)を行う。例えば、下記の式(3)及び式(4)によって、コンクリート配合を求めることができる。
【数3】
【数4】
【0092】
式(3)及び式(4)において、符号は下記を意味する。
・S:補正後の細骨材量(kg/m3)
・G:補正後の粗骨材量(kg/m3)
・S0:標準配合の単位細骨材量(kg/m3)
・G0:標準配合の単位粗骨材量(kg/m3)
・a:過大粒(%)
・b:過小粒(%)
【0093】
製造支援装置1による製造支援方法において、記録工程が更に実行されてもよい。記録工程は、品質予測工程において評価対象の骨材の粗粒率を算出する度に、粗粒率の予測結果に対して撮像画像データを対応付けたうえで、粗粒率の予測結果と撮像画像データとを記録する工程である。すなわち、記録工程では、評価対象の骨材の粗粒率に関する1回の予測ごとに、その予測で用いた撮像画像データ(撮像画像)と、その予測での粗粒率の予測値とが、互いに紐付けされたうえで記録される。例えば、製造支援装置1自身に、そのような紐付けされたデータが記録(記憶)されてもよい。
【0094】
繰り返し行われる粗粒率の予測(複数回の予測)において、評価対象の骨材の種類が異なってもよい。記録工程では、粗粒率の予測値、及び撮像画像データに加えて、予測実行日、予測時の環境(天候等)、又は評価対象の骨材の種類等の他の情報が紐付けられ、記録されてもよい。製造支援装置1の本体10は、機能ブロックとして、記録工程を実行する結果記録部46を有してもよい。
【0095】
図9(a)に示されるように、製造支援装置1は、ステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、結果記録部46が、予測演算部30による粗粒率の予測が実行されるまで待機する。次に、製造支援装置1は、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、結果記録部46が、予測演算部30による粗粒率の予測結果と、その予測結果を得た際に用いた撮像画像データとを、互いに対応付けた状態で記録する。
【0096】
製造支援装置1は、ユーザによる照会要求があった場合に、記録工程により記録されている情報をモニタ14に表示させてもよく、記録工程により記録されている情報をリスト化したファイルを生成してもよい。ユーザは、記録工程で記録された情報を閲覧等することで、予測結果と、その予測結果が得られた際の撮像画像とを容易に把握することができる。
【0097】
製造支援装置1による製造支援方法において、実績情報取得工程と、モデル更新工程とが更に実行されてもよい。実績情報取得工程は、評価対象の骨材(予測モデルMを用いた予測の対象であり、ユーザが粗粒率を管理する対象の骨材)に対応する実測対象の骨材(評価対象の骨材と同種の骨材)から得られる粗粒率の実測値と、当該実測値に対応付けられた、実測対象の骨材の画像データと、を取得する工程である。粗粒率の実測値とは、骨材の一部をサンプルとして抜き取り、作業員がふるいを用いて粗粒率を実測することで得られる値では、例えば、現行の生コンクリート工場では、1週間に1回以上、管理対象の骨材の粗粒率が実測されている。実績情報取得工程では、例えば、ユーザによる入力に基づいて、上記実測値と、その実行値に対応付けられた画像データとが取得される。
【0098】
モデル更新工程は、実測情報取得工程で得られたデータ(上記実測値及び画像データのデータセット)に基づいて、予測モデルMを更新する工程である。モデル更新工程は、1つのデータセットが得られると実行されてもよく、2以上のデータセットが得られると実行されてもよい。上記実測値は機械学習において正解データとなり、上記画像データに基づく情報は、学習用の入力情報となる。モデル更新工程は、例えば、これまでに用いられた学習用データに、新しく得られたデータセットを加えたうえで、再度、機械学習が実行されて予測モデルMが更新される。予測モデルMの更新では、一例として、予測モデルMにおける係数が調整される。
【0099】
製造支援装置1の本体10は、機能ブロックとして、実績情報取得工程を実行する実測情報取得部36と、モデル更新工程を実行するモデル更新部38と、を有してもよい。
図9(b)に示されるように、製造支援装置1は、ステップS31を実行する。ステップS31では、例えば、モデル更新部38が、実測情報取得部36による実績情報の取得(ユーザによる実績の入力)が実行されるまで待機する。
【0100】
次に(実績情報の取得が行われると)、製造支援装置1は、ステップS32を実行する。ステップS32では、例えば、モデル更新部38が、モデルの更新を行う更新条件を満たすか否かを判定する。モデル更新部38は、実測値と画像データとを含むデータセットが、所定数だけ新しく取得されると、更新条件を満たすと判定してもよい。所定数は、例えば、ユーザにより予め定められている。所定数に満たない場合は、モデル更新部38は、更新条件を満たさないと判定してもよい。更新条件が満たさないと判定された場合(ステップS32:NO)、製造支援装置1が実行する処理は、ステップS31に戻る。
【0101】
更新条件を満たすと判定された場合(ステップS32:YES)、製造支援装置1が実行する処理は、ステップS33に進む。ステップS33では、例えば、モデル更新部38が、実測情報取得部36により取得された1以上の上記データセットを用いて、予測モデルM(より詳細には、予測モデルMのうちの粗粒率の直接予測に関する部分)の更新を行う。以上のように、定期的に得られる計測が行われる実測値と、その実測値を得た際の画像データとを取得することで、機械学習のための学習用のデータが容易に得られる。
【0102】
製造支援装置1による撮像支援方法において、撮像工程と、品質予測出力工程と、が更に実行されてもよい。撮像工程は、評価対象の骨材に対する複数回の撮像を実行する工程である。複数回の撮像それぞれにおいて、評価対象の骨材に対するカメラ16による撮像が行われる。複数回の撮像では、同じ種類の骨材ではあるが、異なる試料がカメラ16により撮像されてもよい。異なる試料には、骨材に含まれる粒の個体が異なることに加えて、同じ個体であっても堆積状態が異なることも含まれる。複数回の撮像では、同じ種類の骨材による同じ試料(堆積状態も同じ試料)がカメラ16により撮像されてもよい。撮像工程では、例えば、運搬装置104のベルトコンベアが動作している状態で、固定された位置からカメラ16により連続した撮像が実行される。連続した撮像には、カメラ16が動画データを取得することも含まれる。
【0103】
複数回の撮像それぞれについて、上記評価情報取得工程(撮像画像データに基づく評価入力情報の取得)と、上記予測工程(評価入力情報と予測モデルMとを用いた粗粒率の予測)が実行される。すなわち、1回の撮像ごとに、撮像画像データから評価入力情報が得られ、その評価入力情報と予測モデルMとによって粗粒率が予測される。
【0104】
品質予測出力工程は、上記複数回の撮像それぞれについての予測工程での粗粒率の算出結果の平均値を、粗粒率の予測結果として出力する工程である。例えば、3回の撮像を行う場合を考えると、1回目の撮像で得られる粗粒率の予測値、2回目の撮像で得られる粗粒率の予測値、及び、3回目の撮像で得られる粗粒率の予測値を算術平均して得られる値が、最終的な予測結果(予測値)として出力される。品質予測出力工程では、上記平均値がモニタ14に出力されてもよく、製造システム100における制御装置に出力されてもよい。結果出力部44が、品質予測出力工程を実行してもよい。
【0105】
図10に示されるように、製造支援装置1は、ステップS51を実行する。ステップS51では、例えば、製造支援装置1(本体10)が、ユーザによる予測の実行指示があるまで待機する。次に、製造支援装置1は、ステップS52,S53を実行する。ステップS52では、例えば、ユーザがカメラ16(又は、製造支援装置1を構成するスマートフォン)を用いて、評価対象の骨材から得られる試料の撮像を行う。これにより、上記試料に関する撮像画像データが得られる。ステップS53では、例えば、予測演算部30が、ステップS52で得られた撮像画像データに基づく評価入力情報と、予測モデルMとを用いて、評価対象の骨材の粗粒率の予測値を算出する。
【0106】
次に、製造支援装置1は、ステップS54を実行する。ステップS54では、例えば、製造支援装置1(本体10)が、ステップS52とステップS53とのセットを設定回数だけ実行したか否かを判断する。ステップS54において、設定回数だけ実行していないと判断された場合には(ステップS54:NO)、製造支援装置1は、ステップS52及びステップS53のセットを再度実行する。設定回数は、例えば、ユーザにより予め設定されている。
【0107】
ステップS54において、ステップS52とステップS53とのセットが設定回数だけ実行されたと判断された場合(ステップS54:YES)、製造支援装置1は、ステップS55を実行する。ステップS55では、例えば、結果出力部44が、繰り返し実行されたステップS53ごとに算出された予測値の算出平均を求めたうえで、求めた平均値をモニタ14等に出力する。以上のように、1回の予測における予測値ではなく、複数回の予測(撮像)における複数の予測値の平均を求めて、その平均値を出力することで、ある瞬間又はある条件での影響が低減されて、安定した予測値を得ることができる。
【0108】
図7等のそれぞれに示される一連の処理は、一例であり、適宜変更可能である。製造支援装置1は、
図7等のそれぞれに示される一連の処理において、一のステップと、次のステップとを並列に実行してもよく、
図7等に示される例とは異なる順序で一部のステップを実行してもよく、
図7等に示される例とは異なる内容のステップを実行してもよい。
【0109】
品質予測部21に含まれる機能ブロックを実現するコンピュータと、品質予測部21に含まれない機能ブロックを実現するコンピュータとが、別体であってもよい。
図3に示される各種の機能ブロックのうちの、どの機能ブロックが、品質予測部21に含まれる要素であってもよい。品質予測部21に含まれる要素として説明した機能ブロックの一部が、品質予測部21に含まれる要素でなくてもよい。
【0110】
製造支援装置1は、ユーザが操作可能なスマートフォン等の端末装置と通信ネットワークを介して接続されるサーバであってもよい。製造支援装置1が備える結果出力部44は、製造支援装置1以外の装置である端末装置が有するモニタに、各種情報を表示してもよい。上記サーバとしての製造支援装置1は、ユーザが操作する端末装置から閲覧及びアクセスが可能なWebページ等をユーザに対して提示することで、端末装置との間で情報の受け渡しを行ってもよい。あるいは、Webページに代えて、製造支援装置1と連携するアプリケーションが端末装置に準備されたうえで、上記サーバとしての製造支援装置1が、その端末装置に対して情報を提供してもよい。
【0111】
上述した予測モデルMは一例であり、予測モデルMは、骨材の画像データに基づく情報から、少なくとも、複数の粒度区分についての質量分率に関する複数の予測値、又は粗粒率を出力可能であれば、どのようなモデルであってもよい。予測モデルMへの入力データには、評価入力情報に加えて、質量分率又は粗粒率に影響を及ぼし得る物理量を示す情報が含まれていてもよい。
【0112】
以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例において説明した事項の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…製造支援装置、14…モニタ、21…品質予測部、26…評価情報取得部、30…予測演算部、36…実測情報取得部、38…モデル更新部、42…配合算出部、46…結果記録部、M…予測モデル。