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特開2025-19852品質予測方法、品質予測プログラム、及び、品質予測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019852
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】品質予測方法、品質予測プログラム、及び、品質予測装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20250131BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20250131BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250131BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
G01N33/38
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123705
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 庸行
(72)【発明者】
【氏名】玉滝 浩司
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096DA02
5L096EA14
5L096FA59
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】品質を予測するための作業の簡便化を図る。
【解決手段】本開示の一側面に係る品質予測方法は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、品質予測方法。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、
品質予測方法。
【請求項2】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、
品質予測方法。
【請求項3】
前記画像補正工程では、前記撮像画像のうちの前記距離データに応じた範囲が抽出されることで、前記補正画像が取得される、請求項1又は2に記載の品質予測方法。
【請求項4】
前記画像取得工程では、前記評価対象の骨材と共に、所定サイズのマーカ部材が撮像されて前記撮像画像データが取得され、
前記距離取得工程では、前記撮像画像における前記マーカ部材の大きさに基づいて、前記距離データが取得される、請求項1又は2に記載の品質予測方法。
【請求項5】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、
をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
【請求項6】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、
をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
【請求項7】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像データ取得部と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離データ取得部と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正部と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を備える、
品質予測装置。
【請求項8】
評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像データ取得部と、
前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離データ取得部と、
前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正部と、
学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を備える、
品質予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、品質予測方法、品質予測プログラム、及び、品質予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土の粒度分布の推定方法が開示されている。特許文献2には、骨材の品質推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-117625号公報
【特許文献2】特開2021-135199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、品質を予測するための作業の簡便化に有用な品質予測方法、品質予測プログラム、及び、品質予測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、品質予測方法。
予測モデルによる品質予測の精度の観点からは、予測モデルを構築する学習フェーズでのカメラと学習用の骨材との間の距離に合わせて、撮像画像データを得る際の評価対象の骨材に対するカメラの位置を調整することが望ましい。しかしながら、カメラの位置を合わせる作業は煩雑となる場合もあり、また、評価対象の骨材を撮像する際のカメラの位置に制約がある場合もある。これに対して、上記方法では、距離データに基づいて撮像画像が補正されて補正画像が取得され、その補正画像に基づく情報が予測モデルへの入力となる。この場合、距離データの違いを除くように補正することで、予測モデルによる予測精度への影響を低減できる。その結果、評価対象の骨材を撮像する際に、カメラの配置に関する作業の手間が減り、また制約が少なくなる。従って、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【0006】
[2]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、を含む、品質予測方法。
この品質予測方法は、上記[1]に記載の方法と同様に、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【0007】
[3]前記画像補正工程では、前記撮像画像のうちの前記距離データに応じた範囲が抽出されることで、前記補正画像が取得される、上記[1]又は[2]に記載の品質予測方法。
この場合、距離データの違いに伴う、画像内での相対的な骨材の粒の大きさの相異を縮小させることができる。
【0008】
[4]前記画像取得工程では、前記評価対象の骨材と共に、所定サイズのマーカ部材が撮像されて前記撮像画像データが取得され、前記距離取得工程では、前記撮像画像における前記マーカ部材の大きさに基づいて、前記距離データが取得される、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の品質予測方法。
この場合、撮像画像データを取得する際には、単にマーカ部材が写るように撮像を行えばよいので、予測モデルを用いた品質の予測を行う作業の効率化を図ることができる。
【0009】
[5]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
この品質予測プログラムは、上記[1]に記載の方法と同様に、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【0010】
[6]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像取得工程と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離取得工程と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正工程と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測工程と、をコンピュータに実行させる品質予測プログラム。
この品質予測プログラムは、上記[2]に記載の方法と同様に、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【0011】
[7]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像データ取得部と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離データ取得部と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正部と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を備える、品質予測装置。
この品質予測装置は、上記[1]に記載の方法と同様に、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【0012】
[8]評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する画像データ取得部と、前記評価対象の骨材を撮像した際の、前記評価対象の骨材とカメラとの距離を表す距離データを取得する距離データ取得部と、前記距離データに基づいて前記撮像画像データに係る撮像画像を補正することで、補正画像を取得する画像補正部と、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、前記入力情報の入力に応じて、前記複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築された予測モデルと、前記補正画像に基づく評価入力情報と、に基づいて、前記評価対象の骨材の粗粒率を算出する予測演算部と、を備える、品質予測装置。
この品質予測装置は、上記[1]に記載の方法と同様に、品質を予測するための作業の簡便化に有用である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、品質を予測するための作業の簡便化に有用な品質予測方法、品質予測プログラム、及び、品質予測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、生コンクリートの製造システム、及び品質予測装置を例示する模式図である。
図2図2は、品質予測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、品質予測装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4(a)は、予測モデルを用いた予測演算の一例を模式的に示す図である。図4(b)は、学習用の画像データを取得する様子を模式的に示す断面図である。
図5図5は、学習用の画像データの一例を示す図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、予測値と正解値との比較結果の一例を示すグラフである。
図7図7は、品質予測装置が実行する一連の処理の一例を示すフロー図である。
図8図8は、画像補正を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1には、一実施形態に係る品質予測装置と、その品質予測装置が用いられる生コンクリートの製造システムが模式的に示されている。
【0016】
[生コンクリートの製造システム]
最初に、生コンクリートの製造システムについて、その概要を説明する。図1に示される製造システム100は、生コンクリートを製造するシステムである。製造システム100は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造(生成)する。
【0017】
製造システム100において用いられるコンクリート材料は、セメント、混和材、粗骨材、細骨材、水、及び混和剤等を含む。粗骨材としては、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、再生粗骨材、回収骨材、又はこれらを混合した粗骨材が挙げられる。砂利は、山砂利、陸砂利、川砂利、又は海砂利などである。スラグ粗骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量粗骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。粗骨材は、砕岩砕石、又は石灰砕石を含んでもよい。
【0018】
細骨材としては、例えば、砂、砕砂、スラグ細骨材、軽量細骨材、再生細骨材、回収骨材、又はこれらを混合した細骨材が挙げられる。砂は、山砂、陸砂、川砂、又は海砂などである。スラグ細骨材は、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、又は石炭ガス化スラグ骨材などである。軽量細骨材は、天然軽量骨材、副産軽量骨材、又は人工軽量骨材などである。
【0019】
砕石、及び砕砂の岩種には、例えば、火成岩類、堆積岩類、変成岩類、珪石、石灰岩、ドマロイト、又はかんらん岩などがある。火成岩類は、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、ひん岩、輝緑岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、又は蛇紋岩などである。堆積岩類は、礫岩、砂岩、頁岩、粘板岩、又は凝灰岩などである。変成岩類は、片麻岩、又は結晶片岩などである。本開示では、粗骨材及び細骨材を総称して、「骨材」と称する場合がある。この場合、「骨材」は、粗骨材、細骨材、又は、粗骨材及び細骨材の両方を意味する。
【0020】
製造システム100は、製造した生コンクリートを運搬車200に積み込む。運搬車200は、生コンクリートが積み込まれた後に、生コンクリートが使用される現場(例えば、工事現場)まで生コンクリートを運搬する。運搬車200としては、例えば、アジテータ車(ミキサ車)、又はダンプトラックが挙げられる。製造システム100は、現場ごとに設定された目標品質(要求品質)を満たすように、コンクリート材料から生コンクリートを製造してもよい。一例では、生コンクリートの目標品質は、スランプ、又はスランプフローの目標値を含む。製造システム100は、例えば、材料置場101と、運搬装置104と、製造装置110と、を備える。
【0021】
材料置場101は、コンクリート材料を貯蔵する場所である。材料置場101は、複数のサイロ102を含む。複数のサイロ102は、コンクリート材料の少なくとも一部を、材料の種類ごとに貯蔵する容器である。複数のサイロ102は、粗骨材を貯蔵するサイロ102と、細骨材を貯蔵するサイロ102と、セメントを貯蔵するサイロ102とを含む。
【0022】
運搬装置104は、複数のサイロ102に貯蔵されたコンクリート材料を、製造装置110まで運搬する装置である。運搬装置104は、例えば、コンクリート材料を搬送するベルトコンベアを含む。運搬装置104は、互いに異なるタイミングで、材料の種類ごとにコンクリート材料を運搬してもよい。一例では、製造システム100が備える制御装置による動作指示に基づいて、各種コンクリート材料のうちの特定の材料が運搬装置104に移され、製造装置110まで搬送される。
【0023】
製造装置110は、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する装置である。製造装置110は、例えば、貯蔵瓶111と、計量瓶112と、集合ホッパ113と、ミキサ114と、積込ホッパ115と、を備える。
【0024】
貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を一時的に貯蔵する。貯蔵瓶111には、材料置場101から、運搬装置104によって各種のコンクリート材料が運搬(搬送)される。貯蔵瓶111は、各種のコンクリート材料を個別に貯蔵するように構成されている。以下、「コンクリート材料」を単に「材料」と表記する場合がある。貯蔵瓶111に貯蔵されている各種材料は、必要に応じて計量瓶112に供給される。
【0025】
計量瓶112は、貯蔵瓶111の下方に配置されている。計量瓶112は、制御装置からの動作指示に基づいて動作し、各種材料を個別に計量する。計量瓶112は、制御装置から指示された目標量の材料を検知すると、その材料を集合ホッパ113に供給する。水が計量瓶112に供給される際に、その水に混和剤が混合されてもよい。集合ホッパ113は、計量瓶112の下方に配置されている。集合ホッパ113は、計量瓶112から排出される各種材料を集約し、集約した各種材料をミキサ114に供給する。なお、集合ホッパ113が備えられなくてもよく、この場合、計量瓶112から各種材料がミキサ114に供給される。
【0026】
ミキサ114は、集合ホッパ113の下方に配置されている。ミキサ114は、コンクリート材料を練り混ぜる装置である。ミキサ114は、骨材、セメント、水、及び混和剤等を練り混ぜる(混練する)ことで、生コンクリートを製造する。ミキサ114の底部から、生コンクリートが積込ホッパ115に排出される。積込ホッパ115は、ミキサ114の下方に配置されており、生コンクリートを一時的に収容する。積込ホッパ115は、一時的に収容した生コンクリートを運搬車200に供給する。
【0027】
以上に説明した製造システム100は、生コンクリートの製造システムの一例であり、生コンクリートの製造システムは、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造可能であれば、どのように構成されていてもよい。
【0028】
[品質予測装置]
品質予測装置1は、コンクリート材料に含まれる骨材の品質として、骨材の粗粒率を予測する装置である。品質予測装置1による品質の予測対象である骨材の粒径は、土の粒径とオーダーが異なっている。品質予測装置1は、1以上のコンピュータによって構成されている。品質予測装置1を構成するコンピュータは、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ(タブレット端末)、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、ワークステーション、サーバコンピュータ、又は、汎用コンピュータであってもよい。品質予測装置1は、有線又は無線を介して、通信ネットワークに接続されてもよい。
【0029】
品質予測装置1は、例えば、本体10と、入力デバイス12と、モニタ14と、カメラ16と、を備える。本体10は、品質予測装置1を構成するコンピュータの主たる機能を実行する装置(コンピュータ本体)である。
【0030】
入力デバイス12は、本体10に情報を入力するための装置である。入力デバイス12は、所望の情報を入力可能であればいかなるものであってもよく、その具体例としては、キーパッド、マウス、及び操作コントローラなどの操作インターフェースが挙げられる。
【0031】
モニタ14は、本体10から出力された情報を表示するための装置である。モニタ14は、グラフィック表示が可能であればいかなるものであってもよく、その具体例としては液晶パネルが挙げられる。モニタ14及び入力デバイス12は、タッチパネルとして一体化されていてもよい。
【0032】
カメラ16は、骨材を撮像することが可能な装置である。カメラ16は、骨材を撮像することで画像データを生成する。カメラ16は、例えば、可視光に基づき撮像範囲を撮像するデジタルカメラ、又はビデオカメラである。カメラ16によって生成された画像データは、骨材の品質を予測する際に用いられる。カメラ16が、撮像対象の動画を生成する場合、その動画に含まれる静止画が画像データとして取得されてもよい。
【0033】
カメラ16は、製造システム100において、特定箇所にある骨材を撮像することができるように配置されてもよい。カメラ16は、例えば、運搬装置104によって運搬されている骨材を撮像可能となるように配置されてもよい。カメラ16は、持ち運び可能であってもよく、作業員等のユーザが、カメラ16を撮像位置まで運んでもよい。ドローン等の移動体にカメラ16が搭載されてもよく、ユーザによる移動体の操縦等により、製造システム100における任意の箇所においてカメラ16が撮像を行ってもよい。
【0034】
品質予測装置1において、カメラが内蔵(搭載)されたスマートフォン、又はカメラが内蔵されたタブレットコンピュータのように、本体10、入力デバイス12、モニタ14、及びカメラ16が一体化されてもよい。一例では、スマートフォンに対して、骨材の品質を予測するためのアプリケーションがインストールされることで、品質予測装置1が構成される。
【0035】
図2に示されるように、本体10は、回路50を備える。回路50は、プロセッサ51と、メモリ52と、ストレージ53と、入出力ポート54と、を有する。ストレージ53は、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の1以上の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。ストレージ53は、少なくとも、画像取得工程、距離取得工程、画像補正工程、及び予測工程をコンピュータに実行させる品質予測プログラムを記憶している。品質予測プログラムは、特定工程と、結果表示工程と、をコンピュータに更に実行させてもよい。これらの工程の詳細については後述する。ストレージ53は、本体10の各機能ブロックを構成するための品質予測プログラムを記憶する。
【0036】
メモリ52は、例えばランダムアクセスメモリ等の1以上の揮発性メモリデバイスにより構成されている。メモリ52は、ストレージ53からロードされた品質予測プログラムを一時的に記憶する。プロセッサ51は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の1以上の演算デバイスにより構成されている。プロセッサ51は、メモリ52にロードされた品質予測プログラムを実行することで、本体10の各機能ブロックを構成する。プロセッサ51による演算結果は一時的にメモリ52に格納される。入出力ポート54は、プロセッサ51からの要求に応じ、入力デバイス12、モニタ14、及びカメラ16等との間で情報の入出力を行う。
【0037】
品質予測プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、品質予測プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。本体10(品質予測装置1)は、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータによって構成されてもよい。本体10(品質予測装置1)は、製造システム100に含まれる制御装置の一部の要素であってもよい。
【0038】
図3には、本体10が備える機能上の構成要素(本開示において「機能ブロック」という。)の一例が示されている。本体10は、機能ブロックとして、ユーザ入力取得部22と、画像データ取得部24と、距離データ取得部38と、評価情報取得部26と、予測モデル保持部28と、予測演算部30と、表示出力部32と、を備える。これらの機能ブロックが実行する処理は、本体10(品質予測装置1)が実行する処理に相当する。
【0039】
ユーザ入力取得部22は、評価対象の骨材の粗粒率の予測に必要なユーザからの入力を示すユーザ入力情報を取得するように構成されている。ユーザ入力取得部22は、モニタ14に表示されたインターフェース用の画面へのユーザ入力に基づいて、ユーザ入力情報を取得してもよい。
【0040】
画像データ取得部24は、評価対象の骨材を撮像して生成される撮像画像PIに係る画像データ(以下、「撮像画像データ」という。)を取得するように構成されている。画像データ取得部24は、カメラ16によって撮像して得られる撮像画像データ(撮像画像PI)を取得する。
【0041】
距離データ取得部38は、評価対象の骨材を撮像した際の(上記撮像画像PIを得た際の)、評価対象の骨材とカメラ16との距離を表す距離データを取得する。距離データ取得部38は、撮像画像PIに対する画像処理、又は、画像の入力に対してカメラとの距離を示す情報を出力するように機械学習により構築された学習済みモデルにより、距離データを取得してもよい。距離データ取得部38は、カメラ16に併設された計測装置19(図1参照)による計測結果から、距離データを取得してもよい。計測装置19としては、例えば、TOFカメラ、ステレオビジョン、及びストラクチャードライトといったDepthセンサ、並びに、レーザ変位計、及び超音波センサといった距離センサが挙げられる。
【0042】
評価情報取得部26は、距離データに基づいて撮像画像PIを補正することで、補正画像EIを取得し、補正画像EIに基づく評価入力情報を取得する。評価情報取得部26は、撮像画像PIを補正して補正画像EIを取得する画像補正部として機能する。撮像画像PIの補正については後述する。評価情報取得部26は、例えば、補正画像EIに係る画像データをそのまま、評価入力情報として取得してもよく、補正画像EIに係る画像データに対して加工、又はデータの追加が行われることで得られた情報を評価入力情報として取得してもよい。
【0043】
予測モデル保持部28は、評価対象の骨材の粗粒率を予測するためのモデル(以下、「予測モデルM」という。)を保持するように構成されている。予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習用の画像データ(学習画像データ)に基づく入力情報と、当該入力情報に対応付けられた骨材の品質を示す品質値の正解値に基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、上記品質値の予測値を出力するように構築されたモデルである。上記品質値は、例えば、粗粒率、骨材の粒度区分に含まれる粒度区分ごとの質量分率、又は、粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率の両方である。
【0044】
機械学習とは、機械(コンピュータ)が与えられた情報に基づいて反復的に学習することで、法則又はルールを自律的に見つけ出す手法をいう。予測モデルMは、アルゴリズム及びデータ構造を用いて構築することができる。予測モデルMは、例えば、人間の脳神経の仕組みを模した情報処理のモデルであるニューラルネットワークを用いて実現される。予測モデルMを構築する際に行われる機械学習の具体的なアルゴリズムは特に限定されない。ニューラルネットワークは、入力層と、1以上の中間層と、出力層とを有する。1以上の中間層を含むことでより複雑な予測モデルMを構築でき、予測精度を向上できる。
【0045】
予測モデルMは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いた機械学習により構築されていてもよい。予測モデルMは、上記品質値の正解値に基づく機械学習により構築される。予測モデルMは、上記入力情報に応じて、上記品質値として、粗粒率のみ、複数の粒度区分に含まれる粒度区分ごとの質量分率を示す値のみ、又は、粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率との双方を出力してもよい。粒度区分ごとの質量分率を出力する場合、予測モデルMは、複数の粒度区分について、それぞれが質量分率を示す複数の値を出力する。以下では、予測モデルMが、粗粒率、及び粒度区分ごとの質量分率の双方を出力する場合を例示する。
【0046】
予測モデルMは、例えば、機械学習の入力として与えられるデータと、機械学習の出力の正解データ(上記品質値の正解値)とを用いた機械学習が行われることで、上記品質値を予測するために構築される。機械学習の入力は、学習用の骨材を撮像して得られる学習用の画像データに基づく入力情報の種々のデータセットである。入力情報の種々のデータセットでは、入力情報に含まれる少なくとも画像データが互いに異なっている。機械学習の出力は、粗粒率等の品質値を示すデータ(数値)である。予測モデルMを構築する際には、入力情報及び粗粒率等の正解値の複数の組合せを用いて、上記品質値の予測値が出力されるモデルが反復的に学習される。
【0047】
予測モデルMを自律的に構築する段階は、学習フェーズに相当する。上記学習フェーズが、製造システム100において生コンクリートの製造を行う生産フェーズの前に行われてもよく、又は、生産フェーズの初期段階で行われてもよい。学習済みのモデルである予測モデルMは、コンピュータ間で移植可能である。従って、他の装置において構築された予測モデルMが、予測モデル保持部28に記憶されてもよい。品質予測装置1が予測モデルMを用いて評価対象の骨材の粗粒率を予測する段階は、評価フェーズに相当する。
【0048】
予測演算部30は、評価入力情報と、予測モデルMとに基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出するように構成されている。予測演算部30は、例えば、評価入力情報を予測モデルMに対して入力して、予測モデルMから出力される予測値を取得する。例えば、予測演算部30は、粗粒率を示す予測値を予測モデルMから取得する。また、予測演算部30は、複数の粒度区分について、それぞれが質量分率の値を示す複数の予測値を予測モデルMから取得してもよい。予測演算部30は、粒度区分ごとの質量分率に関する予測値(複数の予測値)から粗粒率を算出してもよい。なお、予測演算部30は、信頼性評価のため、予測モデルMから粗粒率、それぞれが質量分率の値を示す複数の予測値の両方を取得し、予測モデルM毎に予測される粗粒率の比較をしてもよい。以上のように、予測モデルMを用いて異なる2つの方法で粗粒率の算出(予測)が行われることで、粗粒率の予測値の信頼性を評価することができる。
【0049】
表示出力部32は、予測演算部30による予測結果をモニタ14に表示させる。表示出力部32は、予測演算部30により算出された粗粒率の予測値をモニタ14に表示させてもよい。表示出力部32は、予測演算部30による予測の実行前に、距離データと、撮像画像PIから得られる補正画像EIとをモニタ14に表示させてもよい。
【0050】
<予測モデルM>
ここで、図4及び図5を用いて、粗粒率の予測に用いられる予測モデルMについて更に説明する。予測モデルMを構築する学習フェーズでは、製造システム100において用いられ、評価対象となり得る骨材と同じ種類の骨材が、学習用の骨材として用いられる。図4(a)には、入力情報である画像Imから、予測モデルMを用いて粗粒率を予測する演算過程が模式的に示されている。予測モデルMの入力は、画像Imであり、予測モデルMの出力は、複数の粒度区分それぞれの質量分率の予測値、及び粗粒率の予測値である。
【0051】
予測モデルMを構築する際には、機械学習を行うための学習用のデータが準備される。学習用のデータは、学習用の骨材を撮像して得られる各種の画像データ(入力情報)と、各種の画像データそれぞれに対応付けられた正解データとを含む。学習用の画像の準備では、例えば、粒度区分ごとの質量分率が既知である各種骨材が準備される。上記の各種骨材とは、骨材の種類が異なることではなく、粒度が互いに異なる同じ種類の骨材であることを意味する。
【0052】
一例では、計測用のシート132上に積み重ねられた状態で、学習用の各種骨材がカメラ130によって個別に撮像される(図4(b)を参照)。積み重ねられた状態(積み重なった状態)とは、鉛直上方から見て、骨材に含まれる一部の粒が、他の粒に重なっている状態をいう。カメラ130によって個別に撮像されることで、各種の骨材それぞれについて、学習用の画像データが得られる。カメラ130は、デジタルカメラであってもよく、計測用のシート132上の骨材から所定距離だけ離れた位置(例えば、上方の所定位置)から、積み重なった状態の骨材を含む範囲を撮像する。品質予測装置1(例えば、評価情報取得部26)は、学習用の画像データを得た際の、カメラ130と学習用の骨材との間の距離を示す情報を、基準撮像距離として記憶する。
【0053】
シート132は、ゴムシートであってもよい。図4(b)に示されるように、シート132は、運搬装置104のベルトコンベアを模して湾曲するように形成されたシートであってもよく、図4(b)に示される例とは異なり、フラット状に形成されたシートであってもよい。シート132に載せられる骨材の量は、特に限定されないが、1kg~10kg程度であってもよい。図4(b)では、シート132上に骨材が堆積した様子が模式的に例示されており、骨材の量が2kg、5kg、及び8kgである場合の堆積状態が示されている。なお、シート132は、ゴムシート以外の容器を使用することができる。縁のある容器であれば、カメラから骨材までの距離を算出した後に、距離の算出結果に基づき画像データのサイズを補正して、撮像された骨材の大きさを一律に調整するために利用できる観点でも好ましい。
【0054】
一例では、下記の表1に示される条件で各種骨材の試料が準備され、準備した試料を撮像することで学習用の画像が取得される。表1に示される条件で準備された各種骨材における粒度区分ごとの質量分率、及び粗粒率は既知であり、その既知の値が機械学習における正解データである。
【0055】
【表1】
【0056】
粗粒率(F.M)は、例えば、コンクリート標準仕方書で規定される下記の式(1)によって求められる。なお、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」に規定される計測では、式(1)における80mmを除いた9個のふるいが用いられる。本開示で予測される粗粒率は、いずれの方式によって規定されるものであってもよい。
【数1】
【0057】
表1においては、10水準の粒度(粗粒率)の骨材が準備されることを意味する。区分Iは、2.5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分Iには、2.5mmのふるいにとどまれない粒が分けられる。区分IIは、2.5mm以上、且つ5mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIには、2.5mmのふるいにとどまるが、5mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。区分IIIは、5mm以上、且つ10mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IIIには、5mmのふるいにはとどまるが、10mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。区分IVは、10mm以上、且つ20mmよりも小さい粒の粒度区分を表す。区分IVには、10mmのふるいにはとどまるが、20mmのふるいにはとどまれない粒が分けられる。
【0058】
水準1に関して、粒度区分ごとの質量分率(区分I~IVそれぞれの質量分率)から、粗粒率が以下のように求められる。水準1の骨材では、80mm、40mm、及び20mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ0であり、10mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が85であり、5mmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が100(=15+85)である。また、5mmのふるいに全ての粒がとどまるので、2.5mm、1.2mm、600μm、300μm、及び150μmのふるいにとどまる試料の質量の百分率が、それぞれ100である。そのため、粗粒率は、下記の式(2)のように演算される。
【数2】
【0059】
水準2~10に関しても、水準1での上記演算と同様にして粗粒率が求められる。なお、表1に示される学習用の骨材の条件は、あくまで一例であり、水準の個数、各水準での粗粒率及び粒度区分ごとの質量分率、及び粒度区分の設定方法は、任意に設定されてもよい。表1に示される複数の粒度区分のように、最小の区分(<150μm)を含む複数の区分での粒度が、1つの粒度区分にまとめられてもよい。ある区分(例えば、20~40mm)以上での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。また、表1の設定方法と異なり、ある区分(例えば、1.2~2.5μm)以下での粒度が、複数の粒度区分に含まれていなくてもよい。
【0060】
図5には、表1における水準1~10それぞれの条件に従って準備された学習用の骨材を撮像して得られる画像T1~T10が示されている。水準n(nは、1~10の整数)が、画像Tnに対応する。例えば、水準1に従って準備された学習用の骨材を撮像して画像T1が得られている。各水準nに従った学習用の骨材では、複数の粒度区分の粒が含まれている。このように、2以上の粒度区分の粒が含まれるように学習用の骨材が準備され、当該学習用の骨材を撮像して得られる画像データに基づき入力情報が準備されてもよい。
【0061】
各水準nに関して、学習用の骨材の状態(より詳細には、堆積状態)が互いに異なる複数の画像Tnが準備されてもよい。一例では、計測用のシート132上に学習用の骨材が載せられた状態で、1回目の撮像が行われることで、1つの画像Tnが取得される。そして、学習用の骨材がシート132の上から一時的に取り除かれて、多数の粒同士の堆積状態が1回目の撮像時と異なるように、シート132上に再度、同じ学習用の骨材(同じ試料)が載せられる。そして、2回目の撮像が行われる。上記のような撮像が繰り返されることで、各水準nに関して複数の画像Tnが準備されてもよい。
【0062】
1つの画像Tnと、その画像Tnに対応付けられた水準nでの質量分率及び粗粒率の正解データとによって、1つのデータセットが構成される。学習用のデータとして、それぞれが、画像Tnと質量分率及び粗粒率の正解データとの組み合わせからなる複数のデータセットが準備される。そして、そのような学習用のデータを用いた機械学習が行われることで、予測モデルMが構築される。以上のように構築された予測モデルMは、例えば、4つの粒度区分に関する4つの質量分率の値と、粗粒率の値とを出力する。
【0063】
粗粒率の値を出力する点に着目すると、予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた粗粒率の正解値に基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、粗粒率を示す値を出力するように構築されたモデルである。粒度区分ごとの質量分率の値を出力する点に着目すると、予測モデルMは、学習用の骨材を撮像して得られる学習画像データに基づく入力情報、及び当該入力情報に対応付けられた骨材の複数の粒度区分それぞれの質量分率の正解値に基づく機械学習により、上記入力情報の入力に応じて、複数の粒度区分に含まれる区分ごとに質量分率を示す値を出力するように構築されたモデルである。
【0064】
畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習による予測モデルMを用いた粗粒率の予測方法を検証するために、正解値が既知であるデータセットを用いて、予測モデルMによる予測結果と正解値との比較検証を行った。学習用の骨材は、上述の表1の条件に従って、粗粒率が互いに異なる10水準の骨材を準備した。1つの水準ごとに、計測用のシート132上での骨材の堆積状態が互いに異なる状態で、室内において10回の撮像を行って10個の画像を取得した。
【0065】
また、下記の表2に示す基準条件に従って、合計100枚の画像(10水準×10回の撮像)を準備した。これにより、学習用のデータとして、それぞれのデータセットにおいて画像と正解値とが対応付けられた100個のデータセットを準備した。
【0066】
【表2】
【0067】
100個のデータセットのうちの80個のデータセットを用いて、上記予測モデルMを構築し、20個のデータセットを検証に用いた。各水準において、8個のデータをモデル構築に使用し、2個のデータセットを検証に使用した。20個のデータセットを用いた検証では、データセットごとに、画像と予測モデルMとを用いて演算された予測結果と、当該画像に対応付けられた粗粒率等の正解値とを比較した。予測モデルMは、畳み込み層とプーリング層とから構成される中間層を6層設けたのち、4層の全結合層を設けた畳み込みニューラルネットワークにより構成した。また、損失関数にはHuber関数を使用した。なお、それぞれのデータセットでは、Image Augmentation層により画像の数を増加させた。
【0068】
図6(a)は、上記表1での区分III及び区分IVにおける質量比率(%)の予測値と、対応する質量分率(%)の正解値との関係を示すグラフである。図6(a)に示されるグラフにおいて、横軸が質量分率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される質量分率の予測値である。区分III(5mm~10mm)での予測結果が△印でプロットされており、区分IV(10mm~20mm)での予測結果が〇印でプロットされている。正解値と予測値とが一致する実線のラインが描かれており、プロットされた結果が、そのラインに近いほど、予測精度が高いことを意味する。図6(a)に示される結果から、上記ラインの近傍に予測結果がプロットされており、予測モデルMにより、質量比率を精度良く予測できていることがわかる。なお、質量分率によって粗粒率を求めることができるので、予測モデルMにより質量分率を精度良く予測できれば、粗粒率も精度良く予測できる。
【0069】
図6(b)は、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値と、粗粒率の正解値との関係を示すグラフである。図6(b)に示されるグラフにおいて、横軸が粗粒率の正解値であり、縦軸が、予測モデルMから出力される粗粒率の予測値である。予測結果が□印でプロットされている。実線のラインは、正解値と予測値とが一致するラインであり、そのラインから+0.10だけ縦方向にずれた破線の上限ラインと、-0.10だけ縦方向にずれた下限ラインとが描かれている。上限ラインと下限ラインとの間の領域に含まれる予測結果が、許容範囲内と定義している。現行の生コンクリート工場において許容されている粗粒率の誤差を参考に、±0.10の範囲を許容範囲として設定した。予測モデルMを用いた予測結果の全てが、許容範囲に含まれており、予測モデルMにより、粗粒率を精度良く予測できていることがわかる。
【0070】
[品質予測方法]
続いて、図7及び図8を参照しながら、品質予測装置1において実行される品質予測方法について説明する。以下、品質予測装置1が、カメラ付きのスマートフォンによって構成される場合を例に用いて、品質予測方法について説明する。この品質予測方法は、例えば、画像取得工程と、距離取得工程と、画像補正工程(評価情報取得工程)と、予測工程と、結果表示工程と、を含む。これらの工程は、いずれも評価フェーズにおいて実行される。これらの工程のそれぞれは、品質予測装置1において対応する機能ブロックによって実行されてもよい。学習フェーズにおいて、予測モデルMが構築されており、その予測モデルMを構築するために骨材を撮像した際のカメラと骨材との距離が記録される。
【0071】
画像取得工程は、評価対象の骨材を撮像して得られる撮像画像データを取得する工程である。画像取得工程では、評価対象の骨材と共に、所定サイズのマーカ部材MK(図8を参照)が撮像されて撮像画像データが取得されてもよい。マーカ部材MKは、評価対象の骨材と区別することが可能であれば、どのような形状であってもよく、カメラ16の画角内に収まり、予測モデルMによる予測に影響を及ぼさない程度の大きさを有する。マーカ部材MKは、長方形状、又は柱状等のブロック体であってもよく、板状(例えば、円板状)であってもよく、あるいは、評価対象の骨材(その試料)を入れる容器の縁、又は、評価対象の骨材を搬送するベルトコンベアの縁であってもよい。
【0072】
距離取得工程は、評価対象の骨材を撮像した際の、評価対象の骨材とカメラ16との距離を表す距離データを取得する工程である。距離取得工程は、例えば、撮像画像PI内のマーカ部材MKの大きさ(撮像画像PI内においてマーカ部材MKが占める領域の大きさ)に基づいて、距離データが取得されてもよい。なお、マーカ部材MKが用いられる場合、カメラ16による撮像時にマーカ部材MKの画像内の大きさを、ある基準に合わせるように撮像を行うものではなく、撮影時にはマーカ部材MKの画像内の大きさを考慮せずに撮像が行われる。そのため、撮像時にマーカ部材MKの画像内の大きさを調整する場合に比べて、評価対象の骨材を撮影する際のカメラ16の配置を柔軟に設定できる。マーカ部材MKに代えて、又は加えて、計測装置19による距離の計測結果に基づいて、距離データが取得されてもよい。距離取得工程では、ユーザ入力に基づいて距離データが取得されてもよく、カメラ16自身が有する位置情報に応じて、距離データが取得されてもよい。
【0073】
画像補正工程は、距離データに基づいて撮像画像データに係る撮像画像PIを補正することで、補正画像EIを取得する工程である。撮像画像PIの補正は、撮像距離の基準値(学習フェーズ実行時の撮像距離)と、距離データによって示される距離との差分に応じて、当該差分の影響が低減されるように行われる。すなわち、距離データに応じて、同じ大きさの粒であっても、撮像画像PI内における大きさ(撮像画像PI内において当該粒が占める領域)が異なる。撮像画像PI内における粒の大きさの差を縮小させるように、撮像画像PIの補正が行われる。
【0074】
例えば、画像補正工程では、撮像画像PIのうちの距離データに応じた範囲(画像内の一部)の範囲が抽出されることで、補正画像EIが得られる。撮像画像PIのうちの上記範囲内の画素値の集合が、補正画像EIとして抽出(生成)される。距離データが示す距離が大きくなるにつれて、上記範囲が小さくなるように抽出され、距離データが示す距離が小さくなるにつれて、上記範囲が大きくなるように抽出される。画像補正工程において、補正画像EIに基づき評価入力情報が取得されてもよい。
【0075】
予測工程は、予測モデルMと、補正画像EIに基づく評価入力情報とに基づいて、評価対象の骨材の粗粒率を算出する工程である。予測工程では、例えば、補正画像EIに基づく評価入力画像が予測モデルMに入力されて、その予測モデルMから出力される粗粒率の予測値が取得される。予測工程では、補正画像EIに基づく評価入力画像が予測モデルMに入力されて、その予測モデルMから出力される、粒度区分ごとの質量分率の予測値が取得されてもよい。そして、粒度区分ごとの質量分率の予測値から、粗粒率が算出されてもよい。
【0076】
結果表示工程は、予測工程での粗粒率の予測結果をモニタ14に表示させる工程である。結果表示工程では、予測モデルMから直接出力される粗粒率の予測値、及び、予測モデルMから出力される粒度区分ごとの質量分率から算出される粗粒率の予測値の少なくとも一方が、モニタ14に表示されてもよい。
【0077】
図7には、品質予測装置1が実行する一連の処理を示す処理フローが示されている。品質予測装置1は、最初にステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、画像データ取得部24が、カメラ16による評価対象の骨材の撮像により得られる撮像画像PIに係る撮像画像データを取得する。
【0078】
次に、品質予測装置1は、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、距離データ取得部38が、撮像画像PIに基づいて、又は、計測装置19による計測結果に基づいて、ステップS11を実行した際のカメラ16と評価対象の骨材との距離を示す距離データを取得する。図8に示されるように、距離データ取得部38は、撮像画像PI内のマーカ部材MKの大きさを検出して、その大きさに応じた距離データを取得する。なお、距離データ取得部38は、マーカ部材MKの大きさを示す情報そのものを、撮像距離を示す(撮像距離に相関する)距離データとして取得してもよい。
【0079】
次に、品質予測装置1は、ステップS13を実行する。ステップS13では、例えば、評価情報取得部26が、ステップS12で取得された距離データに基づいて、撮像画像PIを補正することで、補正画像EIを生成する。一例では、評価情報取得部26は、距離データ(例えば、マーカ部材MKの画像内での大きさ)に応じた範囲を撮像画像PIから切り取って、補正画像EIを生成する。
【0080】
図8には、撮像距離が基準値よりも大きい場合と、撮像距離が基準値に略一致する場合と、撮像距離が基準値よりも小さい場合とのそれぞれにおいて、撮像画像PI、マーカ部材MKの大きさ、及び補正画像EIの範囲(切り取る範囲)が例示されている。撮像距離が異なる3つの場合それぞれの補正画像EIが互いに略一致するサイズとなるように拡大又は縮小すると、補正画像EI内での骨材の粒の大きさの差が、元の撮像画像PIでの粒の差よりも縮小されている。なお、補正画像EIは、切り取り後、互いに略一致するサイズとなるように拡大又は縮小された後の画像であってもよい。
【0081】
次に、品質予測装置1は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば、予測演算部30が、ステップS13で得られた補正画像EIに基づく評価入力情報と、予測モデルMとに基づいて、評価対象の骨材の粗粒率の予測値を算出する。ステップS15では、例えば、表示出力部32が、ステップS14で得られた粗粒率の予測値をモニタ14に表示させる。
【0082】
[変形例]
図7に示される一連の処理は、一例であり、適宜変更可能である。品質予測装置1は、図7に示される一連の処理において、一のステップと、次のステップとを並列に実行してもよく、図7に示される例とは異なる順序で一部のステップを実行してもよく、図7に示される例とは異なる内容のステップを実行してもよい。
【0083】
品質予測装置1は、ユーザが操作可能なスマートフォン等の端末装置と通信ネットワークを介して接続されるサーバであってもよい。品質予測装置1が備える表示出力部32は、品質予測装置1以外の装置である端末装置が有するモニタに、各種情報を表示してもよい。上記サーバとしての品質予測装置1は、ユーザが操作する端末装置から閲覧及びアクセスが可能なWebページ等をユーザに対して提示することで、端末装置との間で情報の受け渡しを行ってもよい。あるいは、Webページに代えて、品質予測装置1と連携するアプリケーションが端末装置に準備されたうえで、上記サーバとしての品質予測装置1が、その端末装置に対して情報を提供してもよい。
【0084】
上述した予測モデルMは一例であり、予測モデルMは、骨材の画像データに基づく情報から、少なくとも、複数の粒度区分についての質量分率に関する複数の予測値、又は粗粒率を出力可能であれば、どのようなモデルであってもよい。予測モデルMへの入力データには、補正画像EIに係る画像データに加えて、質量分率又は粗粒率に影響を及ぼし得る物理量を示す情報が含まれていてもよい。このような物理量としては、例えば、骨材の量やベルトコンベアの運搬速度が挙げられる。
【0085】
以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例において説明した事項の少なくとも一部が組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…品質予測装置、14…モニタ、24…画像データ取得部、PI…撮像画像、26…評価情報取得部(画像補正部)、EI…補正画像、30…予測演算部、M…予測モデル、38…距離データ取得部、MK…マーカ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8