(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019863
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】導電性ペースト及び太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
H10F 10/00 20250101AFI20250131BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20250131BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01B1/24 A
H01B1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123732
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】中野谷 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔也
【テーマコード(参考)】
5F251
5G301
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251CB13
5F251CB27
5F251FA10
5F251FA13
5F251FA15
5F251HA01
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA06
5G301DA34
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】アルミニウムを含有させても、電極のライン抵抗を低減可能な導電性ペーストの提供。
【解決手段】本発明は、銀含有フィラーと、アルミニウムと、ガラスフリットと、溶剤とを含む、導電性ペーストであって、前記銀含有フィラーが、銀及び銅を含有する第一銀粉を含み、前記導電性ペースト中のアルミニウム含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、銀含有量が80質量%以上95質量%以下であり、銅含有量が0.001質量%以上5.0質量%以下である、導電性ペーストである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有フィラーと、アルミニウムと、ガラスフリットと、溶剤とを含む、導電性ペーストであって、
前記銀含有フィラーが、銀及び銅を含有する第一銀粉を含み、
前記導電性ペースト中のアルミニウム含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、銀含有量が80質量%以上95質量%以下であり、銅含有量が0.001質量%以上5.0質量%以下である、導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性ペースト中の銅含有量が0.6質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性ペースト中の銅含有量が1.5質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記銀含有フィラーが、銀からなる第二銀粉を更に含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記第一銀粉中の銅含有量が1.1質量%以上である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記第一銀粉中の銅含有量が5.0質量%以上である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記第一銀粉の平均径が0.3μm以上3.0μm以下である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記アルミニウムが、アルミニウム粉である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
n型太陽電池が備える電極の形成に用いられる、請求項1~8の何れかに記載の導電性ペースト。
【請求項10】
請求項1~8の何れかに記載の導電性ペーストを用いて形成された電極を備える、太陽電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト及び太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
銀粉は種々の電極との接合材料として用いられている。例えば、太陽電池には、n型シリコン基板の表面にp型ドーパントを添加したp型エミッタ層を形成した形(n型太陽電池)と、p型シリコン基板の表面にn型ドーパントを添加したn型エミッタ層を形成した形(p型太陽電池)がある。
【0003】
近年、エネルギー需要の高まり等を理由に、発電効率の高い太陽電池に対する需要が高まってきている。特に、前面がp型ドープされたn型太陽電池は、p型セルに対してセル性能が高くなる可能性があるため、注目されている。そして、このような背景を理由に、p型ドーパントによりp型化した半導体層(上記のp型エミッタ層又はp型基板)に対して導電性ペーストを塗布して電極を形成する場合において、導電性ペーストにシリコン基板に対してp型不純物となる元素を含有させ、太陽電池の性能を向上させる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、好都合な接触抵抗等の電気的性質の改善された太陽電池を提供するために、導電性フィラーとして銀とアルミニウムが併用された銀・アルミニウムペーストを電極の形成に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、導電性ペースト中にアルミニウムを含有させると、接触抵抗(界面抵抗)は低減できるものの、形成した電極の抵抗値(ライン抵抗値)が増加する場合がある。そのため、アルミニウムを含有する導電性ペーストにおいて、形成した電極の抵抗値(ライン抵抗値)を低減することが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、アルミニウムを含有しても、電極のライン抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた性能を有する太陽電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、以下に述べる本発明を完成させた。
【0009】
即ち、上述の課題を解決するための本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0010】
[1]銀含有フィラーと、アルミニウムと、ガラスフリットと、溶剤とを含む、導電性ペーストであって、
前記銀含有フィラーが、銀及び銅を含有する第一銀粉を含み、
前記導電性ペースト中のアルミニウム含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、銀含有量が80質量%以上95質量%以下であり、銅含有量が0.001質量%以上5.0質量%以下である、導電性ペースト。
【0011】
[2]前記導電性ペースト中の銅含有量が0.6質量%以上5.0質量%以下である、[1]に記載の導電性ペースト。
【0012】
[3]前記導電性ペースト中の銅含有量が1.5質量%以上5.0質量%以下である、[1]又は[2]に記載の導電性ペースト。
【0013】
[4]前記銀含有フィラーが、銀からなる第二銀粉を更に含む、[1]~[3]の何れかに記載の導電性ペースト。
【0014】
[5]前記第一銀粉中の銅含有量が1.1質量%以上である、[1]~[4]の何れかに記載の導電性ペースト。
【0015】
[6]前記第一銀粉中の銅含有量が5.0質量%以上である、[1]~[5]何れかに記載の導電性ペースト。
【0016】
[7]前記第一銀粉の平均径が0.3μm以上3.0μm以下である、[1]~[6]の何れかに記載の導電性ペースト。
【0017】
[8]前記アルミニウムが、アルミニウム粉である、[1]~[7]の何れかに記載の導電性ペースト。
【0018】
[9]n型太陽電池が備える電極の形成に用いられる、[1]~[8]の何れかに記載の導電性ペースト。
【0019】
[10][1]~[8]の何れかに記載の導電性ペーストを用いて形成された電極を備える、太陽電池セル。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アルミニウムを含有しても、電極のライン抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供できる。
また、本発明によれば、優れた性能を有する太陽電池セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1~3で使用した第一銀粉としての銀銅合金粉の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(用語及び測定方法)
まず、実施形態の説明に先立ち、本明細書における用語及び測定方法等を説明する。
【0023】
<導電性ペースト中の銅含有量及びアルミニウム含有量の測定>
導電性ペースト中の銅及びアルミニウムの定量方法は、以下の分析方法より実施した。
1)ペースト1gを精秤し、アセトンを用いて洗浄後、乾燥してサンプルを得た。
2)乾燥後のサンプルを、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
3)2)で加熱後の溶液に純水を加えて100mLに定容し、そこから5mL分取し再度純水を加えて100mLに定容することで、ICP分析用のサンプルを準備した。
4)検量線作成に用いる銅とアルミニウムの標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
5)ICP定容は、アジレント・テクノロジー製のAgilent5800 ICP-ESを使用して行った。
【0024】
<導電性ペースト中の銀含有量の測定>
導電性ペースト中の銀の定量方法は、以下の分析方法より実施した。
1)ペースト1gを精秤し、アセトンを用いて洗浄後、乾燥してサンプルを得た。
2)乾燥後のサンプルを、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
3)2)で加熱後の溶液を放冷し、純水15mL、塩酸(精密分析用)10mLを加え、150℃で30分間加熱した。
4)生成した塩化銀を12時間以上熟成させた。
5)精秤したガラスフィルターで塩化銀をろ過し、純水で洗浄した。
6)塩化銀を含むガラスフィルターを乾燥機内で120℃約3時間、恒量となるまで乾燥した。
7)デシケータ内で1時間以上放冷し、塩化銀を含むガラスフィルターを精秤して、生成した塩化銀質量から銀含有量を算出した。
【0025】
<第一銀粉中の銅含有量の測定>
第一銀粉中の銅の定量方法は、以下の分析方法により実施した。
1)サンプル1gを精秤し、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
2)1)で加熱後の溶液に純水を加えて100mLに定容し、そこから5mL分取し再度純水を加えて100mLに定容することで、ICP分析用のサンプルを準備した。
3)検量線作成に用いる銅とアルミニウムの標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
4)ICP定容は、アジレント・テクノロジー製のAgilent5800 ICP-ESを使用して行った。
【0026】
<平均径(SEM平均径)>
平均径(SEM平均径)は、倍率を5,000倍としたSEM画像において、MOUNTECH社製の画像処理ソフトMac-View(Ver.4)を用いて、粒子の外形が全て認識できる粒子100個以上に対してHeywood径を計測し、Heywood径の平均値とした。
【0027】
<BET比表面積>
本明細書において、「BET比表面積」は、Macsorb HM-model 1210(MOUNTECH社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。
【0028】
<粒度分布>
本明細書において、銀粉の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0029】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、銀含有フィラーと、アルミニウムと、ガラスフリットと、溶剤とを含み、任意に、銀含有フィラー、アルミニウム、ガラスフリット及び溶剤以外の成分(以下、「その他の成分」と称する場合がある。)を更に含み得る。また、本発明の導電性ペーストにおいて、銀含有フィラーは、銀及び銅を含有する第一銀粉を含む。更に、本発明の導電性ペーストは、導電性ペースト中のアルミニウム含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、銀含有量が80質量%以上95質量%以下であり、銅含有量が0.001質量%以上5.0質量%以下である。
上記のような導電性ペーストであれば、アルミニウムを含有させても、電極のライン抵抗を低減可能である。その理由は、アルミニウムを使用すると、電極のバルク抵抗が上昇し、その結果、電極のライン抵抗が上昇し得ると推察されるところ、導電性ペースト中のアルミニウム、銀含有量及び銅含有量をそれぞれ所定の範囲内とすることで、銀とアルミニウムの相互拡散による金属間化合物の形成やアルミニウムの表面の酸化等を効果的に抑制し、その結果、電極の接触抵抗及びバルク抵抗を効果的に低減できるためであると推察される。
【0030】
導電性ペースト中のアルミニウム含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するアルミニウムの質量割合を意味する。導電性ペースト中のアルミニウム含有量は、0.1質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以下であり、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。
導電性ペースト中のアルミニウム含有量が0.1質量%以上であれば、電極の接触抵抗を効果的に低減できる。
一方、導電性ペースト中のアルミニウム含有量が5.0質量%以下であれば、電極のバルク抵抗の上昇を効果的に抑制できる。
【0031】
導電性ペースト中の銀含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する銀の質量割合を意味する。導電性ペースト中の銀含有量は、80質量%以上であり、81質量%以上であることが好ましく、82質量%以上であることがより好ましく、95質量%以下であり、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、84質量%以下であることが更に好ましい。
導電性ペースト中の銀含有量が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0032】
導電性ペースト中の銅含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する銅の質量割合を意味する。導電性ペースト中の銅含有量は、0.001質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましく、1.5質量%以上であることが更により好ましく、5.0質量%以下であり、4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。
導電性ペースト中の銅含有量が0.001質量%以上であれば、電極のバルク抵抗を効果的に低減できる。
一方、導電性ペースト中の銅含有量が5.0質量%以下であれば、太陽電池の基板に用いられ得る材料(例えば、シリコン)に銅が拡散するリスクを効果的に低減できる。
【0033】
<銀含有フィラー>
銀含有フィラーは、少なくとも後述する第一銀粉を含む。さらに、後述する銀からなる第二銀粉を含んでいてもよい。
【0034】
銀含有フィラー中の銅含有量は、銀含有フィラー中の銀及び銅の合計質量に対する銅の質量割合を意味する。銀含有フィラー中の銅含有量は、0.001質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、1.5質量%以上であることが更により好ましく、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが更により好ましい。
なお、導電性ペースト中の銅は、銀含有フィラーに含まれる第一銀粉が有する銅として含有されていることが好ましい。
【0035】
導電性ペースト中の銀含有フィラーの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する銀含有フィラーの質量割合を意味する。導電性ペースト中の銀含有フィラーの含有量は、導電性ペースト中のアルミニウム含有量、銀含有量、銅含有量が所定の範囲内となれば特に限定されず、例えば80質量%以上であり、例えば98質量%以下であり、95質量%以下でもよい。
【0036】
[第一銀粉]
第一銀粉は、銀及び銅を含有する銀粉である。ここで、第一銀粉としては、銀及び銅を含有するものであれば特に限定されないが、例えば、銀と銅の合金粉、銅付着銀粉、銀コート銅粉等が挙げられる。第一銀粉は、銀及び銅を主成分としていれば表面に表面処理剤を有していてもよく、製造工程に起因する不純物や酸素が含まれていてもよく、銅は一部が酸化していてもよい。第一銀粉に最も多く含まれる成分は銀であり、次に多く含まれる成分は銅である。
【0037】
第一銀粉中の銀及び銅以外の不純物の量は、10.0質量%未満であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0%質量以下であることが更に好ましく、0.001質量%以下であること、即ち、第一銀粉は銀及び銅からなることが更により好ましい。
【0038】
第一銀粉中の銀含有量は、第一銀粉中の銀及び銅の合計質量に対する銀の質量割合を意味し、通常、50質量%超である。
そして、第一銀粉中の銀含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、98.9質量%以下であることが好ましく、98.5質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以下であることが更により好ましい。
第一銀粉中の銀含有量が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できると共に、銀の使用による導電性ペーストのコストの上昇を効果的に抑制できる。
【0039】
第一銀粉中の銅含有量は、第一銀粉中の銀及び銅の合計質量に対する銅の質量割合を意味し、通常、50質量%未満である。
そして、第一銀粉中の銅含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、1.1質量%以上であることがより好ましく、5.0質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが更により好ましく、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
第一銀粉中の銅含有量が0.001質量%以上であれば、電極のバルク抵抗を効果的に低減できる。
一方、第一銀粉中の銅含有量が40質量%以下であれば、太陽電池の基板に用いられ得る材料(例えば、シリコン)に銅が拡散するリスクを効果的に低減できる。
【0040】
第一銀粉の平均径(SEM平均径)は、0.3μm以上であることが好ましく、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
第一銀粉の平均径(SEM平均径)が0.3μm以上であれば、導電性ペーストの粘度上昇を効果的に抑制でき、その結果、導電性ペーストを吐出等して電極を印刷する際に、印刷抜けを抑制し、形成された電極の断線リスクを効果的に抑制できる。
一方、太陽電池セルの電極は、受光量増大や使用部材の低減を目的として細線化が急速に進んでいるところ、第一銀粉の平均径(SEM平均径)が3.0μm以下であれば、導電性ペーストを細線化された電極の形成に好適に用いることができる。
【0041】
第一銀粉のBET比表面積は、0.1m2/g以上であることが好ましく、0.3m2/g以上であることがより好ましく、0.45m2/g以上であることが更に好ましく、1m2/g以下であることが好ましく、0.8m2/g以下であることがより好ましい。
第一銀粉のBET比表面積が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0042】
第一銀粉の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましく、6μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。
D50が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0043】
銀含有フィラー中の第一銀粉の含有量は、銀含有フィラーの全質量に対する第一銀粉の質量割合を意味する。銀含有フィラー中の第一銀粉の含有量は、導電性ペースト中の銀含有量、銅含有量が所定の範囲内となれば特に限定されず、例えば0.1質量%以上であり、1.5質量%以上でもよく、3質量%以上でもよく、5質量%以上でもよい。
【0044】
上述した第一銀粉としては、銀と銅の合金粉、銅付着銀粉、銀コート銅粉等が挙げられ、特に限定されないが、例えば、DOWAエレクトロニクス社製の、アトマイズ法により作製したアトマイズ銀銅粉等を用いることができる。
【0045】
[第二銀粉]
銀含有フィラーに任意で含まれ得る第二銀粉は、銀からなる銀粉であり、銅含有量が好ましくは0.001質量%未満であり、銅を含有する第一銀粉とは明確に区別される。ここで、第二銀粉は、銀粉末であれば、球状、フレーク状、シート状、ブロック状等の種々の形状でもよいが、導電性ペーストを細線化された電極の形成に好適に用いることができる観点から、球状銀粉であることが好ましい。
【0046】
第二銀粉の平均径(SEM平均径)は、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
太陽電池セルの電極は、受光量増大や使用部材の低減を目的として細線化が急速に進んでいるところ、第二銀粉の平均径(SEM平均径)が3.0μm以下であれば、導電性ペーストを細線化された電極の形成に好適に用いることができる。
一方、第二銀粉の平均径(SEM平均径)は、例えば0.3μm以上である。
【0047】
第二銀粉のBET比表面積は、0.1m2/g以上であることが好ましく、0.3m2/g以上であることがより好ましく、1m2/g以下であることが好ましく、0.8m2/g以下であることがより好ましく、0.5m2/g以下であることが更に好ましい。
第二銀粉のBET比表面積が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0048】
第二銀粉の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、6μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、1.9μm以下であることが更に好ましい。
D50が上記範囲内であれば、電極のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0049】
銀含有フィラー中の第二銀粉の含有量は、銀含有フィラーの全質量に対する第二銀粉の質量割合を意味する。銀含有フィラー中の第二銀粉の含有量は、導電性ペースト中の銀含有量、銅含有量が所定の範囲となれば特に限定されない。
【0050】
上述した第二銀粉としては、特に限定されないが、湿式還元法で製造された銀粉やアトマイズ法により製造された銀粉などを選択でき、湿式還元法で製造された球状銀粉としては、例えば、DOWAエレクトロニクス社製の「AG-4-8FD」等を用いることができる。
【0051】
<アルミニウム>
本発明の導電性ペーストに含まれるアルミニウムは、金属アルミニウム、アルミニウム化合物のいずれかでよいが、金属アルミニウムであることが好ましい。金属アルミニウムの形態としては、アルミニウム(金属アルミニウム)やアルミニウム合金等が挙げられる。
アルミニウムは粉末の形態であることが好ましく、該粉末としては、例えば、金属アルミニウムからなるアルミニウム粉、アルミニウム合金粉、または、銀被覆アルミニウム粉、アルミニウム付着銀粉等が挙げられる。アルミニウムとしては、アルミニウム粉を用いることが特に好ましい。
なお、アルミニウム粉が、金属アルミニウムからなる粉末である場合、通常、製造時に不可避的に混入する不純物(例えば、鉄やケイ素等)以外の成分を含んでいない。ここで、アルミニウム粉中の金属アルミニウムの含有量は、通常は99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。
なお、アルミニウム粉、アルミニウム合金粉、銀被覆アルミニウム粉、アルミニウム付着銀粉等の表面は酸化されていてもよい。例えば、アルミニウム粉は表面に酸化アルミニウムの膜を有するものであってもよい。
【0052】
アルミニウムが粉末の形態である場合、該粉末の平均径(SEM平均径)は、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
粉末状のアルミニウムの平均径(SEM平均径)が3.0μm以下であれば、導電性ペーストを細線化された電極の形成に好適に用いることができる。
【0053】
導電性ペースト中のアルミニウムの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するアルミニウムの質量割合を意味する。導電性ペースト中のアルミニウムの含有量は、導電性ペースト中のアルミニウム含有量、銀含有量、銅含有量が所定の範囲内となれば特に限定されず、例えば0.1質量%以上であり、0.5質量%以上でもよく1質量%以上でもよく、例えば5質量%以下であり、3質量%以下でもよく、2質量%以下でもよい。
【0054】
<ガラスフリット>
ガラスフリットは、導電性ペーストを焼結した際に、得られた電極と基板との接着性を向上させ得る成分である。ガラスフリットとしては、目的に応じて適宜選択することができ、一般的に太陽電池に使用可能なものであれば特段の限定はなく使用可能であるが、Si、B、Al、Bi、Li、Na、Mg、Pb、Zn、Gd、Ce、Zr、Ti、Mn、Sn、Ru、Co、Fe、Cu、Ba、Cr等の成分を含むことが好ましい。このような成分は、酸化物、加熱すると酸化物を生成する化合物、他の化合物、及びこれらの混合物の形態でガラスフリット中に存在し得る。
ここで、好ましい酸化物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物、14族~16族酸化物、その他の酸化物又はその組み合わせである。
なお、ガラスフリットは、通常、ガラス粉の形態である。
【0055】
導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するガラスフリットの質量割合を意味する。導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
【0056】
<溶剤>
溶剤(即ち、分散媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テキサノール、ブチルカルビトールアセテート、クエン酸トリブチル、1-オクタノール、テルピネオール、ブチルカルビトール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
導電性ペースト中の溶剤の含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する溶剤の質量割合を意味する。導電性ペースト中の溶剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、19質量%以下であることが好ましい。
【0058】
<その他の成分>
導電性ペースト中に任意で含まれ得るその他の成分としては、例えば、バインダー、分散剤、粘度調整剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
分散剤としては、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベンゾトリアゾール、トリアセチン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
粘度調整剤としては、メチルフェニルポリシロキサン、水添ひまし油、脂肪酸アマイド等が挙げられる。
【0062】
<導電性ペーストの性状>
導電性ペーストの粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペースト温度25℃、回転数1rpmの条件で、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましく、800Pa・s以下であることが好ましく、750Pa・s以下であることがより好ましい。
導電性ペーストの粘度が150Pa・s以上であれば、導電膜を印刷等して形成する際に生じ得る「滲み」や「印刷ダレ」等の印刷不良を効果的に抑制できる。
一方、導電性ペーストの粘度が800Pa・s以下であれば、得られる導電膜の断線を効果的に抑制できるため、導電膜の細線化が可能となる。
【0063】
<導電性ペーストの用途>
本発明の導電性ペーストは、電極の形成に用いられ得るものである。そして、本発明の導電性ペーストは、アルミニウムがシリコン基板に対してp型不純物となり、n型太陽電池の性能を向上されることができるため、n型太陽電池が備える電極の形成に用いられることが好ましい。
【0064】
<導電性ペーストの製造方法>
本発明の導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した導電性ペーストに含まれ得る各材料を混合して、得られた混合物を分散及び/又は混錬することにより得ることができる。なお、分散及び混錬には、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式撹拌機等を用いることができる。
【0065】
(太陽電池セル)
本発明の太陽電池セルは、上述した本発明の導電性ペーストを用いて形成された電極を備える。本発明の太陽電池セルは、上述した本発明の導電性ペーストを用いて形成された電極を備えるため、優れた性能を有する。
なお、本発明の太陽電池セルが備える電極は、通常、上述した本発明の導電性ペーストを基板等に塗布又は印刷し、これを焼成して形成した膜である。
【0066】
本発明の太陽電池セルは、本発明の導電性ペーストを用いて形成された電極を備えるものであれば特に限定されず、半導体基板、拡散層、反射防止層、BSF(Back Surface Field)層、表面電極、裏面電極等を適宜備えていてもよい。
【実施例0067】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、平均径(SEM平均径)の測定、BET比表面積の測定、第一銀粉中の銅含有量の測定、導電性ペースト中の銅含有量及びアルミニウム含有量の測定、導電性ペースト中の銀含有量の測定は、先に述べた手法で測定した。粒度分布の測定、ライン抵抗値の測定は、以下の手順で行った。
【0068】
〔粒度分布の測定〕
体積基準の累積50%粒子径(D50)を以下の方法により測定した。
サンプル0.1gをイソプロピルアルコール(IPA)40mLに加えて超音波ホモジナイザー(装置名:US-150T、株式会社日本精機製作所製;19.5kHz、チップ先端直径18mm)により2分間分散させた後、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0069】
〔ライン抵抗値の測定〕
実施例及び比較例で得られた電極付き基板の印刷電極の両端に測定端子をあて、デジタルマルチメーター(株式会社エーディーシー製)にて、電極の抵抗値(ライン抵抗値)を測定した。
【0070】
(実施例1)
<導電性ペーストの調製>
第一銀粉として、アトマイズ法により作製した、銀含有量が72質量%、銅含有量が28質量%の銀銅合金粉(DOWAエレクトロニクス社製、SEM平均径:1.2μm、累積50%粒子径:2.0μm、BET比表面積:0.68m
2/g)、第二銀粉として銀からなる銀粉(DOWAエレクトロニクス社製、「AG-4-8FD」、SEM平均径:1.4μm、累積50%粒子径:1.8μm、BET比表面積:0.44m
2/g)、アルミニウムとして、金属アルミニウム含有量が99.87質量%、不純物の含有量が0.13質量%(鉄が0.09質量%、ケイ素が0.04質量%)のアルミニウム粉(SEM平均径:2.0μm)と、ガラスフリットとしてガラス粉(PbOを主成分として含有し、B
2O
3、SiO
2及びその他の酸化物を含有)、エチルセルロース、テキサノール、ブチルカルビトールアセテート、クエン酸トリブチル、1-オクタノール、オレイン酸、トリアセチン、メチルフェニルポリシロキサン、水添ひまし油、及び脂肪酸アマイドを表1に示す組成となるように混合し、混合物を得た。
次いで、得られた混合物を、自公転撹拌機(公転1000rpm)の条件にて予備混合後、3本ロール(Esact製)にて混錬し、導電性ペーストを得た。
なお、表2に示すように、導電性ペースト中の銀含有量は83.06質量%であり、銅含有量は2.39質量%であり、アルミニウム含有量は1.22質量%である。また、導電性ペースト中の銀含有フィラー含有量は85.45質量%であり、銀含有フィラー中の銅含有量は2.80質量%である。
なお、
図1に第一銀粉としての銀銅合金粉の走査型電子顕微鏡写真(2,000倍)を示す。
【0071】
<電極の形成>
上記で得られた導電性ペーストを用いて、厚み170μm程度のシリコン基板(太陽電池用途、テクスチャ形成・SiNx成膜済み)上に、スクリーン印刷により直線形状を印刷した。直線は設計線幅12μmであり、直線の長さ150mmとした。印刷にはマイクロテック製印刷機を使用し、スキー時速度350mm/sで印刷した。印刷後、温度を200℃に設定した乾燥機中で5分間乾燥させた後、太陽電池焼成炉(NGK製)にて、ウェハ上面のピーク温度が750℃になる条件にて焼成し、電極付き基板を作製した。得られた電極付き基板を用いて、ライン抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2,3、比較例1)
導電性ペーストの組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作及び測定を行った。結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
表2からも明らかなように、実施例の導電性ペーストは、電極のライン抵抗を低減可能であることが分かる。