(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019865
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】銅含有銀粉、導電性ペースト、導電膜、及び太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20250131BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20250131BHJP
C22C 5/06 20060101ALI20250131BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20250131BHJP
C22C 5/08 20060101ALI20250131BHJP
C22C 21/00 20060101ALN20250131BHJP
【FI】
B22F1/00 K
H01B1/22 A
C22C5/06 Z
B22F9/00 B
B22F1/00 N
C22C5/08
C22C21/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123738
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔也
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017AA08
4K017BA02
4K017BB05
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K018BA01
4K018BA08
4K018BB04
4K018BC29
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】導電膜のライン抵抗を低減可能な銅含有銀粉の提供。
【解決手段】本発明は、銅含有銀粉であって、前記銅含有銀粉を、昇温速度10℃/minで昇温する熱機械分析によって得られる100℃から600℃までのTMA曲線の微分曲線において、膨張ピークと、前記膨張ピークよりも低温側に、dTMAが-0.10%/min以下の第1の収縮ピークとを有する、銅含有銀粉である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有銀粉であって、
前記銅含有銀粉を、昇温速度10℃/minで昇温する熱機械分析によって得られる100℃から600℃までのTMA曲線の微分曲線において、
膨張ピークと、前記膨張ピークよりも低温側に、dTMAが-0.10%/min以下の第1の収縮ピークとを有する、銅含有銀粉。
【請求項2】
前記微分曲線において、前記膨張ピークの温度から300℃までの間に、dTMAが-0.30%/min以下の第2の収縮ピークを有する、請求項1に記載の銅含有銀粉。
【請求項3】
300℃から600℃までの間の前記微分曲線が蛇行している、請求項1又は2に記載の銅含有銀粉。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の銅含有銀粉と、アルミニウムと、溶剤とを含む、導電性ペースト。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性ペーストを用いて形成された導電膜。
【請求項6】
請求項5に記載の導電膜を備える、太陽電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有銀粉、導電性ペースト、導電膜、及び太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性金属粉末を含む導電性ペーストを、フィルム、基板、電子部品等の基材に塗布又は印刷し、加熱して乾燥硬化や焼成させることにより、電極や電気配線等の導電膜を形成するという方法は、従来から広く用いられている。しかしながら、近年の電子機器の高性能化に伴い、導電性ペーストを用いて形成される導電膜には、より低抵抗であることが要求され、その要求は年々厳しくなっている。
【0003】
上記要求に対して、例えば、特許文献1では、高い導電性(低抵抗)を有する導電性ペースト組成物を得ることを目的として、フレーク状銀粉末及び球状銀粉末からなり、フレーク状銀粉末及び球状銀粉末の少なくともいずれか一方の銀粉末の表面に多価カルボン酸が付着している銀粉末を導電性金属粉末として用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の導電性ペーストに用いられ得る銀粉末(銀粉)については、導電性ペーストを用いて形成された導電膜のライン抵抗を低減するという点において更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、導電膜のライン抵抗を低減可能な銅含有銀粉を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電膜のライン抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供することを目的とする。
また、本発明は、ライン抵抗が低減された導電膜を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた性能を有する太陽電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、以下に述べる本発明を完成させた。
【0008】
即ち、上述の課題を解決するための本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0009】
[1]銅含有銀粉であって、
前記銅含有銀粉を、昇温速度10℃/minで昇温する熱機械分析によって得られる100℃から600℃までのTMA曲線の微分曲線において、
膨張ピークと、前記膨張ピークよりも低温側に、dTMAが-0.10%/min以下の第1の収縮ピークとを有する、銅含有銀粉。
【0010】
[2]前記微分曲線において、前記膨張ピークの温度から300℃までの間に、dTMAが-0.30%/min以下の第2の収縮ピークを有する、[1]に記載の銅含有銀粉。
【0011】
[3]300℃から600℃までの間の前記微分曲線が蛇行している、[1]又は[2]に記載の銅含有銀粉。
【0012】
[4][1]又は[2]に記載の銅含有銀粉と、アルミニウムと、溶剤とを含む、導電性ペースト。
【0013】
[5][4]に記載の導電性ペーストを用いて形成された導電膜。
【0014】
[6][5]に記載の導電膜を備える、太陽電池セル。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電膜のライン抵抗を低減可能な銅含有銀粉を提供できる。
また、本発明によれば、導電膜のライン抵抗を低減可能な導電性ペーストを提供できる。
また、本発明によれば、ライン抵抗が低減された導電膜を提供できる。
また、本発明によれば、優れた性能を有する太陽電池セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係る銅含有銀粉の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1に係る銅含有銀粉のdTMA曲線である。
【
図3】実施例2に係る銅含有銀粉のdTMA曲線である。
【
図4】実施例3に係る銅含有銀粉のdTMA曲線である。
【
図6】比較例2に係る混合銀粉のdTMA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の銅含有銀粉は、導電性ペースト用の導電性フィラーとしての用途に適したものである。本発明の銅含有銀粉を用いた導電性ペーストは、基板上への導電パターンの形成や、電極の形成に用いることができる。本発明の銅含有銀粉を用いた導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フォトリソグラフィ法等により基板上に印刷することで、導電パターンや電極等の導電膜を形成できるものである。
【0018】
ここで近年では、シリコン基板と、該シリコン基板の表面に形成される電極や電気配線等の導電膜とを備える太陽電池(特に、n型太陽電池)において、半導体層と電極等との界面における接触抵抗(界面抵抗)を低減するために、導電膜の形成に用いられる導電性ペーストにアルミニウム粉等のアルミニウムを添加することが試みられているが、導電性ペーストにアルミニウムを添加すると、形成された導電膜においてバルク抵抗が上昇し、その結果、導電膜のライン抵抗が上昇し得るという問題が生じる可能性がある。本発明の銅含有銀粉は、導電膜のライン抵抗を低減可能であるため、太陽電池、具体的には、太陽電池セルが備える導電膜の形成に用いられるアルミニウム含有導電性ペーストに特に好適に用いることができる。
【0019】
(用語及び測定方法)
まず、実施形態の説明に先立ち、本明細書における用語及び測定方法等を説明する。
【0020】
<銅含有銀粉の熱機械分析>
銅含有銀粉の熱機械分析(TMA)は以下のようにして実施した。
まず、銅含有銀粉0.3gを計量した。次に、銅含有銀粉を直径5mmφの所定の金型に投入し、プレス機を用いて荷重50kgで1min押し固めて円板状の測定試料を作製した。この測定試料を、熱機械分析(TMA)装置(Thermo plus EVO 2 シリーズ TMA8311)の試料ホルダにセットし、測定プローブにより、測定荷重98mNの荷重を付与して、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温して、測定試料の膨張率及び収縮率を測定した。そのうち100℃から600℃までの測定結果について以下の評価を行った。
測定(昇温)開始から1秒毎に、膨張率及び収縮率、並びにその時の温度を記録し、TMA曲線を得た。得られたTMA曲線を時間で微分して、TMA曲線の微分曲線(以下、TMA曲線の微分曲線を「dTMA曲線」と称する場合がある。)を得た。そして、得られたdTMA曲線を用いて、膨張ピークの温度及びdTMA、第1の収縮ピークの温度及びdTMA、第2の収縮ピークの温度及びdTMA、並びに、300℃から600℃の間のdTMA曲線の蛇行の有無を確認した。なお、第1の収縮ピーク、膨張ピーク、および第2の収縮ピークは、100℃から300℃の間に存在する。
なお、本明細書において、「膨張ピーク」とは、上記dTMA曲線における上凸のピークのうち、dTMAが0.1%/min以上のピークを意味し、通常、上記dTMA曲線においてdTMAが最大のピークである。
本明細書において、dTMA曲線の「蛇行」とは、dTMA曲線が谷(下に凸の曲線)又は山(上に凸の曲線)を0~1個有するのではなく、谷又は山を複数有している状態をいう。
【0021】
<銅含有銀粉中の銀粒子内部の空隙の有無の確認>
本明細書において、空隙の有無の確認は、以下の方法により、銀粒子を観察して行った。
まず、銅含有銀粉を樹脂及び硬化剤中に入れて固化し、固化させた樹脂を切断した。次いで、切断面をクロスセクションポリッシャーにより研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡により各銀粒子を観察し、銀粒子内部の空隙の有無を確認した。
上記樹脂及び硬化剤としては、例えば、ストルアス社製の「エポフィックス樹脂」及び「エポフィックス硬化剤」を用いることができる。また、上記クロスセクションポリッシャーとしては、例えば、日本ハイテクノロジーズ社製の「ArBlade5000」を用いることができる。また、上記走査型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子株式会社製の「JSM-IT800SHL」を用いることができる。
なお、本明細書において、「銀粒子内部の空隙」とは、銀粒子表面の凹凸の空間ではなく、銀粒子内部の閉鎖された空間を意味する。
なお、本明細書においては、内部に空隙を有する銀粒子を「空隙含有銀粒子」と称する場合がある。
【0022】
本明細書において、「空隙の直径(即ち、空隙含有銀粒子内部の閉鎖された空間の直径)」とは、走査型電子顕微鏡画像において、空隙が全て入る最小の円を描いた際の該円の直径を意味する。
なお、本明細書において、空隙とは、上記の方法において銀粒子断面を1万倍から4万倍で撮影した画像を用いて観察される空隙の直径が、15nm以上の空隙である。
【0023】
<銅含有銀粉中の銅含有量の測定>
銅含有銀粉中の銅の定量方法は、以下の分析方法により実施した。
1)サンプル1gを精秤し、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
2)1)で加熱したサンプルを放冷後、純水を用いて、100mLに定容し、そこから上澄み液を5mL分取し、純水を用いて、再度100mLに定容することで、ICP分析用のサンプルを準備した。
3)検量線作成に用いる銅の標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
4)ICP定量は、アジレント・テクノロジー製のAglent5800 ICP-OESを使用して行った。
【0024】
<銅含有銀粉中の炭素含有量、酸素含有量、窒素の含有量>
本明細書において、「炭素含有量」は、炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-810W)を用いて、1350℃、酸素気流中で炭素量を測定した。また、「酸素含有量」と「窒素含有量」は、酸素・窒素・水素同時分析装置(LECO社製のONH836)を使用して、インパルス炉の電力値を3500WとしてArガス雰囲気中において酸素、窒素量を測定した。
【0025】
<銅含有銀粉の真密度>
本明細書において、「銅含有銀粉の真密度」とは、銀粒子内部に存在する空隙(即ち、上述した「銀粒子内部の閉鎖された空間」)を加味した銅含有銀粉の密度を意味する。
そして、本明細書において、銅含有銀粉の真密度の測定方法は、ヘリウムガスを用いた乾式自動密度計(真密度測定装置ともいう)により測定した。具体的には、容器内が一定圧力になるまでヘリウムガスを充填したときのガス体積から銅含有銀粉の体積を測定し、銅含有銀粉の質量をその体積で除算することで計算した。なお、この時のヘリウムガスは、粒子表面の凹凸の空間、粒子と粒子の間隙の空間には到達できるが、外部と連通していない粒子内の閉鎖された空間(即ち、空隙)には到達できない。従って、通常、銀粒子内部の空隙の割合が多くなる程、銅含有銀粉の真密度は小さくなる傾向にある。
【0026】
<平均径(SEM平均径)>
平均径(SEM平均径)は、倍率を5,000倍としたSEM画像において、MOUNTECH社製の画像処理ソフトMac-View(Ver.4)を用いて、粒子の外形が全て認識できる粒子100個以上に対してHeywood径を計測し、Heywood径の平均値とした。
【0027】
<BET比表面積>
本明細書において、「BET比表面積」は、Macsorb HM-model 1210(MOUNTECH社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。
【0028】
<粒度分布>
本明細書において、銅含有銀粉の体積基準の最小粒子径(DMIN)、累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)、及び累積95%粒子径(D95)、並びに、累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0029】
<導電性ペースト中の銅含有量の測定>
導電性ペースト中の銅の定量方法は、以下の分析方法より実施した。
1)ペースト1gを精秤し、アセトンを用いて洗浄後、乾燥してサンプルを得た。
2)乾燥後のサンプルに、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
3)2)で加熱したサンプルを放冷後、純水を用いて100mLに定容し、そこから上澄み液を5mL分取し、純水を用いて、再度、100mLに定容することでICP分析用のサンプルを準備した。
4)検量線作成に用いる銅の標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
5)ICP定容は、アジレント・テクノロジー製のAgilent5800 ICP-ESを使用して行った。
【0030】
<導電性ペースト中の銀含有量の測定>
導電性ペースト中の銀の定量方法は、以下の分析方法より実施した。
1)ペースト1gを精秤し、アセトンを用いて洗浄後、乾燥してサンプルを得た。
2)乾燥後のサンプルを、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
3)2)で加熱したサンプルに、純水15mL、塩酸(精密分析用)10mLを加え、150℃で30分間加熱した。
4)3)で生成した塩化銀を12時間以上熟成させた。
5)精秤したガラスフィルターで塩化銀をろ過し、純水で洗浄した。
6)塩化銀を含むガラスフィルターを乾燥機内で120℃約3時間、恒量となるまで乾燥した。
7)デシケータ内で1時間以上放冷し、塩化銀を含むガラスフィルターを精秤して、生成した塩化銀質量から銀含有量を算出した。
【0031】
(銅含有銀粉)
本発明の銅含有銀粉は、銅含有銀粉を、昇温速度10℃/minで昇温する熱機械分析によって得られる100℃から600℃までのdTMA曲線において、膨張ピークと、該膨張ピークよりも低温側に、dTMAが-0.10%/min以下(マイナス方向に絶対値が0.10%/min以上)の第1の収縮ピークとを有する。
上記のような銅含有銀粉であれば、導電膜のライン抵抗を低減可能である。特にアルミニウム含有導電性ペーストにおいて、バルク抵抗の低減効果が顕著である。この理由は、導電性ペーストを用いて形成される導電膜は、通常、導電性ペーストを塗布又は印刷し、これを焼成して形成した膜であるところ、導電性ペーストに用いられる銅含有銀粉が膨張する前の温度において所定の割合で収縮すると、銀粒子間に隙間が形成され、この隙間の存在により、隙間を通って空隙中等のガス成分が導電性ペーストの外へ逃げすくなるため、後の焼成による導電性ペースト自体の過度な膨張が効果的に抑制され、得られる導電膜が緻密化し、その結果、導電膜のバルク抵抗を効果的に低減できるためであると推察される。
【0032】
dTMA曲線において、第1の収縮ピークのdTMAは、-0.10%/min以下であり、-0.30%/min以下であることが好ましく、-0.50%/min以下であることがより好ましく、-0.80%/min以下であることが更に好ましい。
第1の収縮ピークのdTMAが-0.10%/min以下であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、第1の収縮ピークのdTMAは、例えば-3.00%/min以上であり、-2.00%/min以上でもよく、-1.50%/min以上でもよい。
【0033】
dTMA曲線において、第1の収縮ピークの温度は、膨張ピークの温度よりも低温であれば特に限定されないが、例えば150℃以上であり、170℃以上でもよく、180℃以上でもよく、例えば210℃以下であり、200℃以下でもよく、195℃以下でもよく、190℃以下でもよい。
【0034】
dTMA曲線において、膨張ピークのdTMAは、0.1%/min以上であり、0.50%/min以上であることが好ましく、1.00%/min以上であることがより好ましく、2.00%/min以上であることが更に好ましく、3.00%/min以上であることが更により好ましい。
膨張ピークのdTMAが0.1%/min以上であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、膨張ピークのdTMAは、例えば10.00%/min以下であり、5.00%/min以下でもよい。
【0035】
dTMA曲線において、膨張ピークの温度は、第1の収縮ピークの温度よりも高温であれば特に限定されないが、例えば200℃以上であり、210℃以上でもよく、例えば270℃以下であり、250℃以下でもよい。
【0036】
膨張ピークのdTMAと第1の収縮ピークのdTMAとの差(「膨張ピークのdTMA」-「第1の収縮ピークのdTMA」)は、それぞれのdTMAが上記要件を満たせば特に限定されないが、0.50%/min以上であることが好ましく、2.00%/min以上であることがより好ましく、3.50%/min以上であることが更に好ましい。
膨張ピークのdTMAと第1の収縮ピークのdTMAとの差が0.50%/min以上であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、膨張ピークのdTMAと第1の収縮ピークのdTMAとの差は、例えば10.00%/min以下であり、7.00%/min以下でもよい。
【0037】
膨張ピークの温度と第1の収縮ピークの温度との差(「膨張ピークの温度」-「第1の収縮ピークの温度」)は、「膨張ピークの温度」>「収縮ピークの温度」の関係を満たせば特に限定されないが、3℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましく、30℃以上であることが更により好ましい。
膨張ピークの温度と第1の収縮ピークの温度との差が3℃以上であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、膨張ピークの温度と第1の収縮ピークの温度との差は、例えば70℃以下であり、50℃以下でもよい。
【0038】
本発明の銅含有銀粉は、dTMA曲線において、膨張ピークの温度から300℃までの間に、dTMAが-0.30%/min以下(ゼロからマイナス方向に絶対値が0.30%/min以上)の第2の収縮ピークを有することが好ましい。銅含有銀粉が第2の収縮ピークを有すれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
ここで、第2の収縮ピークのdTMAは、-0.30%/min以下であれば特に限定されないが、-0.50%/min以下であることが好ましい。
一方、第2の収縮ピークのdTMAは、例えば-3.00%/min以上であり、-2.00%/min以上でもよく、-1.50%/min以上でもよい。
【0039】
膨張ピークのdTMAと第2の収縮ピークのdTMAとの差(「膨張ピークのdTMA」-「第2の収縮ピークのdTMA」)は、それぞれのdTMAが上記要件を満たせば特に限定されないが、0.50%/min以上であることが好ましく、2.00%/min以上であることがより好ましく、3.50%/min以上であることが更に好ましい。
膨張ピークのdTMAと第2の収縮ピークのdTMAとの差が0.50%/min以上であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、膨張ピークのdTMAと第2の収縮ピークのdTMAとの差は、例えば10.00%以下であり、7.00%/min以下でもよい。
【0040】
本発明の銅含有銀粉は、300℃から600℃までの間のdTMA曲線が蛇行していることが好ましい。このような銅含有銀粉であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。従来の銀粉では、上記のような収縮ピークや膨張ピークが生じたあと(300℃以上)では、dTMA曲線には緩やかな谷や山が一つずつ生じるのみであったが、本発明の銅含有銀粉の300℃以上にはdTMA曲線の蛇行が観察される。導電性ペーストにおいて、500~600℃でガラスが軟化し、500~650℃でアルミニウム粉が溶解し得るため、300℃以上の温度でdTMA曲線に蛇行が観察される銅含有銀粉と、ガラス及びアルミニウム粉とが導電性ペースト中で共存したときに相互作用が生じることが考えられる。
【0041】
銅含有銀粉中の銅含有量は、銅含有銀粉中の銀及び銅の合計質量に対する銅の質量割合を意味する。銅含有銀粉中の銅含有量は、10ppm以上であることが好ましく、30ppm以上であることがより好ましく、10,000ppm以下であることが好ましく、3,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが更により好ましい。
銅含有銀粉中の銅含有量が10ppm以上であれば、導電膜のバルク抵抗を効果的に低減できる。
一方、銅含有銀粉中の銅含有量が10,000ppm以下であれば、銅含有銀粉中の銀含有量を相対的に増加させることが可能となり、その結果、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0042】
銅含有銀粉中の炭素含有量は、銅含有銀粉中の全質量に対する炭素の質量割合を意味する。銅含有銀粉中の炭素含有量は、例えば0.06質量%以上であり、0.2質量%以上でもよく、0.3質量%以上でもよく、例えば1質量%以下であり、0.7質量%以下でもよく、0.5質量%以下でもよい。
【0043】
銅含有銀粉中の酸素含有量は、銅含有銀粉中の全質量に対する酸素の質量割合を意味する。銅含有銀粉中の酸素含有量は、例えば0.11質量%以上であり、0.2質量%以上でもよく、0.3質量%以上でもよく、例えば1質量%以下であり、0.8質量%以下でもよく、0.6質量%以下でもよい。
【0044】
銅含有銀粉中の窒素含有量は、銅含有銀粉中の全質量に対する窒素の質量割合を意味する。銅含有銀粉中の窒素含有量は、例えば0.01質量%以上であり、0.06質量%以上でもよく、0.09質量%以上でもよく、例えば0.5質量%以下であり、0.3質量%以下でもよく、0.2質量%以下でもよい。
【0045】
銅含有銀粉の真密度は、10g/cm3以下であることが好ましく、9.8g/cm3以下であることがより好ましく、9.7g/cm3以下であることが更に好ましい。
銅含有銀粉の真密度が10g/cm3以下であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
一方、銅含有銀粉の真密度は、例えば9g/cm3以上であり、9.2g/cm3以上でもよく、9.4g/cm3以上でもよい。
【0046】
銅含有銀粉の体積基準の最小粒子径(DMIN)は、例えば0.05μm以上であり、0.1μm以上でもよく、0.2μm以上でもよく、例えば1μm以下であり、0.7μm以下でもよく、0.5μm以下でもよい。
【0047】
銅含有銀粉の体積基準の累積10%粒子径(D10)は、例えば0.1μm以上であり、0.5μm以上でもよく、0.8μm以上でもよく、例えば2μm以下であり、1.5μm以下でもよく、1.2μm以下でもよい。
【0048】
銅含有銀粉の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましく、6μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましく、1.9μm以下であることが更に好ましい。
D50が上記範囲内であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0049】
銅含有銀粉の体積基準の累積90%粒子径(D90)は、例えば1.5μm以上であり、2μm以上でもよく、2.5μm以上でもよく、例えば5μm以下であり、4μm以下でもよく、3.5μm以下でもよい。
【0050】
銅含有銀粉の体積基準の累積95%粒子径(D95)は、例えば2μm以上であり、2.3μm以上でもよく、3μm以上でもよく、例えば10μm以下であり、7μm以下でもよく、4μm以下でもよい。
【0051】
銅含有銀粉の体積基準の累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)は、例えば3μm以上であり.4μm以上でもよく、5μm以上でもよく、例えば15μm以下であり、10μm以下でもよく、8μm以下でもよい。
【0052】
銅含有銀粉のBET比表面積は、0.1m2/g以上であることが好ましく、0.3m2/g以上であることがより好ましく、0.45m2/g以上であることが更に好ましく、1m2/g以下であることが好ましく、0.8m2/g以下であることがより好ましく、0.6m2/g以下であることが更に好ましい。
銅含有銀粉のBET比表面積が上記範囲内であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0053】
一実施形態において、本発明の銅含有銀粉は、空隙含有銀粒子を含み、任意に、内部に空隙を有さない銀粒子を含み得る。また、本発明の銅含有銀粉は、断面を観察した際、空隙含有銀粒子が全銀粒子の半分以上であることが好ましい。
【0054】
<空隙含有銀粒子>
本発明の銅含有銀粉に含まれ得る空隙含有銀粒子は、内部に空隙を有する銀粒子であり、銅を含有していることが好ましい。
なお、空隙含有銀粒子に銅が含まれていることを確認する方法としては、例えばEDSやXPS等を用いることができる。
【0055】
空隙含有銀粒子において、空隙の直径の平均値は、上記の1万倍から4万階の粒子断面画像において、少なくとも10個以上の銀粒子断面に含まれる、15nm以上の空隙の直径を測定し求める。空隙の直径の平均値は、例えば30nm以上であり、50nm以上でもよく、100nm以上でもよく、例えば500nm以下であり、300nm以下でもよく、200nm以下でもよい。
【0056】
空隙含有銀粒子が銅を含有する場合、銀からなる銀粒子の含有量は、導電性ペースト中における銅の存在の偏りを抑制する観点から、少ない方が好ましい。銅含有銀粉中の銀からなる銀粒子の含有量は、銅含有銀粉中の全質量に対する銀からなる銀粒子の質量割合を意味する。銅含有銀粉中の銀からなる銀粒子の含有量は、例えば50質量%以下であり、20質量%以下でもよく、10質量%以下でもよく、0質量%、即ち、銅含有銀粉は銀からなる銀粒子を含まないものでもよい。
【0057】
<銅含有銀粉の製造方法>
本発明の銅含有銀粉は、特に限定されないが、例えば、銀化合物と、上述した銅を含有する化合物(例えば、銅化合物等)とを含む混合液に還元剤を添加して、空隙含有銀粒子を析出させる、還元工程と、空隙含有銀粒子を混合液から分離して乾燥し、銅含有銀粉を得る、分離工程と、を含む方法を用いて製造できる。
なお、上記製造方法は、還元工程及び分離工程以外に、任意に、還元工程で得られた空隙含有銀粒子を含む混合液に表面処理剤を添加して、表面処理された空隙含有銀粒子を得る、表面処理剤添加工程を更に含んでいてもよい。
【0058】
以下では、銅含有銀粉の製造方法の一例を説明するが、銅含有銀粉の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0059】
〔還元工程〕
還元工程では、銀化合物及び銅化合物を含む混合液に還元剤を添加して、空隙含有銀粒子を析出させる。混合液は、通常、溶媒として水を含み、銀化合物及び銅化合物を含む水溶液又は懸濁液である。銀化合物及び銅化合物を含む混合液は、任意に、pH調整剤等を含んでいてもよい。
なお、空隙含有銀粒子を析出させた後の混合液は、通常、空隙含有銀粒子が分散された懸濁液(所謂、スラリー)又は分散液である。
【0060】
還元工程において混合液に添加する還元剤は、アルデヒド基を有する化合物を含むこと好ましい。アルデヒド基を有する化合物を含む還元剤を用いれば、空隙含有銀粒子を効率的に得ることができる。このような還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液(所謂、ホルマリン)、アセトアルデヒド水溶液等が挙げられるが、空隙含有銀粒子をより効率的に得られることから、ホルマリンを用いることが好ましい。また、空隙を効果的に生じさせる観点から、還元析出する際に超音波等を使用してもよい。
【0061】
銀化合物としては、特に限定されず、例えば、硝酸銀、酸化銀等が挙げられる。また、例えば、硝酸銀又は酸化銀にアンモニア水又はアンモニウム塩を反応させて得られた銀アンミン錯体を銀化合物として用いることが好ましい。
【0062】
銅化合物としては、特に限定されず、例えば、硝酸銅(II)三水和物、酸化銅等が挙げられる。また、例えば、硝酸銅(II)三水和物又は酸化銅にアンモニア水又はアンモニウム塩を反応させて得られた銅アンミン錯体を銅化合物として用いることが好ましい。
【0063】
混合液中において、銀に対する銅の割合は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることが好ましく、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが更により好ましい。
銀に対する銅の割合が0.001質量%以上であれば、導電膜のバルク抵抗を効果的に低減できる。
一方、銀に対する銅の割合が3質量%以下であれば、銀の割合を相対的に増加させることが可能となり、その結果、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0064】
混合液が含み得るpH調整剤としては、一般的な酸や塩基を用いてよく、例えば、硝酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。なお、還元工程においては、混合液をアルカリ性に調整することが好ましい。
【0065】
〔表面処理剤添加工程〕
任意の表面処理剤添加工程では、還元工程で得られた空隙含有銀粒子を含む混合液に表面処理剤を添加して、表面処理された空隙含有銀粒子(以下、「表面処理済空隙含有銀粒子」と称する場合がある。)を得る。
なお、表面処理済空隙含有銀粒子を含む混合液は、通常、表面処理済空隙含有銀粒子が分散された懸濁液(所謂、スラリー)又は分散液である。
【0066】
表面処理剤としては、例えば、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0067】
表面処理剤添加工程における表面処理剤の添加量は、還元工程で得られた混合液に含まれる銀の質量に対して、通常、0.05質量%以上0.5質量%以下である。
【0068】
表面処理剤添加工程によって表面処理済空隙含有銀粒子に付着して分離工程後まで残った表面処理剤の付着量は、後述の分離工程後の銅含有銀粉に対し、表面処理剤の種類を特定した状態で測定した値を用いる。
なお、表面処理剤の種類は、銅含有銀粉を加熱し揮発した表面処理剤のガスクロマトグラフィーによる定性分析により特定できる。
【0069】
銅含有銀粉の表面処理剤の付着量は、特許第5622543号公報に記載された脂肪酸の定量分析方法に従って行うことができる。
具体的には、まず、銅含有銀粉を酸で溶解させた後、有機溶媒を混合し、その有機溶媒相に表面処理剤を全量抽出させた後、有機溶媒相を所定量分取し、蒸発乾燥させて残留した固形物を、炭素硫黄分析装置により炭素量を測定することで計算により求めることができる。
【0070】
例えば、表面処理剤がステアリン酸であると特定されており、ステアリン酸以外の炭素源が銅含有銀粉に含まれない場合、ステアリン酸の測定方法は以下となる。
【0071】
ステアリン酸の含有量(mg)が異なる標準液において、各々の炭素量(強度)を炭素硫黄分析装置により測定することで検量線を求めたとき、その傾きをA(強度/mg)とする。そして、銅含有銀粉中のステアリン酸質量X(mg)、濃度Y(%)は、上記銅含有銀粉の処理により、処理剤を全有機溶媒量a(mL)に抽出したものから、所定量b(mL)分取し、その残存固形物の測定により求めた炭素量をC(強度)、酸に溶解した銅含有銀粉の量をM(g)とした場合、ステアリン酸質量X及び濃度Yは、それぞれ、下記式(A)及び式(B)で計算できる。
X(mg)=(C/A×a/b)・・・(A)
Y(%)=X/(M×1000)×100・・・(B)
【0072】
オレイン酸が処理剤の場合でも上記同様に炭素量を測定して求める。オレイン酸についてもステアリン酸の検量線を用いて計算する。ステアリン酸の分子量が284.48で、その内の炭素量が216.19、オレイン酸の分子量が282.46、その内の炭素量が216.19となるので、オレイン酸濃度Y’は、下記式(C)により算出できる。
オレイン酸濃度Y’(%)=Y×(216.19/284.48)×(282.46/216.19)・・・(C)
【0073】
表面処理剤の付着量は、銅含有銀粉の質量に対して、通常、0.05質量%以上0.5質量%以下である。
【0074】
〔分離工程〕
分離工程では、空隙含有銀粒子、又は、任意に表面処理済空隙含有銀粒子(以下、纏めて「空隙含有銀粒子等」と称する場合がある。)を混合液から分離して乾燥し、銅含有銀粉を得る。分離工程で得られた銅含有銀粉を、本発明の銅含有銀粉とすることができる。
なお、分離工程では、任意に、分離した空隙含有銀粒子等を回収して洗浄する洗浄回収工程が行われてもよい。
【0075】
洗浄回収工程では、例えば、分離した空隙含有銀粒子等の集合体をケーキ状とし、また、空隙含有銀粒子等の集合体のケーキが洗浄される。洗浄回収工程における洗浄は、例えば純水を用いて行ってよい。洗浄回収工程における脱水は、例えばデカンテーションやフィルタープレスにより行うことができる。洗浄の終点は洗浄水の電気伝導度を用いて判定してよい。具体的には、洗浄水の電気伝導度が所定の値以下となった場合に洗浄終了を判定してよい。洗浄後の空隙含有銀粒子等は、ケーキ状等の凝集状態で乾燥工程に供してよい。
【0076】
乾燥工程では、水分を含み、凝集状態の空隙含有銀粒子等の集合体が乾燥される。乾燥工程は、真空乾燥や、気流式の乾燥機を用いてよい。乾燥工程においては、空隙含有銀粒子等の集合体に高圧空気流を吹き付けたり、ケーキや乾燥過程の銅含有銀粉を、撹拌ロータを有する撹拌機に投入して撹拌したりすることによって、ケーキや乾燥過空隙程の銅含有銀粉に分散力を与えて、分散や乾燥を促す操作が行われてもよい。
【0077】
乾燥工程においては、銅含有銀粉の温度は、通常100℃以下である。銅含有銀粉の温度が100℃以下であれば、銅含有銀粉中の空隙含有銀粒子等同士が焼結することを効果的に抑制できる。
【0078】
乾燥後の銅含有銀粉は塊状になっている場合があるため、乾燥工程と同時に、又は、乾燥工程後には、銅含有銀粉のハンドリング性を向上する等を目的として乾式解砕処理又は分級操作が行われてもよい。ここで、銅含有銀粉のハンドリング性の向上とは、例えば、装置内への供給操作に支障が出ない程度の流動性を確保したり、装置での処理が効率よく進行するように、適度に銅含有銀粉をほぐすことをいう。
【0079】
乾式解砕処理の方法は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、撹拌翼を回転させて解砕し、銅含有銀粉を流動させる解砕機を用いることが好ましく、例えばヘンシェルミキサー、サンプルミル、ブレンダー、コーヒーミル等が用いられる。
【0080】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、上述した本発明の銅含有銀粉と、アルミニウムと、溶剤とを含む。本発明の導電性ペーストは、本発明の銅含有銀粉を含むため、導電膜のライン抵抗を低減可能である。
【0081】
ここで、導電性ペースト中の銀含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する銀の質量割合を意味する。導電性ペースト中の銀含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
また、導電性ペースト中の銅含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する銅の質量割合を意味する。
導電性ペースト中の銅含有量は、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましい。
また、導電性ペースト中の銅含有量は、5000ppm以下とすることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。
導電性ペースト中の銅含有量が上記範囲内であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0083】
<フィラー>
導電性ペーストは、一部に銅を含まない銀粉を含んでいてもよい。以下、銅含有銀粉と、銅を含まない銀粉とを総称してフィラーと呼称し得る。
【0084】
導電性ペースト中のフィラーの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するフィラーの質量割合を意味する。導電性ペースト中のフィラーの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
なお、導電性ペーストにおいて、フィラーに起因する銅の存在の偏りを抑制することができるため、フィラーに占める本発明の銅含有銀粉の割合は高い方が好ましく、50質量%以上が好ましく、最も好ましくは100質量%である。
【0085】
フィラー中の銅含有量は、フィラー中の銀及び銅の合計質量に対する銅の質量割合を意味する。
フィラー中の銅含有量は、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上とすることがより好ましい。
また、フィラー中の銅含有量は、10000ppm以下であり、5000ppm以下とすることが好ましく、500ppm以下とすることがより好ましく、100ppm以下とすることが更に好ましい。
フィラー中の銅含有量が上記範囲内であれば、導電膜のライン抵抗を効果的に低減できる。
【0086】
<アルミニウム>
本発明の導電性ペーストに含まれるアルミニウムは、金属アルミニウム、アルミニウム化合物いずれかでよいが、金属アルミニウムであることが好ましい。金属アルミニウムの形態としては、アルミニウム(金属アルミニウム)やアルミニウム合金等が挙げられる。
ここで、導電性ペーストにおいて、アルミニウムは粉末の形態あることが好ましく、該粉末としては、例えば、アルミニウム粉(金属アルミニウムからなる粉末)、アルミニウム合金粉、銀被覆アルミニウム粉、アルミニウム付着銀粉等が挙げられる。アルミニウムとしては、アルミニウム粉を用いることが特に好ましい。
なお、アルミニウム粉は、金属アルミニウムからなる粉末であるため、製造時に不可避的に混入する不純物(例えば、鉄やケイ素等)以外の成分を含んでいない。ここで、アルミニウム粉中の金属アルミニウムの含有量は、通常は99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。
なお、アルミニウム粉、アルミニウム合金粉、銀被覆アルミニウム粉、アルミニウム付着銀粉等の表面は酸化されていてもよい。例えば、アルミニウム粉は表面に酸化アルミニウムの膜を有するものであってもよい。
【0087】
アルミニウムが粉末の形態である場合、該粉末の平均径(SEM平均径)は、3.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
粉末状のアルミニウムの平均径(SEM平均径)が3.0μm以下であれば、導電性ペーストを細線化された導電膜の形成に好適に用いることができる。
【0088】
導電性ペースト中のアルミニウムの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するアルミニウムの質量割合を意味する。導電性ペースト中のアルミニウムの含有量は、例えば0.1質量%以上であり、0.5質量%以上でもよく1質量%以上でもよく、例えば5質量%以下であり、3質量%以下でもよく、2質量%以下でもよい。
【0089】
<溶剤>
導電性ペーストの溶剤(即ち、分散媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テキサノール、ブチルカルビトールアセテート、クエン酸トリブチル、1-オクタノール、テルピネオール、ブチルカルビトール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
導電性ペースト中の溶剤の含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対する溶剤の質量割合を意味する。導電性ペースト中の溶剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、19質量%以下であることが好ましい。
【0091】
<その他の成分>
導電性ペーストは、上述した、銅含有銀粉、アルミニウム、溶剤及び任意の銅を含まない銀粉以外の成分(以下、「その他の成分」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。
導電性ペースト中に任意で含まれ得るその他の成分としては、例えば、ガラスフリット、バインダー、分散剤、粘度調整剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
ガラスフリットは、導電性ペーストを焼成した際に、得られた導電膜と基板との接着性を向上させ得る成分である。ガラスフリットとしては、目的に応じて適宜選択することができ、一般的に太陽電池等に使用可能なものであれば特段の限定はなく使用可能であるが、Si、B、Al、Bi、Li、Na、Mg、Pb、Zn、Gd、Ce、Zr、Ti、Mn、Sn、Ru、Co、Fe、Cu、Ba、Cr等の成分を含むことが好ましい。このような成分は、酸化物、加熱すると酸化物を生成する化合物、他の化合物、及びこれらの混合物の形態でガラスフリット中に存在し得る。
【0093】
導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、導電性ペースト中の全成分の合計質量に対するガラスフリットの質量割合を意味する。導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
ここで、好ましい酸化物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物、14族~16族酸化物、その他の酸化物又はその組み合わせである。
なお、ガラスフリットは、通常、ガラス粉の形態である。
【0094】
バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
分散剤としては、オレイン酸、トリアセチン、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
粘度調整剤としては、メチルフェニルポリシロキサン、水添ひまし油、脂肪酸アマイド等が挙げられる。
【0097】
<導電性ペーストの性状>
導電性ペーストの粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ペースト温度25℃、回転数1rpmの条件で、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることがより好ましく、800Pa・s以下であることが好ましく、750Pa・s以下であることがより好ましい。
導電性ペーストの粘度が150Pa・s以上であれば、導電膜を印刷等して形成する際に生じ得る「滲み」や「印刷ダレ」等の印刷不良を効果的に抑制できる。
一方、導電性ペーストの粘度が800Pa・s以下であれば、得られる導電膜の断線を効果的に抑制できるため、導電膜の細線化が可能となる。
【0098】
<導電性ペーストの用途>
本発明の導電性ペーストは、導電膜の形成、即ち、基板上への導電パターンの形成や、電極の形成に適している。例えば、太陽電池用のシリコンウエハ、タッチパネル用フィルム、EL素子用ガラス等の各種基体上に直接、或いは、必要に応じて基体上に更に透明導電膜を設けたその膜上に、塗布又は印刷して導電膜の形成に好適に用いることができる。本発明の導電性ペーストを用いて形成された導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極又は電気配線用途等に好適に用いられる。
【0099】
<導電性ペーストの製造方法>
本発明の導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した導電性ペーストに含まれ得る各材料を混合して、得られた混合物を分散及び/又は混錬することにより得ることができる。なお、分散及び混錬には、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式撹拌機等を用いることができる。
【0100】
(導電膜)
本発明の導電膜は、上述した本発明の導電性ペーストを用いて形成されたものである。本発明の導電膜は、上述した本発明の導電性ペーストを用いて形成されたものであるため、ライン抵抗が低減されている。
なお、本発明の導電膜は、通常、上述した本発明の導電性ペーストを基板等に塗布又は印刷し、これを焼成して形成した膜である。
【0101】
(太陽電池セル)
本発明の太陽電池セルは、上述した本発明の導電膜を備える。本発明の太陽電池セルは、ライン抵抗が低減された導電膜を備えるため、優れた性能を有する。太陽電池セルが備える導電膜は、太陽電池セルの電極(集電電極等)や電気配線として機能し得る。
なお、本発明の太陽電池セルが備える導電膜は、通常、上述した本発明の導電性ペーストを基板等に塗布又は印刷し、これを焼成して形成した膜である。
【0102】
本発明の太陽電池セルは、本発明の導電膜を備えるものであれば特に限定されず、半導体基板、拡散層、反射防止層、BSF(Back Surface Field)層、表面電極、裏面電極等を適宜備えていてもよい。
【実施例0103】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
(銀粉X1の調製)
銀イオンとして0.14mol/Lの硝酸銀水溶液3.5Lに対して、硝酸銅(II)三水和物の5質量%水溶液を40.8g添加し、硝酸銀及び硝酸銅(II)三水和物を含む混合液(銀に対して銅が1質量%)を得た。次いで、該混合液を撹拌しながら、28質量%のアンモニア水113.2gを添加し、混合液の液温を45℃に調整した。次いで、該混合液に20質量%の水酸化ナトリウム水溶液15gを添加してpHを調整し、還元剤として26質量%のホルムアルデヒド水溶液250gを添加して空隙含有銀粒子を析出させた。次いで、混合液に還元剤を添加してから15秒後に、銀に対して0.18質量%のステアリン酸含有イソプロパノール溶液を加えた。撹拌を停止させ、ヌッチェフィルターを用いて固形物をろ過、水洗し、得られた固形物を真空乾燥機にて73℃で10時間乾燥させた。乾燥後、サンプルミルを用いて乾式解砕処理を施し、銅含有銀粉である銀粉X1を得た。
【0105】
〔銀粉X1中の銅含有量の測定〕
銀粉X1中の銅の定量方法は、以下の分析方法により実施した。
1)サンプル1gを精秤し、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200℃で30分間加熱した。
2)1)で加熱したサンプルを放冷後、純水を用いて、100mLに定容し、そこから上澄み液を5mL分取し、純水を用いて、再度100mLに定容することで、ICP分析用のサンプルを準備した。
3)検量線作成に用いる銅の標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
4)ICP定量は、アジレント・テクノロジー製のAglent5800 ICP-OESを使用して行った。
【0106】
〔炭素量、酸素量、窒素量の測定〕
炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-810W)を用いて炭素量の測定を行った。また、酸素・窒素・水素同時分析装置(LECO社製のONH836)を用いて酸素、窒素量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(銀粉X2の調製)
硝酸銅(II)三水和物の5質量%水溶液の添加量を4.1gに変更し、硝酸銀及び硝酸銅(II)三水和物を含む混合液(銀に対して0.1質量%の銅を含有)を得たこと以外は、銀粉X1の調製と同様にして、各種操作を行い、銅含有銀粉である銀粉X2を得た。そして、得られた銀粉X2を用いて、銀粉X1の調製と同様にして、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(銀粉X3の調製)
硝酸銅(II)三水和物の5質量%水溶液の添加量を0.2gに変更し、硝酸銀及び硝酸銅(II)三水和物を含む混合液(銀に対して0.005質量%の銅を含有)を得たこと以外は、銀粉X1の調製と同様にして、各種操作を行い、銅含有銀粉である銀粉X3を得た。そして、得られた銀粉X3を用いて、銀粉X1の調製と同様にして、各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(銀粉X4~X6の準備)
銀粉X4として、内部に空隙を有し、銅を含まない銀粉(DOWAエレクトロニクス社製、「AG-4-8FD」)を準備した。
銀粉X5として、内部に空隙を有さず、銅を含まない銀粉(DOWAエレクトロニクス社製、「AG-4-54F」)を準備した。
銀粉X6として、銀72質量%、銅28質量%含有するアトマイズ銀銅合金粉(SEM平均径1.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)を準備した。なお、アトマイズ銀銅合金粉とは、アトマイズ法により製造される銀銅合金粉である。そして、アトマイズ銀銅合金粉は内部に空隙を有さない。
【0110】
(実施例1)
<銅含有銀粉の準備>
フィラーとして、上記で得られた銀粉X1からなる銅含有銀粉を準備した。該銅含有銀粉を用いて、以下の測定を行った。なお、実施例1に係る銅含有銀粉の断面の走査型電子顕微鏡画像を
図1に示す。
【0111】
〔熱機械分析の評価〕
銅含有銀粉の熱機械分析(TMA)は以下のようにして実施した。
まず、銅含有銀粉0.3gを計量した。次に、銅含有銀粉を直径5mmφの所定の金型に投入し、プレス機を用いて荷重50kgで1min押し固めて円板状の測定試料を作製した。この測定試料を、熱機械分析(TMA)装置(Thermo plus EVO 2 シリーズ TMA8311)の試料ホルダにセットし、測定プローブにより、測定荷重98mNの荷重を付与して、25℃から900℃まで昇温速度10℃/分で昇温して、測定試料の膨張率及び収縮率を測定した。そのうち100℃から600℃までの測定結果について以下の評価を行った。
測定(昇温)開始から1秒毎に、膨張率及び収縮率、並びにその時の温度を記録し、TMA曲線を得た。得られたTMA曲線を時間で微分して、TMA曲線の微分曲線(dTMA曲線)を得た。実施例1に係る銅含有銀粉のdTMA曲線を
図2に示す。
上記dTMA曲線を用いて、最大膨張ピークの温度及びdTMA、第1の収縮ピークの温度及びdTMA、第2の収縮ピークの温度及びdTMA、並びに、300℃から600℃の間のdTMA曲線の蛇行の有無を確認した。結果を表2に示す。
【0112】
〔空隙含有銀粒子の観察〕
上記銅含有銀粉を用いて、以下の方法により、銀粒子を観察して銀粒子内部の空隙の有無を確認した。
具体的には、まず、銅含有銀粉を樹脂(ストルアス社製、エポフィックス樹脂)及び硬化剤(ストルアス社製、エポフィックス硬化剤)中に入れて固化し、固化させた樹脂を切断した。次いで、切断面をクロスセクションポリッシャー(日本ハイテクノロジーズ社製、ArBlade5000)により研磨することにより銀粒子の断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-IT800SHL)により各銀粒子を観察して銀粒子内部の空隙の有無を確認し、銅含有銀粉における内部に空隙を有する空隙含有銀粒子の有無を判断した。結果を表2に示す。なお、観察した銀粒子全体の半分以上が空隙を有していた。
【0113】
〔銅含有銀粉中の銅含有量の測定〕
上記銅含有銀粉中の銅の定量方法は、以下の分析方法により実施した。結果を表2に示す。
1)サンプル1gを精秤し、純水15mL、硝酸(精密分析用)10mLを加え、200
℃で30分間加熱した。
2)1)で加熱したサンプルを放冷後、純水を用いて、100mLに定容し、そこから上澄み液を5mL分取し、純水を用いて、再度、100mLに定容することで、ICP分析用のサンプルを準備した。
3)検量線作成に用いる銅の標準溶液は、5Nの銀を用いてICP分析用のサンプルと同等の銀濃度となるように調整したものを用意した。
4)ICP定量は、アジレント・テクノロジー製のAglent5800 ICP-OESを使用して行った。
【0114】
〔真密度の測定〕
上記銅含有銀粉の真密度は、乾式自動密度計を用いて測定した。結果を表2に示す。
具体的には、まず、10ccのプラチナるつぼに銅含有銀粉を充填し、充填した銅含有銀粉の質量を精密に測定した。そして、乾式自動密度計(マイクロメリティックス製 アキュピックII1340)を用いて、るつぼ内が一定圧力になるまでヘリウムガスを充填したときのガス体積から銅含有銀粉の体積を測定し、銅含有銀粉の質量をその体積で除算することで真密度を計算した。
【0115】
〔BET比表面積の測定〕
上記銅含有銀粉のBET比表面積は、BET比表面積測定装置(Macsorb HM-model 1210、MOUNTECH社製)を用いて、窒素吸着によるBET1点法により測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間とした。結果を表2に示す。
【0116】
〔粒度分布の測定〕
上記銅含有銀粉の体積基準の最小粒子径(DMIN)、累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)、及び累積95%粒子径(D95)、並びに、累積100%(即ち、最大粒子)の粒子径(DMAX)を以下の方法により測定した。結果を表2に示す。
銅含有銀粉0.1gをイソプロピルアルコール(IPA)40mLに加えて超音波ホモジナイザー(装置名:US-150T、株式会社日本精機製作所製;19.5kHz、チップ先端直径18mm)により2分間分散させた後、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)により測定した。
【0117】
<導電性ペーストの調製>
上記銅含有銀粉、アルミニウムとして、金属アルミニウム含有量が99.87質量%、不純物の含有量が0.13質量%(鉄が0.09質量%、ケイ素が0.04質量%)のアルミニウム粉(SEM平均径:2.0μm)と、ガラスフリットとしてガラス粉(PbOを主成分として含有し、B2O3、SiO2及びその他の酸化物を含有)、エチルセルロース、テキサノール、ブチルカルビトールアセテート、クエン酸トリブチル、1-オクタノール、オレイン酸、トリアセチン、メチルフェニルポリシロキサン、水添ひまし油、及び脂肪酸アマイドを表3に示す組成となるように混合し、混合物を得た。
次いで、得られた混合物を、自公転撹拌機(公転1000rpm)の条件にて予備混合後、3本ロール(Esact製)にて混錬し、導電性ペーストを得た。
なお、導電性ペースト中の銀含有量は85.305質量%であり、銅含有量は0.145質量%である。
【0118】
〔ライン抵抗値〕
上記で得られた導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷により直線形状を印刷した。直線は設計線幅12μmであり、直線の長さ150mmとした。印刷にはマイクロテック製印刷機を使用し、スキー時速度350mm/sで印刷した。印刷には厚み170μm程度のシリコン基板(太陽電池用途、テクスチャ形成・SiNx成膜済み)を使用した。印刷後、温度を200℃に設定した乾燥機中で5分間乾燥させた後、太陽電池焼成炉(NGK製)にて、ウェハ上面のピーク温度が750℃になる条件にて焼成しサンプルを作製した。焼成後の電極の抵抗値(導電膜のライン抵抗値)は、印刷電極の両端に測定端子をあて、デジタルマルチメーター(株式会社エーディーシー製)にて測定した。結果を表2に示す。
【0119】
(実施例2)
フィラーとして、銀粉X1からなる銅含有銀粉に替えて、銀粉X2からなる銅含有銀粉を用いたこと以外は、実施例と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表2に示す。実施例2に係る銅含有銀粉のdTMA曲線を
図3に示す。
なお、実施例2の導電性ペースト中の銀含有量は85.420質量%であり、銅含有量は0.030質量%である。
なお、空隙含有銀粒子の観察において、観察した銀粒子全体の半分以上が空隙を有していた。
【0120】
(実施例3)
フィラーとして、銀粉X1からなる銅含有銀粉に替えて、銀粉X3からなる銅含有銀粉を用いたこと以外は、実施例と同様にして、各種作及び測定を実施した。結果を表2に示す。実施例3に係る銅含有銀粉のdTMA曲線を
図4に示す。
なお、実施例3の導電性ペースト中の銀含有量は85.446質量%であり、銅含有量は0.004質量%である。
なお、空隙含有銀粒子の観察において、観察した銀粒子全体の半分以上が空隙を有していた。
【0121】
(比較例1)
フィラーとして、銀粉X1からなる銅含有銀粉に替えて、銀粉X4からなる銀粉を用いたこと以外は、実施例と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表2に示す。比較例1に係る銀粉のdTMA曲線を
図5に示す。
【0122】
(比較例2)
フィラーとして、銀粉X1からなる銅含有銀粉に替えて、銀粉X5及び銀粉X6からなる混合銀粉を用いたこと以外は、実施例と同様にして、各種操作及び測定を実施した。結果を表2に示す。比較例2に係る混合銀粉のdTMA曲線を
図6に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表2からも明らかなように、実施例の銅含有銀粉は、導電膜のライン抵抗を低減可能であることが分かる。
前記微分曲線において、前記膨張ピークの温度から300℃までの間に、dTMAが-0.30%/min以下の第2の収縮ピークを有する、請求項1に記載の銅含有銀粉。