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特開2025-19871プログラム、ニューラルネットワークモデルの生成方法、情報処理方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019871
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】プログラム、ニューラルネットワークモデルの生成方法、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20250131BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123745
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】林 義人
(72)【発明者】
【氏名】上間 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 穣
(72)【発明者】
【氏名】竹原 徹郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】患者の体の負担を減軽するために、ニューラルネットワークモデルにより胃癌のリンパ節転移に関する情報を出力することが可能なプログラム等を提供すること。
【解決手段】一つの側面に係るプログラムは、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得し、病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されたニューラルネットワークモデル171に、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を説明変数として入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を通じて内視鏡的治癒度C-2(eCuraC2)に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得し、
病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されたニューラルネットワークモデルに、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を説明変数として入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークモデルは、さらに外科手術、ESD、及び、ESDとESD後の追加外科手術との双方の手術を含む治療法を説明変数として入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されている
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークモデルに前記治療法を入力する場合に、ESD、または、ESDとESD後の追加手術との双方の手術に対応する共通値を前記ニューラルネットワークモデルに入力する
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
病変深達度として粘膜下層深部浸潤癌、粘膜下層軽度浸潤癌、及び、粘膜浸潤癌のいずれかを選択するためのアイコンを出力し、
前記アイコンの選択を受け付け、
選択されたアイコンに対応する情報を前記ニューラルネットワークモデルに入力する
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記リンパ節転移に関する情報として転移リスク、及び、前記転移リスクの結果に寄与した説明変数を出力する
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項6】
内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及び、治療法と、リンパ節転移に関する情報とを含む訓練データを取得し、
取得した訓練データに基づき、前記病変サイズ、前記病変深達度、前記リンパ管侵襲の有無、前記静脈侵襲の有無、前記主組織型、前記組織混合型の有無、及び前記治療法を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するニューラルネットワークモデルを生成する
ニューラルネットワークモデルの生成方法。
【請求項7】
内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得し、
病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されたニューラルネットワークモデルに、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項8】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得し、
病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されたニューラルネットワークモデルに、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、ニューラルネットワークモデルの生成方法、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、胃癌のリンパ節転移判定に関する技術がある。特許文献1には、胃癌の転移が疑われるリンパ節組織を用いて調製された検出試料中のサイトケラチン19のmRNAを定量し、mRNAの定量値に基づいて胃癌のリンパ節への転移を判定する胃癌のリンパ節転移判定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-194028
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、胃癌の患者からリンパ節組織を含む試料を採取することが必要になるため、患者の身体への負担が大きいという問題がある。
【0005】
一つの側面では、患者の体の負担を減軽するために、ニューラルネットワークモデルにより胃癌のリンパ節転移に関する情報を出力することが可能なプログラム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を通じて内視鏡的治癒度C-2(eCuraC2)に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得し、病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を入力した場合にリンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されたニューラルネットワークモデルに、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を説明変数として入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、ニューラルネットワークモデルにより胃癌のリンパ節転移に関する情報を出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
図2】訓練データDB及び予測結果DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図3】リンパ節転移情報出力モデルを説明する説明図である。
図4】リンパ節転移情報出力モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
図5】リンパ節転移の予測画面の一例を示す説明図である。
図6】リンパ節転移の予測結果画面の一例を示す説明図である。
図7】リンパ節転移に関する情報を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態2における訓練データDB及び予測結果DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図9】実施形態2におけるリンパ節転移情報出力モデルを説明する説明図である。
図10】実施形態2におけるリンパ節転移の予測画面の一例を示す説明図である。
図11】実施形態2におけるリンパ節転移の予測結果画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0010】
(実施形態1)
実施形態1は、ニューラルネットワークモデルによりリンパ節転移に関する情報を出力する形態に関する。
【0011】
本実施形態のシステムは、情報処理装置1を含む。情報処理装置1は、種々の情報に対する処理、記憶及び送受信を行う情報処理装置である。情報処理装置1は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ、汎用のタブレットPC(パソコン)、スマートフォン、携帯電話、アップルウォッチ(Apple Watch:登録商標)等のウェアラブルデバイス、またはタブレット等の情報処理機器である。以下では簡潔のため、情報処理装置1をコンピュータ1と読み替える。
【0012】
本実施形態に係るコンピュータ1は、内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を取得する。コンピュータ1は、後述するリンパ節転移情報出力モデル(ニューラルネットワークモデル)171に、取得した病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を説明変数として入力することにより、リンパ節転移に関する情報を出力する。
【0013】
図1は、コンピュータ1の構成例を示すブロック図である。コンピュータ1は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読取部16及び大容量記憶部17を含む。各構成はバスBで接続されている。
【0014】
制御部11はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、または量子プロセッサ等の演算処理装置を含み、記憶部12に記憶された制御プログラム1P(プログラム製品)を読み出して実行することにより、コンピュータ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0015】
なお、制御プログラム1Pは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。なお、図1では制御部11を単一のプロセッサであるものとして説明するが、マルチプロセッサであっても良い。
【0016】
記憶部12はRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ素子を含み、制御部11が処理を実行するために必要な制御プログラム1P又はデータ等を記憶している。また、記憶部12は、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータ等を一時的に記憶する。通信部13は通信に関する処理を行うための通信モジュールである。
【0017】
入力部14は、キーボード、マウスまたは表示部15と一体化したタッチパネルでも良い。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等であり、制御部11の指示に従い各種情報を表示する。
【0018】
読取部16は、CD(Compact Disc)-ROM又はDVD(Digital Versatile Disc)-ROMを含む可搬型記憶媒体1aを読み取る。制御部11が読取部16を介して、制御プログラム1Pを可搬型記憶媒体1aより読み取り、大容量記憶部17に記憶しても良い。また、ネットワーク等を介して他のコンピュータから制御部11が制御プログラム1Pをダウンロードし、大容量記憶部17に記憶しても良い。さらにまた、半導体メモリ1bから、制御部11が制御プログラム1Pを読み込んでも良い。
【0019】
大容量記憶部17は、例えばHDD(Hard disk drive:ハードディスク)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)等の記録媒体を備える。大容量記憶部17は、リンパ節転移情報出力モデル171、訓練データDB172及び予測結果DB173を含む。
【0020】
リンパ節転移情報出力モデル171は、複数の説明変数に基づき、リンパ節転移に関する情報を出力する出力器(予測器)であり、深層学習により生成された学習済みモデルである。なお、説明変数に関しては後述する。訓練データDB172は、リンパ節転移情報出力モデル171を構築(生成)するための訓練データを記憶している。予測結果DB173は、リンパ節転移情報出力モデル171により予測された結果を記憶している。
【0021】
なお、本実施形態において記憶部12及び大容量記憶部17は一体の記憶装置として構成されていても良い。また、大容量記憶部17は複数の記憶装置により構成されていても良い。更にまた、大容量記憶部17はコンピュータ1に接続された外部記憶装置であっても良い。
【0022】
コンピュータ1は、種々の情報処理及び制御処理等をコンピュータ単体で実行しても良いし、複数のコンピュータで分散して実行しても良い。また、コンピュータ1は、1台のコンピュータ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されても良いし、クラウドサーバを用いて実現されても良い。
【0023】
図2は、訓練データDB172及び予測結果DB173のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【0024】
訓練データDB172は、訓練ID列、入力データ列及び転移有無列を含む。訓練ID列は、各訓練データを識別するために、一意に特定される訓練データのIDを記憶している。
【0025】
入力データ列は、複数の説明変数及び各説明変数の値を記憶している。説明変数は、内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無等を含む。転移有無列は、陽性(Positive)を示す転移あり、または陰性(Negative)を示す転移なしを含むリンパ節転移の有無情報を記憶している。
【0026】
予測結果DB173は、番号列、病変サイズ列、病変深達度列、リンパ管侵襲有無列、静脈侵襲有無列、主組織型列、組織混合型有無列及び確率値列を含む。番号列は、各予測結果データを識別するために、一意に特定される予測結果データの番号を記憶している。
【0027】
病変サイズ列は、胃癌検体の病変の大きさを記憶している。病変深達度列は、病変深達度として粘膜下層深部浸潤癌、粘膜下層軽度浸潤癌、または粘膜浸潤癌に対応する値を記憶している。例えば、粘膜下層深部浸潤癌に対応する値を1とし、粘膜下層軽度浸潤癌に対応する値を0.5とし、粘膜浸潤癌に対応する値を0とする。
【0028】
リンパ管侵襲有無列は、リンパ管侵襲の有無情報を記憶している。例えば、リンパ管侵襲ありを1とし、リンパ管侵襲なしを0とする。静脈侵襲有無列は、静脈侵襲の有無情報を記憶している。例えば、静脈侵襲ありを1とし、静脈侵襲なしを0とする。主組織型列は、中分化型腺癌(tub2)またはその他の組織型に対応する値を記憶している。例えば、中分化型腺癌に対応する値を1とし、その他の組織型に対応する値を0とする。
【0029】
組織混合型有無列は、組織混合型の有無情報を記憶している。例えば、組織混合型ありを1とし、組織混合型なし(単一組織型)を0とする。確率値列は、リンパ節転移情報出力モデル171により予測したリンパ節転移の確率値を記憶している。
【0030】
なお、上述した各DBの記憶形態は一例であり、データ間の関係が維持されていれば、他の記憶形態であっても良い。
【0031】
図3は、リンパ節転移情報出力モデル171を説明する説明図である。リンパ節転移情報出力モデル171は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用される。リンパ節転移情報出力モデル171は、複数の説明変数が入力された場合、リンパ節転移に関する情報を出力する学習モデルである。説明変数は、内視鏡的粘膜下層剥離術を通じて内視鏡的治癒度C-2に分類された胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を含む。
【0032】
本実施形態のリンパ節転移情報出力モデル171は、DNN(Deep Neural Network(s))を用いて、リンパ節転移に関する情報の出力処理を行う。リンパ節転移情報出力モデル171は、複数の説明変数の入力を受け付ける入力層と、リンパ節転移に関する情報を出力する出力層と、複数の説明変数の特徴量を抽出する複数の中間層(隠れ層)とを有する。
【0033】
入力層は、複数の説明変数の入力を受け付ける複数のニューロン(ノード;ユニット)を有し、入力された複数の説明変数を中間層に受け渡す。各中間層は、複数のニューロンを有し、複数の説明変数の特徴量を抽出する。例えば、リンパ節転移情報出力モデル171は、第1中間層及び第2中間層を有する。第1中間層は、6ニューロンを有し、第2中間層は18ニューロンを有しても良い。
【0034】
中間層は、入力層から入力された説明変数を複数の中間層(例えば全結合層)を通し、各層のニューロンをつなぐ活性化関数として、例えば、シグモイド関数、tanh関数、ReLu(Rectified Linear Unit)関数を用いることで、有効な特徴量を獲得する。
【0035】
出力層は、例えばシグモイド関数またはソフトマックス関数を含み、中間層から出力された特徴量に基づいて、予測されたリンパ節転移に関する情報を出力する。リンパ節転移に関する情報は、例えば、早期胃癌のリンパ節転移の確率値、リンパ節転移の確率値に応じて分類されたリスクレベル、または、リンパ節転移の有無情報等を含む。
【0036】
リンパ節転移の確率値は、例えば、リンパ節転移率を示す連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)である。リスクレベルは、例えば、リンパ節転移の確率値が0.25未満である低リスク、リンパ節転移の確率値が0.25%以上、且つ、0.65未満である中リスク、及び、リンパ節転移の確率値が0.65以上である高リスクを含む。リンパ節転移の有無情報は、転移あり(陽性)もしくは転移なし(陰性)を含み、例えば、転移ありを1とし、転移なしを0とする。
【0037】
なお、本実施形態では、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報がリンパ節転移の確率値である例を説明するが、他の種類のリンパ節転移に関する情報にも同様に適用することができる。
【0038】
コンピュータ1は、訓練データDB172に記憶されている訓練データを用いて学習を行う。訓練データは、医療機関の過去症例から収集された大量のデータセットに基づいて生成される。なお、訓練データは別途人手で作成されたデータであっても良い。訓練データは、複数の説明変数と、リンパ節転移に関する情報とが対応付けられた組み合わせのデータである。
【0039】
リンパ節転移に関する情報は、例えば、リンパ節転移の確率値、リンパ節転移の確率値に応じて分類されたリスクレベル、または、リンパ節転移の有無情報等を含む。なお、本実施形態では、複数の説明変数と、リンパ節転移の有無情報(転移あり、または転移なし)とが対応付けられた組み合わせのデータを訓練データとし、一例として説明するが、他の種類のリンパ節転移に関する情報にも同様に適用することができる。
【0040】
訓練データDB172の各レコードがそれぞれ訓練データである。入力データ列の各説明変数及び各説明変数の値が入力データである。転移有無列の値が各説明変数及び各説明変数の値に対する正解データ(転移あり、または転移なし)である。
【0041】
コンピュータ1は、複数の説明変数を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、予測されたリンパ節転移の確率値を出力層から取得する。コンピュータ1は、出力層から出力されたリンパ節転移の確率値を、訓練データにおける正解値と比較し、出力層からの出力値が正解値に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。
【0042】
当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)等である。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えばコンピュータ1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。
【0043】
コンピュータ1は、訓練データDB172に記憶してある各レコードについて上記の処理を行い、リンパ節転移情報出力モデル171の学習を行う。これにより、リンパ節転移の確率値を出力可能なモデルを構築することができる。なお、他のコンピュータ(図示せず)により上述の学習処理を行い、リンパ節転移情報出力モデル171をデプロイしても良い。
【0044】
コンピュータ1は複数の説明変数を取得した場合、取得した複数の説明変数をリンパ節転移情報出力モデル171に入力する。コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171の中間層にて複数の説明変数の特徴量を抽出する演算処理を行う。コンピュータ1は、抽出した特徴量をリンパ節転移情報出力モデル171の出力層に入力して、リンパ節転移の確率値を出力する。
【0045】
図示のように、胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を含む説明変数である入力データに対し、「0.85」であるリンパ節転移の確率値が出力される。
【0046】
なお、リンパ節転移に対する分類結果(例えば、転移あり及び転移なし)は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されても良い。例えば、複数の説明変数である入力データに対し、「転移あり」及び「転移なし」それぞれの確率値が、「0.85」、「0.15」である予測結果が出力される。
【0047】
また、所定閾値を利用して予測結果を出力しても良い。コンピュータ1は、例えば「転移あり」の確率値(0.85)が所定閾値(例えば、0.80)以上であると判定した場合、当該「転移あり」の確率値を予測結果として出力する。なお、上述した閾値を利用せず、リンパ節転移情報出力モデル171が予測した各分類結果の確率値から、最も高い確率値に対応する分類結果を予測結果として出力しても良い。
【0048】
なお、リンパ節転移情報出力モデル171は、DNNに限られず、多層パーセプトロン(MLP;Multi-Layer Perceptron)、RNN(Recurrent Neural Network)、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、k近傍法、二分木探索、ベイジアンネットワーク、回帰木、ロジスティック回帰、SVM(Support Vector Machine)、k-NN(k-Nearest Neighbor algorithm)、単純ベイズ分類器、またはトランスフォーマー(Transformer)ネットワークといった他のモデル等によって実現されて良い。
【0049】
図4は、リンパ節転移情報出力モデル171の生成処理の手順を示すフローチャートである。コンピュータ1の制御部11は、複数の説明変数(胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び組織混合型の有無等)と、リンパ節転移に関する情報(例えば、転移ありまたは転移なし)とが対応付けられた組み合わせの訓練データを大容量記憶部17の訓練データDB172から複数取得する(ステップS101)。
【0050】
制御部11は、取得した訓練データを用いて、複数の説明変数を入力として、リンパ節転移に関する情報を出力とするリンパ節転移情報出力モデル171を生成する(ステップS102)。制御部11は、生成したリンパ節転移情報出力モデル171を記憶部12または大容量記憶部17に記憶し(ステップS103)、一連の処理を終了する。
【0051】
図5は、リンパ節転移の予測画面の一例を示す説明図である。当該画面は、病変サイズ入力欄11a、病変深達度選択欄11b、主組織型選択欄11c、組織混合型選択欄11d、リンパ管侵襲選択欄11e、静脈侵襲選択欄11f及び予測ボタン11gを含む。
【0052】
病変サイズ入力欄11aは、胃癌検体の病変サイズの入力を受け付ける入力欄である。病変深達度選択欄11bは、病変深達度として粘膜下層深部浸潤癌(SM2 or deeper)、粘膜下層軽度浸潤癌(SM1)、または粘膜浸潤癌(M)のいずれかを選択するためのアイコンである。
【0053】
主組織型選択欄11cは、中分化型腺癌(tub2)またはその他の組織型(Other)を選択するためのアイコンである。組織混合型選択欄11dは、組織混合型(Mixed type)または単一組織型(Pure type)を選択するためのアイコンである。リンパ管侵襲選択欄11eは、リンパ管侵襲あり(Positive)またはリンパ管侵襲なし(Negative)を選択するためのアイコンである。
【0054】
静脈侵襲選択欄11fは、静脈侵襲あり(Positive)または静脈侵襲なし(Negative)を選択するためのアイコンである。予測ボタン11gは、リンパ節転移情報出力モデル171を用いて、リンパ節転移に関する情報を出力するためのボタンである。
【0055】
コンピュータ1は、病変サイズ入力欄11aの入力操作を受け付けた場合、入力された病変サイズを取得する。
【0056】
コンピュータ1は、病変深達度選択欄11bの選択操作を受け付けた場合、選択された粘膜下層深部浸潤癌、粘膜下層軽度浸潤癌または粘膜浸潤癌に対応する値を取得する。例えば、粘膜下層深部浸潤癌に対応する値を1とし、粘膜下層軽度浸潤癌に対応する値を0.5とし、粘膜浸潤癌に対応する値を0とする。
【0057】
コンピュータ1は、主組織型選択欄11cの選択操作を受け付けた場合、選択された中分化型腺癌またはその他の組織型に対応する値を取得する。例えば、組織混合型ありを1とし、組織混合型なし(単一組織型)を0とする。
【0058】
コンピュータ1は、組織混合型選択欄11dの選択操作を受け付けた場合、選択された組織混合型または単一組織型に対応する値を取得する。例えば、組織混合型を1とし、単一組織型を0とする。
【0059】
コンピュータ1は、リンパ管侵襲選択欄11eの選択操作を受け付けた場合、リンパ管侵襲ありまたはリンパ管侵襲なしに対応する値を取得する。例えば、リンパ管侵襲ありを1とし、リンパ管侵襲なしを0とする。
【0060】
コンピュータ1は、静脈侵襲選択欄11fの選択操作を受け付けた場合、静脈侵襲ありまたは静脈侵襲なしに対応する値を取得する。例えば、静脈侵襲ありを1とし、静脈侵襲なしを0とする。
【0061】
コンピュータ1は、予測ボタン11gのタッチ操作を受け付けた場合、病変サイズ入力欄11aにより入力された病変サイズ、病変深達度選択欄11bにより選択された病変深達度、主組織型選択欄11cにより選択された主組織型、組織混合型選択欄11dにより選択された組織混合型、リンパ管侵襲選択欄11eにより選択されたリンパ管侵襲の有無、及び、静脈侵襲選択欄11fにより選択された静脈侵襲の有無を説明変数として、リンパ節転移情報出力モデル171に入力する。
【0062】
コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171を用いて、入力された複数の説明変数に基づき、リンパ節転移に関する情報を出力する。コンピュータ1は、出力したリンパ節転移に関する情報を予測結果DB173に記憶する。具体的には、コンピュータ1は、予測結果に対して番号を割り振る。コンピュータ1は、割り振った番号に対応付けて、病変サイズ、病変深達度、リンパ節侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及びリンパ節転移に関する情報(例えば、リンパ節転移の確率値)を予測結果DB173に記憶する。
【0063】
コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報を画面(後述する図6)に表示する。
【0064】
図6は、リンパ節転移の予測結果画面の一例を示す説明図である。当該画面は、転移リスク表示欄12a及び寄与度表示欄12bを含む。転移リスク表示欄12aは、リンパ節転移に関する情報(例えば、リンパ節転移の確率値)として転移リスクを表示する表示欄である。寄与度表示欄12bは、転移リスクの結果に寄与した説明変数(項目)、及び各説明変数の寄与度を表示する表示欄である。
【0065】
コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報をリンパ節転移リスクとして転移リスク表示欄12aに表示する。図示のように、リンパ節転移リスクが0.85である。
【0066】
コンピュータ1は、例えば、入力データに含まれる複数の説明変数に基づき、出力データであるリンパ節転移リスクに対し、寄与度(影響度;貢献度)をシャープレイ値(Shapley Value)により算出する。
【0067】
シャープレイ(SHAP;SHapley Additive exPlanations)は、予測根拠の妥当性を評価する手法とし、予測器であるリンパ節転移情報出力モデル171への各入力値(特徴量)が予測結果へ与えた影響の度合いを可視化する手法である。本実施形態では、入力値が複数の説明変数(説明変数の名称及び値)であり、転移リスクの予測結果へ与えた影響の度合いが、転移リスクの結果に寄与した説明変数の寄与度である。
【0068】
リンパ節転移情報出力モデル171への応用には、例えば、特徴量X=(X1,X2,X3,X4,X5,X6)の予測値への寄与度をシャープレイ値で求めるものである。X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、説明変数を示す。
【0069】
例えば、X1が病変サイズであり、X2が病変深達度であり、X3が主組織型であり、X4が組織混合型の有無であり、X5がリンパ節侵襲の有無であり、且つ、X6が静脈侵襲の有無である。なお、ここで、6つの説明変数の例を説明したが、説明変数の数は任意であり、6つの説明変数に限定されるものではない。例えば、後述する実施形態2での治療法を説明変数に含んでも良い。
【0070】
モデルをf(X)とし、平均的な予測値をE[f(X)]とする。1つのインスタンスにおいてそれぞれ(x1,x2,x3,x4,x5,x6)=xという特徴量をとっているものとし、このときの予測値をf(x)とする。平均的な予測値のE[f(X)]と各インスタンスの予測値f(x)との乖離に各特徴量がどのくらい影響しているかを求めることができる。
【0071】
具体的には、各インスタンスの予測値f(x)は、E[f(X|X1=x1,X2=x2,X3=x3,X4=x4,X5=x5,X6=x6)]=f(x1,x2,x3,x4,x5,x6)=f(x)であるから、平均的な予測値をE[f(X)]からX1,X2,X3,X4,X5,X6を条件付けてゆくことで、その特徴量を知ることが、各インスタンスの予測に対してどのように影響するかを求めることになる。なお、X1,X2,X3,X4,X5,X6という順で条件付けしているが、これに限るものではない。
【0072】
X1、X2、X3,X4,X5,X6が順に加わって、X1、X2、X3,X4,X5,X6の組み合わせ、及び、X1、X2、X3,X4,X5,X6の全ての並び順で条件付けし、それぞれにおいて得られる各特徴量が予測値に与える限界的な効果(貢献)の平均を求めることにより、転移リスクの結果に寄与した説明変数の寄与度を算出することができる。
【0073】
なお、シャープレイに限定されるものではない。例えば、リンパ節転移情報出力モデル171にLIME(Local Interpretable Model-agnostic Explanations)等の線形回帰の手法を適用することにより、転移リスクの結果に寄与した説明変数の寄与度を算出しても良い。
【0074】
このように、コンピュータ1は、取得した複数の説明変数をリンパ節転移情報出力モデル171に入力し、リンパ節転移に関する情報を転移リスクとして出力する。コンピュータ1は、入力データである複数の説明変数に基づき、シャープレイのライブラリ等を用いて、リンパ節転移情報出力モデル171による移転リスクの結果に寄与した説明変数を特定する。コンピュータ1は、特定した説明変数と、当該説明変数の寄与度とを寄与度表示欄12bに表示する。
【0075】
図7は、リンパ節転移に関する情報を出力する際の処理手順を示すフローチャートである。コンピュータ1の制御部11は、複数の説明変数を受け付けるためのオブジェクトを表示部15により表示する(ステップS111)。説明変数は、病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び、組織混合型の有無を含む。
【0076】
例えば、オブジェクトは、病変サイズの入力を受け付けるための入力欄(病変サイズ入力欄11a)、病変深達度(粘膜下層深部浸潤癌、粘膜下層軽度浸潤癌、または粘膜浸潤癌)を選択するためのアイコン(病変深達度選択欄11b)、主組織型(中分化型腺癌、またはその他の組織型)を選択するためのアイコン(主組織型選択欄11c)、組織混合型の有無(組織混合型、または単一組織型)を選択するためのアイコン(組織混合型選択欄11d)、リンパ管侵襲の有無(リンパ管侵襲あり、またはリンパ管侵襲なし)を選択するためのアイコン(リンパ管侵襲選択欄11e)、及び、静脈侵襲の有無(静脈侵襲あり、または静脈侵襲なし)を選択するためのアイコン(静脈侵襲選択欄11f)を含む。
【0077】
制御部11は、オブジェクトを通じて、複数の説明変数の入力または選択を入力部14により受け付ける(ステップS112)。制御部11は、受け付けた複数の説明変数をリンパ節転移情報出力モデル171に入力する(ステップS113)。制御部11は、リンパ節転移情報出力モデル171を用いて、入力された複数の説明変数に基づき、リンパ節転移に関する情報を転移リスクとして出力する(ステップS114)。
【0078】
制御部11は、入力データである複数の説明変数に基づき、シャープレイのライブラリ等を用いて、リンパ節転移情報出力モデル171による移転リスクの結果に寄与した説明変数を特定する(ステップS115)。制御部11は、転移リスク、及び特定した転移リスクの結果に寄与した説明変数を表示部15により表示する(ステップS116)。
【0079】
制御部11は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報を大容量記憶部17の予測結果DB173に記憶する(ステップS117)。具体的には、制御部11は、予測結果に対して番号を割り振る。コンピュータ1は、割り振った番号に対応付けて、病変サイズ、病変深達度、リンパ節侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及びリンパ節転移に関する情報(例えば、リンパ節転移の確率値)を予測結果DB173に記憶する。制御部11は、処理を終了する。
【0080】
本実施形態によると、胃癌の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、及び組織混合型の有無と、リンパ節転移に関する情報とを含む訓練データに基づき、リンパ節転移情報出力モデル171を生成することが可能となる。
【0081】
本実施形態によると、リンパ節転移情報出力モデル171を用いて、リンパ節転移に関する情報を出力することが可能となる。
【0082】
本実施形態によると、リンパ節転移に関する情報として転移リスク、及び、当該転移リスクの結果に寄与した説明変数を出力することが可能となる。
(実施形態2)
実施形態2は、さらに治療法を説明変数としてリンパ節転移情報出力モデル171に入力した場合、リンパ節転移に関する情報を出力する形態に関する。なお、実施形態1と重複する内容については説明を省略する。
【0083】
本実施形態でのリンパ節転移情報出力モデル171は、さらに治療法を説明変数として入力した場合、リンパ節転移に関する情報を出力するよう学習されている。治療法は、外科手術、ESD、及び、ESDとESD後の追加外科手術との双方の手術(ESD+外科手術)を含む。
【0084】
図8は、実施形態2における訓練データDB172及び予測結果DB173のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。なお、図2と重複する内容については説明を省略する。
【0085】
本実施形態の訓練データDB172は、外科手術症例、ESD症例、及び、ESD+外科手術症例から収集された大量のデータセットに基づいて作成される。例えば、訓練データDB172は、2970件の外科手術症例、414件のESD症例、及び、122件のESD+外科手術症例から収集されたデータセットに基づいて作成されても良い。
【0086】
外科手術症例は、内視鏡治療の対象外である場合、または、胃癌の深達度により外科手術を要する場合、胃切除または合併切除等の外科手術が行われた症例である。ESD症例は、内視鏡治療の対象に対し、内視鏡的粘膜下層剥離術のみが行われた症例である。ESD+外科手術症例は、胃癌が取り切れなかった場合、または、ESD後の病理診断において病理学的非治癒切除であった場合、リンパ節郭清を伴う追加手術が推奨されているため、ESD後に、リンパ節郭清の処置等の外科手術が行われた症例である。
【0087】
訓練データDB172の入力データ列は、複数の説明変数及び各説明変数の値を記憶している。説明変数は、胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及び治療法等を含む。
【0088】
図示のように、一例とし、訓練IDが「00001」である訓練データは、外科手術症例の訓練データであり、訓練IDが「00002」である訓練データは、ESD症例の訓練データであり、訓練IDが「00003」である訓練データは、ESD+外科手術症例の訓練データである。
【0089】
予測結果DB173は、治療法列を含む。治療法列は、外科手術、ESD、またはESD+外科手術に対応する値を記憶している。なお、ESD、またはESD+外科手術に対し、ESD、またはESD+外科手術に対応する共通値が治療法列に記憶されている。例えば、外科手術に対応する値を1とし、ESD、またはESD+外科手術に対応する共通値を0とする。
【0090】
図9は、実施形態2におけるリンパ節転移情報出力モデル171を説明する説明図である。なお、図3と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
コンピュータ1は、訓練データDB172に記憶されている訓練データを用いて学習を行う。訓練データは、複数の説明変数と、リンパ節転移に関する情報とが対応付けられた組み合わせのデータである。本実施形態での説明変数は、胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及び治療法を含む。なお、リンパ節転移に関する情報に関しては、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
コンピュータ1は、複数の訓練データを訓練データDB172から取得する。コンピュータ1は、取得した各訓練データに含まれる治療法の種類(外科手術、ESD、またはESD+外科手術)を判定する。コンピュータ1は、治療法の種類が外科手術である場合、治療法である説明変数の値を1に設定する。コンピュータ1は、治療法の種類がESDまたはESD+外科手術である場合、治療法である説明変数の値を0に設定する。
【0093】
なお、治療法である説明変数の値が「0」または「1」の数値形式で訓練データDB172に記憶された場合、上述した判定処理を省略することができる。コンピュータ1は、取得した訓練データを用いて、リンパ節転移情報出力モデル171の学習処理を行う。なお、リンパ節転移情報出力モデル171の学習処理に関しては、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
コンピュータ1は複数の説明変数を取得した場合、取得した複数の説明変数をリンパ節転移情報出力モデル171に入力する。コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171の中間層にて複数の説明変数の特徴量を抽出する演算処理を行う。コンピュータ1は、抽出した特徴量をリンパ節転移情報出力モデル171の出力層に入力して、リンパ節転移の確率値を出力する。
【0095】
図示のように、胃癌検体の病変サイズ、病変深達度、リンパ管侵襲の有無、静脈侵襲の有無、主組織型、組織混合型の有無、及び治療法を含む説明変数に対し、「0.89」であるリンパ節転移の確率値が出力される。
【0096】
なお、治療法を含む訓練データに基づくリンパ節転移情報出力モデル171の生成処理の手順を示すフローチャートは、図4で示されているフローチャートと同様であるため、説明を省略する。
【0097】
図10は、実施形態2におけるリンパ節転移の予測画面の一例を示す説明図である。なお、図5と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。当該画面は、治療法選択欄11hを含む。治療法選択欄11hは、外科手術、ESDまたはESD+外科手術のいずれかを選択するためのアイコンである。
【0098】
コンピュータ1は、治療法選択欄11hの選択操作を受け付けた場合、選択された外科手術、ESDまたはESD+外科手術に対応する値を取得する。例えば、外科手術に対応する値を1とし、ESDに対応する値を0とし、ESD+外科手術に対応する値を0とする。
【0099】
コンピュータ1は、予測ボタン11gのタッチ操作を受け付けた場合、病変サイズ入力欄11aにより入力された病変サイズ、病変深達度選択欄11bにより選択された病変深達度、主組織型選択欄11cにより選択された主組織型、組織混合型選択欄11dにより選択された組織混合型、リンパ管侵襲選択欄11eにより選択されたリンパ管侵襲の有無、静脈侵襲選択欄11fにより選択された静脈侵襲の有無、及び、治療法選択欄11hにより選択された治療法を説明変数として、リンパ節転移情報出力モデル171に入力する。
【0100】
コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171を用いて、入力された複数の説明変数に基づき、リンパ節転移に関する情報を出力する。コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報を画面(後述する図11)に表示する。
【0101】
図11は、実施形態2におけるリンパ節転移の予測結果画面の一例を示す説明図である。なお、図6と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
コンピュータ1は、リンパ節転移情報出力モデル171から出力されたリンパ節転移に関する情報をリンパ節転移リスクとして転移リスク表示欄12aに表示する。図示のように、リンパ節転移リスクが0.89である。
【0103】
コンピュータ1は、入力データである複数の説明変数に基づき、シャープレイのライブラリ等を用いて、リンパ節転移情報出力モデル171による移転リスクの結果に寄与した説明変数を特定する。コンピュータ1は、特定した説明変数と、当該説明変数の寄与度とを寄与度表示欄12bに表示する。
【0104】
本実施形態によると、さらに治療法を含む説明変数に基づき学習されたリンパ節転移情報出力モデル171を用いて、リンパ節転移に関する情報を出力することが可能となる。
【0105】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0106】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0107】
1 情報処理装置(コンピュータ)
1a 可搬型記憶媒体
1b 半導体メモリ
1P 制御プログラム
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 表示部
16 読取部
17 大容量記憶部
171 リンパ節転移情報出力モデル(ニューラルネットワークモデル)
172 訓練データDB
173 予測結果DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11