(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002031
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】物流倉庫の制御装置
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B65G1/137 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101938
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】越村 三幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
(72)【発明者】
【氏名】野田 五十樹
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
(72)【発明者】
【氏名】小原 生光
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀生
(72)【発明者】
【氏名】若林 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】西川 弘一郎
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522CC03
3F522CC05
3F522GG09
3F522GG48
3F522LL20
3F522LL33
(57)【要約】
【課題】物品を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる物流倉庫の制御装置を提供する。
【解決手段】自動倉庫100には搬送機22と隣接する一時配置エリア125が設けられている。そして、経路演算部13は、一時配置エリア125への物品150の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式(例えば式(84)~(86))と、一時配置エリアへの物品150の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式(例えば、式(112)~(121))と、を満たすように、搬送経路情報を演算する。このように、経路演算部13は、第1の基準論理式及び第2の基準論理式を用いることで搬送経路において制約される動作などを、容易に排除した上で、一時配置エリア125を用いた搬送経路を効率よく探索することができる。
【選択図】
図32
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保管する自動倉庫と、
並べられた複数の前記物品を搬送する搬送レーンと、
前記搬送レーンと前記自動倉庫との間に設けられた搬送機と、を備える物流倉庫の制御装置であって、
前記物品が前記搬送レーン、前記搬送機、及び前記自動倉庫の順で移動するとき、前記物品の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する物品情報取得部と、
前記物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する経路演算部と、
前記搬送経路情報に基づいて、前記物流倉庫の搬送動作を制御する動作制御部と、を有し、
前記自動倉庫には前記搬送機と隣接する一時配置エリアが設けられており、
前記経路演算部は、
前記一時配置エリアへの前記物品の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式と、
前記一時配置エリアへの前記物品の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式と、を満たすように、前記搬送経路情報を演算する、物流倉庫の制御装置。
【請求項2】
前記搬送機は、前記一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び前記第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、前記物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、
前記経路演算部は、前記物品の前記横方向への移動を可能とする3フェーズの動作、及び前記搬送機の1回の昇降動作を1ステップとして、演算を行い、
前記垂直搬送機から移動可能な前記一時配置エリアの階層が定義されている、請求項1に記載の物流倉庫の制御装置。
【請求項3】
前記搬送機は、前記一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び前記第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、前記物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、
前記経路演算部は、第1の搬送棚に関する制約条件に関する補助論理式を参照して、前記搬送経路情報を演算する、請求項1に記載の物流倉庫の制御装置。
【請求項4】
前記経路演算部は、
取得される複数の前記搬送経路情報を、充足性最大化問題として定義し、
前記物品の横方向のコストを最小化させる前記搬送経路情報を探索する、請求項1に記載の物流倉庫の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流倉庫の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を保管する物流倉庫として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この物流倉庫は、搬送レーンから物品を搬入して、自動倉庫へ保管する。また、この物流倉庫は、自動倉庫に保管された物品を所定のタイミングで搬送して出庫する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自動倉庫には多数の物品が保管される。そのため、制御装置が、物品を入庫するとき、及び物品を出庫するときには、効率のよい搬送経路をを演算する必要がある。しかしながら、このような搬送経路の演算は、演算の負荷が膨大になるという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、物品を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる物流倉庫の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る物流倉庫の制御装置は、物品を保管する自動倉庫と、並べられた複数の物品を搬送する搬送レーンと、搬送レーンと自動倉庫との間に設けられた搬送機と、を備える物流倉庫の制御装置であって、物品が搬送レーン、搬送機、及び自動倉庫の順で移動するとき、物品の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する物品情報取得部と、物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する経路演算部と、搬送経路情報に基づいて、物流倉庫の搬送動作を制御する動作制御部と、を有し、自動倉庫には搬送機と隣接する一時配置エリアが設けられており、経路演算部は、一時配置エリアへの物品の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式と、一時配置エリアへの物品の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式と、を満たすように、搬送経路情報を演算する。
【0007】
物流倉庫の制御装置において、物品情報取得部は、物品が搬送レーン、搬送機、及び自動倉庫の順で移動するとき、または自動倉庫、搬送機、及び搬送レーンの順で移動するとき、物品の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する。また、経路演算部は、物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する。この場合、経路演算部は、物品の移動初期状態と、物品完了状態との間において、どのような搬送経路にて移動するべきかを演算することができる。このとき、経路演算部は、制約条件に基づく基準論理式を満たすように演算することで、搬送経路において制約される動作などを、基準論理式を演算することで容易に排除することができる。その結果、経路演算部は、少ない演算の負荷にて、適切な搬送経路を演算することができる。また、自動倉庫には搬送機と隣接する一時配置エリアが設けられている。そして、経路演算部は、一時配置エリアへの物品の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式と、一時配置エリアへの物品の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式と、を満たすように、搬送経路情報を演算する。このように、経路演算部は、第1の基準論理式及び第2の基準論理式を用いることで搬送経路において制約される動作などを、容易に排除した上で、一時配置エリアを用いた搬送経路を効率よく探索することができる。以上より、物品を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる。
【0008】
搬送機は、一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、経路演算部は、物品の横方向への移動を可能とする3フェーズの動作、及び搬送機の1回の昇降動作を1ステップとして、演算を行い、前記垂直搬送機から移動可能な前記一時配置エリアの階層が定義されていてよい。このように、垂直搬送機の構造上、横方向の移動が3回程度連続することで、効率よく移動することが可能となる場合は存在するが、昇降動作を連続させても物品の移動は生じない。従って、経路演算部は、横方向への移動を3フェーズという適切な数のフェーズにするのに対し、昇降動作を1ステップとすることで、効率のよい搬送経路の演算を行い易くなる。また、垂直搬送機から移動可能な一時配置エリアの階層が定義されているため、経路演算部は、各階層における一時配置エリアを適切に考慮して搬送経路を演算することができる。
【0009】
搬送機は、一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、経路演算部は、第1の搬送棚に関する制約条件に関する補助論理式を参照して、搬送経路情報を演算する。これにより、経路演算部は、補助論理式を用いることで第1の搬送棚との関係で制約される動作などを、容易に排除した上で、一時配置エリアを用いた搬送経路を効率よく探索することができる。
【0010】
経路演算部は、取得される複数の搬送経路情報を、充足性最大化問題として定義し、物品の横方向のコストを最小化させる搬送経路情報を探索してよい。この場合、経路演算部は、物品の横方向への移動のコストに基づいて最も効率よく物品を移動できる搬送経路を採用することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物品を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御装置を備える物流倉庫を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る物流倉庫の構成を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る制御装置のブロック構成図である。
【
図10】(a)はフェーズと移動方向の関係を示す図であり、(b)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図11】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図12】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図14】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図16】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図17】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図18】(a)は論理式の具体的な内容を例示する図であり、(b)(c)は物流倉庫をモデル化した図である。
【
図22】論理式の具体的な内容を例示する図である。
【
図23】論理式の具体的な内容を例示する図である。
【
図24】論理式の具体的な内容を例示する図である。
【
図27】論理式の具体的な内容を例示する図である。
【
図29】論理式の具体的な内容を例示する図である。
【
図30】制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備える物流倉庫1を示す概略側面図である。
図1に示すように、物流倉庫1は、複数の物品150を入庫して保管し、保管された各物品150のうち、出庫すべきものを出庫可能なシステムである。物流倉庫1は、自動倉庫100と、出庫エレベータ104(搬送機)と、入庫エレベータ105(搬送機)と、出庫レーン121(搬送レーン)と、入庫レーン21(搬送レーン)と、を備える。自動倉庫100は、物品150を保管する倉庫である。自動倉庫100は、倉庫本体部101と、出庫渡り通路102と、入庫渡り通路103と、を備える。倉庫本体部101は、複数段の棚110を有している。棚110は、倉庫本体部101の一方側の端部から他方側の端部へ延在している。棚110では、移載装置111にて、入庫経路から出庫経路への物品の移載動作が行われる。入庫渡り通路103は、倉庫本体部101の一方側の端部に設けられ、各段の棚110に対して物品150を入庫する機構である。出庫渡り通路102は、倉庫本体部101の他方側の端部に設けられ、各段の棚110から物品150を出庫する機構である。入庫エレベータ105は、入庫レーン21から入庫される物品150を上下させて、所望の棚110に対応する段の入庫渡り通路103へ物品150を供給する。出庫エレベータ104は、出庫対象となる物品150を棚110及び出庫渡り通路102から受け取り、図示しない出庫口へ昇降させる。出庫エレベータ104から出庫された物品150は、出庫レーン121へ搬出される。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る制御装置10を備える物流倉庫1の構成を示す概略構成図である。以降の説明においては、入庫エレベータ105、及び出庫エレベータ104を単に「搬送機22」と称する場合がある。
図2は、物流倉庫1のうち、入庫側の構成を示す。なお、物流倉庫1の出庫側は、物品150の流れが自動倉庫100、搬送機22(出庫エレベータ104)、出庫レーン121で流れていく点以外は入庫側と同様な構成を有するため、説明を省略する。
図2に示すように、物流倉庫1は、物品150を搬送する搬送系2と、搬送系2を制御する制御装置10と、を備える。搬送系2は、入庫レーン21と、搬送機22と、自動倉庫100のコンベア23と、を備える。このうち、搬送機22は、前述の入庫エレベータ105を構成する機器である。入庫レーン21は、物品150を水平に搬送して搬送機22へ受け渡す装置である。入庫レーン21は、搬送機22の所定の段に対して設けられている。コンベア23は、自動倉庫100の各階において、搬送機22から物品を受け取って水平に搬送する装置である。コンベア23は、入庫渡り通路103の各階(ここでは四階)に設けられる。
【0016】
搬送機22は、水平方向移動手段(例えばコンベア)と、上下移動手段と、を備え、物品150を上下方向及び水平方向に移動させる装置である。入庫される物品150のそれぞれには、搬送先である目的階が紐づけされている。これにより、搬送機22は、各物品150を入庫渡り通路103における目的階へ移動させる。なお、図では、「n階」を目的地とした物品150に対して、「n」の数字が付されている。以降の図においても同様である。また、以降の説明では、n階を目的地とした物品150を「n階への物品」と称する場合がある。
【0017】
搬送機22は、隣り合う複数の搬送箱22aを交互に昇降しつつ、物品150を水平方向(横方向)に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機である。搬送機22は、交互動作式の昇降装置であり、入庫レーン21側の搬送棚22Aと、コンベア23側の搬送棚22Bと、を有している。搬送棚22A、22Bは、それぞれ「自動倉庫の階数+一階」分の段数の収容可能エリアCEを有している。そして、「自動倉庫の階数」分の段数(ここでは四段)で連続した搬送箱22aを有している。連続した搬送箱22aは、同時に上下移動する。連続した搬送箱22aが下側へ移動すると、下から順に一段目から四段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。連続した搬送箱22aが上側へ移動すると、下から順に二段目から五段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。なお、以降の説明において、単に段数について述べた場合、特に注意が無い限り、下からカウントした段数を示すものとする。また、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aは、交互に上下移動する。すなわち、搬送棚22Aの搬送箱22aが上側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが下側へ移動する。これにより、搬送棚22A中の物品150を一段上昇させることができる(動作M1参照)。また、搬送棚22Aの搬送箱22aが下側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが上側へ移動する。これにより、搬送棚22B中の物品150を一段上昇させることができる。また、同じ段数において、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aとの間にて、物品150を水平方向に移動させることができ、相互に物品150の受け渡しと受け取りを行うことができる(動作M2参照)。また、搬送棚22Bの搬送箱22aから目的の階数のコンベア23へ物品150を受け渡すことができる(動作M3参照)。
【0018】
本実施形態では、下から二段目の収容可能エリアCEに対して入庫レーン21が設けられ、下から一段目~四段目の収容可能エリアCEに対して四つのコンベア23が設けられる。なお、
図2において収容可能エリアCEの中で「S1」「S2」と示された箇所は、搬送棚22A,22Bが昇降動作をするために設けられたスペースである。ただし、収容可能エリアCE、入庫レーン21、及びコンベア23との位置関係は特に限定されるものではなく、物流倉庫1の構成に応じて、適宜設定されてよい。
【0019】
以降の説明においては、物流倉庫1を
図3のようにモデル化して示す場合がある。搬送機22の搬送箱22aが一つの四角形で示されている。なお、各物品150は、干渉物がないかぎり、水平方向に同時動作が可能である。垂直動作としては、搬送機22の搬送棚の垂直動作中は、搬送機22内の物品150は動作不可である。搬送機22の垂直動作中は、入庫レーン21及びコンベア23は水平動作可能である。なお、以降の説明においては、搬送棚22Aを「右側(R)の搬送棚」と称し、搬送棚22Bを「左側(L)の搬送棚」と称する場合がある。
図3(a)のように左側の搬送棚22Bが上がっている状態を「左側搬送棚上昇状態」と称し、
図3(b)のように右側の搬送棚22Aが上がっている状態を「右側搬送棚上昇状態」と称する場合がある。また、搬送棚22A,22Bの各搬送箱22aには、下から順に「0,1,2,3」という識別番号が付されている。図においては、当該識別番号は、搬送箱22aの中に円で囲まれた数字にて示されている。
【0020】
次に、
図4を参照して、制御装置10のブロック構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置10のブロック構成図である。制御装置10は、搬送系2を制御するユニットである。制御装置10は、物流倉庫1を統括的に管理するECU[ElectronicControl Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]のほか、CAN[Controller Area Network]などの通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御装置10は、動作制御部11、物品情報取得部12と、経路演算部13と、を備える。
【0021】
動作制御部11は、経路演算部13で演算した搬送経路に基づいて、各物品150が搬送されるように、物流倉庫1の搬送動作を制御するユニットである。動作制御部11は、搬送系2に制御信号を送信することによって搬送動作を制御する。動作制御部11は、搬送系2の入庫レーン21、搬送機22、及びコンベア23の各駆動部へ制御信号を送信することで、各駆動部を動作させる。
【0022】
物品情報取得部12は、物品150が入庫レーン21、搬送機22、及び自動倉庫100の順で移動するとき、または自動倉庫100、搬送機22、及び出庫レーン121の順で移動するとき、物品150の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する。移動初期状態とは、
図5(a)に示すように、搬送対象となる物品150が入庫レーン21に存在している状態である。また、移動完了状態とは、
図5(b)に示すように、搬送対象となる物品150が自動倉庫100全て搬送された状態である。物品情報は、入庫時における、入庫レーン21に存在する物品150の目的地の階数、各階数に対する物品150の個数、及び入庫順序などの情報を含む。また、物品情報は、自動倉庫100からどの階数から何個の物品150を出庫するかなどの情報、及びそれらの出庫順序などの情報を含む。
【0023】
経路演算部13は、物品状態情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算するユニットである。経路演算部13は、搬送系2における、各物品150の搬送経路を探索する。ここで、
図5(a)に示す移動初期状態と移動完了状態との間では、搬送系2は、各物品150の水平移動、及び垂直移動を同時に行い、各動作を組み合わせることによって、各物品150の目的地まで搬送する。このとき、制御装置10は、複数の物品を搬送系2における動作的制限下において、互いの物品150が干渉しないように、且つ、速やかに仕分けできるように、物品150を移動させる。この際、経路演算部13は、各物品150が搬送系2内にてどのような経路を通って、目的地まで到達するかを演算する。経路演算部13は、所定個数の物品150を搬送系2の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法などを用いて各物品150の経路を探索する。
【0024】
ここで、経路演算部13は、制約条件を充足可能性判定問題(SAT問題:Satisfiability Problem)として定義する。SAT問題は、命題変数を含む理論式に対し、その理論式を真にするような命題変数への値の割り当てが存在するかを決定する問題である。SAT問題は、決定問題を解くこと、すなわち制約を満たす解があるか否かを求めることである。例えば、「搬送機22の搬送棚22A,22Bの上下動五回以下で全ての物品150が目的階に到着できるか?」という問題に対して、「はい。具体的なスケジュールは~です。」という回答が出される。基準論理式は物品150の移動に関する移動制約、物品の初期状態に関する初期制約、及び物品150の目的地への到達に関する到着制約を含む。
【0025】
また、経路演算部13は、取得される複数の搬送経路情報を、充足性最大化問題(MaxSAT問題:Maximum Satisfiability Problem)として定義する。MaxSAT問題は、入力として与えられる節集合に対して、充足する節の数が最大となる変数割合を求める問題である。MaxSAT問題は、最適化問題を解くこと、すなわち制約を満たす最適解を求めることである。例えば、例えば、「全ての物品150が目的階に到着する最短時間は?」という問題に対して、「10秒です。具体的なスケジュールは~です。」という回答が出される。経路演算部13は、全てのハード節を満たし、かつ、充足するソフト節の重みの和が最大になる解、及び、全てのハード節を満たし、かつ、充足されないソフト節の重みの和が最小になる解の少なくとも一方を演算する。ハード節とは、必ず満たさなければならない節である。ソフト節とは、できるだけ満たして欲しい節であって、その度合いが重み(正の整数)で表される。
【0026】
[説明の準備]
まず、SAT問題、及びMaxSAT問題の制約条件について説明する前に、用語について説明する。以降は、SAT問題、及びMaxSAT問題の共通事項として説明する。「制約」は、節の集合で表現される。「節(clause)」は、リテラルの論理和であり、以下の式(1)で示される。「リテラル(literal)」は、論理変数、またはその否定であり、式(2)で示される。「変数(variable)は「True(真)」か「False(偽)」の値を取るものであり、Trueを「1」、Falseを「0」と見なす場合もある。本明細書では、節の代用として、式(3)、式(4)及び式(5)を用いるものとする。なお、式(3)は、式(6)のようにも示される。
【数1】
【0027】
式(3)及び式(6)は、「現在の状態でa1からamの全てが成り立っていれば、c1からcnの何れかが成り立っていなければならない。」と解釈される。式(3)及び式(6)を用いて、例えば、「物品が右側の搬送棚のXXにあるなら(それぞれのaを意味する)、次の状態では、そこに止まっているか、左側の搬送棚のYYにある(それぞれのcを意味する)。」などを示すことができる。式(4)は、「l1からlnのうち、Trueとなるのは、たかだか一つ」と解釈される。l1からlnが全てFalseの場合は、式(4)の左辺は「0」となる。すなわち、式(4)の左辺は「1」か「0」となる。式(4)を用いて、例えば「搬送棚の各搬送箱(各搬送箱がlを意味する)に入る、ある物品は、たかだか一つ。」などを示すことができる。これは、同じ搬送箱22aに同じ時刻に同じ物品150が存在してはいけないことを意味する。ある物品150が何れの搬送箱22aにも入らなければ、式(4)の左辺は「0」となる。式(5)は、「l1からlnのうち、Trueとなるのは、丁度一つ」と解釈される。式(5)を用いて、例えば「ある物品は、入庫レーン、搬送棚、目的階(各場所がlを意味する)の何れかに必ず存在している。」などを示すことができる。なお、以降の説明では、制約条件を説明する際に単に「入口」と称した場合、入庫レーン21を意味するものとする。また、制約条件を説明する際に単に「物品」と称した場合、物品150を意味するものとする。
【0028】
[ステップとフェーズ]
本説明では、物流倉庫1の初期状態は、
図3(a)に示すように、左側の搬送棚22Bが上がって、右側の搬送棚22Aが下がっている状態であるものとする。経路演算部13は、物品150の横方向への移動を可能とする3フェーズの動作、及び搬送機22の1回の昇降動作を1ステップとして、演算を行う。経路演算部13は、「3フェーズ・1ステップ」の動作を基本動作として、当該動作を繰り返し行うものとする。
図6に示すように、1フェーズ毎に、物品150が隣の位置へ水平移動(横方向への移動)し得る。なお、1フェーズで水平移動が行われる物品の数は特に限定されず、物品の水平移動が一つも行われなくともよい。なお、経路演算部13は、水平移動が行われないフェーズについては、後の演算で搬送経路の演算の際に時間を割り振ることなく省略すればよい。3フェーズが終了するとステップが切り替わる。ステップが切り替わるタイミングでは、搬送棚22A,22Bの「左側搬送棚上昇状態(
図3(a)参照)」と「右側搬送棚上昇状態(
図3(b)参照)」との間の切り替えが行われる。なお、このような繰り返しの基本動作は、本願発明者らが、搬送棚22A,22Bの切替動作が連続で発生しても物品150の移動は進行しないものであるのに対し、物品150の水平移動は、連続で行われても物品150の移動は進行する点を見出したことによるものである。また、本願発明者らは、水平移動も4回以上連続で行っても、(例外を除き)物品150の移動は進行しないため、1ステップの中のフェーズ数として適切な数である3を採用した。なお、フェーズ数が3である理由は、搬送棚22A,22Bの中の垂直移動が行われない間(1ステップの間)の水平移動としては、右移動は最大1回、左移動は(例外を除き)最大2回であるため、その合計値3とした。
【0029】
ステップとフェーズを示すための変数について説明する。以下に示される(7)は「i番目の物品が、ステップtのフェーズpに入口に並んでいる」ことを示す変数である。(8)は「i番目の物品が、ステップtのフェーズpには目的階にある」ことを示す変数である。(9)は「i番目の物品が、ステップtのフェーズpに左側の搬送棚の搬送箱jにある」ことを示す変数である。なお、搬送箱22aを識別する「j」は、
図3において円の中に示された識別番号である。(10)は「i番目の物品が、ステップtのフェーズpに右側の搬送棚の搬送箱jにある」ことを示す変数である。「ステップtのフェーズp」を時刻を示す「(t,p)」と略して、以降の説明で用いる場合がある。なお、添数は「0オリジン」である。また、開始時は「ステップ0、フェーズ0」である。従って、(t,p)は「(0,0)→(0,1)→(0,2)→(1,0)→(1,1)→…」のように遷移する。なお、ステップtの切り替わりのタイミングにて、搬送棚22A,22Bの切替動作が行われる。ステップtが偶数であれば「左側搬送棚上昇状態(
図3(a)参照)」にあり、ステップtが奇数であれば「右側搬送棚上昇状態(
図3(b)参照)」にあることが示される。(t,p)の遷移を表現するために、(11)に示す変数を採用する。(11)は、(t,p)の次のステップ及びフェーズを返す変数である。具体的に、(11)の変数は、
図7(a)に示す内容を示す。
【数2】
【0030】
[入口制約]
入口(すなわち入庫レーン21)に関する制約条件について説明する。基準論理式は、初期状態に関する初期制約として、入口制約を示す式(12)及び式(13)の論理式を含む。式(12)は、「物品iが(t,p)に入口に並んでいれば、それ以前にも並んでいる」と解釈される。式(13)は、「物品iが(t,p)に入口に並んでいれば、物品i+1も並んでいる」と解釈される。式(12)の具体的な内容を
図7(b)に示す。式(13)の具体的な内容を
図7(c)に示す。なお、「M」は、搬送棚22A,22Bの上下動の最大値を意味する。以降の説明においても、「M」の意味は同様である。
【数3】
【0031】
[目的階制約]
自動倉庫100の目的階に関する制約条件について説明する。基準論理式は、物品の目的階(目的地)への到着に関する到着制約として、目的階制約を示す式(14)の論理式を含む。式(14)は、「物品iが(t,p)に目的階に到着していれば、それ以降もそのまま」と解釈される。式(14)の具体的な内容を
図8(a)に示す。
【数4】
【0032】
[搬送棚の搬送箱制約]
搬送棚22A,22Bの搬送箱22aに関する制約条件について説明する。基準論理式は、物品の移動に関する移動制約として、搬送箱制約を示す式(15)及び式(16)の論理式を含む。式(15)は、「(t,p)において、左側の搬送棚の搬送箱jには二つ以上の物品が入ることはない」と解釈される。式(16)は、「右側の搬送棚の搬送箱jには二つ以上の物品が入ることはない」と解釈される。なお、「N」は物品の個数を意味する。以降の論理式においても同様である。式(17)は(t,p)が取り得る値の範囲を示す。
【数5】
【0033】
[物品の存在制約]
物品が搬送系2の中の何れかに存在していることに関する制約条件について説明する。基準論理式は、移動制約として、物品が移動している過程における物品の存在についての存在制約を示す式(18)の論理式を含む。式(18)は、「(t,p)において、物品iは、入口に並んでいる、搬送棚の中にある、目的階に到達している、の何れかである」と解釈される。式(19)は(t,p)が取り得る値の範囲を示す。
【数6】
【0034】
[補助関数(搬送箱の位置)]
搬送棚22A,22Bの搬送箱22aの関係を示す補助関数を設定する。以下に示される(20)は、「右側の搬送棚の搬送箱jから移動可能な左側の搬送棚の搬送箱」を示す補助関数である。以下に示される(21)は、「左側の搬送棚の搬送箱jから移動可能な右側の搬送棚の搬送箱」を示す補助関数である。以下に示される(22)は、「ステップtで入口階に止まっている左側の搬送棚の搬送箱」を示す補助関数である。以下に示される(23)は、「ステップtで入口階に止まっている右側の搬送棚の搬送箱」を示す補助関数である。
【数7】
【0035】
補助関数(20)の具体的な内容を
図9(a)に示す。補助関数(21)の具体的な内容を
図9(b)に示す。補助関数(22)の具体的な内容を
図9(c)に示す。補助関数(23)の具体的な内容を
図9(d)に示す。ステップtが偶数であれば「左側搬送棚上昇状態(
図3(a)参照)」にある。従って、右側の搬送棚22Aの搬送箱20aと、左側の搬送棚22Bの搬送箱22aとの関係は、
図3(a)に示される。また、入口階である2階に止まっている搬送棚22A,22Bの搬送箱22aについては、
図3(a)に示されるように、右側の搬送棚22Aが「識別番号1」で、左側の搬送棚22Bが「識別番号0」である。ステップtが奇数であれば「右側搬送棚上昇状態(
図3(b)参照)」にある。従って、右側の搬送棚22Aの搬送箱20aと、左側の搬送棚22Bの搬送箱22aとの関係は、
図3(b)に示される。また、入口階である2階に止まっている搬送棚22A,22Bの搬送箱22aについては、
図3(b)に示されるように、右側の搬送棚22Aが「識別番号0」で、左側の搬送棚22Bが「識別番号1」である。
【0036】
[移動制約(入口)]
物品が入口に並んでいる場合の物品の移動に関する制約条件について説明する。基準論理式は、移動制約として、入口側の物品の移動制約を示す式(24)の論理式を含む。式(24)は、「物品iが(t,p)に入口に並んでいれば、次のフェーズnext(t,p)では右側の搬送棚にいるか、そのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(24)の具体的な内容を
図8(b)に示す。
【数8】
【0037】
[移動制約(搬送棚)]
物品が搬送棚22A,22Bにある場合の物品の移動に関する制約条件について説明する。ここで、搬送棚22A,22Bの移動制約の基本条件について説明する。3フェーズのうち、最初の2フェーズは左移動が行われ、最後のフェーズは右移動が行われる条件を設定する。具体的なフェーズと移動方向の関係を
図10(a)に示す。このような条件を設定することで、
図10(b)に示すように、各物品A,Bが水平移動をしているときに、搬送棚22Bの物品Aと搬送棚22Aの物品Bとが、次のフェーズで一気に入れ替わるような動作を排除することが可能となる。基準論理式は、移動制約として、右側の搬送棚22Aの移動できない搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(25)及び式(26)の論理式を含む。式(25)は、「物品iが、tが偶数である(t,p)に右側の搬送棚の搬送箱「0」にあるとき、次のフェーズnext(t,p)では、同じ搬送箱「0」にある」と解釈される。式(26)は、「物品iが、tが奇数である(t,p)に右側の搬送棚の搬送箱「3」にあるとき、次のフェーズnext(t,p)では、同じ搬送箱「3」にある」と解釈される。式(25)及び式(26)の具体的な内容を
図11(a)に示す。tが偶数の場合、右側の搬送棚22Aの「識別番号0」の一番下の搬送箱22aは、他の搬送箱22a、自動倉庫100、入庫レーン21とも隣接しない(
図11(b)参照)。tが奇数の場合、右側の搬送棚22Aの「識別番号3」の一番上の搬送箱22aは、他の搬送箱22a、自動倉庫100、入庫レーン21とも隣接しない(
図11(c)参照)。従って、それらの「識別番号1,3」の搬送箱22aに配置された物品は、次のフェーズではいずれの場所にも移動することができず、その場に留まる。
【数9】
【0038】
基準論理式は、移動制約として、右側の搬送棚22Aの入口階以外の左移動可能とする搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(27)及び式(28)の論理式を含む。式(27)は、「右側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、左側へ移動する、または同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(28)は、「右側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(27)及び式(28)の具体的な内容を
図12(a)に示す。tが偶数の場合、
図12(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号2,3」の搬送箱22aが、入口階である2階以外の左移動できる搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図12(c)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1,2」の搬送箱22aが、入口階である2階以外の左移動できる搬送箱22aに該当する。
【数10】
【0039】
基準論理式は、移動制約として、右側の搬送棚22Aの入口階で止まっている搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(29)、式(30)、及び式(31)の論理式を含む。式(29)は、「右側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、左側へ移動する、または同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(30)は、「右側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、直前もそこにいたら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(31)は、「右側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、直前はそこにいなかったら、左側へ移動する、または同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。tが偶数の場合、
図13(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1」の搬送箱22aが、入口階である2階に止まってる搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図12(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0」の搬送箱22aが、入口階である2階に止まっている搬送箱22aに該当する。
【数11】
【0040】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの移動できない搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(32)の論理式を含む。式(32)は、「物品iが、tが偶数である(t,p)に左側の搬送棚の搬送箱「3」にあるとき、次のフェーズnext(t,p)では、同じ搬送箱「3」にある」と解釈される。式(32)の具体的な内容を
図14(a)に示す。tが偶数の場合、左側の搬送棚22Bの「識別番号3」の一番上の搬送箱22aは、他の搬送箱22a、自動倉庫100、入庫レーン21とも隣接しない(
図14(b)参照)。従って、「識別番号3」の搬送箱22aに配置された物品は、次のフェーズではいずれの場所にも移動することができず、その場に留まる。なお、tが奇数の場合、左側の搬送棚22Bには、移動出来ない搬送箱22aは存在しない(
図14(c)参照)。
【数12】
【0041】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの目的階の搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(33)、式(34)、及び式(35)の論理式を含む。式(33)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、左側へ移動する、または同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(34)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、直前もそこにいたら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(35)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、直前はそこにいなかったら、左側へ移動する、または同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。tが偶数の場合、
図15(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが、目標階に止まってる搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図15(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2,3」の搬送箱22aが、目標階に止まっている搬送箱22aに該当する。
【数13】
【0042】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの目的階ではない階で止まっている搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(36)の論理式を含む。式(36)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、または(t,1)から(t,2)に遷移するとき、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(36)の具体的な内容を
図16(a)に示す。tが偶数の場合、
図16(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが、目的階ではない階に止まってる搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図16(c)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2,3」の搬送箱22aが、目的階ではない階に止まっている搬送箱22aに該当する。
【数14】
【0043】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの目的階ではない階であって、右側への移動が不可能な階に止まっている搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(37)の論理式を含む。式(37)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(37)の具体的な内容を
図17(a)に示す。tが偶数の場合、
図17(b)に示すように、左側の搬送棚22Bには、目的階ではなく、右側への移動が不可能な階は存在しない。tが奇数の場合、
図17(c)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0」の搬送箱22aが、目的階ではなく、右側への移動が不可能な搬送箱22aに該当する。
【数15】
【0044】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの目的階ではない階であって、右側への移動が可能であって、入口階ではない階に止まっている搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(38)及び式(39)の論理式を含む。式(38)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居なかったら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(39)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、右側へ移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(38)及び式(39)の具体的な内容を
図18(a)に示す。tが偶数の場合、
図18(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号1,2」の搬送箱22aが、目的階ではなく、右側への移動が可能で、入口階ではない搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図18(c)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号2,3」の搬送箱22aが、目的階ではなく、右側への移動が可能で、入口階ではない搬送箱22aに該当する。
【数16】
【0045】
ここで、以下に示す(40)は、「右側の搬送棚の入口階の搬送箱jに物品が入っている(p=2)」ことを示す補助変数である。当該補助変数を用いて、ド・モルガンの法則に基づいて、右側の搬送棚22Aの入口階の2階である搬送箱22aに物品が入っていることは、式(41)及び式(42)で示される。tが偶数の場合、
図19(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1」の搬送箱22aが、入口階の搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図19(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0」の搬送箱22aが、入口階の搬送箱22aに該当する。
【数17】
【0046】
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚22Bの目的階ではない階であって、右側への移動が可能であって、入口階に止まっている搬送箱に配置された物品の移動制約を示す式(43)、式(44)、及び式(45)の論理式を含む。式(43)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居なかったら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(44)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、右隣の搬送箱が空なら、右側へ移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(45)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、右隣の搬送箱に何かあれば、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。tが偶数の場合、
図20(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0」の搬送箱22aが、目的階ではなく、右側への移動が可能で、入口階に止まっている搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図20(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号1」の搬送箱22aが、目的階ではなく、右側への移動が可能で、入口階に止まっている搬送箱22aに該当する。
【数18】
【0047】
[初期制約と到着制約]
初期制約について説明する。以下に示される(46)は、「最初に全ての物品は入口に並んでいる」ことを示すため、Trueとなる。到着制約について説明する。以下に示される(47)は、「M回の搬送棚の上下動の後、全ての物品は目的階に到着していなければならない」ことを示すため、Trueとなる。
【数19】
【0048】
[二階行きの物品が連続している場合]
入口階と目的階が同じ物品が連続して搬送機22を通過する場合、搬送機22を素通りするために、(例えば物品が2個の場合)4フェーズ必要である。例えば、
図21(a)に示すように、手前側の物品は3フェーズの水平移動で目的階である2階に到着できるが、後側の物品は4フェーズの水平移動を行わなくては目的階に到着できない。このように、3フェーズ1ステップでは、このような素通りがスケジューリングされない。従って、経路演算部13は、連続した複数の物品を一つの物品とみなす。
図21(b)に示すように、経路演算部13は、二つの物品を「150B」で示すような一つの物品とみなす。この場合、「150B」は、3フェーズの水平移動で目的階に到着できる。なお、まとめる物品の数は特に限定されず、三つ以上の物品をまとめてもよい。
【0049】
[移動制約(入口)]
基準論理式は、移動制約として、入口での移動制約を示す式(48)、式(49)、及び式(50)の論理式を含む。式(48)は、「入口の物品iはフェーズ0の時にのみ右側の搬送棚に移動できる」と解釈される。式(49)は、「入口の物品iはフェーズ1の時、そのまま入口に止まる」と解釈される。式(50)は、「入口の物品iはフェーズ2の時、そのまま入口に止まる」と解釈される。
【数20】
【0050】
[移動制約(右側の搬送棚)]
基準論理式は、移動制約として、右側の搬送棚の入口階の搬送箱での移動制約を示す式(51)及び式(52)の論理式を含む。式(51)は、「右側の搬送棚の入口階の搬送箱の物品iは、tが偶数で(t,1)から(t,2)に遷移するときは、必ず左側の搬送棚へ移動する」と解釈される。式(51)は、「右側の搬送棚の入口階の搬送箱の物品iは、tが奇数で(t,1)から(t,2)に遷移するときは、必ず左側の搬送棚へ移動する」と解釈される。なお、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、または(t,2)から(t+1,0)に遷移するときは「制約なし」となる。tが偶数の場合、
図19(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1」の搬送箱22aが、入口階の搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図19(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0」の搬送箱22aが、入口階の搬送箱22aに該当する。
【数21】
【0051】
[移動制約(左側の搬送棚)]
基準論理式は、移動制約として、左側の搬送棚の目的階及び入口階の搬送箱での移動制約を示す式(53)及び式(54)の論理式を含む。式(53)は、「左側の搬送棚の目的階及び入口階の搬送箱の物品iは、tが偶数で(t,2)から(t+1,0)に遷移するときは、必ず左側へ移動する」と解釈される。式(54)は、「左側の搬送棚の目的階及び入口階の搬送箱の物品iは、tが奇数で(t,2)から(t+1,0)に遷移するときは、必ず左側へ移動する」と解釈される。なお、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、または(t,1)から(t,2)に遷移するときは「制約なし」となる。
図20(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0」の搬送箱22aが、目的階及び入口階に止まっている搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図20(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号1」の搬送箱22aが、目的階及び入口階に止まっている搬送箱22aに該当する。
【数22】
【0052】
[SATでできる最適解探索]
次に、SAT独自の最適解探索について説明する。「SM」を「Mが与えられた時に得られる制約(節)の集合」とする。SMが「解あり」の場合、「搬送棚の上下動M回以内で、全ての物品が目的階に到達可能」と解釈できる。SMが「解なし」の場合、「搬送棚の上下動M回以内では、全ての物品が目的階に到達することはない」と解釈できる。例えば、「S0,S1,…Sm-1」が「解なし」であり、「Sm,…」が「解あり」の場合、「m」が最適値となる。
【0053】
[MaxSAT]
次に、MaxSAT独自の内容について説明する。MaxSATの説明のため、(55)(56)の変数を準備する。以下に示される(55)は「ステップtのフェーズ0には全ての物品が目的階に到着している」ことを示す変数である。以下に示される(56)は「(t,0)→(t,1)→(t,2)→(t+1,0)に遷移する間に、物品が水平移動をk+1回行った」ことを示す変数である。なお、経路演算部13がMaxSAT問題を演算するときは、SAT問題として演算した上述の制約条件についても同様に演算するものとする。
【数23】
【0054】
[ソフト節と関連するハード節]
ソフト節と関連するハード節について説明する。まず、上述の(55)の変数について説明する。(55)は、搬送棚22A,22Bの上下動のコストを示しており、「重み:1」を設定できる。この変数に関して、式(57)に示す論理式が成り立つ。「N」は、物品の個数を意味する。以降の説明においても、「N」の意味は同様である。式(57)は、「ステップtのフェーズ0には全ての物品が目的階に到着している」と解釈される。式(57)の具体的な内容を
図22(a)に示す。
【数24】
【0055】
上述の(56)の変数について説明する。この変数は、(58)に示すように否定形の形で用いられる。(58)は、物品の水平移動のコストを示しており、「重み:1」を設定できる。式(59)は、「(t,0)→(t,1)→(t,2)→(t+1,0)に遷移する間に、物品の水平移動が行われていない」と解釈される。
【数25】
【0056】
入口からの水平移動に関し、式(60)が成り立つ。式(60)は、「物品iが(t,0)に入口に並んでおり、次のステップ(t+1,0)で右側の搬送棚にあれば、水平移動コストが1かかる」と解釈される。式(60)の具体例を
図22(b)に示す。tが偶数の場合、
図19(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1」の搬送箱22aが、入口から物品が移動してくる搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図19(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0」の搬送箱22aが、入口から物品が移動してくる搬送箱22aに該当する。
【数26】
【0057】
入口からの水平移動に関し、式(61)が成り立つ。式(61)は、「物品iが(t,0)に入口に並んでおり、次のステップ(t+1,0)で左側の搬送棚にあれば、水平移動コストが2かかる」と解釈される。式(61)の具体例を
図23(a)に示す。tが偶数の場合、
図20(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0」の搬送箱22aが、入口から物品が移動する搬送箱22aに該当する。tが奇数の場合、
図20(b)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号1」の搬送箱22aが、入口から物品が移動する搬送箱22aに該当する。
【数27】
【0058】
入口からの水平移動に関し、式(62)が成り立つ。式(62)は、「物品iが(t,0)に入口に並んでおり、次のステップ(t+1,0)で目的階に到着しているなら、水平移動コストが3かかる。」と解釈される。式(62)の具体例を
図23(b)に示す。
【数28】
【0059】
入口からの水平移動に関し、式(63)が成り立つ。式(63)は、「物品iが(t,0)に右側の搬送棚にあり、次のステップ(t+1,0)で左側の搬送棚にあれば、水平移動コストが1かかる」と解釈される。式(63)の具体例を
図24(a)に示す。tが偶数の場合、
図25(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1,2,3」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aであり、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが移動先の搬送箱22aである。tが奇数の場合、
図25(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aであり、左側の搬送棚22Bの「識別番号1,2,3」の搬送箱22aが移動先の搬送箱22aである。
【数29】
【0060】
入口からの水平移動に関し、式(64)が成り立つ。式(64)は、「物品iが(t,0)に右側の搬送棚にあり、次のステップ(t+1,0)で目的階に到着していれば、水平移動コストが2かかる」と解釈される。式(64)の具体例を
図24(b)に示す。tが偶数の場合、
図26(a)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号1,2,3」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。tが奇数の場合、
図26(b)に示すように、右側の搬送棚22Aの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。
【数30】
【0061】
入口からの水平移動に関し、式(65)が成り立つ。式(65)は、「物品iが(t,0)に左側の搬送棚にあり、次のステップ(t+1,0)で右側の搬送棚にあれば、水平移動コストが1かかる」と解釈される。式(65)の具体例を
図27(a)に示す。tが偶数の場合、
図28(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。tが奇数の場合、
図28(b)に示すように、左側の搬送棚22Aの「識別番号1,2,3」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。
【数31】
【0062】
入口からの水平移動に関し、式(66)が成り立つ。式(66)は、「物品iが(t,0)に左側の搬送棚にあり、次のステップ(t+1,0)で目的階に到着していれば、水平移動コストが1かかる」と解釈される。式(66)の具体例を
図29に示す。tが偶数の場合、
図28(a)に示すように、左側の搬送棚22Bの「識別番号0,1,2」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。tが奇数の場合、
図28(b)に示すように、左側の搬送棚22Aの「識別番号1,2,3」の搬送箱22aが移動元の搬送箱22aである。
【数32】
【0063】
複数の物品が連続して入口から2階の目的階へ行く(前述の
図21に示す状況)場合の水平移動に関し、(67)の変数を準備する。この変数については、「重み:s-1」と設定される。なお、sは物品の連続個数である。また、式(68)及び式(60)が成り立つ。「物品i」は、複数の連続物品をまとめたまとめ物品である。式(68)及び式(69)は、「2階行き連続物品s個の水平移動コストはS+2」と解釈される。式(68)は「重み:s-1」に設定され、式(69)は「重み:3」に設定される。
【数33】
【0064】
次に、
図30を参照して、制御装置10による制御方法を示す処理内容の一例について説明する。
図30に示すように、物品情報取得部12は、物品150が入庫レーン21、搬送機22、及び自動倉庫100の順で移動するとき、または自動倉庫100、搬送機22、及び出庫レーン121の順で移動するとき、物品150の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する(ステップS10)。次に、経路演算部13は、ステップS10で取得した物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する(ステップS20)。
【0065】
このとき、経路演算部13は、M回以下の搬送棚22A、22Bの上下動でスケジューリングできるかをSAT問題として演算する。経路演算部13は、基準論理式が物品150の移動に関する移動制約、物品150の初期状態に関する初期制約、及び物品150の目的地への到達に関する到着制約を含むように演算する。すなわち、経路演算部13は、基本制約(入口、目的階、リフトの箱、物品の存在)と、移動制約(入口→搬送棚→目的階への移動)に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する。更に、経路演算部13は、取得される複数の搬送経路情報を、MaxSAT問題として演算する。経路演算部13は、全てのハード節を満たし、かつ、充足するソフト節の重みの和が最大になる解、及び、全てのハード節を満たし、かつ、充足されないソフト節の重みの和が最小になる解の少なくとも一方を演算する。経路演算部13は、上述のSAT問題として演算した制約条件に加えて、ソフト節(搬送棚22A,22Bの上下動、物品150の水平移動のコスト)を演算する。
【0066】
動作制御部11は、ステップS20で演算された搬送経路情報に基づいて、物品150の搬送動作を制御する(ステップS30)。以上により、
図30に示す制御処理が終了する。
【0067】
次に、本実施形態に係る物流倉庫1の制御装置10、制御方法の作用・効果について説明する。
【0068】
物流倉庫1の制御装置10において、物品情報取得部12は、物品150が入庫レーン21、搬送機22、及び自動倉庫100の順で移動するとき、または自動倉庫100、搬送機22、及び出庫レーン121の順で移動するとき、物品150の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する。また、経路演算部13は、物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する。この場合、経路演算部13は、物品150の移動初期状態と、物品完了状態との間において、どのような搬送経路にて移動するべきかを演算することができる。このとき、経路演算部13は、制約条件に基づく基準論理式を満たすように演算することで、搬送経路において制約される動作などを、基準論理式を演算することで容易に排除することができる。その結果、経路演算部13は、少ない演算の負荷にて、適切な搬送経路を演算することができる。以上より、物品150を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる。
【0069】
経路演算部13は、制約条件を充足可能性判定問題として定義し、基準論理式は物品150の移動に関する移動制約、物品150の初期状態に関する初期制約、及び物品150の目的地への到達に関する到着制約を含んでよい。
【0070】
搬送機22は、隣り合う搬送棚22Aの搬送箱22a、搬送棚22Bの搬送箱22aを交互に昇降しつつ、物品150を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、経路演算部13は、物品150の横方向への移動を可能とする3フェーズの動作、及び搬送機22の1回の昇降動作を1ステップとして、演算を行ってよい。このように、垂直搬送機の構造上、横方向の移動が3回程度連続することで、効率よく移動することが可能となる場合は存在するが、昇降動作を連続させても物品の移動は生じない。従って、経路演算部13は、横方向への移動を3フェーズという適切な数のフェーズにするのに対し、昇降動作を1ステップとすることで、効率のよい搬送経路の演算を行い易くなる。
【0071】
経路演算部13は、取得される複数の搬送経路情報を、充足性最大化問題として定義し、全てのハード節を満たし、かつ、充足するソフト節の重みの和が最大になる解、及び、全てのハード節を満たし、かつ、充足されないソフト節の重みの和が最小になる解の少なくとも一方を演算してよい。この場合、経路演算部13は、ハード節を満たすことで、必要な制約条件をクリアできる搬送経路の中で、ソフト節の重みに基づいて最も効率よく物品を移動できるものを採用することが可能となる。
【0072】
入庫レーン21、出庫レーン121の階数と自動倉庫100における目標位置の階数が同じ物品が連続して搬送機22を通過する場合、経路演算部13は、連続した複数の物品150を一つの物品とみなしてよい(
図21参照)。例えば、物品150の横方向の連続移動の回数に制約がかかっていた場合、連続する複数の物品150のうち、後側の物品150がそのまま目的位置に到達できない可能性がある。これに対し、経路演算部13が、連続した複数の物品150を一つの物品とみなすことで、後側の物品150もそのまま目的位置へ到達させることができる。
【0073】
物流倉庫1の制御方法は、物品150が入庫レーン21、搬送機22、及び自動倉庫100の順で移動するとき、または自動倉庫100、搬送機22、及び出庫レーン121の順で移動するとき、物品150の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する物品情報取得ステップS10と、物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する経路演算ステップS20と、搬送経路情報に基づいて、物品150の搬送動作を制御する搬送制御ステップS30と、を有する。
【0074】
この物流倉庫1の制御方法によれば、上述の制御装置10と同様な作用・効果を得ることができる。
【0075】
次に、上述のように、制約条件に基づく基準論理式を満たすように搬送経路情報を演算ことで演算の負荷を低減しつつも、搬送効率をより向上することができる処理内容について、
図31~
図43を参照して説明する。
【0076】
上述のように、制御装置10は、
図31に示すように、「3フェーズ・1ステップ」を基本的な動作の考え方として、物品150の移動を定式化している。
図31(a)は、左移動の2フェーズと、右移動の1フェーズを示す。
図31(b)は、縦移動の1ステップを示す。倉庫本体部101のうち、搬送棚22Bと隣接する箇所は、物品150のゴール位置120となる。
【0077】
これに加え、制御装置10は、次の様な演算を行うことを可能とする。まず、自動倉庫100には搬送機22と隣接する一時配置エリア125が設けられている。一時配置エリア125は、
図31の物品150のゴール位置120の役割を有すると共に、物品150の搬送途中に一時的に配置するエリアとしての役割を有する。これにより、
図32に示すように、制御装置10は、一時配置エリア125を用いた上での「3フェーズ・1ステップ」の物品150の移動が可能となる。
図32(a)に示すように、右移動の1フェーズにて二つ分のエリアの移動を可能が可能となる。経路演算部13は、一時配置エリア125への物品150の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式と、一時配置エリア125への物品150の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式と、を満たすように、搬送経路情報を演算する。以降、一時配置エリア125への移動に注目した、物品150の移動の定式化について詳細に説明する。
【0078】
[変数の定義]
一時配置エリア125の配置位置に対する物品150の存在を表現する。式(70)は、「i番目の物品が、ステップtのフェーズpに一時配置エリアのj階目にある」ことを示す変数である。
図33に示すように、一時配置エリア125は「buff」と示される。なお、定式化の便宜上、一階の一時配置エリア125は「j=0」とする。すなわち、一階~四階の一時配置エリア125は「buff
0,buff
1,buff
2,buff
3」と示される。
【数34】
【0079】
[補助関数]
図33(a)は、搬送機22の左側の搬送棚22Bが上がっている状態を示す。
図33(b)は、搬送機22の右側の搬送棚22Bが上がっている状態を示す。搬送機22の左側の搬送棚22Bと一時配置エリア125との間で横方向の移動が発生すると、左側の搬送棚22Bが下がっているか上がっているかで移動後の階が変わる。従って、移動後の階を簡略化して表記する。式(71)~(73)は「ステップtで左側の搬送棚のj階目から移動可能な一時配置エリアの階層」を示している。式(74)~(76)は「ステップtで一時配置エリアのj階目から移動可能な左側の搬送棚の階層」を示す。なお、tが偶数のときは
図33(a)の状態であり、tが奇数のときは
図33(b)の状態である。これにより、垂直搬送機から移動可能な一時配置エリア125の階層が定義されている。
【0080】
【0081】
搬送機22の右側の搬送棚22Aと一時配置エリア125で横方向の移動が発生すると、右側の搬送棚22Aが下がっているか上がっているかで移動後の階が変わる。従って、移動後の階を簡略化して表記する。式(77)~(79)は「ステップtで右側の搬送棚22Aのj階目から移動可能な一時配置エリアの階層」を示す。式(80)~(82)は「ステップtで一時配置エリアのj階目から移動可能な右側の搬送棚の階層」を示す。式(83)に「ステップtで入庫レーンから移動可能な一時配置エリアの階層」を示す。
【数36】
【0082】
以上のように、経路演算部13は、搬送棚22Bに関する制約条件に関する基準理論式(補助論理式)として、上記の式(71)~(83)を参照して、搬送経路情報を演算する。
【0083】
[一時配置エリアの箱制約]
一時配置エリアの各搬送箱22aには、1つの物品150しか存在する事はできない。式(84)は、存在制約を示す。式(85)は、式(84)のtとpの説明を行っている。
【数37】
【0084】
[物品の存在制約]
物品150の存在制約は、一時配置エリア125を考慮しない場合の制約(式(18))に対して、一時配置エリア125を追加することで成り立つ。式(86)は、一時配置エリア125を考慮した物品150の存在制約を示す。式(86)は、「(t,p)において、物品iは、入口に並んでいる、搬送棚の中にある、一時配置エリアにある、目的階に到達している、の何れかである」と解釈される。
【数38】
【0085】
以上のように、経路演算部13は、一時配置エリア125への物品150の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式である、式(84)~(86)を満たすように、搬送経路情報を演算する。
【0086】
[存在制約の補助変数]
搬送機22の左側の搬送棚22B内において入口階である入庫レーン21と同階層の配置位置(
図34(a)(b)においてハッチングを付した位置)に対して、物品150が存在しているかを表現する変数を準備する。式(87)は「ステップtのフェーズ2に左側の搬送棚内の入口階と同階層の位置に物品が存在する」事を示す。
図34(a)(b)のハッチングを付した位置は、補助変数の対象となる位置を示す。当該補助変数を用いて、ド・モルガンの法則に基づいて、左側の搬送棚22Bの入口階の2階である搬送箱22aに物品が入っていることは、式(88)及び式(89)で示される。式(88)(89)が、物品150が存在する時の制約となる。
【数39】
【0087】
一時配置エリア125に対して、物品150が存在しているかを表現する変数を準備する。
図34(a)(b)のグレーが付された位置は、補助変数の対象となる位置を示す。式(90)は「ステップtのフェーズpに一時配置エリアに物品が存在する」事を示す。当該補助変数を用いて、ド・モルガンの法則に基づいて、一時配置エリア125の各階に物品が入っていることは、式(91)及び式(92)で示される。式(91)、(92)は、物品150が存在する時の制約となる。
【数40】
【0088】
[入口制約]
基本的に入口制約は一時配置エリア125を考慮しない場合と同じ制約を用いるが、入口階と同一の目的階に移動する物品(2階行き物品)の直後と更にその後ろの物品150に対しては、一時配置エリア125を考慮しない場合とは異なる制約を適用する。初めに二階行き物品150の直後の物品150に適用する制約を示す。式(93)、(94)は、フェーズ0での直後の物品150移動制約を示す。式(93)は、「物品iが(t,0)に入口に並んでいて物品i-1が(t,0)に入口に並んでいなければ、物品iは(t,1)では右側の搬送棚にいるか、そのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(94)は、「物品iが(t,0)に入口に並んでいて物品i-1が(t,0)に入口に並んでいれば、物品iは(t,1)ではそのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(95)は、フェーズ1での直後の物品150移動制約を示す。式(95)は、「物品iが(t,1)に入口に並んでいれば、物品iは(t,2)ではそのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(96)~(100)は、フェーズ2での直後の物品150移動制約を示す。式(96)は、「物品iが(t,2)に入口に並んでいて物品i-1が(t,0)に入口に並んでいなければ、物品iは(t+1,0)ではそのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(97)は、「物品iが(t,2)に入口に並んでいて、物品i-1が(t,0)で入口に並んでいて物品i-1が(t+1,0)で目的階にいれば、物品iは(t+1,0)では左側の保管棚にいるか、右側の搬送棚にいるか、一時配置エリアにいるか、そのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(98)「物品iが(t,2)に入口に並んでいて、物品i-1が(t,0)で入口に並んでいて物品i-1が(t+1,0)で左側の保管棚にいれば、物品iは(t+1,0)では右側の搬送棚にいるか、そのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(99)は、「物品iが(t,2)に入口に並んでいて、物品i-1が(t,0)で入口に並んでいて物品i-1が(t+1,0)で右側の保管棚にいれば、物品iは(t+1,0)ではそのまま入口に並んでいる」と解釈される。式(100)は、「物品iが(t,2)に入口に並んでいて、物品i-1が(t,0)で入口に並んでいれば、物品iは(t+1,0)ではそのまま入口に並んでいる」と解釈される。
【数41】
【0089】
次に更にその後ろの物品150に適用する制約を示す。フェーズ0での更にその後ろの物品150移動制約は、式(93)、(94)と同じになる。フェーズ1での更にその後ろの物品150移動制約は、式(95)と同じになる。フェーズ2での更にその後ろの物品150の移動制約は、式(96)、(98)~(100)と同じ制約になるが、式(97)だけが式(101)に変更になる。式(101)は、「物品iが(t,2)に入口に並んでいて、物品i-1が(t,0)で入口に並んでいて物品i-1が(t+1,0)で一時配置エリアにいれば、物品iは(t+1,0)では左側の保管棚にいるか、右側の搬送棚にいるか、そのまま入口に並んでいる」と解釈される。
【数42】
【0090】
[搬送機の左側の搬送棚の移動制約]
左側の搬送棚22Bから当該搬送棚22Bの目的階へ物品150が移動するときの制約について記述する。一時配置エリアを考慮しない場合との違いは、一時配置エリア125に物品150が存在する可能性になる。初めに、i番目の物品150がステップt、フェーズpに左側の搬送棚22B内の目的階に移動できる位置にあるときの制約を示す。制約の対象となる位置は、
図35(a)(b)においてハッチングで示される位置である。式(102)、(103)が、フェーズ0での移動制約を示す。式(102)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、フェーズ1に一時配置エリアに物品があったら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(103)は、「物品iが(t,0)に左側の保管棚にいて、(t,1)で一時配置エリアに何かしらの物品がなければ、物品iは(t,1)で目的階にいるか、左側の搬送棚にそのままいる」「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、フェーズ1に一時配置エリアが空だったら、目的階に移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(104)~(106)が、フェーズ1とフェーズ2における移動制約を示す。式(104)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,p)から次のnextフェーズ(t,p)に遷移するとき、フェーズp-1にそこにいたら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(105)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,p)から次のフェーズnext(t,p)に遷移するとき、フェーズp-1にそこに居なくて、一時配置エリアに物品があったら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(106)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,p)から次のフェーズnext(t,p)に遷移するとき、フェーズp-1にそこに居なくて、一時配置エリアが空だったら、目的階に移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。
【数43】
【0091】
次に、i番目の物品150がステップt、フェーズpに搬送棚22Bの目的階に移動できる位置にないとき、かつ入口階(2階)に該当しない階層で、フェーズ0とフェーズ1の制約を示す。制約の対象となる位置は、
図36(a)(b)においてハッチングで示される位置である。式(107)がフェーズ0での物品150の移動制約を示す。式(107)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,0)から(t,1)に遷移するとき、一時配置エリアに移動するか同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(108)、(109)がフェーズ1での物品150の移動制約を示す。式(108)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,p)から次のフェーズnext(t,p)に遷移するとき、フェーズp-1にそこに居たら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(109)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,1)から(t,2)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居なかったら、一時配置エリアに移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。
【数44】
【0092】
入口階(2階)に該当する階層での制約を示す。制約の対象となる位置は、
図37(a)(b)おいてハッチングで示される位置である。フェーズ0では式(107)が物品150の移動制約になる。フェーズ1では式(108)、(109)が物品150が移動制約になる。フェーズ2では式(108)、(110)、(111)が物品150の移動制約になる。式(110)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ1にそこに居なくて、一時配置エリアが空だったら、一時配置エリアに移動するか、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。式(111)は、「左側の搬送棚の搬送箱jにある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ1にそこに居なくて、一時配置エリアに物品があったら、同じ搬送箱jに留まる」と解釈される。
【数45】
【0093】
[一時配置エリアの移動制約]
i番目の物品150が一時配置エリア125にありステップt、フェーズpに搬送棚22Bの目的階に移動できる位置にあるときの制約を式(112)に示す。式(112)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,p)から次のフェーズnext(t,p)に遷移するとき、目的階に移動する」と解釈される。制約の対象となる位置は、
図38(a)(b)においてグレーで示される位置である。i番目の物品が一時配置エリア125にありステップt、フェーズpに搬送棚22Bの目的階に移動できる位置にないとき、かつ左側の搬送棚22Bが上がっていて一時配置エリア125が一番下の階層のときの制約を式(113)に示す。制約の対象となる位置は、
図38(c)においてグレーで示される位置である。式(113)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,p)から次のフェーズnext(t,p)に遷移するとき、同じj階に留まる」と解釈される。
【数46】
【0094】
i番目の物品150が一時配置エリア126にありステップt、フェーズpに搬送棚の目的階に移動できる位置にないとき、かつ搬送機の左側リフトが上がっていて一時配置エリアが一番下の階層でないとき、かつフェーズ0とフェーズ1のときの制約は、式(113)になる。制約の対象となる位置は、
図39(a)(b)においてグレーで示される位置である。フェーズ2かつ右側の搬送棚22Aが上がっていて、一時配置エリア125が一番下の階層のときの制約を式(114)、(115)に示す。制約の対象となる位置は、
図39(c)においてグレーで示される位置である。式(114)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居なかったら、j階に留まる」と解釈される。式(115)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。
【数47】
【0095】
フェーズ2かつ一時配置エリアが3階と4階のときの制約は式(114)、式(116)、(117)に示す。式(116)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、左側の保管棚に物品があったら、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。式(117)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、左側の保管棚が空だったら、左側の保管棚に移動するか、右側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。制約の対象となる位置は、
図40(a)(b)においてグレーで示される位置である。フェーズ2かつ一時配置エリア125が入口階(2階)に該当するときの制約を式(114)、(115)、(118)~(121)に示す。制約の対象となる位置は、
図40(c)(d)においてグレーで示される。上記の移動制約を用いる事で、一時配置エリア125へ一時的に配置する移動が可能になる。式(118)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、(t+1,0)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に左側の保管棚に物品があったら、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。式(119)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、(t+1,0)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に右側の保管棚に物品があったら、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。式(120)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、(t+1,0)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に右側の保管棚が空だったら、(t+1,0)に右側の保管棚に物品があったら、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。式(121)は、「一時配置エリアのj階にある物品iは、(t,2)から(t+1,0)に遷移するとき、フェーズ0にそこに居たら、(t+1,0)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に左側の保管棚が空だったら、(t,2)に右側の保管棚が空だったら、(t+1,0)に右側の保管棚が空だったら、右側の保管棚に移動するか、左側の保管棚に移動するか、j階に留まる」と解釈される。
【数48】
【0096】
以上のように、経路演算部13は、一時配置エリア125への物品150の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式である、式(112)~(121)を満たすように、搬送経路情報を演算する。
【0097】
[ソフト節と関連するハード節]
i番目の物品150がステップt、フェーズ0に入庫レーン21に並んでいて、ステップt+1、フェーズ0で一時配置エリア125にあれば、水平移動コストは3かかる。式(122)に制約を示す。
【数49】
【0098】
連続していない二階行き物品150の直後に該当する物品150が移動する場合の水平移動に対して、式(123)を用意する。式(123)は物品150の水平移動コストを示しており、一時配置エリア125を考慮しない場合と同様に「重み:1」を設定できる。i番目の物品150がステップt、フェーズ0に入庫レーン21に並んでいて、ステップt+1、フェーズ0で一時配置エリアにあれば、水平移動コストは4かかる。式(124)に制約を示す。
【数50】
【0099】
連続している二階行き物品150の水平移動に対して、式(125)を用意する。式(125)は物品150の水平移動コストを示しており、「重み:s-1」と設定される。ここで、sは物品150の連続個数である。i番目の物品(複数の連続物品をまとめた物品)がステップt、フェーズ0に入庫レーン21に並んでいて、ステップt+1、フェーズ0で倉庫本体部101の保管棚の目的階にあれば、水平移動コストはs+2かかる。式(126)、(127)に関連制約を示す。式(126)は、「重み:s-1」に設定される。式(127)は、「水平移動コスト:s+3」がかかることを示す。
【数51】
【0100】
連続している二階行き物品150の直後に該当する物品150の水平移動に対して、式(128)を用意する。式(128)は物品150の水平移動コストを示しており、「重み:1」と 設定される。ここで、sは物品150の連続個数である。i番目の物品(複数の連続物品をまとめた物品)がステップt、フェーズ0に入庫レーン21に並んでいて、ステップt+1、フェーズ0でi+1番目の物品150(複数の連続物品をまとめた物品の直後の物品)が保管棚の目的階にあれば、水平移動コストはs+3かかる。式(129)、(130)に関連制約を示す。
図41は、式(129)(130)の対象となる状況を示している。ここでは、二階行きの物品150が三つ連続してる。よって、「s=3」となる。i+1番目の物品150(複数の連続物品をまとめた物品の直後の物品)は、四階行きの物品150となる。経路演算部13は、二階に搬送する物品150が連続で搬送された後に四階に搬送する物品150が一時配置エリア125に移動する状況に対して、式(129)と(130)で水平移動回数を評価する。式(129)は、「重み:1」に設定される。式(130)は、「水平移動コスト:s+3」がかかることを示す。
【数52】
【0101】
i番目の物品150がステップt、フェーズ0に搬送機22の右側の搬送棚22Aに存在していて、ステップt+1、フェーズ0で一時配置エリアにあれば、水平移動コストは2かかる。このときの制約を式(131)に示す。式(131)で水平移動回数を評価する状況は、
図42(a)(b)に示される。経路演算部13は、右の搬送棚22Aにある物品150が一時配置エリア125に移動する状況に対して、式(131)で水平移動回数を評価する。
【数53】
【0102】
i番目の物品150がステップt、フェーズ0に搬送機22の左側の搬送棚22Bに存在していて、ステップt+1、フェーズ0で一時配置エリア125にあれば、水平移動コストは1かかる。このときの制約は、式(132)で示される。式(132)で水平移動回数を評価する状況は、
図42(c)(d)に示される。経路演算部13は、左側の搬送棚22Bにある物品150が一時配置エリア125に移動する状況に対して、式(132)で水平移動回数を評価する。
【数54】
【0103】
i番目の物品150がステップt、フェーズ0に一時配置エリア125に存在していて、ステップt+1、フェーズ0で搬送機22の左側の搬送棚22Bリフトにあれば、水平移動コストは1かかる。式(133)に制約を示す。式(133)で水平移動回数を評価する状況は、
図43(a)(b)に示される。経路演算部13は、一時配置エリア125にある物品150が左側の搬送棚22Bに移動する状況に対して、式(133)で水平移動回数を評価する。
【数55】
【0104】
i番目の物品150がステップt、フェーズ0に一時配置エリア125に存在していて、ステップt+1、フェーズ0で搬送機22の右側の搬送棚22Aにあれば、水平移動コストは2かかる。式(134)に制約を示す。式(134)で水平移動回数を評価する状況は、
図43(c)(d)に示される。経路演算部13は、一時配置エリア125にある物品150が右側の搬送棚22Aに移動する状況に対して、式(134)で水平移動回数を評価する。
【数56】
【0105】
経路演算部13は、上述の制約の中で、一時配置エリア125へ一時的に配置する移動を可能にした上で、動作回数が最も少ない搬送経路を演算することができる。経路演算部13は、物品150の水平方向(横方向)のコストを最小化させる搬送経路情報を探索してよい。
【0106】
以上より、自動倉庫100には搬送機22と隣接する一時配置エリア125が設けられている。そして、経路演算部13は、一時配置エリア125への物品150の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式(例えば式(84)~(86))と、一時配置エリアへの物品150の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式(例えば、式(112)~(121))と、を満たすように、搬送経路情報を演算する。このように、経路演算部13は、第1の基準論理式及び第2の基準論理式を用いることで搬送経路において制約される動作などを、容易に排除した上で、一時配置エリア125を用いた搬送経路を効率よく探索することができる。以上より、物品150を搬送するための搬送経路を演算する際の演算の負荷を低減することができる。
【0107】
搬送機22は、一時配置エリア125と隣接する搬送棚22B、及び搬送棚22Bと隣り合う搬送棚22Aを交互に昇降しつつ、物品150を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、経路演算部13は、搬送棚22Bに関する制約条件に関する補助論理式(例えば式(71)~(83))を参照して、搬送経路情報を演算する。これにより、経路演算部13は、第3の基準論理式を用いることで搬送棚22Bとの関係で制約される動作などを、容易に排除した上で、一時配置エリア125を用いた搬送経路を効率よく探索することができる。
【0108】
経路演算部13は、取得される複数の搬送経路情報を、充足性最大化問題として定義し、物品150の横方向のコストを最小化させる搬送経路情報を探索してよい。この場合、経路演算部13は、物品150の横方向への移動のコストに基づいて最も効率よく物品を移動できる搬送経路を採用することが可能となる。
【0109】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0110】
上述のSAT問題、及びMaxSATの各種制約条件は、あくまでも一例であって、適宜変更可能である。また、自動倉庫100の階数、搬送機22、入庫レーン21、出庫レーン121の階数なども適宜変更可能であり、それに応じて制約条件を変更してもよい。
【0111】
例えば、物流倉庫は、
図1に示すものに限定されない。例えば、一対の入庫レーン21、出庫レーン121に対して、並列な複数の自動倉庫が設けられてもよい。また、搬送機は、
図2に示すような交互に上下動するような一対の収容棚を有する垂直搬送機のタイプのものでなくてよい。例えば、ロータリー式の搬送機(収容棚が一段ずつ一定方向に周回移動するとともに、収容棚が周回移動しない際には、物品が収容棚間で移動可能な搬送機)を採用してよい。その他、エスカレータ式、トラクション式の搬送機が採用されてもよい。この場合、制御装置は、搬送機に態様する制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算すればよい。
【0112】
[形態1]
物品を保管する自動倉庫と、
並べられた複数の前記物品を搬送する搬送レーンと、
前記搬送レーンと前記自動倉庫との間に設けられた搬送機と、を備える物流倉庫の制御装置であって、
前記物品が前記搬送レーン、前記搬送機、及び前記自動倉庫の順で移動するとき、前記物品の移動初期状態及び移動完了状態を示す物品情報を取得する物品情報取得部と、
前記物品情報から、制約条件に基づく基準論理式を満たすように、搬送経路情報を演算する経路演算部と、
前記搬送経路情報に基づいて、前記物流倉庫の搬送動作を制御する動作制御部と、を有し、
前記自動倉庫には前記搬送機と隣接する一時配置エリアが設けられており、
前記経路演算部は、
前記一時配置エリアへの前記物品の入庫に関する制約条件に関する第1の基準論理式と、
前記一時配置エリアへの前記物品の移動に関する制約条件に関する第2の基準論理式と、を満たすように、前記搬送経路情報を演算する、物流倉庫の制御装置。
[形態2]
前記搬送機は、前記一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び前記第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、前記物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、
前記経路演算部は、前記物品の前記横方向への移動を可能とする3フェーズの動作、及び前記搬送機の1回の昇降動作を1ステップとして、演算を行い、
前記垂直搬送機から移動可能な前記一時配置エリアの階層が定義されている、形態1に記載の物流倉庫の制御装置。
[形態3]
前記搬送機は、前記一時配置エリアと隣接する第1の搬送棚、及び前記第1の搬送棚と隣り合う第2の搬送棚を交互に昇降しつつ、前記物品を横方向に移動させることで垂直搬送を行う垂直搬送機であり、
前記経路演算部は、第1の搬送棚に関する制約条件に関する補助論理式を参照して、前記搬送経路情報を演算する、形態1又は2に記載の物流倉庫の制御装置。
[形態4]
前記経路演算部は、
取得される複数の前記搬送経路情報を、充足性最大化問題として定義し、
前記物品の横方向のコストを最小化させる前記搬送経路情報を探索する、形態1~3の何れか一項に記載の物流倉庫の制御装置。
【符号の説明】
【0113】
1…物流倉庫、10…制御装置、12…物品情報取得部、13…経路演算部、21…入庫レーン(搬送レーン)、22…搬送機、22A…搬送棚(第2の搬送棚)、22B…搬送棚(第1の搬送棚)、100…自動倉庫、121…出庫レーン(搬送レーン)、150…物品。