(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020819
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】射出成形機の制御方法及び射出成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20250205BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20250205BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/26
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124415
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】望月 章弘
(72)【発明者】
【氏名】野澤 千鈴
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AP03
4F202AP05
4F202AP06
4F202AP10
4F202AP13
4F202AR03
4F202AR06
4F202AR07
4F202AR14
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK07
4F206AP03
4F206AP05
4F206AP06
4F206AP10
4F206AP13
4F206AR03
4F206AR06
4F206AR07
4F206AR11
4F206AR14
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN14
4F206JP14
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】多数個取り金型における複数のキャビティの充填バラツキを低減可能な射出成形機の制御方法を提供する。
【解決手段】複数のキャビティを有する多数個取り金型が装着された射出成形機の制御方法であって、複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定し、複数の前記圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを事前に取得し、製造対象品の射出成形において、複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、圧力プロファイルXと一致するように、複数のキャビティのそれぞれの充填量を調整する、射出成形機の制御方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャビティを有する多数個取り金型が装着された射出成形機の制御方法であって、
前記複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定し、複数の前記圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを事前に取得し、
製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、前記圧力プロファイルXと一致するように、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化を調整する、射出成形機の制御方法。
【請求項2】
前記多数個取り金型は、複数のコールドランナーを含むコールドランナー構造を有し、製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化の調整を、前記複数のキャビティそれぞれに対して前記コールドランナーの樹脂の流量の調整により行う、請求項1に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項3】
前記射出成形機は、アジャスターの角度変化により前記複数のコールドランナーの樹脂の流量を調整する機構と、前記アジャスターの角度を変化させる、位置検出器が装備されたモーターとを備え、
前記複数のコールドランナーの樹脂の流量の調整を、前記モーターによる前記アジャスターの角度調整により行う、請求項2に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項4】
前記多数個取り金型は、複数のホットランナーを含むホットランナー構造を有し、製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化の調整を、前記複数のそれぞれのキャビティに樹脂を注入するための複数のノズルそれぞれの加熱温度の調整により行う、請求項1に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項5】
前記複数のノズルの加熱を、電磁誘導加熱により行う、請求項4に記載の射出成形機の制御方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の射出成形機の制御方法により射出成形機を制御して射出成形品を製造する、射出成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の制御方法及び射出成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いた射出成形は、複雑な形状の部品を大量に製造可能な製造方法として幅広い分野で採用されている。中でも、1つの金型に対して複数のキャビティを有する「多数個取り金型」による射出成形は、高い生産性とコストダウンを図ることができるため広く採用されている。多数個取り金型を使用することで、一度の射出成形で複数の製品を製作することができるため、生産効率が大幅に向上し、同じ作業の繰り返しが低減されることから加工費のコストダウンの実現が可能である。また、多数個取り金型による射出成形は、1個取りの金型を使用する場合に比べて、歩留まりが改善されることから材料費の低減にもつながる。
【0003】
一方、多数個取り金型による射出成形においては、複数のキャビティの充填バラツキの調整が重要な課題として挙げられる。ところが、仮に、各キャビティへのランナーの長さを等しくした場合でも、内回りと外回りで流動長が異なる流動慣性により充填バランスが損なわれ、製品品質にバラツキが発生することや歩留まりが低下することが危惧される。
多数個取り金型における各キャビティへの樹脂の充填量を調整する方法としては、例えば、ゲートサイズやランナーサイズを調整する方法等が知られている。これらの方法において、ショートショットを目視で確認したり、重量を確認したりしながら最適な充填量のバランスを見出すことで調整がなされる。しかし、各キャビティの充填性を目視にて判別する場合には誤差が大きくなり、重量を確認して判別する場合には成形品の温度が常温にならないと正確な重量を測定できないため時間を要するといった問題がある。そこで、そのような問題を解消し、かつ、複数のキャビティの充填バラツキを解消する技術が知られている(特許文献1~2参照)。
【0004】
特許文献1においては、各キャビティへそれぞれ連通するランナーの中の少なくとも一つのランナーの流路断面積を変化させ、ランナー内の溶融樹脂のキャビティへの圧力伝達に差を発生させることでキャビティ間ばらつきを解消する方法が記載されている。また、特許文献2には、金型内樹脂圧に基づいて射出動作から保圧動作に切り換えるとともに、射出シリンダー内樹脂圧から金型内樹脂圧を差し引いた圧力損失値を算出し、圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて保圧目標圧力値を補正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-433号公報
【特許文献2】特許第7209512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載の技術は、金型内の圧力値に着目している技術であり、固化過程における圧力をも考慮するものではない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、多数個取り金型の複数のキャビティにおける樹脂の充填バラツキを低減可能な射出成形機の制御方法、及び当該射出成形機の制御方法を利用して射出成形品を得る、樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)複数のキャビティを有する多数個取り金型が装着された射出成形機の制御方法であって、
前記複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定し、複数の前記圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを事前に取得し、
製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、前記圧力プロファイルXと一致するように、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化を調整する、射出成形機の制御方法。
【0009】
(2)前記多数個取り金型は、複数のコールドランナーを含むコールドランナー構造を有し、製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化の調整を、前記複数のキャビティそれぞれに対して前記コールドランナーの樹脂の流量の調整により行う、前記(1)に記載の射出成形機の制御方法。
【0010】
(3)前記射出成形機は、アジャスターの角度変化により前記複数のコールドランナーの樹脂の流量を調整する機構と、前記アジャスターの角度を変化させる、位置検出器が装備されたモーターとを備え、
前記複数のコールドランナーの樹脂の流量の調整を、前記モーターによる前記アジャスターの角度調整により行う、前記(2)に記載の射出成形機の制御方法。
【0011】
(4)前記多数個取り金型は、複数のホットランナーを含むホットランナー構造を有し、製造対象品の射出成形において、前記複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化の調整を、前記複数のそれぞれのキャビティに樹脂を注入するための複数のノズルそれぞれの加熱温度の調整により行う、前記(1)に記載の射出成形機の制御方法。
【0012】
(5)前記複数のノズルの加熱を、電磁誘導加熱により行う、前記(4)に記載の射出成形機の制御方法。
【0013】
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の射出成形機の制御方法により射出成形機を制御して射出成形品を製造する、射出成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多数個取り金型の複数のキャビティにおける樹脂の充填バラツキを低減可能な射出成形機の制御方法、及び当該射出成形機の制御方法を利用して射出成形品を得る、樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】多数個取り金型における、複数のキャビティの配置状態を示す模式図である。
【
図2】複数のキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルをグラフで示す図である。
【
図3】(A)複数のキャビティにおける、(B)アジャスター、及び(C)アジャスターを六角レンチで調整する様子を示す図である。
【
図4】ホットランナーにおけるキャビティの加熱温度の調整をPLCにより制御するためのシステム構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<射出成形機の制御方法>
本実施形態の射出成形機の制御方法は、複数のキャビティを有する多数個取り金型が装着された射出成形機の制御方法である。そして、複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定し、複数の圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを事前に取得する。また、製造対象品の射出成形において、複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、圧力プロファイルXと一致するように、複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化を調整する。
【0017】
本実施形態の射出成形機の制御方法において使用する射出成形機は、複数のキャビティを有する多数個取り金型が装着された射出成形機を対象としている。
【0018】
本実施形態の射出成形機の制御方法においては、複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイル(以下、単に「圧力プロファイル」とも呼ぶ。)を測定し、複数の圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを事前に取得する。圧力プロファイルXの元となる基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルは、各キャビティ間の樹脂の充填バラツキがないか、又は樹脂の充填バラツキが少ないなど、ユーザーが満足し得る程度の樹脂の充填バラツキとなるように適宜決定することができる。そして、次回以降の射出成形において、取得した圧力プロファイルXと一致するように、各キャビティの圧力を調整することによって、複数の全てのキャビティにおける樹脂の充填量のバラツキが所望の範囲となる。そこで、本実施形態においては、製造対象品の射出成形において、事前に取得した圧力プロファイルXと一致するように各キャビティの圧力を調整しつつ射出成形を行うことにより、複数の全てのキャビティにおける樹脂の充填量のバラツキの低減を図っている。
なお、本実施形態の射出成形機の制御方法の対象となる熱可塑性樹脂は特に限定はない。また、本明細書において、「樹脂の充填量」との表記は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の充填量を意味する。
以下、本実施形態の射出成形機の制御方法について詳述する。
【0019】
本実施形態においては、まず、複数の全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定し、複数の圧力プロファイルから、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXを取得する。
図1は、多数個取り金型における、複数のキャビティの配置状態を模式的に示している。
図1においては、8個のキャビティ12~26がゲート(不図示)を介してランナー30に接続され、溶融した樹脂又は樹脂組成物はスプルー32、ランナー30及びゲートを経由して各キャビティに導かれる。各キャビティには圧力センサーを備え、経時における各キャビティ内の圧力が計測される。すなわち、各キャビティにおいては、射出成形開始から射出成形終了後の圧力がゼロになるまで圧力を計測することができる。
【0020】
ここで、圧力プロファイルXの元となる基準となるキャビティ内の圧力プロファイルは、上記の通り、複数のキャビティ間の樹脂の充填バラツキがないか、又は樹脂の充填バラツキが少ない場合など、ユーザーが満足し得る程度の樹脂の充填バラツキとなるように適宜決定することができる。例えば、1回の射出成形において、複数のキャビティの中で、樹脂の充填量が同等のキャビティ内における圧力プロファイルの平均とするか、全ての各キャビティ内における圧力プロファイルの平均とするか、複数の中で樹脂の充填量が同等のキャビティ内における圧力プロファイルの中央値とするなどが挙げられる。また、複数回の射出成形において、樹脂の充填バラツキが最も少ない場合におけるキャビティ内の圧力プロファイルを圧力プロファイルXとすることもできる。
【0021】
圧力プロファイルの具体例を
図2に示す。
図2において、横軸が時間(sec)を示し、縦軸が圧力(MPa)を示す。また、実線は、複数のキャビティにおける樹脂の充填量のバラツキが所望の範囲となる圧力プロファイル、すなわち、基準となるキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルXである。また、破線は、同バラツキが所望の範囲にない圧力プロファイルである。
図2に示すように、圧力プロファイルは、複数のキャビティ内の圧力の時間変化であり、型締め直後が最も高く、樹脂の固化とともに低くなり、最終的にはゼロになる。また、
図2に示すように、実線と破線とでは波形が一致していないため、後述するように、破線の圧力プロファイルとなる射出成形を、実線の圧力プロファイルXと一致するように各キャビティの圧力プロファイルを調整する。
【0022】
次に、製造対象品の射出成形において、複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、上記のように取得した圧力プロファイルXと一致するように、複数のキャビティのそれぞれの充填圧力を調整する。上述の通り、複数のキャビティ内の圧力の時間変化が圧力プロファイルXと一致するように製造対象品の射出成形を行うことで充填量のバラツキを調整することができる。圧力プロファイルXよりも圧力が低い傾向にある場合、充填圧力を増大させ、逆に、圧力プロファイルXよりも圧力が高い傾向にある場合、充填圧力を減少させる。このような樹脂の充填圧力の調整において、多数個取り金型がコールドランナー構造を有する場合と、ホットランナーを有する場合とで好ましい形態が異なるため、以下にそれぞれについて説明する。
なお、本実施形態においては、複数のキャビティ内の圧力の時間変化は、圧力プロファイルXと完全に一致するようにすることが好ましいが、必ずしも完全に一致させる必要はない。例えば、複数のキャビティの充填バラツキが許容できる範囲においては完全に一致させる必要はなく、若干のズレがあってもよい。
【0023】
多数個取り金型が、複数のコールドランナーを含むコールドランナー構造を有する場合、製造対象品の射出成形において、複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化の調整は、複数のキャビティそれぞれに対してコールドランナーの樹脂の流量調整により行うことができる。そのようなコールドランナーの樹脂の流量調整は、アジャスターを調整することにより行うことができる。
図3は、複数のキャビティ12~26におけるキャビティの入口付近のランナーにあるアジャスターの調整について模式的に示している。
図3(A)の□囲みの箇所は、キャビティの入口付近のランナーにあるアジャスターが存在する領域40であり、
図3(B)に示すように六角レンチで調整可能なアジャスター42が設けられており、
図3(C)はアジャスター42を六角レンチ44により調整する様子を示している。製造対象品の射出成形における圧力プロファイルが、例えば、所望の圧力プロファイルよりも圧力が低い傾向にある場合、アジャスター42を調整して樹脂の流量が多くなるように調整する。逆の場合は、アジャスター42を調整して樹脂の流量が少なくなるように調整する。
【0024】
図3においては、キャビティの入口付近のランナーにあるアジャスターを六角レンチにより調整するという、手動で調整する形態を示したが、アジャスターの角度はサーボモーター等により電動化して調整するように設定することもできる。そのように構成すると、人為的な調整は要せず、自動化することができる。例えば、射出成形機に、アジャスターの角度変化により複数のランナーの樹脂の流量を調整する機構と、アジャスターの角度を変化させる、位置検出器が装備されたモーターとを設ける。そして、複数のランナーの樹脂の流量の調整を、モーターによるアジャスターの角度調整により行う。
【0025】
一方、多数個取り金型が、複数のホットランナーを含むホットランナー構造を有する場合、製造対象品の射出成形において、複数のキャビティのそれぞれにおける圧力の時間変化は、複数のそれぞれのキャビティに樹脂を注入するための複数のノズルそれぞれの加熱温度の調整により行うことができる。
図4は、金型50におけるキャビティの加熱温度の調整するシステム構成を示している。金型50には、型内圧を計測する型内圧センサー54と、ホットランナーのチップ温度を制御する温度コントローラー56とが電気的に接続されている。型内圧センサー54及び温度コントローラー56は、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)52に電気的に接続されている。そして、温度コントローラー56によりホットランナーのチップ温度を上昇させると樹脂の流量が増大し、低下させると樹脂の流量が減少する。このような構成において、PLC52は、例えば、型内圧センサー54により計測された型内圧を認識し、所望の圧力プロファイルと一致するよう温度コントローラー56を調整してホットランナーのチップ温度を制御するように設定することができる。また、このような構成とすることで、複数のキャビティ内の圧力の時間変化が、所望の圧力プロファイルと一致するように自動制御することができる。
【0026】
ホットランナーにおける加熱方式としては、内部加熱式、外部加熱式、ゲート方式(オープンゲート方式、バルブゲート方式)のいずれでもよい。加熱手段としては、昇温速度や降温速度が高くなる点で電磁誘導加熱による加熱が好ましい。
【0027】
<射出成形品の製造方法>
本実施形態の射出成形品の製造方法は、上述の本実施形態の射出成形機の制御方法により射出成形機を制御して射出成形品を製造する。従って、多数製造してもバラツキが少ない射出成形品を得ることができ、強度が安定し、寸法精度を向上することができる。
【実施例0028】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(事前準備1)
直径10mmの円盤形状の成形品を成形し得る、8つのキャビティを有する多数個取り金型を準備した。この多数個取り金型はコールドランナー構造を有するとともに、アジャスターの角度変化により8つのコールドランナーの樹脂の流量を調整する機構と、アジャスターの角度を変化させる、位置検出器が装備されたモーターとを備える。また、多数個取り金型の各キャビティには圧力センサーを備え、経時の圧力測定が可能となっている。そして、当該多数個取り金型を射出成形機に装着し、樹脂としてポリプラスチックス(株)製、ポリアセタール樹脂(ジュラコン(登録商標))を用いて射出成形を行った。その際、8つの全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定した。射出成形後、8つのキャビティにより得られた円盤状成形品の直径を(株)キーエンス製 画像測定機VR-6000で計測した。計測した直径の中で中央値となる円盤状成形品が得られたキャビティを、「基準となるキャビティ」とした。そして、その「基準となるキャビティ」内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを圧力プロファイルX1とした。
【0030】
[実施例1]
事前準備1と同様にして、多数個取り金型を用い、射出成形により円盤状成形品を得た。ただし、事前準備1により取得した圧力プロファイルX1となるように、モーターによりアジャスターを自動調整して樹脂の流量調整をしつつ射出成形を行った。そして、各キャビティにおける円盤状成形品の直径を計測した。計測結果を表1に示す。
【0031】
[比較例1]
アジャスターによる自動調整を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして射出成形を行い、円盤状成形品の直径を計測した。計測結果を表1に示す。
【0032】
(事前準備2)
直径10mmの円盤形状の成形品を成形し得る、8つのキャビティを有する多数個取り金型を準備した。この多数個取り金型はホットランナー構造を有するとともに、8つのキャビティそれぞれに樹脂を注入するための8つのノズルそれぞれの加熱温度の調整が可能である。また、多数個取り金型の各キャビティには圧力センサーを備え、経時の圧力測定が可能となっている。そして、当該多数個取り金型を射出成形機に装着し、樹脂としてポリプラスチックス(株)製、ポリアセタール樹脂(ジュラコン(登録商標))を用いて射出成形を行った。その際、8つの全てのキャビティ内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを測定した。射出成形後、8つのキャビティにより得られた円盤状成形品の直径を計測した。計測した直径の中で中央値となる円盤状成形品が得られたキャビティを「基準となるキャビティ」とした。そして、その「基準となるキャビティ」内の圧力の時間変化を示す圧力プロファイルを圧力プロファイルX2とした。
【0033】
[実施例2]
事前準備2と同様にして、多数個取り金型を用い、射出成形により円盤状成形品を得た。ただし、事前準備2により取得した圧力プロファイルX2となるように、ノズルの温度調整をして射出成形を行った。そして、各キャビティにおける円盤状成形品の直径を計測した。計測結果を表1に示す。
【0034】
[比較例2]
ノズルの温度調整を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして射出成形を行い、円盤状成形品の直径を計測した。計測結果を表1に示す。
【0035】
[実施例3]
事前準備1と同様にして、上記多数個取り金型を用い、射出成形により円盤状成形品を得た。ただし、事前準備1により取得した圧力プロファイルX1となるように、モーターによりアジャスターを自動調整して樹脂の流量を調整しつつ射出成形を行った。そして、多数個取り金型から、成形品をランナーとともに取り出し、円盤状成形品とランナーとに引張荷重をかけ、破壊したときの荷重を引張破壊荷重として得た。測定結果を表1に示す。なお、全ての成形品がゲートに相当する箇所で破壊した。
【0036】
[比較例3]
アジャスターの自動調整による樹脂の流量調整を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして射出成形を行い、引張破壊荷重を測定した。計測結果を表1に示す。比較例3も実施例3と同様、全ての成形品がゲートに相当する箇所で破壊した。
【0037】
【0038】
表1より、実施例1~3それぞれは、比較例1~3それぞれと比較して、8つのキャビティにおけるバラツキが抑えられていることが分かる。