(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021671
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250206BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250206BHJP
【FI】
H01L21/68 A
G05D1/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125547
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 将也
(72)【発明者】
【氏名】添島 義勝
【テーマコード(参考)】
5F131
5H301
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA31
5F131BA32
5F131BA52
5F131CA09
5F131DA02
5F131DA23
5F131DA43
5F131DC06
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
(57)【要約】
【課題】加工済みの被加工物を搬送車によって搬送する過程で該被加工物を破損させることがない搬送システムを提供すること。
【解決手段】複数の加工装置100A,100B…の上方に設置された走行レーン50上を走行して被加工物を加工装置100A,100B…に搬送する搬送車10の走行を制御する制御部30を備えた搬送システム1において、制御部30は、加工装置100A,100B…によって加工された被加工物を搬送するときの搬送車10の第2走行速度V2を、未加工の被加工物を搬送するときの搬送車10の第1走行速度V1よりも遅くなるように搬送車10の走行を制御する。ここで、搬送車10には、制御部30と受信部31が設けられ、加工装置100A,100B…には、速度変更部111と発信部120が設けられ、制御部30は、受信部31が受信した走行速度で搬送車10を走行させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工装置の上方に設置された走行レーン上を走行して被加工物を前記加工装置に搬送する搬送車の走行を制御する制御部を備えた搬送システムであって、
前記制御部は、前記加工装置によって加工された被加工物を搬送するときの前記搬送車の第2走行速度を、未加工の被加工物を搬送するときの前記搬送車の第1走行速度よりも遅くなるように前記搬送車の走行を制御することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記搬送車には、前記制御部と受信部が設けられ、
前記加工装置には、前記搬送車の走行速度を変更する速度変更部と、該速度変更部によって変更された走行速度を前記搬送車に設けられた前記受信部に向けて発信する発信部が設けられ、
前記制御部は、前記受信部が受信した走行速度で前記搬送車を走行させることを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記加工装置には、タッチパネルが設けられ、
該タッチパネルは、前記速度変更部と、該速度変更部によって変更された走行速度を前記発信部から前記受信部に送信する送信ボタンを備えることを特徴とする請求項1記載の搬送システム。
【請求項4】
前記速度変更部は、被加工物の加工内容ごとに前記第2走行速度を設定することを特徴とする請求項2または3記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加工装置の間を走行レーンに沿って走行して被加工物を各加工装置に搬送する搬送車と該搬送車の走行を制御する制御部を備える搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、被加工物としてのウェーハを加工する研削装置などの加工装置は、クリーンルーム内に複数設置されているが、ウェーハを保持した搬送車を走行レーンに沿って走行させてウェーハを各加工装置に搬送する搬送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、ウェーハを保持した搬送車を複数の加工装置の間で走行レーンに沿って走行させる場合、従来はウェーハの加工状態(未加工状態であるか加工済み状態であるか)とは無関係に一定の速度で搬送車を走行させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、研削装置によって裏面か研削された薄いウェーハ(加工済みのウェーハ)を保持する搬送車を従来のように比較的速い一定の速度で走行レーン上を走行させると、該搬送車の走行振動によってウェーハに欠けや割れなどが発生する可能性がある。
【0006】
また、テープによってリングフレームに保持されたウェーハが切削装置の切削ブレードによって切削することによって得られる複数のチップは、テープによって支持されているが、これらの複数のチップを保持する搬送車が従来のように比較的速い一定の速度で走行レーン上を走行すると、該搬送車の走行振動によってテープが揺れ、隣接するチップ同士が接触してチップに欠けが発生する可能性もある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、加工済みの被加工物を搬送車によって搬送する過程で該被加工物を破損させることがない搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、複数の加工装置の上方に設置された走行レーン上を走行して被加工物を前記加工装置に搬送する搬送車の走行を制御する制御部を備えた搬送システムであって、前記制御部は、前記加工装置によって加工された被加工物を搬送するときの前記搬送車の第2走行速度を、未加工の被加工物を搬送するときの前記搬送車の第1走行速度よりも遅くなるように前記搬送車の走行を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記搬送車には、前記制御部と受信部が設けられ、前記加工装置には、前記搬送車の走行速度を変更する速度変更部と、該速度変更部によって変更された走行速度を前記搬送車に設けられた前記受信部に向けて発信する発信部が設けられ、前記制御部は、前記受信部が受信した走行速度で前記搬送車を走行させることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記加工装置には、タッチパネルが設けられ、該タッチパネルは、前記速度変更部と、該速度変更部によって変更された走行速度を前記発信部から前記受信部に送信する送信ボタンを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の発明において、前記速度変更部は、被加工物の加工内容ごとに前記第2走行速度を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、加工装置によって加工された被加工物を搬送するときの搬送車の第2走行速度を、未加工の被加工物(搬送車の走行振動によって破損する可能性が低い被加工物)を搬送するときの搬送車の第1走行速度よりも遅くなるようにしたため、加工済みの破損し易い被加工物を搬送するときの搬送車の走行振動が小さく抑えられ、該被加工物の走行振動による破損(欠けや割れなど)が効果的に防がれる。
【0013】
また、未加工の被加工物を搬送する際の搬送車の第1走行速度を加工済みの被加工物を搬送する際の第2走行速度よりも速くしたため、未加工の被加工物を間違えて搬送した場合には、この被加工物を素早く回収することができる。
【0014】
請求項2及び3記載の発明によれば、加工装置に設けられたタッチパネルの速度変更部を操作して搬送車の走行速度を適正な値に変更した後に送信ボタンを押すと、変更速度の信号が搬送車の受信部によって受信され、この受信された信号に基づいて制御部が搬送車の走行速度が変更後の値になるように制御するため、搬送車の走行速度が変更後の値に設定される。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、速度変更部によって搬送車の第2走行速度が被加工物の加工内容に応じた適正な値に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る搬送システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る搬送システムの一部の構成を示す部分破断側面図である。
【
図5】走行レーンに沿って複数の加工装置間を搬送車が移動する状態を示す部分側断面図である。
【
図7】搬送車の移動距離と時間との関係を示す図である。
【
図8】搬送車の走行速度と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
[搬送システムの構成]
まず、本発明に係る搬送システムの全体構成を
図1に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す搬送システム1は、ローダ・アンローダ装置2と、複数の加工装置100A,100B…と、複数の搬送車10…と、これらのローダ・アンローダ装置2と加工装置100A,100B…及び搬送車10…の動作を制御する制御ユニット3を含んで構成されており、ローダ・アンローダ装置2と加工装置100A,100B…及び搬送車10…は、制御ユニット3に無線で接続されている。
【0020】
而して、本実施形態に係る搬送システム1は、搬送車10がローダ・アンローダ装置2から受け取った被加工物である不図示のウェーハを保持して各加工装置100A,100B…の間を走行することによって、各加工装置100A,100B…に対してウェーハを受け渡すシステムである。具体的には、
図2に示すように、加工装置100A,100B…(
図2には、1つの加工装置(例えば、研削装置)100Aのみを示す)の上方に水平に設置された走行レーン50に沿って走行する搬送車10によって不図示のウェーハを加工装置(例えば、研削装置)100Aへと搬送するとともに、加工装置100Aによって加工されたウェーハを受け取った搬送車10を他の加工装置(例えば、研磨装置や切削装置)100B(
図1、
図4及び
図5参照)に向けて走行させ、このような動作を繰り返すことによって、加工済みのウェーハを複数の加工装置100A,100B…の間で順次搬送するものである。ここで、
図2に示すように、複数の搬送車10…や走行レーン50、複数の加工装置100A,100B…(
図2には、1つの加工装置100Aのみを図示)などは、クリーンルームR内に設置されている。
【0021】
なお、各搬送車10によって搬送されるウェーハは、例えば、単結晶のシリコン(Si)で構成された薄い円板状の部材であって、搬送車10に昇降動可能に吊り下げ支持されたカセット41(
図6参照)に収容された状態で搬送される。ここで、走行レーン50の各加工装置100A,100B…のカセットステージ101の真上の箇所には、
図2、
図4~
図6に示すように、矩形の開口部50aが形成されており、走行レーン50に沿って走行する搬送車10によって搬送されるカセット(
図6参照)は、走行レーン50の開口部50aを通過して昇降することによって各加工装置100A,100B…のカセットステージ101に対してウェーハを受け渡しする。
【0022】
[搬送車の構成]
次に、各搬送車10の構成を
図3に基づいて以下に説明する。なお、以下の説明においては、
図3に矢印にて示すように、搬送車10の走行方向を「前後」方向、走行方向に直交する車幅方向を「左右」方向とする。
【0023】
各搬送車10は、多角形の金属製プレートで構成されたシャーシ11と、該シャーシ11の上面側に配置された多角形の樹脂製の基板12によって構成された上下二重構造の車体10Aを備えており、この車体10Aは、その前端部の左右に配置された回転可能な一対の前輪13と、後端部の左右に配置された回転可能な一対の後輪14によって
図2に示す走行レーン50上を矢印方向に走行可能に支持されている。ここで、左右一対の前輪13は、駆動輪及び操舵輪として機能するものであり、左右一対の後輪14は、垂直軸を中心として自由に回転することができるキャスタによって構成されている。
【0024】
そして、シャーシ11の前端部の左右に配置された一対の前輪13は、回転可能な車軸15によってそれぞれ支持されており、各車軸15には、ギヤプーリ16(
図3には、一方のみ図示)がそれぞれ結着されている。また、シャーシ11の後端部下面の左右には、左右の各後輪(キャスタ)14が不図示の垂直軸を中心としてそれぞれ回転可能に支持されている。
【0025】
また、搬送車10の車体10A(基板12)上には、左右一対の前輪13をそれぞれ独立に回転駆動する駆動ユニット20と、矩形プレート状の支持台17上に配置された制御部30と受信部31及び発信部32と、支持台17と車体10A(基板12)との間に設けられた昇降ユニット40が配置されている。なお、基板12の下面の前端部と後端部には、不図示の第1センサがそれぞれ配置され、基板12の下面の前後方向中間部の左右には、不図示の第2センサがそれぞれ配置されているが、これらの第1センサと第2センサは、
図4に示す走行レーン50の上面に敷設された帯状の第1マークM1と第2マークM2をそれぞれ非接触で光学的に検知するものであって、本実施形態では、反射型フォトセンサによって構成されている。
【0026】
さらに、基板12上の前端部と後端部の左右には、当該搬送車10の障害物への衝突を検知するための第3センサ18がそれぞれ配置されている。なお、第3センサ18は、制御部30に電気的に接続されており、この第3センサ18には、タッチセンサや近接スイッチなどが用いられる。
【0027】
ここで、左右の前輪13をそれぞれ独立に回転駆動する駆動ユニット20は、駆動源である左右一対の電動モータ21と、各電動モータ21に電力を供給するバッテリ22などを備えており、各電動モータ21の出力軸(モータ軸)21a(
図6参照)の外端部には、前記ギヤプーリ16よりも小径のギヤプーリ23(
図5及び
図6参照)がそれぞれ結着されており、これらのギヤプーリ23と前記ギヤプーリ16には、無端状のタイミングベルト24がそれぞれ巻き掛けられている。
【0028】
したがって、バッテリ22から各電動モータ21に電力がそれぞれ供給されて両電動モータ21が起動されると、各電動モータ21の出力軸(モータ軸21a)に結着された小径側のギヤプーリ23がそれぞれ回転駆動され、各ギヤプーリ23の回転は、各タイミングベルト24を経て減速されて(トルクアップされて)左右の大径側のギヤプーリ23へとそれぞれ伝達される。すると、左右の各ギヤプーリ23と各車軸15がそれぞれ回転し、各車軸15に結着された前輪13がそれぞれ独立に回転駆動されるため、これらの前輪13の回転によって搬送車10が
図3に示す走行レーン50上を矢印方向に走行することができる。なお、バッテリ22には、リチウムイオン電池などが用いられる。また、各電動モータ21は、制御部30に電気的に接続されており、その駆動が制御部30によって制御される。
【0029】
ここで、搬送車10に設けられた制御部30は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部などを備えており、後述のように、搬送車10が加工前(未加工)のウェーハを保持して走行しているときの該搬送車10の走行速度(第1走行速度)と、加工済みのウェーハを保持して走行しているときの搬送車10の走行速度(第2走行速度)を所定の値になるように制御する。その他、制御部30は、不図示の第1センサと第2センサから送信される検知信号に基づいて駆動ユニット20や昇降ユニット40の駆動を制御する。また、受信部31は、外部からの信号を受信して制御部30に送信する機能を果たすものであり、発信部32は、制御部30から受信した信号を外部に送信する機能を果たすものである。
【0030】
また、昇降ユニット40は、ウェーハを収容したカセット41(
図6参照)を昇降させる機構であって、ベルトなどの4本の吊り下げ部材42(
図6参照)を巻き取り或いは巻き戻すことによって、これらの吊り下げ部材42によって吊り下げられたカセット41を昇降させるものである。なお、この昇降ユニット40は、制御部30に電気的に接続されており、前述のように、その駆動が制御部30によって制御されるが、その具体的な構成についての図示及び説明は省略する。
【0031】
[加工装置の構成]
例えば、加工装置(研削装置)100Aには、
図2及び
図5に示すように、タッチパネル110と発信部120が設けられており、タッチパネル110には、作業者が搬送車10の走行速度を変更することができる速度変更部111と、変更された走行速度の信号(速度信号)を発信部120に向けて送信する送信ボタン112が備えられている。この送信ボタン112から発信部120に向けて速度信号が送信されると、この速度信号を受信した発信部120は、搬送車10の受信部31に向けて速度信号を発信する。なお、他の加工装置100B…にも、加工装置100Aと同様に、タッチパネル110と発信部120がそれぞれ設けられている(
図5参照)。
【0032】
[走行レーンの構成]
各加工装置100A,100B…の上方に設置された走行レーン50の上面は、塗装または表面加工によって黒色艶消し処理が施されており、
図4に示すように、この走行レーン50の上面の幅方向中央には、銀色の反射テープなどによって構成された第1マークM1が搬送車10の走行方向(
図4の上下方向)に沿って敷設されている。
【0033】
ところで、
図4に示すように、走行レーン50の各加工装置100A,100B…の上方に位置する部位には、各加工装置100A,100B…に対してウェーハを受け渡すための受け渡しステーションS1,S2…が形成されており、各受け渡しステーションS1,S2…には、矩形の開口部50aがそれぞれ開口している。そして、走行レーン50の上面には、第1マークM1を直角に横切って各受け渡しステーションS1,S2…に向かう第2マークM2がそれぞれ敷設されている。ここで、各第2マークM2は、銀色の反射テープなどによって構成されている。
【0034】
[搬送システムの作用]
次に、以上のように構成された搬送システム1の作用、つまり、搬送車10による被加工物であるウェーハの加工装置100A,100B…への搬送方法について説明する。
【0035】
搬送車10は、
図5に示す初期位置P0において、
図1に示すローダ・アンローダ装置2からカセット41(
図6参照)に加工前(未加工)のウェーハを受け取る。すると、
図1に示す制御ユニット3から送信される制御信号を受信部31によって受信した搬送車10は、従来の走行速度Vよりも速い第1走行速度V1で走行レーン50に沿って加工装置100Aに向かって
図5の矢印方向に移動する。なお、本実施形態では、搬送車10の第1走行速度V1は、400mm/secに設定されているが、この値は、制御ユニット3によって予め設定されている。
【0036】
ここで、搬送車10は、これの前後に設けられた不図示の第1センサによって
図4に示す走行レーン50の第1マークM1を光学的に非接触で検知しながら該第1マークM1に沿って図示矢印方向に走行(自走)する。すなわち、
図2に示す制御部30によって駆動ユニット20が駆動制御され、左右の電動モータ21が起動されて前輪13が回転駆動されると、搬送車10は、走行レーン50を第1マークM1に沿って走行(自走)する。
【0037】
したがって、カセット41(
図6参照)に未加工のウェーハを収容保持した搬送車10は、
図5に示す初期位置P0から第1走行速度V1で加工装置100Aに向かって走行し、加工装置100Aの上方の第1位置P1において停止するが、該搬送車10が初期位置P0に位置している時間tを0(t=0)とし、加工装置100Aの上方の第1位置(カセット41を下降させてウェーハを加工装置100Aに受け渡す位置)P1に到達する時間をt1、搬送車10の移動距離をL1とすると、
図7及び
図8に示すように、時間t=0~t1の間(T1)においては、搬送車10は、従来の走行速度Vよりも速い第1走行速度V1(=L1/T1)で第1位置P1まで移動する。
【0038】
ここで、従来の走行速度V(<V1)で走行する搬送車10が加工装置100Aの上方の第1位置P1に到達する時間は、
図7においてt1’(>t1)にて示される。したがって、本実施形態のように、搬送車10が従来の走行速度Vよりも速い第1走行速度V1(>V)で走行する場合には、該搬送車10が第1位置P1まで到達する所要時間T1が従来の所要時間T1’よりもΔT(=t1’-t1)だけ短縮される。このため、例えば、初期位置P0から加工装置100Aの上方の第1位置P1へと向かって走行する搬送車10が保持している未加工のウェーハに間違いがあることに気づいた場合には、従来の走行速度Vよりも速い第1走行速度V1で搬送車10を初期位置P0へと戻してウェーハを回収することができる。
【0039】
以上のように、未加工のウェーハを保持する搬送車10が初期位置P0から第1位置P1へと移動する際の第1走行速度V1を従来の走行速度Vよりも速く設定(V1>V)した場合であっても、該搬送車10に保持された未加工のウェーハは、その厚みが比較的厚いため、搬送車10の走行振動によっても破損(欠けや割れなど)することがない。
【0040】
搬送車10が加工装置100Aの上方の第1位置P1に到達したことが該搬送車10の左右に配置された第2センサが第2マークM2を検知することによって確認されると、該搬送車10の制御部30は、駆動ユニット20の電動モータ21の駆動を停止し、搬送車10を加工装置100Aの上方の第1位置P1で停止させる。このように、搬送車10が第1位置P1において停止すると、
図4に鎖線にて示すように、搬送車10が角度90°だけ旋回し、受け渡しステーションS1に向かって前進し、該搬送車10に保持されたカセット41(
図6参照)が開口部50aに合致する位置で当該搬送車10が停止する。そして、この状態から、
図3に示す制御部30が昇降ユニット40を駆動制御し、
図6に示すように、ウェーハが収納されたカセット41を、開口部50aを通過させて下降させ、該カセット41を加工装置100Aのカセットステージ101へと受け渡す。
【0041】
上述のように、加工装置100Aのカセットステージ101に受け渡された加工前のウェーハは、研削装置である加工装置100Aにおいて研削加工されて薄化される。そして、研削加工によって薄化されたウェーハ(加工済みのウェーハ)は、カセットステージ101において待機するカセット41へと収納される。すると、制御部30によって昇降ユニット40が再び駆動制御され、カセット41が上昇して受け渡しステーションS1において開口する開口部50aを通過して搬送車10に戻されて回収される。その後、搬送車10は、スイッチバックして元の位置に戻された後、角度90°だけ旋回して元の状態(
図4に実線にて示す状態)に戻る。
【0042】
ここで、加工装置100Aにおいては、作業者によるタッチパネル110の速度変更部111の操作によって、搬送車10の走行速度が第1走行速度V1よりも遅い第2走行速度V2(<V1)に設定された後、送信ボタン112が押されると、その信号は、発信部120へと送信され、発信部120から搬送車10の受信部31に向けて発信される。なお、本実施形態では、搬送車10の第2走行速度V2は、300mm/secに設定されるが、
図7及び
図8に示すように、この第2走行速度V2は、従来の走行速度Vよりも遅い速度に設定される(V2<V)。
【0043】
すると、搬送車10の制御部30は、駆動ユニット20の左右一対の電動モータ21を駆動制御し、左右一対の前輪13の回転速度を制御(減速)して搬送車10を加工装置100Aの上方の第1位置P1から加工装置(例えば、研磨装置)100Bに向けて第1走行速度V1及び従来の走行速度Vよりも遅い第2走行速度V2(<V<V1)で走行させる。ここで、加工装置100Aの上方の第1位置P1から加工装置100Bの上方の第2位置P2までの距離を
図5に示すようにL2とすると、搬送車10の第2走行速度V2は、L2/T2となり、この第2走行速度V2で走行する搬送車10は、時間t2において加工装置100Bの上方の第2位置(加工装置100Bに対して加工済みのウェーハを受け渡す位置)P2に到達する。すなわち、搬送車10は、
図7及び
図8に示す時間t1から加工装置100Bに向かって第2走行速度V2で走行し、時間t2において加工装置100Bの上方の第2位置P2に到達するが、その所要時間T2(=t2-t1)は、従来の走行速度Vで走行する搬送車10の所要時間T2’よりも
図7に示す時間ΔTだけ長くなる。なお、
図7において、T1’は、従来の走行速度Vで走行する搬送車10が初期位置P0から第1位置P1へと移動するまでの所要時間であり、T2’は、従来の走行速度Vで走行する搬送車10が第1位置P1から第2位置P2へと移動するまでの所要時間である。
【0044】
ところで、
図7に示す例では、第2走行速度V2で走行する搬送車100が加工装置100Bの上方の第2位置P2へと到達する時間と、従来の走行速度Vで走行する搬送車10が第2位置P2へと到達する時間とが同じ時間t2であるものとしたが、両時間は必ずしも同じである必要はない。なお、搬送車10の第2走行速度V2は、従来の走行速度Vに設定してもよい。また、ウェーハの加工中にエラーが発生した場合には、そのウェーハを素早く回収するために、搬送車10を、走行速度V2よりも速い第1走行速度V1で走行させるようにしてもよい。
【0045】
ここで、
図7を参照すると、第2走行速度V2で走行する搬送車10が第1位置P1から第2位置P2へと移動する際の所要時間T2は、第1走行速度V1で初期位置P0から第1位置P1まで走行する搬送車10の所要時間T1よりも長くなっているが(T2>T1)、第1走行速度V1で走行する搬送車10の所要時間T1が従来の走行速度Vで走行する搬送車10の所要時間T1’に対して図示のΔTだけ短縮されているため、搬送車10が初期位置P0から第2位置P2まで走行するトータルの所要時間Tは、従来の値と同じとなる。
【0046】
而して、本実施形態では、加工装置100Aによって研削加工された薄化されたウェーハを加工装置100Aから次の加工装置(例えば、研磨装置)100Bへと搬送する際には、搬送車10を第1走行速度V1及び従来の走行速度Vよりも遅い第2走行速度V2(<V<V1)で走行させるようにしたため、加工済みの破損し易いウェーハを搬送するときの搬送車10の走行振動が小さく抑えられ、該ウェーハの走行振動による破損(欠けや割れなど)が効果的に防がれる。
【0047】
以後、加工済みのウェーハを搬送車10によって加工装置100Bから加工装置100C、加工装置100Cから加工装置100D…へと順次搬送する場合も、搬送車10の走行速度は、第1走行速度V1と従来の走行速度Vよりも遅い第2走行速度V2(V<V1)に設定されるが、この第2走行速度V2は、加工装置100B,100C…におけるウェーハの加工内容(例えば、切削加工、洗浄など)に応じて最適な値に設定してもよい。
【0048】
なお、以上の実施形態では、搬送車10が被加工物であるウェーハを搬送する場合を例として説明したが、本発明に係る搬送システム1においては、搬送車10は、ウェーハ以外の任意の被加工物を搬送するものであってもよい。
【0049】
また、以上の実施の形態では、各加工装置100A,100B…に設けられたタッチパネル110の速度変更部111の作業者による操作によって搬送車10の走行速度を設定するようにしたが、例えば、第1センサや第2センサによるマークの検知、或いはカメラによる撮影などによって搬送車10の位置(加工装置100A,100B…の位置)を認識し、それに基づいて搬送車10の第2走行速度V2を予め設定された値に自動的に設定するようにしてもよい。
【0050】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1:搬送システム、2:ローダ・アンローダ装置、3:制御ユニット、10:搬送車、
10A:車体、11:シャーシ、12::基板、13:前輪、14:後輪、15:車軸、
16:ギヤプーリ、17:支持台、18:第3センサ、20:駆動ユニット、
21:電動モータ、21a:電動モータの出力軸、22:バッテリ、23:ギヤプーリ、
24:タイミングベルト、30:制御部、31:受信部、32:発信部、
40:昇降ユニット、41:カセット、42:吊り下げ部材、50:走行レーン、
50a:開口部、100A,100B…:加工装置、101:カセットステージ、
110:タッチパネル、111:速度変更部、112:送信ボタン、120:発信部、
L1,L2:搬送車の移動距離、M1:第1マーク、M2:第2マーク、
P0:初期位置、P1:第1位置、P2:第2位置、R:クリーンルーム、
S1,S2:受け渡しステーション、V:従来の走行速度、V1:第1走行速度、
V2:第2走行速度