(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021689
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】充電器、その制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20250206BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M7/12 Q
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125589
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】榎本 倫人
(72)【発明者】
【氏名】權藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】米田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】宅間 春介
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA07
5H006CA02
5H006CA07
5H006CC08
5H006DA02
5H730AA15
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730CC04
5H730DD04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供する。
【解決手段】交流電源200から出力される電力p
sと電力脈動吸収回路130のコンデンサCbufから出力される電力p
Cとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31および第2のスイッチS32を制御し、交流電源200から出力される瞬時電力p
sが交流電源200から出力される電力の平均電力Pよりも低い期間である放電期間において、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をオンの状態に保つ。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリの正極に接続するための第3の端子と、前記バッテリの負極に接続するための第4の端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御部は、
前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記第1のスイッチをオンの状態に保つ、充電器。
【請求項2】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの変圧器の一次側のインダクタを流れる電流であるインダクタ電流の波形が正負で対称になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御する、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータは、
1次側に、前記第1の端子側に配置された第1のスイッチと前記第2の端子側に配置された第2のスイッチを含むレグと、前記第1の端子側に配置された第3のスイッチと前記第2の端子側に配置された第4のスイッチを含むレグと、を有し、
2次側に、前記第3の端子側に配置された第5のスイッチと前記第4の端子側に配置された第6のスイッチを含むレグと、前記第3の端子側に配置された第7のスイッチと前記第4の端子側に配置された第8のスイッチを含むレグと、を有し、
前記放電期間において前記制御部により実行される前記DC/DCコンバータのスイッチングの制御は、
前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオフであり、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチがオンである第1のモードと、
前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオフであり、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチがオンである第2のモードと、を含み、
前記制御部は、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える際の前記インダクタ電流の値がゼロ以上になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチング周波数を制御する、請求項2に記載の充電器。
【請求項4】
前記制御部は、前記放電期間において、前記交流電源から前記電力脈動吸収回路のインダクタに流れる電流が正弦波電流になるように、前記電力脈動吸収回路の第2のスイッチを制御する、請求項2に記載の充電器。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータは、
1次側に、前記第1の端子側に配置された第1のスイッチと前記第2の端子側に配置された第2のスイッチを含むレグと、前記第1の端子側に配置された第3のスイッチと前記第2の端子側に配置された第4のスイッチを含むレグと、を有し、
2次側に、前記第3の端子側に配置された第5のスイッチと前記第4の端子側に配置された第6のスイッチを含むレグと、前記第3の端子側に配置された第7のスイッチと前記第4の端子側に配置された第8のスイッチを含むレグと、を有し、
制御部が、前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオフである第1の期間と、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオフである第2の期間と、に、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチをオンに制御し、前記第1の期間および前記第2の期間以外の期間に、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチをオフに制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の充電器。
【請求項6】
前記充電期間において前記制御部により実行される前記DC/DCコンバータのスイッチングの制御は、
前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオフであり、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチがオンである第1のモードと、
前記DC/DCコンバータの第1のスイッチ、第4のスイッチ、第5のスイッチ、および第8のスイッチがオンであり、前記DC/DCコンバータの第2のスイッチ、第3のスイッチ、第6のスイッチ、および第7のスイッチがオフであり、前記電力脈動吸収回路の第1のスイッチがオフである第3のモードと、を含み、
前記制御部は、前記第1のモードから前記第3のモードに切り替える際の前記インダクタ電流の値がゼロ以上になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチング周波数を制御する、請求項5に記載の充電器。
【請求項7】
前記制御部は、前記充電期間において、前記交流電源からの出力電流が正弦波電流になるように、前記電力脈動吸収回路の第2のスイッチを制御する、請求項5に記載の充電器。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、請求項1に記載の充電器。
【請求項9】
コンピュータにより実行される、充電器を制御するための制御方法であって、
前記充電器は、
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリの正極に接続するための第3の端子と、前記バッテリの負極に接続するための第4の端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御方法は、
前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記第1のスイッチをオンの状態に保つ、制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載された制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器、その制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車向け充電器として、種々の絶縁形単相AC/DCコンバータが検討されている。一般的には、電気自動車向け充電器として、力率改善(Power factor Correction(PFC))回路付きのダイオード整流器、直流リンク部の大容量コンデンサ、高周波絶縁形DC/DCコンバータからなる回路構成が用いられる。直流リンク部の大容量コンデンサは単相交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、このような回路構成では、小型化が困難であった。
【0003】
電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器として、特許文献1、非特許文献1には、Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータに電力脈動吸収用のアクティブバッファを付加した充電器とその制御が開示されている。
【0004】
特許文献1、非特許文献1に開示された制御(不連続電流モード)では、DABコンバータのすべてのスイッチがオフになる期間(零電流期間)がある。このため、スイッチング回数が多く、スイッチング損失が大きくなる。また、この零電流期間では、すべてのスイッチがオフになるため、DABコンバータのインダクタLを流れる電流はゼロになるはずであるが、実際にはスイッチがオフになるタイミングにずれが生じ、このずれにより電流が残存し、DC/DCコンバータ120のインダクタLとスイッチS21~S28の寄生容量との間の共振が生じる。このため、零電流期間後のスイッチングがハードスイッチングとなり、スイッチング損失が生じる。
【0005】
そこで、特許文献2、非特許文献2~4には、零電流期間が存在しない制御(連続電流モード)が開示されている。連続電流モードでは、零電流期間がゼロになるように、交流電源から入力される交流電圧の一周期の間に、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングのスイッチング周波数fSWを変化させることにより、インダクタLの電流と電圧の振動を除去し、零電流期間後のハードスイッチングを避け、充電器を高効率に制御することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-34820号公報
【特許文献2】特開2023-25795号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】米田昇平, 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの検討」, 半導体電力変換研究会資料, 2021, SPC-21-003, pp. 13-18
【非特許文献2】米田昇平, 宅間春介. 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの可変周波数制御の検討」, 2021年電気学会産業応用部門大会講演論文集, 2021, Vol. 1, No. 30, pp. 13-18
【非特許文献3】S. Komeda, S. Takuma and Y. Ohnuma, "A Variable Switching Frequency Control Method for a Dual-Active-Bridge Single-Phase AC-DC Converter with an Active Energy Buffer," 2022 International Power Electronics Conference (IPEC-Himeji 2022- ECCE Asia), 2022, pp. 1185-1190
【非特許文献4】S. Komeda, S. Takuma and Y. Ohnuma, “Variable Switching Frequency Control for a Dual-Active-Bridge Single-Phase AC-DC Converter with Active Energy Buffer,” IEEJ Journal of Ind. Appl., vol. 12, no. 3, pp. 418-426(2023)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の制御はいずれも、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形を正負で非対称にし、この正負で非対称な動作波形を方形波形により近似することで、制御則の導出を容易にしている。インダクタLの動作波形を正負で非対称にするために、上記の制御では、アクティブバッファのバッファコンデンサが放電する放電期間とアクティブバッファのバッファコンデンサが充電される充電期間のいずれにおいても、アクティブバッファの放電スイッチのスイッチングをスイッチング周期内で2回以上行う必要がある。結果、上記の制御では、このアクティブバッファの放電スイッチにおけるスイッチング損失が充電器の効率に影響する。
【0009】
そこで、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態に係る充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリの正極に接続するための第3の端子と、前記バッテリの負極に接続するための第4の端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記第1のスイッチをオンの状態に保つ。
【0011】
本発明の一実施形態に係る制御方法は、コンピュータにより実行される、充電器を制御するための制御方法であって、前記充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリの正極に接続するための第3の端子と、前記バッテリの負極に接続するための第4の端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御方法は、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記第1のスイッチをオンの状態に保つ。
【0012】
本発明の一実施形態に係る制御プログラムは、上記制御方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。
【
図2】交流電源から出力される瞬時電力p
sとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cとの関係を示す図である。
【
図3】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
【
図4】不連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(非対称波形制御法)。
【
図5】不連続電流モードでの DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを示す図である(非対称波形制御法)。
【
図6】連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(非対称波形制御法)。
【
図7】連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを示す図である(非対称波形制御法)。
【
図8】放電期間におけるDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lを示す図である(対称波形制御法)。
【
図9】放電期間におけるDC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを示す図である(対称波形制御法)。
【
図10】充電期間におけるDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lを示す図である(対称波形制御法)。
【
図11】充電期間におけるDC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを示す図である(対称波形制御法)。
【
図12】対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率と非対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<充電器100>
図1は、本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。充電器100は、整流器110と、DC/DCコンバータ120と、電力脈動吸収回路130と、制御部140と、を有する。充電器100は、単相交流電源200から入力された単相交流電圧v
Sを直流電圧V
dcに変換し、バッテリ300に出力する。
【0016】
整流器110は、DC/DCコンバータ120に接続されたカソード端子111、アノード端子112と、交流電源200に接続するための2つの入力端子113と、を有する。整流器110は、例えば、
図1に示すように、4つのダイオードから成るブリッジダイオード整流器であり、交流電源に接続した2つの入力端子113間から入力された交流電流を、直流電流に変換し、カソード端子111から出力する。整流器110は、
図1に示すように、インダクタLacとコンデンサCacを有するフィルタFを介して、交流電源200と接続されるようにしても良い。
【0017】
DC/DCコンバータ120は、例えば、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである。DC/DCコンバータ120は、整流器110のカソード端子111に接続した第1の端子121と、整流器110のアノード端子112に接続した第2の端子122と、バッテリ300の正極に接続するための第3の端子123と、バッテリ300の負極に接続するための第4の端子124と、を有する。DC/DCコンバータ120は、変圧器Trと、変圧器Trを挟んで、入力端側(1次側)に4つのスイッチ、第1のスイッチS21、第2のスイッチS22、第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を含むフルブリッジ回路を有し、出力側端側(2次側)に4つのスイッチ、第5のスイッチS25、第6のスイッチS26、第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を含むフルブリッジ回路を有する。8つのスイッチS21~S28の各々は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETは、スナバコンデンサを有するようにしても良い。
【0018】
DC/DCコンバータ120の1次側のフルブリッジ回路は、第1の端子121と第2の端子122との間に接続された2つのレグ(第1の端子121側に配置された第1のスイッチS21と第2の端子122側に配置された第2のスイッチ22とを含むレグと、第1の端子121側に配置された第3のスイッチS23と第2の端子122側に配置された第4のスイッチS24とを含むレグ)を有し、DC/DCコンバータ120の2次側のフルブリッジ回路は、第3の端子123と第4の端子124との間に接続された2つのレグ(第3の端子123側に配置された第5のスイッチS25と第4の端子124側に配置された第6のスイッチ26を含むレグと、第3の端子123側に配置された第7のスイッチS27と第4の端子124側に配置された第8のスイッチS28を含むレグ)を有する。
【0019】
DC/DCコンバータ120は、変圧器Trの1次側にインダクタLを有する。このインダクタLは、例えば、変圧器Trの漏れインダクタである。
【0020】
また、DC/DCコンバータ120の第3の端子123と第4の端子124との間には、直流コンデンサCdcが接続されている。DC/DCコンバータ120の第3の端子123とバッテリ300の正極との間に、インダクタLdcを接続するようにしても良い。
【0021】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第1のスイッチS31と、第2のスイッチS32と、を有する。
【0022】
電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の一方との間に接続され、電力脈動吸収回路130の第2のダイオードD32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の他方との間に接続されている。このとき、電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31、第2のダイオードD32の各々は、整流器110の入力端子113からインダクタLbへの方向が順方向となるように、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の入力端子113の間に接続されている。このため、整流器110の入力端子113に交流電源200が接続されたとしても、電力脈動吸収回路130のインダクタLbには、直流電流が入力される。
【0023】
電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31は、整流器110のカソード端子111とDC/DCコンバータ120の第1の端子121とを接続する第1のラインLHと、整流器110のアノード端子112とDC/DCコンバータ120の第2の端子122とを接続する第2のラインLLと、の間に、直列に接続されている。バッファコンデンサCbufは、第2のラインLL側に配置され、第1のスイッチ31は、第1のラインLH側に配置されている。第1のスイッチS31は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが、第1のラインLHに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインがバッファコンデンサに接続するようにすると良い。
【0024】
電力脈動吸収回路130の第3のダイオードD33は、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31とを接続するラインと電力脈動吸収回路130のインダクタLbとの間に、インダクタLbからこのラインへの方向が順方向になるように接続されている。
【0025】
電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインと、第2のラインLLと、の間に接続されている。第2のスイッチS32は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインが電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが第2のラインLLに接続するようにすると良い。
【0026】
制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、S32のスイッチングを制御する。制御部140は、例えば、コンピュータにより構成される。
【0027】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第2のスイッチS32と、を有しているため、力率改善回路(PFC)として機能することが可能である。このため、本実施形態では、下記のような正弦波電圧v
S、正弦波電流i
Sが、交流電源200から充電器100に、入力されるように制御することが可能である。
【数1】
ここで、V
Sは、電源電圧の実効値であり、I
Sは、電源電流の実効値である。
【0028】
このとき、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sは、下記のように、平均電力P(=V
SI
S)と脈動部分p
rip(t)(=-V
SI
Scos2ω
St)の和となり、
図2の実線に示すように、平均電力P(
図2の破線)を挟んで、交流の角周波数ω
Sの2倍の角周波数で脈動する。
【数2】
【0029】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、S32のスイッチングを制御することで、電力脈動吸収回路130で交流電源200による電力の脈動を吸収し、DC/DCコンバータ120に入力される電力を一定にする。
【0030】
このとき、本実施形態に係る充電器100では、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも高いとき(ps>P)と、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも低いとき(ps<P)と、で制御を変える。
【0031】
交流電源から出力される瞬時電力p
sが平均電力Pよりも高いとき(p
s>P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の2つのスイッチS31、S32のスイッチングを制御することにより、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sのうちの脈動部分p
ripを電力脈動吸収回路130のインダクタLbを介してバッファコンデンサCbufに充電することで、交流電源から出力された電力のうちの平均電力PのみがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも高い期間は、バッファコンデンサCbufが充電される期間(充電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、マイナスになる。
【0032】
一方、交流電源200から出力される瞬時電力p
sが平均電力Pよりも低いとき(p
s<P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31、S32のスイッチングを制御することにより、バッファコンデンサCbufを第1のスイッチS31を介して積極的に放電し、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sと平均電力Pの差である脈動部分p
ripを補償することで、平均電力PがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも低い期間は、バッファコンデンサCbufが放電する期間(放電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、プラスになる。
【0033】
以上のように、本実施形態では、制御部140は、交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御する。
【0034】
このように、本実施形態では、放電期間において、積極的に、バッファコンデンサCbufを放電している。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに蓄えられる電力量(つまり、バッファコンデンサCbufの容量)を抑えることが可能であり、バッファコンデンサCbufの小型化が可能である。
【0035】
また、本実施形態では、DC/DCコンバータ120に入力される電力には脈動がない。このため、本実施形態では、DC/DCコンバータ120の変圧器Tr、直流コンデンサCdcの小型化が可能である。
【0036】
以上のように、本実施形態では、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化することが可能である。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能である。
【0037】
<非対称波形制御法>
制御部140は、例えば、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lが正負で非対称になるように、7つのモードまたは6つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する(非対称波形制御法)。
図3は、7つのモードの各々における各スイッチの状態を示す図である。7つのモードには、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のすべてのスイッチがオフになるモード(モード5)が含まれている。
【0038】
図4は、リアクトルLに流れる電流i
Lがゼロになる零電流期間T
0を含んだ不連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lを示す図である。この不連続電流モードの動作波形i
Lは、
図3に示す7つのモードを、
図5に示すように、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。このとき、7つのモードの各々における電流i
Lは、下記のようになる(特許文献1、非特許文献1)。
【数3】
ここで、t
cn(n=1~7)は、モードnに切り替えられた時間である。
【0039】
本実施形態では、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンであるときにバッファコンデンサCbufをより積極的に放電するために、制御部140は、バッファコンデンサCbufにかかる電圧v
Cが整流器110から出力される瞬時電圧v
recよりも常に高くなるように制御する。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufにかかる電圧v
Cが整流器110の瞬時電圧v
recと異なる値を持っており、モード2とモード3での動作波形i
Lの傾きが異なる。同様に、モード6とモード7での動作波形i
Lの傾きが異なる。このため、本実施形態では、
図4に示されているように、正での波形と負での波形がi
L=0に対して非対称である動作波形を生成することができる。
【0040】
図4に示した動作波形i
Lにおいて、|t
0-t
1|=|t
5-t
6|、|t
1-t
2|=|t
7-t
8|、|t
2-t
3|=|t
6-t
7|、|t
3-t
4|=|t
8-t
9|となるようにt
0~t
10を設定し、|t
0-t
1|=|t
S1-t
4|=|t
S2-t
9|となるように、t
3とt
4の間にt
S1を、t
8とt
9の間にt
S2を設定すると、動作波形i
Lは、等価方形波形i
L′により近似することができる。
【数4】
【0041】
等価方形波形i
L′のt
0≦t<t
1、t
S1≦t<t
4、t
5≦t<t
6、t
S2≦t<t
9の期間を無効電流期間T
qと定義し、t
1≦t<t
2、t
7≦t<t
8の期間をバッファコンデンサ放電電流期間T
Cと定義し、t
2≦t<t
3、t
6≦t<t
7の期間を電源電流期間T
recと定義し、t
3≦t<t
S1、t
8≦t<t
S2の期間を電流バランス期間T
bと定義し、t
4≦t<t
5、t
9≦t<t
10の期間を零電流期間T
0と定義すると、スイッチング周期T
SWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数5】
指令値として、i
rec、i
C、v
C、V
dc、I
L′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、
図4の動作波形i
Lに対する制御則を求めることができる。この指令値のうち、i
recおよびi
Cの指令値i
rec
*、i
C
*は、次のように、放電期間と充電期間で切り替え、電力脈動吸収回路130を、PFC回路として機能させ、かつ、電力の脈動を吸収する回路として機能させる。
【数6】
【0042】
不連続電流モードの動作波形i
Lは、DC/DCコンバータ120のスイッチング周波数f
SWを変化させず、一定のスイッチング周波数f
SWで、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をスイッチングすることで得られる。一方、スイッチング周波数f
SWを変化させることで、零電流期間T
0がゼロである連続電流モードにより動作させることが可能である(非特許文献2~4)。上記の式(2)をD
0=0として解くことにより、連続電流モードでのスイッチング周波数f
SWは、次のように求まる。
【数7】
【0043】
図6は、連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である。連続電流モードでは、モード5での動作が無くなるため、
図7に示すように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がモード1、モード2、モード3、モード4、モード6、モード7、モード1の順にスイッチングされる。
【0044】
等価方形波i
L′の波高値I
L′の指令値を最適化することで、充電器100をより高効率で動作させることが可能である(非特許文献2~4)。例えば、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度であるときのスイッチング周波数f
SW(上記式(3))が所定の値(第1の周波数値)f
1になるように等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値を制御することで、充電器100をより高効率で動作することが可能である。このとき、等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値I
L′
*は、下記のようになる。
【数8】
ここで、V
Cminは、バッファコンデンサCbufにかかる電圧の最小値である。
【0045】
<対称波形制御法>
非対称波形制御法では、動作波形i
Lを正負で非対称にするために、放電期間であっても、
図5、7に示すように、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31は、スイッチングされる必要があった。このため、非対称波形制御法では、放電期間であっても、第1のスイッチS31のスイッチング損失が生じる。
【0046】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iLが正負で対称になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御するようにしても良い(対称波形制御法)。
【0047】
例えば、放電期間において、制御部140は、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をオンの状態に保ちつつ、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lが正負で対称になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のスイッチングを制御する。
図8は、放電期間におけるDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lを示す図である。この動作波形i
Lは、
図3に示す7つのモードのうちの4つのモード(モード1、2、4、7)を、
図9に示すように、モード1、モード2、モード4、モード7の順にスイッチングすることで得られる。つまり、
図8に示した放電期間における動作波形i
Lは、DABコンバータの一般的な制御法(例えば、平地克也著、「DC/DCコンバータの基礎から応用まで Fundamentals and Application of DC/DC Converter」、初版、電気学会、2018年1月、p.178-193)と同様に、DC/DCコンバータ120の1次側のスイッチS21~S24のオンオフ制御と、2次側のスイッチ25~28のオンオフ制御と、を位相シフト角φだけずらすことで得られる。
【0048】
よって、放電期間におけるDC/DCコンバータ120の伝送電力Pは、DABコンバータの一般的な制御法と同様に、位相シフト角φにより制御することが可能である。
【数9】
DC/DCコンバータ120の出力電流I
dc(=P/V
dc)が一定になるようにすることで、放電期間における位相シフト角φの指令値φ
*は、下記のように求まる。
【数10】
【0049】
対称波形制御法では、放電期間において、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をオンのままであるので、整流器110からDC/DCコンバータ120に流れる電流i
recはゼロである。そこで、対称波形制御法では、交流電源200からの出力電流を正弦波電流にするために、制御部140は、放電期間において、交流電源200から、第2のダイオードD32、第3のダイオードD33を介して、電力脈動吸収回路130のインダクタLbに流れる電流i
biの値が下記のようになるように、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチを制御する。
【数11】
【0050】
また、放電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28のスイッチングをソフトスイッチングにするためには、
図8の動作波形i
Lにおいて、モード1からモード2に切り替わる際(t=t
1)の電流i
Lの値がゼロ以上である必要がある。
【数12】
そこで、放電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチング周波数f
SWは、次の式を満たすように設定すると良い。
【数13】
このようにすることで、放電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28のスイッチングがソフトスイッチングになり、充電器100の効率が向上する。
【0051】
また、対称波形制御法では、充電期間において、制御部140は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lが正負で対称になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御するようにする良い。
図10は、充電期間におけるDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lを示す図である。この動作波形i
Lは、
図3に示す7つのモードのうちの4つのモード(モード1、3、4、6)を、
図11に示すように、モード1、モード3、モード4、モード6の順にスイッチングすることで得られる。
図11に示したスイッチングでは、DC/DCコンバータ120の1次側のスイッチS21~S24のオンオフ制御と2次側のスイッチ25~28のオンオフ制御は、DABコンバータの一般的な制御法と同様に、位相シフト角φだけずらされている。
【0052】
充電期間は、放電期間とは反対に、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をオフに保つ制御を行った場合、スイッチS21、S24、S26、S27がオンであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオフである期間において、動作波形iLは、iL<0とiL>0とで異なる傾きになり、DABコンバータの一般的な制御法の動作波形とは異なる波形になる。スイッチS21、S24、S26、S27がオンであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオフであり、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオフである場合、iL<0の間、DC/DCコンバータ120のインダクタLからDC/DCコンバータ120の1次側に電流が流れ、この電流は、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオフであるにもかかわらず、DC/DCコンバータ120のスイッチS21、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のボディーダイオードを通り、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufに流れ込み、DC/DCコンバータ120の第1の端子121と第2の端子122との間には、バッファコンデンサCbufの電圧vCがかかる。一方、このとき、iL>0の間、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufは回路から切り離されており、整流器110から出力される電流が、DC/DCコンバータ120の1次側からインダクタLに流れ、DC/DCコンバータ120の第1の端子121と第2の端子122との間には、バッファコンデンサCbufの電圧vCとは異なり、整流器110から出力される電圧vrecがかかり、動作波形iLの傾きが、iL<0の間の動作波形iLの傾きから変化する。同様に、スイッチS21、S24、S26、S27がオフであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオンである期間、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をオフに保つと、動作波形iLは、iL<0とiL>0とで異なる傾きになる。
【0053】
そこで、
図11に示したスイッチングでは、スイッチS21、S24、S26、S27がオンであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオフである期間と、スイッチS21、S24、S26、S27がオフであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオンである期間、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31は、オンに制御され、それ以外の期間、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31は、オフに制御される。このようにすることで、動作波形i
Lは、スイッチS21、S24、S26、S27がオンであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオフである期間と、スイッチS21、S24、S26、S27がオフであり、スイッチS22、S23、S25、S28がオンである期間と、において、
図10に示すように、動作波形i
Lの傾きが一定になる。
【0054】
このため、
図11に示したスイッチングを行うことで、充電期間の動作波形i
Lも、DABコンバータの一般的な制御法の動作波形と同様の形状になる。よって、充電期間におけるDC/DCコンバータ120の伝送電力Pも、DABコンバータの一般的な制御法と同様に、位相シフト角φにより制御することが可能である。
【数14】
DC/DCコンバータ120の出力電流I
dc(=P/V
dc)が一定になるようにすることで、充電期間における位相シフト角φの指令値φ
*は、下記のように求まる。
【数15】
【0055】
対称波形制御法では、充電期間において、整流器110からDC/DCコンバータ120に流れる電流i
recの、DC/DCコンバータ120のスイッチングの一周期における平均は、下記のようになる。
【数16】
そこで、対称波形制御法では、交流電源200からの出力電流を正弦波電流にするために、制御部140は、充電期間において、交流電源200から、第2のダイオードD32、第3のダイオードD33を介して、電力脈動吸収回路130のインダクタLbに流れる電流i
biが下記のようになるように、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチを制御する。
【数17】
【0056】
また、充電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28のスイッチングをソフトスイッチングにするためには、
図10の動作波形i
Lにおいて、モード1からモード3に切り替わる際(t=t
1)の電流i
Lの値がゼロ以上である必要がある(i
L(t
1)≧0)。そこで、充電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチング周波数f
SWは、次の式を満たすように設定すると良い。
【数18】
このようにすることで、充電期間において、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28のスイッチングがソフトスイッチングになり、充電器100の効率が向上する。
【0057】
以上のように、対称波形制御法では、放電期間において、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンの状態に保たれる。このため、対称波形制御法では、第1のスイッチS31のオンオフ制御の回数が減り、非対称波形制御法に比べ、第1のスイッチS31におけるスイッチング損失が低減し、充電器100の効率が向上する。
【0058】
図12は、対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率と非対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率の一例を示す図である。
図12において、縦軸は、充電器100の効率を示しており、横軸は、DC/DCコンバータ120の出力電力値を示しており、丸は、対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率を示し、三角は、非対称波形制御法により動作させたときの充電器100の効率を示している。
図12に示すように、対称波形制御法では、非対称波形制御法に比べ、充電器100の効率が向上する。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 充電器
110 整流器
120 DC/DCコンバータ
S21~S28 DC/DCコンバータのスイッチ
130 電力脈動吸収回路
D31 第1のダイオード
D32 第2のダイオード
D33 第3のダイオード
Lb インダクタ
Cbuf バッファコンデンサ
S31 第1のスイッチ
S32 第2のスイッチ
200 交流電源
300 バッテリ