(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021790
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/12 20060101AFI20250206BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20250206BHJP
H01J 37/145 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H01J37/12
H01J37/09 A
H01J37/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125752
(22)【出願日】2023-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101DD08
5C101EE03
5C101EE04
5C101EE08
5C101EE13
5C101EE17
5C101EE19
5C101EE22
5C101EE38
5C101EE48
5C101EE59
5C101EE67
5C101EE69
5C101EE70
5C101FF02
5C101FF56
5C101FF59
5C101GG04
5C101GG19
5C101GG37
5C101HH11
5C101HH24
5C101HH25
(57)【要約】
【目的】試料面でのマルチ電子ビームの形状のばらつきとサイズのばらつきの一方と集束角度のばらつきとを低減可能な装置を提供する。
【構成】本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射装置は、電子ビームを発散方向に放出する電子銃201と、発散方向に進む電子ビームを集束方向に屈折させ、略平行ビームを形成する第1のコンデンサレンズ202と、複数の第1の開口部が形成され、略平行ビームとなった電子ビームのそれぞれ一部が複数の第1の開口部を通過することにより、マルチ電子ビームを形成する成形アパーチャアレイ基板203と、各レンズがマルチ電子ビームのうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイで構成される多段レンズアレイ210と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを発散方向に放出する放出源と、
発散方向に進む前記電子ビームを集束方向に屈折させ、略平行ビームを形成する第1のコンデンサレンズと、
複数の第1の開口部が形成され、前記略平行ビームとなった前記電子ビームのそれぞれ一部が前記複数の第1の開口部を通過することにより、マルチ電子ビームを形成する成形アパーチャアレイ基板と、
各レンズが前記マルチ電子ビームのうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイと、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項2】
複数の第2の開口部が形成され、前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームが前記複数の第2の開口部を通過することにより、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する角度制限アパーチャアレイ基板をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項3】
前記成形アパーチャアレイ基板は、前記マルチ電子ビームを形成すると共に、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記2段の多極子レンズアレイのうちの1つのレンズアレイは、前記マルチ電子ビームの各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項5】
前記成形アパーチャアレイ基板と前記2段の多極子レンズアレイとの間に配置され、前記マルチ電子ビームの各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成する多極子レンズアレイをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項6】
前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームを集束方向に屈折させる第2のコンデンサレンズをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項7】
前記多極子として、静電多極子が用いられることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項8】
前記多極子として、磁場多極子が用いられることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項9】
前記2段の多極子レンズアレイは、
静電多極子により構成される静電多極子レンズアレイと、磁場多極子により構成される磁場多極子レンズアレイとの組み合わせにより構成されることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項10】
前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームを集束方向に偏向する偏向器アレイをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項11】
放出源から電子ビームを発散方向に放出する工程と、
第1のコンデンサレンズを用いて、発散方向に進む前記電子ビームを集束方向に屈折させ、略平行ビームを形成する工程と、
複数の第1の開口部が形成された成形アパーチャアレイ基板を用いて、前記略平行ビームとなった前記電子ビームのそれぞれ一部が前記複数の第1の開口部を通過することにより、マルチ電子ビームを形成する工程と、
各レンズが前記マルチ電子ビームのうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイを用いて、各ビームについて直交する2方向の電子源像の位置を補正する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム照射方法。
【請求項12】
複数の第2の開口部が形成された角度制限アパーチャアレイ基板を用いて、前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームが前記複数の第2の開口部を通過することにより、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項11記載のマルチ電子ビーム照射方法。
【請求項13】
前記マルチ電子ビームを形成する工程は、前記マルチ電子ビームを形成すると共に、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限することを特徴とする請求項11記載のマルチ電子ビーム照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法に関する。例えば、収差等により生じたマルチ電子ビームの電子源像の中間像面位置でのマルチ電子ビームの形状のばらつき、及び集束角度のばらつきを補正する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するためにも、高精度な画像を撮像する必要がある。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチ1次電子ビームで検査対象基板を走査して、検査対象基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道から分離する。そして、マルチ2次電子ビームを検出器で検出して、パターン画像を撮像する。
【0004】
ここで、マルチ1次電子ビームは、試料面において、同一形状、同一サイズ、及び同一集束角度であることが望ましい。しかしながら、途中の電磁レンズ等に起因した像面湾曲収差及び非点収差によって、これらにばらつきが生じてしまうといった問題があった。これらのばらつきを少しでも低減することが望まれる。
【0005】
ここで、2段のスティグメータを使って、マルチビーム全体を一括して屈折させることで非点収差と線形歪みの両方を補正することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、試料面でのマルチ電子ビームの非点収差の補正と焦点位置のばらつきとを低減可能な装置および方法を提供する。更に、集束角度のばらつきを低減可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射装置は、
電子ビームを発散方向に放出する放出源と、
発散方向に進む電子ビームを集束方向に屈折させ、略平行ビームを形成する第1のコンデンサレンズと、
複数の第1の開口部が形成され、略平行ビームとなった電子ビームのそれぞれ一部が複数の第1の開口部を通過することにより、マルチ電子ビームを形成する成形アパーチャアレイ基板と、
各レンズがマルチ電子ビームのうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
複数の第2の開口部が形成され、前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームが前記複数の第2の開口部を通過することにより、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する角度制限アパーチャアレイ基板をさらに備えると好適である。
【0010】
或いは、成形アパーチャアレイ基板は、マルチ電子ビームを形成すると共に、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限すると好適である。
【0011】
また、2段の多極子レンズアレイのうちの1つのレンズアレイは、マルチ電子ビームの各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成すると好適である。
【0012】
或いは、成形アパーチャアレイ基板と2段の多極子レンズアレイとの間に配置され、マルチ電子ビームの各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成する多極子レンズアレイをさらに備えると好適である。
【0013】
また、2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームを集束方向に屈折させる第2のコンデンサレンズをさらに備えると好適である。
【0014】
また、多極子として、静電多極子が用いられると好適である。
【0015】
或いは、多極子として、磁場多極子が用いられると好適である。
【0016】
或いは、2段の多極子レンズアレイは、
静電多極子により構成される静電多極子レンズアレイと、磁場多極子により構成される磁場多極子レンズアレイとの組み合わせにより構成されると好適である。
【0017】
また、2段の多極子レンズアレイを通過したマルチ電子ビームを集束方向に偏向する偏向器アレイをさらに備えると好適である。
【0018】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射方法は、
放出源から電子ビームを発散方向に放出する工程と、
第1のコンデンサレンズを用いて、発散方向に進む電子ビームを集束方向に屈折させ、略平行ビームを形成する工程と、
複数の第1の開口部が形成された成形アパーチャアレイ基板を用いて、略平行ビームとなった電子ビームのそれぞれ一部が複数の第1の開口部を通過することにより、マルチ電子ビームを形成する工程と、
各レンズがマルチ電子ビームのうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイを用いて、各ビームについて直交する2方向の電子源像の位置を補正する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、複数の第2の開口部が形成された角度制限アパーチャアレイ基板を用いて、前記2段の多極子レンズアレイを通過した前記マルチ電子ビームが前記複数の第2の開口部を通過することにより、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する工程をさらに備えると好適である。
【0020】
或いは、マルチ電子ビームを形成する工程は、マルチ電子ビームを形成すると共に、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限すると好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、試料面でのマルチ電子ビームの非点収差の補正と焦点位置のばらつきとを低減できる。更に、集束角度のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1の比較例1における放射源からマルチ1次電子ビームの中間像面位置までの構成の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1の比較例2における1段のスティグメータによる補正の仕方の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた等方的な非点補正の仕方の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1における多極子レンズアレイの構成の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた等方的な非点補正の仕方の他の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた任意の位置への像面形成の仕方の他の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1における物面が不一致の場合での2段の多極子レンズを配置した構成の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における物面が不一致の場合での倍率調整の範囲の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での2段の多極子レンズを配置した構成の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での倍率調整の範囲の一例を示す図である。
【
図15】実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での焦点距離の範囲の一例を示す図である。
【
図16】実施の形態1における角度制限アパーチャアレイの作用を説明するための図である。
【
図17】実施の形態1の変形例1における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。
【
図18】実施の形態1の変形例2における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。
【
図19】実施の形態1の変形例3における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。
【
図20】実施の形態1における多段レンズアレイの調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図21】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【
図22】実施の形態2における検査装置の構成の一例を示す図である。
【
図23】実施の形態2における成形アパーチャアレイ基板で成形されるビームの一例を示す図である。
【
図24】各実施の形態における多極子レンズの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム照射装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、マルチ電子ビーム照射装置は、検査装置に限るものではなく、例えば、描画装置等であっても良い。
【0024】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、マルチ電子ビーム照射装置の一例である。検査装置100は、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、コンデンサレンズ202(第1のコンデンサレンズ)(前置きコンデンサレンズ)、成形アパーチャアレイ基板203、多段レンズアレイ210、角度制限アパーチャアレイ基板211、コンデンサレンズ205(第2のコンデンサレンズ)(後置きコンデンサレンズ)、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ207(対物レンズ)、偏向器208,209、偏向器218、偏向器225,226、電磁レンズ224、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0025】
電子銃201、電子銃201、コンデンサレンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、多段レンズアレイ210、角度制限アパーチャアレイ基板211、コンデンサレンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ207、及び偏向器208,209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、電磁レンズ207、E×B分離器214、偏向器218、偏向器225,226、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。
【0026】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。
【0027】
多段レンズアレイ210は、各レンズがマルチ1次電子ビーム20のうちの担当するビームの軌道上に配置された四重極以上の多極子を有する2段の多極子レンズアレイ(複数のレンズアレイ)によって構成される。
【0028】
角度制限アパーチャアレイ基板211には、マルチ1次電子ビーム20が通過する位置に、複数の通過孔(第2の開口部)が形成される。
【0029】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成される。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、ステージ105上には、基板101面と同一高さ位置に配置されたマーク111が配置される。マーク111には、例えば、十字パターンが形成される。
【0030】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0031】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、多段レンズアレイ制御回路130、E×B分離器制御回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,147,149、及び直流電源148に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。直流電源148は、偏向器218に接続される。DACアンプ147は、偏向器225に接続される。DACアンプ149は、偏向器226に接続される。
【0032】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0033】
コンデンサレンズ202、コンデンサレンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。
【0034】
また、多段レンズアレイ210は、多段レンズアレイ制御回路130によって制御される。
【0035】
また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器225は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ147を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ149を介して偏向制御回路128により制御される。
【0036】
偏向器218(ベンダー)は、例えば、4極以上の複数の電極により、円弧状に曲がった筒状に構成され、電極毎に直流電源148を介して偏向制御回路128により制御される。或いは、偏向器218は、平板の4極以上の複数の電極により構成され、電極毎に直流電源148を介して偏向制御回路128により制御されるように構成しても構わない。
【0037】
E×B分離器214は、E×B分離器制御回路132により制御される。
【0038】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0039】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0040】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、5×5の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ外径の円形で形成される。或いは、同じ寸法形状の矩形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203は、マルチ1次電子ビーム20を形成するマルチビーム形成機構の一例となる。
【0041】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0042】
電子銃201(放出源の一例)は、電子ビーム200を発散方向に放出する。放出された電子ビームは、電子銃201の電子放出源であるカソード先端付近の仮想的な電子源から放出されたものと見なすることが出来る。この領域は例えば仮想光源或いは仮想電子源と呼ばれる。電子銃より下流ではこの仮想光源或いは仮想電子源のレンズにより投影され得られる像を電子源像と呼ぶこととする。電子銃201から放出された発散方向に進む電子ビーム200は、コンデンサレンズ202で集束力を受ける。コンデンサレンズ202としては電磁レンズ、或いは静電レンズが用いられる。そして、略平行ビームとなった電子ビーム200が、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。なお、ここでは、簡単の為、電子銃201直後に一段のコンデンサレンズ202が置かれた例を示している。必要に応じて、一段のコンデンサレンズ202を複数段のレンズから構成されたレンズ群としても良い。レンズ群を構成する各レンズの焦点距離を調整することで電子源像の大きさを調整することも出来る。レンズ群を構成するレンズとしては電磁レンズ、および、静電レンズのどちらか或いは両方が含まれる。電子銃の構造もカソードから放出された電子を引き出し電極で取り出した後で更に加速、集束を行う電極軍を含む構造である場合を含む。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(第1の開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
コンデンサレンズ202によって略平行ビームを形成することで、マルチ1次電子ビーム20を実質的に互いに平行に進ませることができる。これにより、下流側の多段レンズアレイ210の複数の開口部、及び/或いは角度制限アパーチャアレイ基板211の複数の開口部の位置をマルチ1次電子ビーム20の通過位置に合わせ易くすることができる。言い換えれば、マルチ1次電子ビーム20が通過する各構成部品の開口部の形成位置の誤差を解消或いは低減できる。
【0043】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、多段レンズアレイ210によって、屈折させられ、各ビームについて直交する2方向の電子源像の位置が補正される。多段レンズアレイ210を通過したマルチ1次電子ビーム20は、角度制限アパーチャアレイ基板211によって、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限されることによって、像面19(中間像面)位置での集束角度のばらつきが補正される。像面19(中間像面)位置は、下流光学系を通過した後の電子源像位置が試料面と一致する様に決める。これにより下流光学系の像面湾曲の影響を除くことが出来る。
【0044】
角度制限アパーチャアレイ基板211を通過したマルチ1次電子ビーム20は、コンデンサレンズ205によって屈折させられ、電子源像の中間像およびクロスオーバーを形成する。ここでクロスオーバーはマルチ1次電子ビーム20の収差の無い軌道の中心が1点に集まる位置のビーム分布のことを言う。
なお、角度制限アパーチャアレイ基板211とコンデンサレンズ205の配置位置は、逆であっても構わない。かかる場合、多段レンズアレイ210を通過したマルチ1次電子ビーム20は、コンデンサレンズ205によって屈折させられ、角度制限アパーチャアレイ基板211と通過した後に中間像およびクロスオーバーを形成する。
【0045】
コンデンサレンズ205を通過したマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ206によって屈折させられ、さらに中間像を形成し、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの電子源像の中間像面(像面共役位置:I.I.P.)の高さ位置に配置されたE×B分離器214に進む。そして、E×B分離器214を通過して、電磁レンズ207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0046】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に結像する。言い換えれば、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射する。
【0047】
電磁レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、基板101をマルチ1次電子ビーム20で照明する。
【0048】
基板101の所望する位置がマルチ1次電子ビーム20で照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101から反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。マルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する2次電子ビームが放出される。
【0049】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。
【0050】
E×B分離器214は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0051】
E×B分離器214は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極(電磁偏向磁極)と、2極以上の複数の電極(静電偏向電極)とを有する。例えば、対向する2つの磁極と、90°ずつ位相をずらした対向する2つの電極とが配置される。配置の仕方はこれに限るものではない。例えば、電極が磁極を兼ねる構造としておき、4極或いは8極の電極兼磁極を配置することも出来る。E×B分離器214でマルチ2次電子ビーム300を偏向することで分離作用を生じさせる。E×B分離器214では、複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界Eと磁界Bを直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため、電子の進行方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から進入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力FEと磁界による力FBが打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から進入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力FEと磁界による力FBがどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は所定の方向に偏向されることによって斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0052】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、電磁レンズ224に進む。そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。言い換えれば、マルチ検出器222は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0053】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図3の例では、基板101が半導体ウェハの場合を一例として示している。基板101の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。
【0054】
図4は、実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
図4に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。基板101がマスク基板である場合には、マスク上に形成されたパターン形成領域(検査領域)が、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。
【0055】
画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、2段の偏向器208,209(静電偏向器)によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0056】
図4の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。
そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。2段の偏向器208,209は、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向することにより、パターンが形成された基板101面上をマルチ1次電子ビーム20で走査する。言い換えれば、サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0057】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。
図4の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎の測定画像となるフレーム画像31について比較することになる。
図4の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0058】
また、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように2段の偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、例えば2段の偏向器225,226は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。言い換えれば、偏向器225,226は、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査により変動するマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置をマルチ2次電子ビームの振り戻し偏向により不動にする。これにより、各2次電子ビームがマルチ検出器222の対応する検出エレメントにて検出されることができる。なお、偏向器225,226は、2段の偏向器に限らず、1段の偏向器により構成しても構わない。
【0059】
図5は、実施の形態1の比較例1における放射源からマルチ1次電子ビームの中間像面位置までの構成の一例を示す図である。実施の形態1の比較例1において、放射源となる電子銃301から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ302で略平行ビームに屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板303に進む。そして、成形アパーチャアレイ基板303の複数の穴を電子ビームの各一部が通過することによりマルチ1次電子ビームが形成される。形成されたマルチ1次電子ビームは、静電レンズアレイ310を通過し、コンデンサレンズ305で屈折させられ、電子源像の中間像及びクロスオーバーを形成する。
【0060】
ここで、
図5で示した光学系のさらに下流側の縮小光学系によって、例えば像面湾曲等の収差が発生する。これにより、各ビームの物面311での電子源像の試料面での結像位置にずれが生じ得る。試料面での結像位置がずれると試料面での各ビームのサイズにばらつきが生じる。そのため、下流側の縮小光学系で生じる像面湾曲を補償するように周辺ビームの中間像面が軸からの距離に応じて中心ビームの中間像面位置319aよりも下流側(例えば中間像面位置319b)にシフトさせることが望ましい。そこで、比較例1では、静電レンズアレイ310を配置して、各ビームの中間像面の位置の補正を行う。
【0061】
しかしながら、コンデンサレンズ302,305及び下流光学系では非点収差が生じる。そのため、x、y方向の像面位置にずれが生ずる。このずれは周辺ビーム程大きい。従って、非点収差がないと仮定した時の中間像面位置319a,319bでの各ビーム像のx,y方向のサイズにばらつきが生じてしまう。例えば、中心ビームでは円形に近い形状であっても、周辺ビームでは扁平した形状になる。
【0062】
上述したように、マルチ1次電子ビームは、全ビームが試料面に非点収差がない状態で結像することが望ましい。しかしながら、途中のコンデンサレンズ等のレンズに起因した非点収差及び像面湾曲収差によって、像面位置のばらつきが生じてしまうといった問題があった。そのため、マルチ電子ビームの各ビームの中間像面位置において、これらのばらつきを補正することが望まれる。しかし、比較例1の静電レンズアレイ310では、非点収差を補正することは困難である。
【0063】
図6は、実施の形態1の比較例2における1段のスティグメータによる補正の仕方の一例を示す図である。
図6では、1本のビームについて1段のスティグメータ(多極子レンズ40-1)での補正の限界を説明する。1段のスティグメータでは、物面がx軌道とy軌道とでずれた非点が生じている場合、x,y方向で一致した仮想の物面11を形成し、像面位置をx,y方向で一致させることができる。しかし、補正後の像面位置は、x方向の物面からスティグメータまでの距離kxdと、y方向の物面からスティグメータまでの距離kydとによって決まる。よって、任意の位置に像面を合わせることは困難である。なお、コンデンサレンズ202が非点収差を発生させる場合は、コンデンサレンズ202の位置に仮想的な四重極レンズが1段存在するとみなすことが出来るが、この仮想的な四重極レンズは焦点距離が固定であるので自由度が増えない。従って上記の状況は変わらない。
【0064】
そこで、実施の形態1では、四重極以上の多極子を有する2段の複数の多極子レンズアレイで構成される多段レンズアレイ210を用いて、各ビームについて直交する2方向の電子源像の位置を個別に補正する。なお、発明の効果の説明するために、本実施の形態を含めた各実施の形態において、説明対象となるビームについてコンデンサレンズ202にける非点収差の効果について、平行ビームを得る作用に加えてx方向には更に集束されるという近似を行う。この効果はコンデンサレンズ202の位置に四重極レンズを置き、コンデンサレンズ202の焦点距離とこの四重極レンズの焦点距離の条件を調整することで得られる。また、四重極レンズ、コンデンサレンズ202については薄レンズ近似を行う。これにより各レンズの作用は行列で表現できる。以下、具体的に説明する。
【0065】
図7は、実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた等方的な非点補正の仕方の一例を示す図である。x方向、y方向の軌道は各レンズの効果を示す為のもので、厳密ではない。
図7では、多段レンズアレイ210として、2段の多極子レンズアレイを用いる場合を示す。
図7では、マルチ1次電子ビーム20に対応した2段の多極子レンズアレイ40のうちの1本の1次電子ビーム用の2段の多極子レンズ40-1,40-2のレンズ作用を示している。2段の多極子レンズ40-1,40-2は、四重極以上の多極子で構成され、四重極場を構成する。
図7では、物面から放出された電子ビームの発散軌道の一例を示す。実施の形態1において、物面から放出された1次電子ビームは、前置きコンデンサレンズ202によって、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームの軌道中心軸(光軸)と略平行な略平行ビームになるように屈折させられ、2段の多極子レンズ40-1,40-2に進む。
【0066】
図8は、実施の形態1における多極子レンズアレイの構成の一例を示す図である。
図8において、各多極子レンズアレイ40は、例えば、上段電極基板12と、中段電極基板14と、下段電極基板18の3段の電極基板によって構成される。3段の電極基板には、マルチ1次電子ビーム20が通過するための複数の通過孔17が形成される。上段電極基板12と下段電極基板18は、少なくとも表面が導電性材料により構成され、グランド電位(GND)が印加される。中段電極基板14の複数の通過孔17には、通過孔17毎に通過孔17を取り囲む四重極以上の多極子となる複数の電極16が配置される。言い換えれば、多極子レンズアレイ40は、各レンズが四重極以上の多極子を有する。なお、中段電極基板14の基板本体と各電極とは絶縁されている。
ここで、各位置の多極子は、例えば8つの電極の位相が、中心ビーム用の通過孔17の中心から放射状に延びる直線上に配置された電極を基準に等間隔になるように配置されると好適である。但し、これに限るものではない。例えば、各位置の多極子は、例えば8つの電極の位相が、x方向或いはy方向に配置された電極を基準に等間隔になるように配置されても構わない。
また、多極子として、静電多極子が用いられる。或いは、多極子として、磁場多極子が用いられても構わない。
また、複数の電極16は、中段電極基板14の上面と裏面とのどちらに配置されても構わない。
図8の例では、中段電極基板14の上面に8極の電極16a~16hが配置される。8極の電極16a~16hには、極毎に独立した制御電位が印加される。よって、最大でビーム数×8極の数の独立した電位が印加され得る。
これにより1つの多極子レンズアレイにおいて各多極子レンズの焦点距離は独立に制御できる。従って、マルチ電子ビームを構成する各電子ビームに適した補正を行うことができる。ここで、四重極レンズは一つの方向に凸レンズ、直交する方向に凹レンズとして働くが、正の焦点距離fqを定義し、凸レンズの焦点距離がfq、凹レンズの焦点距離が-fqであると定義する。
【0067】
図7の例では、物面がx軌道とy軌道とでずれている場合を示す。
図7の例において、x方向の物面とy方向の物面から放出された、非点収差を持った1次電子ビームは、2段の多極子レンズ40-1,40-2に進む。そして、1次電子ビームは、1段目の多極子レンズ40-1によって、x方向では、例えば、発散方向に屈折させられ、y方向では、逆に集束方向に屈折させられる。続いて、2段目の多極子レンズ40-2によって、x方向では、例えば、集束方向に屈折させられ、y方向では、逆に発散方向に屈折させられる。これにより、物面がx軌道とy軌道とでずれている場合、x,y方向で一致した仮想の物面11からの軌道にx方法の軌道とy方向の軌道を合わせることができる。ここで物面11の位置は下流光学系で形成される像面が試料面となる位置に一致する様に決める。
【0068】
これにより、非点収差を補正しながら、像面湾曲を補正出来る。
【0069】
これにより、非点収差を補正しながら、x,y方向の中間像面位置を所望の位置で一致させることが出来る。
以上のように、2段の多極子レンズアレイ40を配置することで、マルチ1次電子ビーム20について個別に非点収差と像面湾曲収差とを補正できる。
【0070】
図9は、実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた等方的な非点補正の仕方の一例を示す図である。
図10は、実施の形態1における2段の多極子レンズを用いた任意の位置への像面形成の仕方の他の一例を示す図である。
図9及び
図10では、多段レンズアレイ210として、2段の多極子レンズアレイを用いる場合を示す。
図9及び
図10では、マルチ1次電子ビーム20に対応した2段の多極子レンズアレイ40のうちの1本の1次電子ビーム用の2段の多極子レンズ40-1,40-2のレンズ作用を示している。2段の多極子レンズ40-1,40-2は、四重極以上の多極子で構成され、四重極場を構成する。
図9及び
図10では、電子ビームの集束軌道の一例を示す。実施の形態1において、物面から放出された1次電子ビームは、前置きコンデンサレンズ202によって、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームの軌道中心軸(光軸)と略平行な略平行ビームになるように屈折させられ、2段の多極子レンズ40-1,40-2に進む。
【0071】
図9及び
図10の例において、集束軌道の1次電子ビームは、2段の多極子レンズ40-1,40-2による補正が無ければ、x方向の像面とy方向の像面とがずれて形成される。しかし、集束軌道の1次電子ビームは、1段目の多極子レンズ40-1によって、x方向では、例えば、発散方向に屈折させられ、y方向では、逆に集束方向に屈折させられる。続いて、2段目の多極子レンズ40-2によって、x方向では、例えば、集束方向に屈折させられ、y方向では、逆に発散方向に屈折させられる。これにより、物面がx軌道とy軌道とでずれている場合、非点収差を補正しながら、x,y方向で一致した任意の位置での像面19を形成できる。物面がx軌道とy軌道とで一致する場合も、同様に、非点収差を補正しながら、x,y方向で一致した任意の位置での像面19を形成できる。
【0072】
以上のように、2段の多極子レンズアレイ40を配置することで、マルチ1次電子ビーム20について個別にx,y方向で一致した像面位置を任意の位置に調整できる。
なお、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの電子源像のそれぞれのx方向、y方向の結像位置は、基板101面での各ビームの結像位置が一致する様に決めると好適である。言い換えれば、下流側の光学系の像面湾曲を補正する位置になるように補正すると好適である。
【0073】
図11は、実施の形態1におけるコンデンサレンズでの非点収差があり一つの電子ビームについてx方向に集束軌道、y方向に平行軌道となり入射する場合の2段の多極子レンズを配置した構成の一例を示す図である。
図12は、実施の形態1における倍率調整の範囲の一例を示す図である。
図11の例では、コンデンサレンズでの非点収差がある場合を示す。
図11において、実施の形態1における多段レンズアレイ210は、物面11から距離ηdの位置であり、y方向の物面(及びY物面)から距離ηdの位置である位置に1段目の多極子レンズ40-1が配置される。2段の多極子レンズ40-1,40-2は、距離dを開けて配置される。2段目の多極子レンズ40-2から距離λdの位置が像面19となる。
【0074】
図13は、実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での2段の多極子レンズを配置した構成の一例を示す図である。
図14は、実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での倍率調整の範囲の一例を示す図である。
図15は、実施の形態1におけるx、y方向の像面がずれる場合での焦点距離の範囲の一例を示す図である。
図14の例では、x,y方向のx、y方向の像面がずれる場合を示す。
図14において、実施の形態1における多段レンズアレイ210は、物面11から距離ηdの位置に1段目の多極子レンズ40-1が配置される。2段の多極子レンズ40-1,40-2は、距離dを開けて配置される。2段目の多極子レンズ40-2から距離λxの位置がx方向像面19、距離λyの位置がy方向像面19bとなる。
【0075】
以上のように、成形されたマルチ1次電子ビーム20について、多段レンズアレイ210により、各ビームについて直交する2方向の電子源像の像面位置が個別に補正される。これにより、各ビームの中間像面位置におけるビーム毎の試料面での結像位置のばらつき(試料面でのビーム毎のサイズのばらつき)を個別に補正できる。言い換えれば、2段の多極子レンズアレイ40を配置することで、x,y方向の倍率異方性は生じるが、係数λが所定の範囲内であれば任意の位置に非点補正した結像ができる。
多段レンズアレイ210を通過したマルチ1次電子ビーム20は、角度制限アパーチャアレイ基板211に進む。次に、集束角度のばらつきについて補正する。
【0076】
図16は、実施の形態1の角度制限アパーチャアレイ基板の作用を説明するための図である。
図16では、上図に多段レンズアレイ210の下流側で角度制限する場合を示す。
図16の下図に、多段レンズアレイ210の上流側、例えば、成形アパーチャアレイ基板で角度制限する場合を示す。
基板101面での各ビームの集束角が大きい程ビーム電流を大きく取れる、一方で集束角が大きいと収差が増大する。そこで、基板101面で所望の寸法範囲でビーム電流を大きく取れる様に集束角を決めることが望ましい。この為に角度制限アパーチャ基板211を用いて集束角を制限する。しかし、近軸近似で像の倍率と角度の倍率とは反比例にあるので、x方向、y方向に異なる倍率の結像を行うと光学系に入射時に等方的な角度分布をしていた電子ビームの試料面でのそれぞれの方向の集束角が異なることになる。そこで、集束角に依存する収差を揃える為に角度制限アパーチャ基板211を設けることで集束角を調節することが出来る。
図16にその例を示す。x方向、y方向に異なる倍率で結像する場合、倍率が小さい軌道では集束角は大きくなる。そこで、角度制限アパーチャによって、集束角を制限する。角度制限アパーチャをレンズ近くに配置することにより、結像位置でのビーム分布への影響を抑制出来る。或いは、角度制限アパーチャによって光学系への入射時の角度分布を変形させることも出来る。角度制限アパーチャの形状としては、試料面で各ビームについて等方的な集束角分布が得られる様に決めることが望ましい。
【0077】
具体的には、角度制限アパーチャアレイ基板211は、像面19から上流側に離れた位置に配置される。
図1の例では、例えば、多段レンズアレイ210とコンデンサレンズ205との間に配置される。但し、これに限るものではない。コンデンサレンズ205と像面19との間に配置されても良い。言い換えれば、マルチ1次電子ビーム20が集束方向に屈折させられた後、像面19の位置に到達する前の位置に配置されても良い。各ビームが中間像面を形成する前のビーム径が広い状態で、発散角度或いは集束角度を制限するので、制限アパーチャアレイ211の複数の通過孔の径サイズを像面位置でのビームサイズに比べて十分に大きくできる。よって、コンタミ等による閉塞を抑制或いは低減できる。
角度制限アパーチャアレイ基板211は、多段レンズアレイ210を通過したマルチ1次電子ビーム20が複数の通過孔を通過することにより、各電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する。各ビームが発散中であれば発散角度を制限でき、集束中であれば集束角度を制限できる。これにより、像面19の位置でのビーム毎の集束角度のばらつきを補正できる。
【0078】
図17は、実施の形態1の変形例1における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。実施の形態1の変形例1では、
図17に示すように、多段レンズアレイ210の下流側に、別途、多極子レンズアレイ40を配置して、コンデンサレンズ205の代わりにマルチ1次電子ビーム20を集束方向に偏向する。コンデンサレンズ205の代わりの多極子レンズアレイ40は、多段レンズアレイ210を通過中のマルチ1次電子ビーム20を集束方向に偏向する偏向器アレイとして機能する。かかる場合、コンデンサレンズ205の代わりの多極子レンズアレイ40は、各1次電子ビームを1点に集束させるように双極子場を生成する。言い換えれば、多極子の対向する電極に正負を反転させた電位を印加する。これにより、かかる多極子を通過する1次電子ビームは、形成される電場の正電位の方向に偏向されることになる。像面19での電子源像の形状(及びサイズ)のばらつきを補正するため、多段レンズアレイ210中の多極子レンズアレイには、各多極子に四重極場を形成させるが、双極子場と四重極場は並行して作用させることができる。
【0079】
なお、
図17の例において、角度制限アパーチャアレイ基板211は、マルチ1次電子ビーム20が集束方向に屈折させられた後の軌道上に配置されることになる。その他の構成は
図1と同様である。
【0080】
図18は、実施の形態1の変形例2における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。実施の形態1の変形例2では、
図18に示すように、角度制限アパーチャアレイ基板211の下流側に、多極子レンズアレイ40を配置して、コンデンサレンズ205の代わりにマルチ1次電子ビーム20を集束方向に偏向する。その他の構成は
図1と同様である。コンデンサレンズ205の代わりの多極子レンズアレイ40は、多段レンズアレイ210を通過したマルチ1次電子ビーム20を集束方向に偏向する偏向器アレイとして機能する。かかる場合も同様に、多極子レンズアレイ40の各多極子に双極子場のみを生成させればよい。
【0081】
図19は、実施の形態1の変形例3における電子源から非点収差補正後の中間像面までの各構成の一例を示す図である。実施の形態1では、コンデンサレンズ202を使って、略平行ビームを形成するが、許容される平行度から外れる場合もあり得る。そこで、実施の形態1の変形例3では、
図19に示すように、多段レンズアレイ210の、例えば、1段目の多極子レンズアレイ40を使って、マルチ1次電子ビーム20のうち少なくとも1つの1次電子ビームを略平行ビームになるように偏向する。よって、例えば、1段目の多極子レンズアレイ40は、上述した本来の機能と並行して、偏向器アレイとしても機能する。双極子場と四重極場は並行して作用させることができる。但し、偏向器アレイとして機能させる多極子レンズアレイは、1段目に限るものではない。多段レンズアレイ210のうちの1つの多極子レンズアレイがマルチ1次電子ビーム20の各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成してもよい。
【0082】
或いは、成形アパーチャアレイ基板203と多段レンズアレイ210との間に、別途、多極子レンズアレイ40を配置しても好適である。多段レンズアレイ210とは別に配置された多極子レンズアレイ40は、マルチ1次電子ビーム20の各ビームが平行ビームになるように双極子場を生成する。かかる場合、多極子レンズアレイ40は、偏向器アレイとして機能する。
【0083】
なお、上述した例において、多段レンズアレイ210を構成する2段の多極子レンズアレイ40は、静電多極子により構成される静電多極子レンズアレイにより構成される。或いは、磁場多極子により構成される磁場多極子レンズアレイにより構成される。或いは、静電多極子により構成される静電多極子レンズアレイと、磁場多極子により構成される磁場多極子レンズアレイとの組み合わせにより構成される。
【0084】
以上のように、2段の多極子レンズアレイ40と角度制限アパーチャアレイ基板211とにより、各ビームの形状のばらつき、及び集束角度のばらつきを低減できる。或いは、各ビームの像面19(中間像面)位置のばらつき、及び集束角度のばらつきを低減できる。
【0085】
図20は、実施の形態1における多段レンズアレイの調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
まず、シミュレーション、或いは過去の測定経験から求まる初期条件で多段レンズアレイ210を含む検査装置100全体のレンズを駆動する(S102)。
そして、異なる焦点位置でのビームアレイ形状を測定する(S104)。
上記測定結果から残存非点収差、像面湾曲、ビーム寸法、および、集束半角を求める(S106)。
そして、得られた結果が所望の条件を満足するかどうかを判定する(S108)。
得られた結果が所望の条件を満足していない場合には、非点収差及び像面位置のばらつきを補正出来るレンズ条件を求める(S110)。得られた結果が所望の条件を満足する場合には調整終了として、検査処理に進む。
求めたレンズ条件に変更する(S112)。
そして、S104に戻り、得られる結果が所望の条件を満足するまで、S104からS112までの各工程を繰り返す。
【0086】
以上により、多段レンズアレイ210を含む検査装置100全体のレンズの調整した後、検査装置100は、基板101の検査を行う。
【0087】
スキャン工程として、画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20で対象物(ここでは基板101)を走査(スキャン)する。ここでは、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、マルチ1次電子ビーム20で当該ストライプ領域32をスキャンする。上述したように、1次電子光学系151は、マルチ1次電子ビーム20で対象物(ここでは基板101)を照射する。マルチ1次電子ビーム20で基板101が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によって、マルチ検出器222(検出器アレイ)に導かれる。そして、導かれたマルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222(検出器アレイ)で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系を移動中に発散し、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。そして。検出されたマルチ2次電子ビーム300の信号に基づいた2次電子画像が取得される。具体的には、マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0088】
図21は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図21において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0089】
比較工程として、比較回路108は、取得された2次電子画像を所定の参照画像と比較する。具体的には、例えば、以下のように動作する。
【0090】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0091】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビームのスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0092】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0093】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0094】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0095】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0096】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0097】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置される基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0098】
なお、上述したダイ-データベース検査の他、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較するダイ-ダイ検査を行っても好適である。或いは、自己の測定画像だけを用いて検査しても構わない。
【0099】
以上のように、実施の形態1によれば、試料面でのマルチ電子ビームの形状のばらつきとサイズのばらつきの一方と集束角度のばらつきとを低減できる。
【0100】
実施の形態2.
実施の形態1では、多段レンズアレイ210の下流側に角度制限アパーチャアレイ基板211を配置したが、角度制限の仕方はこれに限るものではない。実施の形態2では、マルチ1次電子ビーム20を成形する際に、角度制限も併せて行う構成について説明する。
【0101】
図22は、実施の形態2における検査装置の構成の一例を示す図である。
図22において、角度制限アパーチャアレイ基板211が省略された点以外は、
図1と同様である。以下、特に説明する内容以外の点は、実施の形態1と同様で構わない。
【0102】
実施の形態2では、成形アパーチャアレイ基板203がマルチ1次電子ビーム20を形成すると共に、各1次電子ビームの発散角度或いは集束角度を制限する。これにより、後段の角度制限アパーチャアレイ基板211を省略できる。
【0103】
ここで、形成されるマルチ1次電子ビーム20は、上述したように非点収差を持っている場合がある。よって、成形アパーチャアレイ基板203でビーム成形する際に、かかる非点等によるビーム形状を補正しても良い。
【0104】
図23は、実施の形態2における成形アパーチャアレイ基板で成形されるビームの一例を示す図である。例えば、x方向に倍率1,y方向に倍率0.5で結像する場合、多段レンズアレイの210での角度倍率はx方向に1、y方向に2とする。
像面19側で集束角度を揃える様に角度制限アパーチャアレイ基板211で直径2rの開口部が形成される場合と等価にするためには、成形側で集束角度をx方向:y方向=1:0.5になるように制限する。そのためには、成形アパーチャアレイ基板203の開口部は、長径:短径=2:1の楕円とする。なお、大きさは位置によって異なっても良い。アパーチャの寸法を決める際には、多段レンズアレイ210を通過した電子ビームの角度分布が所望のものとなっていると仮定して、シミュレーションによって軌道を逆に辿って成形アパーチャアレイ位置での分布を求め、その分布を与える様にアパーチャの形状を決めるのが実用的である。あるいはマーク111を異なる高さに設けておき電子ビームを照射して得られるビーム分布のマーク111の高さ依存からビーム集束角をもとめて、それが所望の分布となる様に決めることも出来る。
【0105】
以上のように、実施の形態2によれば、ビーム成形と共に角度制限ができる。これにより、像面19での集束角度のばらつきを補正できる。なお、多段レンズアレイ210により像面19での電子源像の形状のばらつき或いは像面位置のばらつき(試料面でのサイズのばらつき)を補正できる点は実施の形態1と同様である。
【0106】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、及び参照画像作成回路112等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。なお、本説明においては、使用される四重極レンズや円形レンズの焦点距離の絶対値は0以外の任意の値を取れると仮定した。実用的には静電レンズの場合は放電、磁場レンズの場合は磁極の飽和等の物理的な制限により、実現出来る焦点距離に制限がある。また、コンデンサレンズでの四重極成分についても、所望の倍率やレンズ配置に伴う制限がある。装置設計ではこれらの制限を考慮して最適化を行うと良い。
【0107】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
例えば、本説明においては中間結像面の位置がx方向、y方向で同じになる様に調整する場合を示したが、
図13に示す様に、下流の光学系における非点収差を相殺する様に異なる位置にすることも出来る。また、レンズアレイを構成する各レンズの焦点距離は独立に制御できるとしたが、調整範囲の独立性についての条件が緩和される時は、レンズアレイを構成するレンズを少なくとも2つ以上のグループに分けて、異なるグループ間では独立、同じグループ内では共通の焦点距離を取る様にすることも出来る。
【0108】
図24は、各実施の形態における多極子レンズの配置例を示す図である。
例えば、像面湾曲や非点の分布が軸対称な時、
図24に示す様に、多極子レンズの電極の回転方向の位相を中心軸からの方向に応じて変える様にしておき、半径方向距離に応じて2つ以上にグループに分けて同じグループ内では焦点距離が等しくなる様に対応する電極に電位を与える電源を共通にすることで、電源の数を減らすことも出来る。
図24の例では同じ番号が与えられている電極の電源を共通化出来る。更に、四重極場のみを発生する場合は例えば電極1と電極5の様に向かい合う電極に等しい電位を与えることで電源を共通にすることも出来る。
【0109】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0110】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
10 1次電子ビーム
11 物面
12 上段電極基板
14 中段電極基板
16 電極
17 通過孔
18 下段電極基板
19 像面
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
40 多極子レンズアレイ
40-1,40-2 多極子レンズ
50,52,56 記憶装置
54 フレーム画像作成部
57 位置合わせ部
58 比較部
62 上段電極基板
64 中段電極基板
66 電極
67 通過孔
18 下段電極基板
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 多段レンズアレイ制御回路
132 E×B分離器制御回路
142 ステージ駆動機構
144,146,147,148,149 DACアンプ
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205 コンデンサレンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
206,207 電磁レンズ
208 偏向器
209 偏向器
210 多段レンズアレイ
211 角度制限アパーチャアレイ基板
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 電磁レンズ
225,226 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
301 電子銃
302,305 コンデンサレンズ
303 成形アパーチャアレイ基板
310 静電レンズアレイ
311 物面
319 像面
330 検査領域
332 チップ
341 ビーム寸法制限アパーチャアレイ基板