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特開2025-21913レーザ加工装置、被加工物の面取り方法及びウエーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021913
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、被加工物の面取り方法及びウエーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250206BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20250206BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20250206BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
B23K26/36
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126020
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AD06
4E168AD18
4E168AE01
4E168CA06
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA04
4E168DA24
4E168EA15
4E168EA16
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA14
5F057BA12
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057CA09
5F057DA22
(57)【要約】
【課題】被加工物を面取りする際の手間を低減するとともにスループットを向上させる。
【解決手段】被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去するように被加工物の素材に吸収される波長のレーザビームを被加工物に照射することによって被加工物を面取りすることが可能なレーザ加工装置であって、平坦な保持面を有する保持テーブルと、レーザビームを出射する発振器と、発振器から出射されるレーザビームを集光する集光器と、保持テーブルとレーザビームが集光される集光点とを相対的に移動させる移動機構と、保持テーブルの保持面に平行な直線を回転軸として保持テーブルを回転させる回転機構と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去するように該被加工物の素材に吸収される波長のレーザビームを該被加工物に照射することによって該被加工物を面取りすることが可能なレーザ加工装置であって、
平坦な保持面を有する保持テーブルと、
該レーザビームを出射する発振器と、
該発振器から出射される該レーザビームを集光する集光器と、
該保持テーブルと該レーザビームが集光される集光点とを相対的に移動させる移動機構と、
該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転機構と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
被加工物を面取りする被加工物の面取り方法であって、
該被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方が露出されるように該被加工物の一面側中央部を保持テーブルの平坦な保持面において保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該被加工物の素材に吸収される波長のレーザビームが集光される集光点を該被加工物の該他面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該集光点とを相対的に移動させるように該被加工物に該レーザビームを照射することによって、該被加工物の該他面側外周部を除去する第1面取りステップと、
該保持ステップの後に、該集光点を該被加工物の該一面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該集光点とを相対的に移動させるように該被加工物に該レーザビームを照射することによって該被加工物の該一面側外周部を除去する第2面取りステップと、
該第1面取りステップと該第2面取りステップとの間に、該被加工物を反転させるように該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転ステップと、
を備える被加工物の面取り方法。
【請求項3】
インゴットから面取りされたウエーハを製造するウエーハの製造方法であって、
該インゴットの素材を透過する波長の第1レーザビームが集光される第1集光点を該インゴットの内部に位置づけた状態で該インゴットと該第1集光点とを相対的に移動させるように該第1レーザビームを該インゴットに照射することによって、該インゴットの内部に分離層を形成する分離層形成ステップと、
該分離層形成ステップの後に、該分離層において該インゴットを劈開させるように該インゴットに外力を付与することによって、この劈開に起因して一面よりも他面が粗くなるウエーハを該インゴットから剥離する剥離ステップと、
該剥離ステップの後に、該ウエーハの一面側外周部及び他面側外周部の双方が露出されるように該ウエーハの一面側中央部を保持テーブルの平坦な保持面において保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該ウエーハに吸収される波長の第2レーザビームが集光される第2集光点を該ウエーハの該他面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該第2集光点とを相対的に移動させるように該ウエーハに該第2レーザビームを照射することによって、該ウエーハの該他面側外周部を除去する第1面取りステップと、
該保持ステップの後に、該第2集光点を該ウエーハの該一面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該第2集光点とを相対的に移動させるように該ウエーハに該第2レーザビームを照射することによって、該ウエーハの該一面側外周部を除去する第2面取りステップと、
該第1面取りステップと該第2面取りステップとの間に、該ウエーハを反転させるように該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転ステップと、
を備えるウエーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去するように被加工物に吸収される波長のレーザビームを被加工物に照射することによって被加工物を面取りすることが可能なレーザ加工装置と、被加工物を面取りする被加工物の加工方法と、インゴットから面取りされたウエーハを製造するウエーハの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、一般的に、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、タンタル酸リチウム(LiTaO:LT)又はニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)等の単結晶からなり、かつ、面取りされたウエーハを利用して製造される。
【0003】
このウエーハは、例えば、円柱状のインゴットに含まれる表面側の所定の厚さを有する部分を切り出してから、切り出された部分(すなわち、アズスライスウエーハ)の外周部を加工することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この加工は、アズスライスウエーハの一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去するように、例えば、アズスライスウエーハの素材に吸収される波長のレーザビームをアズスライスウエーハに照射することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-212761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アズスライスウエーハ等の被加工物を面取りすることが可能なレーザ加工装置は、一般的に、平坦な保持面を有する保持テーブルと、レーザビームを出射する発振器と、発振器から出射されるレーザビームを集光する集光器と、保持テーブルとレーザビームが集光される集光点とを相対的に移動させる移動機構と、を備える。そして、レーザ加工装置における被加工物の加工は、保持テーブルの保持面において保持された被加工物の内部に集光点を位置づけた状態で保持テーブルと集光点とを相対的に移動させるように被加工物にレーザビームを照射することによって行われる。
【0006】
例えば、このレーザ加工装置において被加工物を面取りする場合には、まず、被加工物の他面側が露出されるように保持テーブルの保持面において被加工物の一面側を保持する。次いで、レーザビームが集光される集光点を被加工物の他面側外周部に位置づけた状態で保持テーブルと集光点とを相対的に移動させるように被加工物にレーザビームを照射する。これにより、被加工物の他面側外周部が除去される。
【0007】
次いで、保持テーブルの保持面から被加工物を分離して反転させてから、保持テーブルの保持面において被加工物を再び保持する。すなわち、被加工物の一面側が露出されるように保持テーブルの保持面において被加工物の他面側を保持する。次いで、レーザビームが集光される集光点を被加工物の一面側外周部に位置づけた状態で保持テーブルと集光点とを相対的に移動させるように被加工物にレーザビームを照射する。これにより、被加工物の一面側外周部が除去される。その結果、面取りされた被加工物が製造される。
【0008】
上述したように被加工物が面取りされる場合、保持テーブルの保持面から被加工物を分離して反転させてから保持テーブルの保持面において被加工物を再び保持する必要がある。そのため、この場合には、手間がかかるとともに、レーザ加工装置において被加工物を面取りする際のスループットが低くなる。この点に鑑み、本発明の目的は、被加工物を面取りする際の手間を低減するとともにスループットを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去するように該被加工物の素材に吸収される波長のレーザビームを該被加工物に照射することによって該被加工物を面取りすることが可能なレーザ加工装置であって、平坦な保持面を有する保持テーブルと、該レーザビームを出射する発振器と、該発振器から出射される該レーザビームを集光する集光器と、該保持テーブルと該レーザビームが集光される集光点とを相対的に移動させる移動機構と、該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転機構と、を備えるレーザ加工装置が提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、被加工物を面取りする被加工物の面取り方法であって、該被加工物の一面側外周部及び他面側外周部の双方が露出されるように該被加工物の一面側中央部を保持テーブルの平坦な保持面において保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該被加工物の素材に吸収される波長のレーザビームが集光される集光点を該被加工物の該他面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該集光点とを相対的に移動させるように該被加工物に該レーザビームを照射することによって、該被加工物の該他面側外周部を除去する第1面取りステップと、該保持ステップの後に、該集光点を該被加工物の該一面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該集光点とを相対的に移動させるように該被加工物に該レーザビームを照射することによって該被加工物の該一面側外周部を除去する第2面取りステップと、該第1面取りステップと該第2面取りステップとの間に、該被加工物を反転させるように該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転ステップと、を備える被加工物の面取り方法が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、インゴットから面取りされたウエーハを製造するウエーハの製造方法であって、該インゴットの素材を透過する波長の第1レーザビームが集光される第1集光点を該インゴットの内部に位置づけた状態で該インゴットと該第1集光点とを相対的に移動させるように該第1レーザビームを該インゴットに照射することによって、該インゴットの内部に分離層を形成する分離層形成ステップと、該分離層形成ステップの後に、該分離層において該インゴットを劈開させるように該インゴットに外力を付与することによって、この劈開に起因して一面よりも他面が粗くなるウエーハを該インゴットから剥離する剥離ステップと、該剥離ステップの後に、該ウエーハの一面側外周部及び他面側外周部の双方が露出されるように該ウエーハの一面側中央部を保持テーブルの平坦な保持面において保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該ウエーハに吸収される波長の第2レーザビームが集光される第2集光点を該ウエーハの該他面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該第2集光点とを相対的に移動させるように該ウエーハに該第2レーザビームを照射することによって、該ウエーハの該他面側外周部を除去する第1面取りステップと、該保持ステップの後に、該第2集光点を該ウエーハの該一面側外周部に位置づけた状態で該保持テーブルと該第2集光点とを相対的に移動させるように該ウエーハに該第2レーザビームを照射することによって、該ウエーハの該一面側外周部を除去する第2面取りステップと、該第1面取りステップと該第2面取りステップとの間に、該ウエーハを反転させるように該保持テーブルの該保持面に平行な直線を回転軸として該保持テーブルを回転させる回転ステップと、を備えるウエーハの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーザ加工装置には、保持テーブルの保持面に平行な直線を回転軸として保持テーブルを回転させる回転機構が設けられている。そのため、このレーザ加工装置においては、被加工物を面取りする際に保持テーブルの保持面から被加工物を分離することなく被加工物を反転させることが可能である。その結果、このレーザ加工装置においては、被加工物を面取りする際の手間を低減するとともにスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、レーザ加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示されるレーザ加工装置の一部の構成要素を模式的に示す部分拡大図である。
図4図4は、図2に示されるレーザ加工装置に含まれる光学系の構成を模式的に示す図である。
図5図5は、図2に示されるレーザ加工装置において図1に示される被加工物を面取りする被加工物の面取り方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図6図6(A)は、保持ステップ後の被加工物を模式的に示す側面図であり、図6(B)は、第1面取りステップの様子を模式的に示す側面図であり、図6(C)は、第1面取りステップ後の被加工物を模式的に示す部分拡大側面図である。
図7図7(A)は、回転ステップ後の被加工物を模式的に示す側面図であり、図7(B)は、第2面取りステップの様子を模式的に示す側面図であり、図7(C)は、第2面取りステップ後の被加工物を模式的に示す部分拡大側面図である。
図8図8は、第1面取りステップにおいて保持テーブルの保持面が傾いた状態で被加工物にレーザビームが照射される様子の一例を模式的に示す一部断面側面図である。
図9図9は、第1面取りステップにおいて保持テーブルの保持面が傾いた状態で被加工物にレーザビームが照射される様子の別の例を模式的に示す一部断面側面図である。
図10図10は、インゴットから面取りされたウエーハを製造するウエーハの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。図1に示される被加工物11は、例えば、一面(表面)11a及び一面11aの反対の面である他面(裏面)11bの双方が鏡面であり、かつ、一面11a側外周部及び他面11b側外周部の双方が角張っている円板状のウエーハである。また、被加工物11の側面11cには、被加工物11の素材の結晶方位を示すための2つの平部、すなわち、一次オリエンテーションフラット13a及び二次オリエンテーションフラット13bが形成されている。
【0015】
図2は、被加工物11の一面11a側外周部及び他面11b側外周部の双方を除去するように被加工物11に吸収される波長のレーザビームを被加工物11に照射することによって被加工物11を面取りすることが可能なレーザ加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図2に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(鉛直方向)である。
【0016】
図2に示されるレーザ加工装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。この基台4の上面には、水平方向移動機構6が配置されている。この水平方向移動機構6は、基台4の上面に固定され、かつ、Y軸方向に沿って延在する一対のY軸ガイドレール8を有する。そして、一対のY軸ガイドレール8の上面側には、一対のY軸ガイドレール8に沿ってスライド可能な態様でY軸移動プレート10が連結されている。
【0017】
また、一対のY軸ガイドレール8の間には、Y軸方向に沿って延在するねじ軸12が配置されている。このねじ軸12の前端部(一端部)には、ねじ軸12を回転させるためのモータ14が連結されている。また、ねじ軸12の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸12の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0018】
すなわち、ねじ軸12が回転すると多数のボールがナット内を循環してナットがY軸方向に沿って移動する。さらに、このナットは、Y軸移動プレート10の下面側に固定されている。そのため、モータ14でねじ軸12を回転させれば、ナットとともにY軸移動プレート10がY軸方向に沿って移動する。また、Y軸移動プレート10の上面には、X軸方向に沿って延在する一対のX軸ガイドレール16が固定されている。
【0019】
そして、一対のX軸ガイドレール16の上面側には、一対のX軸ガイドレール16に沿ってスライド可能な態様でX軸移動部材18が連結されている。なお、X軸移動部材18は、U字状の形状を有する。具体的には、X軸移動部材18は、その下面側が一対のX軸ガイドレール16に連結されている平板状の底部18aと、底部18aのY軸方向における両端からそれぞれ立設されている一対の側部18b,18cと、を有する。
【0020】
また、一対のX軸ガイドレール16の間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸20が配置されている。このねじ軸20の一端部には、ねじ軸20を回転させるためのモータ22が連結されている。また、ねじ軸20の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸20の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0021】
すなわち、ねじ軸20が回転すると多数のボールがナット内を循環してナットがX軸方向に沿って移動する。さらに、このナットは、X軸移動部材18の底部18aの下面側に固定されている。そのため、モータ22でねじ軸20を回転させれば、ナットとともにX軸移動部材18がX軸方向に沿って移動する。
【0022】
そして、X軸移動部材18は、平坦な保持面を有する保持テーブル24と、保持テーブル24の保持面に平行な直線、具体的には、Y軸方向に平行な直線を回転軸として保持テーブル24を回転させる回転機構26と、に連結されている。図3は、X軸移動部材18、保持テーブル24及び回転機構26を示す部分拡大図である。
【0023】
保持テーブル24は、セラミックス等からなる円板状の枠体24aを有する。そして、枠体24aは、円板状の底壁と、この底壁の外周部から立設されている円筒状の側壁と、を有する。なお、枠体24aの側壁の外径は、被加工物11の幅よりも小さい。また、枠体24aの底壁及び側壁によって画定される凹部には、例えば、多孔質セラミックスからなる円板状のポーラス板24bが固定されている。
【0024】
このポーラス板24bは、枠体24aの側壁の内径と概ね等しい直径を有する。さらに、ポーラス板24bは、枠体24aの底壁に形成されている貫通孔等を介して、例えば、エジェクタ等を含む吸引機構(不図示)と連通する。また、枠体24aの側壁の表面及びポーラス板24bの表面は、Y軸方向に平行であり、被加工物11を保持する際に保持テーブル24の保持面として機能する。
【0025】
具体的には、被加工物11がレーザ加工装置2に搬入されると、被加工物11が保持テーブル24の保持面に置かれる。そして、この状態でポーラス板24bと連通する吸引機構を動作させると、被加工物11に吸引力が作用する。その結果、保持テーブル24の保持面において被加工物11が保持される。
【0026】
また、保持テーブル24の枠体24aの底壁は、ベアリング(不図示)等を介してベース28の先端部に装着されている。また、ベース28の内部には、例えば、プーリ及びモータ等を含む周方向移動機構(不図示)が設けられている。そして、この周方向移動機構を動作させると、その周方向に沿って保持テーブル24が回転する。具体的には、この周方向移動機構を動作させると、保持面の中心を通り、かつ、保持面と直交する方向に沿って延在する直線を回転軸として、保持テーブル24が回転する。
【0027】
回転機構26は、U字状の形状を有する支持部材30を有する。具体的には、支持部材30は、Y軸方向に沿った長さがX軸移動部材18の一対の側部18b,18cの間隔よりも小さい平板状の底部30aと、底部30aのY軸方向における両端からそれぞれ立設されている一対の側部30b,30cと、を有する。なお、底部30aの表面側には、ベース28の基端部が固定されている。また、底部30aの幅(具体的には、保持テーブル24の保持面に平行かつY軸方向に直交する方向における長さ)は、保持テーブル24の枠体24aの外径よりも小さい。
【0028】
さらに、側部30bの外側面側には円柱状のシャフト32aの一端部が固定され、また、側部30cの外側面側には円柱状のシャフト32bの一端部が固定されている。なお、これらのシャフト32a,32bは、Y軸方向に沿って並ぶように設けられている。そして、X軸移動部材18の一対の側部18b,18cのそれぞれにはY軸方向に沿った貫通孔が形成されており、各貫通孔にはベアリング(不図示)を介して各シャフト32a,32bが通されている。
【0029】
すなわち、各シャフト32a,32bは、回転可能な態様でX軸移動部材18に支持されている。また、X軸移動部材18の側部18bには、例えば、連結部材(不図示)を介してモータ34が固定されており、このモータ34にはシャフト32aの他端部が連結されている。そのため、モータ34でシャフト32aを回転させれば、保持テーブル24の保持面に平行な直線、具体的には、Y軸方向に平行な直線を回転軸として、シャフト32b、支持部材30及びベース28とともに保持テーブル24が回転する。
【0030】
図2に示されるように、水平方向移動機構6からみてY軸方向側には、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれに対して概ね平行な側面を有する支持構造36が設けられている。この支持構造36の側面には、鉛直方向移動機構38が配置されている。そして、鉛直方向移動機構38は、支持構造36の側面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のZ軸ガイドレール40を有する。
【0031】
そして、一対のZ軸ガイドレール40の表面側には、一対のZ軸ガイドレール40に沿ってスライド可能な態様でZ軸移動プレート42が連結されている。また、一対のZ軸ガイドレール40の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸(不図示)が配置されている。そして、このねじ軸の上端部(一端部)には、ねじ軸を回転させるためのモータ44が連結されている。
【0032】
また、ねじ軸の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸の表面を転がる多数のボールを収容するナット(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。すなわち、このねじ軸が回転すると多数のボールがナット内を循環してナットがZ軸方向に沿って移動する。さらに、このナットは、Z軸移動プレート42の裏面側に固定されている。そのため、モータ44で一対のZ軸ガイドレール40の間に配置されているねじ軸を回転させれば、ナットとともにZ軸移動プレート42がZ軸方向に沿って移動する。
【0033】
Z軸移動プレート42の表面側には、支持具46が固定されている。この支持具46は、レーザ加工装置2に含まれる光学系48の一部の構成要素を支持する。図4は、光学系48の構成を模式的に示す図である。なお、図4においては、光学系48の一部の構成要素がブロックで示されている。
【0034】
光学系48は、基台4に固定された発振器50を有する。この発振器50は、例えば、レーザ媒質としてNd:YAG等を有し、被加工物11の素材に吸収される波長(例えば、355nm)のレーザビームを出射する。そして、発振器50から出射されたレーザビームは、ダイクロイックミラー52に供給される。
【0035】
このダイクロイックミラー52は、発振器50から出射されたレーザビームを透過させるとともに、カメラ54による撮像に利用される波長の光(撮像光)を反射して撮像光の光路がレーザビームの光路と同軸になるように設計されている。なお、このカメラ54は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源と、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子と、を含む。
【0036】
ダイクロイックミラー52を透過したレーザビーム及びそれによって反射された撮像光は、集光器56に供給される。なお、この集光器56は、例えば、レーザビーム及び撮像光を集光する集光レンズ等を含む。そして、この集光レンズを通ったレーザビーム及び撮像光は、集光器56の下面から直下に出射される。なお、図2に示されるように、集光器56は、円柱状のハウジング58の先端部に設けられている。そして、このハウジング58の基端部は、支持具46に固定されている。
【0037】
図5は、レーザ加工装置2において被加工物11を面取りする被加工物の面取り方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、被加工物11の一面11a側中央部を保持テーブル24の保持面において保持する(保持ステップS1)。図6(A)は、保持ステップS1後の被加工物11を模式的に示す側面図である。
【0038】
この保持ステップS1においては、被加工物11の一面11a側中央部を保持テーブル24の保持面に接触させるように、すなわち、被加工物11の一面11a側外周部及び他面11b側外周部の双方が露出されるように、被加工物11を保持テーブル24に置く。そして、この状態でポーラス板24bと連通する吸引機構を動作させる。その結果、被加工物11の一面11a側中央部に吸引力が作用して、保持テーブル24の保持面において被加工物11の一面11a側中央部が保持される。
【0039】
なお、被加工物11を保持テーブル24に置く前には、必要に応じて、Y軸方向に沿った直線を回転軸として保持テーブル24を回転させるように回転機構26を動作させてもよい。例えば、保持テーブル24の保持面がX軸方向に対して傾いている場合には、この保持面がX軸方向と平行になるように被加工物11を保持テーブル24に置く前に回転機構26が保持テーブル24を回転させてもよい。
【0040】
保持ステップS1の後には、被加工物11にレーザビームを照射することによって被加工物の他面11b側外周部を除去する(第1面取りステップS2)。図6(B)は、第1面取りステップS2の様子を模式的に示す側面図であり、図6(C)は、第1面取りステップS2後の被加工物11を模式的に示す部分拡大側面図である。
【0041】
この第1面取りステップS2においては、まず、被加工物11の他面11b側外周部が含まれる画像(全体画像)が形成されるようにカメラ54によって被加工物11を撮像する。例えば、その画角に被加工物11の他面11b側外周部の一部を含むカメラ54による撮像と、カメラ54の画角に含まれる被加工物11の他面11b側外周部の部分を変更するための保持テーブル24の周方向及び/又は水平方向に沿った移動と、を交互に繰り返す。そして、全体画像は、複数回のカメラ54による撮像によって形成された複数の画像(部分画像)を組み合わせることによって形成される。
【0042】
次いで、形成された画像に基づいて被加工物11の他面11b側外周部の位置を特定する。例えば、レーザ加工装置2に内蔵されているプロセッサ等を利用して形成された画像を2値化することによって被加工物11の外周縁を特定してから、この外周縁と外周縁から所定の距離だけ内側に位置する仮想線との間に存在する部分を他面11b側外周部の位置として特定する。なお、この時、特定された外周縁のうち直線的に延在する部分は、一次オリエンテーションフラット13a及び二次オリエンテーションフラット13bの位置として特定される。
【0043】
次いで、特定された被加工物11の他面11b側外周部の位置の直上に集光器56が位置づけられるように保持テーブル24を周方向及び/又は水平方向に沿って移動させる。次いで、集光器56から出射されるレーザビームLBが集光される集光点が被加工物11の他面11b側外周部に位置づけられるようにハウジング58を昇降させる。次いで、集光器56からレーザビームLBを出射しながら、レーザビームLBが集光される集光点を被加工物11の他端側外周部に位置づけた状態で保持テーブル24を周方向及び/又は水平方向に沿って移動させる。
【0044】
例えば、被加工物11の他面11b側外周部のうち一次オリエンテーションフラット13a及び二次オリエンテーションフラット13bの内側に位置する領域に集光点が位置づけられている状態においては保持テーブル24を水平方向に沿って移動させる。また、被加工物11の他面11b側外周部のその他の領域(具体的には、湾曲するように延在する領域)に集光点が位置づけられている状態においては保持テーブル24を周方向に沿って移動させる。ただし、被加工物11の素材の結晶方位とレーザビームLBとの間に相関関係がある場合には、当該その他の領域に集光点が位置づけられている状態においても保持テーブル24を水平方向に沿って移動させてもよい。
【0045】
これにより、被加工物11の他面11b側外周部がレーザアブレーションによって除去されて被加工物11の他面11b側に面取り部15aが形成される。なお、図6(C)においては、円錐台の側面に対応するような形状の表面を有する面取り部15aが示されているが、面取り部15aの表面の形状はこれに限定されない。例えば、面取り部15aは、その縦断面が湾曲するような形状の表面を有してもよい。さらに、第1面取りステップS2においては、面取り部15aの表面が所望の形状になるように被加工物11とレーザビームLBが集光される集光点とを保持テーブル24の径方向及び/又は厚さ方向に沿って相対的に移動させてもよい。
【0046】
第1面取りステップS2の後には、被加工物11を反転させるように保持テーブル24の保持面に平行な直線を回転軸として保持テーブル24を回転させる(回転ステップS3)。図7(A)は、回転ステップS3後の被加工物11を模式的に示す側面図である。この回転ステップS3においては、Y軸方向に沿った直線を回転軸として保持テーブル24を180°回転させるように回転機構26を動作させる。
【0047】
回転ステップS3の後には、被加工物11にレーザビームLBを照射することによって被加工物11の一面11a側外周部を除去する(第2面取りステップS4)。図7(B)は、第2面取りステップS4の様子を模式的に示す側面図であり、図7(C)は、第2面取りステップS4後の被加工物11を模式的に示す部分拡大側面図である。
【0048】
この第2面取りステップS4においては、例えば、第1面取りステップS2と同様の手順でレーザ加工装置2の各構成要素を動作させる。ただし、被加工物11の一面11a側外周部の位置は第1面取りステップS2において形成される画像に基づいて特定可能であるため、第2面取りステップS4においては新たにカメラ54による撮像等が実施されなくてもよい。
【0049】
そして、第2面取りステップS4が実施されると、被加工物11の一面11a側外周部がレーザアブレーションによって除去されて被加工物11の一面11a側に面取り部15bが形成される。なお、図7(C)においては、円錐台の側面に対応するような形状を有する面取り部15bが示されているが、面取り部15bの形状はこれに限定されない。例えば、面取り部15bは、その縦断面が湾曲するような形状の表面を有してもよい。さらに、第2面取りステップS4においては、面取り部15bの表面が所望の形状になるように被加工物11とレーザビームLBが集光される集光点とを保持テーブル24の径方向及び/又は厚さ方向に沿って相対的に移動させてもよい。
【0050】
上述したように、レーザ加工装置2には、保持テーブル24の保持面に平行な直線、具体的には、Y軸方向に沿った直線を回転軸として保持テーブル24を回転させる回転機構26が設けられている。そのため、このレーザ加工装置2においては、被加工物11を面取りする際に保持テーブル24の保持面から被加工物11を分離することなく被加工物11を反転させることが可能である。その結果、このレーザ加工装置2においては、被加工物11を面取りする際の手間を低減するとともにスループットを向上させることができる。
【0051】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明のレーザ加工装置においては、被加工物11とレーザビームLBが集光される集光点とを相対的に移動させるための移動機構が設けられていればよく、この移動機構の構造に限定はない。
【0052】
具体的には、本発明のレーザ加工装置においては、水平方向移動機構6、ベース28の内部に設けられている周方向移動機構又は鉛直方向移動機構38の少なくとも一に加えて又は換えて、保持テーブル24を鉛直方向に沿って移動させるための鉛直方向移動機構及び/又はハウジング58を水平方向に沿って移動させるための水平方向移動機構等が設けられてもよい。
【0053】
あるいは、本発明のレーザ加工装置においては、被加工物11とレーザビームLBが集光される集光点とを相対的に移動させるための移動機構として、集光器56から出射されるレーザビームLBの方向を変更することが可能な走査光学系が設けられてもよい。この走査光学系は、例えば、光学系48に含まれるダイクロイックミラー52と集光器56との間に設けられる。なお、この走査光学系は、例えば、ガルバノスキャナ、音響光学素子(AOD)及び/又はポリゴンミラー等を含む。また、この場合には、集光器56にfθレンズが設けられてもよい。
【0054】
また、本発明のレーザ加工装置においては、ダイクロイックミラー52及びカメラ54が設けられなくてもよい。また、本発明のレーザ加工装置においては、ダイクロイックミラー52及びカメラ54に換えて、撮像光の光路がレーザビームの光路と同軸にならないカメラが設けられてもよい。
【0055】
また、本発明の被加工物の面取り方法においては、被加工物11の一端側外周部を除去してから他端側外周部が除去されてもよい。このような被加工物の面取り方法においては、例えば、保持ステップS1、回転ステップS3、第2面取りステップS4、回転ステップS3及び第1面取りステップS2の順に上述した各ステップが実施される。
【0056】
また、本発明の被加工物の面取り方法の第1面取りステップS2及び第2面取りステップS4においては、保持テーブル24の保持面がX軸方向に対して傾いた状態で被加工物11にレーザビームLBが照射されてもよい。図8及び図9のそれぞれは、このように被加工物11にレーザビームLBを照射する様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0057】
具体的には、図8及び図9においては、レーザビームLBの光軸と、被加工物11の他面11b側に形成される面取り部15a(図6(C)参照)の表面(換言すると、レーザビームLBの照射によって除去される被除去領域11dの内周面)と、が平行(図8)又は垂直(図9)になるように、保持テーブル24を傾けた状態で実施される第1面取りステップS2の様子が示されている。
【0058】
そして、図8に示されるように第1面取りステップS2が実施される場合、被除去領域11dのうち外周縁近傍の第1領域11eを除去することなく、この第1領域11eよりも内側に位置する第2領域11fを除去することによって面取り部15aを形成できる。すなわち、この場合、レーザアブレーションによって除去することが必要な被加工物11の素材の体積量を減少させることができる。そのため、この場合には、被加工物11を面取りする際のスループットをさらに向上させることができる。
【0059】
さらに、この場合、被加工物11の他面11b側外周部の表面の形状に依存することなく、円錐台の側面に対応するような表面の形状を有する面取り部15aを形成することが容易になる。具体的には、被加工物11の他面11b側外周部の表面が凹凸形状である場合、面取り部15aを形成するためには、他面11b側外周部の全域を均一に除去するのではなく、他面11b側外周部に含まれる凸部を局所的に除去することが必要になる。
【0060】
ただし、被加工物11の他面11b側外周部に含まれる凸部を局所的に除去するように高精度にレーザアブレーションを生じさせることは困難であることが多い。これに対して、図8に示されるように第1面取りステップS2が実施される場合には、その表面が凹凸形状を有する第1領域11eを除去することなく、第2領域11fを除去するようにレーザアブレーションを生じさせることによって面取り部15aを形成できる。そのため、この場合には、被加工物11の他面11b側外周部の表面の形状に依存することなく面取り部15aを形成することが容易になる。
【0061】
また、図9に示されるように第1面取りステップS2が実施される場合、被加工物11の他面11b側の外周縁にレーザビームLBが集光される集光点を位置付けた状態を維持したまま被加工物11にレーザビームLBを照射することによって、円錐台の側面に対応するような表面の形状を有する面取り部15aを形成できる。すなわち、この場合、面取り部15aを形成するために被加工物11とレーザビームLBが集光される集光点とを保持テーブル24の径方向及び/又は厚さ方向に沿って相対的に移動させる必要がなくなる。そのため、この場合には、被加工物11に面取り部15aを形成する際の加工精度を向上させることができる。
【0062】
また、本発明においては、その一面よりも他面が粗いウエーハが被加工物とされてもよい。このようなウエーハは、例えば、インゴットの素材を透過する波長のレーザビーム(第1レーザビーム)を利用して、その表面側の一部が剥離されるようにインゴットを分離することによって製造される。図10は、インゴットから面取りされたウエーハを製造するウエーハの製造方法、具体的には、その一面よりも他面が粗いウエーハをインゴットから剥離してから、このウエーハを面取りするウエーハの製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0063】
この方法においては、まず、インゴットの内部に分離層を形成する(分離層形成ステップS5)。この分離層形成ステップS5においては、第1レーザビームが集光される集光点をインゴットの内部に位置づけた状態でインゴットと集光点(第1集光点)とを相対的に移動させるように第1レーザビームをインゴットに照射する。これにより、インゴットの内部に改質部と改質部から伸展するクラックとを含む分離層が形成される。
【0064】
分離層形成ステップS5の後には、分離層においてインゴットを劈開させるようにインゴットに外力を付与することによって、ウエーハをインゴットから剥離する(剥離ステップS6)。この剥離ステップS6においては、分離層に含まれるクラックがさらに伸展してインゴットが劈開する。その結果、この劈開に起因して一面(すなわち、インゴットの表面に対応する面)よりも他面(すなわち、劈開した分離層側の面)が粗いウエーハがインゴットから剥離される。
【0065】
剥離ステップS6の後には、例えば、このウエーハを被加工物としてレーザ加工装置2において図5に示される被加工物の面取り方法を実施する。すなわち、ウエーハの一面側中央部を保持テーブル24の保持面において保持する保持ステップS1’と、ウエーハにレーザビームを照射することによってウエーハの他面側外周部を除去する第1面取りステップS2’と、ウエーハを反転させるように保持テーブル24の保持面に平行な直線、具体的には、Y軸方向に平行な直線を回転軸として保持テーブル24を回転させる回転ステップS3’と、ウエーハにレーザビームを照射することによってウエーハの一面側外周部を除去する第2面取りステップS4’と、を順番に実施する。
【0066】
その結果、面取りされたウエーハが製造される。図10に示されるウエーハの製造方法においては、その一面よりも他面が粗いウエーハ、すなわち、他面が凹凸形状のウエーハがインゴットから剥離されるものの、スループットを低下させることなく面取りされたウエーハを製造できる。すなわち、この方法においては、保持テーブル24の保持面においてウエーハの他面側を保持するための研削及び/又は研磨等を実施することなく、ウエーハの一面側外周部及び他面側外周部の双方を除去してウエーハを面取りすることが可能である。
【0067】
なお、図10に示されるウエーハの製造方法においては、その他面側外周部の表面が凹凸形状のウエーハがインゴットから剥離されるため、第1面取りステップS2’において円錐台の側面に対応するような表面の形状を有する面取り部を形成する場合には、第1面取りステップS2’は図8を参照して説明したように実施されることが好ましい。
【0068】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0069】
2 :レーザ加工装置
4 :基台
6 :水平方向移動機構
8 :Y軸ガイドレール
10 :Y軸移動プレート
11 :被加工物(11a:一面(表面)、11b:他面(裏面)、11c:側面)
(11d:被除去領域、11e:第1領域、11f:第2領域)
12 :ねじ軸
13a:一次オリエンテーションフラット
13b:二次オリエンテーションフラット
14 :モータ
15a:面取り部
15b:面取り部
16 :X軸ガイドレール
18 :X軸移動部材(18a:底部、18b,18c:側部)
20 :ねじ軸
22 :モータ
24 :保持テーブル(24a:枠体、24b:ポーラス板)
26 :回転機構
28 :ベース
30 :支持部材(30a:底部、30b,30c:側部)
32a:シャフト
32b:シャフト
34 :モータ
36 :支持構造
38 :鉛直方向移動機構
40 :Z軸ガイドレール
42 :Z軸移動プレート
44 :モータ
46 :支持具
48 :光学系
50 :発振器
52 :ダイクロイックミラー
54 :カメラ
56 :集光器
58 :ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10