(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022047
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】搬送アームの位置設定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
H01L21/68 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126275
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA52
5F131CA18
5F131DA13
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB54
5F131DB57
5F131DB72
5F131EB03
5F131EB32
5F131EC33
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】搬送調整の工数を削減する。
【解決手段】搬送アーム40の位置設定方法は、接近、挟持試行、判定、設定の各ステップを有する。搬送アーム40は押さえプレート421と支持プレート422を含むフレーム挟持部42と、押さえプレート421と支持プレート422の位置関係を検出するセンサ44、45を有する。接近ステップで、搬送アーム40を環状のフレームFへ近づける。その後の挟持試行ステップで、押さえプレート421と支持プレート422の間隔を縮めてフレームFの挟持を試行する。その後の判定ステップで、センサ44、45で検出した位置関係に基づきフレーム挟持部42がフレームFを挟持したかを判定する。設定ステップで、繰り返し行われた上記ステップのうちの判定ステップで挟持したと判定したときの搬送アーム40の位置からフレームFに所定距離近づけた位置を搬出位置として設定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が保持されたフレームユニットに用いられる環状フレームを保持機構から搬出する搬送アームの位置設定方法であって、
該搬送アームは、
該保持機構に保持された該環状フレームの厚さ方向である第1方向に整列した押さえプレートと支持プレートとを含むフレーム挟持部と、
該押さえプレートに対して該支持プレートを該第1方向へ相対的に移動させる第1移動部と、
該押さえプレートと該支持プレートとの該第1方向の位置関係を検出するセンサと、を有し、
該保持機構に保持された該環状フレームが、該第1方向において該押さえプレートと該支持プレートの間に位置し、且つ、該第1方向と直交する第2方向において該押さえプレートと該支持プレートの間に位置しない状態で、該搬送アームを該第2方向へ移動させる第2移動部を用いて該搬送アームを該環状フレームへ近づける接近ステップと、
該接近ステップ後に、該第1移動部を用いて該押さえプレートと該支持プレートの間の該第1方向の間隔を縮めて該環状フレームの挟持を試行する挟持試行ステップと、
該挟持試行ステップ後に、該センサで検出した該位置関係に基づいて該フレーム挟持部が該環状フレームを挟持したか否かを判定する判定ステップと、
繰り返し行われる該接近ステップと該挟持試行ステップと該判定ステップとのうちの該判定ステップで該フレーム挟持部が該環状フレームを挟持したと判定したときの該搬送アームの位置である基準位置から該搬送アームをさらに該環状フレームに所定距離近づけた位置を、該保持機構に保持された該環状フレームを該搬送アームが搬出する際に該搬送アームを位置付ける搬出位置として設定する設定ステップと、を備える
ことを特徴とする位置設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送アームの位置設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理装置内における被加工物の搬送方法の一つとして、テープを介して被加工物を保持する環状フレームを、挟持部を有する搬送アームで挟持して搬送する搬送方法が知られている。挟持部を有する搬送アームは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の搬送方法では、予め搬出位置の調整が行われる。搬出位置は、保持機構に保持された環状フレームを搬出する際に搬送アームが位置付けられる位置をいう。
【0005】
従来は、作業者が搬送アームを動かしながら、環状フレームに対する挟持部の高さや水平方向の位置を目視で確認することで、搬出位置の調整が行われている。このため、調整作業における作業者の負担を軽減する新たな技術の提案が期待されている。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、搬送調整の工数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の方法は、被加工物が保持されたフレームユニットに用いられる環状フレームを保持機構から搬出する搬送アームの位置設定方法であって、該搬送アームは、該保持機構に保持された該環状フレームの厚さ方向である第1方向に整列した押さえプレートと支持プレートとを含むフレーム挟持部と、該押さえプレートに対して該支持プレートを該第1方向へ相対的に移動させる第1移動部と、該押さえプレートと該支持プレートとの該第1方向の位置関係を検出するセンサと、を有し、該保持機構に保持された該環状フレームが、該第1方向において該押さえプレートと該支持プレートの間に位置し、且つ、該第1方向と直交する第2方向において該押さえプレートと該支持プレートの間に位置しない状態で、該搬送アームを該第2方向へ移動させる第2移動部を用いて該搬送アームを該環状フレームへ近づける接近ステップと、該接近ステップ後に、該第1移動部を用いて該押さえプレートと該支持プレートの間の該第1方向の間隔を縮めて該環状フレームの挟持を試行する挟持試行ステップと、該挟持試行ステップ後に、該センサで検出した該位置関係に基づいて該フレーム挟持部が該環状フレームを挟持したか否かを判定する判定ステップと、繰り返し行われる該接近ステップと該挟持試行ステップと該判定ステップとのうちの該判定ステップで該フレーム挟持部が該環状フレームを挟持したと判定したときの該搬送アームの位置である基準位置から該搬送アームをさらに該環状フレームに所定距離近づけた位置を、該保持機構に保持された該環状フレームを該搬送アームが搬出する際に該搬送アームを位置付ける搬出位置として設定する設定ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送調整の工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1に示す処理装置に含まれる搬送アームの構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す搬送アームの挟持機構の構成例を示す図である。
【
図4】
図2に示す搬送アームの吸引保持機構の構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示す挟持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの搬出位置の設定例について説明する図である。
【
図6】
図3に示す挟持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの搬出位置の設定例について説明する図である。
【
図7】
図3に示す挟持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの搬出位置の設定例について説明する図である。
【
図8】
図4に示す吸引保持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの移動例について説明する図である。
【
図10】
図4に示す吸引保持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの搬出位置の設定例について説明する図である。
【
図11】
図4に示す吸引保持機構を用いる際における
図2に示す搬送アームの搬出位置の設定例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態に係る処理装置1の斜視図である。
図2は、処理装置1に含まれる搬送アーム40の構成例を示す斜視図である。
図3は、搬送アーム40の挟持機構401の構成例を示す斜視図である。
図4は、搬送アーム40の吸引保持機構402の構成例を示す斜視図である。以下では、処理装置1の構成について、
図1から
図4を参照しながら、説明する。なお、図面に示すX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な関係にある。X軸方向とY軸方向は略水平な方向であり、Z軸方向は上下方向(略鉛直な方向)である。
【0011】
図1に示す処理装置1では、被加工物であるウェーハWは、フレームユニットFUの状態で取り扱われる。フレームユニットFUは、
図1に示すように、環状のフレームFの開口を塞いだテープTにウェーハWを貼着して、フレームFとウェーハWとを一体化したものである。
【0012】
処理装置1は、環状のフレームFを吸引保持する搬送アーム(後述する搬送アーム40、搬送アーム100)と環状のフレームFを挟持して保持する搬送アーム(後述する搬送アーム40)の少なくとも一方を備えるものであればよく、両方を備えるものであることが望ましい。処理装置1がウェーハWに対して切削加工を行う切削加工装置である場合を例にして説明するが、処理装置1は、切削加工を行う加工装置に限らず、例えば、レーザ加工、研削、研磨などを行う任意の加工装置であってもよい。処理装置1は、特定の加工のみを行う専用加工装置であってもよく、例えば、研削加工、研磨加工、切削加工、レーザ加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。また、処理装置1は、被加工物(この例では、ウェーハW)が加工する加工装置に限らず、例えば、テープマウンタなどであってもよい。
【0013】
処理装置1が加工するウェーハWは、特に限定しない。ウェーハWは、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体ウェーハであり、略板状に形成されている。なお、ウェーハWは、半導体ウェーハに限らず、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウェーハでもよい。
【0014】
処理装置1は、
図1に示すように、装置本体2と、門型の支持台3及び支持台4と、を備えている。装置本体2の上面には、X軸方向に延在する長方形状の開口が形成されていて、支持台3及び支持台4は、その開口を跨ぐように装置本体2の上面に設けられている。また、装置本体2に形成された開口は、後述するチャックテーブル60と共に移動可能な蛇腹状のカバー5に覆われている。さらに、装置本体2のカバー5の下方には、チャックテーブル60をX軸方向に移動させる図示しないX軸方向移動機構と、チャックテーブル60をZ軸方向周りに回転させる図示しないテーブル回転機構と、が設けられている。
【0015】
処理装置1は、さらに、
図1に示すように、カセットステージ20と、搬送アーム40を有する搬送機構30と、一対のガイドレール50と、チャックテーブル60と、一対の切削ユニット70と、一対の移動機構80と、搬送アーム100を有する搬送機構90と、洗浄ユニット130と、制御ユニット150を備えている。
【0016】
カセットステージ20には、フレームユニットFUを収容したカセット10が載置されている。カセットステージ20に載置されるカセット10は、フレームFを保持する保持機構の一例である。カセット10には、フレームユニットFUを収容する収容部がZ軸方向に複数段設けられている。カセット10は、フレームユニットFUを収容部へ搬入出するための開口を有し、開口を搬送アーム40に設けられたフレーム挟持部42に向けた状態、つまり、+Y軸方向に向けた状態で、カセットステージ20に載置される。
【0017】
カセットステージ20は、装置本体2内部に設けられた昇降機構によりZ軸方向に昇降可能に構成されている。カセットステージ20が昇降してカセット10をフレーム挟持部42に対して相対的に移動させることで、カセット10の任意の収容部に対してフレームユニットFUの搬入出が可能となっている。
【0018】
搬送機構30は、カセット10と装置本体2、より詳細には、カセット10と一対のガイドレール50との間でフレームユニットFUの搬入出を行う。さらに、搬送機構30は、一対のガイドレール50からチャックテーブル60へのフレームユニットFUの搬出も行う。搬送機構30は、支持台3に支持されている。搬送機構30は、搬送アーム40と、搬送アーム40をZ軸方向(鉛直方向)へ移動させる昇降駆動部31と、搬送アーム40をY軸方向(水平方向)へ移動させる水平駆動部32と、を備えている。
【0019】
搬送アーム40は、
図2に示すように、昇降駆動部31の下方端部に固定された円板状の支持部材400を有し、さらに支持部材400に支持された挟持機構401と吸引保持機構402とを有している。
【0020】
挟持機構401は、フレームユニットFUのフレームFを挟持する機構であり、カセット10と一対のガイドレール50との間でのフレームユニットFUの搬入出に用いられる。これに対して、吸引保持機構402は、フレームユニットFUのフレームFを吸引保持する機構であり、一対のガイドレール50からチャックテーブル60へのフレームユニットFUの搬出に用いられる。
【0021】
挟持機構401は、フレームFを挟持するフレーム挟持部42と、フレーム挟持部42を支持するアーム部41を備えている。フレーム挟持部42がフレームユニットFUを挟持した状態で、水平駆動部32と昇降駆動部31が搬送アーム40を移動させることで、カセット10と一対のガイドレール50の間でのフレームユニットFUの移動が発生し、搬送機構30によりフレームユニットFUの搬入出が行われる。
【0022】
挟持機構401は、より詳細には、
図3に示すように、上述したアーム部41とフレーム挟持部42に加えて、第1移動部43と、センサ(センサ44、センサ45)を備えている。
【0023】
フレーム挟持部42は、ガイドレール50に保持されたフレームFの厚さ方向であるZ軸方向(第1方向)に整列した、押さえプレート421と支持プレート422とを含む。押さえプレート421は、アーム部41の所定の位置に固定されている。これに対して、支持プレート422は、第1移動部43によって押さえプレート421に対して移動自在に設けられている。
【0024】
第1移動部43は、シリンダ431と、シリンダ431内に設けられたピストン432を含んでいる。第1移動部43は、シリンダ431内に設けられたピストン432の直線運動を支持プレート422に伝達することで、押さえプレート421に対して支持プレート422をY軸方向へ相対的に移動させる。第1移動部43が支持プレート422を十分に押さえプレート421へ近づけることで、フレーム挟持部42は、押さえプレート421と支持プレート422の間にフレームFを挟持することができる。
【0025】
センサ44及びセンサ45は、押さえプレート421と支持プレート422とのY軸方向の位置関係を検出するセンサである。センサ44及びセンサ45は、例えば磁気センサである。ピストン432には予め磁石が埋め込まれていて、センサ44及びセンサ45は、それぞれピストン432が近接した位置に配置されることでピストン432を検出し、それによって、押さえプレート421と支持プレート422の位置関係を検出する。
【0026】
より詳細には、
図3(a)に示すように押さえプレート421と支持プレート422が接触した状態では、センサ44とセンサ45の両方がピストン432を検出し、
図3(b)に示すように押さえプレート421と支持プレート422がフレームFの厚さ程度離間した状態では、センサ45のみがピストン432を検出するように、予めセンサ44とセンサ45が配置されている。これにより、後述するフレームFの挟持を試行したときに、制御ユニット150は、フレームFを挟持したか否かをセンサ44及びセンサ45の出力に基づいて判定することが可能である。
【0027】
吸引保持機構402は、
図4に示すように、X軸方向に延びる第1アーム部461と、第1アーム部461に接続されたY軸方向に延びる一対の第2アーム部462と、一対の第2アーム部462の両端に設けられた計4つの吸着部463と、を備えている。吸着部463がフレームユニットFUを吸引保持した状態で、水平駆動部32と昇降駆動部31が搬送アーム40を移動させることで、一対のガイドレール50からチャックテーブル60へのフレームユニットFUの移動が発生し、搬送機構30によりフレームユニットFUの搬出が行われる。
【0028】
第1アーム部461には、複数の被嵌合部464が形成されている。第2アーム部462の底面には図示しないプランジャが設けられていて、プランジャが被嵌合部464に篏合することで、第2アーム部462が第1アーム部461に固定される。プランジャが篏合する被嵌合部464を変更することで、第2アーム部462の位置を矢印465に示すようにX軸方向に変更可能であり、これにより、第2アーム部462間の間隔をフレームFのサイズに応じた間隔に調整することができる。
【0029】
4つの吸着部463の各々は、例えば、弾性部材で構成された吸着パッドである。4つの吸着部463は、吸引路を介して吸引源470に連通している。また、4つの吸着部463と吸引源470の間の吸引路には、圧力計480が接続されている。圧力計480は、吸引源470の吸引動作中に吸着部463に生じる負圧(以降、単に吸着部463の負圧と記す。)を測定する。
【0030】
吸着部463は、吸着パッドに限らない。吸着部463は、環状のフレームFに接触して吸引保持するものであればよく、吸引路に接続された、第2アーム部462に形成された貫通孔であってもよい。
【0031】
一対のガイドレール50は、フレームFを保持する保持機構の一例であり、Y軸方向に沿って設けられている。一対のガイドレール50の各々は、XZ断面において断面視L字型を有し、図示しない間隔調整機構によってX軸方向に移動可能に構成されている。カセット10から一対のガイドレール50へフレームユニットFUが搬入される際には、ガイドレール50の間隔は、およそフレームFの一対の切り欠き部FN間の間隔程度でわずかに広い間隔に調整されている。これにより、一対のガイドレール50上へ搬入されたフレームユニットFUは、一対のガイドレール50によって支持される。
【0032】
また、フレームFの切り欠き部FN間の間隔よりもある程度広い間隔であって、フレームFを支持可能な間隔に調整された一対のガイドレール50にフレームユニットFUを搬入した後、一対のガイドレール50の間隔を狭めていき、ガイドレール50でフレームユニットFUを挟持し、一対の切り欠き部FN間の間隔を処理装置1が認識するようにしてもよい。認識した間隔は、フレームFのサイズに応じた搬送アーム40の調整に利用されてもよい。
【0033】
また、搬送機構30がフレームユニットFUをチャックテーブル60に配置する際には、一対のガイドレール50間の間隔は、一対の切り欠き部FN間の間隔に対して十分に広げられる。また、搬送機構90がフレームユニットFUを洗浄ユニット130に配置する際にも、一対のガイドレール50間の間隔は、一対の切り欠き部FN間の間隔に対して十分に広げられる。これにより、一対のガイドレール50の間を通ってフレームユニットFUをチャックテーブル60又は洗浄ユニット130へ移動可能とする。
【0034】
チャックテーブル60は、フレームユニットFUを保持するテーブルであり、フレームFを保持する保持機構の一例である。チャックテーブル60は、
図1に示すように、ウェーハWを吸引保持する保持面61と、フレームFを保持するクランプ部62を有している。チャックテーブル60は、図示しないX軸方向移動機構により、搬送機構90によりフレームユニットFUが搬入出される搬入出位置と切削ユニット70によって切削加工が行われる切削位置との間を移動する。また、チャックテーブル60は、図示しない回転機構によりZ軸周りに回転し、保持したフレームユニットFUの向きを変更する。
【0035】
一対の切削ユニット70は、チャックテーブル60に保持されたフレームユニットFUのウェーハWを切削する装置であり、それぞれ、Y軸方向に回転軸を向けたスピンドルに固定されたブレードを備えている。一対の移動機構80は、支持台4に支持されていて、一対の切削ユニット70をZ軸方向及びY軸方向へ移動する。切削ユニット70は、移動機構80によってZ軸方向及びY軸方向に移動することで、ウェーハWの任意の位置をX軸方向に沿って切削する。
【0036】
搬送機構90は、洗浄ユニット130に対してフレームユニットFUを搬入出する。搬送機構90は、支持台3に支持されている。搬送機構90は、搬送アーム100と、搬送アーム100をZ軸方向(鉛直方向)へ移動させる昇降駆動部91と、搬送アーム100をY軸方向(水平方向)へ移動させる水平駆動部92と、を備えている。
【0037】
搬送アーム100は、チャックテーブル60に保持されたフレームユニットFUのフレームFを吸引保持して、洗浄ユニット130へ搬入する。また、洗浄ユニット130に保持されたフレームユニットFUのフレームFを吸引保持して、ガイドレール50へ搬入する。
【0038】
なお、搬送アーム100の構成は、
図4に示す搬送アーム40の吸引保持機構402と同様である。即ち、搬送アーム100は、X軸方向に延びる第1アーム部と、第1アーム部に接続されたY軸方向に延びる一対の第2アーム部と、一対の第2アーム部の両端に設けられた計4つの吸着部を備えている。
【0039】
洗浄ユニット130は、切削ユニット70で切削されたウェーハWを洗浄し、乾燥する。洗浄ユニット130は、スピンナテーブル131に置かれたフレームユニットFUのウェーハWを洗浄水で洗浄し、さらに噴出したエアでウェーハWを乾燥させる。
【0040】
制御ユニット150は、処理装置1を統括的に制御する。制御ユニット150は、各種処理を実行するプロセッサと、各種パラメータやプログラム等を記憶する記憶部(メモリ)と、を含んで構成されている。制御ユニット150の記憶部には、制御プログラムの一部として、例えば、搬送アーム40及び搬送アーム100の搬出位置を設定する動作を制御するためのプログラムが記憶されている。
【0041】
以上のように構成された処理装置1における、カセット10から装置本体2へのフレームユニットFUの搬入から、装置本体2からカセット10へのフレームユニットFUの搬出までの流れは、以下の通りである。
【0042】
搬送機構30がカセットステージ20に載置されたカセット10からフレームユニットFUを引き出して装置本体2へ搬入し、一対のガイドレール50上に配置する。なお、ガイドレール50間の間隔は、切り欠き部FN間の間隔におよそ一致し、且つ、切り欠き部FN間の間隔以上の間隔となるように、予め調整される。これにより、一対のガイドレール50は、フレームユニットFUの仮置き場として機能する。
【0043】
次に、搬送機構30がガイドレール50に置かれているフレームユニットFUを保持して持ち上げ、図示しない間隔調整機構がガイドレール50の間隔を広げてフレームユニットFUが通過する隙間を確保する。隙間が確保されると、搬送機構30がフレームユニットFUを降下させ、ガイドレール50の間を通してフレームユニットFUをチャックテーブル60上へ配置する。
【0044】
チャックテーブル60は、搬送機構30によって搬入されたフレームユニットFUを保持すると、搬入出位置から切削位置まで-X軸方向へ移動する。その後、切削ユニット70がチャックテーブル60に保持されたフレームユニットFUのウェーハWに対して切削加工を行う。切削加工は、移動機構80によりウェーハWに対する切削ユニット70の位置を調整しながら行われる。
【0045】
切削加工が終了すると、チャックテーブル60は、切削位置から搬入出位置まで+X軸方向へ移動する。チャックテーブル60が搬入出位置へ戻ると、搬送機構90がチャックテーブル60から洗浄ユニット130へフレームユニットFUを搬出する。その後、洗浄ユニット130は、フレームユニットFUを洗浄および乾燥する。
【0046】
洗浄および乾燥が完了すると、搬送機構90が、間隔が調整された一対のガイドレール50上にフレームユニットFUを配置する。なお、ガイドレール50間の間隔は、搬送機構30がフレームユニットFUをガイドレール50上に配置する場合と同じである。
【0047】
最後に、搬送機構30がガイドレール50に配置されたフレームユニットFUを押し出して、カセット10へ搬出する。これにより、切削加工済みのウェーハWを有するフレームユニットFUがカセット10の収容部に収容される。
【0048】
ところで、搬送アーム40を備える搬送機構30でフレームFを挟持しながらフレームユニットFUを搬送する場合、フレームFはフレーム挟持部42によって片持ち状態で保持される。このため、フレーム挟持部42がフレームFに十分に近接していない位置でフレームFを薄く挟持すると、搬送時にフレームFが不安定になってしまい、望ましくない。一方で、フレーム挟持部42をフレームFに近づけすぎると、フレーム挟持部42がフレームFを挟持する前に、搬送アーム40がフレームFに衝突してしまう。特に、カセット10から搬出する場合にはカセット10の最奥部までフレームFを押し込んでしまい、カセット10、搬送アーム40、フレームFのそれぞれに強い衝撃を与えてしまう。このような動作は、カセット10、搬送アーム40、フレームFの変形や故障の原因となりうるため、望ましくない。従って、フレームFを確実かつ安定して搬出するためには、搬送アーム40を環状のフレームFに対して適切な位置に配置してフレーム挟持部42でフレームFをしっかりと挟持する必要がある。
【0049】
一方で、カセット10などの保持機構に保持されるフレームFのY軸方向の位置は必ずしも一定ではない。例えば、カセット10に収容されたフレームFのY軸方向の位置についてはカセット10の交換などによって変化し得る。そのため、従来、装置の導入時や設定変更時(例えば、カセット10の交換時)などに、フレームFがフレーム挟持部42に確実に挟持される搬送アーム40の位置を作業者が目視で確認して搬出位置として設定するといった搬送調整が行われるのが一般的である。
【0050】
同様に、搬送アーム40を備える搬送機構30でフレームFを吸引保持しながらフレームユニットFUを搬送する時に、吸着部463がフレームユニットFUのフレームFからはみ出した位置に配置されると、吸着部463に形成されている吸引源470に接続された孔がフレームFでしっかりと塞がれない。この場合、吸引源470が吸引動作を行っても吸着部463とフレームFの間の隙間から気体が漏れて(リークして)しまうため、吸着部463に十分な負圧が発生せず、フレームFを吸引保持することができないといった事態が生じ得る。なお、このような事態は、搬送アーム40の吸引保持機構402と同様の構成を有する搬送アーム100においても発生する。従って、フレームFを吸引保持して搬出するためには、吸着部を環状のフレームF上に正確に位置決めして、吸着部に十分な負圧を発生させる必要がある。
【0051】
一方で、ガイドレール50などの保持機構上に配置されるフレームFのY軸方向の位置は、装置の設定や部品の個体差などによって異なり得る。そのため、従来、装置の導入時や設定変更時(例えば、吸着部の交換時、搬送アーム40、搬送アーム100の交換時)などに、フレームF上に吸着部が配置される搬送アーム(搬送アーム40、搬送アーム100)の位置を作業者が目視で確認して搬出位置として設定するといった搬送調整が行われるのが一般的である。
【0052】
従来の処理装置では以上のような搬送調整が行われるのに対して、本実施形態に係る処理装置1は、作業者の追加の作業や判断を伴うことなく搬出位置の設定を行う。これにより、搬送調整の工数を削減することができる。
【0053】
以下、搬送アームがフレームFを挟持して保持機構から搬出する際の搬送アームの搬出位置の設定方法と、搬送アームがフレームFを吸引保持して保持機構から搬出する際の搬送アームの搬出位置の設定方法について具体的に説明する。
【0054】
まず、処理装置1(制御ユニット150)が行う搬出位置を設定する処理について、
図5から
図7を参照しながら説明する。
図5から
図7は、挟持機構401を用いる際における搬送アーム40の搬出位置の設定例について説明する図である。
図5から
図7を参照しながら説明する搬出位置の設定では、後述する、接近ステップと、挟持試行ステップと、判定ステップと、設定ステップの計4種類のステップが行われる。
【0055】
なお、
図5から
図7で説明する搬出位置を設定する方法(搬送アーム40の位置設定方法ともいう)の一例としては、カセット10からフレームFを搬出する際の搬出位置を設定する場合が挙げられるが、フレームFを保持する保持機構はカセット10に限らない。後述する位置設定方法は、搬送アーム40が他の保持機構からフレームFを挟持しながら搬出する場合に適用してもよい。例えば、保持機構であるガイドレール50からカセット10へフレームFを搬出する場合にも適用可能である。
【0056】
まず、制御ユニット150は、挟持機構401を備える搬送アーム40を初期位置へ移動する。より詳細には、制御ユニット150は、第1移動部43によって押さえプレート421と支持プレート422を十分に離間した状態とした後に、昇降駆動部31及び水平駆動部32によって搬送アーム40を初期位置へ移動する。初期位置は、例えば、
図5(a)に示すように、押さえプレート421と支持プレート422の間にフレームFを挟持するのに適した高さ(Z軸方向の位置)であり、且つ、フレーム挟持部42がフレームFに衝突しないと想定される位置(Y軸方向の位置)である。
【0057】
次に、制御ユニット150は、支持プレート422を押さえプレート421に近づけて、
図5(b)に示すように、初期位置においてフレームFがフレーム挟持部42に挟持されないことをセンサ44及びセンサ45の出力に基づいて確認する。即ち、制御ユニット150は、カセット10に保持されたフレームFが、Z軸方向(第1方向)において押さえプレート421と支持プレート422の間に位置し、且つ、Y軸方向(第1方向と直交する第2方向)において押さえプレート421と支持プレート422の間に位置しない状態にあることを確認する。
【0058】
その後、制御ユニット150は、接近ステップと、挟持試行ステップと、判定ステップとをこの順番に繰り返す。
【0059】
接近ステップでは、制御ユニット150は、
図5(c)に示すように、押さえプレート421と支持プレート422が十分に離間した状態で、水平駆動部32(第2移動部)を用いて搬送アーム40をフレームFへ近づける。接近ステップにおける搬送アーム40のY軸方向の移動距離Δd1は、搬送アーム40とフレームFの衝突を回避するため、フレーム挟持部42のY軸方向の長さによりも短い距離に予め設定されている。
【0060】
接近ステップ後の挟持試行ステップでは、制御ユニット150は、
図6(a)に示すように、第1移動部43を用いて押さえプレート421と支持プレート422の間のZ軸方向の間隔を縮めてフレームFの挟持を試行する。
図6(a)では、押さえプレート421と支持プレート422が接触するまで間隔を縮めているが、間隔は少なくともフレームFの厚さまで縮めればよい。
【0061】
挟持試行ステップ後の判定ステップでは、制御ユニット150は、センサ44及びセンサ45で検出した押さえプレート421と支持プレート422の位置関係に基づいてフレーム挟持部42がフレームFを挟持したか否かを判定する。
図6(a)では、センサ44及びセンサ45がどちらもON状態であり、制御ユニット150は、この結果からフレーム挟持部42がフレームFを挟持していないと判断する。
【0062】
制御ユニット150は、判定ステップにおいてフレーム挟持部42がフレームFを挟持していないと判断すると、上述した接近ステップと、挟持試行ステップと、判定ステップをこの順に繰り返す。なお、
図6(b)は、2回目の接近ステップの様子を示している。また、
図6(c)は、2回目の挟持試行ステップと判定ステップの様子を示している。
図6(c)では、センサ44がOFF状態でセンサ45がON状態であり、制御ユニット150は、この結果からフレーム挟持部42がフレームFを挟持していると判断する。
【0063】
制御ユニット150は、判定ステップにおいてフレーム挟持部42がフレームFを挟持していると判断すると、上述した接近ステップと、挟持試行ステップと、判定ステップの繰り返しを中止し、設定ステップを行う。
【0064】
設定ステップでは、制御ユニット150は、現在の搬送アーム40の位置である基準位置から搬送アーム40をさらに環状のフレームFに所定距離ΔD1だけ近づけた位置を、搬出位置として設定する。所定距離ΔD1は、予めフレーム挟持部42のY軸方向の長さに応じて設定されればよい。フレームFと搬送アーム40の衝突を回避するためには、所定距離ΔD1と接近ステップにおける移動距離Δd1の合計は、フレーム挟持部42のY軸方向の長さ以内に収まるように設定されることが望ましい。所定距離ΔD1は、特に限定しないが、例えば、フレーム挟持部42のY軸方向の長さの半分程度であり、接近ステップにおける移動距離Δd1よりも大きいことが望ましい。
【0065】
設定ステップが完了すると、制御ユニット150は、搬送アーム40を設定位置へ移動して、フレーム挟持部42にフレームFを挟持させる。
【0066】
より詳細には、まず、制御ユニット150は、
図7(a)に示すように、フレームFの挟持を解除する。つまり、制御ユニット150は、第1移動部43によって押さえプレート421と支持プレート422を十分に離間した状態とする。
【0067】
その後、制御ユニット150は、
図7(b)に示すように、水平駆動部32(第2移動部)を用いて搬送アーム40を所定距離ΔD1だけフレームFへ近づけて、搬出位置へ移動する。最後に、制御ユニット150は、
図7(c)に示すように、第1移動部43を用いて押さえプレート421と支持プレート422の間のZ軸方向の間隔を縮めてフレームFを挟持する。
【0068】
図5から
図7に示す搬出位置を設定する方法によれば、処理装置1が、搬送アーム40の位置を少しずつ変更しながらフレームFの挟持の試行を繰り返すことでフレームFの先端位置(搬送アーム40の基準位置)を特定し、特定された先端位置に基づいて決定したフレームFを確実に挟持可能な搬送アーム40の位置を搬出位置として設定することができる。従って、作業者による搬送調整作業を省略することが可能であり、搬送調整の工数を削減することができる。
【0069】
次に、処理装置1(制御ユニット150)が行う搬出位置を設定する処理について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、吸引保持機構402を用いる際における搬送アーム40の移動例について説明する図である。
図9は、測定結果の一例を示す図である。
図8及び
図9を参照しながら説明する搬出位置の設定では、後述する、移動ステップと、測定ステップと、検出ステップと、設定ステップの計4種類のステップが行われる。
【0070】
なお、
図8及び
図9で説明する搬出位置を設定する方法(搬送アームの位置設定方法ともいう)の一例として、搬送アーム40がガイドレール50からチャックテーブル60へフレームFを搬出する際の搬出位置を設定する場合を例に説明するが、フレームFを保持する保持機構はガイドレール50に限らない。後述する位置設定方法は、搬送アームが他の保持機構からフレームFを吸引保持して搬出する場合に適用してもよい。例えば、搬送アーム40がチャックテーブル60からフレームFを搬出する際や搬送アーム100が洗浄ユニット130からフレームFを搬出する際の搬出位置の設定にも適用可能である。
【0071】
まず、制御ユニット150は、搬送機構30を制御して搬送アーム40をY軸方向に移動し(移動ステップ)、移動後の位置でフレームFの吸引保持を試行して圧力計480で吸着部463の負圧を測定する(測定ステップ)。
【0072】
より詳細には、移動ステップ後の測定ステップにおいて、搬送アーム40を降下して吸着部463をガイドレール50に保持されたフレームFに接触させる。その後、制御ユニット150は、フレームFに接触した吸着部463に吸引力を発生させて吸着部463の負圧を測定する。
【0073】
制御ユニット150は、移動ステップと測定ステップを、例えば、
図8に示すように、吸着部463がフレーム領域上を横断する、つまり、フレームFの内縁IEと外縁OEを跨ぐように、繰り返す。フレーム領域は、フレームF上方の領域であり、フレームFの外縁OEと内縁IEで区画された、全体として環状をなす、帯状の領域である。なお、移動ステップにおける移動方向であるY軸方向は、フレーム領域上を横断する第1方向の一例である。
【0074】
図8のマルで示す位置201から位置209は、測定ステップが行われるときの吸着部463の位置を示している。
図8のバツで示す位置301から位置309は、測定ステップが行われるときの搬送アーム40の位置を示している。
図9は、搬送アーム40の各位置における負圧の測定結果である。
図8及び
図9では、計9か所で負圧の測定が行われた例が示されている。
【0075】
上記の繰り返し処理では、吸着部463がフレーム領域を横断するように、数mmずつ(例えば3mm)搬送アーム40をY軸方向へ移動して、複数の位置で測定が行われればよい。繰り返し処理において各測定位置を測定する順序については特に限定しない。
【0076】
例えば、まず、吸着部463がフレーム領域上に位置することを想定して予め設定された初期位置からフレーム領域に対して吸着部463が-Y軸方向にずれた位置(例えば、位置209)まで移動し、その後、その位置(例えば、位置209)から+Y軸方向にずれた位置(例えば、位置201)への所定間隔(例えば、3mm)ずつの+Y軸方向の移動と、移動後の位置での測定と、が繰り返し行われてもよい。また、例えば、初期位置からフレーム領域に対して吸着部463が+Y軸方向にずれた位置(例えば、位置201)まで移動し、その後、その位置(例えば、位置201)から-Y軸方向にずれた位置(例えば、位置209)への所定間隔ずつの-Y軸方向の移動と、移動後の位置での測定と、が繰り返し行われてもよい。また、初期位置から-Y軸方向にずれた位置(例えば、位置209)への所定間隔ずつの-Y軸方向の移動と、移動後の位置での測定と、が繰り返し行われ、その後初期位置へ戻って、初期位置から+Y軸方向にずれた位置(例えば、位置201)への所定間隔ずつの+Y軸方向の移動と、移動後の位置での測定と、が繰り返し行われてもよい。
【0077】
繰り返し処理が終了すると、制御ユニット150は、負圧の測定結果に基づいて、吸着部463がフレーム領域上からはみ出すときの搬送アーム40の位置とはみ出さないときの搬送アーム40の位置の境界を特定する検出位置を検出する(検出ステップ)。より詳細には、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域上からはみ出す搬送アーム40の位置とはみ出さない搬送アーム40の位置の外縁OE側の境界を特定する第1検出位置と、吸着部463がフレーム領域上からはみ出す搬送アーム40の位置とはみ出さない搬送アーム40の位置の内縁IE側の境界を特定する第2検出位置と、を検出する。
【0078】
制御ユニット150は、測定結果に基づいて、各測定ステップで測定された複数の吸着部463(この例では、4つの吸着部463)の負圧の平均値を算出することが望ましい。また、制御ユニット150は、負圧の平均値を用いて第1検出位置と第2検出位置を検出することが望ましい。即ち、検出ステップは、測定結果に基づいて、第1検出位置と第2検出位置の検出に用いられる、各測定ステップで測定された複数の吸着部463の負圧の平均値を算出する平均値算出ステップを含むことが望ましい。
【0079】
平均値に基づいて第1検出位置と第2検出位置を検出することで、制御ユニット150は、複数の吸着部463の少なくとも1つでリークが発生する位置をリークが発生しない位置と誤認することを回避することができる。このため、第1検出位置と第2検出位置を適切に検出可能であり、ひいては後述する設定ステップにおいて搬出位置を適切に設定することが可能となる。
【0080】
なお、吸着部463がフレーム領域上からはみ出すときの搬送アーム40の位置とは、吸引動作時において、吸着部463とフレームFの間に生じた隙間から気体がリークする搬送アーム40の位置のことをいう。吸着部463がフレーム領域上からはみ出さないときの搬送アーム40の位置とは、吸引動作時において、吸着部463とフレームFの間から気体がリークしない搬送アーム40の位置のことをいう。
【0081】
吸着部463がフレーム領域からはみ出しているか否かの判断方法は、特に限定しないが、例えば、負圧の絶対値を閾値と比較することで判断してもよい。例えば、
図9に示すように、吸着部463がフレーム領域上からはみ出していないときに発生する吸着部463の負圧の値よりも小さく、吸着部463がフレーム領域上からはみ出しているときに発生する負圧の値よりも大きい値を、予め閾値THとして設定してもよい。その上で、制御ユニット150は、測定された負圧が閾値TH未満であれば吸着部463がフレーム領域上からはみ出していると判断し、測定された負圧が閾値THを超えていれば吸着部463がフレーム領域上からはみ出していないと判断して、検出位置を検出してもよい。
【0082】
この判断方法を用いた場合、
図8及び
図9に示すように、実線で示した位置304から位置306では、吸着部463はフレーム領域からはみ出していないと判断され、破線で示したそれ以外の位置(位置301から位置303、位置307から位置309)では、吸着部463はフレーム領域からはみ出していると判断される。なお、
図8では、位置304から位置306に対応する吸着部463の位置204から位置206も実線で示し、位置301から位置303、位置307から位置309に対応する吸着部463の位置201から位置203、位置207から位置209は破線で示している。
【0083】
吸着部463がフレーム領域からはみ出しているか否かの判断は、測定位置に対する負圧の変化に基づいて行われてもよい。例えば、隣接する測定位置と比較して負圧が急激に低下した測定位置をフレーム領域からはみ出した位置として判断し、その隣接する測定位置をはみ出していない位置として判断してもよい。負圧が急激に低下したか否かの判断は、例えば、負圧の変化量を示す閾値を用いて行われてもよい。また、吸着部463がフレーム領域からはみ出しているか否かの判断は、負圧の変化量と負圧の絶対値の両方を用いて、行われてもよい。
【0084】
第1検出位置、第2検出位置は、はみ出す位置とはみ出さない位置の境界を特定可能な位置であればよい。例えば、制御ユニット150は、はみ出す位置と隣接したはみ出さない位置(例えば、位置304、位置306)を第1検出位置、第2検出位置として検出すればよい。
【0085】
第1検出位置と第2検出位置が検出されると、制御ユニット150は、検出ステップで検出した第1検出位置と第2検出位置の間の位置を搬出位置として設定する(設定ステップ)。第1検出位置と第2検出位置の間の位置を搬出位置として設定することで、吸着部463がフレーム領域からはみ出さない位置が搬出位置として設定されるため、フレームFを確実に吸引保持することが可能となる。
【0086】
なお、上述したように、検出ステップにおいて、制御ユニット150がはみ出さない位置を検出位置として検出する場合には、設定ステップで搬出位置として設定される第1検出位置と第2検出位置の間の位置は、第1検出位置と第2検出位置を含んでもよく、また、含まなくてもよい。
【0087】
さらに、設定ステップにおいて、制御ユニット150は、第1検出位置と第2検出位置の中間の位置を搬出位置として算出することが望ましく、算出した搬出位置を設定することが望ましい。即ち、設定ステップは、第1検出位置と第2検出位置の中間の位置を搬出位置として算出する位置算出ステップを含むことが望ましい。第1検出位置と第2検出位置の中間の位置を搬出位置として設定することで、フレームFの内縁IE側又は外縁OE側に偏りすぎることなく吸着部463を配置することができる。このため、搬送アーム100がフレームFをより安定して保持することが可能となる。
【0088】
図8及び
図9に示す搬出位置を設定する方法によれば、処理装置1が、搬送アーム40の位置を少しずつ変更しながらフレームFの吸引保持の試行を繰り返すことで吸引保持可能な位置を特定して搬出位置として設定することができる。従って、作業者による搬送調整作業を省略することが可能であり、搬送調整の工数を削減することができる。
【0089】
図10及び
図11は、吸引保持機構402を用いる際における搬送アーム40の搬出位置の設定例について説明する図である。
図8及び
図9では、一定間隔ずつ異なる複数の測定位置での測定結果に基づいて、検出位置を検出する例を示している。ただし、移動ステップでは、複数の異なる間隔の移動が行われてもよい。以下、
図10及び
図11を参照しながら、複数の異なる間隔の移動を組み合わせることで、精度よく検出位置を検出して搬出位置を設定する例について説明する。
【0090】
図10(a)は、吸着部463を備える搬送アーム40が初期位置まで移動した様子を示している。初期位置は、吸着部463がフレーム領域上に位置することを想定して予め設定された位置である。搬送アーム40が初期位置へ移動すると、制御ユニット150は、
図10(b)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。
【0091】
制御ユニット150は、負圧の測定結果に基づいて、吸着部463がフレーム領域からはみ出すか否かを判定する。制御ユニット150は、例えば、負圧が閾値以上であれば吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定し、負圧が閾値未満であれば吸着部463がフレーム領域からはみ出すと判定する。閾値と比較する負圧は、複数の吸着部463の負圧の平均値であることが望ましい。この例では、初期位置では、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定する。
【0092】
制御ユニット150は、吸引動作を中止して、
図10(c)に示すように、吸着部463がフレームFと接触しない高さまで搬送アーム100を上昇させた後に搬送アーム40を-Y軸方向へ所定距離ΔD2(例えば、3mm)だけ移動する。
【0093】
移動後、制御ユニット150は、
図10(d)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から-3mmのこの位置でも、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定する。
【0094】
制御ユニット150は、吸引動作を中止して、
図10(e)に示すように、吸着部463がフレームFと接触しない高さまで搬送アーム40を上昇させた後に搬送アーム40を-Y軸方向へさらに所定距離ΔD2(例えば、3mm)だけ移動する。
【0095】
移動後、制御ユニット150は、
図10(f)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から-6mmのこの位置において、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出すと判定する。
【0096】
制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出すと判定する、つまり、吸着部463でリークが発生していると判定すると、搬送アーム40を反対方向へより小さな間隔で移動し、吸着部463がフレーム領域上にある搬送アーム40の位置を探索する。
【0097】
具体的には、制御ユニット150は、吸引動作を中止して、
図11(a)に示すように、吸着部463がフレームFと接触しない高さまで搬送アーム40を上昇させた後に搬送アーム40を+Y軸方向へ所定距離ΔD2よりも小さな所定距離Δd2(例えば、1mm)だけ移動する。
【0098】
移動後、制御ユニット150は、
図11(b)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から-5mmのこの位置において、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出すと判定する。
【0099】
制御ユニット150は、吸引動作を中止して、
図11(c)に示すように、吸着部463がフレームFと接触しない高さまで搬送アーム40を上昇させた後に搬送アーム40を+Y軸方向へさらに所定距離Δd2(例えば、1mm)だけ移動する。
【0100】
移動後、制御ユニット150は、
図11(d)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から-4mmのこの位置において、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定する。
【0101】
以上の処理により、制御ユニット150は、初期位置から-5mmと-4mmの間に吸着部463がはみ出す位置とはみ出さない位置の境界があることを特定し、境界を特定する第2検出位置として初期位置から-4mmの位置を検出する。
【0102】
なお、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定すると、搬送アーム40を反対方向へさらに小さな間隔(例えば、0.5mm)で移動し、吸着部463がフレーム領域上からはみ出す搬送アーム40の位置を探索してもよい。このように、移動方向を反転しながらはみ出さない位置とはみ出す位置を繰り返し探索することで、境界をより狭い範囲内に絞り込むことができる。
【0103】
その後、制御ユニット150は、搬送アーム40を初期位置へ戻し、+Y軸方向についても同様の処理を繰り返して、第1の検出位置を検出する。つまり、制御ユニット150は、所定距離ΔD2ずつ+Y軸方向へ移動して負圧を測定し、フレーム領域からはみ出す位置を見つけると、より小さな所定距離Δd2ずつ-Y軸方向へ移動して負圧を測定し、フレーム領域からはみ出さない位置を見つける。
【0104】
具体的には、制御ユニット150は、
図11(e)に示すように、搬送アーム40を+Y軸方向へ所定距離ΔD2(例えば、3mm)だけ移動し、その後、
図11(f)に示すように、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から+3mmのこの位置において、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出すと判定する。
【0105】
制御ユニット150は、吸引動作を中止して、吸着部463がフレームFと接触しない高さまで搬送アーム40を上昇させた後に搬送アーム40を-Y軸方向へ所定距離Δd2(例えば、1mm)だけ移動し、吸着部463がフレームFと接触する高さまで搬送アーム40を降下させ、吸引動作を開始して、吸着部463の負圧を測定する。この例では、初期位置から+2mmのこの位置において、制御ユニット150は、吸着部463がフレーム領域からはみ出さないと判定する。
【0106】
以上の処理により、制御ユニット150は、初期位置から+2mmと+3mmの間に吸着部463がはみ出す位置とはみ出さない位置の境界があることを特定し、境界を特定する第1検出位置として初期位置から+2mmの位置を検出する。
【0107】
図10及び
図11に示すように、移動ステップにおいて複数の所定間隔を用いて境界を特定することで、短い探索時間で精度よく検出位置を検出することができる。従って、第1検出位置と第2検出位置の中間の位置を搬出位置として設定する場合、フレームの外縁OEと内縁IEのより真ん中部分を吸引保持することが可能となる。これにより、搬送アーム40によってより安定した搬送を実現することができる。
【0108】
図5から
図11を参照しながら説明した搬出位置を設定する方法によれば、処理装置1は、フレームFを搬出するための前処理として搬出位置を設定することで、フレームFを確実に保持して保持機構から搬出することができる。このような利点があるため、処理装置1は、カセット10から装置本体2へフレームユニットFUが搬入されてから装置本体2からカセット10へフレームユニットFUが搬出されるまでの間に行われる一連の搬送処理を実施する際に、各搬送処理で使用される搬送アーム(搬送アーム40と、搬送アーム100)の搬出位置の設定を自動で実施しても良い。
【0109】
具体的には、処理装置1は、カセット10から装置本体2へフレームFを搬送する際の搬送アーム40の搬出位置、ガイドレール50からチャックテーブル60へフレームFを搬送する際の搬送アーム40の搬出位置、チャックテーブル60から洗浄ユニット130へフレームFを搬送する際の搬送アーム100の搬出位置、洗浄ユニット130からガイドレール50へフレームFを搬送する際の搬送アーム100の搬出位置、ガイドレール50からカセット10へ搬送する際の搬送アーム40の搬出位置を、自動的に設定してもよい。これにより、吸引保持に関する搬送調整が一括して行われ、全ての搬出位置が自動的に設定されるため、作業者が調整作業について意識する必要がない。
【0110】
上述した搬出位置の自動設定は、処理装置1に対する設定変更(例えば、カセット10、搬送アーム40、搬送アーム100の交換)などの所定の行為を契機にして行われてもよい。これにより、必要な都度一度だけ設定が行われることになるため、必要以上に設定作業が繰り返されることによる処理装置1のスループットの低下を回避することができる。
【0111】
本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0112】
上述した実施形態では、テープTを介してウェーハWがフレームFに固定されたフレームユニットFUのフレームFを吸引保持する例を示したが、フレームF単体が処理装置1内で搬送されてもよく、フレームF単体を搬送する時の搬出位置の設定に上述した方法が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上に説明したように、本発明の搬送アームの位置設定方法によれば、搬送物を挟持して保持する搬送アームの搬出位置に関する作業者による調整作業を省略可能であり、搬送調整の工数を削減することが可能である。このため、搬送アームを含む処理装置における処理のさらなる自動化に有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 :処理装置
10 :カセット
30、90 :搬送機構
31、91 :昇降駆動部
32、92 :水平駆動部
40、100 :搬送アーム
42 :フレーム挟持部
43 :第1移動部
44、45 :センサ
50 :ガイドレール
60 :チャックテーブル
100 :搬送アーム
150 :制御ユニット
401 :挟持機構
402 :吸引保持機構
421 :押さえプレート
422 :支持プレート
463 :吸着部
F :フレーム
FU :フレームユニット
IE :内縁
OE :外縁
T :テープ
W :ウェーハ