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特開2025-22132成膜装置、電子デバイスの製造方法及び成膜方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022132
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】成膜装置、電子デバイスの製造方法及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
C23C14/24 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126420
(22)【出願日】2023-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029AA29
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
(57)【要約】
【課題】基板とマスクとの間にパーティクルが入り込むことを抑制することが可能な技術を提供すること。
【解決手段】複数の開口部を有するマスクを介して蒸着物資を基板の画素形成領域に成膜する成膜装置は、画素形成領域の周縁領域のうち少なくとも一部の接触領域を載置する載置部を備える。載置部は、画素形成領域と、接触領域との間で、接触領域からマスク側に画素形成領域の面が突出するように壁部が形成されている基板を載置する。
【選択図】図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有するマスクを介して蒸着物資を基板の画素形成領域に成膜する成膜装置であって、
前記画素形成領域の周縁領域のうち少なくとも一部の接触領域を載置する載置部を備え、
前記載置部は、前記画素形成領域と、前記接触領域との間で、前記接触領域から前記マスク側に前記画素形成領域の面が突出するように壁部が形成されている前記基板を載置することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記壁部が形成された前記基板は、前記画素形成領域の厚さに比べて、前記接触領域の厚さが薄い段差形状を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記基板はシリコンウエハであり、前記壁部は、半導体製造プロセスを用いて当該基板に形成された構造体であることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記画素形成領域と前記接触領域との間には、当該画素形成領域から前記マスク側に突出した突出部が設けられていることを特徴する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記載置部には、前記マスクの周縁領域のうち少なくとも一部の接触領域が載置され、
前記載置部は、前記画素形成領域と対向する前記マスクの面が、前記マスクの接触領域から前記基板側に突出するように壁部が形成されている前記マスクを載置することを特徴する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記マスクの壁部は、前記基板の壁部と前記基板の端部との距離に比べて、前記マスクの壁部と前記マスクの端部との距離が長くなる位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記壁部が形成された前記マスクは、前記画素形成領域と対向する前記マスクの領域の厚さに比べて、前記マスクの接触領域の厚さが薄い段差形状を有することを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記載置部には、前記接触領域と当接する載置面の近傍の位置にパーティクルを捕集する捕集部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記捕集部は、帯電部材を備え、所定の電圧を印加することにより帯電した前記帯電部材の静電気力によって前記パーティクルを捕集することを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記パーティクルの量を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記パーティクルの量に基づいて、所定の電圧を制御する処理部と、
を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記載置面の近傍の位置には、前記捕集部として、粘着力により前記パーティクルを捕集する粘着部材が貼付されていることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の成膜装置を用いて基板に成膜する成膜工程を有する電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
複数の開口部を有するマスクを介して蒸着物資を基板の画素形成領域に成膜する成膜装置の成膜方法であって、
前記画素形成領域の周縁領域のうち少なくとも一部の接触領域を、前記成膜装置の載置部に載置する載置工程を有し、
前記載置工程では、前記画素形成領域と、前記接触領域との間で、前記接触領域から前記マスク側に前記画素形成領域の面が突出するように壁部が形成されている前記基板が、前記載置部に載置されることを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に成膜する技術に関し、成膜装置、電子デバイスの製造方法及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板とマスクとのアライメントを行い、その後、マスクを介して基板に対して蒸着物質を蒸着し、成膜する技術が知られている。成膜は、アライメントが行われた基板とマスクとを互いに密着した状態で行われる。例えば、特許文献1には、載置部に載置された基板とマスクとの位置合わせを行い、成膜を行う成膜装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022―007538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板とマスクとの密着性の向上やマスクの保護の観点で、基板と載置部との接触によって発生し得るパーティクルが、基板とマスクとの間に入り込むことを抑制することが好ましい。
【0005】
本発明は、基板とマスクとの間にパーティクルが入り込むことを抑制することが可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の成膜装置は、複数の開口部を有するマスクを介して蒸着物資を基板の画素形成領域に成膜する成膜装置であって、
前記画素形成領域の周縁領域のうち少なくとも一部の接触領域を載置する載置部を備え、前記載置部は、前記画素形成領域と、前記接触領域との間で、前記接触領域から前記マスク側に前記画素形成領域の面が突出するように壁部が形成されている前記基板を載置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板とマスクとの間にパーティクルが入り込むことを抑制することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3A】基板及びマスクの斜視図及びマスクの部分拡大図。
図3B】基板及びマスクの部分拡大図。
図3C】基板及びマスクの部分拡大図。
図4】(A)は図3AのA-A線断面図、(B)は図3AのB-B線断面図、(C)は図3AのC-C線断面図。
図5】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図6】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図10】(A)及び(B)は基板の別の構成例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ライン100の構成の一部を示す模式図である。各図において、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示す。図1の製造ラインは、例えば、有機EL表示装置の発光素子の製造に用いられる。製造ライン100は、平面視で八角形の形状を有する搬送室120を備える。搬送室120には搬送路110から基板101が搬入され、また、成膜済みの基板101は搬送室120から搬送路111へ搬出される。
【0011】
搬送室120の周囲には、基板101に対する成膜処理が行われる複数の成膜装置1が配置されている。各成膜装置1には搬送室130が隣接して配置されている。平面視で八角形の形状を有する搬送室130の周囲には、マスク102が収納される格納室140が配置されている。
【0012】
搬送室120には、基板101を搬送する搬送ユニット121が配置されている。本実施形態の搬送ユニット121は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部に基板101を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット121は、搬送路110から搬入される基板101を成膜装置1へ搬送する搬入動作と、成膜装置1で成膜済みの基板101を成膜室1から搬送路111へ搬送する搬出動作とを行う。
【0013】
各搬送室130には、マスク102を搬送する搬送ユニット131が配置されている。本実施形態の搬送ユニット131は、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部にマスク102を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット131は、格納室140から成膜装置1へマスク102を搬送する動作、成膜装置1から格納室140へマスク102を搬送する動作を行う。
【0014】
<成膜装置>
図2は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、基板101に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク102を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板101の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。特に本実施形態では、基板101は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)が形成されたガラス基板や半導体素子が形成されたシリコンウエハである。
【0015】
蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板101に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0016】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ2を有する。真空チャンバ2の内部空間は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ2は不図示の真空ポンプに接続されている。真空チャンバ2の内部空間には、蒸着ユニット10が配置されている。蒸着ユニット10は、蒸着物資(成膜材料)を上方に放出する蒸着源(成膜源)を備える。蒸着ユニット10の上方には蒸着物質の放出の規制と規制解除を行うシャッタ10aが配置されている。シャッタ10aは不図示の開閉機構により開閉される。図2はシャッタ10aが閉状態の場合を示しており、蒸着ユニット10による蒸着物質の放出が規制される。蒸着ユニット10の上方には、また、防着板2aが配置されている。防着板2aは、真空チャンバ2の内部空間の上部に配置される以下の構成に、蒸着物質が不必要に付着することを防止する。
【0017】
真空チャンバ2の内部空間には、基板101を水平姿勢で支持する基板支持プレート3が設けられている。本実施形態の場合、基板支持プレート3は静電チャックであり、その下面に静電気力により基板101を吸着し、保持する。基板支持プレート3上には冷却プレート4が固定されている。冷却プレート4は例えば水冷機構等を備えており、基板支持プレート3を介して成膜時に基板101を冷却する。
【0018】
基板支持プレート3と冷却プレート4とは、支持部5aを介してZ方向に変位可能に磁石プレート5に吊り下げられている。磁石プレート11は、磁力によってマスク102を引き寄せるプレートである。成膜時に基板101は磁石プレート11とマスク102との間に磁力によって挟まれるので、基板101とマスク102の密着性を向上することができる。
【0019】
成膜装置1は、成膜時にマスク102を支持するマスク支持ユニット6を備える。マスク支持ユニット6は、本実施形態の場合、搬送ユニット121と基板支持プレート3との間の基板101の移載動作も行う。マスク支持ユニット6は、X方向に離間した一対の支持部材6aを備える。各支持部材6aは対応するアクチュエータ6bにより昇降される。本実施形態ではアクチュエータ6bを支持部材6a毎に設けたが、一対の支持部材6aを一つのアクチュエータ6bで昇降してもよい。アクチュエータ6bは例えば電動シリンダや、電動ボールねじ機構である。支持部材6aは、その下端部に爪部F1(載置部)を備えている。基板101やマスク102は、その周縁部が爪部F1上に載置される。図2の例ではマスク102が爪部F1上に載置されている。一対の支持部材6aは同期的に昇降され、基板101やマスク102を昇降する。
【0020】
成膜装置1は、基板101とマスク102とのアライメントを行うアライメントユニット8を備える。アライメント装置8は、駆動機構80と、複数の計測ユニットSRとを備える。駆動機構80は、距離調整ユニット81と、支持軸82と、架台83と、位置調整ユニット84と、を備える。
【0021】
距離調整ユニット81は、支持軸82をZ方向に昇降する機構であり、例えば、電動シリンダや、電動ボールねじ機構を備える。支持軸82の下端部には磁石プレート5が固定されており、支持軸82の昇降によって、磁石プレート5を介して基板支持プレート3が昇降される。基板支持プレート3を昇降することで、基板101とマスク102との距離を調整し、基板支持プレート3に支持された基板101とマスク102とを基板101の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット81は、基板101とマスク102とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット81によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニット81は、基板101の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。距離調整ユニット81は、架台83を介して位置調整ユニット84に搭載されている。
【0022】
位置調整ユニット84は、基板支持プレート3をX-Y平面上で変位することにより、マスク102に対する基板101の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット80は、マスク102と基板101の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット80は、基板支持プレート6をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位することができる。本実施形態では、マスク102の位置を固定し、基板101を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク102を変位させて調整してもよく、或いは、基板101とマスク102の双方を変位させてもよい。
【0023】
位置調整ユニット84は、固定プレート20aと、可動プレート20bとを備える。固定プレート84aと、可動プレート84bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート84aは真空チャンバ2の上壁部20上に固定されている。固定プレート20aと、可動プレート20bとの間には、固定プレート20aに対して可動プレート20bをX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0024】
可動プレート84b上には、フレーム状の架台83が搭載されており、架台83には距離調整ユニット81が支持されている。可動プレート84bが変位すると、架台83及び距離調整ユニット81が一体的に変位する。これにより基板101をX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部20には、支持軸82、支持部材6a及び7aが通過する開口部が形成されている。これらの開口部は不図示のシール部材(ベローズ等)によってシールされ、真空チャンバ2内の気密性が維持される。
【0025】
計測ユニットSRは、基板101とマスク102の位置ずれを計測する。本実施形態の計測ユニットSRは画像を撮像する撮像装置(カメラ)である。計測ユニットSRは、上壁部20に配置され、真空チャンバ2内の画像を撮像可能である。基板101とマスク102にはそれぞれアライメントマーク(不図示)が形成されている。計測ユニットSRは、基板101とマスク102の各アライメントマークを撮影する。各アライメントマークの位置により基板101とマスク102との位置ずれ量を演算し、位置調整ユニット84によって位置ずれ量を解消するように基板101とマスク102との相対位置を調整する。
【0026】
制御装置9は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置9は、処理部90、記憶部91、入出力インタフェース(I/O)92及び通信部93を備える。処理部90は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部92に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部91は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部90が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O92は、処理部90と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部93は通信回線を介して上位装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0027】
<基板及びマスクの構成例>
図3A図3B及び図3Cは基板101、マスク102の構成例を示す。基板101は円形のシリコンウエハであり、成膜等の後、複数のチップ101aが基板101から切り出される。マスク102は基板101と同様に円形の部材であり、各チップ101aに対応したマスク部102bと、マスク部102bの周囲のフレーム部102aとを含む。マスク部102bには、基板101に蒸着される蒸着物質が通過する複数の開口部(貫通孔)102cが形成されており、開口部102cの配置によって基板101上の成膜パターンが規定される。
【0028】
図3Bは基板101及びマスク102の部分拡大図であり、図3Bの(A)は、基板101をZ方向から見た平面図(XY平面図)であり、画素形成領域300内に複数のチップ101aに対応する各画素が形成される。画素形成領域300の周囲には、画素形成領域300を囲む領域(周縁領域310)が設けられている。爪部F1(載置部)は、左右方向(X方向)に移動して、基板101の周縁領域310のうち少なくとも一部の領域(接触領域311)を載置する。図3Bの(A)に示すように、基板101は、左右方向において、複数の接触領域311において爪部F1に載置される。例えば、図3Bの(A)に示すように、左右に2箇所ずつ、合わせて4箇所の接触領域311で爪部F1に載置されるようにしてもよい。
【0029】
図3Bの(B)は、基板101をY方向から見た側面図(XZ側面図)であり、画素形成領域300と、接触領域311と、の間には、接触領域311からマスク102側(マスク側)に画素形成領域300の面が突出するように壁部312が形成されている。図3Bの(B)において、壁部312の高さはH1であり、基板101の壁部312と基板101の端部との距離(長さ)はL1である。壁部312が形成された基板101は、画素形成領域300の厚さH0に比べて、接触領域311の厚さ(H0-H1)が薄い段差形状を有する。爪部F1に載置される各接触領域311において、同様の壁部312が形成されており、同様の段差形状が設けられている。基板101はシリコンウエハであり、壁部312は、半導体製造プロセスを用いて基板101に形成された構造体として設けることが可能である。
【0030】
図3Bの(C)は、基板101及びマスク102をY方向から見た側面図(XZ側面図)であり、基板101に対応する位置関係におけるマスク102をY方向から見た側面図である。複数のマスク部102bが形成されているマスク領域102eの周囲には、マスク領域102eを囲む領域(周縁領域410)が設けられている。爪部F1は、左右方向(X方向)に移動して、マスク102の周縁領域410のうち少なくとも一部の領域(接触領域411)を載置する。
【0031】
マスク102には、基板101の画素形成領域300と対向するマスク102の面(マスク領域102eの面)が、接触領域411から基板101側(基板側)に突出するように壁部412が形成されている。図3Bの(C)において、壁部412の高さはH2であり、マスク102の壁部412の高さH2は、基板101の壁部312の高さH1と同じでもよいし、基板101の壁部312の高さH1より高く形成してもよい。壁部412が形成されたマスク102は、マスク領域102eの厚さに比べて、接触領域411の厚さが薄い段差形状を有する。
【0032】
マスク102の壁部412とマスク102の端部との距離(長さ)はL2である。マスク102の壁部412は、基板101の壁部312と基板101の端部との距離L1に比べて、マスク102の壁部412とマスク102の端部との距離L2が長くなる位置(L2>L1)に形成されている。壁部412は、マスクの製造プロセスを用いてマスク102に形成することが可能である。
【0033】
図3Cは、基板101及びマスク102の部分拡大図であり、図3Cの(A)は、比較例における基板101及びマスク102の部分拡大図である。比較例の構成では、基板101の壁部312、及びマスク102の壁部412は設けられていない。基板101やマスク102が爪部F1に載置される際に爪部F1と接触すると、接触の際の摩擦や摩耗により、パーティクルPが発生し得る。比較例では、発生したパーティクルPが画素形成領域300側に侵入しやすい構成になっている。発生したパーティクルPが画素形成領域300とマスク102の面(マスク領域102eの面)との間に付着すると、密着性が阻害される要因になり得る。また、パーティクルPのサイズによっては、画素形成領域300とマスク102との間で、成膜時において正確な位置関係を確保することができなくなり、パターンのボケの要因になり得る。
【0034】
図3Cの(B)は、実施形態に係る基板101及びマスク102の部分拡大図である。基板101やマスク102が爪部F1に載置される際に爪部F1との接触により、パーティクルPが発生した場合であっても、パーティクルPは壁部312の段差形状で保持される(留まる)ため、パーティクルPが画素形成領域300側に侵入(混入)することを抑制することができる。本実施形態の構成によれば、画素形成領域300内にパーティクルPが侵入することを抑制することにより、画素形成領域300とマスク102の面(マスク領域102eの面)との間の密着性を向上させることができる。これにより、画素形成領域300とマスク102との間で、成膜時において正確な位置関係を確保することができ、より高精度のパターンを形成することが可能になる。
【0035】
図3Cの(C)は、図3Cの(B)の構成の変形例を示す図であり、爪部F1(載置部)には、基板101が載置される際に発生し得るパーティクルPを捕集する捕集部350が設けられている。捕集部350は、爪部F1が接触領域311と当接する載置面SFの近傍の位置に設けられている。
【0036】
捕集部350の構成例としては、静電気力によりパーティクルPを捕集(引き寄せる)ことができる。例えば、捕集部350の筐体の内部に帯電シート(帯電部材)を備え、帯電シートに所定の電圧を印加することにより、帯電シートが帯電し、静電気力によってパーティクルを捕集するようにしてもよい。
【0037】
処理部90は、成膜装置1の電源から帯電シートに所定の電圧を印加するように制御することができる。例えば、パーティクルPの量(数や濃度)を検出する検出部(センサ)を成膜装置1内に設けておき、処理部90が、検出部で検出されたパーティクルPの量に基づいて、所定の電圧を制御するようにしてもよい。
【0038】
また、捕集部350の構成例として、パーティクルを粘着力によって捕集する粘着部材として構成してもよい。例えば、載置面SFの近傍の位置には、捕集部350として、粘着力によりパーティクルPを捕集する粘着部材を貼付してもよい。この他、静電気力を用いる構成と併せて、捕集部350の筐体の外部に粘着部材を貼付し、筐体の内部の帯電シート(帯電部材)によって静電気力を発生させて、粘着部材の粘着力と静電気力とに基づいてパーティクルを捕集するようにしてもよい。
【0039】
また、パーティクルPが画素形成領域300側に侵入することを抑制する構成として、画素形成領域300と接触領域311との間に、画素形成領域300からマスク102側に突出した突出部360を設けてもよい。突出部360は半導体製造プロセスにより、基板101と一体に形成してもよいし、別体の部材を設けてもよい。基板101とマスク102との密着性を高めるために、突出部360の高さは、例えば、基板101の壁部312の高さH1より高く、基板101の壁部312の高さH1とマスク102の壁部412の高さH2とを合わせた高さ(H1+H2)以下であればよい。
【0040】
突出部360を設ける位置は、画素形成領域300と接触領域311との間に限られず、画素形成領域300を囲む領域に設けるようにしてもよい。この場合、突出部360とマスク102との接触を避けるように、マスク領域102eを囲む領域(周縁領域410)に凹部を設けるようにすればよい。
【0041】
図3Cの(C)では、突出部360を基板101側に設けている例を示しているが、この例に限られず、突出部360をマスク102側に設けてもよい。
【0042】
また、基板101に壁部312を設けずに、突出部360を設けてもよい。この場合、突出部360の高さは、基板101とマスク102との密着性を高めるために、マスク102の壁部412の高さH2以下であればよい。
【0043】
図4(A)~図4(C)は、図3AのA-A線断面図、B-B線断面図及びC-C線断面図である。マスク102は、マスク本体1020と、マスク本体1020に形成された磁性体1021とを備える。マスク本体1020は例えばシリコン(Si)等の非磁性材料からなる。マスク本体1020としてシリコンウエハを用いることで、半導体製造技術の応用によりより微細で精密な開口部102cを形成することができる。フレーム部102aは相対的に厚肉の厚肉部であり、マスク部102bは相対的に薄肉の薄肉部である。フレーム部102aはマスク部102bよりも剛性が高い。マスク102の全体の剛性を大きく低下させることなく、マスク部102bを薄く形成することができる。
【0044】
マスク本体102の表面には、複数のスリット102dが形成されている。各スリット102dはマスク部102b内に複数形成された、平面視で十字形状の有底溝である。スリット102dを形成したことによって、マスク本体102に応力が作用した場合に、スリット102での変形を許容してマスク本体102のひび割れ等の破損を防止できる。
【0045】
磁性体1021は、例えば、ニッケル(Ni)等の磁性材料の薄膜である。本実施形態では、上記の磁石プレート5の磁力によって成膜時にマスク102と基板101とを密着させる。本実施形態のようにマスク本体1020を非磁性体で構成した場合、そのままでは磁力による密着作用を得られない。磁性体1021をマスク本体1020に形成したことで、磁石プレート5の磁力が磁性体1021に作用し、磁力によるマスク102と基板101との密着作用を得られる。
【0046】
本実施形態の磁性体1021は、マスク本体1020の表面に形成されており、特に、基板101と重なる面に形成されている。磁力によるマスク102と基板101との密着作用を得られる。また、磁性体1021は個々の開口部102cを囲むように形成されており、特に本実施形態では全体として縦横の直線が互いに直交した格子状に形成されている。開口部102cの周囲において磁力による基板101との密着作用を向上でき、開口部102cを通って放出される蒸着物質を基板101の目的とする部位に的確に蒸着できる。
【0047】
<制御例>
制御ユニット9の処理部90が実行する成膜装置1の制御例について説明する。図5(A)~図9(B)は成膜装置1の動作説明図であり、基板101の搬入から、成膜し、搬出するまでの例を示す。ここで、基板101及びマスク102の構成は図3B図3Cで説明したとおりである。
【0048】
図5(A)は基板101を真空チャンバ2内に搬入した状態を示す。基板101は搬送ロボット121により基板支持プレート3の下方に搬送される。基板支持プレート3の下面の基板吸着面3aは水平である。次にマスク支持ユニット6によって搬送ロボット121から基板支持プレート3へ基板101を移載する。図5(B)はその動作を示している。支持部材6aを上昇することにより、基板101の周縁が爪部F1に載置され、基板101は搬送ロボット121から上昇し、かつ、基板支持プレート3の基板吸着面3aに押し付けられる。基板支持プレート3の静電チャックを作動して基板101を吸着し、保持する。
【0049】
続いてマスク102を真空チャンバ2内に搬入する。図6(A)はマスク102を真空チャンバ2内に搬入した状態を示す。マスク102は搬送ロボット131によって格納室140から真空チャンバ2内に搬入される。マスク102は基板101の真下に位置する。次にマスク102を搬送ロボット131からマスク支持ユニット6に移載し、アライメント位置に位置させる。図6(B)はその動作を示している。支持部材6aを上昇することにより、マスク102の周縁が爪部F1に載置され、マスク102は搬送ロボット131から上昇する。マスク102は支持部材6aに支持された状態となり、かつ、更に上昇することでアライメント位置に位置する。本実施形態ではマスク102を上昇してアライメント位置に位置させるが、基板101を降下して基板101をアライメント位置に位置させる構成でもよい。
【0050】
次にアライメント動作を行う。図7(A)に示すように計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果(基板101とマスク102の位置ずれ量)が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板101の変位量)が設定される。
【0051】
「位置ずれ量」とは、位置ずれの距離と方向(X、Y、θ)で定義される。設定された制御量に基づいて、図7(B)に示すように位置調整ユニット80が作動される。これにより、基板支持プレート3がX-Y平面上で変位され、マスク102に対する基板101の相対位置が調整される。
【0052】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、アライメントマーク間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。
【0053】
相対位置の調整後、再度、計測ユニットSRにより、基板101のアライメントマークとマスク102のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク102に対する基板101の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0054】
次に、成膜動作を行う。まず、基板101をマスク102と重ね合わせる。図8(A)はその動作を示している。基板支持プレート3を降下させると、基板101はマスク102上に載置され、基板101は基板101の被処理面の全体がマスク102と接触する。磁石プレート5が冷却プレート4上に当接し、上から順に磁石プレート5、冷却プレート4、基板支持プレート3、基板101及びマスク102が密着した状態になる。磁石プレート5の磁力によりマスク102を引き寄せ、マスク102と基板101とを全体的に密着させることができる。マスク102には磁性体1021(図3A図4(B)及び図4(C)が形成されているため、より強い磁気吸着力を得られる。このように本実施形態によれば、非磁性体製のマスク102を用いつつ、基板101とマスク102の密着性を向上することができる。また、磁力の作用によりマスク本体1020に応力が生じても、スリット102dで変形が許容され、マスク1020のひび割れ等の破損を防止できる。
【0055】
以上により成膜の準備が整い、次に図8(B)に示すように、シャッタ10aを開状態とし、蒸着ユニット10から蒸着物質を放出する。蒸着物質はマスク102を介して基板101に蒸着される。
【0056】
こうした成膜が完了すると、マスク102及び基板101をそれぞれ搬出する動作を行う。図9(A)はマスク102を搬出する動作を示している。まず、磁石プレート5を上昇し、基板101とマスク102とが離間される。搬送ロボット131のハンド部をマスク102の下方に進入させた後、マスク支持ユニット6の支持部材6aを降下して、マスク102を支持部材6aから搬送ロボット131へ移載する。搬送ロボット131はマスク102を格納室140へ搬送する。
【0057】
続いて成膜済みの基板101を搬出する。マスク支持ユニット6の支持部材6aを上昇して、基板101を爪部F1によって下側から支持する。基板101に対する基板支持ユニット3の吸着を解除して基板101が支持部材6aに移載される。搬送ロボット121のハンド部を基板101の下方に進入させた後、図9(B)に示すようにマスク支持ユニット6の支持部材6aを降下して、基板101を支持部材6aから搬送ロボット121へ移載する。搬送ロボット121は基板101を搬送路111へ搬送する。以上により基板101の搬入から、成膜し、搬出するまでの動作が完了する。
【0058】
なお、図4では、磁性体1021がマスク本体1020に形成された例を説明したが、基板101にも磁性体を形成してもよい。図10(A)及び図10(B)はその一例を示す。これらの図は図4(B)の断面図に相当し、かつ、マスク102に対してアライメントされた基板101の断面図も示した図である。
【0059】
図10(A)に示すように基板101には、蒸着対象部位である一画素領域101bの周囲に磁性体101dが形成されている。図示の例では磁性体101dは一画素領域101bの周囲のバンク101cの表面に形成されている。磁性体101dは、例えば、ニッケル(Ni)等の磁性材料の薄膜である。磁性体101dと磁性体1021とは、基板101とマスク102とが適切にアライメントされたときに互いに重なる部位に配置されている。
【0060】
図10(B)は基板101とマスク102とのアライメント後、基板101をマスク102と重ね合わせた状態を示している。磁石プレート5の磁力によって、磁性体101dと磁性体1021とが互いに引き合い、基板101とマスク102との密着性を向上する。更に、磁性体101dと磁性体1021とが互いに引き合うことで、開口部102cと一画素領域101bとの相対位置がセルフアライメントされ、蒸着対象部位である一画素領域101bに、開口部102cを介してより的確に蒸着物質を蒸着できる。
【0061】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
1:成膜装置、8:アライメントユニット、10:蒸着ユニット(成膜源)、101:基板、102:マスク、300:画素形成領域、310:、311:、312:壁部(基板の壁部)、412:壁部(マスクの壁部)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10