(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022535
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】中空ポーラス銅粒子
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20250206BHJP
B22F 1/0655 20220101ALI20250206BHJP
B22F 1/06 20220101ALI20250206BHJP
B22F 1/148 20220101ALI20250206BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20250206BHJP
B22F 1/065 20220101ALI20250206BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20250206BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20250206BHJP
B22F 10/36 20210101ALI20250206BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250206BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/0655
B22F1/06
B22F1/148
B22F1/05
B22F1/065
B22F1/054
B82Y40/00
B22F10/36
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127214
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】弁理士法人綾船国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100127133
【弁理士】
【氏名又は名称】小板橋 浩之
(72)【発明者】
【氏名】井上 聴憲
(72)【発明者】
【氏名】根本 英之
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA02
4K018BB01
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC11
(57)【要約】
【課題】 酸化処理がなされることなく、レーザー吸収性に優れた銅粒子を提供する。
【解決手段】 中空部分の外側に配置された外殻部分からなり、該外殻部分がポーラスである、中空ポーラス銅粒子。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部分の外側に配置された外殻部分からなり、該外殻部分がポーラスである、中空ポーラス銅粒子。
【請求項2】
外殻部分が、一次粒子の凝集層からなる、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項3】
平均粒径D50が、1~3μmの範囲にある、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項4】
(「平均粒径D90」-「平均粒径D10」)/「平均粒径D50」の値が、1.8以下である、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項5】
外殻部分の厚みが、0.1~0.4μmの範囲にある、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項6】
外殻部分の凝集層の一次粒子の粒径が、0.01~0.09μmの範囲にある、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項7】
粒子の外形が球状である、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項8】
波長1000nm~1100nmの範囲のレーザー光に対する吸収率が、75%以上である、請求項1に記載の中空ポーラス銅粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子からなる、レーザー積層造形剤。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子を含んでなる、レーザー積層造形用粉末組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子の、レーザー積層造形剤としての使用。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子へ、レーザー光を照射する工程、を含む、レーザー積層造形体の製造方法。
【請求項13】
照射するレーザー光の波長が、1000nm~1100nmの範囲にある、請求項12に記載のレーザー積層造形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空ポーラス銅粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの小型化・高性能化に伴い、電子デバイス用の材料として、銅粒子の利用が期待されている。近年、いわゆる3Dプリンター技術と呼ばれる、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)技術においては、AM用金属材料として、銅粉末の使用が研究開発されるようになってきた。
【0003】
積層造形(アディティブ・マニュファクチャリング)(AM)技術のなかで、レーザーを用いた積層技術が、特に注目されている。レーザーを用いた積層法による造形では、金属粉末をレーザー照射によって焼結または溶融結合するのであるが、銅やアルミニウムのように、レーザーの反射率が高い金属材料は、レーザーのエネルギーを吸収しづらいため、これらの金属材料を用いてなる金属粒子を焼結または溶融結合するためには、より高いエネルギーのレーザーを照射することが必要となる。そのため、レーザーの高エネルギー化により、製造コストが高くなったり、製造装置の構成が複雑になったり、うまく金属粒子同士を結合できなかったりする等の困難があった。
【0004】
このような観点から、銅粒子のレーザー吸収率を向上させる技術が探求されてきた。
【0005】
特許文献1は、銅粉末を酸化処理により表面に特定の酸化皮膜を設けることでレーザーに対する吸収率を向上する技術を開示している。しかし、本来的には、酸化処理等を行って、銅粉末を化学変化させて、金属銅ではない状態とすることは望ましくない。
【0006】
特許文献2は、積層造形用の金属粉であって、表面皮膜の形成によって、予備加熱等による部分焼結が抑制された金属粉を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-178239号公開公報
【特許文献2】特許7192161号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、銅粒子に対して酸化処理を行うことなく、レーザー吸収性に優れた銅粒子が求められていた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、酸化処理がなされることなく、レーザー吸収性に優れた銅粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、後述する手段によって、上記目的が達成できることを見出して、本発明に到達した。
【0011】
したがって、本発明は以下の(1)を含む:
(1)
中空部分の外側に配置された外殻部分からなり、該外殻部分がポーラスである、中空ポーラス銅粒子。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、酸化処理がなされることなく、レーザー吸収性に優れた銅粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、試料1をSEM観察して得られたSEM画像である。
【
図1B】
図1Bは、
図1AのSEM画像に対して、ImageJのAnalyze Particles機能によって、粒子が自動検出された様子を示す画像である。
【
図1D】
図1Dは、SEM画像の二値化の解析に使用したImageJ(バージョン1.54d)のmake binary機能のパラメータの設定値のデフォルトの値を表す画像である。
【
図2】
図2は、試料1の粒度分布測定結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、試料1に対して、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置による観察を行って得られた画像である。
【
図4A】
図4Aは、
図3の画像に示される粒子のうち、拡大箇所-1で囲まれた粒子を、部分拡大した画像である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aの画像の粒子に対して、外接する楕円と内接する楕円とを描いた画像である。
【
図5A】
図5Aは、
図3の画像に示される粒子のうち、拡大箇所-2で囲まれた粒子を、部分拡大した画像である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの画像の粒子に対して、外接する楕円と内接する楕円とを描いた画像である。
【
図6】
図6は、
図1Aの上部中央付近の粒子について、部分拡大して観察したSEM画像である。
【
図7】
図7は、試料1、試料2及び試料3の粒子に対して、各波長におけるレーザー吸収率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を具体的な実施の形態をあげて以下に詳細に説明する。本発明は以下に開示された具体的な実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
[中空ポーラス銅粒子]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子は、中空部分の外側に配置された外殻部分からなり、該外殻部分がポーラスである。
【0016】
[外殻部分]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子は、中空部分の外側に配置された外殻部分からなる。中空部分は、中空であるので、粒子の一部分と表現しにくい部分であるが、構造の表現のために、本願では、中空部分と呼ぶ。
【0017】
[ポーラス]
好適な実施の態様において、中空部分の外側に配置された外殻部分は、ポーラスである。本願において、中空ポーラス銅粒子の外殻はポーラスであり、粒子の外殻の表面のSEM画像において、多数の孔及び空隙が観察される。また、本願において、中空ポーラス銅粒子の外殻はポーラスであり、粒子の外殻の断面のFIB画像において、多数の空隙及び貫通孔が観察される。貫通孔とは、外殻の外側表面から、内側表面へと、空隙部分が接続されている孔である。このようなポーラス構造は、本願の中空ポーラス銅粒子の生成過程に起因して、生じていると本発明者は考えている。
【0018】
[一次粒子の凝集層]
好適な実施の態様において、中空部分の外側に配置された外殻部分は、一次粒子の凝集層からなる。一次粒子とは、本願の中空ポーラス銅粒子が、一次粒子と呼ばれる小さな粒子からなっている二次粒子である、という相対的な役割を示す表現として使用している。本願において、中空ポーラス銅粒子の外殻は一次粒子の凝集層であり、粒子の外殻の表面のSEM画像において、多数の一次粒子の凝集によって構成されていることが観察される。また、本願において、中空ポーラス銅粒子の外殻は一次粒子の凝集層であり、粒子の外殻の断面のFIB画像において、多数の一次粒子の凝集によって構成されていることが観察される。
【0019】
[一次粒子の粒径]
好適な実施の態様において外殻部分の凝集層の一次粒子の粒径は、例えば0.01~0.09μmの範囲、好ましくは0.02~0.09μmの範囲、好ましくは0.03~0.09μmの範囲、好ましくは0.04~0.09μmの範囲、あるいは0.02~0.08μmの範囲、好ましくは0.03~0.08μmの範囲、好ましくは0.04~0.08μmの範囲、あるいは0.02~0.07μmの範囲、好ましくは0.03~0.07μmの範囲、好ましくは0.04~0.07μmの範囲、あるいは0.02~0.06μmの範囲、好ましくは0.03~0.06μmの範囲、好ましくは0.04~0.06μmの範囲とすることができる。凝集層の一次粒子の粒径は、実施例において後述する手順によって、測定することができる。
【0020】
好適な実施の態様において外殻部分の凝集層の一次粒子の形状は、例えば、球状、回転楕円体状、扁球状、長球状、つりがね型とすることができる。
【0021】
[外殻部分の厚み]
好適な実施の態様において、中空部分の外側に配置された外殻部分の厚みは、例えば0.1~0.4μmの範囲、あるいは0.15~0.4μmの範囲、あるいは0.2~0.4μmの範囲、あるいは0.1~0.35μmの範囲、あるいは0.15~0.35μmの範囲、あるいは0.2~0.35μmの範囲、あるいは0.25~0.35μmの範囲、あるいは0.1~0.3μmの範囲、あるいは0.15~0.3μmの範囲、あるいは0.2~0.3μmの範囲、あるいは0.25~0.3μmの範囲とすることができる。外殻部分の厚みは、実施例において後述する手順によって、測定することができる。
【0022】
[粒子の外形]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の外形は、球状とすることができる。一般に、銅粒子と呼ばれる粒子であっても、必ずしも外形が球状ではないことも多いが、後述する実施例に示すように、好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の外形は、大きさの整った球状とすることができる。
【0023】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の外形は、優れて整った球状であって、後述する実施例において測定されたアスペクト比を、例えば1.000~1.300の範囲、あるいは1.000~1.250の範囲、あるいは1.000~1.200の範囲、あるいは1.000~1.150の範囲、あるいは1.000~1.100の範囲とすることができる。
【0024】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の外形は、優れて整った球状であって、後述する実施例において測定されたアスペクト比の平均を、例えば1.000~1.300の範囲、あるいは1.000~1.250の範囲、あるいは1.000~1.200の範囲、あるいは1.000~1.150の範囲とすることができる。
【0025】
[粒子の粒径]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の粒径は、平均粒径D50が、例えば1~3μmの範囲、あるいは1~2.5μmの範囲、あるいは1~2μmの範囲、あるいは1.5~2μmの範囲、あるいは1.6~1.9μmの範囲とすることができる。
【0026】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の粒径は、平均粒径D90が、例えば1~4μmの範囲、あるいは1~3.5μmの範囲、あるいは1~3μmの範囲、あるいは1.5~4μmの範囲、あるいは1.5~3.5μmの範囲、あるいは1.5~3μmの範囲、あるいは2~4μmの範囲、あるいは2~3.5μmの範囲、あるいは2~3μmの範囲、あるいは2.5~4μmの範囲、あるいは2.5~3.5μmの範囲、あるいは2.5~3μmの範囲、あるいは2.6~2.9μmの範囲とすることができる。
【0027】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の粒径は、平均粒径D10が、例えば0.5~3μmの範囲、あるいは0.5~2.5μmの範囲、あるいは0.5~2μmの範囲、あるいは0.5~1.5μmの範囲、あるいは0.7~3μmの範囲、あるいは0.7~2.5μmの範囲、あるいは0.7~2μmの範囲、あるいは0.7~1.5μmの範囲、あるいは0.7~1.3μmの範囲、あるいは0.9~1.5μmの範囲、あるいは0.9~1.3μmの範囲とすることができる。
【0028】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子の粒径については、スパン、すなわち次の式:
(「平均粒径D90」-「平均粒径D10」)/「平均粒径D50」
で表される値が、例えば1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.99以下、好ましくは0.98以下、好ましくは0.97以下、好ましくは0.96以下、好ましくは0.95以下、好ましくは0.94以下とすることができる。上記の式で表されるスパンの値は、小さいほど好ましく、下限には特に制約はないが、例えば0.01以上、あるいは0.05以上、あるいは0.1以上、あるいは0.2以上、あるいは0.3以上、あるいは0.4以上、あるいは0.5以上とすることができる。
【0029】
[純度]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子は、出発材料となる硫酸銅の純度に応じて、高い純度の銅粒子とすることができ、例えば、純度99質量%以上、好ましくは純度99.9質量%以上の純度とすることができる。
【0030】
[レーザー吸収率]
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子は、優れたレーザー吸収率を備えている。
【0031】
本発明に先立って行った本発明者による検討によれば、一般に、銅粒子は、その粒径が小さくなるほど、レーザー吸収率が高くなる傾向にある。ところが、後述する実施例で示すように、本発明の中空ポーラス銅粒子は、より粒径の大きな銅粒子よりも、高いレーザー吸収率を備えていた。すなわち、本発明の中空ポーラス銅粒子の優れたレーザー吸収率は、粒径から予測されるレーザー吸収率の程度を、遙かに超えた、大きな値となっていた。
【0032】
本発明に先立って行った本発明者による検討によれば、一般に、銅粒子のレーザー吸収率は、レーザー造形用を想定した銅粒子製品であっても、レーザー波長が500nmから650nmの範囲で、レーザー吸収率が劇的に低下してしまう。しかし、ビーム品質の高さ、光変換効率の高さ、高出力、高信頼性、高メンテナンス性などの長所から、レーザー造形用に期待されているファイバーレーザーの波長は、およそ1000nm~1100nmの範囲にある。そのため、1000nm~1100nmの範囲に至るまで、レーザー吸収率が低下せず、高いレーザー吸収率を維持する銅粒子が、レーザー造形用に求められていた。本発明の中空ポーラス銅粒子は、波長1000nm~1100nmの範囲のレーザー光に対する吸収率が、高い値を維持しているという点から、永らく求められていた製品である。
【0033】
好適な実施の態様において、本発明の中空ポーラス銅粒子は、波長1000nm~1100nmの範囲のレーザー光に対する吸収率が、例えば75%以上、あるいは76%以上、あるいは77%以上、あるいは78%以上、あるいは79%以上、あるいは80%以上、あるいは81%以上、あるいは82%以上とすることができる。
【0034】
[レーザー積層造形]
好適な実施の態様において、本発明は、上述の中空ポーラス銅粒子からなる、レーザー積層造形剤にもあり、上述の中空ポーラス銅粒子を含んでなる、レーザー積層造形用粉末組成物にもある。
【0035】
好適な実施の態様において、本発明は、上述の中空ポーラス銅粒子の、レーザー積層造形剤としての使用にもある。
【0036】
好適な実施の態様において、本発明は、上述の中空ポーラス銅粒子へレーザー光を照射する工程、を含む、レーザー積層造形体の製造方法にもあり、上述の中空ポーラス銅粒子からなるレーザー積層造形剤へレーザー光を照射する工程、を含む、レーザー積層造形体の製造方法にもあり、上述の中空ポーラス銅粒子を含んでなるレーザー積層造形用粉末組成物へレーザー光を照射する工程、を含む、レーザー積層造形体の製造方法にもある。
【0037】
好適な実施の態様において、レーザー光を照射する工程において、照射するレーザー光の波長が、1000nm~1100nmの範囲にあるものとすることができる。
【0038】
[本発明の好適な態様]
好適な実施の態様として、本発明は、次の(1)以下を含む。
(1)
中空部分の外側に配置された外殻部分からなり、該外殻部分がポーラスである、中空ポーラス銅粒子。
(2)
外殻部分が、一次粒子の凝集層からなる、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(3)
平均粒径D50が、1~3μmの範囲にある、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(4)
(「平均粒径D90」-「平均粒径D10」)/「平均粒径D50」の値が、1.8以下である、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(5)
外殻部分の厚みが、0.1~0.4μmの範囲にある、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(6)
外殻部分の凝集層の一次粒子の粒径が、0.01~0.09μmの範囲にある、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(7)
粒子の外形が球状である、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(8)
波長1000nm~1100nmの範囲のレーザー光に対する吸収率が、75%以上である、(1)に記載の中空ポーラス銅粒子。
(9)
(1)~(8)のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子からなる、レーザー積層造形剤。
(10)
(1)~(8)のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子を含んでなる、レーザー積層造形用粉末組成物。
(11)
(1)~(8)のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子の、レーザー積層造形剤としての使用。
(12)
(1)~(8)のいずれかに記載の中空ポーラス銅粒子へ、レーザー光を照射する工程、を含む、レーザー積層造形体の製造方法。
(13)
照射するレーザー光の波長が、1000nm~1100nmの範囲にある、(12)に記載のレーザー積層造形体の製造方法。
【実施例0039】
以下に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実験例1:球形ポーラス銅粒子の製造]
[試薬の調製]
CuSO4溶液の準備: ユピノーグCuSO4・5H2O(JX金属製、高純度硫酸銅、製品名:ユピノーグ、純度99質量%以上)を19.7g量り取り、純水で240mlに定容して、CuSO4溶液を調製した。CuSO4溶液の溶解と定容は、30℃で行った。
【0041】
pH調整液の準備: 50%NaOH水溶液を1/5に希釈してpH調整液を調製した。
【0042】
還元液の準備: ヒドラジン1.2gを純水にて80mlに希釈して還元液を調製した。
【0043】
ヒドラジン+アラビアゴム溶液の準備: ヒドラジン1.2gを純水にて400mlに希釈し、アラビアゴムを0.1g投入して、ヒドラジン+アラビアゴム溶液を調製した。
【0044】
添加の準備: チューブポンプをセットし、pH計及びORP計を浴にセットして添加の準備を行った。
【0045】
[1次pH調整]
pH調整: CuSO4溶液にNaOH水溶液を加え、pHを5.0に調整した。
【0046】
[1次還元]
亜酸化銅反応: 還元液をCuSO4溶液に13.5ml/minの速度で添加し、反応させた。
【0047】
添加が終了したら、30℃に保温したまま1時間保持した。これによって、1次還元を行って、亜酸化銅の球形粒子のスラリーを得た。得られたスラリーの一部を採取して、水洗、乾燥して、SEMによる観察を行った。
【0048】
球形粒子であったことは、以下の条件でのSEMによる観察によって、それぞれの粒子について、全体の形状が球形であると確認された:
JEOL JSM-7000F 電解放出形走査電子顕微鏡
加速電圧:5.00kV
フィラメント電流2.18A
引出電圧:3.00kV
エミッション電流:81.40μA
PMTリンク:ON
真空排気システム
SIP-1:3.2E-008Pa
SIP-2:3.3E-007Pa
真空排気コード:51FE0000
ペニング真空計:9.63E-005Pa
試料ホルダ:2インチウェハホルダ
【0049】
[2次pH調整]
1次還元によって生成した亜酸化銅の球形粒子のスラリーを、50℃に昇温した。
【0050】
pH調整:50℃に昇温した亜酸化銅の球形粒子のスラリーへ、NaOH水溶液を加え、pHを12.0に調整した。
【0051】
[2次還元]
還元反応: pH調整後の亜酸化銅の球形粒子のスラリーへ、ヒドラジン+アラビアゴム溶液を6.67ml/minの速度で添加し、反応させた。
【0052】
添加が終了したら、50℃に保温したまま3時間保持した後に、作業可能な程度の温度まで自然冷却して、ろ紙による濾過を行って、ケーキを回収した。
【0053】
洗浄: 濾過で回収したケーキを、純水200mlに溶いた後、ろ紙により濾過した。この操作を3回繰り返した。洗浄して得られたケーキを回収した。
【0054】
得られたケーキをバットに広げてN2雰囲気、70℃で乾燥して銅粉を得た。得られた銅粉は、解砕する操作を行うことなく、分級する操作も行うことなく、試料1として、以下の分析に供した。
【0055】
[実験例2:球形ポーラス銅粒子の分析]
【0056】
[SEMによる観察]
得られた銅粉(試料1)に対して、SEMによる観察を行った。SEMによる観察の条件は、上述の亜酸化銅の球形粒子のSEM観察と、同じ条件とした。得られたSEM画像を、
図1Aに示す。
【0057】
SEMによる画像から、得られた試料1の粒子は、球形の粒子であって、真球に近い形状を備えており、粒径の均一性が極めて高く、いずれの粒子も多孔性と思われる表面を備えていた。
【0058】
SEMによる画像から、粒子の真円率を、次の手順及びソフトウェアによって算出した。
SEM画像(
図1A)に対して、ImageJ(バージョン1.54d)を使用して、解析した。最初に、SEM画像のファイルをImageJのmake binary機能によって二値化した。iterations値は1とした。count値は1とした。特に指定しない限りは、パラメータの設定値はデフォルトの値で行った。SEM画像の二値化の解析に使用したImageJ(バージョン1.54d)のmake binary機能のパラメータの設定値のデフォルトの値を、
図1Dに示す。次に、fill holes機能によって粒子の輪郭を鮮明にした。次に、この画像を保存して、測定可能な粒子を選別した。粒子の選別は、粒子の全体が画面の前面側に露出していて、一部であっても隣接する他の粒子の後ろ側へと隠れている箇所がない粒子を選択して、それ以外の粒子を消去することによって行った。また、隣接する複数の粒子の最外層が融合しているかに見える場合には、これをそれぞれ単独の粒子として認識されるように、画像処理した。このような処理を行った画像に対して、Analyze Particles機能によって、直径0.1μm以上の粒子を自動検出した。視野のなかから43個の粒子が自動検出された。粒子が自動検出された様子を示す画像を、
図1Bに示す。自動検出された粒子に対する各測定値を、表1に示す。
【0059】
図1Bの画像を、
図1Aの画像に重ねた合成画像を、
図1Cに示す。
図1Cに示されるように、自動検出によって測定された粒子は、画面の最前面に位置する粒子であって、妥当な測定の対象となっていた。
【0060】
得られた結果を、次の表1-1及び表1-2に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
表1-1及び表1-2において、面積の値は、各粒子が画像中で平面として投影された面積の値である。
【0064】
表1-1及び表1-2において、フェレー径(最大径)の値は、選択した粒子の外周の境界線上にある任意の2点を結ぶ直線のうち、もっとも長い直線(線分)の距離の値(最大キャリパー長)である。
【0065】
表1-1及び表1-2において、最小径の値は、選択した粒子の外周の境界線上にある任意の2点を結ぶ直線のうち、もっとも短い直線(線分)の距離の値(最小キャリパー径)である。
【0066】
表1-1及び表1-2において、アスペクト比は、上記Analyze Particles機能操作によって自動算出される値であり、フィッティングした楕円の長軸の長さを短軸の長さで割った値である。表1-1及び表1-2において、アスペクト比は、その90%以上が1.2未満に収まっており、多くの粒子が球形に近い形状となっていることがわかる。また、粒子番号11のように、複数の2次粒子が凝集してしまっているものなどである。
【0067】
表1-1及び表1-2に示されるように、得られた銅粉(試料1)の粒子は、アトマイズの加工等の外部から加工を何ら加えることなく、アスペクト比が1に近く、その外形は非常に真円に近い粒子であった。
【0068】
[粒度分布の測定]
得られた銅粉(試料1)の粒度分布に関して、レーザー回折粒度分布を以下の条件で測定した。
測定装置:
レーザー回折式粒度分布測定装置(Mastersizer 3000、Malvern Panalytical社製)
分散剤:
0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を1L程度をホットバスで50~60℃程度に加温した。
測定用試料準備:
試料1を少量採取して、5cc程度のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に分散させて測定用試料を調製した。
測定操作:
装置の分散ユニットへ加温していた分散剤を充填して40℃に保温しつつ、攪拌した。次に上記調製した測定用試料を装置の分散ユニットに入れた分散剤中へ徐々に滴下しながら、攪拌と超音波照射を行った。この間、散乱強度を測定しながら、分散を進行させた。分散が進行して、散乱強度が6%を超えたあたりから、散乱強度が6~8%の範囲内に継続して10分間あることを確認して、測定を開始した。
試料1に対して、この測定を10回行って、D10(10%粒子径)、D50(50%粒子径)、D100(100%粒子径)を算出したところ、以下の通りであった。
D10 :1.094[μm]
D50 :1.737[μm]
D100:4.13[μm]
標準偏差: 0.233
【0069】
【0070】
表2において、RSDは相対標準偏差である。
【0071】
スパン、すなわち(「平均粒径D90」-「平均粒径D10」)/「平均粒径D50」の値が、0.9332であった。
【0072】
粒度分布の測定の結果から、実験例1によって製造された銅粒子(試料1)は、粒子径の均一性が高いことがわかった。
【0073】
図2に、試料1の粒度分布測定結果のグラフを示す。このグラフは、試料1のスラリーに対して、測定を10回行って、それぞれの測定値を重ね合わせて記載したグラフである。横軸は粒径[μm]であり、縦軸はその粒径に相当する体積の割合(%)である。
図2のグラフに示されるように、試料1の銅粒子は、粒子径の均一性が高いことがわかった。
【0074】
[FIBによる観察]
試料1に対して、以下の条件で集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置による観察を行った。得られた画像を、
図3、
図4A、
図5Aに示す。
図3に示される粒子の部分拡大図が、
図4A及び
図5Aである。
装置名: エスアイアイ・ナノテクノロジー社(現:日立ハイテク社)製 SMI3050SE
観察条件: イオン種 Ga+
イオン加速電圧: 30kV
観察角度 試料表面から55°(試料法線方向から35°)
【0075】
図4Aに示される粒子に対して、以下の操作を行って作成した画像が、
図4Bの画像である:
図4Aの画像を、ImageJ(バージョン1.54d)を使用して、解析した。最初に、
図4Aの画像のファイルをImageJのmake binary機能によって二値化した。iterations値は1とした。count値は1とした。特に指定しない限りは、パラメータの設定値はデフォルトの値で行った。得られた二値化画像ファイルに対して、画像編集ソフト(マイクロソフト365、パワーポイント、バージョン2208)によって、対象粒子に外接する楕円と内接する楕円を描いた。外接する楕円は、対象粒子の外殻の外側の表面の凹凸の平均的な位置を通るように配置した。平均的な位置とする際には、表面の凸部のうち、通常の凹凸の程度を越えたイレギュラーと思われる凸部を除外し、通常の凹凸の程度を越えて貫通孔の一部と認められる凹部を除外して、表面の凹凸の凹部の面積と凸部の面積が、できるだけ均等となるようにして行った。内接する楕円は、対象粒子の外殻の内側の表面の凹凸の平均的な位置を通るように配置した。外殻の内側においては、画像の奥行き方向に存在していて、外殻の厚みの断面の一部を形成していない部分があるので、これらを除外して外殻の内側の表面の位置を認定するようにした。結果として描かれた楕円は、粒子に外接する楕円と内接する楕円が、相似な楕円であって、中心点の位置が同じ位置にあるものとなっていた。描かれた楕円について、外接する楕円と内接する楕円の半径の差に相当する距離を、
図4Bの(3)、(4)、(5)、(6)の位置について、ImageJのmeasure機能によって測定した。測定は、画像中の右下のバーを基準として行った。また、外接する楕円の長径、及び短径に相当する距離として、
図4Bの(1)、(2)の距離を同様に測定した。測定した結果を、表3にまとめて示す。測定に際して、粒子は、楕円の外接と内接によって、測定されており、あたかも粒子の断面が楕円の形状として観察されているが、
図3のSEM画像に示されるように、FIBによる観察は、原理的な理由から、斜め上方向からの観察となっているために、粒子の断面が円の形状であっても、観察される形状は楕円の形状となっている。そのため、粒子の外殻の厚みの値としては、画像上での上下に当たる位置(
図4Bの(3)、(4))ではなくて、画像上の左右に当たる位置(
図4Bの(5)、(6))での測定値が、外殻の厚みの値として、信頼性の高い値となる。
【0076】
図4Bの各番号の両矢印によって示される長さを、次の表3に示す。
図4B中の各番号は丸で囲まれた数字としたが、表3においてはカッコで囲まれた数字で表記した。
【0077】
【0078】
図5Aに示される粒子に対して、
図4Aに示される粒子に対する操作と同様の操作を行って得られた画像が、
図5Bの画像である。
【0079】
図5Bの各番号の両矢印によって示される長さを、次の表4に示す。
図5B中の各番号は丸で囲まれた数字としたが、表4においてはカッコで囲まれた数字で表記した。
【0080】
【0081】
これらの結果から示されるように、試料1の粒子の典型的な形状は、厚さ0.3μmほどの外殻を備えた中空構造の粒子であることがわかった。また、画像から観察されるように、この外殻は、多数の一次粒子が凝集して形成されたものであることがわかった。すなわち、この中空構造の粒子は、多数の一次粒子が凝集した二次粒子となっていることがわかった。画像から観察される範囲では、これらの一次粒子は、おおよそ0.05~0.2μmの範囲の粒径であった。これらの一次粒子については、最大のキャリパー長(フェレー径)を観察して、一次粒子の粒径とした。また、断面画像から、外殻には、粒子の外部と内部とを貫通する、多数の貫通孔が観察されており、このことから、この粒子は、多孔性と言える形状を備えていることがわかった。
【0082】
[一次粒子の粒径]
図1Aの上部中央付近の粒子について、部分拡大して観察したSEM画像を、
図6に示す。
図6の中央の二次粒子の表面には、二次粒子を構成する多数の一次粒子が観察された。この一次粒子として球状に近い形状の粒子が多数観察された。これらの一次粒子のうち、外径の輪郭が比較的鮮明な粒子を抜粋したところ、多数の一次粒子の粒径が、0.04~0.06μmの範囲にあった。これらの一次粒子については、最大のキャリパー長(フェレー径)を観察して、一次粒子の粒径とした。
【0083】
[実験例3:球形ポーラス銅粒子の対比分析]
[レーザー吸収率の測定]
試料1に対して、分光光度計を用いて、以下の条件でレーザー吸収率の測定を行った。一般的なレーザー方式の造形は波長1060nm程度のファイバーレーザーを使用することから、波長1060nmが含まれる範囲の波長において、反射率の測定を実施した。
メーカー:島津製作所株式会社
装置名:分光光度計(MPC-3100、粉末ホルダー使用)
測定波長:300~1500mm
スリット幅:20nm
リファレンス:BaSO4
測定物性値:反射率
吸収率(%)=1-(反射率(%))
【0084】
得られた結果を以下の
図7に示す。なお、
図7中の試料2及び試料3の測定については、後述の説明の通りである。
【0085】
図7のグラフのなかの代表的な波長についての吸収率の値を、表5にまとめて示す。代表的な波長における試料の吸収率の比率、すなわち[試料1/試料2]、及び[試料1/試料3]の値を、表6にまとめて示す。
【0086】
【0087】
【0088】
[TAP密度等の測定]
この中空Cu粉(試料1)のBET比表面積、BET径、TAP密度を以下の条件及び手順で測定した。
【0089】
銅粉の固めかさ密度(TAP密度)の測定は、ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT-X-2を用いて、JISのZ2512:2012にしたがって測定した。具体的には、目開き710μmのふるいを、1.5mmの振幅で振動させて通過した銅粉を、高さ25mmのガイドを取り付けた10cm3の容量のステンレスカップに直接投入し、ガイド付きステンレスカップから溢れるまで充填した。その後、タップ回数を1000回、ストロークを18mm、タップ速度をNormalに設定し、タッピングを開始した。タッピング後、ガイドをステンレスカップから取り外し、ステンレスカップの開口部をスクレーパーで摺り切り、余分な銅粉を除去した後、天秤で重量測定を行い、10cm3の容量のステンレスカップ内の銅粉重量から固めかさ密度を算出した。
【0090】
銅粉のBET比表面積の測定は、JIS Z8830:2013 に準拠し、マイクロトラック・ベル社のBELSORP-mini IIを用いて行った。銅粉の3gのサンプルについて絶対圧10Pa以下の真空中にて70℃の温度で5時間にわたって脱気した後、静的容量法にて窒素吸着等温線を測定し、それにより得られた結果をBET法で解析することで、BET比表面積を算出した。
【0091】
BET径は、BET比表面積と密度から、粒子を球と仮定して、定法にしたがって次式から算出した:
BET径:
D(μm)=6/[密度(g/cm3)×BET比表面積(m2/g)]
【0092】
中空Cu粉(試料1)のBET比表面積、BET径、TAP密度、及びD50(50%粒子径)、D100(100%粒子径)を、表7にまとめて示す。
【0093】
【0094】
表7に示すように、試料1のBET径は0.15μmと算出された。試料1のBET径の値は、実測したD10(10%粒子径)、D50(50%粒子径)、D100(100%粒子径)の値よりも非常に小さな値であった。さらに試料1のBET径の値は、例えばD50の値について、試料1よりも小さな試料2のBET径と比較しても、非常に小さな値であった。
【0095】
[銅微粉及びAM銅粉の測定]
比較例の試料2として、銅微粉(株式会社高純度化学研究所製、1μm品、純度99.99質量%)を用意した。比較例の試料3として、表面処理したガスアトマイズ銅粉(AM銅粉、純度99.99質量%)を、特許文献2(日本国特許7192161号)の実施例1の操作に準拠して調製した。これらの試料2及び試料3を、試料1と同様に測定した。得られた結果は、
図7、表7、表5、及び表6に示した通りである。
【0096】
なお、AM銅粉(試料3)は、粒度が著しく異なるために、BET比表面積の測定は行わなかった。
【0097】
[球形ポーラス銅粒子の対比分析の結果]
図7に示されるように、中空Cu粉(試料1)は、比較例であるAM銅粉(試料3)と比べて、測定した波長の全領域にわたって、レーザー吸収率に優れており、具体的には、表5及び表6に示される通りである。
【0098】
図7に示されるように、中空Cu粉(試料1)は、比較例である銅微粉(試料2)と比べて、粒径が大きいにもかかわらず、測定した波長の全領域にわたって、レーザー吸収率においては、むしろ優れており、具体的には、表5及び表6に示される通りである。
【0099】
ファイバーレーザーにはビーム品質の高さ、光変換効率の高さ、高出力、高信頼性、高メンテナンス性など、優れた長所が知られている。このファイバーレーザーの波長は、およそ1000nm~1100nmの範囲にある。そして、このファイバーレーザーの波長帯において、金属銅の反射が多いことが、銅の金属3Dプリンターの技術的な困難の主たる原因であった。ところが、本発明による中空銅粒子は、この波長域において、従来の銅微粉に対して1.55~1.53倍の吸収性を示し、従来のAM銅粉に対して、6.67~7.09倍の吸収性を示すことがわかった。本発明は、これまでの銅の金属3Dプリンターの技術的困難を突破する、価値ある発明である。