(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022587
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法、発光装置
(51)【国際特許分類】
H10H 20/854 20250101AFI20250206BHJP
H10H 20/856 20250101ALI20250206BHJP
H01S 5/028 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/60
H01S5/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127299
(22)【出願日】2023-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大藏 孝太
【テーマコード(参考)】
5F142
5F173
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA02
5F142CA11
5F142CB03
5F142CE04
5F142CE15
5F142CG07
5F142CG13
5F142CG24
5F142CG42
5F142DA13
5F142DB02
5F142FA18
5F142FA21
5F173MC15
5F173ME22
5F173ME32
5F173ME41
5F173MF03
5F173MF28
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い発光装置を製造することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様の発光装置の製造方法は、発光素子と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材中間体と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、前記被覆部材中間体をアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材中間体と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、
前記被覆部材中間体をアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材を形成する工程と、を含む発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記被覆部材を形成する工程において、前記被覆部材中間体の外表面全体に前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液が接触するように浸漬させる請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記発光装置中間体は、複数の前記発光素子と、複数の前記発光素子を被覆し、隣り合う前記発光素子同士を連結する前記被覆部材中間体と、で構成され、
前記発光装置中間体を準備する工程において、準備する前記発光装置中間体は、前記被覆部材中間体のうち前記隣り合う発光素子間に位置する部位に溝部を有する、請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下である請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に溶解されているアルカリ土類金属ハロゲン塩は、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムである請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記光反射材は、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムである請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記被覆部材を形成する工程の後に、前記被覆部材を水洗する工程を含む、請求項6に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記水洗する工程において、50℃以上の水を用いる請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
発光素子と、
光反射材及びアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材と、を備える発光装置。
【請求項10】
前記アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムである請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記光反射材は、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムである請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記被覆部材の抵抗率は、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下である請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光素子の発光面に配置された透光性部材を備え、
前記被覆部材が透光性部材の側面を被覆する請求項12に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子と発光素子の一部を被覆する無機部材で構成される被覆部材とを備える発光装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような無機部材で構成された被覆部材は、発光装置の性能を向上させるために未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示の一実施形態は、信頼性の高い発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、発光素子と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材中間体と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、前記被覆部材中間体をアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、信頼性の高い発光装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
【
図2A】一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する概略断面図(その1)である。
【
図2B】一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する概略断面図(その2)である。
【
図2C】一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する概略断面図(その3)である。
【
図2D】一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する概略断面図(その4)である。
【
図2E】一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する概略断面図(その5)である。
【
図3】実施例に係る被覆部材中間体と被覆部材の抵抗率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。しかし、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一若しくは同等の部分又は部材を示す。
【0010】
更に、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置等を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材料、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。さらに、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略した模式図を用いたり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。
【0011】
<発光装置の製造方法>
図1は、一実施形態に係る発光装置1の概略断面図であり、
図2A~
図2Eは、一実施形態に係る発光装置1の製造方法を説明する概略断面図である。本実施形態の発光装置1は、発光素子2と、光反射材及びアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、発光素子2を被覆する被覆部材3とを備える。
図2A~
図2Eを参照して、本実施形態の発光装置1の製造方法の一例を説明する。
【0012】
本実施形態の発光装置1の製造方法は、
図2Aに示すように、発光素子2と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、発光素子2を被覆する被覆部材中間体3Aと、を備える発光装置中間体1Aを準備する工程と、
図2Bに示すように、被覆部材中間体3Aをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材3を形成する工程と、を含む。
【0013】
上述した発光装置1の製造方法であれば、信頼性の高い発光装置1を製造することができる。詳細を以下に説明する。
【0014】
上述した発光装置1の製造方法であれば、被覆部材中間体3Aをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に浸漬させることで、被覆部材中間体3Aを構成するアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属を、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6中のアルカリ土類金属に置換することができる。アルカリ土類金属ケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩より水への溶解度が低いため、例えば大気中に存在する水分と反応しにくい。このため、水分との反応による金属イオンの発生を低減することができる。これにより、金属イオンが発光素子2の電極に接触することによって生じるリーク電流の発生を低減することができる。
【0015】
(発光装置中間体1Aを準備する工程)
本実施形態の発光装置1の製造方法は、
図2Aに示すように、発光素子2と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、発光素子2を被覆する被覆部材中間体3Aと、を備える発光装置中間体1Aを準備する工程を含む。発光装置中間体1Aは、被覆部材中間体3Aを構成するアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属を、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6中のアルカリ土類金属に置換する前の発光装置中間体である。発光装置中間体1A(即ち、置換前の発光装置中間体)は、
図2Aに示す例では、複数の発光素子2と、複数の発光素子2を被覆し、隣り合う発光素子2同士を連結する被覆部材中間体3Aと、複数の透光性部材4とで構成される。なお、「被覆する」とは、発光素子2に接して被覆している状態、及び、被覆部材中間体3Aと発光素子2との間に別の部材や空気層等の空隙を介して被覆している状態を含む。また、発光装置中間体1Aは、複数の発光素子2を含むことに限らず、1つの発光素子2を含んでもよい。発光装置中間体1Aは、透光性部材4を含むことに限らず、透光性部材4を含んでいなくてもよい。透光性部材4は、複数であることに限らず、1つであってもよい。
【0016】
発光素子2は、発光ダイオード(LED)チップや半導体レーザー(LD)チップ等の半導体発光素子が好適に利用できる。
図1に示す例では、発光素子2は、半導体構造体21と、電極22とを有する。発光素子2は、発光面23と、発光面23の反対側に位置する面であって電極22が設けられた電極形成面24と、発光面23と電極形成面24とを繋ぐ側面25とを有する。
【0017】
半導体構造体21は、n側半導体層と、p側半導体層と、n側半導体層とp側半導体層とに挟まれた発光層とを含む。発光層は、単一量子井戸(SQW)構造としてもよく、複数の井戸層を含む多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。半導体構造体21は、窒化物半導体からなる複数の半導体層を含む。窒化物半導体は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させたすべての組成の半導体を含む。発光層の発光ピーク波長は、目的に応じて適宜選択することができる。発光層は、例えば、可視光又は紫外光を発光可能に構成されている。
【0018】
発光素子2は、半導体構造体21における電極形成面24と反対側に位置する面側に、透光性の支持基板を有してもよいし、有していなくてもよい。発光素子2が支持基板を有する場合、支持基板における半導体構造体21と対向する面と反対側に位置する面が、発光素子2の発光面23となる。発光素子2が支持基板を有しない場合、半導体構造体21における電極形成面24と反対側に位置する面が、発光素子2の発光面23となる。
【0019】
発光素子2は、1つの支持基板の主面に設けられた1つの半導体構造体21を有してもよく、1つの支持基板の主面に設けられた複数の半導体構造体21を有していてもよい。また、1つの半導体構造体21は1つの発光層のみを有してもよく、複数の発光層を有していてもよい。複数の発光層を有する半導体構造体21の構造は、1つのn側半導体層と1つのp側半導体層との間に複数の発光層を含む構造であってもよく、n側半導体層と発光層とp側半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造であってもよい。
【0020】
支持基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル(MgAl2O4)、窒化ガリウム等の窒化物半導体が挙げられる。
【0021】
発光素子2は、平面視にて任意の形状を有することができる。発光素子2の平面視における形状は、例えば、矩形(正方形、長方形等)、三角形、六角形である。平面視において、発光素子2の形状が矩形の場合、発光素子2の大きさは、例えば、1mm×1mmとすることができる。なお、本明細書における平面視とは、発光素子2の発光面23側から見ることを意味する。
【0022】
被覆部材中間体3Aは、
図2Aに示す例では、発光素子2の電極形成面24及び側面25、並びに透光性部材4の側面41を被覆している。また、被覆部材中間体3Aが発光素子2の電極形成面24を被覆する際、
図2Aに示す例では、被覆部材中間体3Aは、電極22における半導体構造体21側の面とは反対側に位置する面を被覆する。但し、これに限らず、被覆部材中間体3Aは、電極22における半導体構造体21側の面とは反対側に位置する面を被覆していなくてもよい。
【0023】
被覆部材中間体3Aに含まれる光反射材は、発光素子2から出射される光を反射することができる。光反射材の材料は、例えば、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムである。窒化ホウ素又は酸化アルミニウムは、熱伝導性に優れる材料であるため、放熱性の優れる被覆部材中間体3Aを得ることができる。また、これらの材料であれば、被覆部材中間体3Aを形成する際の加熱時に、被覆部材中間体3Aの骨材として機能する。これにより、熱による被覆部材中間体3Aの収縮を低減することができる。
【0024】
光反射材は、例えば、2つの主面を有する板状(鱗片状を含む)の粒子である。光反射材は、一次粒子であってもよいし、2個以上の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。また、一次粒子及び二次粒子の混合物であってよい。
【0025】
光反射材の一次粒子の平均アスペクト比は、10以上であることが好ましく、10以上70以下であることがより好ましい。光反射材が窒化ホウ素である場合、光反射材の平均アスペクト比は、例えば、16.5以上19.2以下である。光反射材が酸化アルミニウムである場合、光反射材の平均アスペクト比は、例えば、10以上70以下である。光反射材の平均アスペクト比は、例えば、以下の方法で算出することができる。
【0026】
(平均アスペクト比の算出方法)
光反射材の平均アスペクト比は、発光装置中間体1Aを製造した後、発光装置中間体1Aの断面において、被覆部材中間体3Aに含まれる光反射材の長軸の長さ及び短軸の長さを測定することで算出する。まず、発光素子2の発光面23の中心を通り、且つ発光面23に略直交する断面を露出させる。次に、露出させた断面を鏡面研磨する。そして、鏡面研磨した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により、2000倍~3000倍の倍率にて観察し、得られた画像から光反射材の断面を抽出し、約1000個の光反射材の断面が含まれる測定領域を選択する。なお、光反射材の平均アスペクト比は、発光装置1を製造した後、発光装置1の断面において、被覆部材3に含まれる光反射材の長軸の長さ及び短軸の長さを測定することによっても算出することができる。
【0027】
次に、画像解析ソフトウェアにより、抽出した光反射材の各断面の長軸の長さ及び短軸の長さをそれぞれ一点ずつ測定し、短軸の長さに対する長軸の長さの比(アスペクト比)を算出する。そして、100個の光反射材のアスペクト比の平均値を平均アスペクト比とする。
【0028】
光反射材の平均粒径は、0.6μm以上43μm以下であることが好ましい。光反射材が窒化ホウ素である場合、光反射材の平均粒径は、例えば、6μm以上43μm以下である。光反射材が酸化アルミニウムの場合、光反射材の平均粒径は、例えば、0.6μm以上10μm以下である。
【0029】
ここで、製造工程による光反射材の変形や変質は、わずかなものであるため、光反射材の粉末の形状及び寸法と、被覆部材中間体3A又は被覆部材3に含まれる光反射材の形状及び寸法とは、実質同一である。よって、光反射材の平均粒径は、例えば、以下の方法で算出することができる。
【0030】
(平均粒径の算出方法)
光反射材の粉末の粒径は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「TM3030Plus」を用いて算出する。まず、カーボン製の両面テープの一方の面を該顕微鏡の試料台に貼りつけ、その後、両面テープの他方の面に光反射材の粉末を配置する。顕微鏡の倍率を1000倍~2000倍に設定し、100個の光反射材の粉末(粒子)の画像を取得する。その後、画像解析ソフトウェアにより各粒子の粒径を測定する。
【0031】
本明細書において、光反射材の粉末の粒径は、光反射材の一方の主面から見たときの直径のうち最大の直径を意味する。次に、測定した粒子のメジアン径を算出し、該算出値を光反射材の平均粒径とする。なお、光反射材の粉末の粒径は、SEMにより被覆部材中間体3Aの断面を抽出し、画像解析ソフトウェアにより測定して算出してもよい。また、光反射材の平均粒径は、発光装置1を製造した後、SEMにより被覆部材3の断面を抽出し、画像解析ソフトウェアにより測定することによっても算出することができる。
【0032】
被覆部材中間体3Aに含まれるアルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸リチウムが挙げられる。
【0033】
発光装置中間体1Aは、
図2に示す例では、複数の発光素子2のそれぞれの発光面23に配置された複数の透光性部材4を備える。但し、これに限らず、発光装置中間体1Aは、1つの透光性部材4の主面に複数の発光素子2が配置されていてもよい。
【0034】
透光性部材4は、発光素子2からの光の少なくとも一部を波長変換可能な波長変換材料を含むことができる。これにより、本実施形態の製造方法により製造される発光装置1の色度調整が容易になる。透光性部材4に含有される波長変換材料は、1種類でもよく、複数種類でもよい。
【0035】
透光性部材4は、波長変換材料及び母材で構成されてもよく、波長変換材料のみで構成されてもよい。
【0036】
透光性部材4が波長変換材料及び母材で構成される場合、波長変換材料は、母材中に含まれてもよく、母材の表面に配置されてもよい。波長変換材料が母材の表面に配置される場合、母材における発光素子2と対向する面に波長変換材料を配置することができる。また、母材の表面には、波長変換材料のみが配置されてもよく、波長変換材料を含んだ樹脂が配置されてもよい。
【0037】
波長変換材料は、母材中に含まれる場合、波長変換材料は、母材中に分散して配置されていてもよく、偏在して配置されてもよい。
【0038】
母材の材料としては、ガラス、セラミック、サファイア等の無機材料、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂のうちの一種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0039】
波長変換材料としては、公知の蛍光体を用いることができる。蛍光体としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(PO4)6Cl2:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、Sr4Al14O25:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu)、シリケート系蛍光体(例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)若しくはαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等の酸窒化物系蛍光体、LSN系蛍光体(例えば、(La,Y)3Si6N11:Ce)、BSESN系蛍光体(例えば、(Ba,Sr)2Si5N8:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl3N4:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、K2SiF6:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K2(Si1-xAlx)F6-x:Mn ここで、xは、0<x<1を満たす。)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット(例えば、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(F,Cl,Br,I)3 ここで、FAとMAは、それぞれホルムアミジニウムとメチルアンモニウムを表す。)、II-VI族量子ドット(例えば、CdSe)、III-V族量子ドット(例えば、InP)、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット(例えば、(Ag,Cu)(In,Ga)(S,Se)2)等を用いることができる。
【0040】
なお、透光性部材4は、目的に応じて、光拡散材を含むことができる。光拡散材としては、当該分野で公知のものを使用することができる。光拡散材としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等を用いることができる。
【0041】
発光装置中間体1Aを準備する工程は、例えば、光反射材の粉末と、酸化ケイ素の粉末と、アルカリ金属水溶液とを混合し混合物を形成する工程と、発光素子2を当該混合物で被覆する工程と、発光素子2を被覆する当該混合物を加熱して被覆部材中間体3Aを形成する工程とを含む。
【0042】
(混合物を形成する工程)
混合物を形成する工程において、光反射材の粉末、及び酸化ケイ素の粉末を混合した混合粉をアルカリ金属水溶液と混合し、混合物を準備する。例えば、混合粉を均一な粘性が得られる程度まで混合した後に、減圧して撹拌できる撹拌脱泡機によって脱泡及び撹拌する。
【0043】
光反射材の詳細は、前述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
アルカリ金属水溶液の濃度は、例えば、1mol/L以上5mol/L以下である。アルカリ金属水溶液の濃度が低すぎると、混合物の硬化性が悪くなり、被覆部材中間体3Aの強度の低下や分解が生じる場合がある。一方、アルカリ金属水溶液の濃度が高すぎると、余剰なアルカリ金属が析出し、発光素子2の信頼性が低下する場合がある。アルカリ金属水溶液は、例えば、水酸化カリウム溶液又は水酸化ナトリウム溶液である。
【0045】
酸化ケイ素の粉末と光反射材の粉末との重量比、例えば、1:4以上1:1以下である。即ち、酸化ケイ素の粉末と光反射材の粉末とは、例えば、酸化ケイ素の粉末の重量に対し、光反射材の粉末の重量が1倍以上4倍以下である。アルカリ金属水溶液と混合粉との重量比は、例えば、2:10以上8:10以下である。即ち、アルカリ金属水溶液と混合粉とは、アルカリ金属水溶液の重量に対し混合粉の重量が、1.25倍以上5倍以下である。混合粉の重量に対してアルカリ金属水溶液の重量が少なすぎると、混合粉とアルカリ金属水溶液を混合した時に細かなダマが複数個形成されてしまい、成形が困難となる。一方、混合粉の重量に対してアルカリ金属水溶液の重量が多すぎると、混合物を加熱して硬化する時にクラックが発生したり、硬化して得られた被覆部材中間体3Aの強度が低下する場合がある。
【0046】
(発光素子2を被覆する工程)
発光素子2を被覆する工程において、
図2Aに示す例では、透光性部材4における発光素子2と対向する面と反対側に位置する面を混合物で被覆せず、発光素子2の電極形成面24及び側面25、並びに透光性部材4の側面41を混合物で被覆する。前述のように発光素子2を被覆する方法として、例えば、平板の支持体を準備し、支持体に透光性部材4及び発光素子2を配置した後、混合物を発光素子2側から塗布することが挙げられる。発光装置中間体1Aが複数の発光素子2を有する場合は、隣り合う発光素子2同士の間を埋めるように発光素子2を混合物で被覆することができる。更に、発光装置中間体1Aが複数の透光性部材4を有する場合は、隣り合う透光性部材4同士の間を埋めるように発光素子2及び透光性部材4を混合物で被覆することができる。なお、透光性部材4を備えていない発光装置1を製造する場合、当該工程において、発光素子2の電極形成面24のみ、又は発光素子2の電極形成面24及び側面25を混合物で被覆することができる。
【0047】
(被覆部材中間体3Aを形成する工程)
被覆部材中間体3Aを形成する工程において、混合物を加熱することで硬化させて被覆部材中間体3Aを形成する。加熱により、混合物に含まれるアルカリ金属と酸化ケイ素とが反応し、アルカリ金属ケイ酸塩を含む被覆部材中間体3Aが形成される。この工程は、例えば、混合物を第1温度T1で硬化させる仮硬化工程と、混合物を第1温度T1よりも高い第2温度T2で硬化させる本硬化工程と、を含む。仮硬化工程は、例えば、80℃以上100℃以下の第1温度T1で、10分以上2時間以下の間加熱する。本硬化工程は、例えば、150℃以上250℃以下の第2温度T2で、10分以上3時間以下の間加熱する。
【0048】
図2Aに示すように、発光装置中間体1Aが複数の発光素子2を有する場合、発光装置中間体1Aを準備する工程において、準備する発光装置中間体1Aは、被覆部材中間体3Aのうち隣り合う発光素子2間に位置する部位に溝部5を有することが好ましい。これにより、後述する被覆部材3を形成する工程において、溝部5にアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が入り込み、被覆部材中間体3Aにおける、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が接触する面積が増加するため、後述する置換反応をより広範囲にわたって行うことができる。また、後述する個片化する工程において、置換後の発光装置中間体1Bを溝部5において切断することにより容易に個片化することができる。
【0049】
また、
図2Aに示すように、発光装置中間体1Aが複数の発光素子2の発光面23にそれぞれ配置された複数の透光性部材4を備えている場合、又は発光装置中間体1Aが透光性部材4を備えていない場合は、発光装置中間体1Aを準備する工程において、溝部5は、発光素子2の電極形成面24側に開口していてもよく、発光素子2の発光面23側に開口していてもよい。また、溝部5は、発光装置中間体1Aを貫通していなくてよく、貫通していてもよい。1つの透光性部材4の主面に複数の発光素子2が配置されている発光装置中間体1Aの場合は、発光装置中間体1Aを準備する工程において、溝部5は、発光素子2の電極形成面24側に開口する。
【0050】
(被覆部材3を形成する工程)
本実施形態の発光装置1の製造方法は、
図2Bに示すように、被覆部材中間体3Aをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材3を形成する工程を含む。ここで、浸漬とは、反応容器7においてアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に浸すことによって被覆部材中間体3A内部にアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液を浸透させることに限らず、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6を噴射又は滴下することによって被覆部材中間体3A内部にアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液を浸透させることを含む。
【0051】
この工程により、被覆部材中間体3Aを構成するアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属を、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6中のアルカリ土類金属に置換することができる。この置換反応の結果、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材3と、アルカリ金属ハロゲン塩の生成物とが形成される。
【0052】
アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に溶解されているアルカリ土類金属ハロゲン塩に含まれるハロゲンは、例えば、塩素、臭素、ヨウ素である。また、アルカリ土類金属は、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウムである。よって、アルカリ土類金属ハロゲン塩は、上述したハロゲンと、アルカリ土類金属との化合物である。
【0053】
アルカリ土類金属ハロゲン塩は、例えば、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムである。被覆部材中間体3Aを構成するアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属がケイ酸カリウムで、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が塩化カルシウムである場合、置換反応によって、ケイ酸カルシウムを含む被覆部材3と、塩化カリウムの生成物が形成される。また、被覆部材中間体3Aを構成するアルカリ金属ケイ酸塩のアルカリ金属がケイ酸カリウムで、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が塩化マグネシウムである場合、置換反応によって、ケイ酸マグネシウムを含む被覆部材3と、塩化カリウムの生成物が形成される。ケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムは、アルカリ土類金属ケイ酸塩の中でも水分と反応しにくい。このため、水分との反応による金属イオンの発生を低減することができる。これにより、金属イオンが発光素子2の電極22に接触することによって生じるリーク電流の発生を低減することができ、信頼性の高い発光装置1を製造することができる。
【0054】
アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6の濃度は、例えば、0.5mol/L以上2.5mol/L以下である。上述した範囲内であれば、アルカリ金属と置換反応しやすい。
【0055】
被覆部材3を形成する工程において、被覆部材中間体3Aの外表面全体にアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が接触するように浸漬させることができる。これにより、被覆部材中間体3Aを構成する外表面全体で置換反応が行われる。よって、本実施形態の発光装置1の製造方法によれば、信頼性の高い発光装置1を製造することができる。なお、被覆部材3を形成する工程において、被覆部材中間体3Aの一部にアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6が接触するように浸漬させてもよい。
【0056】
被覆部材3を形成する工程において、被覆部材中間体3Aを浸漬させるアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6の温度は、50℃以上であることが好ましい。これにより、置換反応が促進する。よって、本実施形態の発光装置1の製造方法によれば、信頼性の高い発光装置1を製造することができる。被覆部材中間体3Aをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に浸漬させる時間は、置換反応を十分に進行させる観点から、15時間以上であることが好ましい。なお、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6の温度が50℃以上であれば、アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6は沸騰していてもよいし、沸騰していなくてもよい。
【0057】
図2Cに示すように、被覆部材3を形成する工程の後、置換後の発光装置中間体1Bをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6から取り出す。
【0058】
(水洗する工程)
本実施形態の発光装置1の製造方法は、被覆部材3を形成する工程の後に、被覆部材3を水洗する工程を含むことができる。置換反応では、前述したように、アルカリ金属ハロゲン塩の生成物が形成される。このため、水洗を行うことにより、置換後の発光装置中間体1Bに付着した、上述したアルカリ金属ハロゲン塩を除去することができる。また、同時に、水洗を行うことにより、未反応のアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6を除去することができる。よって、本実施形態の発光装置1の製造方法によれば、信頼性の高い発光装置1を製造することができる。
【0059】
水洗する工程において、50℃以上の水を用いることが好ましい。これにより、洗浄効果が高まり、置換後の発光装置中間体1Bに付着した、アルカリ金属ハロゲン塩や未反応のアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6をより除去することができる。水洗する時間は、十分に洗浄する観点から、15時間以上であることが好ましい。水洗に用いる水は、例えば、純水が挙げられる。純水としては、例えば、RO(Reverse Osmosis)水、精製水、脱イオン水、蒸留水等が挙げられる。
【0060】
本実施形態の発光装置1の製造方法は、水洗する工程の前及び後、又は水洗する工程の後に、被覆部材3を乾燥させる工程を含むことができる。
【0061】
(電極を露出させる工程)
本実施形態の発光装置1の製造方法は、
図2Dに示すように、被覆部材3を形成する工程の後に、置換後の発光装置中間体1Bの被覆部材3における電極形成面24側に配置される被覆部材3の一部を除去し、電極22を露出させる工程を含むことができる。被覆部材3の除去は、例えば、研削によって行うことができる。
【0062】
(個片化する工程)
本実施形態の発光装置1の製造方法は、
図2Eに示すように、被覆部材3を形成する工程の後に、置換後の発光装置中間体1Bを溝部5において切断し個片化する工程を含むことができる。例えば、ブレード等の切断刃を用いて、切断刃が溝部5を通過するように切断することができる。
【0063】
<発光装置>
図1に示すように、発光装置1は、発光素子2と、光反射材及びアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、発光素子2を被覆する被覆部材3とを備える。この構成により、被覆部材3を構成するアルカリ土類金属ケイ酸塩が、発光装置1の駆動時に、例えば大気中に存在する水分と反応しにくいため、信頼性の高い発光装置1を提供することができる。詳細を以下に説明する。
【0064】
アルカリ土類金属ケイ酸塩は、水への溶解度が比較的低いため、水分と反応しにくい。このため、水分との反応による金属イオンの発生を低減することができるため、金属イオンが発光素子2の電極22に接触することによって生じるリーク電流の発生を低減することができるからである。
【0065】
以下、発光装置中間体1Aと共通する部材については、発光装置中間体1Aにおける説明と同様であるため説明を省略する場合がある。
【0066】
被覆部材3は、
図1に示す例では、被覆部材3は、発光素子2の電極形成面24及び側面25を被覆している。
【0067】
被覆部材3に含まれる光反射材は、発光装置中間体1Aに含まれる光反射材と同様のものであるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
被覆部材3に含まれるアルカリ土類金属ケイ酸塩としては、前述した通り、例えば、ケイ酸カルシウム、又は、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。なお、被覆部材3は、被覆部材中間体3Aをアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液6に浸漬させた際にアルカリ土類金属ケイ酸塩に置換されなったアルカリ金属ケイ酸塩を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。被覆部材3がアルカリ金属ケイ酸塩を含む場合、例えば、被覆部材中間体3Aに含まれるアルカリ金属ケイ酸塩の少なくとも半分以上がアルカリ土類金属ケイ酸塩に置換されていることが好ましい。
【0069】
被覆部材の抵抗率は、1.0×1011Ω・cm以上であるのが好ましい。例えば、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下である。前述した範囲であれば、発光装置1の絶縁性部材として被覆部材を用いることができ、発光装置1の信頼性を向上させることができる。
【0070】
発光装置1は、
図1に示す例では、発光素子2の発光面23に配置された透光性部材4を備える。また、被覆部材3は、透光性部材4の側面41を被覆する。被覆部材3から露出した透光性部材4の上面42は、発光装置1の光出射面11である。被覆部材3は、発光装置1の外側面の一部を構成している。
【0071】
透光性部材4は、発光素子2の発光面23に、接着材を介して配置されてもよいし、接着材を介することなく直接配置されてもよい。
【0072】
発光装置1は、
図1に示す例では、透光性部材4を備えている。但し、これに限らず、発光装置1は、透光性部材4を備えていなくてもよい。発光装置1が透光性部材4を備えていない場合、発光素子2の発光面23が発光装置1の光出射面11となる。
【0073】
透光性部材4の詳細は、前述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
発光装置1は、
図1に示す例では、配線基板を備えていない。但し、これに限らず、発光装置1は、配線基板を備えていてもよい。発光装置1が配線基板を備える場合は、配線基板の配線に、発光素子2の電極22が電気的に接続される。また、配線基板における発光素子と対向する面において、発光素子2の電極22と電気的に接続される領域以外に被覆部材3を配置することができる。また、1つの配線基板に、1つの発光素子2が電気的に接続されてもよいし、複数の発光素子2が電気的に接続されてもよい。配線基板の基材は、例えば、窒化アルミニウムを用いることができる。
【実施例0075】
以下、実施例を示して実施形態を更に具体的に説明する。
【0076】
まず、平均粒径10μm、平均アスペクト比20の窒化ホウ素の粉末、及び平均粒径がメジアン径で0.4μmの酸化ケイ素の粉末を混合した混合粉を、濃度3mol/Lの水酸化カリウム溶液と混合し、混合物を準備した。酸化ケイ素の粉末と窒化ホウ素の粉末とは、重量比を3:5にして混合した。水酸化カリウム溶液と混合粉とは、重量比を3.8:9にして混合した。混合粉と水酸化カリウム溶液との混合は、均一な粘性が得られる程度まで混合した後に、減圧して撹拌できる撹拌脱泡機によって脱泡及び撹拌した。
【0077】
次に、混合物を第1温度90℃、1MPaの圧力下で1時間加熱し、仮硬化させた。更に、混合物を第2温度200℃、1MPaの圧力下で2時間加熱し、本硬化させ、被覆部材中間体を作製した。
【0078】
被覆部材中間体を、濃度1.5mol/Lの塩化カルシウム溶液に、70℃で17時間浸漬して、被覆部材を形成した。被覆部材を70℃の水に17時間浸漬して水浄した後、40℃で30分真空乾燥させた。
【0079】
実施例に係る被覆部材中間体と被覆部材について、X線回折法(XRD)による元素分析を行った。この結果、被覆部材において、カルシウムが検出され、また、被覆部材中間体に対してカリウムの含有量が減少した。これにより、被覆部材中間体に含まれるケイ酸カリウムのカリウムが、塩化カルシウム溶液に由来するカルシウムに置換されたことを確認した。
【0080】
また、実施例に係る被覆部材中間体と被覆部材について、高抵抗抵抗率計(三菱化学社製、ハイレスタ-UP(型番:MCP-HT450))により抵抗率の測定を行った。
この測定結果を
図3に示す。
図3は、実施例に係る被覆部材中間体と被覆部材の抵抗率を示すグラフである。被覆部材中間体の抵抗率は、2.19×10
10Ω・cmであり、被覆部材の抵抗率は、5.09×10
11Ω・cmであった。
図3に示すように、被覆部材中間体の抵抗率に対して、被覆部材の抵抗率が上昇したことからも、被覆部材中間体に含まれるケイ酸カリウムのカリウムが、塩化カルシウム溶液に由来するカルシウムに置換されたことを確認した。
【0081】
(本発明の態様)
本発明は、以下の態様を含む。
<態様1>
発光素子と、光反射材及びアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材中間体と、を備える発光装置中間体を準備する工程と、
前記被覆部材中間体をアルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に浸漬させて、アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む被覆部材を形成する工程と、を含む発光装置の製造方法である。
<態様2>
前記被覆部材を形成する工程において、前記被覆部材中間体の外表面全体に前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液が接触するように浸漬させる態様1に記載の発光装置の製造方法である。
<態様3>
前記発光装置中間体は、複数の前記発光素子と、複数の前記発光素子を被覆し、隣り合う前記発光素子同士を連結する前記被覆部材中間体と、で構成され、
前記発光装置中間体を準備する工程において、準備する前記発光装置中間体は、前記被覆部材中間体のうち前記隣り合う発光素子間に位置する部位に溝部を有する、態様1又は2に記載の発光装置の製造方法である。
<態様4>
前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下である態様1から3のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法である。
<態様5>
前記アルカリ土類金属ハロゲン塩水溶液に溶解されているアルカリ土類金属ハロゲン塩は、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムである態様1から4のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法である。
<態様6>
前記光反射材は、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムである態様1から5のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法である。
<態様7>
前記被覆部材を形成する工程の後に、前記被覆部材を水洗する工程を含む、態様1から6のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法である。
<態様8>
前記水洗する工程において、50℃以上の水を用いる態様7に記載の発光装置の製造方法である。
<態様9>
発光素子と、
光反射材及びアルカリ土類金属ケイ酸塩を含み、前記発光素子を被覆する被覆部材と、を備える発光装置である。
<態様10>
前記アルカリ土類金属ケイ酸塩は、ケイ酸カルシウム又はケイ酸マグネシウムである態様9に記載の発光装置である。
<態様11>
前記光反射材は、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムである態様9又は10に記載の発光装置である。
<態様12>
前記被覆部材の抵抗率は、1.0×1011Ω・cm以上1.0×1012Ω・cm以下である態様9から11のいずれか1つに記載の発光装置である。
<態様13>
前記発光素子の発光面に配置された透光性部材を備え、
前記被覆部材が透光性部材の側面を被覆する態様9から12のいずれか1つに記載の発光装置である。