(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022740
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】液体電解質およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20250206BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250206BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250206BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080892
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0100657
(32)【優先日】2023-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ミョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サンフン
(72)【発明者】
【氏名】ユウ,アルム
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ナムスン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ11
5H029HJ14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた電池の安全性を実現することができる液体電解質およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】液体電解質は、リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤を含み、添加剤は下記化学式1で表される高分子を含む。
[化学式1]
化学式1中、R
1~R
3はそれぞれ独立して水素、フッ素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、nおよびmはそれぞれモル分率であって、50mol%≦n≦90mol%、10mol%≦m≦50mol%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤を含み、
前記添加剤は下記化学式1で表される高分子を含む、液体電解質:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
R
1~R
3はそれぞれ独立して水素、フッ素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
nおよびmはそれぞれモル分率であって、50mol%≦n≦90mol%、10mol%≦m≦50mol%である。
【請求項2】
前記nおよびmは、n:mが80mol%:20mol%~60mol%:40mol%である、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項3】
前記高分子の分子量は100,000g/mol~400,000g/molである、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項4】
前記高分子は10nm~1μmの平均粒径を有する粒子相である、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項5】
前記化学式1のR1~R3はそれぞれ独立して水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基である、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項6】
前記高分子は、ポリ(ビニリデンフルオライド-co-トリフルオロエチレン)である、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項7】
前記高分子は、100℃~120℃の温度でゲル化される、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項8】
前記高分子は、液体電解質の全体100重量部に対して0.1~15重量部で含まれる、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項9】
前記非水性有機溶媒は環状カーボネートおよび線状カーボネートを10:90vol%~50:50vol%の体積比で含む、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項10】
前記液体電解質は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種のその他の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の液体電解質。
【請求項11】
正極活物質を含む正極、
負極活物質を含む負極、および
請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の液体電解質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体電解質、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は再充電が可能であり、従来の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などと比較して単位重量当りエネルギー密度が3倍以上高く高速充電が可能であるため、ノートパソコンや携帯電話機、電動工具、電気自転車用に商品化されており、追加的なエネルギー密度向上のための研究開発が活発に行われている。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、リチウムをインターカレーション(intercalation)およびデインターカレーション(deintercalation)することができる正極活物質を含む正極と、リチウムをインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる負極活物質を含む負極とを含む電池セルに電解質を注入して使用される。
【0004】
現在商用化されているリチウム二次電池の電解質は、高い動作電圧に耐えるために有機カーボネート系溶媒を使用している。
【0005】
しかしながら、有機カーボネート系溶媒は揮発性および可燃性が高く、引火点が低いため、高温による気化によって電池が膨らみ(swelling)、polyethylene(PE)材質の分離膜が溶融収縮(melt down)されてリチウム二次電池の安全上の問題を引き起こす場合がある。
【0006】
リチウム二次電池の安全上の問題を解決するために、分離膜、集電体、活物質、バッテリー管理システム(Battery managing system、BMS)を含む広範囲の研究が行われている。しかしながら、高引火性有機溶媒を使用する限り、問題の解決が容易ではないのが実情である。実際、最近、電気自動車の発火事故が頻繁に発生することによってリチウム二次電池の安全上の問題が活発に議論されており、特に根本的な問題の解決のためには電解質の観点からの解決方法を導出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2021-0018153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、優れた電池の安全性を実現することができる液体電解質を提供する。
【0009】
また他の一実施形態は、上記液体電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る液体電解質は、リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤を含み、添加剤は下記化学式1で表される高分子を含む、液体電解質を提供する。
[化学式1]
【化1】
化学式1中、
R
1~R
3はそれぞれ独立して水素、フッ素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
nおよびmはそれぞれモル分率であって、50mol%≦n≦90mol%、10mol%≦m≦50mol%である。
【0011】
本発明の他の一実施形態に係るリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および上記液体電解質を含む。
【発明の効果】
【0012】
問題発生時、電池のイオン伝導を遮断して電解液の気化によるスウェリング現象を抑制し、分離膜の収縮を抑制することによって電池の短絡、発熱および爆発を防止することができる安全性が改善されたリチウム二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係るリチウム二次電池を概略的に示した断面図である。
【
図2】一実施形態に係るリチウム二次電池を概略的に示した断面図である。
【
図3】一実施形態に係るリチウム二次電池を概略的に示した断面図である。
【
図4】一実施形態に係るリチウム二次電池を概略的に示した断面図である。
【
図5】リチウム二次電池に対する高温充放電時サイクル進行による放電容量およびクーロン効率を示すグラフである。
【
図6】パウチフルセルのホットボックス(Hot-box)テスト結果を示した結果グラフである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る液体電解質のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図8】常温(25℃)および高温(120℃)到達後1時間維持したセルの直流抵抗を測定した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態で実現することができ、本明細書で説明する実施形態に限定されない。
【0015】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0016】
本明細書で「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0017】
本明細書で「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素。またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、もしくはこれらを組み合わせたものの存在。または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0018】
本明細書で別途の定義がない限り、粒径は平均粒径であってもよい。また、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する平均粒径(D50)を意味する。平均粒径(D50)測定は当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器(Particle size analyzer)で測定するか、または透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)写真または走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)写真で測定することもできる。他の方法では、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数を計測した後、これから計算して平均粒径(D50)値を得ることができる。あるいは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。レーザ回折法によって測定時、より具体的には、測定しようとする粒子を分散媒中に分散させた後、市販されるレーザ回折粒径測定装置(例えば、Microtrac社MT3000)に導入して約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0019】
図面で様々の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一の図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるという時、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0020】
また、本明細書で「層」とは、平面図で観察した時、全体面に形成されている形状だけでなく、一部面に形成されている形状も含む。
【0021】
本明細書で「または」は排除的な(exclusive)意味に解釈されず、例えば「AまたはB」はA、B、A+Bなどを含むと解釈される。
【0022】
「金属」は一般金属と遷移金属および半金属を含む概念に解釈される。
【0023】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換の炭素数1~40のシリル基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0024】
本発明の一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数6~30のアリールシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数2~30のヘテロアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数1~10のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~5のフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」は、置換基または化合物中の少なくとも一つの水素が重水素、シアノ基、ハロゲン基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、トリフルオロメチル基またはナフチル基で置換されたことを意味する。
【0025】
リチウム二次電池は形態によって円筒型、角型、パウチ型、コイン型などに分類することができる。
図1~
図4は一実施形態に係るリチウム二次電池を示した概略図であって、
図1は円型、
図2は角型、
図3と
図4はパウチ型の電池形態と言える。
図1~
図4を参照すれば、リチウム二次電池100は正極10と負極20の間にセパレータ30が介された電極組立体40、そして電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。正極10、負極20およびセパレータ30は電解液(図示せず)で含浸されていてもよい。リチウム二次電池100は
図1のようにケース50を密封する密封部材60を含むことができる。また、
図2でリチウム二次電池100は、正極リードタップ11と正極端子12、負極リードタップ21および負極端子22を含むことができる。
図3および
図4のようにリチウム二次電池100は、電極組立体40で形成された電流を外部に誘導するための電気的通路役割を果たす電極タップ70、即ち、正極タップ71および負極タップ72を含むことができる。
【0026】
以下、一実施形態に係る電解質について説明する。
【0027】
本発明の一実施形態に係る電解質は液体電解質であり、リチウム塩、非水性有機溶媒、添加剤を含み、当該添加剤は下記化学式1で表される高分子を含むことができる。
[化学式1]
【化2】
化学式1中、
R
1~R
3はそれぞれ独立して水素、フッ素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
nおよびmはそれぞれモル分率であって、50mol%≦n≦90mol%、10mol%≦m≦50mol%である。
【0028】
化学式1で表される高分子は100℃以上の高温露出時に液体電解質内で結晶化によってゲル化されることによって電解液の気化とこれによる電池の膨張を抑制するだけでなく、電池のイオン伝導および電子伝導を遮断し、約140℃で溶融して収縮するPE分離膜を物理的に固定するメカニズムを通じて正極と負極の直接接触、即ち、短絡(short-circuit)によるエネルギーの急激な放出を防止して、これによる火災および爆発を抑制し電池の安全性を向上させることができる。
【0029】
特に、化学式1で表される高分子は高温、衝撃などの問題発生前には液体電解質内に分散している状態であり、化学式1で表される高分子が含まれる電解質は液体電解質であるので、高分子が重合開始剤と共に重合されて形成される固体電解質とは電解質の相(phase)において構成が互いに異なる。
【0030】
固体電解質の場合には電池内で電解質が固体状態で存在するので、イオン伝導度が低くて出力が低く寿命が短くて本発明に係る液体電解質を適用した電池とは効果面で顕著な差が出るはずである。
【0031】
一例として、nおよびmは、n:mが80mol%:20mol%~60mol%:40mol%または80mol%:20mol%~70mol%:30mol%であってもよい。
【0032】
高分子内ビニリデンフルオライド構造単位の含量がトリフルオロエチレン構造単位の含量に対して相対的に高いほど、電池の安全性が効果的に改善される。
【0033】
高分子の分子量は100,000g/mol~400,000g/molであってもよい。
【0034】
一例として、高分子の分子量は200,000g/mol~400,000g/molであってもよい。
【0035】
高分子は10nm~1μmの平均粒径を有する粒子相であってもよい。
【0036】
一例として、高分子の平均粒径は10nm~900nm、10nm~800nm、10nm~700nm、または10nm~600nmであってもよい。
【0037】
一例として、高分子の平均粒径は30nm~1μm、50nm~1μm、100nm~1μm、100nm~900nm、100nm~800nm、100nm~700nmまたは100nm~600nmであってもよい。
【0038】
高分子は粒子相であってもよく、平均粒径が上記範囲内である場合、電解液内で高分子の沈殿が緩和されてサイクル反復による容量低下を緩和できる。
【0039】
一例として、化学式1のR1~R3はそれぞれ独立して水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0040】
一例として、高分子はポリ(ビニリデンフルオライド-co-トリフルオロエチレン)であってもよい。
【0041】
高分子は100℃~120℃の温度でゲル化されてもよい。
【0042】
一例として、高分子は液体電解質の全体100重量部に対して0.1~15重量部で含まれてもよい。
【0043】
具体的に、高分子は液体電解質の全体100重量部に対して0.5~15重量部、例えば1~15重量部、または5~15重量部で含まれてもよい。
【0044】
高分子の含量が上記範囲の場合、寿命特性および出力特性を確保しながら高温での抵抗増加を防止して安全性が改善されたリチウム二次電池を実現することができる。
【0045】
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。
【0046】
非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0047】
カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、非プロトン性溶媒としてはR1-CN(R1は炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0048】
非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0049】
本発明の一実施形態に係る非水性有機溶媒は、環状カーボネートおよび線状カーボネート(環状カーボネート:線状カーボネート)を10:90vol%~50:50vol%の体積比で含むことができる。
【0050】
具体的に、非水性有機溶媒は環状カーボネートおよび線状カーボネートを10:90vol%~40:60vol%の体積比、例えば10:90vol%~30:70vol%の体積比または10:90vol%~25:75vol%の体積比で含むことができる。
【0051】
前述の組成の非水性有機溶媒は特定温度以上で液体電解質内の高分子がゲル化されながら電解液の粘度が増加し、抵抗が増加するにつれてゲル化された高分子は絶縁体(insulator)として作用して電池のイオン伝導および電子伝導を遮断するようになるため、電池の安全性を確保することができる。
【0052】
液体電解質は、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、アジポニトリル(AN)、コハク酸ニトリル(SN)、1,3,6-ヘキサントリシアニド(HTCN)、プロペンスルトン(PST)、プロパンスルトン(PS)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、および2-フルオロビフェニル(2-FBP)のうちの少なくとも1種のその他の添加剤をさらに含むことができる。
【0053】
その他の添加剤をさらに含むことによって寿命がさらに向上するか高温保存時に正極と負極から発生するガスを効果的に制御することができる。
【0054】
その他の添加剤はリチウム二次電池用電解液の全体100重量部に対して0.2~20重量部の含量で含まれてもよく、具体的に0.2~15重量部、例えば0.2~10重量部で含まれてもよい。
【0055】
その他の添加剤の含量が上記範囲の場合、被膜抵抗増加を最少化して電池性能向上に寄与できる。
【0056】
リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の動作を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiCl、LiI、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI))、LiC4F9SO3、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(xおよびyは1~20の整数である)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムテトラフルオロエタンスルホネート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)から選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0057】
本発明の他の一実施形態は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および前述の液体電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0058】
正極は正極集電体および正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、正極活物質層は正極活物質を含み、選択的にバインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0059】
正極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションの可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを使用することができる。
【0060】
複合酸化物はリチウム遷移金属複合酸化物であってもよく、具体的な例としては、リチウムニッケル系酸化物、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウムリン酸鉄系化合物、コバルト-フリーニッケル-マンガン系酸化物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
一例としては、下記化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用することができる。LiaA1-bXbO2-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaMn2-bXbO4-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaNi1-b-cCobXcO2-αDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiaNibCocL1
dGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.1);LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-bGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001b≦0.1);LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-gGgPO4(0.90≦a≦1.8、0≦g≦0.5);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiaFePO4(0.90≦a≦1.8)。
【0062】
上記化学式において、AはNi、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり、XはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり、DはO、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり、GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり、L1はMn、Alまたはこれらの組み合わせである。
【0063】
一例として、正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物においてリチウムを除いた金属100モル%に対するニッケルの含量が80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、91モル%以上、または94モル%以上であり99モル%以下である高ニッケル系正極活物質であってもよい。高ニッケル系正極活物質は高い容量を実現することができて高容量、高密度リチウム二次電池に適用できる。
【0064】
正極活物質の含量は、正極活物質層100重量%に対して90重量%~99.9重量%であり、バインダーおよび導電材の含量は正極活物質層100重量%に対してそれぞれ0.1重量%~5重量%であってもよい。
【0065】
バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を正極集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、(メタ)アクリレーテッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0066】
導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉末または金属繊維形態の金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
正極集電体としてはAlを使用することができるが、これに限定されない。
【0068】
負極は負極集電体およびこの負極集電体上に位置する負極活物質層を含み、負極活物質層は負極活物質を含み、選択的にバインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0069】
記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0070】
リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては炭素系負極活物質であって、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。結晶質炭素の例としては無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、非晶質炭素の例としてはソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0071】
リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnから選択される金属の合金を使用することができる。
【0072】
リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができる。Si系負極活物質は、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素(Siを除く)、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせから選択される)、またはこれらの組み合わせであってもよい。Sn系負極活物質としては、Sn、SnO2、Sn系合金またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0073】
シリコン-炭素複合体は、シリコンと非晶質炭素の複合体であってもよい。一実施形態によれば、シリコン-炭素複合体は、シリコン粒子およびシリコン粒子の表面に非晶質炭素がコーティングされた形態であってもよい。例えば、シリコン1次粒子が造粒された2次粒子(コア)およびこの2次粒子表面に位置する非晶質炭素コーティング層(シェル)を含むことができる。非晶質炭素はシリコン1次粒子の間にも位置して、例えば、シリコン1次粒子が非晶質炭素でコーティングされてもよい。2次粒子は、非晶質炭素マトリックスに分散して存在し得る。
【0074】
シリコン-炭素複合体は、結晶質炭素をさらに含んでもよい。例えば、シリコン-炭素複合体は、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコアおよびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むことができる。
【0075】
Si系負極活物質またはSn系負極活物質は炭素系負極活物質と混合して使用することができる。
【0076】
例えば、負極活物質層は負極活物質を90重量%~99重量%、バインダーを0.5重量%~5重量%、導電材を0重量%~5重量%で含むことができる。
【0077】
バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーとしては、非水系バインダー、水系バインダー、乾式バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0078】
非水系バインダーとしては、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
水系バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、(メタ)アクリレーテッドスチレン-ブタジエンゴム、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0080】
負極バインダーとして水系バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系列化合物をさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。
【0081】
乾式バインダーは繊維化が可能な高分子物質であって、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシドまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0082】
導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものも使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含む金属粉末または金属繊維形態の金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせから選択されるものを使用することができる。
【0084】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が使用でき、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用できるのはもちろんである。
【0085】
セパレータは多孔性基材、そして多孔性基材の一面または両面に位置する有機物、無機物またはこれらの組み合わせを含むコーティング層を含むことができる。
【0086】
多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、およびポリテトラフルオロエチレンから選択されたいずれか一つの高分子、またはこれらのうちの2種以上の共重合体または混合物から形成された高分子膜であってもよい。
【0087】
有機物は、ポリビニリデンフルオライド系重合体または(メタ)アクリル系重合体を含むことができる。
【0088】
無機物は、Al2O3、SiO2、TiO2、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、Mg(OH)2、べーマイト(boehmite)およびこれらの組み合わせから選択される無機粒子を含むことができるが、これに限定されない。
【0089】
有機物と無機物は一つのコーティング層に混合されて存在するか、有機物を含むコーティング層と無機物を含むコーティング層が積層された形態で存在し得る。
【0090】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例0091】
(実施例:リチウム二次電池の作製)
(実施例1)
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド、および導電材としてアセチレンブラックをそれぞれ97.5:1:1.5の重量比で混合して、N-メチルピロリドンに分散させて正極活物質スラリーを作製した。
【0092】
正極活物質スラリーを15μm厚さのアルミニウム(Al)箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して正極を作製した。
【0093】
負極活物質として人造黒鉛を使用し、負極活物質とスチレン-ブタジエンゴムバインダーおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ98:1:1の重量比で混合して、蒸留水に分散させて負極活物質スラリーを作製した。
【0094】
負極活物質スラリーを10μm厚さの銅(Cu)箔の上にコーティングし、100℃で乾燥した後、圧延(press)して負極を作製した。
【0095】
作製された正極および負極と厚さ10μmのポリエチレン材質のセパレータを組み立てて電極組立体を製造し、液体電解質を注入してリチウム二次電池を作製した。
【0096】
液体電解質の組成は下記の通りである。
(液体電解質組成)
リチウム塩:LiPF6 1.15M
非水性有機溶媒:エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート(EC:EMC:DMC=20:40:40の体積比)
添加剤:
(1)高分子:Solvene(R)200/P200(Mw=200,000、n:m=80:20;Solvay社)15重量部、
(2)ビニレンカーボネート(VC:vinylene carbonate)1重量部
(但し、電解液組成で、「重量部」は添加剤を除いた電解液の全体(リチウム塩+非水性有機溶媒)重量に対する添加剤の相対的な重量を意味する。)
【0097】
(実施例2)
Solvene(R)200/P200の代わりにSolvene(R)200/P400(Mw=400,000、n:m=80:20;Solvay社)を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0098】
(実施例3)
Solvene(R)200/P200の代わりにSolvene(R)250/P400(Mw=400,000、n:m=75:25;Solvay社)を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0099】
(実施例4および実施例5)
高分子の含量を5重量部および10重量部にそれぞれ変更して液体電解質を製造したことを除いては、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0100】
(比較例1)
高分子を使用しないことを除いては、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0101】
(比較例2)
1.15M LiPF6およびビニレンカーボネート(VC:vinylene carbonate)1重量部が溶解された非水性有機溶媒(エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジメチルカーボネート=20:40:40の体積比)95.5gに、高分子(Solvene(R)200/P200)1gおよび重合開始剤(AIBN)0.5gを含む組成物を入れ、60℃で24時間加熱してゲルポリマー電解質を形成したことを除いては、実施例1と同様な方法でリチウム二次電池を作製した。
【0102】
(評価1:高温(45℃)寿命特性評価)
実施例1、実施例4、実施例5、および比較例1で作製されたリチウム二次電池に対して1Cで3サイクルの間充放電を実施した後、続いて1.5Cで充電および1Cで放電させて50サイクルを行いながら電池の放電容量およびクーロン効率を評価した。評価結果を
図5に示す。この時使用された電圧範囲は3.0V~4.2V(放電は3.0Vまで充電は4.2Vまで)、評価温度は45℃とした。
【0103】
図5は、リチウム二次電池に対する高温充放電時サイクル進行による放電容量およびクーロン効率を示すグラフである。
【0104】
図5を参照すれば、本発明に係る高分子を含む液体電解質は、高分子を含まない液体電解質と比較しても、放電容量およびクーロン効率が同等以上に維持されることを確認することができる。この評価結果から、電池の寿命特性が低下せずに優れた水準に維持されるはずであることが予測される。
【0105】
(評価2:ホットボックス評価)
実施例1~5、および比較例1によるパウチフルセルを化成サイクル後、SOC50(3.94V)まで充電後、130℃シリコンオイルに5分露出後、体積膨張程度を比較した。評価結果を
図6に示す。
【0106】
図6は、パウチフルセルのホットボックス(Hot-box)テスト結果を示した結果グラフである。
【0107】
図6を参照すれば、高分子を含まないパウチセル(比較例1)では、電解液ガス化による体積膨張によってパウチセルが裂けたが、高分子を含むパウチセル(実施例)では、電解液のガス化が抑制されることによって体積膨張程度が緩和されることを確認することができる。即ち、高分子を含む液体電解質の場合、高温保管環境でも熱安全性が改善されることが分かる。
【0108】
(評価3:TGA(Thermo Gravimetric Analysis)評価)
温度変化による物質の重量変化を測定するために、実施例1、比較例1、および比較例2に対してTGA分析を実施した。評価結果を
図7に示す。
【0109】
図7は、本発明の一実施形態による液体電解質のTGA分析結果を示したグラフである。
【0110】
図7を参照すれば、実施例1による液体電解質の場合、TGA分析結果、気化および熱分解によって常温での質量が半減する温度は124℃であって、比較例1による液体電解質(高分子を含まない)の質量が半減される温度(82℃)に対比して42℃増加したことが分かる。これは高分子が溶解された液体電解質導入時、有機溶媒が高分子の溶解に参加して高分子-溶媒間のファンデルワールス力による沸点上昇が発生し、これによって高温での電解液気化が遅延し電池の膨張および内部圧力増加による爆発を遅延させることができるのが分かる。
【0111】
一方、高分子自体で評価時、質量半減が起こらなく、これからゲルポリマー電解質が適用された比較例2の場合には本発明で目的とする電解液の気化遅延、電池膨張および内部圧力増加による爆発遅延の効果は期待することができないのを確認することができた。
【0112】
(評価4:高温直流抵抗(DC-IR)特性評価)
実施例1および比較例1によって作製されたリチウム二次電池に対して△V/△I(電圧の変化/電流の変化)値で初期直流抵抗(DCIR)を測定した後、電池内部の最大エネルギー状態を満充電状態(SOC100%)とし、この状態で常温(25℃)直流抵抗を測定し、高温(120℃)到達後、1時間維持したセルの直流抵抗を測定した。評価結果を
図8に示す。
【0113】
図8は、常温(25℃)および高温(120℃)到達後、1時間維持したセルの直流抵抗を測定した結果を示したものである。
【0114】
図8を参照すれば、実施例1による液体電解質を導入した電池は120℃まで温度上昇時、電解液のゲル化によって抵抗が大きく増加し、これによりゲル化された電解液が正極と負極の間で絶縁体として作用するようになって、正極と負極の短絡によるエネルギーの急激な放出および爆発、火災の危険を減少させることができるのを予想することができる。
【0115】
(評価5:高温放置後直流抵抗(DC-IR)特性評価)
実施例1および比較例2によって作製されたリチウム二次電池に対して△V/△I(電圧の変化/電流の変化)値で初期直流内部抵抗(DC-IR)を測定した後、電池内部の最大エネルギー状態を満充電状態(SOC100%)とし、この状態で常温(25℃)直流内部抵抗を測定し、高温(60℃)で5日間放置した後の直流内部抵抗を測定した。評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1を参照すれば、ゲルポリマー形成時(比較例2)、開始剤が作動する50℃~60℃ですでに抵抗増加が発生して当該セルの高温放置抵抗値は実施例に比べて高く、これに加えて持続的な架橋反応による抵抗増加で追加的な抵抗増加が発生して、結果的に実施例に対比して抵抗増加率が非常に高いのを確認することができる。
【0118】
一方、実施例による液体電解質内高分子は100℃~120℃の温度でゲル化されるので60℃ではゲル化による抵抗増加がほとんど起こらなくなるので相対的に60℃放置抵抗が低く確認される。
【0119】
これから本発明による高分子添加剤を含む液体電解質は高分子が高温で結晶化されることによってこれを含む液体電解質のゲル化が行われ、ゲル化された液体電解質は固体膜を形成して絶縁体として作用することによって正極と負極の間のイオン伝導と電気伝導を遮断するようになるので、電池の発火や爆発を抑制することができるようになるのである。
【0120】
また、ゲル化された液体電解質は正極-分離膜-負極を物理的に接着させることによって分離膜の高温収縮を抑制することができ、これにより正極と負極の短絡を防止することができる。
【0121】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。