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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022820
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】整形外科用ブローチ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20250206BHJP
   A61B 17/92 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024124724
(22)【出願日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】63/530,154
(32)【優先日】2023-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510059882
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・オルソペディクス・アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】519295384
【氏名又は名称】スミス・アンド・ネフュー・アジア・パシフィク・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ダブリュー・リスター
(72)【発明者】
【氏名】ムーシン・エー・エル-チャフェイ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KL07
4C160LL03
4C160LL26
4C160LL27
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、後に移植される股関節ステムインプラントの形状及び設計によりよく適合する改善された整形外科用ブローチを提供することである。
【解決手段】例えば股関節ステムインプラントなどの整形外科用インプラントを受け入れるために、例えば患者の大腿骨などの患者の骨の髄内管を調製するために改善された整形外科用ブローチが使用される。ブローチは、差動歯または歯パターンを有する。好ましい一例では、ブローチは、ダイヤモンド歯、圧縮歯、及び抜去歯を含む3つの異なるタイプの歯を含む。異なる歯パターンは、ブローチの側面に具体的に配置され、その後に移植される股関節ステムインプラントのための骨除去及び骨圧縮を最適化する。加えて、異なる歯パターン及び位置は、回転安定性を高める。したがって、ブローチは、ブローチ回転を維持しながら、他の領域の骨を除去しながら、特定の領域の骨を圧縮するように構成される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の髄内管を調製するように配置及び構成された整形外科用ブローチであって、前記整形外科用ブローチは、
近位部分及び遠位部分、前側、前記前側と反対側の後側、内側、並びに前記内側と反対側の外側を有する本体であって、前記内側及び前記外側は、前記前側と前記後側との間に延在し、前記外側は、前記外側と前記前側との交差部に前外側面を備え、前記外側と前記後側との交差部に後外側面を備える、本体
を備え、
前記内側は、複数のダイヤモンド歯を備え、
前記前外側面及び前記後外側面は、複数の前記ダイヤモンド歯と比較して異なる形状を有する複数の抜去歯を備える、整形外科用ブローチ。
【請求項2】
前記前側及び前記後側が、複数の前記ダイヤモンド歯及び複数の前記抜去歯の両方と比較して異なる形状を有する複数の圧縮歯を含む、請求項1に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項3】
前記外側の少なくとも一部が、複数の圧縮歯を含む、請求項2に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項4】
複数の前記抜去歯が、前記本体の前外側角部及び後外側角部に沿って前記本体の全長にわたって延在する、請求項3に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項5】
前記前外側面及び前記後外側面が、前記近位部分のみによって画定される、請求項3に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項6】
複数の前記圧縮歯が、前記本体の前記近位部分から前記遠位部分まで前記外側の実質的に全長にわたって延在する、請求項3に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項7】
複数の前記圧縮歯の各々が、前記整形外科用ブローチの前記前側及び前記後側の前記外側から前記内側に水平に延在する平行なレッジとして構成される、請求項2に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項8】
複数の前記圧縮歯が、前記本体の前記近位部分から前記遠位部分まで前記前側及び前記後側の実質的に全長にわたって延在する、請求項2に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項9】
複数の前記抜去歯の各々が、それを通過する角度付きのカット溝レリーフを含む水平歯として構成される、請求項1に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項10】
複数の前記ダイヤモンド歯の各々が、尖ったまたはスパイク状の先端を含む、請求項1に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項11】
複数の前記ダイヤモンド歯が、前記本体の近位端から遠位端まで前記内側の実質的に全長にわたって延在する、請求項10に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項12】
前記本体が、前記整形外科用ブローチをハンドル及び整形外科用インパクタの一方に結合するように配置及び構成された接続機構を含む、請求項1に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項13】
前記本体が、歯のない遠位先端を含む、請求項1に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項14】
骨の髄内管を調製するように配置及び構成された整形外科用ブローチであって、前記整形外科用ブローチは、
近位部分及び遠位部分、前側、前記前側と反対側の後側、内側、並びに前記内側と反対側の外側を有する本体であって、前記内側及び前記外側は、前記前側と前記後側との間に延在し、前記外側は、前記外側と前記前側との交差部に前外側面を備え、前記外側と前記後側との交差部に後外側面を備える、本体
を備え、
前記内側は、複数のダイヤモンド歯を含み、
前記前側及び前記後側は、複数の圧縮歯を備え、
前記前外側面及び前記後外側面は、複数の抜去歯を含み、
前記外側は、複数の圧縮歯を備え、
前記ダイヤモンド歯、前記抜去歯、及び前記圧縮歯の各々は、他の前記歯と比較して異なる形状を有する、整形外科用ブローチ。
【請求項15】
複数の前記抜去歯が、前記本体の前外側角部及び後外側角部に沿って前記本体の実質的全長にわたって延在する、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項16】
前記前外側面及び前記後外側面が、前記近位部分のみによって画定される、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項17】
複数の前記圧縮歯が、前記本体の前記近位部分から前記遠位部分まで前記外側の実質的に全長にわたって延在する、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項18】
複数の前記圧縮歯の各々が、前記整形外科用ブローチの前記前側及び前記後側の前記外側から前記内側に水平に延在する平行なレッジとして構成される、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項19】
複数の前記圧縮歯が、前記本体の前記近位部分から前記遠位部分まで前記前側及び前記後側の実質的に全長にわたって延在する、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項20】
複数の前記抜去歯の各々が、それを通過する角度付きのカット溝レリーフを含む水平歯として構成される、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項21】
複数の前記ダイヤモンド歯の各々が、尖ったまたはスパイク状の先端を含む、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項22】
複数の前記ダイヤモンド歯が、前記本体の前記近位部分から前記遠位部分まで前記内側の実質的に全長にわたって延在する、請求項21に記載の整形外科用ブローチ。
【請求項23】
前記本体が、歯のない遠位先端を含む、請求項14に記載の整形外科用ブローチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2023年8月1日に出願された「Orthopedic Broach」という名称の係属中の米国仮特許出願第63/530,154号の非仮出願であり、その出願日の利益を主張し、その出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、整形外科用デバイス及び器具に関し、より詳細には、例えば大腿骨股関節ステムインプラントなどのインプラントを受け入れるために患者の髄内管を調製するための整形外科用ブローチに関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科用インプラントは、今日の社会において周知であり、一般的である。整形外科用インプラントは、例えば、損傷を安定化させるため、骨折を支持するため、関節を固定するため、及び/または変形を矯正するために使用され得る。整形外科用インプラントは、恒久的または一時的に取り付けられてもよく、骨の管もしくは他の腔内に移植される、軟組織の下に移植されて骨の外面に取り付けられる、または外部に配置されてねじ、ピン、及び/もしくはワイヤなどの締結具によって取り付けられるなど、様々な位置で骨に取り付けられてもよい。いくつかの整形外科用インプラントは、2つ以上の骨片または2つ以上の骨の位置及び/または向きを互いに対して調整することを可能にする。
【0004】
整形外科用インプラントの1つのタイプは、股関節を修復するために使用される股関節ステムインプラントである。股関節は、関節ダメージ及び/または損傷が頻繁に起こる箇所である。股関節ステムインプラントは、外傷性損傷の治療、関節機能の再構築、または他の目的のために、骨の解剖学的構造に移植されるか、または他の方法で関連付けられ得る。股関節ステムインプラントは、患者の近位大腿骨の髄内管に少なくとも部分的に挿入され得る細長い挿入領域(例えば、ステム)を含み得る。
【0005】
場合によっては、股関節ステムインプラントの成功は、細長い挿入領域またはステムが患者の骨の解剖学的構造(例えば、患者の大腿骨の髄内管)にどれだけ良好に適合するかに依存する。例えば、股関節ステムインプラントの細長い挿入領域またはステムの近位部分が髄内管にしっかりと嵌合し(例えば、インプラントの近位領域と患者の大腿骨の髄内管の内面との間にプレス嵌合を作成する)、ステムが患者の大腿骨の近位部分に負荷をかけ、応力遮蔽及び/または再吸収による骨損失(及び潜在的にその後のインプラントの故障)を防止することが重要である。遠位部分が髄内管の中に適切に位置決めされることも重要であるが、嵌合は、近位荷重を防止するほど緊密であるべきではない。
【0006】
股関節ステムインプラントとそれに関連する骨の解剖学的構造との間の良好な嵌合はまた、インプラントと骨との間の微小運動を防止または低減するのに役立ち得る。過度の微小運動はまた、インプラントの故障につながる可能性がある。
【0007】
さらに、股関節ステムインプラントを移植するとき、股関節ステムインプラントを受け入れるための患者の髄内管の適切な調製が重要である。その結果、例えばブローチなどの整形外科用器具が開発されている。ブローチは、例えば、股関節形成手術中に使用される。外科医は、ブローチを使用して、股関節ステムインプラントを受け入れるために患者の髄内管の内面を調製する。外科医による髄内管の調製は、患者の大腿骨と股関節ステムのインプラントとの間の適切な嵌合を保証するように設計される。
【0008】
股関節ステムインプラントの移植は、股関節ステムインプラントと患者の骨との間の良好な接触を保証するために、骨または髄内管の正確な調製を必要とする。一般的に言えば、前側/後側及び内側/外側方向の髄内管の重要な領域における適切なステム接触を確実にしながら、股関節ステムインプラントと患者の骨との間(例えば、インプラントの外面と髄内管の内面との間)の隙間または空間を減少させることにより、初期の安定性及び長期の骨の内部成長/固定が改善される。
【0009】
患者の骨の髄内管(例えば、大腿骨)は、近位大腿骨の切除された端部をブローチング及びリーミングすることによって股関節ステムインプラントの移植のために調製されてもよい。患者の大腿骨の髄内管は、股関節ステムインプラント用の座部を提供するためにブローチを使用して調製され得る。一般的に言えば、ブローチは、患者の骨の腔または髄内管を作成、拡大、調製などするために軸方向に移動または操作され得る切削工具である。ブローチを使用して、非円形断面を有する腔を作成することができる。特に、複雑な不規則な形状であり得る股関節ステムインプラントのテーパ形状が患者の髄内管の内面の形状と適切に適合することを確実にするために、股関節ステムインプラントを受け入れる髄内腔の一部を調製するのに適している。当業者には理解されるように、患者の大腿骨の頭部が除去された状態で、ブローチを大腿骨の髄内管に挿入することができる。より柔らかく、ややスポンジ状の海綿骨が髄内管を取り囲んでいる。海綿骨を取り囲むのは皮質骨であり、これはより強い。ブローチを使用して骨を切断することができる。
【0010】
不適切な骨腔の調製は、経時的に股関節ステムインプラントの弛緩をもたらし得る(例えば、近位に固定された股関節ステムインプラントは、インプラントとの骨固定が股関節ステムインプラント上の意図された固定領域から離れて起こる場合、経時的に弛緩し得る)。さらに複雑なことに、股関節ステムインプラントにおける最近の開発は、股関節ステムインプラントのコーティングされたセクション及びコーティングされていないセクションを含む股関節ステムインプラントをもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、その後に移植される股関節ステムインプラントの形状及び設計によりよく適合する改善された整形外科用ブローチを提供することが有益であろう。加えて、近位にコーティングされた股関節ステムインプラントの遠位固定を回避するか、または少なくとも最小限に抑える改良されたブローチが依然として必要とされている。本発明は、これらのニーズを満たし、新規かつ非自明な方法で他の利益及び利点を提供する。
【0012】
この概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を決定するのを助けることを意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の1以上の特徴によれば、改善された整形外科用ブローチが開示される。整形外科用ブローチは、例えば股関節ステムインプラントなどのインプラントを受け入れるために患者の骨の髄内管を調製するように配置及び構成される。ブローチは、患者の髄内管内での股関節ステムインプラントの遠位固定を回避するか、または少なくとも最小限に抑えるように配置及び構成される。加えて、ブローチは、股関節ステムインプラントの近位領域と患者の髄内管の内面との間で所望のプレス嵌合が達成されるように、髄内管の調製を最適化するように配置及び構成される。
【0014】
いくつかの例では、ブローチは、差動歯パターンを含む。すなわち、ブローチは、複数の別個の歯パターンを含む。一例では、ブローチは、第1、第2、及び第3の歯パターンを含み、歯パターンの各々は、他の歯パターンとは異なるかまたは固有である。例示的な歯パターンには、ダイヤモンド歯、圧縮歯、抜去歯、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ、これらはすべて以下でより詳細に説明される。様々な歯パターンは、特定の目的を達成するためにブローチ上の特定の位置に配置及び構成される。いくつかの例では、歯は、続いて移植される股関節ステムインプラントとの係合の改善を容易にするために、患者の髄内管内の残りの骨を最適化するように配置及び構成される。特定の例では、歯は、インプラントの最適な固定のために骨を最適化及び調製するように配置及び構成される。ブローチは、股関節ステムインプラントの近位領域の前側及び後側に形成され得る、近位に形成された多孔質コーティング表面並びに/または前溝及び/もしくは後溝に対する係合を改善するのを助けることができる。
【0015】
例えば、ブローチは、その内側に第1の歯パターンを含んでもよく、第1の歯パターンは、骨を除去するために最適化された切削歯として配置及び構成される。切削歯の特定の例は、ダイヤモンド歯またはピラミッド形状の歯である(これらの用語は限定または区別する意図なしに本明細書では互換的に使用される)。ダイヤモンド歯は、その後に移植される股関節ステムインプラントの遠位固定を回避する、または少なくとも最小限に抑えるために、患者の骨を切断または除去するために設けられる。ダイヤモンド歯は、接触するあらゆる骨を貫通して除去するように配置及び構成される。これは、ブローチの内側に沿った遠位領域、したがって最終インプラントの適切な位置決めを容易にするエンベロープを作成することができる。これはまた、髄内管内のその後に移植される股関節ステムインプラントの内側の遠位領域の骨固定を回避することができる。全体的な要望は、髄内管内の股関節ステムインプラントの内側の遠位領域のプレス嵌合を最小限に抑えるまたは回避するエンベロープを生成することである。さらなる要望は、例えば、股関節ステムインプラント上に形成された前後の溝及び/または多孔質コーティング領域に対応する領域において、股関節ステムインプラントの近位部分に優先的なプレス嵌合を作成することである。ダイヤモンド歯は、回転運動を防止する、または少なくとも抵抗するために、内側円弧に沿ったダイヤモンド歯と患者の海綿骨との間の接触の改善を容易する(例えば、ブローチの内側にダイヤモンド歯を設けることにより、患者の骨の髄内管内でのその後に移植される股関節ステムインプラントの回転を防止するか、または少なくとも最小限に抑えることによって、その後に移植される股関節ステムインプラントの回転安定性を高める)。
【0016】
加えて、ブローチの前側及び後側は、第2の歯パターンを含む。加えて、ブローチの外側の部分は、第2の歯パターンも含み得る。第2の歯パターンは、圧縮歯として配置されてもよい。圧縮歯は、髄内管の内面上の患者の骨を切断または除去するのとは対照的に、圧縮するように成形及び最適化される。圧縮歯は、局所骨組織のより大きな浸透及び高密度化を伴って骨界面に骨のより大きな粒子を残すように構成される。様々な例では、圧縮歯は水平に延在してもよい(例えば、圧縮歯は、ブローチの長手方向軸に対して垂直に延在してもよい)。このように配置されると、ブローチは、患者の髄内管の内面に水平かつ平行なリッジを形成するように配置及び構成される。リッジは、その後に移植される股関節ステムインプラントの前側及び後側に形成され得る前後の溝に対して傾斜していてもよい。
【0017】
加えて、ブローチは、第3の歯パターンを含み得る。第3の歯パターンは、抜去歯として配置され得る。いくつかの例では、ブローチの外側の部分は、抜去歯を含み得る。いくつかの例では、前側及び後側を有する外側の移行面または面取面は、抜去歯を含み得る(例えば、外側と前側及び後側との交差部に形成された傾斜した移行面または面取面)。いくつかの例では、ブローチの近位領域は、前外側及び後外側の態様またはその領域に形成された抜去歯を含み得る(例えば、抜去歯は、ブローチの前側及び後側を有する移行面または面取面に沿って外側に形成される)。抜去歯は、骨残留物を除去するように構成される。抜去歯は、前側、後側、及び外側の骨の表面密度がより高いブローチの「角部」で隣接する骨から離れるようにプレス嵌合を優先的に達成するように構成され得る。抜去歯は、股関節ステムインプラントの対応する領域に最適化されたまたは優先的なプレス嵌合を達成するのを助けることができる。
【0018】
いくつかの例では、ブローチの外側の残りの部分は圧縮歯を含む。
【0019】
様々な例では、整形外科用ブローチは、例えば股関節ステムインプラントなどの後に移植される股関節ステムインプラントと共に、システムまたはキットの一部として提供されてもよく、またはシステムまたはキットと動作可能に関連付けられてもよい。あるいは、整形外科用ブローチは別々に提供されてもよい。
【0020】
股関節ステムインプラントは、近位領域、遠位領域、前側、後側、内側、及び外側を含み得る。様々な例では、近位領域は、多孔質コーティングされた及び/もしくは粗面化された表面または領域を含む。追加的または代替的に、近位領域は、股関節ステムインプラントの前側及び後側に形成された複数の溝を含んでもよい。
【0021】
ブローチは、一般に、股関節ステムインプラントと同様のサイズ及び形状である。ブローチは、近位領域、遠位領域、前側、後側、内側、及び外側を含む。好ましい一例では、ブローチは、ダイヤモンド歯、圧縮歯、及び抜去歯を含む3つの異なるタイプの歯を含む。
【0022】
整形外科用ブローチが開示される。整形外科用ブローチは、骨の髄内管を調製するように配置及び構成される。ブローチは、近位部分及び遠位部分、前側、前側と反対側の後側、内側、並びに内側と反対側の外側を有する本体を備え、内側及び外側は、前側と後側との間に延在し、外側は、外側と前側との交差部に前外側面を備え、外側と後側との交差部に後外側面を備え、内側は、複数のダイヤモンド歯を備え、前外側面及び後外側面は、複数のダイヤモンド歯と比較して異なる形状を有する複数の抜去歯を備える。
【0023】
任意の先行するまたは後続する例では、前側及び後側は、複数のダイヤモンド歯及び複数の抜去歯の両方と比較して異なる形状を有する複数の圧縮歯を含む。
【0024】
任意の先行するまたは後続する例では、外側の少なくとも一部は、複数の圧縮歯を含む。
【0025】
任意の先行するまたは後続する例では、複数の抜去歯は、本体の前外側角部及び後外側角部に沿って本体の全長にわたって延在する。
【0026】
任意の先行するまたは後続する例では、前外側面及び後外側面は、近位部分のみによって画定される。
【0027】
任意の先行するまたは後続する例では、複数の圧縮歯は、本体の近位部分から遠位部分まで外側の実質的に全長にわたって延在する。
【0028】
任意の先行するまたは後続する例では、複数の圧縮歯の各々は、ブローチの前側及び後側の外側から内側に水平に延在する平行なレッジとして構成される。
【0029】
任意の先行するまたは後続するでは、複数の圧縮歯は、本体の近位部分から遠位部分まで前側及び後側の実質的に全長にわたって延在する。
【0030】
任意の先行するまたは後続する例では、複数の抜去歯の各々は、それを通過する角度付きのカット溝レリーフを含む水平歯として構成される。
【0031】
任意の先行するまたは後続する例では、複数のダイヤモンド歯の各々は、尖ったまたはスパイク状の先端を含む。
【0032】
任意の先行するまたは後続する例では、複数のダイヤモンド歯は、本体の近位端から遠位端まで内側の実質的に全長にわたって延在する。
【0033】
任意の先行するまたは後続する例では、本体は、ブローチをハンドル及び整形外科用インパクタの一方に結合するように配置及び構成された接続機構を含む。
【0034】
任意の先行するまたは後続する例では、本体は、歯のない遠位先端を含む。
【0035】
いくつかの例では、整形外科用ブローチは、その内側に複数のダイヤモンド歯を含む本体と、その前側及び後側に複数の圧縮歯と、その前外側面及び後外側面に複数の抜去歯と、外側の少なくとも一部に複数の圧縮歯と、を備え、ダイヤモンド歯、抜去歯、及び圧縮歯の各々は、他の歯と比較して異なる形状を有する。
【0036】
本開示の例は、多くの利点を提供する。例えば、差動歯パターンを含むブローチを提供することによって、ブローチは、患者の髄内管内の残りの骨を最適化するように配置及び構成される。これは、特に近位に形成された多孔質コーティングされた表面並びに/または前側及び/もしくは後側の溝に関して、その後に移植される股関節ステムインプラントとの係合の改善を容易する。例えば、ブローチは、遠位固定を回避するために遠位クリアランスを提供するために、例えば遠位領域の周りの360度のエンベロープなどの任意のエンベロープの作成を確実にするように最適化される(例えば、ブローチの遠位部分は、遠位プレス嵌合を回避して当接接触する(つまり、わずかに接触するがプレス嵌合のレベルには至らない)ように構成される)。一方、ブローチは、インプラントの近位領域に沿ったプレス嵌合を容易にする(例えば、移行は、その後に移植される股関節ステムインプラントの多孔質領域の下で起こり得る)。
【0037】
加えて、ブローチは、外科医に改善された回転安定性を提供するように配置及び構成される。例えば、ダイヤモンド歯及び抜去歯の位置決めは、外科医が回転安定性を評価することを可能にする。すなわち、ブローチング中、外科医は、挿入されたブローチを回転させることができる。適切なサイズであれば、ブローチは回転抵抗を提供し、それによってブローチが適切なサイズであることを示す。これはまた、患者の髄内管が適切に調製されたことを外科医に知らせることができる。したがって、外科医は、対応するその後に移植される股関節ステムインプラントが適切なサイズであり、調製された髄内管の中に適切に着座しているという自信を深める。この調製により、外科医は、インプラントの適切なサイズ設定が達成されたという自信を深め、その後に移植される股関節ステムインプラントが患者の髄内管内に適切に着座すると評価できるようになる。
【0038】
本発明の実施例の少なくともいくつかのさらなる特徴及び利点、並びに本発明の様々な実施例の構造及び動作を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0039】
例として、添付の図面を参照して、開示された装置の具体例をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】本開示の1以上の特徴に従って使用され得る整形外科用ブローチの一例の側面図または前側の図であり、前側は圧縮歯を含む。
図1B図1Aに示す整形外科用ブローチの側面図または後側の図であり、後側は圧縮歯を含む。
図1C図1Aに示す整形外科用ブローチの側面図または内側の図であり、内側はダイヤモンド歯を含む。
図1D図1Aに示す整形外科用ブローチの側面図または外側の図であり、外側は圧縮歯及び抜去歯を含む。
図1E】整形外科用ブローチの別の図であり、整形外科的視点の前側及び後側の図である。
図1F】整形外科用ブローチの別の図であり、整形外科的視点の外側の図である。
図1G】整形外科用ブローチの別の図であり、整形外科的視点の内側の図である。
図2A図1A図1Gに示す整形外科用ブローチと共に使用され得る股関節ステムインプラントの一例の図である。
図2B図1A図1Gに示す整形外科用ブローチと共に使用され得る股関節ステムインプラントの一例の別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを示すことを意図していない。図面は、本開示の様々な例を示すことを意図しており、したがって、範囲を限定するものと見なされるべきではない。図面において、同様の番号は同様の要素を表す。
【0042】
以下に添付図面を参照して、整形外科用ブローチの様々な特徴などについて説明する。整形外科用ブローチの様々な特徴は、互いに独立して、または互いに組み合わせて使用され得ることを理解されたい。開示された例は、異なる形態をとり得、本明細書に記載の1以上の特徴、幾何学的形状、及び/または寸法を選択的に含み得る。したがって、ブローチは、本明細書に記載の特定の例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が特定の特徴、幾何学的形状、及び/または寸法を当業者に伝えるように提供される。
【0043】
開示された整形外科用ブローチは、患者の骨の除去及び/または調製を最適化して、例えば股関節ステムインプラントなど、その後に移植される整形外科用インプラントとの係合の改善を容易にするように構成される。開示されたブローチは、回転安定性を提供するように配置及び構成される。それは、ブローチの回転安定性を維持しながら、他の領域の骨を除去しながら、特定の領域の骨を圧縮することができる。
【0044】
いくつかの例では、整形外科用ブローチは、差動歯パターンを有する本体を含む。異なる歯パターンを配置及び構成して、患者の骨を調製することができる。例えば、ブローチは、第1、第2、及び第3の異なる歯パターンを含む。
【0045】
図1A図1Gを参照すると、例えば股関節ステムインプラントなどの整形外科用インプラントを受け入れるために、例えば患者の大腿骨などの患者の骨の髄内管を調製するためにブローチ100が利用され得る。開示されたブローチの非限定的な例は、Smith&Nephew,Inc.からACCUBROACH(登録商標)という名称で製造及び販売されている。股関節ステムインプラント300の非限定的な例を図2A及び図2Bに示す。しかしながら、本開示のブローチ100は、この例示的な股関節ステムインプラント300(参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第18/685,093号により詳細に記載され、Smith&Nephew,Inc.によってCATALYSTEM(登録商標)Primary Hip Systemという名称で製造及び販売されている)に関連して説明されるが、本開示のブローチ100は、そのように限定されず、現在知られているまたは今後開発される任意の適切なインプラントと共に使用されてもよい。したがって、ブローチは、明示的に主張されない限り、インプラントの特定のタイプまたは構成での使用に限定されるべきではない。
【0046】
特定の例では、ブローチ100は、ダイヤモンド歯132、圧縮歯112、及び抜去歯114を含む3つの異なるタイプの歯を含み得る。好ましい例では、ブローチ100は、骨を順次除去するためにブローチ100の内面または内側106に形成されたダイヤモンド歯132を含む(表面及び側面という用語は、限定または区別する意図なしに本明細書では交換可能に使用される)。ブローチ100は、その前外側及び後外側の表面、態様または領域108Bに沿って抜去歯114を含む(これらの用語は限定または区別する意図なしに本明細書では交換可能に使用される)。ブローチ100の内側106に沿ったダイヤモンド歯132及びブローチ100の前外側領域108B及び後外側領域108Bに沿った抜去歯114の位置決めは、外科医が患者の髄内管内のブローチ100の回転安定性を評価することを可能にし、及び/または最終的なインプラントフィッティング及び/またはサイズ設定の改善されたフィードバック/評価を外科医に提供する。
【0047】
図2A及び図2Bを参照すると、米国特許出願第18/685,093号に記載されているように、その後に移植される股関節ステムインプラント300は、近位領域310及び遠位領域330を含み得る。股関節ステムインプラント300はまた、前側302、後側304、内側306、及び外側308を含む。様々な例では、近位領域310は、多孔質コーティングされた及び/もしくは粗面化された表面または領域320(限定または区別する意図なしに本明細書で互換的に使用される用語)を含み、それによって画定される。前側302及び後側304は、その中に形成された溝325を含むことも可能である。溝325は、ブローチングプロセス後に残りの患者の骨との係合の改善を容易にすることが示されている。溝325は、外側308から内側306に向かって股関節ステムインプラント300の前側302及び後側304に沿って傾斜していてもよい(例えば、下向きに傾斜している)。いくつかの例では、溝325は、股関節ステムインプラント300の内側306の少なくとも一部まで、及びそれに沿って延在してもよい。
【0048】
開示されたブローチ100は、近位領域110及び遠位領域130を有する本体101を含む。本体101は、前側102、後側104、内側106、及び外側108を含み、前側102及び後側104は、内側106と外側108との間に延在する。本体101は、受け入れる骨腔を調製するように設計された股関節ステムインプラントと実質的に同様のサイズ及び形状を有する外面を含む。
【0049】
ブローチ100は、差動歯または歯パターンを含む。好ましい一例では、ブローチ100は、例えば、ダイヤモンド歯132、圧縮歯112、及び抜去歯114を含む3つの異なるタイプの歯などの複数の異なるタイプの歯を含む。
【0050】
ダイヤモンド歯132は、骨を切断及び除去するように配置及び構成される。ダイヤモンド歯132は、抜去歯114よりも大きく圧縮歯112よりも小さい局所的な圧縮を提供しながら骨を切断及び除去するように最適化される。ダイヤモンド歯132は、尖ったまたはスパイク状の先端を有することを特徴とし得る。例えば、ダイヤモンド歯132は、先端の形態の端部を有するトラフ及び突出部を含んでもよい。各先端は、周囲のトラフから突出する複数の表面によって当接されてもよい。ダイヤモンド歯132では、これらの側面の各々は、鋭い先端の形態の点で収束する。ダイヤモンド歯132は、骨の切断を促進するように配置及び構成される。
【0051】
抜去歯114は、リッジを有するものとして特徴付けられてもよく、リッジは鋭い縁部を有する。抜去歯114の形状は、ブローチの使用後に配置される股関節インプラントの形状を模倣する骨の表面を作成するために骨除去を改善するチップブレーク機能を提供する。チップブレーク機能は、ブローチングプロセス中に生成されたデブリがブローチと骨の界面から逃げることを可能にする。これにより、歯の間にデブリが蓄積し、続いてデブリが髄間壁に押し込まれること(圧縮)が防止される。チップブレーク機能により、ブローチの使用後に配置される股関節インプラントの形状を模倣する骨の表面を作成するための改善された骨除去が可能になる。抜去歯114は、隣接する骨からのプレス嵌合を優先的に達成するように意図された骨残留物の効果的な除去のために通過する角度付きの「カット溝」レリーフを有する水平歯として構成されてもよく、例えば、より大きな表面密度を有する前側、後側、及び外側の骨のブローチの「角部」で、最適化されたまたは優先的なプレス嵌合を股関節ステムインプラントの対応する領域で達成する。例えば、抜去歯114は、リッジの形態の端部を有する繰り返しのトラフ及び突出部を含んでもよく、リッジは、長さに沿って延在する鋭い縁部または鈍い縁部を有してもよい。各リッジは、歯のトラフから突出する複数の表面によって当接されてもよい。
【0052】
圧縮歯112は、平坦な端部または表面を有するものとして特徴付けられてもよく、リッジ、レッジ、またはステップとして特徴付けられてもよい。圧縮歯112は、平行なリッジ、レッジ、またはステップを含むか、または形成する(これらの用語は限定または区別する意図なしに本明細書では交換可能に使用される)。圧縮歯112は、骨のレーキングを最小限に抑えながら骨圧縮を改善するように最適化される。圧縮歯112は、(抜去歯/チップブレーカとは異なり)圧力解放機構を含まない。この配置は、骨デブリがブローチングプロセス中に蓄積するときに、骨デブリが患者の骨の髄間壁に押し込まれることを意味する。ブローチの本体のほぼテーパ状の幾何学的形状及び歯の背面角度は、ブローチ除去中のデブリの除去を最小限に抑える。例えば、圧縮歯112は、平坦なリッジの形態の端部を有するトラフと突出部とを繰り返すパターンを含んでもよい。平坦なリッジは、圧縮歯を含む表面領域の幅にわたって切れ目なく延在する長さを有してもよい。抜去歯114とは反対に、圧縮歯112はチップブレーク機能を含まない。圧縮歯112は、骨を抜去する傾向を低減し、より大きな安定性のために骨圧縮を改善するように動作する。
【0053】
図示のように、本体101は、ブローチ100をハンドル、整形外科用インパクタなどに結合できるように配置及び構成された接続機構175を含む。いくつかの例では、接続機構175はポストの形態で提供されてもよい。あるいは、接続機構175は、腔、ポケットなどの形態で提供されてもよい。あるいは、現在知られているまたは今後開発される任意の適切な接続機構が使用されてもよい。
【0054】
遠位領域130は、遠位先端140で終端してもよい。遠位先端140には歯がなくてもよい。この形状は、ブローチングプロセス中の遠位先端140による患者の皮質の穿孔を最小限に抑えることができる。
【0055】
ダイヤモンド歯132、圧縮歯122、及び抜去歯114の各々は、それらの位置に応じて、調製された骨と股関節ステムインプラントとの改善された係合を最適化するように具体的に配置及び構成される。図示の特定の例では、ブローチ100は、その内側106にダイヤモンド歯132を含む。図示の特定の例では、ブローチ100は、外側108を有する後側及び前側の移行もしくは面取領域または表面108Bに沿って抜去歯114を含む(例えば、抜去歯114は、外側108と前側102及び後側104との交差部に形成された傾斜した移行面または面取面108Bに位置決めされる)。このように配置されると、ブローチ100は、遠位固定を回避するために遠位クリアランスを確保するように最適化される(例えば、エンベロープ(例えば、360度エンベロープ)を作成するように最適化される)。これにより、インプラントの近位領域に沿ったプレス嵌合を容易にすることができる。
【0056】
加えて、及び/または代替的に、ブローチ100は、使用中に患者の骨の髄内管内のブローチ100の回転安定性を保証するように配置及び構成される。ダイヤモンド歯132及び抜去歯114の位置決めは、外科医が回転安定性を決定することを可能にする。すなわち、ブローチング中、外科医は、挿入されたブローチ100を回転させることができる。適切なサイズであれば、ブローチ100は回転抵抗を提供し、それによってブローチ100が適切なサイズであり、患者の髄内管が適切に調製されていることを示す。したがって、外科医は、その後に移植される股関節ステムインプラントが患者の髄内管内に適切に着座するという評価できるようになる。
【0057】
本明細書に記載の歯パターンの特定の組み合わせは、特に信頼性が高く、確実で、安定した移植を提供することが分かった。図示及び説明された特定のブローチは、ブローチ本体の様々な特定の部分に沿って位置決めされた、説明された3つのタイプの歯の組み合わせを含む。これらの位置及び歯パターンを変更することは可能であるが、ここでブローチの具体的な実施形態を説明する。図1C及び図1Gに示すように、ブローチ100の内側106は、第1の歯パターンを有するダイヤモンド歯132を含む。図1A図1B、及び図1Eに最もよく示されているように、前側102及び後側104は、第2の歯パターンを有する圧縮歯112を含む。図1D及び図1Fは、外側108が、圧縮歯112を有する領域108Aと、第3の歯パターンを有する抜去歯114を有する領域108Bとを含むことを示している。第3の歯パターンを有する抜去歯114は、角部、縁部、もしくは前側102及び後側104と外側108との間の交差部(例えば、前側102及び後側104と外側108との間の移行面もしくは面取面または領域108B)に位置決めされるか、またはそれに隣接して位置決めされる。いくつかの例では、近位領域110は、その前外側及び後外側領域108Bに形成された抜去歯114を含み得る。このように配置されると、ブローチ100の外側108は、少なくともその近位領域110に圧縮歯112及び抜去歯114を含む。
【0058】
図1C及び図1Gは、ブローチ100の内側106が、第2及び第3の歯パターンとは異なる第1の歯パターンを有するダイヤモンド歯132を含むことを示している。好ましい例では、ダイヤモンド歯132は、ブローチ100の近位端から遠位端まで内側106の全長または実質的に全長にわたって延在し得る。
【0059】
ブローチ100の内側106に形成されたダイヤモンド歯132は、ブローチ100の挿入中に患者の骨の髄内管の内面上に突出する任意の骨部分の除去を容易にするためにブローチ100を最適化する。ダイヤモンド歯132は、ブローチ100が患者の骨の管内に完全に着座しているときに、擦り取り(クリアランスのための)と骨へのグリップにおいて優れた性能を発揮し、回転安定性が得られることが分かっている。加えて、ブローチ100の内側106にダイヤモンド歯132を設けることにより、回転安定性が向上し、その後に移植される股関節ステムインプラント300が患者の骨の髄内管内で回転するのを防止するか、または少なくとも防止するのを補助する。さらに、ダイヤモンド歯132は、患者の骨とのより低い摩擦係数を提供し得、これは、患者の組織に浸透することを意図したブローチの部分に利点を提供する。
【0060】
前述のように、ブローチ100は、髄内管内の股関節ステムインプラント300の遠位領域330のプレス嵌合を最小限に抑えるまたは回避する360度のエンベロープを生成するように配置及び構成される。開示されたブローチ100は、遠位プレス嵌合を回避して、プレス嵌合のレベルまで上昇しない当接接触を優先し、股関節ステムインプラント300の近位領域310に優先的なプレス嵌合を作成するように構成される。例えば、開示されたブローチ100は、多孔質コーティング領域320に優先的なプレス嵌合を作成するように構成される。加えて、または代替的に、開示されたブローチ100は、前後の溝325を含む領域に優先的なプレス嵌合を作成するように構成される。一例では、ブローチ100の遠位領域130の幾何学的形状は、エンベロープまたはクリアランスを作成するために、股関節ステムインプラント300の遠位領域330よりも大きくなるようなサイズ及び構成であってもよい。ブローチ100の遠位領域130は、股関節ステムインプラント300の遠位先端340から股関節ステムインプラント300の近位領域310上に形成された多孔質コーティング領域320の終端まで延在する股関節ステムインプラント300の遠位領域330間のエンベロープまたは接触状態を残して骨を除去するように構成されてもよい。この移行部は、患者の髄内管の内面と股関節ステムインプラント300の遠位領域330(例えば、緩やかに嵌合する遠位領域)との間に遠位クリアランスを設けることによって、股関節ステムインプラント300の遠位領域330とのあらゆる種類のプレス嵌合状態を回避することを意図されている。次に、これは、近位プレス嵌合の股関節ステムインプラント300を達成及び/または促進するのに役立つ。結果として、長期にわたる成長に伴う過度の嵌合は、大腿遠位部の痛みや、近位ステムのストレスシールドに起因する遠位ステムの緩みにつながる可能性があるが、これを回避できる。また、ブローチ100の遠位領域130上にダイヤモンド歯132を延在させることにより、股関節ステムインプラントの中央本体において、狭部の近位かつ小転子の遠位で皮質骨を除去することができる。
【0061】
図1A図1B、及び図1Eを参照すると、圧縮歯112は、ブローチ100の近位端から遠位端まで、前側102及び後側104の全長、または実質的に全長にわたって延在し得る。圧縮歯112は、骨の切断または除去とは対照的に、髄内管の内面上の骨を圧縮するように構成される。圧縮歯112からの骨残渣粒子の数及びサイズが多いほど、例えば、股関節ステムインプラント300に形成された前後の溝325の傾斜した幾何学的形状がほぼ正のすくい角を作成するように、より大きな度合いのブローチ残渣を提供する。これにより、残渣を前後の溝325内により効果的に「剥がす」ことができる。このプロセスは、長期のインプラント安定性を提供するために、前後の溝325へのオッセオ誘導の機会を提供することを意図されている。圧縮歯112からのより大きな緻密化深さはまた、最初の大腿骨ステムプレス嵌合固定のためのより強固な骨海面を提供することを意図されている。
【0062】
図1A図1B、及び図1Eに示すように、圧縮歯112は、ブローチ100の前側102及び後側104を横切って水平に延在し得る。圧縮歯112は、前外側及び後外側の領域108Bを含む内側106と外側108との間で前側102及び後側104を横切って水平に延在し得る。圧縮歯112は、骨の保存及び安定性を可能にするように構成される。ブローチ100を患者の髄内管に挿入する間、圧縮歯112は患者の骨を押すかまたは圧縮する。これは、股関節ステムインプラントのその後の移植のための改善されたエンベロープを作成する。
【0063】
ブローチ100の挿入中、圧縮歯112は、例えば、股関節ステムインプラント300に形成された多孔質コーティング領域320並びに/または前溝及び/もしくは後溝325と相互作用するように配置及び構成された患者の骨内にポケットを残す。圧縮歯112は、接触した骨を圧縮して移動させる一方で、例えばインプラント300の多孔質コーティング領域320及び/または前後の溝325と係合する海綿骨も残す。
【0064】
図示のように、圧縮歯112は、患者の骨に水平に延在する平行なリッジを形成し得(例えば、前歯及び後歯パターンは、その後に移植される股関節ステムインプラント300の長手方向軸に対してほぼ垂直に配置されてもよい)、その後に移植される股関節ステムインプラント300に形成された前後の溝325に対して傾斜し得る。垂直に配置された圧縮歯112は、海綿骨を圧縮及び/または緻密化し、わずかな階段状パターンを残す。インプラント300の対応する対向する前側302及び後側,304は、ブローチ100上の垂直に配置された圧縮歯112の配置に対して傾斜した溝325を含み得、それによってクロスハッチングパターンを生成する。圧縮歯112は、患者の骨を患者の髄内管の前側と後側で押し、股関節ステムインプラント300の移植中に患者の骨を掻き取り、股関節ステムインプラント300のステムを受け入れるための改善されたエンベロープを作成し、同時に、股関節ステムインプラント300に形成された溝325が骨の内部成長で満たされるためのポケットを残す(例えば、股関節ステムインプラント300に形成された溝325によってスクラップにすることができるリッジが患者の骨に残され、骨が架橋する必要がある任意の隙間を排除または少なくとも最小限に抑える)。
【0065】
患者の骨の髄内管内に位置決めされた股関節ステムインプラント300によるブローチング後、ブローチ100の前側102及び後側104に形成された圧縮歯112は、股関節ステムインプラント300の前側302及び後側304に形成された溝325とクロスハッチングを形成するように構成される。移植中、股関節ステムインプラント300は、ブローチングプロセスで残った階段状の腔の頂点(例えば、平行なリッジ)を、股関節ステムインプラント300の前側302及び後側304に形成された溝325の凹部にスクラップにするかまたは掻き落とす。これにより、骨の内部成長を促進し、沈降及び回転微小運動に対する抵抗を増加させることができる。
【0066】
ブローチングプロセスによって患者の髄内腔に形成された平行なリッジは、その後、股関節ステムインプラント300の移植中に掻き取られることができる。上述のような形状の歯を有するブローチを設けることにより、掻き取られた骨と股関節ステムインプラント300の前後の溝325との間に残る可能性のある隙間を最小限に抑え、それによって長期安定性の改善を容易にすることが分かった。
【0067】
ブローチ100の前側102及び後側104に圧縮歯112を設けることにより、患者の髄内管の内側骨表面は、最終インプラントとより完全かつ正確に相互作用するように圧縮される。インプラント300と患者の骨(皮質/海綿骨)との間の界面に対処する。その結果、患者の骨の髄内管の骨幹を除去して、プレス嵌合なしに股関節ステムインプラント300の遠位領域330に接触/支持しながら、インプラント300上に形成された多孔質コーティング領域320に対する骨の付着部を圧縮及び緻密化する。これにより、股関節ステムインプラント300上の近位内部成長表面への差動プレス嵌合が可能になる。これは、近位大腿骨の長期のストレスシールド及びインプラントの緩みをもたらし得る遠位「ペダスツール(pedastool)」またはプレス嵌合を回避する。
【0068】
図1D及び図1Fに示すように、ブローチ100の外側108は、圧縮歯112を有する領域108Aを含み得る。したがって、外側108は、前側102及び後側104と同様の圧縮歯112を有する領域108Aを含む。ブローチ100の外側108はまた、第3の歯パターンを有する抜去歯114を含む領域108Bを含み得る。図示のように、外側108は、外側108と前側102及び後側104との間に面取りもしくは移行表面または領域108Bを含み得る。いくつかの例では、これらの面取りもしくは移行表面または領域108Bは、ブローチ100の近位領域110に沿って位置決めされ、そこから延在する。図示されるように、外側108と前側102及び後側104との間の面取りもしくは移行表面または領域108Bは、第3の歯パターンを有する抜去歯114を含む領域108Bを画定する。ブローチ100の少なくとも近位領域110に沿って、外側108は、前側102及び後側104と外側108との間の角部、縁部、または交差部に沿って位置決めされた抜去歯114を含む領域108B(例えば、面取りされた表面または移行表面)を含む。より具体的には、外側108は、その前外側及び後外側の態様に形成された抜去歯114を含む。抜去歯114の位置は、前外側及び後外側の態様または領域における同じサイズの大腿骨ステムの近位プレス嵌合セクションに対応するように配置されて構成される。
【0069】
この例では、抜去歯114は角部の歯として配置及び構成される。それらは、ブローチング中に抜去歯114と接触する患者の骨を切断、抜去、及び/または除去するように機能する。このように、抜去歯114は、患者の骨を切断する(例えば、海綿骨を除去するように最適化される)ように配置及び構成されたチップブレーカと呼ばれることがある。抜去歯114は、インプラントが着座する対応する近位、前外側及び後外側の領域にプレス嵌合を形成するために、ブローチ100の近位領域の前外側及び後外側の態様に断続的な切込を設けることができる。これはまた、骨の高密度化を低減することができる。断続的な切込は、ブローチング中の骨押出のための経路、及び患者の大腿骨における近位皮質骨のレリーフを可能にするより攻撃的なパターンを容易にする。抜去歯114は、ブローチングプロセス中に材料を流出させるためのレリーフを組み込みながら、環状研削を提供するように構成されてもよい。
【0070】
抜去歯114は、患者の骨の髄内管の外側で患者の骨を抜去する。抜去歯114は、クリアランスを促進する(例えば、ブローチが(例えば、ある角度で)屈曲して挿入される原因となり得る側方化を防止する)ために最小限の圧縮で患者の骨上の髄内管の外側の任意の骨を除去する。抜去歯114は、側方化を防止するか、または少なくとも最小限に抑えることによって、股関節ステムインプラント300の移植中のクリアランスを容易する。抜去歯114は、患者の骨の髄内管の前外側領域及び後外側領域における骨の除去を補助する。このように配置されると、軟組織が省かれ得る。
【0071】
図1E及び図1Fに最もよく示されているように、外側108上の圧縮歯112は、ブローチ100の近位端から遠位端まで外側108の全長または実質的に全長にわたって延在し得る。抜去歯114は、近位端から遠位端に向かって延在し得る。抜去歯114は、外側108の近位端から遠位端まで全長または実質的に全長にわたって延在し得る。抜去歯114は、ブローチ100の全長にわたって、前側102と外側108との間の角部(例えば、前外側角部)及び後側104と外側108との間の角部(例えば、後外側角部)に配置され得る。あるいは、抜去歯114は、外側108の長さの25%から75%、またはそれ以上延在してもよい。いくつかの特定の例では、抜去歯114は、外側108の長さの50%から75%延在する。さらなる特定の例では、抜去歯114は、外側108の長さの約65%から70%延在する。加えて、及び/または代替的に、いくつかの例では、抜去歯114を含む面取面または領域108Bの各々は、近位端で外側108の幅の10%から40%延在してもよい。いくつかの例では、抜去歯114を含む面取面または領域108Bの各々は、近位端で外側108の幅の20%から35%延在してもよい。さらなる特定の例では、抜去歯114は、近位端で外側108の幅の約30%から35%延在する。さらなる特定の例では、抜去歯114は、外側108の約33%を覆う。
【0072】
ブローチは、現在知られているまたは今後開発される任意の適切な材料から製造され得る。例えば、ブローチは、全体がステンレス鋼から製造されてもよい。あるいは、他の金属が使用されてもよい。さらに、いくつかの例では、ブローチは、PEEKなどの硬質プラスチックから作製されてもよい。
【0073】
ブローチは、現在知られているまたは今後開発される任意の所望のまたは適切な方法論または技術を使用して形成され得る。例えば、ブローチは、任意の現在知られているまたは今後開発される付加製造技術を使用して製造されてもよい。いくつかの非限定的な既知の技術により、ブローチは、選択的レーザ焼結(SLS)、直接金属レーザ焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的レーザ溶融(SLM)、三次元印刷などから製造されることができる。例えば、ブローチは、モノリシックまたは一体の構成要素として形成されてもよい。他の例では、例えば、電子ビーム溶融法などの付加製造技術、またはレーザを使用して最初に固体材料から材料の選択部分を減算または除去する方法が使用されてもよい。他の例では、ブローチの一部または全部は、鋳造または他の技術もしくは方法を使用して形成されることができる。
【0074】
本開示は特定の例に言及しているが、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、記載された例に対する多数の修正、代替、及び変更が可能である。したがって、本開示は、記載された例に限定されず、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等物によって定義される全範囲を有することが意図される。任意の例の説明は、説明を目的としているにすぎず、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がこれらの例に限定されることを示唆することを意図するものではない。言い換えれば、本開示の例示的な例を本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の概念は、他の様態で様々に具体化及び使用されてもよく、添付の特許請求の範囲は、先行技術によって限定される場合を除いて、そのような変形形態を含むと解釈されることが意図されていることを理解されたい。
【0075】
前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されており、本開示を本明細書に開示された1以上の形態に限定することを意図するものではない。例えば、本開示の様々な特徴は、本開示を簡素化する目的で、1以上の例または構成にまとめられる。しかしながら、本開示の特定の例または構成の様々な特徴は、代替の例または構成で組み合わされてもよいことを理解されたい。本明細書の同様のセクション、部分、または構成要素の様々な例に関連して図示または特に説明された任意のセクション、部分、または任意の他の構成要素の任意の例または特徴は、本明細書に図示または説明された任意の他の同様の例または特徴に交換可能に適用され得る。さらに、同じ名称を有する構成要素は、同じであっても異なっていてもよく、当業者であれば、各構成要素を同様の方法で修正したり、同じ機能を果たすように置換したりすることができることを理解するであろう。
【0076】
さらに、以下の請求項は、この参照によりこの発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、本開示の別個の例として独立している。
【0077】
本明細書で使用される場合、単数形で列挙され、単語「a」または「an」の後に続く要素またはステップは、そのような除外が明示的に列挙されない限り、複数の要素またはステップを除外しないものとして理解されるべきである。さらに、本開示の「一例」への言及は、列挙された特徴も組み込む追加の例の存在を除外するものとして解釈されることを意図していない。
【0078】
本明細書で使用される「少なくとも1つ」、「1以上」、及び「及び/または」という語句は、動作において連言的及び選言的の両方であるオープンエンド表現である。「a」(または「an」)、「1以上」及び「少なくとも1つ」という用語を、本明細書では互換的に使用することができる。すべての方向についての言及(例えば、近位、遠位、上、下、上方、下方、左、右、横、縦、前、後、頂部、底部、上側、下側、垂直、水平、半径方向、軸方向、時計方向、及び反時計方向)は、本開示の読者の理解を助けるための識別目的のためだけに使用され、特に本開示の位置、向き、または使用に関して限定するものではない。接続についての言及(例えば、係合される、取り付けられる、結合される、接続される、接合される)は、広く解釈されるべきであり、別段の指示がない限り、要素の集合間の、及び要素間の移動に対する中間部材を含んでもよい。したがって、接続についての言及は、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを必ずしも意味しない。すべての回転参照は、様々な要素間の相対運動を表す。識別参照(例えば、1次、2次、第1、第2、第3、第4など)は、重要性または優先度を暗示することを意図するものではなく、ある特徴を別の特徴から区別するために使用される。図面は例示のみを目的としており、添付の図面に反映されている寸法、位置、順序、サイズに対する相対関係は異なる場合がある。
【符号の説明】
【0079】
100 ブローチ、101 本体、102 前側、104 後側、106 内側、108 外側、108A 領域、108B 領域、110 近位領域、112 圧縮歯、114 抜去歯、130 遠位領域、132 ダイヤモンド歯、140 遠位先端、175 接続機構、300 股関節ステムインプラント、302 前側、304 後側、306 内側、308 外側、310 近位領域、320 多孔質コーティング領域、325 溝、330 遠位領域、340 遠位先端
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
【外国語明細書】