(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022866
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】正極活物質とこれを含む正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20250206BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250206BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250206BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20250206BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250206BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/1391
H01M10/052
H01M10/44 A
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128605
(22)【出願日】2024-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0101769
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 榮 基
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳 善
(72)【発明者】
【氏名】秋 聲 浩
(72)【発明者】
【氏名】康 碩 文
(72)【発明者】
【氏名】尹 在 祥
(72)【発明者】
【氏名】杜 成 旭
(72)【発明者】
【氏名】姜 貴 云
(72)【発明者】
【氏名】全 道 ▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 秉 旭
(72)【発明者】
【氏名】鄭 在 容
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ16
5H029CJ22
5H029DJ16
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ18
5H030AA01
5H030AS01
5H030AS08
5H030AS11
5H030AS14
5H030BB01
5H030FF43
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】正極活物質とこれを含む正極およびリチウム二次電池の提供。
【解決手段】リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子形態の第1正極活物質、およびリチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を含み、第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つはイットリウムを含有するコーティング層を含むものである正極活物質、そしてこれを含む正極とリチウム二次電池に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子形態の第1正極活物質、および
リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を含み、
第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つはイットリウムを含有するコーティング層を含むものである正極活物質。
【請求項2】
第1正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は、第2正極活物質の前記単粒子の平均粒径(D50)よりも大きい、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
第1正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は、10μm~20μmであり、
第2正極活物質の前記単粒子の平均粒径(D50)は、0.5μm~8μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
第1正極活物質と第2正極活物質の総和100重量%に対して、第1正極活物質は60重量%~95重量%で含まれ、第2正極活物質は5重量%~40重量%で含まれる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
第1正極活物質のリチウムコバルト系酸化物は、化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
Lia1Cox1M1
1-x1O2
(前記化学式1で、0.9≦a1≦1.8、0.6≦x1≦1であり、M1は、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項6】
第1正極活物質のリチウムコバルト系酸化物は、アルミニウムをさらに含み、
前記リチウムコバルト系酸化物内のアルミニウムの含有量は、リチウムを除いた金属100モル%に対して1モル%~3モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
第1正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子、および前記粒子の表面に位置し、イットリウム、アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含有するコーティング層を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記コーティング層は、イットリウムを含み、前記コーティング層のイットリウム含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%である、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記コーティング層は、アルミニウムを含み、前記コーティング層でアルミニウムの含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%である、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項10】
第1正極活物質の前記コーティング層の厚さは、5nm~500nmである、請求項7に記載の正極活物質。
【請求項11】
第2正極活物質の前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物で、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量は60モル%~80モル%であり、マンガンの含有量は15モル%以上である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
第2正極活物質の前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、アルミニウムをさらに含有し、層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物内のアルミニウムの含有量は、リチウムを除いた金属全体100モル%に対して1モル%~3モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項13】
第2正極活物質の前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物で、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するコバルトの含有量は、0モル%~0.01モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項14】
第2正極活物質の前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、化学式2で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式2]
Lia2Nix2Mny2Alz2M2
w2O2-b2Xb2
(化学式2で、0.9≦a2≦1.8、0.6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.4、0≦z2≦0.03、0≦w2≦0.3、0.9≦x2+y2+z2+w2≦1.1、および0≦b2≦0.1であり、M2は、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、およびZrより選択される一つ以上の元素であり、Xは、F、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項15】
第2正極活物質は、前記単粒子の表面に位置し、イットリウム、アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含有するコーティング層を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項16】
前記コーティング層は、イットリウムを含み、前記コーティング層のイットリウム含有量は、第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%である、請求項15に記載の正極活物質。
【請求項17】
前記コーティング層は、アルミニウムを含み、前記コーティング層でアルミニウムの含有量は、第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%である、請求項15に記載の正極活物質。
【請求項18】
第2正極活物質のコーティング層の厚さは、5nm~500nmである、請求項15に記載の正極活物質。
【請求項19】
第2正極活物質の前記コーティング層は、イットリウムおよびアルミニウムを全て含み、前記コーティング層でイットリウムはアイランド形態で存在し、アルミニウムは連続的な膜形態で存在する、請求項15に記載の正極活物質。
【請求項20】
第2正極活物質は、前記単粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し、イットリウムを含有する第2コーティング層を含む、請求項15に記載の正極活物質。
【請求項21】
正極集電体、および
前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、請求項1~20のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項22】
前記正極活物質層の密度は、3.5g/cc~3.7g/ccである、請求項21に記載の正極。
【請求項23】
請求項21に記載の正極、
負極、および
電解質を含むリチウム二次電池。
【請求項24】
充電電圧が4.45V以上である、請求項23に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
正極活物質とこれを含む正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末の駆動電源として高いエネルギー密度を有すると共に、携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度が高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に符合するリチウム二次電池を具現するために多様な正極活物質が検討されている。そのうち、リチウムニッケル系酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムコバルト系酸化物などが主に正極活物質として使用される。
【0004】
リチウムコバルト系酸化物は、正極内の高密度を達成することができ、高電圧特性が優れているが、コバルトの埋蔵量が不足し、価格が高いという問題がある。そのためにコバルト以外の元素を使用したリチウムニッケル系酸化物やリチウムマンガン系酸化物などを混合して使用したり、これに代替しようとする試みがあった。しかし、このような正極活物質は、得られる平均電圧が低く、高電圧特性が劣るという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムコバルト系酸化物を含む正極活物質の価格を節減するが、高電圧駆動が可能であり、高容量、高密度および長寿命を達成することができる正極活物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子形態の第1正極活物質、およびリチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を含み、第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つはイットリウムを含有するコーティング層を含むものである正極活物質を提供する。
【0007】
他の一実施形態では、正極集電体、および前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質を含む正極を提供する。
【0008】
他の一実施形態では、前記正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態による正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物の適用による価格上昇を低減させながら高電圧特性を改善し、高容量、高密度および長寿命特性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
【
図3】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
【
図4】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
【
図5】製造例1の第1正極活物質に対する走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
【
図6】製造例5の第2正極活物質に対するSEMイメージである。
【
図7】製造例7のLCO小粒子に対するSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態について当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態で実施することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0012】
ここで使用される用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
ここで「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0014】
ここで「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解しなければならない。
【0015】
図面において、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の分の「直上」にあるという時には中間にまた他の部分がないことを意味する。
【0016】
またここで「層」は、平面図で観察した時、全体の面に形成されている形状だけでなく、一部の面に形成されている形状も含む。
【0017】
平均粒径は、当業者に広く公知となっている方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定したり、または透過電子顕微鏡イメージまたは走査電子顕微鏡イメージで測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を利用して測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味し得る。また、別途の定義がない限り、平均粒径は、走査電子顕微鏡イメージで無作為に20個余りの粒子のサイズ(直径または長軸の長さ)を測定して粒度分布を得、前記粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであり得る。
【0018】
ここで「または」は、排除的な(exclusive)意味として解釈されず、例えば「AまたはB」は、A、B、A+Bなどを含むと解釈される。
【0019】
「金属」は、一般金属と遷移金属およびメタロイド(半金属)を含む概念で解釈される。
【0020】
正極活物質
一実施形態では、リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子形態の第1正極活物質、およびリチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を含み、第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つは、イットリウムを含有するコーティング層を含む正極活物質を提供する。ここでコーティング層は、第1正極活物質の粒子表面に位置するものであるか、または第2正極活物質の単粒子表面に位置するものを意味する。イットリウムコーティング層は、第1正極活物質と第2正極活物質のうちのいずれか一つにだけ存在することもでき、または両方共に存在することもできる。
【0021】
リチウムコバルト系酸化物は、素材の特性上、高電圧特性に優れ、単粒子形態を有しており、密度特性に優れてIT用電池に幅広く使用されている。しかし、希少金属であるコバルトの価格が急騰するにつれ、リチウムコバルト系酸化物正極材の製造費用が上昇してこれに対する対策が必要な状況である。コバルト含有量を減少させた高ニッケル系正極活物質、例えばリチウムニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物やリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物を使用しようとする試みはあるが、駆動可能な平均電圧がリチウムコバルト系酸化物に比べて低く、高電圧特性が劣るという短所がある。コバルトを使用しないコバルトフリー正極活物質も提案されており、そのうち、リチウムリン酸鉄(LFP)、リチウムリン酸マンガン(LMP)、リチウムリン酸マンガン鉄(LMFP)などのオリビン系結晶構造、あるいはリチウム酸化マンガン(LMO)などのスピネル結晶構造の正極活物質は、構造内で活用することができるリチウム可用量が少なくて高容量を具現するには限界がある。層状型のニッケル-マンガン系正極活物質は、構造内のリチウム可用量が高くて容量および効率特性に優れて高容量電池の素材として適しているが、層状構造に核心的な役割を果たすコバルトが除去されることで、構造的安定性が低下したり高電圧特性が低下するという問題がある。
【0022】
一実施形態では、リチウムコバルト系酸化物を含有する第1正極活物質とリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を混合しながら、第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つにイットリウムコーティング層を導入することによって、コバルト費用を低減すると同時に、高電圧特性、例えば高電圧での初期放電容量および寿命特性を改善した正極活物質を提案する。一実施形態による第2正極活物質は、ニッケルとマンガンを含有する層状型化合物であるが、単粒子形態を有することによってリチウムコバルト系酸化物と類似の形状を有することができ、第1正極活物質と混合されて非常に高い正極密度を達成することができ、また優れた高電圧特性まで達成することができる。一実施形態による正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物からなる大粒子と小粒子を混合した場合に比べてコバルト含有量を減らして価格競争力を高めながら、正極密度を類似の水準で達成することができ、高電圧での容量特性と寿命特性をより向上させることができる。また一実施形態では、第1正極活物質と第2正極活物質のうちの少なくとも一つにイットリウムコーティング層を導入することによって構造的安全性を高め、電解液との副反応を抑制することができ、高電圧特性をより改善することができる。
【0023】
第1正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は、第2正極活物質の単粒子の平均粒径(D50)よりも大きくてもよい。この場合、第1正極活物質を大粒またはLCO大粒で表現することができ、第2正極活物質を小粒、NM小粒、またはNM単粒子小粒などで表現することができる。LCOは、リチウムコバルト系酸化物を意味し、NMは、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を意味する。第1正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物を含有するものであって、一般に単粒子形態を有するため、第1正極活物質の前記粒子は単粒子で表現されることもできる。
【0024】
ここで平均粒径(D50)は、正極活物質に対する走査電子顕微鏡イメージから無作為に20個余りの粒子のサイズ(直径または長軸の長さ)を測定して粒度分布を得、前記粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を平均粒径として取ったものであり得る。
【0025】
第1正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は、例えば10μm~20μm、10μm~18μm、または12μm~16μmであり得る。第2正極活物質の前記単粒子の平均粒径(D50)は、例えば0.5μm~8μm、1μm~7μm、1.5μm~6μm、または2μm~5μmであり得る。各正極活物質の平均粒径が前記範囲を満たす場合、高容量および高エネルギー密度を達成することができる。
【0026】
第1正極活物質は、第1正極活物質と第2正極活物質の総和100重量%に対して、60重量%~95重量%で含まれ得、例えば70重量%~90重量%で含まれ得る。第2正極活物質は、第1正極活物質と第2正極活物質の総和100重量%に対して、5重量%~40重量%で含まれ得、例えば10重量%~30重量%で含まれ得る。第1正極活物質と第2正極活物質の混合比率が前記範囲を満たす場合、容量を極大化しながらエネルギー密度を高めることができる。
【0027】
第1正極活物質
第1正極活物質のリチウムコバルト系酸化物は、例えば下記化学式1で表され得る。
【0028】
[化学式1]
Lia1Cox1M1
1-x1O2
前記化学式1で、0.9≦a1≦1.8、0.6≦x1≦1であり、M1は、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrより選択される一つ以上の元素である。
【0029】
化学式1で、0.9≦a1≦1.5、0.9≦a1≦1.2、または0.95≦a1≦1.1であり得る。また0.7≦x1≦1、0.8≦x1≦1、0.9≦x1≦1、または0.95≦x1<1であり得る。
【0030】
一例として、第1正極活物質のリチウムコバルト系酸化物は、アルミニウムをさらに含むことができる。この時、アルミニウムは、ドーパントの一種であると言え、前記化学式1でM1がAlを含む場合であると言える。リチウムコバルト系酸化物にアルミニウムがドーピングされる場合、高電圧での容量特性と寿命特性が向上することができる。
【0031】
前記リチウムコバルト系酸化物内のアルミニウムの含有量は、リチウムコバルト系酸化物でリチウムを除いた金属100モル%に対して1モル%~3モル%であり得、例えば1.5モル%~2.5モル%であり得る。アルミニウムドーパントの含有量が前記範囲を満たす場合、第1正極活物質の高電圧特性がより改善され得る。
【0032】
第1正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子、および前記粒子の表面に位置し、イットリウム、アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含有するコーティング層を含むことができる。第1正極活物質に前記コーティング層が形成される場合、高電圧での寿命特性または容量特性がより改善され得る。
【0033】
前記コーティング層にイットリウムが含まれる場合、前記コーティング層のイットリウム含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%であり得、例えば0.01モル%~0.9モル%、0.01モル%~0.7モル%、0.01モル%~0.5モル%、0.01モル%~0.3モル%、または0.01モル%~0.1モル%であり得る。コーティング層でのイットリウム含有量は、例えば正極活物質の表面または断面に対するSEM-EDS分析などを通じて測定することができる。第1正極活物質でイットリウムコーティング量が前記範囲を満たす場合、容量低下を最小化しながら高電圧特性を向上させることができる。
【0034】
前記コーティング層にアルミニウムが含まれる場合、前記コーティング層でアルミニウムの含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%であり得、例えば0.1モル%~1.5モル%、0.1モル%~1モル%、0.1モル%~0.8モル%、または0.2モル%~0.5モル%であり得る。第1正極活物質でアルミニウムコーティング量が前記範囲を満たす場合、容量低下を最小化しながら高電圧特性を向上させることができる。
【0035】
第1正極活物質のコーティング層の厚さは、5nm~500nmであり得、例えば30nm~500nm、30nm~450nm、30nm~400nm、30nm~350nm、30nm~300nm、30nm~250nm、30nm~200nm、30nm~150nm、50nm~500nm、80nm~500nm、または100nm~500nmであり得る。コーティング層が前記厚さ範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加したり容量が減少することなく、正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制することができる。コーティング層の厚さは、例えばSEM、TEM、TOF-SIMS、XPS、またはEDS分析などを通じて測定することができ、一例として、TEM-EDS line profileを通じて測定することができる。
【0036】
前記コーティング層は、例えばイットリウムとアルミニウムを全て含むことができる。一例として、コーティング層でイットリウムはアイランド形態で存在し、アルミニウムは連続的な膜形態で存在することができる。
【0037】
第2正極活物質
第2正極活物質の前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、ニッケルの含有量がリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して60モル%以上を満たし、例えば60モル%~80モル%、65モル%~80モル%、70モル%~80モル%、60モル%~79モル%、60モル%~78モル%、または60モル%~75モル%などであり得る。ニッケル含有量が前記範囲を満たす場合、高容量を具現することができ、コバルトの含有量を減少させても構造的安全性を高めることができる。
【0038】
マンガンの含有量は、例えば、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して15モル%以上であり得、例えば15モル%~40モル%、15モル%~35モル%、15モル%~30モル%、または20モル%~30%などであり得る。マンガン含有量が前記範囲を満たす場合、正極活物質は高い容量を具現しながら構造的安定性を向上させることができる。
【0039】
前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、ニッケル、マンガン以外にアルミニウムをさらに含むリチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物であり得る。前記複合酸化物にアルミニウムが含有される場合、コバルト元素が構造から除外されても安定した層状構造を維持することに有利である。リチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物100モル%に対するアルミニウムの含有量は、0.1モル%以上、0.5モル%以上または1モル%以上であり得、例えば1モル%~3モル%、1モル%~2.5モル%、1モル%~2モル%、または1モル%~1.9モル%であり得る。アルミニウム含有量が前記範囲を満たす場合、コバルトが除外されても安定した層状構造を維持することができ、充放電により構造が崩壊する問題を抑制することができ、正極活物質の長寿命特性を達成することができる。
【0040】
前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、例えば下記化学式2で表され得る。
【0041】
[化学式2]
Lia2Nix2Mny2Alz2M2
w2O2-b2Xb2
化学式2で、0.9≦a2≦1.8、0.6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.4、0≦z2≦0.03、0≦w2≦0.3、0.9≦x2+y2+z2+w2≦1.1、および0≦b2≦0.1であり、M2は、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、およびZrより選択される一つ以上の元素であり、Xは、F、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【0042】
化学式2で、0.9≦a2≦1.5、または0.9≦a2≦1.2であり得る。また化学式2は、アルミニウムを含有するものであり得、この場合、0.6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.39、0.01≦z2≦0.03、および0≦w2≦0.29を満たすことができ、例えば0.6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.39、0.01<z2≦0.03、および0≦w2≦0.29を満たすことができる。
【0043】
化学式2で、例えば0.6≦x2≦0.79、0.6≦x2≦0.78、0.6≦x2≦0.75、0.65≦x2≦0.8、または0.7≦x2≦0.79であり得、0.1≦y2≦0.35、0.1≦y2≦0.30、0.1≦y2≦0.29、0.15≦y2≦0.39、または0.2≦y2≦0.3であり得、0.01≦z2≦0.025、0.01<z2≦0.02、または0.01<z2≦0.019であり得、0≦w2≦0.28、0≦w2≦0.27、0≦w2≦0.26、0≦w2≦0.25、0≦w2≦0.24、0≦w2≦0.23、0≦w2≦0.22、0≦w2≦0.21、0≦w2≦0.2、0≦w2≦0.15、0≦w2≦0.1、または0≦w2≦0.09などであり得る。
【0044】
前記層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、コバルトを含まないかまたは極少量含有するコバルトフリー化合物であり得る。つまり、層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物でリチウムを除いた金属全体100モル%に対してコバルトの含有量は、0モル%~0.01モル%、または0モル%~0.001モル%であり得る。コバルトを含有しいかまたは極少量含有する第2正極活物質を適用することによって、製造費用を低減することができ、一実施形態により高電圧特性が低下するという問題を効果的に防止することができる。
【0045】
第2正極活物質の単粒子(single particle)は、粒子内に粒界(grain boundary)を有さずに単独で存在し、一つの粒子からなるものを意味し、モルフォロジー上で粒子が相互凝集しない独立した相(phase)で存在する単一粒子、モノリス(monolith)構造または単一体構造または非凝集粒子を意味し得、一例として、単結晶(single crystal)であり得る。前記単粒子は、単独で分離された形態であってもよく、または10個未満の単粒子が互いに付着された形態で存在してもよい。
【0046】
第2正極活物質は、前記単粒子表面に位置し、イットリウム、アルミニウム、またはこれらの組み合わせを含有するコーティング層を含むことができる。一例として、第2正極活物質は、イットリウムを含有するコーティング層を含み、前記コーティング層は、選択的にアルミニウムをさらに含むことができる。
【0047】
第2正極活物質のコーティング層でのイットリウム含有量は、第2正極活物質内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%であり得、例えば0.01モル%~0.9モル%、0.01モル%~0.7モル%、0.01モル%~0.5モル%、0.01モル%~0.3モル%、または0.01モル%~0.1モル%であり得る。コーティング層でのイットリウム含有量は、例えば正極活物質の表面または断面に対するSEM-EDS分析などを通じて測定することができる。第2正極活物質でイットリウムコーティング量が前記範囲を満たす場合、容量低下を最小化しながら高電圧特性を向上させることができる。
【0048】
第2正極活物質のコーティング層にアルミニウムが含まれる場合、アルミニウム含有量は、第2正極活物質内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%であり得、例えば0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%であり得る。これは単粒子内部に含まれるアルミニウムとは別個にコーティング層に含まれているアルミニウムの含有量だけを意味する。コーティング層でのアルミニウム含有量は、例えば正極活物質の表面または断面に対するSEM-EDS分析などを通じて測定することができる。コーティング層でのアルミニウム含有量が前記範囲を満たす場合、均一で薄い厚さのコーティング層を形成することが可能であり、正極活物質の抵抗が増加することなく、電解質との副反応が効果的に抑制されて、高電圧、高温条件でのリチウム二次電池の寿命特性を改善することができる。
【0049】
第2正極活物質のコーティング層は、単粒子の表面を連続的に囲む膜形態であり得、例えば単粒子の表面全体を囲むシェル形態であり得る。これは粒子の表面の一部にだけ部分的にコーティングされた構造とは区分される。一実施形態によれば、コーティング層が単粒子の表面を全体的に囲む形態で形成されながらも、非常に薄くて均一な厚さで形成され得、そのために、正極活物質は、抵抗が上昇したり容量が低下されることなく、構造的安定性が向上し、電解質との副反応が効果的に抑制され得、高電圧での長寿命特性を達成することができる。
【0050】
第2正極活物質のコーティング層の厚さは、5nm~500nmであり得、例えば30nm~500nm、30nm~450nm、30nm~400nm、30nm~350nm、30nm~300nm、30nm~250nm、30nm~200nm、30nm~150nm、50nm~500nm、80nm~500nm、または100nm~500nmであり得る。コーティング層が前記厚さ範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加したり容量が減少することなく、正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制することができる。コーティング層の厚さは、例えばSEM、TEM、TOF-SIMS、XPS、またはEDS分析などを通じて測定することができ、一例として、TEM-EDS line profileを通じて測定することができる。
【0051】
第2正極活物質のコーティング層でイットリウムは島形態で存在することができ、アルミニウムは連続的な膜形態で存在することができる。
【0052】
一例として、アルミニウムとイットリウムは、一つのコーティング層内で混在されていてもよい。またはアルミニウムとイットリウムがそれぞれ別個の層をなしていてもよい。例えば第2正極活物質は、単粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し、イットリウムを含有する第2コーティング層を含むことができる。アルミニウムが先に単粒子の表面に付着または吸収されて薄い膜形態の第1コーティング層が形成され、その上にイットリウムがコーティングされて第2コーティング層が形成され得る。もちろん第1コーティング層と第2コーティング層にアルミニウムとイットリウムが混在されていてもよいが、第1コーティング層はアルミニウムを主成分とするアルミニウム-リッチコーティング層であり、第2コーティング層はイットリウムを主成分とするイットリウム-リッチコーティング層であると言える。この場合にも第2コーティング層でイットリウムは島形態で存在することができるが、特に制限されない。
【0053】
第1コーティング層と第2コーティング層の厚さは特に限定されないが、第1コーティング層の厚さは、10nm~200nmであり得、例えば20nm~200nm、30nm~200nm、または30nm~180nmであり得る。第2コーティング層の厚さは、20nm~300nmであり得、例えば20nm~250nm、20nm~200nm、30nm~300nm、または50nm~300nmであり得る。それぞれの厚さが前記範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加したり容量が減少することなく、正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制して高電圧での寿命特性を改善することができる。
【0054】
正極活物質の製造方法
一実施形態では、リチウムコバルト系酸化物を含有する粒子形態の第1正極活物質を準備し、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態である第2正極活物質を準備して、第1正極活物質と第2正極活物質を混合することを含む正極活物質の製造方法を提供する。ここで第1正極活物質の準備過程と第2正極活物質の準備過程のうちの少なくとも一つは、イットリウムでコーティングする過程を含む。前記方法を通じて前述した正極活物質を製造することができる。
【0055】
一例として、前記正極活物質の製造方法は、第1正極活物質のコーティング過程として、イットリウム原料、アルミニウム原料、またはこれらの組み合わせを水系溶媒に投入して混合し、ここにリチウムコバルト系酸化物を投入して混合した後に乾燥して第1熱処理することを含むことができる。
【0056】
イットリウム原料は、例えばイットリウム硝酸塩、イットリウム硫酸塩、イットリウム炭酸塩、イットリウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。アルミニウム原料は、例えばアルミニウム硝酸塩、アルミニウム硫酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。水系溶媒は、蒸溜水、アルコール系溶媒、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0057】
イットリウムコーティングを行う場合、前記イットリウム原料中のイットリウム含有量が第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%になるように設計することができ、例えば0.01モル%~0.9モル%、0.01モル%~0.7モル%、0.01モル%~0.5モル%、0.01モル%~0.3モル%、または0.01モル%~0.1モル%で設計することができる。第1正極活物質でイットリウムコーティング量が前記範囲を満たす場合、容量低下を最小化しながら高電圧特性を向上させることができる。
【0058】
アルミニウムコーティングを行う場合、アルミニウム原料中のアルミニウム含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%で設計することができ、例えば0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%で設計することができる。
【0059】
第1熱処理は、リチウムコバルト系酸化物粒子の表面にコーティング層を形成する過程として理解され得、例えば酸素雰囲気で700℃~950℃、750℃~950℃、または800℃~950℃の温度範囲で2時間~20時間、あるいは3時間~10時間行うことができる。
【0060】
一例として、前記正極活物質の製造方法は、第2正極活物質のコーティング過程として、イットリウム原料、アルミニウム原料、またはこれらの組み合わせを水系溶媒に投入して混合し、ここに前記単粒子形態の層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投入して混合した後に乾燥して第2熱処理を行うことを含むことができる。
【0061】
リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、他の組成の酸化物、例えばリチウムニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物やリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム系複合酸化物など既存のニッケル系酸化物とは粒子表面の残留リチウムの含有量がかなり異なり、表面の多くの特性が異なるため、既存のコーティング法では均一な膜形態の良好なコーティング層を形成することが不可能である。一実施形態では、コバルト含有量が極少量であり、ニッケル含有量が60モル%以上である層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物の表面に非常に薄い厚さで均一にコーティング層を形成して高電圧特性を改善することができる方法を適用する。
【0062】
イットリウム原料は、例えばイットリウム硝酸塩、イットリウム硫酸塩、イットリウム炭酸塩、イットリウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。アルミニウム原料は、例えばアルミニウム硝酸塩、アルミニウム硫酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。一例として、アルミニウム原料は、アルミニウム硫酸塩を含むことができ、この場合、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物粒子の表面に均一な厚さを有するコーティング層を形成することに有利である。水系溶媒は、蒸溜水、アルコール系溶媒、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0063】
イットリウムコーティングを行う場合、前記イットリウム原料中のイットリウム含有量が第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%~1モル%になるように設計することができ、例えば0.01モル%~0.9モル%、0.01モル%~0.7モル%、0.01モル%~0.5モル%、0.01モル%~0.3モル%、または0.01モル%~0.1モル%で設計することができる。第2正極活物質でイットリウムコーティング量が前記範囲を満たす場合、容量低下を最小化しながら高電圧特性を向上させることができる。
【0064】
アルミニウムコーティングを行う場合、アルミニウム原料中のアルミニウム含有量は、第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%で設計することができ、例えば0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%で設計することができる。コーティング原料の含有量を前記範囲で設計することによって数十~数百ナノメートル水準の薄い厚さを有し、均一な厚さを有するコーティング層を形成することができ、高電圧駆動条件でリチウム二次電池のガス発生量を減らし、高容量および長寿命特性を向上させることができる。
【0065】
イットリウム原料、アルミニウム原料、またはこれらの組み合わせを水系溶媒に投入して混合した溶液は、pHが1.5~3.5であり得、例えば2.0~3.4、2.5~3.3、2.7~3.3、または2.9~3.2であり得る。ここに単粒子形態の層状型のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投下して混合することは、約5分~80分、または5分~60分、または5分~40分間行われ得る。攪拌後の前記混合溶液のpH値は、4.5~8.5であり得、例えば5.0~8.0、5.5~7.5、または6.0~7.0であり得る。このような条件を満たす場合、均一な厚さのコーティング層が形成されることに有利である。
【0066】
第2熱処理は、例えば酸素雰囲気で700℃~850℃、750℃~840℃、または800℃~830℃の温度範囲で2時間~20時間、あるいは3時間~10時間行われ得る。
【0067】
第1正極活物質と第2正極活物質は、60:40~95:5の重量比で混合され得、例えば70:30~90:10の重量比で混合され得る。このような比率で混合される場合、エネルギー密度を極大化しながら容量と寿命特性を向上させることができる。
【0068】
正極
一実施形態では、正極集電体、および前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述した正極活物質を含む正極を提供する。正極活物質層は、前述した正極活物質以外に他の種類の正極活物質をさらに含むこともできる。また正極活物質層は、選択的にバインダー、導電剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0069】
一実施形態によれば、前記正極活物質層のローディングレベルは、10mg/cm2~40mg/cm2であり得、例えば10mg/cm2~30mg/cm2または10mg/cm2~20mg/cm2であり得る。また圧延された最終正極で正極活物質層の密度は、3.5g/cc~3.7g/ccであり得、例えば3.5g/cc~3.6g/ccまたは3.5g/cc~3.58g/ccであり得る。一実施形態による正極活物質を適用する場合、このようなローディングレベルと正極密度を具現することに有利であり、前記範囲のローディングレベルおよび正極密度を満たす正極は、高容量、高エネルギー密度のリチウム二次電池を具現することに適している。
【0070】
バインダー
バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0071】
導電剤
導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。導電剤の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
バインダーおよび導電剤の含有量は、正極活物質層100重量%に対してそれぞれ0.5重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%であり得る。
【0073】
正極集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0074】
負極
負極は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含むことができ、負極活物質層は、負極活物質を含み、バインダー、導電剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0075】
負極活物質
負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0076】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛、または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0077】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnより選択される金属との合金を使用することができる。
【0078】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができる。前記Si系負極活物質としては、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素(Siを除く)、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせから選択される元素であり、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせから選択される)、またはこれらの組み合わせであり得る。前記Sn系負極活物質としては、Sn、SnO2、Sn合金またはこれらの組み合わせであり得る。
【0079】
前記シリコン-炭素複合体は、シリコンと非晶質炭素の複合体であり得る。シリコン-炭素複合体粒子の平均粒径(D50)は、例えば0.5μm~20μmであり得る。一実施形態によれば、前記シリコン-炭素複合体は、シリコン粒子、および前記シリコン粒子の表面に非晶質炭素がコーティングされた形態であり得る。例えば、シリコン1次粒子が造粒された2次粒子(コア)、およびこの2次粒子表面に位置する非晶質炭素コーティング層(シェル)を含むことができる。前記非晶質炭素は、前記シリコン1次粒子の間にも位置して、例えば、シリコン1次粒子が非晶質炭素でコーティングされ得る。前記2次粒子は、非晶質炭素マトリックスに分散して存在することができる。
【0080】
前記シリコン-炭素複合体は、結晶質炭素をさらに含むこともできる。例えば、前記シリコン-炭素複合体は、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むことができる。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであり得る。前記非晶質炭素は、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0081】
前記シリコン-炭素複合体がシリコンおよび非晶質炭素を含む場合、シリコンの含有量は、シリコン-炭素複合体100重量%に対して10重量%~50重量%であり、非晶質炭素の含有量は、50重量%~90重量%であり得る。また、前記複合体がシリコン、非晶質炭素および結晶質炭素を含む場合、シリコン-炭素複合体100重量%に対してシリコンの含有量は10重量%~50重量%であり得、結晶質炭素の含有量は10重量%~70重量%であり得、非晶質炭素の含有量は20重量%~40重量%であり得る。
【0082】
また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは、5nm~100nmであり得る。前記シリコン粒子(1次粒子)の平均粒径(D50)は、10nm~1μm、または10nm~200nmであり得る。前記シリコン粒子は、シリコン単独で存在したり、シリコン合金の形態で存在してもよく、または酸化された形態で存在してもよい。シリコンの酸化された形態は、SiOx(0<x<2)で表され得る。この時、酸化程度を示すSi:Oの原子含有量の比率は、99:1~33:67であり得る。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0083】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は、炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用時、その混合比は重量比で1:99~90:10であり得る。
【0084】
バインダー
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水系バインダー、水系バインダー、乾式バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0085】
非水系バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
水系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエンラバー、(メタ)アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。
【0087】
負極バインダーとして水系バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。
【0088】
乾式バインダーは、繊維化が可能な高分子物質であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシドまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0089】
導電剤
導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物が挙げられる。
【0090】
負極活物質の含有量は、負極活物質層100重量%に対して95重量%~99.5重量%であり得、バインダーの含有量は、負極活物質層100重量%に対して0.5重量%~5重量%であり得る。例えば負極活物質層は、負極活物質を90重量%~99重量%、バインダーを0.5重量%~5重量%、導電剤を0.5重量%~5重量%で含むことができる。
【0091】
集電体
負極集電体は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタニウム(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金を含むことができ、ホイル、シート、または発泡体形態であり得る。負極集電体の厚さは、例えば1μm~20μmであり得、5μm~15μm、または7μm~10μmであり得る。
【0092】
電解質
リチウム二次電池用電解質は、一例として電解液であり得、これは非水性有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0093】
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。非水性有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、またはアルコール系溶媒、非プロトン性溶媒またはこれらの組み合わせであり得る。
【0094】
カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用することができる。エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、バレロラクトン(valerolactone)。カプロラクトン(caprolactone)などが使用することができる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用することができる。また、ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用することができる。アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用することができ、非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環、またはエーテル基を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどのジオキソラン類;スルホラン(sulfolane)類などが使用することができる。
【0095】
非水性有機溶媒は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、2種以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能により適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者に幅広く理解され得る。
【0096】
カーボネート系溶媒を使用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して使用することができ、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合され得る。
【0097】
非水性有機溶媒は、芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。例えばカーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は1:1~30:1の体積比で混合して使用することができる。
【0098】
電解液は、電池寿命を向上させるためにビニルエチルカーボネート、ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0099】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0100】
リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiCl、LiI、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N (リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、LiC4F9SO3、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(xおよびyは1~20の整数である)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムテトラフルオロエタンスルホネート、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)より選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0101】
リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解液が適切なイオンの伝導度および粘度を有するため、優れた性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0102】
<リチウム二次電池>
一実施形態では、前述した正極、負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0103】
リチウム二次電池は、形態により円筒型、角型、パウチ型、コイン型などに分類することができる。
図1~
図4は一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図であり、
図1は円型、
図2は角型、
図3と
図4はパウチ型の電池形態であると言える。
図1~4を参照すれば、リチウム二次電池100は、正極10と負極20との間にセパレータ30を介した電極組立体40、そして電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。正極10、負極20およびセパレータ30は、電解液(図示せず)で含浸されていてもよい。リチウム二次電池100は、
図1のようにケース50を密封する密封部材60を含むことができる。また
図2でリチウム二次電池100は、正極リードタブ11と正極端子12、負極リードタブ21および負極端子22を含むことができる。
図3および
図4のようにリチウム二次電池100は、電極組立体40で形成された電流を外部に誘導するための電気的通路の役割を果たす電極タブ70、つまり、正極タブ71および負極タブ72を含むことができる。
【0104】
一実施形態によるリチウム二次電池は、高電圧で充電可能な、あるいは高電圧で駆動されることに適したものであり得る。例えばリチウム二次電池の充電電圧は、4.45V以上であり得、4.45V~4.7V、4.45V~4.6V、または4.45V~4.55Vなどであり得る。前記リチウム二次電池は、一実施形態による正極活物質を適用することによって高電圧で充電してもガス発生量を顕著に減少させることができ、高容量および長寿命特性を具現することができる。
【0105】
セパレータ
リチウム二次電池の種類により正極と負極との間にセパレータが存在することもできる。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0106】
前記セパレータは、多孔性基材、そして多孔性基材の一面または両面に位置する有機物、無機物またはこれらの組み合わせを含むコーティング層を含むことができる。
【0107】
前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン、およびポリテトラフルオロエチレンから選択されたいずれか一つの高分子、またはこれらの中の2種以上の共重合体または混合物で形成された高分子膜であり得る。
【0108】
前記多孔性基材は、約1μm~40μmの厚さを有することができ、例えば1μm~30μm、1μm~20μm、5μm~15μm、または10μm~15μmの厚さを有することができる。
【0109】
前記有機物は、(メタ)アクリルアミドから誘導される第1構造単位、そして(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレートから誘導される構造単位および(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位のうちの少なくとも一つを含む第2構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含むことができる。
【0110】
前記無機物は、Al2O3、SiO2、TiO2、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、Mg(OH)2、ベーマイト(boehmite)およびこれらの組み合わせから選択される無機粒子を含むことができるが、これに限定されるのではない。前記無機粒子の平均粒径(D50)は、1nm~2000nmであり得、例えば、100nm~1000nm、100nm~700nmであり得る。
【0111】
前記有機物と無機物は、一つのコーティング層に混合して存在したり、有機物を含むコーティング層と無機物を含むコーティング層が積層された形態で存在することができる。
【0112】
前記コーティング層の厚さは、それぞれ0.5μm~20μmであり得、例えば、1μm~10μm、または1μm~5μmであり得る。
【0113】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一例示に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0114】
製造例1:第1正極活物質の製造(LCO大粒)
組成がLiCo
0.985Al
0.015O
2であり、平均粒径(D
50)が約18μmである第1複合酸化物を準備した。アルミニウム酸化物を投入してここに第1複合酸化物を投入し、20分~60分程度混合した。この時、アルミニウム酸化物中のアルミニウムの含有量は、最終の第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.4モル%になるように設計した。この混合物を950℃で第2熱処理を8時間行って第1正極活物質を製造した。
図5は製造した第1正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
【0115】
製造例2:第1正極活物質の製造(LCO大粒)
第1複合酸化物と水、イットリウムナイトレートと共に添加してイットリウム(Y)をコーティングした後、乾燥を行った。この乾燥品とAl2O3を混合して950度で8時間熱処理して製造例1と実質的に同様な方法で第1正極活物質を製造した。ここでイットリウムナイトレートの中のイットリウムの含有量は0.05モル%になるように設計した。
【0116】
製造例3:第1正極活物質の製造(LCO大粒)
Al、YコーティングなしにLiCo0.985Al0.015O2の第1複合酸化物を第1正極活物質として使用した。
【0117】
下表1に製造例1~3の設計を簡略に示した。表1の容量と寿命は、製造例1~3のそれぞれを正極活物質として適用し、後述する実施例1のように正極およびリチウム二次電池を製造した後、評価例1の方法で測定したものである。
【0118】
【0119】
製造例4:第2正極活物質の製造(NM小粒)
Ni0.75Mn0.25(OH)2、LiOHおよびAl2O3を1:1:0.02のモル比で混合して酸素雰囲気で850℃で8時間熱処理して組成がLiNi0.75Mn0.23Al0.02O2であり、平均粒径(D50)が約3μmである単粒子形態の第2複合酸化物を製造した。
【0120】
蒸溜水溶媒にアルミニウムスルフェート、およびイットリウムナイトレートを混合した後、ここに第2複合酸化物を投入して20分~60分程度混合した。この時、アルミニウムスルフェートの中のアルミニウムの含有量は、最終の第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100重量%に対して0.4モル%になるように設計し、イットリウムナイトレートの中のイットリウムの含有量は0.05モル%になるように設計して混合した。混合した溶液で溶媒を除去して190℃で乾燥した後、酸素雰囲気で825℃で8時間熱処理を行って第2正極活物質を製造した。
【0121】
製造例5:第2正極活物質の製造(NM小粒)
イットリウムナイトレートの中のイットリウムの含有量を0.1モル%で設計したことを除き、製造例4と同様な方法で第2正極活物質を製造した。
図6は製造例5の第2正極活物質に対する走査電子顕微鏡の写真である。
【0122】
製造例6:第2正極活物質の製造(NM小粒)
イットリウムナイトレートを添加せず、Alコーティングだけを行ったことを除き、製造例4と同様な方法で第2正極活物質を製造した。
【0123】
下表2に製造例4~6の設計を簡略に示した。表2の容量と寿命は、製造例4~6のそれぞれを正極活物質として適用し、後述する実施例1のように正極およびリチウム二次電池を製造した後、評価例1の方法で測定したものである。
【0124】
【0125】
製造例7:LCO小粒
蒸溜水溶媒にアルミニウムスルフェートを混合した後、平均粒径(D
50)が約4μmであるLiCo
0.98Al
0.02O
2粒子を投入して20分~60分程度混合した。この時、アルミニウムスルフェートの中のアルミニウムの含有量は、最終の正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.4モル%になるように設計した。混合した溶液で溶媒を除去して190℃で乾燥した後、825℃で8時間熱処理して製造例7による正極活物質を製造した。
図7は製造例7の正極活物質(LCO小粒)に対する走査電子顕微鏡の写真である。
【0126】
製造例8:LCO小粒
アルミニウムスルフェートの投入時、イットリウムナイトレートを共に添加してAlおよびYをコーティングしたことを除き、製造例7と実質的に同様な方法で正極活物質を製造した。ここでイットリウムナイトレートの中のイットリウムの含有量は、最終の正極物質でリチウムを除いた金属100モル%に対して0.05モル%になるように設計した。
【0127】
下表3に製造例7、8の設計を簡略に示した。表3の容量と寿命は、製造例7、8のそれぞれを正極活物質として適用し、後述する実施例1のように正極およびリチウム二次電池を製造した後、評価例1の方法で測定したものである。
【0128】
【0129】
実施例1
1.正極の製造
製造例1の第1正極活物質(LCO大粒)と製造例4の第2正極活物質(NM小粒)を8:2の重量比で混合して実施例1による正極活物質を準備した。
【0130】
製造した正極活物質98.5重量%、ポリフッ化ビニリデンバインダー1.0重量%、および炭素ナノチューブ導電剤0.5重量%を混合して正極活物質層スラリーを製造し、これをアルミニウム箔集電体にコーティングし、乾燥および圧延して正極を製造した。この時、圧延された最終正極の密度は約3.52g/ccである。
【0131】
2.リチウム二次電池の製造
黒鉛負極活物質97.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.5重量%およびスチレンブタジエンラバー1重量%を水溶媒の中で混合して負極活物質層スラリーを製造した。銅箔集電体に負極活物質層スラリーをコーティングし、乾燥および圧延して負極を製造した。
【0132】
ポリテトラフルオロエチレンセパレータを使用し、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートを3:7の体積比で混合した溶媒に1MのLiPF6を溶解した電解液を使用して通常の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0133】
比較例1
製造例1の第1正極活物質(LCO大粒)と製造例7の第2正極活物質(LCO小粒)を8:2の重量比で混合したものを正極活物質として使用したことを除き、実施例1と実質的に同様な方法で正極活物質、正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0134】
評価例1:電気化学的特性および合材密度の評価
実施例1と比較例1で製造したリチウム二次電池を25℃で0.2Cの定電流で4.5Vまで、定電圧で0.05Cまで充電した後、終止電圧3.0Vまで0.2Cで放電して初期充放電を行い、表4に初期放電容量を示した。
【0135】
次に、45℃で3.0V~4.5Vの電圧範囲で1.0Cで充電および1.0Cで放電するサイクルを50回以上繰り返し、初期放電容量に対する50サイクル放電容量の比率を計算して表4に示した。
【0136】
また実施例1と比較例1の圧延された状態での正極合材密度を表4に示した。
【0137】
【0138】
表4を参照すれば、実施例1は、比較例1とほとんど同一の正極合材密度を維持しながら、比較例1に比べて高電圧での初期放電容量および高電圧寿命特性がより改善されたことが分かる。
【0139】
以上で好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0140】
100:リチウム二次電池
10:正極
11:正極リードタブ
12:正極端子
20:負極
21:負極リードタブ
22:負極端子
30:セパレータ
40:電極組立体
50:ケース
60:密封部材
70:電極タブ
71:正極タブ
72:負極タブ