(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025022868
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】正極活物質、これを含む正極、およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20250206BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250206BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250206BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20250206BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
H01M4/36 D
H01M4/36 C
H01M4/131
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128608
(22)【出願日】2024-08-05
(31)【優先権主張番号】10-2023-0101768
(32)【優先日】2023-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 榮 基
(72)【発明者】
【氏名】秋 聲 浩
(72)【発明者】
【氏名】全 道 ▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 貴 云
(72)【発明者】
【氏名】鄭 在 容
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳 善
(72)【発明者】
【氏名】姜 秉 旭
(72)【発明者】
【氏名】尹 在 祥
(72)【発明者】
【氏名】杜 成 旭
(72)【発明者】
【氏名】康 碩 文
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含む正極活物質であって、正極素材の価格を革新的に減らしながら、高容量および高エネルギー密度の特性まで確保し、高電圧での電解質との副反応が抑制され、高電圧性能が改善された正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態の第2正極活物質、およびリチウムマンガン系酸化物を含有する粒子形態の第3正極活物質を含む正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、
リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態の第2正極活物質、および
リチウムマンガン系酸化物を含有する粒子形態の第3正極活物質を含む、正極活物質。
【請求項2】
第1正極活物質の前記2次粒子の平均粒径(D50)は10μm~20μmであり、
第2正極活物質の前記単粒子の平均粒径(D50)は0.5μm~8μmであり、
第3正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は5μm~12μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
第1正極活物質、第2正極活物質および第3正極活物質の総合100重量%に対して、第1正極活物質は60重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は5重量%~35重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~35重量%で含まれる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
第1正極活物質、第2正極活物質および第3正極活物質の総合100重量%に対して、第1正極活物質は60重量%~85重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~25重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~20重量%で含まれる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は同一または異なり、それぞれ独立して、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%~80モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、それぞれ独立して、ニッケル、マンガン以外にアルミニウムをさらに含むリチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物であり、
前記リチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物でアルミニウムの含有量は、リチウムを除いた金属全体100モル%に対して1モル%~3モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物、第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物、および第3正極活物質のリチウムマンガン系酸化物は、それぞれ独立して、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するコバルトの含有量が0モル%~0.01モル%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、それぞれ独立して、下記化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質:
[化学式1]
Lia1Nix1Mny1Alz1M1
w1O2-b1Xb1
化学式1中、0.9≦a1≦1.8、0.6≦x1≦0.8、0.1≦y1≦0.4、0≦z1≦0.03、0≦w1≦0.3、0.9≦x1+y1+z1+w1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、M1はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、Y、およびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【請求項9】
前記化学式1中、0.6≦x1≦0.8、0.1≦y1≦0.39、0.01≦z1≦0.03、および0≦w1≦0.29を満たす、請求項8に記載の正極活物質。
【請求項10】
第1正極活物質は、前記2次粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有するコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して、前記コーティング層のアルミニウムの含有量は0.1モル%~2モル%である、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記コーティング層はジルコニウム、イットリウム、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記コーティング層は、第1正極活物質内のリチウムを除いた金属100モル%に対して0.05モル%~1モル%のジルコニウムをさらに含むか、および/または0.05モル%~1モル%のイットリウムをさらに含む、請求項12に記載の正極活物質。
【請求項14】
第1正極活物質のコーティング層は、前記2次粒子の表面を連続的に囲むシェル形態である、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項15】
第1正極活物質のコーティング層の厚さは30nm~500nmである、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項16】
第1正極活物質は、前記2次粒子内部の1次粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する粒界コーティング部をさらに含む、請求項10に記載の正極活物質。
【請求項17】
第2正極活物質は前記単粒子表面に位置し、アルミニウムを含有するコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項18】
第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して、前記コーティング層のアルミニウムの含有量は0.1モル%~2モル%である、請求項17に記載の正極活物質。
【請求項19】
第2正極活物質の前記コーティング層は、前記単粒子の表面を連続的に囲むシェル形態である、請求項17に記載の正極活物質。
【請求項20】
第2正極活物質の前記コーティング層の厚さは30nm~500nmである、請求項17に記載の正極活物質。
【請求項21】
第2正極活物質の前記コーティング層はイットリウムをさらに含有する、請求項17に記載の正極活物質。
【請求項22】
第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して、前記コーティング層のイットリウム含有量は0.1モル%~1モル%である、請求項21に記載の正極活物質。
【請求項23】
第2正極活物質の前記コーティング層でアルミニウムは、連続的な膜形態で存在し、イットリウムはアイランド形態で存在する、請求項21に記載の正極活物質。
【請求項24】
第2正極活物質は前記単粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し、イットリウムを含有する第2コーティング層を含む、請求項21に記載の正極活物質。
【請求項25】
第3正極活物質は、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項26】
第3正極活物質の前記リチウムマンガン系酸化物はマンガン以外にアルミニウム、マグネシウム、イットリウム、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項27】
第3正極活物質の前記リチウムマンガン系酸化物は、下記化学式3で表される、請求項1に記載の正極活物質:
[化学式3]
Lia3Mnx3M3
y3O4-b3Xb3
化学式3中、0.9≦a3≦1.8、1.7≦x3≦2、0≦y3≦0.3、1.9≦x3+y3≦2.1、および0≦b3≦0.1であり、M3はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、YおよびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【請求項28】
第3正極活物質の前記リチウムマンガン系酸化物は、下記化学式4で表される、請求項27に記載の正極活物質:
[化学式4]
Lia4Mnx4Aly4Mgz4M4
w4O4-b4Xb4
化学式4中、0.9≦a4≦1.8、1.7≦x4<2.0、0<y4≦0.015、0<z4≦0.010、0≦w4<0.3、1.9≦x4+y4+z4+w4≦2.1、および0≦b4≦0.1であり、M4はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、YおよびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【請求項29】
第3正極活物質は、前記粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有するコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項30】
第3正極活物質内のリチウムを除いた金属100モル%に対して、前記コーティング層のアルミニウムは0.01モル%~1モル%で含まれる、請求項29に記載の正極活物質。
【請求項31】
正極集電体、および
前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、請求項1~30のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項32】
前記正極活物質層の密度は3.5g/cc~3.7g/ccである、請求項31に記載の正極。
【請求項33】
請求項31に記載の正極、
負極、および
電解質を含む、リチウム二次電池。
【請求項34】
充電電圧は4.3V~4.6Vである、請求項33に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質、これを含む正極、およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末器の駆動電源として高いエネルギー密度を有しながらも携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度の高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に合致するリチウム二次電池を実現するために多様な正極活物質が検討されている。そのうち、リチウムニッケル系酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムコバルト酸化物などが主に正極活物質として用いられる。しかし、近年、大型、高容量、または高エネルギー密度のリチウム二次電池に対する需要は急増する反面、希少金属であるコバルトを含有している正極活物質の供給量は非常に不足すると予想される。つまり、コバルトは高価で、残っている埋蔵量が多くないため、コバルトを除くか、またはその含有量を減少させた正極活物質に対する開発が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含む正極活物質であって、正極素材の価格を革新的に減らしながら、高容量および高エネルギー密度の特性まで確保し、高電圧での電解質との副反応が抑制され、高電圧性能が改善された正極活物質、これを含む正極およびリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態の第2正極活物質、およびリチウムマンガン系酸化物を含有する粒子形態の第3正極活物質を含む、正極活物質を提供する。
【0006】
本発明の他の一実施形態は、正極集電体、および前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、上述した正極活物質を含む正極を提供する。
【0007】
本発明の他の一実施形態は、前記正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態による正極活物質は、生産価格を最小化しながら容量を極大化したことで、長寿命特性が確保され、高電圧での電解質との副反応が抑制される。前記正極活物質を適用したリチウム二次電池は、高電圧駆動条件でも高い初期充放電容量および効率を示すことができ、長寿命特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を概略的に示す断面図である。
【
図2】実施例1の第1正極活物質に対する走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
【
図3】実施例1の第2正極活物質に対するSEMイメージである。
【
図4】実施例1の第3正極活物質に対するSEMイメージである。
【
図5】実施例1の第3正極活物質に対するSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0011】
ここで使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0012】
ここで「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0013】
ここで「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0014】
図面で様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるというとき、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなくその中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0015】
また、ここで「層」は、平面図で観察したとき、全体面に形成されている形状だけでなく、一部面に形成されている形状も含む。
【0016】
平均粒径は、当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析装置で測定するか、または透過電子顕微鏡像または走査電子顕微鏡イメージで測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を用いて測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味する。また、別途の定義がない限り、平均粒径は、走査電子顕微鏡イメージから無作為に20個余りの粒子のサイズ(直径または長軸の長さ)を測定して粒度分布を得て、前記粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであり得る。
【0017】
ここで「または」は、排除的な(exclusive)意味に解釈されず、例えば「AまたはB」はA、B、A+Bなどを含むと解釈される。
【0018】
「金属」は、一般金属、遷移金属およびメタロイド(半金属)を含む概念として解釈される。
【0019】
正極活物質
本発明の一実施形態では、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有し、単粒子形態の第2正極活物質、およびリチウムマンガン系酸化物を含有する粒子形態の第3正極活物質を含む正極活物質を提供する。
【0020】
近年、希少金属であるコバルトの価格が急騰していることに伴いコバルトを除くか、またはその含有量を減少させた正極活物質に対する開発が要求されている。その中で、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)などのオリビン系結晶構造の正極活物質は、構造内で活用できるリチウム量が少ないため、高容量を実現することには限界がある。層状型のニッケル-マンガン系正極活物質は、構造内のリチウム含有量を高くすることができるため、容量および効率特性に優れ、高容量電池の素材として適しているが、層状構造に核心的な役割を果たすコバルトが除去されることで、構造的安定性が低下し、抵抗が増加し、長寿命特性を確保することが難しくなる問題がある。また、コバルトを除くため、高電圧、高温条件で正極活物質と電解質の副反応が加速してガス発生量が増加し、寿命特性が低下する問題がある。
【0021】
一実施形態では、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有するものとして、2次粒子形態の第1正極活物質と単粒子形態の第2正極活物質を混合し、そこに安い素材であるリチウムマンガン系酸化物を含有する第3正極活物質を混合することによって、高容量および高エネルギー密度を実現しながら、長寿命特性を実現して高電圧性能が改善された正極活物質を提供する。
【0022】
第1正極活物質の2次粒子の平均粒径(D50)は、第2正極活物質の単粒子の平均粒径(D50)より大きくてもよい。この場合、第1正極活物質を大粒または大粒子と表現でき、第2正極活物質を小粒または小粒子と表現できる。第1正極活物質の2次粒子の平均粒径(D50)は、第3正極活物質の平均粒径(D50)より大きくてもよい。第3正極活物質の平均粒径(D50)は、第2正極活物質の単粒子の平均粒径(D50)と同一またはより大きくてもよい。リチウムニッケル-マンガン系酸化物として2次粒子形態の大粒子と単粒子形態の小粒子を適切に混合し、リチウムマンガン系酸化物をさらに混合することによって容量とエネルギー密度を極大化し、高電圧特性を向上させることができる。
【0023】
ここで平均粒径は、正極活物質に対する走査電子顕微鏡イメージで無作為に20個余の粒子の大きさ(直径または長軸の長さ)を測定して粒度分布を得て、前記粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであってもよい。
【0024】
第1正極活物質の前記2次粒子の平均粒径(D50)は、例えば、10μm~20μm、10μm~18μm、または12μm~16μmであってもよい。第2正極活物質の前記単粒子の平均粒径(D50)は、例えば、0.5μm~8μm、1μm~7μm、1.5μm~6μm、または2μm~5μmであってもよい。第3正極活物質の前記粒子の平均粒径(D50)は5μm~12μmであってもよく、例えば、6μm~11μm、または7μm~10μmであってもよい。各正極活物質の平均粒径が上記範囲を満たす場合、高容量を実現し、エネルギー密度を極大化することができる。
【0025】
第1正極活物質、第2正極活物質および第3正極活物質の総合100重量%に対して、第1正極活物質は60重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は5重量%~35重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~35重量%で含まれる。具体的な例として、第1正極活物質は60重量%~85重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~25重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~20重量%で含まれる。各正極活物質の混合比率が上記範囲を満たす場合、容量を高め、かつエネルギー密度を一層高めることができる。
【0026】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、互いに同一または異なっていてもよい。それぞれのリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物でニッケルの含有量は、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して60モル%以上を満たし、例えば、60モル%~80モル%、65モル%~80モル%、70モル%~80モル%、60モル%~79モル%、60モル%~78モル%、または60モル%~75モル%などであってもよい。ニッケル含有量が上記範囲を満たす場合、高容量を実現でき、コバルトの含有量を減少させても構造的安全性を高めることができる。
【0027】
マンガンの含有量は、例えば、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して10モル%~40モル%であってもよく、例えば、10モル%~39モル%、10モル%~35モル%、10モル%~30モル%、10モル%~29モル%、15モル%~39モル%、20モル%~39モル%、20モル%~30%などであってもよい。マンガン含有量が上記範囲を満たす場合、正極活物質は高い容量を実現しながら構造的安定性を向上させることができる。
【0028】
第1正極活物質と第2正極活物質それぞれで、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物はニッケル、マンガン以外にアルミニウムをさらに含むリチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物であってもよい。前記複合酸化物にアルミニウムが含まれている場合、コバルト元素が構造から除外されても安定した層状構造を維持することに有利である。リチウムニッケル-マンガン-アルミニウム系複合酸化物100モル%に対するアルミニウムの含有量は0.1モル%以上、0.5モル%以上または1モル%以上であってもよく、例えば、1モル%~3モル%、1モル%~2.5モル%、1モル%~2モル%、または1モル%~1.9モル%であってもよい。アルミニウム含有量が上記範囲を満たす場合、コバルトが除外されても安定した層状構造を維持でき、充放電により構造が崩壊する問題を抑制することができ、正極活物質の長寿命特性を実現することができる。
【0029】
第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、それぞれ独立して、下記化学式1で表される。
[化学式1]
Lia1Nix1Mny1Alz1M1
w1O2-b1Xb1
【0030】
化学式1中、0.9≦a1≦1.8、0.6≦x1≦0.8、0.1≦y1≦0.4、0≦z1≦0.03、0≦w1≦0.3、0.9≦x1+y1+z1+w1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、M1はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、Y、およびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【0031】
化学式1中、0.9≦a1≦1.5、または0.9≦a1≦1.2であってもよい。また、化学式1はアルミニウムを含有するものであってもよく、この場合、0.6≦x1≦0.8、0.1≦y1≦0.39、0.01≦z1≦0.03、および0≦w1≦0.29を満たすことができ、例えば、0.6≦x1≦0.8、0.1≦y1≦0.39、0.01<z1≦0.03、および0≦w1≦0.29を満たすことができる。
【0032】
化学式1中、例えば、0.6≦x1≦0.79、0.6≦x1≦0.78、0.6≦x1≦0.75、0.65≦x1≦0.8、または0.7≦x1≦0.79であってもよく、0.1≦y1≦0.35、0.1≦y1≦0.30、0.1≦y1≦0.29、0.15≦y1≦0.39、または0.2≦y1≦0.3であってもよく、0.01≦z1≦0.025、0.01<z1≦0.02、または0.01<z1≦0.019であってもよく、0≦w1≦0.28、0≦w1≦0.27、0≦w1≦0.26、0≦w1≦0.25、0≦w1≦0.24、0≦w1≦0.23、0≦w1≦0.22、0≦w1≦0.21、0≦w1≦0.2、0≦w1≦0.15、0≦w1≦0.1、または0≦w1≦0.09などであってもよい。
【0033】
前記リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物はコバルトを含まないか、または極少量含有するコバルト-フリー化合物であってもよい。つまり、第1正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物および第2正極活物質のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は、それぞれ独立して、リチウムを除いた金属全体100モル%に対するコバルトの含有量が0モル%~0.01モル%であってもよい。
【0034】
第1正極活物質
一実施形態によれば、コーティング層を除いた第1正極活物質の2次粒子内でアルミニウムの濃度は均一であってもよい。つまり、粒子内で中心から表面方向にアルミニウムが濃度勾配を有するか、あるいは粒子内で内部より外部でのアルミニウム濃度がさらに高かったり低かったりせず、粒子内アルミニウムが均一に分散していることを意味する。これは、正極活物質の合成過程でアルミニウムをさらにドーピングせず、前駆体の製造時にアルミニウム原料を使用することによってニッケル-マンガン-アルミニウム系水酸化物を前駆体として複合酸化物を合成することによって得られる構造である。つまり、1次粒子内部のアルミニウム含有量は、1次粒子の位置に関係なしに同一または類似であり得る。2次粒子の断面で任意の位置で1次粒子を選択して1次粒子の界面ではなく内部でのアルミニウム含有量を測定すれば、1次粒子の位置、つまり、1次粒子が2次粒子の中心または表面に近くても構わず、アルミニウムの含有量は同一/類似/均一であると表現することができる。このような構造ではコバルトが存在しないか、または極少量で存在しても安定した層状型構造を維持することができ、アルミニウム副産物やアルミニウム凝集物が発生せず、正極活物質の容量、効率、および寿命特性を同時に改善することができる。
【0035】
一実施形態による第1正極活物質は前記2次粒子の表面に位置し、アルミニウムおよびジルコニウムを含有するコーティング層をさらに含むことができる。第1正極活物質は、表面にアルミニウム-ジルコニウム-リッチ層を含むことによって高電圧で電解液との副反応が効果的に抑制され、高電圧での容量と寿命特性が改善される。
【0036】
第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して、前記コーティング層のアルミニウム含有量は0.1モル%~2モル%であり、前記コーティング層のジルコニウム含有量は0.05モル%~1モル%であり得る。第1正極活物質でコーティング層のアルミニウム含有量は、例えば、0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%であり得る。コーティング層でのアルミニウムやジルコニウムなどの含有量は、例えば、正極活物質の表面または断面に対するSEM-EDS分析などにより測定することができる。コーティング層でのアルミニウム含有量が上記範囲を満たす場合、均一で薄い厚さのコーティング層を形成することが可能であり、正極活物質の抵抗が増加せず、電解質との副反応が効果的に抑制され、高電圧でのリチウム二次電池の寿命特性を改善することができる。
【0037】
第1正極活物質でコーティング層のジルコニウム含有量は、例えば、0.1モル%~1モル%、0.1モル%~0.9モル%、0.1モル%~0.8モル%、または0.1モル%~0.6モル%であってもよい。ジルコニウムの含有量が上記範囲を満たす場合、正極活物質は容量が低下するか、抵抗が増加せずとも良好なコーティング層が形成され、電解質との副反応を効果的に抑制し、高電圧の駆動条件で容量特性と寿命特性をさらに改善することができる。
【0038】
第1正極活物質のコーティング層は、アルミニウム、ジルコニウム以外にイットリウムをさらに含むことができ、この場合、イットリウムの含有量は、第1正極活物質のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~1モル%であり得る。
【0039】
第1正極活物質のコーティング層は、2次粒子の表面を連続的に囲む膜形態であってもよく、例えば、2次粒子の表面全体を囲むシェル形態であってもよい。これは、2次粒子の表面の一部にだけ部分的にコーティングされた構造とは区別される。一実施形態によれば、コーティング層が2次粒子の表面を全体的に囲む形態で形成され、かつ非常に薄く、均一な厚さに形成することができ、これにより、正極活物質は抵抗が上昇するか容量が低下せずに構造的安定性が向上し、電解質との副反応が効果的に抑制され、高電圧、高温条件でのガス発生量が減少し、長寿命特性を実現することができる。
【0040】
第1正極活物質のコーティング層の厚さは30nm~500nmであってもよく、例えば、30nm~450nm、30nm~400nm、30nm~350nm、30nm~300nm、30nm~250nm、30nm~200nm、30nm~150nm、50nm~500nm、80nm~500nm、または100nm~500nmであってもよい。コーティング層が上記厚さの範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加するか容量が減少せずとも正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制することができる。コーティング層の厚さは、例えば、TOF-SIMS、XPS、またはEDS分析などにより測定することができ、前記コーティング層の厚さ範囲は、TEM-EDS line profileにより測定されたものであり得る。
【0041】
第1正極活物質のコーティング層は、厚さが数十~数百ナノメートルレベルで、薄くかつ厚さが均一であることを特徴とする。例えば、一つの正極活物質粒子内でコーティング層の厚さの偏差は20%以下であってもよく、18%以下、または15%以下であってもよい。ここでコーティング層の厚さの偏差は、一つの正極活物質粒子内のコーティング層の厚さに対する内容である。コーティング層の厚さの偏差は、例えば、一つの正極活物質粒子の断面に対する電子顕微鏡イメージで10個余り地点の厚さを測定して算術平均を算出した後、一つのデータと算術平均値の差の絶対値を算術平均値で割って100を掛けたことを意味する。コーティング層の厚さの偏差または標準偏差が上記範囲を満たすことは、正極活物質粒子の表面に均一な厚さのコーティング層が膜形態でうまく形成されたことを意味し、これにより、正極活物質の構造的安定性が向上し、電解質との副反応が効果的に抑制され、コーティングによる抵抗増加や容量の低下を最小化することができる。
【0042】
一方、コーティング層の形成過程でアルミニウムは2次粒子内に拡散され得る。これにより、一実施形態による正極活物質は2次粒子内部の1次粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する粒界コーティング部をさらに含むことができる。2次粒子内部とは、2次粒子の表面を除いた内部全体を意味することができ、または2次粒子の表面から2次粒子の中心方向に半径の約60長さ%までの領域を意味することもできる。粒界コーティング部は、2次粒子表面のコーティング層とは区別される概念で、2次粒子内部に位置する1次粒子の表面に形成されたコーティング部を意味する。粒界コーティング部の存在は、正極活物質断面に対するSEM-EDS分析などで確認することができる。アルミニウム粒界コーティング部が形成されることによって、正極活物質は構造的にさらに安定化し、寿命特性が改善される。
【0043】
粒界コーティング部内のアルミニウム含有量は特に限定されず、一例として、粒界コーティング部内アルミニウムの含有量は、前記コーティング層内のアルミニウムの含有量より少なくてもよい。
【0044】
一方、第1正極活物質のコーティング層のアルミニウム含有量は、後述する第2正極活物質のコーティング層のアルミニウム含有量より多くてもよい。例えば、第1正極活物質のコーティング層のアルミニウム含有量および第2正極活物質のコーティング層のアルミニウム含有量は、モル比で5:1~2:1、または4:1~2:1であってもよい。この場合、第1正極活物質と第2正極活物質でコーティング層のアルミニウムは抵抗として作用せず、それぞれの構造的安定性を向上させながら高電圧での容量と寿命特性を極大化することができる。
【0045】
第2正極活物質
第2正極活物質の単粒子(single particle)は、粒子内に粒子境界(grain boundary)を有さず単独で存在し一つの粒子からなることを意味し、モルフォロジー上に粒子が相互凝集しない独立した相(phase)で存在する単一粒子、モノリス(monolith)構造または単一体構造または非凝集粒子を意味することができ、一例として単結晶(single crystal)であってもよい。
【0046】
第2正極活物質は前記単粒子表面に位置し、アルミニウムを含有するコーティング層をさらに含むことができる。この場合、高電圧での初期放電容量と寿命特性を向上させることができる。
【0047】
第2正極活物質のコーティング層でのアルミニウム含有量は、第2正極活物質内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%であってもよく、例えば、0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%であってもよい。これは、単粒子内部に含まれるアルミニウムとは別個にコーティング層に含まれているアルミニウムの含有量だけを意味する。コーティング層でのアルミニウム含有量は、例えば、正極活物質の表面または断面に対するSEM-EDS分析などにより測定することができる。コーティング層でのアルミニウム含有量が上記範囲を満たす場合、均一で薄い厚さのコーティング層を形成することが可能であり、正極活物質の抵抗が増加せず、電解質との副反応が効果的に抑制され、高電圧、高温条件でのリチウム二次電池の寿命特性を改善することができる。例えば、コーティング層のアルミニウム含有量が多すぎる場合、均一なコーティング層が形成されないか、抵抗が増加して充放電効率と寿命特性が低下することがあり、コーティング層のアルミニウム含有量が少なすぎる場合、適切な厚さのコーティング層が形成されず、電解質との副反応を抑制する効果が低下することがある。
【0048】
第2正極活物質のコーティング層はイットリウムをさらに含むことができ、この場合、高電圧で正極活物質と電解液の副反応をさらに効果的に抑制して寿命特性を改善することができる。前記コーティング層でのイットリウム含有量は、第2正極活物質内のリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~1モル%であることを特徴とし、例えば、0.1モル%~0.9モル%、0.1モル%~0.8モル%、0.1モル%~0.6モル%、0.1モル%~0.4モル%、または0.1モル%~0.3モル%であってもよい。イットリウムの含有量が上記範囲を満たす場合、正極活物質は容量が低下するか、抵抗が増加せずとも良好なコーティング層が形成され、電解質との副反応を効果的に抑制し、高電圧や高温条件でガス発生量を効果的に下げることができる。
【0049】
第2正極活物質のコーティング層は、単粒子の表面を連続的に囲む膜形態であってもよく、例えば、単粒子の表面全体を囲むシェル形態であってもよい。これは、粒子の表面の一部にだけ部分的にコーティングされた構造とは区別される。一実施形態によれば、コーティング層が単粒子の表面を全体的に囲む形態で形成しながらも非常に薄く、均一な厚さに形成することができ、これにより、正極活物質は抵抗が上昇するか、容量が低下せずとも構造的安定性が向上し、電解質との副反応が効果的に抑制され、高電圧での長寿命特性を実現することができる。
【0050】
第2正極活物質のコーティング層の厚さは30nm~500nmであってもよく、例えば、30nm~450nm、30nm~400nm、30nm~350nm、30nm~300nm、30nm~250nm、30nm~200nm、30nm~150nm、50nm~500nm、80nm~500nm、または100nm~500nmであってもよい。コーティング層が上記厚さの範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加するか、容量が減少せずとも正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制することができる。コーティング層の厚さは、例えば、TOF-SIMS、XPS、またはEDS分析などにより測定することができ、前記コーティング層の厚さの範囲はTEM-EDS line profileにより測定されたものあり得る。
【0051】
第2正極活物質のコーティング層は、厚さが数十~数百ナノメートルレベルで、薄くかつ厚さが均一であることを特徴とする。例えば、一つの正極活物質粒子内でコーティング層の厚さの偏差は20%以下であってもよく、18%以下、または15%以下であってもよい。ここで、コーティング層の厚さの偏差は、一つの正極活物質粒子内のコーティング層の厚さに対する内容である。コーティング層の厚さの偏差は、例えば、一つの正極活物質粒子の断面に対する電子顕微鏡イメージで10個余り地点の厚さを測定して算術平均を算出した後、一つのデータと算術平均値の差の絶対値を算術平均値で割って100を掛けたことを意味することができる。コーティング層の厚さの偏差または標準偏差が上記範囲を満たすことは、正極活物質粒子の表面に均一な厚さのコーティング層が膜形態でうまく形成されたことを意味し、これにより、正極活物質の構造的安定性が向上し、電解質との副反応が効果的に抑制され、コーティングによる抵抗増加や容量の低下を最小化することができる。
【0052】
第2正極活物質のコーティング層で各元素の特性上、アルミニウムは連続的な膜形態で存在し、イットリウムはアイランド形態で存在してもよい。
【0053】
一実施形態でアルミニウムとイットリウムは一つのコーティング層内で混在していてもよく、この場合にもアルミニウムは連続的な膜形態で存在し、イットリウムはアイランド形態で存在してもよいが、形態に限定されない。
【0054】
他の一実施形態では、アルミニウムとイットリウムがそれぞれ別個の層を形成することができる。例えば、第2正極活物質は単粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し、イットリウムを含有する第2コーティング層を含むことができる。アルミニウムがまず、単粒子の表面に付着または吸収されながら薄い膜形態の第1コーティング層が形成され、その上にイットリウムがコーティングされながら第2コーティング層が形成される。もちろん、第1コーティング層と第2コーティング層にアルミニウムとイットリウムが混在していてもよいが、第1コーティング層は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム-リッチコーティング層であり、第2コーティング層は、イットリウムを主成分とするイットリウム-リッチコーティング層であり得る。この場合にも第2コーティング層でイットリウムはアイランド形態で存在してもよいが、特に限定されない。
【0055】
第1コーティング層と第2コーティング層の厚さは特に限定されないが、第1コーティング層の厚さは10nm~200nmであってもよく、例えば、20nm~200nm、30nm~200nm、または30nm~180nmであってもよい。第2コーティング層の厚さは20nm~300nmであってもよく、例えば、20nm~250nm、20nm~200nm、30nm~300nm、または50nm~300nmであってもよい。それぞれの厚さが上記範囲を満たす場合、コーティングにより抵抗が増加するか、容量が減少せずとも正極活物質の構造的安定性を向上させ、電解質との副反応を効果的に抑制して高電圧での寿命特性を改善することができる。
【0056】
第3正極活物質
第3正極活物質は、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり得る。
【0057】
第3正極活物質のリチウムマンガン系酸化物は、例えば、LiMn2O4を基本組成とするスピネル構造のリチウムマンガン酸化物であり得る。前記リチウムマンガン系酸化物はマンガン以外に、例えば、アルミニウム、マグネシウム、イットリウム、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができ、コバルトは含有しないか、または極少量で含んでもよい。
【0058】
第3正極活物質の前記リチウムマンガン系酸化物は、例えば、下記化学式3で表される。
[化学式3]
Lia3Mnx3M3
y3O4-b3Xb3
【0059】
化学式3中、0.9≦a3≦1.8、1.7≦x3≦2、0≦y3≦0.3、1.9≦x3+y3≦2.1、および0≦b3≦0.1であり、M3はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、YおよびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【0060】
化学式3中、1.8≦x3≦2、0≦y3≦0.2であるか、1.9≦x3≦2、0≦y3≦0.1であるか、1.7≦x3<2、0<y3≦0.3であってもよい。
【0061】
具体的には、第3正極活物質の前記リチウムマンガン系酸化物は下記化学式4で表される。
[化学式4]
Lia4Mnx4Aly4Mgz4M4
w4O4-b4Xb4
【0062】
化学式4中、0.9≦a4≦1.8、1.7≦x4<2.0、0<y4≦0.015、0<z4≦0.010、0≦w4<0.3、1.9≦x4+y4+z4+w4≦2.1、および0≦b4≦0.1であり、M4はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、YおよびZrより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSより選択される一つ以上の元素である。
【0063】
前記リチウムマンガン系酸化物でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して、Alは0モル%~1.5モル%、0.01モル%~1.0モル%、0.1モル%~0.8モル%で含まれ、Mgは0モル%~1.0モル%、0.01モル%~0.9モル%、0.1モル%~0.8モル%で含まれる。
【0064】
第3正極活物質は前記粒子の表面に位置し、アルミニウムを含有するコーティング層をさらに含むことができる。この場合、高電圧での正極活物質と電解質の副反応を効果的に抑制でき、寿命特性を改善することができる。第3正極活物質でリチウムを除いた金属100モル%に対して、前記コーティング層のアルミニウムは0.01モル%~1モル%で含まれ、例えば、0.05モル%~0.5モル%で含まれる。
【0065】
一実施形態による正極活物質でコバルトの含有量は、例えば、リチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.01モル%以下、0.005モル%以下、0.001モル%以下であってもよく、例えば、0モル%~0.01モル%などであってもよい。一実施形態による正極活物質は、例えば、コバルト-フリー正極活物質であってもよい。
【0066】
また、一実施形態で、他の正極活物質はナトリウムを含有しないことを特徴とすることができる。一般に、正極活物質の製造過程でナトリウムイオンを使用することができるが、後述する製造方法によれば、ナトリウムイオンを使用せずとも安定した構造の正極活物質粒子と均一な厚さのコーティング層を形成することができる。
【0067】
正極活物質の製造方法
一実施形態では(i)金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるニッケル-マンガン系複合水酸化物およびリチウム原料を混合し熱処理して、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態の第1正極活物質を用意し、(ii)金属全体100モル%に対するニッケルの含有量が60モル%以上であるニッケル-マンガン系複合水酸化物およびリチウム原料を混合し熱処理して単粒子形態の第2正極活物質を用意し、(iii)リチウムマンガン系酸化物を含有する第3正極活物質を用意し、(iv)第1正極活物質、第2正極活物質および第3正極活物質を混合することを含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0068】
第1正極活物質と第2正極活物質それぞれの用意過程でニッケル-マンガン系複合水酸化物はコバルトを含有しないか、または極少量含有することができ、例えば、コバルト-フリーニッケル-マンガン系複合水酸化物であってもよく、一例として、コバルト-フリーニッケル-マンガン-アルミニウム系複合水酸化物であってもよい。ニッケル-マンガン系複合水酸化物は、一般的な共沈法で製造することができる。
【0069】
ニッケル-マンガン系複合水酸化物でニッケルの含有量は、金属全体100モル%に対して60モル%以上であり、例えば、60モル%~80モル%、65モル%~80モル%、70モル%~80モル%、60モル%~79モル%、60モル%~78モル%、または60モル%~75モル%などであってもよい。ニッケル含有量が上記範囲を満たす場合高容量を実現することができ、コバルトの含有量を減少させても構造的安全性を高めることができる。
【0070】
ニッケル-マンガン系複合水酸化物でマンガンの含有量は、金属全体100モル%に対して10モル%~40モル%であってもよく、10モル%~39モル%、10モル%~35モル%、10モル%~30モル%、10モル%~29モル%、15モル%~39モル%、20モル%~39モル%、20モル%~30%などであってもよい。
【0071】
また、ニッケル-マンガン系複合水酸化物がアルミニウムをさらに含有する場合、アルミニウムの含有量は、金属全体100モル%に対して0.1モル%以上、0.5モル%以上または1モル%以上であってもよく、例えば、1モル%~3モル%、1モル%~2.5モル%、1モル%~2モル%、または1モル%~1.9モル%であってもよい。前記複合水酸化物でマンガンとアルミニウム含有量がそれぞれ上記範囲を満たす場合、高容量を実現しながら正極活物質の構造的安全性を高めることができ、生産価格を下げて経済性を高めることができる。
【0072】
ニッケル-マンガン系複合水酸化物でコバルト含有量は、金属全体100モル%に対して0.01モル%以下、0.005モル%以下、0.001モル%以下であってもよい。このようなニッケル-マンガン系複合水酸化物はコバルトによる単価上昇を避けることができ、経済的で、容量を極大化し、構造的安定性を向上させることができる。
【0073】
ニッケル-マンガン系複合水酸化物は、一例として、下記化学式2で表される。
[化学式2]
Nix2Mny2Alz2M2
w2(OH)2
【0074】
化学式2中、0.6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.4、0≦z2≦0.03、0≦w2≦0.3、および0.9≦x2+y2+z2+w2≦1.1であり、M2はB、Ba、Ca、Ce、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sn、Sr、Ti、V、W、Y、およびZrより選択される一つ以上の元素である。
【0075】
前記化学式2中、例えば、6≦x2≦0.8、0.1≦y2≦0.39、0.01≦z2≦0.03、0≦w2≦0.29であってもよい。
【0076】
第1正極活物質の用意過程でアルミニウムをさらにドーピングせず、前駆体の製造時にアルミニウム原料を使用することによって、アルミニウムが構造内に均等に分散しているニッケル-マンガン-アルミニウム系複合水酸化物を前駆体として使用するものであり得る。このような前駆体を使用することでコバルトを含有せずとも、充放電を繰り返しても層状構造が安定的に維持される正極活物質を製造することができ、アルミニウム副産物やアルミニウム凝集物が形成されず、正極活物質の容量、効率特性、および寿命特性を向上させることができる。
【0077】
第1正極活物質の用意過程でニッケル-マンガン系複合水酸化物およびリチウム原料は1:0.9~1:1.8のモル比で混合してもよく、例えば、1:0.9~1:1.5または1:0.9~1:1.2のモル比で混合してもよい。これらの混合後の熱処理は酸素雰囲気で行うことができ、例えば、750℃~950℃、または780℃~900℃、または810℃~890℃の温度範囲で行うことができ、2時間~20時間、あるいは4時間~12時間行うことができる。熱処理によりリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を得ることができる。得られた複合酸化物は、金属全体100モル%に対してニッケルを60モル%以上含み、例えば、60モル%~80モル%で含むことができ、コバルトを含有しないか、または0.01モル%以下の極少量で含有することができる。
【0078】
一実施形態による正極活物質の製造方法は、第1正極活物質の用意過程でリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を得た後にコーティングする過程をさらに含むことができる。リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物は他の組成の酸化物、例えば、リチウムニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物やリチウムニッケル-コバルト-アルミニウム系複合酸化物など、既存のニッケル系酸化物とは粒子表面の残留リチウムの含有量が大きく異なり、表面の様々な特性が異なり、既存のコーティング法では均一な膜形態の良好なコーティング層を形成することができない。一実施形態ではコバルト含有量が極少量であり、かつニッケル含有量が60モル%以上であるリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物の表面に非常に薄い厚さに均一にコーティング層を形成して高電圧特性を改善することができる方法を提供する。例えば、水系溶媒にアルミニウム原料を投入して混合し、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投入して混合した後、乾燥および再熱処理を行うことで、一実施形態によるコーティング層を形成することができる。これは、湿式コーティング法といえる。
【0079】
水系溶媒は、蒸留水、アルコール系溶媒、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。アルミニウム原料は、例えば、アルミニウム硝酸塩、アルミニウム硫酸塩、アルミニウム炭酸塩、アルミニウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。一例として、アルミニウム原料は、アルミニウム硫酸塩を含んでもよく、この場合、リチウムニッケル-マンガン系複合酸化物粒子の表面に均一な厚さを有するコーティング層を形成することに有利である。アルミニウム原料中のアルミニウム含有量は、第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%で含まれ、例えば、0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%で含まれる。
【0080】
アルミニウム原料を水系溶媒で混合した溶液はpHが1.5~3.5であってもよく、例えば、2.0~3.4、2.5~3.3、2.7~3.3、または2.9~3.2であってもよい。アルミニウム原料が混合している水系溶媒にリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投下し、混合することは約5分~80分、または5分~60分、または5分~40分間行うことができる。攪拌後の前記混合溶液のpHは4.5~8.5であってもよく、例えば、5.0~8.0、5.5~7.5、または6.0~7.0であってもよい。このような条件を満たす場合、均一な厚さのコーティング層を形成することに有利である。
【0081】
再熱処理は、コーティング層を形成する過程であり、例えば、酸素雰囲気で700℃~850℃、750℃~840℃、または800℃~830℃の温度範囲で2時間~20時間、あるいは3時間~10時間行うことができる。
【0082】
アルミニウムだけでなく、ジルコニウムをコーティングするために乾燥過程後に得られたものにジルコニウム原料を追加して再熱処理を行うこともできる。ジルコニウム原料は、例えば酸化ジルコニウムであってもよく、第1正極活物質内のリチウムを除いた金属100モル%に対してジルコニウムの含有量が0.05モル%~1モル%になるように添加することができる。
【0083】
第2正極活物質の用意過程でニッケル-マンガン系複合水酸化物およびリチウム原料は同様に1:0.9~1:1.8のモル比で混合してもよく、例えば、1:0.9~1:1.5または1:0.9~1:1.2のモル比で混合してもよい。これらを混合後の熱処理は酸素雰囲気で行うことができ、例えば、750℃~950℃、または780℃~900℃、または810℃~890℃の温度範囲で行うことができ、2時間~20時間、あるいは4時間~12時間行うことができる。熱処理によりリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を得ることができる。得られた複合酸化物は、金属全体100モル%に対してニッケルを60モル%以上含み、例えば、60モル%~80モル%で含むことができ、コバルトを含有しないか、または0.01モル%以下の極少量で含有することができる。単粒子形態を得るためにリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物の製造後、粉砕する過程をさらに含むこともできる。
【0084】
第2正極活物質用意過程でも、ニッケル-マンガン系複合水酸化物とリチウム原料とを混合して熱処理してリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を含有する単粒子を得た後に単粒子をコーティングする過程をさらに含むことができる。単粒子形態の第2正極活物質にアルミニウムをコーティングすることも既存のコーティング法をそのまま適用することができず、一例による湿式コーティング法を適用することによって均一な膜形態の良好なコーティング層を形成することができる。つまり、水系溶媒にアルミニウム原料を混合した溶液に得られた単粒子形態のリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投入して混合した後、乾燥し再熱処理して第2正極活物質を製造することができる。
【0085】
水系溶媒とアルミニウム原料に対する内容は上述した通りである。アルミニウム原料中のアルミニウム含有量は、第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~2モル%で含まれ、例えば、0.2モル%~1.9モル%、0.3モル%~1.8モル%、0.5モル%~1.5モル%、または0.8モル%~1.3モル%で含まれる。
【0086】
水系溶媒にアルミニウム原料を投入するとき、イットリウム原料と一緒に投入することによってAlおよびYをコーティングすることもできる。イットリウム原料は、例えば、イットリウム硝酸塩、イットリウム硫酸塩、イットリウム炭酸塩、イットリウム水酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。イットリウム原料中のイットリウム含有量は、第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.1モル%~1モル%で含まれ、例えば0.1モル%~0.9モル%、0.1モル%~0.8モル%、0.1モル%~0.6モル%、0.1モル%~0.4モル%、または0.1モル%~0.3モル%で含まれる。コーティング原料の含有量をそれぞれ上記範囲で含まれることによって数十~数百ナノメートルレベルの薄い厚さを有し、均一な厚さを有するコーティング層を形成することができ、高電圧の駆動条件でリチウム二次電池のガス発生量を減らし、高容量および長寿命特性を向上させることができる。
【0087】
前記アルミニウム原料と選択的にイットリウム原料を水系溶媒で混合した溶液のpHは1.5~3.5であってもよく、例えば、2.0~3.4、2.5~3.3、2.7~3.3、または2.9~3.2であってもよい。アルミニウム原料およびイットリウム原料が混合している水系溶媒にリチウムニッケル-マンガン系複合酸化物を投下し混合することを約5分~80分、または5分~60分、または5分~40分間行うことができる。攪拌後の前記混合溶液のpHは4.5~8.5であってもよく、例えば、5.0~8.0、5.5~7.5、または6.0~7.0であってもよい。このような条件を満たす場合、均一な厚さのコーティング層を形成することに有利である。
【0088】
前記混合過程後に乾燥することは溶媒を除去する過程と理解でき、例えば、40℃~240℃、100℃~220℃、または150℃~200℃で行うことができる。再熱処理はコーティング層を形成する過程と理解でき、例えば、酸素雰囲気で700℃~850℃、750℃~840℃、または800℃~830℃の温度範囲で2時間~20時間、あるいは3時間~10時間行うことができる。また、再熱処理温度は上述した熱処理温度より低いこともあり、再熱処理時間は上述した熱処理時間と同一またはさらに短いこともある。このような条件で再熱処理を行うことで所望のコーティング層を得ることができる。
【0089】
第1正極活物質、第2正極活物質および第3正極活物質を混合することは、これら総合100重量%に対して第1正極活物質は60重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は5重量%~35重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~35重量%で含まれるように混合することができる。具体的な例として、第1正極活物質は60重量%~85重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~25重量%で含まれ、第3正極活物質は5重量%~20重量%で含まれるように混合することができる。各正極活物質を上記比率で混合する場合、容量を高め、かつエネルギー密度を極大化することができる。
【0090】
正極
一実施形態では、正極集電体、および前記正極集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、上述した正極活物質を含む正極を提供する。正極活物質層は、上述した正極活物質以外に他の種類の正極活物質をさらに含むこともできる。また、正極活物質層は、選択的にバインダー、導電材、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0091】
一実施形態によれば、前記正極活物質層のローディングレベルは、10mg/cm2~40mg/cm2であってもよく、例えば、10mg/cm2~30mg/cm2または10mg/cm2~20mg/cm2であってもよい。また、圧延された最終正極で正極活物質層の密度は3.5g/cc~3.7g/ccであってもよく、例えば、3.5g/cc~3.6g/ccまたは3.5g/cc~3.58g/ccであってもよい。一実施形態による正極活物質を適用する場合、このようなローディングレベルと正極密度を実現することに有利であり、上記範囲のローディングレベルおよび正極密度を満たす正極は、高容量、高エネルギー密度のリチウム二次電池を実現することに適している。
【0092】
バインダー
バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
導電材
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
バインダーおよび導電材の含有量は、正極活物質層100重量%に対して、それぞれ0.5重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%であり得る。
【0095】
正極集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0096】
リチウム二次電池
一実施形態では、上述した正極、負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0097】
リチウム二次電池は、形態により円筒型、角型、パウチ型、コイン型などに分類することができる。
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。
図1を参照すると、リチウム二次電池100は、正極10と負極20との間にセパレータ30を介した電極組立体40、および電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。正極10、負極20およびセパレータ30は、電解液(図示せず)で含浸されていてもよい。
【0098】
一実施形態によるリチウム二次電池は、高電圧で充電可能な、あるいは高電圧で駆動されることに適したものであり得る。例えば、リチウム二次電池の充電電圧は4.3V~4.6V、または4.40V~4.55Vであり得る。前記リチウム二次電池は、一実施形態による正極活物質を適用することによって高電圧で充電してもガス発生量を顕著に減らすことができ、高容量および長寿命特性を実現することができる。
【0099】
負極
負極は、集電体、および該集電体上に位置する負極活物質層を含むことができ、負極活物質層は負極活物質を含み、バインダー、導電材、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0100】
負極活物質
負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0101】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛、または人造黒鉛などの黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0102】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnより選択される金属との合金を使用することができる。
【0103】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができる。前記Si系負極活物質としては、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素(Siを除く)、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせから選択される元素であり、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせから選択される)、またはこれらの組み合わせであり得る。前記Sn系負極活物質としては、Sn、SnO2、Sn合金またはこれらの組み合わせであり得る。
【0104】
前記シリコン-炭素複合体は、シリコンと非晶質炭素の複合体であり得る。シリコン-炭素複合体粒子の平均粒径(D50)は、例えば、0.5μm~20μmであり得る。一実施形態によれば、前記シリコン-炭素複合体は、シリコン粒子、および前記シリコン粒子の表面に非晶質炭素がコーティングされた形態であり得る。例えば、シリコン1次粒子が造粒された2次粒子(コア)、および該2次粒子表面に位置する非晶質炭素コーティング層(シェル)を含むことができる。前記非晶質炭素は、前記シリコン1次粒子の間にも位置して、例えば、シリコン1次粒子が非晶質炭素でコーティングされ得る。前記2次粒子は、非晶質炭素マトリックスに分散して存在することがある。
【0105】
前記シリコン-炭素複合体は結晶質炭素をさらに含むこともできる。例えば、前記シリコン-炭素複合体は、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、および該コア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むことができる。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであり得る。前記非晶質炭素は、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0106】
前記シリコン-炭素複合体がシリコンおよび非晶質炭素を含む場合、シリコンの含有量は、シリコン-炭素複合体100重量%に対して10重量%~50重量%であり、非晶質炭素の含有量は50重量%~90重量%であり得る。また、前記複合体がシリコン、非晶質炭素および結晶質炭素を含む場合、シリコン-炭素複合体100重量%に対して、シリコンの含有量は10重量%~50重量%であり、結晶質炭素の含有量は10重量%~70重量%であり、非晶質炭素の含有量は20重量%~40重量%であり得る。
【0107】
また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは5nm~100nmであり得る。前記シリコン粒子(1次粒子)の平均粒径(D50)は、10nm~1μm、または10nm~200nmであり得る。前記シリコン粒子は、シリコン単独で存在するか、またはシリコン合金の形態で存在してもよく、または酸化された形態で存在してもよい。シリコンの酸化された形態は、SiOx(0<x<2)で表され得る。この時、酸化程度を示すSi:Oの原子含有量の比率は、99:1~33:67であり得る。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0108】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は、炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用時のその混合比は、重量比で1:99~90:10であり得る。
【0109】
バインダー
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水系バインダー、水系バインダー、乾式バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0110】
非水系バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
水系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエンラバー、(メタ)アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。
【0112】
負極バインダーとして水系バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。
【0113】
乾式バインダーは繊維化が可能な高分子物質であって、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシドまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0114】
導電材
導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物が挙げられる。
【0115】
負極活物質の含有量は、負極活物質層100重量%に対して95重量%~99.5重量%であり、バインダーの含有量は、負極活物質層100重量%に対して0.5重量%~5重量%であり得る。例えば、負極活物質層は、負極活物質を90重量%~99重量%、バインダーを0.5重量%~5重量%、導電材を0.5重量%~5重量%で含むことができる。
【0116】
集電体
負極集電体は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタニウム(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金を含むことができ、ホイル、シート、または発泡体形態であり得る。負極集電体の厚さは、例えば1μm~20μmであり、5μm~15μm、または7μm~10μmであり得る。
【0117】
電解質
リチウム二次電池用電解質は、一例として電解液であり得、これは非水性有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0118】
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。非水性有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、またはアルコール系溶媒、非プロトン性溶媒またはこれらの組み合わせであり得る。
【0119】
カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、バレロラクトン(valerolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環、またはエーテル基を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどのジオキソラン類;スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0120】
非水性有機溶媒は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、2種以上混合して使用する場合、混合比率は、目的とする電池性能により適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者に幅広く理解され得る。
【0121】
カーボネート系溶媒を使用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して使用することができ、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合することができる。
【0122】
非水性有機溶媒は、芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。例えば、カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1~30:1の体積比で混合して使用することができる。
【0123】
電解液は、電池寿命を向上させるためにビニルエチルカーボネート、ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート系化合物をさらに含むこともできる。
【0124】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0125】
リチウム塩は有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiCl、LiI、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N (リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI)、LiC4F9SO3、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(xおよびyは1~20の整数である)、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムテトラフルオロエタンスルホネート、リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)より選択される一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0126】
リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が上記範囲に含まれれば、電解液が適切なイオンの伝導度および粘度を有するため、優れた性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0127】
セパレータ
リチウム二次電池の種類により正極と負極との間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどの混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0128】
前記セパレータは、多孔性基材、および多孔性基材の一面または両面に位置する有機物、無機物またはこれらの組み合わせを含むコーティング層を含むことができる。
【0129】
前記多孔性基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、およびポリテトラフルオロエチレンから選択されるいずれか一つの高分子、またはこれらの中の2種以上の共重合体または混合物で形成された高分子膜であり得る。
【0130】
前記多孔性基材は、約1μm~40μmの厚さを有することができ、例えば、1μm~30μm、1μm~20μm、5μm~15μm、または10μm~15μmの厚さを有することができる。
【0131】
前記有機物は、(メタ)アクリルアミドから誘導される第1構造単位、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレートから誘導される構造単位、および(メタ)アクリルアミドスルホン酸またはその塩から誘導される構造単位のうちの少なくとも一つを含む第2構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含むことができる。
【0132】
前記無機物は、Al2O3、SiO2、TiO2、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、Mg(OH)2、ベーマイト(boehmite)、およびこれらの組み合わせから選択される無機粒子を含むことができるが、これらに限定されるものではない。前記無機粒子の平均粒径(D50)は、1nm~2000nmであり、例えば、100nm~1000nm、100nm~700nmであり得る。
【0133】
前記有機物と無機物は、一つのコーティング層に混合して存在するか、または有機物を含むコーティング層と無機物を含むコーティング層が積層された形態で存在することがある。
【0134】
前記コーティング層の厚さは、それぞれ0.5μm~20μmであり、例えば、1μm~10μm、または1μm~5μmであり得る。
【0135】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一例示に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0136】
実施例1
1.正極活物質の製造
(1)第1正極活物質の製造
Ni0.75Mn0.23Al0.02(OH)2およびLiOHを1:1.05のモル比で混合し、酸素雰囲気で850℃で8時間第1熱処理して、組成がLi1.05Ni0.75Mn0.23Al0.02O2であり、平均粒径(D50)が約14μmである2次粒子形態の複合酸化物を製造した。
【0137】
蒸留水溶媒にアルミニウムスルフェートを混合した後、そこに第1複合酸化物を投入して20分~60分程度混合した。この時、アルミニウムスルフェートのうちのアルミニウムの含有量は、最終の第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100重量%に対して1.0モル%になるように設計した。混合した溶液で溶媒を除去して190℃で乾燥した後、得られたものに酸化ジルコニウムを添加し、酸素雰囲気で825℃で8時間第2熱処理を行い、第1正極活物質を製造した。酸化ジルコニウムのうちのジルコニウム含有量は、最終の第1正極活物質でリチウムを除いた金属全体100モル%に対して0.2モル%になるように設計した。
図2は、製造した第1正極活物質に対するSEMイメージである。製造した第1正極活物質の2次粒子の平均粒径(D
50)は約14μmである。
【0138】
(2)第2正極活物質の製造
Ni0.75Mn0.25(OH)2、LiOHおよびAl2O3を1:1:0.02のモル比で混合して酸素雰囲気で850℃で8時間熱処理して、組成がLiNi0.75Mn0.23Al0.02O2であり、平均粒径(D50)が約3μmである単粒子形態の第2複合酸化物を製造した。
【0139】
蒸留水溶媒にアルミニウムスルフェート、およびイットリウムナイトレートを混合した後、そこに第2複合酸化物を投入して20分~60分程度混合した。この時、アルミニウムスルフェートのうちのアルミニウムの含有量は、最終の第2正極活物質でリチウムを除いた金属全体100重量%に対して0.4モル%になるように設計し、イットリウムナイトレートのうちのイットリウムの含有量は0.1モル%になるように設計して混合した。混合した溶液で溶媒を除去して190℃で乾燥した後、酸素雰囲気で825℃で8時間熱処理を行い、第2正極活物質を製造した。
図3は、製造した第2正極活物質に対するSEMイメージである。製造した第2正極活物質の単粒子の平均粒径(D
50)は約3.5μmである。
【0140】
(3)第3正極活物質の製造
Mn3O4、Li2CO3、Al2O3およびMgCO3を1:1:0.005:0.005のモル比で混合して酸素雰囲気で700℃で8時間熱処理して、組成がLiMn1.99Mg0.005Al0.005O4であり、平均粒径(D50)が約7.5μmである単粒子形態の第2複合酸化物を製造した。第3複合酸化物でリチウムを除いた金属全体とAl2O3中のAl総合に対するAlが1モル%になるように上記の第3複合酸化物とAl2O3を混合し、650℃で6時間酸素雰囲気で熱処理して第3正極活物質を調製した。
【0141】
図4および
図5は、第3正極活物質に対するSEMイメージである。
【0142】
(4)最終正極活物質の製造
第1正極活物質70重量%、第2正極活物質20重量%、および第3正極活物質10重量%を混合して、最終正極活物質を用意した。
【0143】
2.正極の製造
製造した正極活物質98.5重量%、ポリフッ化ビニリデンバインダー1.0重量%、および炭素ナノチューブ導電材0.5重量%を混合して正極活物質層スラリーを製造し、これをアルミニウム箔集電体にコーティングし、乾燥および圧延して正極を製造した。このとき、圧延された最終正極の密度は約3.52g/ccである。
【0144】
3.リチウム二次電池の製造
黒鉛負極活物質97.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.5重量%、およびスチレンブタジエンゴム1重量%を水溶媒中で混合して負極活物質層スラリーを製造した。
銅箔集電体に負極活物質層スラリーをコーティングし、乾燥および圧延して負極を製造した。
【0145】
ポリテトラフルオロエチレンセパレータを使用し、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートを3:7の体積比で混合した溶媒に1M LiPF6を溶解した電解液を使用して通常の方法でリチウム二次電池(コインセル)を製造した。
【0146】
実施例2
第1正極活物質70重量%、第2正極活物質15重量%、および第3正極活物質15重量%を混合したものを正極活物質として使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0147】
比較例1
第3正極活物質を混合せず、第1正極活物質70重量%および第2正極活物質30重量%を混合したものを正極活物質として使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
比較例2
第2正極活物質を混合せず、第1正極活物質70重量%および第3正極活物質30重量%を混合したものを正極活物質として使用したことを除いては、実施例1と実質的に同様の方法で正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0148】
理解を助けるために実施例と比較例の正極活物質の設計内容を下記表1に簡略に示す。
【0149】
【表1】
評価例1
実施例と比較例で製造したリチウム二次電池を25℃で0.2Cの定電流で上限電圧4.45Vまで、定電圧で0.05Cまで充電した後、終止電圧3.0Vまで0.2Cで放電して初期充放電を行った。次に、45℃で3.0V~4.45Vの電圧範囲で1.0Cに充電および1.0Cに放電するサイクルを50回以上繰り返し、初期放電容量に対する50サイクル放電容量の比率を計算して前記表1に示す。
【0150】
また、初期放電時、SOC(State of Charge)50%での平均電圧を測定して表1に示す。
【0151】
また、実施例と比較例の圧延された状態での正極合剤密度を表1に示す。
【0152】
表1を参照すると、実施例は比較例に比べて正極の合剤密度がさらに高く、実現する平均電圧がさらに高く、4.45Vの高電圧駆動時の寿命特性にさらに優れていることが分かった。
【0153】
以上、好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0154】
100 リチウム二次電池
10 正極
20 負極
30 セパレータ
40 電極組立体
50 ケース