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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023144
(43)【公開日】2025-02-14
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20250206BHJP
   C08F 120/06 20060101ALI20250206BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F120/06
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024209025
(22)【出願日】2024-11-29
(62)【分割の表示】P 2023504075の分割
【原出願日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006720
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0006530
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンイル・チョ
(72)【発明者】
【氏名】セリン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・イ
(57)【要約】
【課題】本発明は高吸水性樹脂組成物およびその製造方法に関し、より具体的には、重合段階で特定の添加剤を組み合わせて使用することによって、早い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善した高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【解決手段】エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階;および表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含み、前記エポキシ系内部架橋剤はエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(n=4~13)またはこれらの組み合わせであり、前記カプセル型発泡剤は炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有する高吸水性樹脂の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含み、
前記エポキシ系内部架橋剤は重量平均分子量が200kDa~1,000kDaであり、
前記カプセル型発泡剤は炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有する、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、
エポキシ系内部架橋剤0.01~10重量部、キレート剤0.01~10重量部およびカプセル型発泡剤0.01~10重量部で含まれる、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記エポキシ系内部架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq~400g/eqである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、フェノール酸、クエン酸、アミノ酸およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記カプセル型発泡剤で、
前記炭化水素はn-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群より選ばれた1種以上であり、
前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成された群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記架橋重合体は、側鎖にポリアルキレングリコールを含むポリ(メタ)アクリル酸の分岐状高分子をさらに含んで架橋重合される、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記分岐状高分子は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部~10重量部で含まれる、請求項6に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記乾燥段階は、150℃~250℃の温度で10分~120分間行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記高吸水性樹脂は、高吸水性樹脂2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させて、40℃オーブンで24時間の間膨潤させた後、前記膨潤された高吸水性樹脂を引張圧縮試験機を用いて測定されたゲル強度が0.50N以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂は、ボルテックス法による吸収速度が50秒以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は、EDENA法WSP241.2に従って測定された遠心分離保水能(CRC)が36.5g/g以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP242.3-10の方法に従って測定された0.7psiの加圧吸収能(AUP)が17g/g以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2021年1月18日付韓国特許出願第10-2021-0006720号および2022年1月17日付韓国特許出願第10-2022-0006530号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は重合段階で特定の添加剤を組み合わせて使用することによって、速い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善した高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発業者ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で名付けられている。前記のような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収能を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出ない優れた加圧下吸収性能などを示す必要がある。
【0005】
これに加えて、前記高吸水性樹脂はおむつなど衛生材に含まれたとき、ユーザーの体重によって加圧される環境でも、小便などを最大に広く拡散させる必要がある。これにより、衛生材吸収層の全面積に含まれた高吸水性樹脂粒子を全体的に活用して衛生材の吸収性能および吸収速度をより向上させることができる。また、このような加圧下拡散特性により、一度高吸水性樹脂に吸収された小便などが再び染み出ることを抑制するおむつのリウエット(rewet)特性をより向上させることができ、これと共におむつの漏水抑制特性を向上させることができる。そこで、おむつなど衛生材のデザイン自体を変更して前記小便などを広く拡散させる特性の改善が試みられた。しかし、最近では衛生材が薄膜化され、相対的に衛生材内の高吸水性樹脂の含有量が増加することにより、前記衛生材自体のデザイン変更による拡散特性の改善は限界に至った。
【0006】
高吸水性樹脂はおむつなど衛生材に含まれた時、ユーザーの皮膚に直接接触するので、高吸水性樹脂に吸収されていた小便などが早く吸収されない場合、残余物が皮膚に長い間接触して着用感の低下はもちろん皮膚発疹などが発生する問題があり、より早い吸収速度を示す必要がある。また、実際の衛生材などの製品に使用するとき小便に存在するアスコルビン酸などの成分によって高吸水性樹脂内の高分子鎖が破壊され、着用時間が長くなるほど樹脂の機械的物性、すなわち、ゲル強度が大きく低下し、そのため諸般物性も共に低下する問題があった。
【0007】
そこで、実際の製品の使用条件を考慮して、既存の優れた吸収物性を維持しながらも、適正ゲル強度を実現できる高吸水性樹脂を製造できる研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は重合段階で3種の添加剤を組み合わせて使用することによって、優れた吸収物性を維持しながらも、速い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善した高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明は、
エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含み、
前記エポキシ系内部架橋剤は重量平均分子量が200kDa~1,000kDaであり、
前記カプセル型発泡剤は炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有する、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、優れた吸収性能を示し、同時に速い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善させた高吸水性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0012】
単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解しなければならない。
【0013】
第1、第2、第3などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0015】
本明細書に使用される用語「重合体」、または「高分子」は水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のものとして含水率(水分含量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と指称し、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と指称することができる。
【0016】
また、用語「高吸水性樹脂粉末」は酸性基を含んで前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体が重合されて内部架橋剤によって架橋した架橋重合体を含む、粒子状の物質を指す。
【0017】
また、用語「高吸水性樹脂」は文脈によって酸性基を含んで前記酸性基の少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された架橋重合体、または前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味し、または前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適する状態にしたものをすべて包括するものとして使用される。
【0018】
本明細書で使用する用語「内部架橋剤」はベース樹脂の表面を架橋させるための「表面架橋剤」と区別するために使用する用語であって、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋させて重合させる役割をする。前記段階での架橋は表面または内部を区別せずに行われるが、後述するベース樹脂の表面架橋工程によって、最終的に製造された高吸水性樹脂の粒子表面は表面架橋剤によって架橋した構造からなっており、内部は前記内部架橋剤によって架橋した構造からなっている。
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法および高吸水性樹脂についてより詳細に説明する。
【0020】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階;および表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含む。
【0021】
高吸水性樹脂は実際に衛生材として使用時、小便、体液などに長時間膨潤された状態で存在できるが、この場合、小便、体液内のアスコルビン酸成分によって重合体内部の残余ラジカルの作用を促進させて高分子鎖が破壊され、そのため、膨潤された状態で着用時間が長くなるほど樹脂のゲル強度が大きく低下する問題があった。そのため、内部構造の変化により諸吸水物性も共に低下する。
【0022】
そこで、本発明者らは高吸水性樹脂の重合段階で3種の添加剤を組み合わせて使用することによって、これらのシナジー効果により保水能および加圧下吸収能など諸吸収性能に優れ、初期吸収速度が非常に早く、同時に優れたゲル強度で表面触感をより改善できることを発見して本発明に至った。
【0023】
具体的には、本願発明の特定のカプセル型発泡剤を用いると、高吸水性樹脂が十分に広い表面積を有して優れた初期吸収能を示すことを確認した。その結果、このような高吸水性樹脂は体液を早く吸収してさらさらな感触を付与できるおむつや生理用ナプキンなどの衛生材を提供することができる。また、これと共に特定のエポキシ系架橋剤とキレート剤を組み合わせて使用することによって、重合過程で重合体の主鎖とカプセル型発泡剤およびキレート剤より形成される構造に化学的に結合して新規の架橋構造を形成するようになり、前記構造によって優れた加圧下吸収能とゲル強度を実現することができる。
【0024】
これにより製造された高吸水性樹脂は体液を吸収した状態で外部圧力に対するゲル収縮程度および水の流れ特性が変わるようになる。このような構造によって前記高吸水性樹脂は向上した吸収速度およびゲル強度を示すことができる。
【0025】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法を各段階別により詳細に説明する。
【0026】
発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階を含む。
【0027】
前記架橋重合段階では、前記成分の他に高吸水性樹脂の製造に一般に使用される成分を含む単量体組成物の架橋重合で行われることができる。
【0028】
先に、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は下記化学式1で表される化合物であり得る:
【0029】
[化学式1]
-COOM
【0030】
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0031】
好ましくは、前記単量体はアクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれた1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるため有利である。その他にも前記単量体としては無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。
【0032】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は酸性基を有して、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものである。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものを使用することができる。
【0033】
この時、前記単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性によって変わるが、中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸水性が大きく落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0034】
前記一実施形態の高吸水性樹脂で、前記含水ゲル重合体は前述した水溶性エチレン系不飽和単量体がエポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で重合された架橋重合高分子となる。
【0035】
前記エポキシ系内部架橋剤は重合体に新規の架橋構造を導入する成分であり、特に、均一なネットワークの形成によりゲル強度向上効果に寄与する。前記エポキシ系内部架橋剤は重量平均分子量が200kDa~1,000kDaであるエポキシ系化合物が使用される。好ましくは300kDa~800kDa、または500kDa~700kDaのエポキシ系化合物が使用される。
【0036】
前記エポキシ系内部架橋剤の重量平均分子量が200kDa未満の場合、高い保水能を実現することが難しく、1,000kDa超である場合、保水能が過度に上昇する問題がある。
【0037】
一方、前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography,PL GPC220,Agilent Technologies)で下記の条件で測定した。
【0038】
-カラム:PL Olexis(Polymer Laboratories社)
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン、Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準ポリスチレン(Standard:Polystyrene)(3次関数で補正)
【0039】
前記エポキシ系内部架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq~400g/eq、好ましくはエポキシ当量が110g/eq~380g/eqである化合物を使用することができる。前記エポキシ系架橋剤のエポキシ当量が100g/eq未満であれば、架橋高分子ネットワークの柔軟性が落ちて高吸水性樹脂の吸収力が低下する問題があり得、逆にエポキシ当量が400g/eq以上で高いと均一な架橋構造を形成することが難しい。
【0040】
前記エポキシ系内部架橋剤の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)nジグリシジルエーテル(n=4~13)またはこれらの組み合わせが挙げられる。また、使用可能な市販のエポキシ系内部架橋剤の種類としてはJSI社のEJ-1030、EJ-831、EJ-841などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記エポキシ系内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01~10重量部、0.03~5重量部、0.05~3重量部で使用することができる。前記含有量の範囲で使用される場合、後述するキレート剤およびカプセル型発泡剤と組み合わせて使用されてシナジー効果を極大化できるため好ましい。
【0042】
前記キレート剤は重合体に架橋重合段階で金属イオンと結合してゲル強度向上効果に寄与する成分である。特に、Fe2+との相互作用で新規の架橋構造内で金属イオンによって高分子が酸化されることを防止する。
【0043】
前記キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、フェノール酸、クエン酸、アミノ酸およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上であり、好ましくは、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはこれらのナトリウム塩を使用することができ、さらに好ましくは、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)4価ナトリウム塩またはジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)を使用することができる。
【0044】
前記キレート剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01~10重量部、0.03~5重量部、0.1~3重量部で使用することができる。前記含有量の範囲で使用される場合、エポキシ系内部架橋剤およびカプセル型発泡剤と組み合わせて使用されてシナジー効果を極大化できるため好ましい。
【0045】
前記カプセル型発泡剤は、重合体に重合時にはカプセル化された状態で存在して、後述する乾燥工程時に加えられる熱によって発泡し、そのため高吸水性樹脂の高分子構造の間に適切な大きさの気孔を形成して高吸水性樹脂シートが開放気孔チャネル(open pore channel)の構造を示すようにする。特に、(エポキシ系内部架橋剤)との相互作用で樹脂のゲル強度を顕著に向上させることができる。
【0046】
前記カカプセル型発泡剤はモノマー組成物の炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有することができる。このようなカカプセル型発泡剤は前記コアとシェルをなす成分と各成分の重量、直径によって膨張特性が変わり、これを調節することによって所望する大きさに膨張することが可能であり、前記高吸水性樹脂シートの多孔性を調節することができる。
【0047】
樹脂粒子の表面に適正な大きさの気孔を形成すると高吸水性樹脂の初期吸収能を大幅に向上させることができる。具体的には、樹脂粒子の粒径が300μm~425μmである時、気孔の大きさは20μm~200μm程度であることが適切である。上述したカカプセル型発泡剤を用いると、表面にこのような大きさの気孔が形成された樹脂粒子を製造できるが、適正な大きさの気孔が形成された樹脂粒子を多量製造するためにはカカプセル型発泡剤の膨張特性を把握する必要がある。しかし、高吸水性樹脂内でカカプセル型発泡剤が発泡された形態は高吸水性樹脂の製造条件によって変わるので一つの形態として定義するのが難しい。したがって、カカプセル型発泡剤を空気中で発泡させて膨張比率および大きさを確認することによって、適正な大きさの気孔が形成された樹脂粒子を形成するのに適するかを確認することができる。
【0048】
具体的には、ガラスペトリ皿の上にカカプセル型発泡剤を塗布した後、空気中で150℃の熱を10分間加えてカカプセル型発泡剤を膨張させる。この時、カカプセル型発泡剤が3倍~15倍、5倍~15倍あるいは8.5倍~10倍の空気中での最大膨張比率を示すとき、本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法において適切な開放気孔構造を形成するのに適すると判断することができる。
【0049】
前記カカプセル型発泡剤は平均直径が5μm~50μm、または5μm~30μm、または5μm~20μm、または7μm~17μmであり得る。前記カカプセル型発泡剤が前記のような平均直径を示すとき適切な空隙率を達成するのに適すると判断することができる。
【0050】
また、前記カカプセル型発泡剤が空気中での20μm~190μm、または50μm~190μm、または70μm~190μm、または75μm~190μmの最大膨張直径を示すとき、本発明の高吸水性樹脂シートの製造方法において適切な開放気孔構造を形成するのに適すると判断することができる。
【0051】
前記カカプセル型発泡剤のコアを構成する炭化水素はn-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群より選ばれた1種以上であり得る。その中でも炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が上述した大きさの気孔を形成するのに適し、iso-ブタンが最も適する。
【0052】
そして、前記カカプセル型発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成された群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。その中でも(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が上述した大きさの気孔を形成するのに最も適する。
【0053】
前記カカプセル型発泡剤はカカプセル型発泡剤全体重量に対して炭化水素を10重量%~30重量%で含むことができる。このような範囲内で開放気孔構造を形成するのに最も適する。
【0054】
前記カカプセル型発泡剤は製造して使用するか、または上述した条件を満たすもので商用化された発泡剤を使用することができる。使用可能な市販のカカプセル型発泡剤としては、松本社のF-36D、ドンジンセミケム社のMS-140DSが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
また、前記カカプセル型発泡剤の含有量は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、0.01重量部~10重量部、0.03重量部~5重量部、0.1重量部~3重量部で使用することができる。前記カカプセル型発泡剤の含有量が過度に少ないと、開放気孔構造がきちんと形成されず、過度に多く含まれる場合、多孔性が過度に高くて高吸水性樹脂の強度が弱くなるので、このような観点から前記含有量の範囲が好ましい。
【0056】
一方、前記架橋重合体は、側鎖にポリアルキレングリコールを含むポリ(メタ)アクリル酸の分岐状高分子をさらに含んで架橋重合されることができる。すなわち、単量体組成物内に前記分岐状高分子をさらに含むことができる。前記分岐状高分子は側鎖にポリアルキレングリコールを含むポリ(メタ)アクリル酸で、高吸水性樹脂の製造において含水ゲル状重合体の内部に物理的な架橋の役割をしてゲル強度の改善に寄与することができる。
【0057】
好ましくは、前記分岐状高分子はポリ(メタ)アクリル酸線状高分子にポリエチレングリコールおよび/またはメトキシポリエチレングリコール枝が結合された共重合体であり得る。
【0058】
より好ましくは、前記分岐状高分子は下記化学式1-1で表される繰り返し単位および下記化学式1-2で表される繰り返し単位を含む共重合体であり得る。
【0059】
【化1】
【0060】
前記化学式1-1において、
R’はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
【0061】
【化2】
【0062】
前記化学式1-2において、
R’はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
nは1~100の整数である。
【0063】
さらに好ましくは、前記分岐状高分子は下記化学式1-3で表される繰り返し単位を含む共重合体であり得る。
【0064】
【化3】
【0065】
前記化学式1-3において、
R’はそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
mは1~100の整数である。
【0066】
好ましくは、前記nおよびmはそれぞれ独立して1~50であり得、より好ましくは5~30であり得、最も好ましくは5~15であり得る。
【0067】
一方、前記分岐状高分子はPSスタンダード(Standard)を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography,PL GPC220,Agilent Technologies)で測定した重量平均分子量が10,000~100,000g/mol、20,000~50,000g/mol、または20,000~30,000g/molであり得る。
【0068】
好ましくは、前記分岐状高分子は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~10重量部、0.01重量部~5重量部で使用することができる。前記分岐状高分子は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部未満で使用される場合、含有量が少なくてゲル強度向上の役割をすることが難しく、10重量部を超えて使用される場合、製造された高吸水性樹脂の物性が低下する。
【0069】
前記架橋重合段階では、高吸水性樹脂の製造に一般に使用される重合開始剤が含まれ得る。非制限的な例として、前記重合開始剤としては重合方法により熱重合開始剤または光重合開始剤などを使用することができ、特に熱重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤が追加で含まれ得る。
【0070】
前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などが例に挙げられる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などが例に挙げられる。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981年)」の203頁に開示されており、これを参照することができる。
【0071】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれた一つ以上の化合物を使用することができる。そのうち、一方、アシルホスフィンの具体例としてはジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0072】
このような重合開始剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体組成物に対して約0.0001~1重量%、または0.001~1重量%の濃度で添加されることができる。熱重合開始剤と光重合開始剤が同時に使用される場合、前記含有量は総混合含有量を意味する。
【0073】
すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出され得るため好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るため好ましくない。
【0074】
その他にも、前記単量体組成物には必要に応じて界面活性剤、増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0075】
前記界面活性剤は前記発泡剤の均一な分散を誘導して発泡時に均一な発泡でゲル強度が低くなるか密度が低くなることを防止する。前記界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤を使用することが好ましい。具体的には、前記界面活性剤はSO 陰イオンを含むものであり、下記化学式2で表される化合物を使用することができる。
【0076】
[化学式2]
R-SONa
【0077】
前記化学式2において、
Rは炭素数8~16のアルキルである。
【0078】
また、前記界面活性剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体重量に対して300ppmw以下で使用することが好ましい。前記界面活性剤の使用量が300ppmwを超える場合、高吸水性樹脂に界面活性剤の含有量が多くなって好ましくない。また、前記界面活性剤は前記水溶性エチレン系不飽和単量体重量に対して100ppmw以上、または150ppmw以上で使用することが好ましい。
【0079】
そして、このような単量体組成物は前述した単量体、重合開始剤、内部架橋剤などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で準備されることができる。
【0080】
この時、使用可能な溶媒としては前述した原料物質を溶解させ得るものであればその構成の限定なく使用することができる。例えば、前記溶媒としては水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0081】
そして、前記単量体組成物の重合による含水ゲル状重合体の形成は通常の重合方法で行われることができ、その工程は特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は重合エネルギ源の種類によって大きく熱重合と光重合に分けられるが、前記熱重合を行う場合にはニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ、光重合を行う場合は移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行われることができる。
【0082】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル状重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数ミリメートルないし数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体は注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様な形態で得られるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0083】
そして、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合にはシート状の含水ゲル状重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わり得るが、シート全体が等しく重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常0.5~5cmの厚さに調節されることが好ましい。
【0084】
前記のような方法で得られた含水ゲル重合体の通常含水率は40~80重量%であり得る。一方、「含水率」は全体含水ゲル重合体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は常温で約180℃で約40分間維持して含水率を測定する。
【0085】
次に、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、製造された含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階を含む。前記乾燥段階によりカプセル型発泡剤が発泡され、高吸水性樹脂の高分子構造の間に適切な大きさの気孔を形成して高吸水性樹脂シートが開放気孔チャネル(open pore channel)の構造を示し、製造される高吸水性樹脂の吸収速度を改善させることができる。
【0086】
一方、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0087】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0088】
この時、粉砕段階は前記重合体の粒径が約2~約10mmになるように粉砕することができる。
【0089】
粒径を2mm未満に粉砕するのは前記含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れ得る。一方、粒径が10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかである。
【0090】
上記のように粉砕されるか、あるいは粉砕段階を経ていない重合直後の重合体に対して乾燥を行う。
【0091】
前記乾燥段階の乾燥温度は約150℃~250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、発泡剤が十分に発泡されず、乾燥時間が過度に長くなって最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面だけ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましい前記乾燥は約150℃~230℃の温度で、さらに好ましくは約180℃~200℃の温度で行われることができる。一方、乾燥時間の場合は、工程効率などを考慮して、約10分~120分間、好ましくは約20分~90分間行われるが、これに限定されない。
【0092】
前記乾燥段階の乾燥方法は含水ゲル重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は約5~約10重量%であり得る。
【0093】
発明の一実施形態によれば、前記乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階をさらに行うことができる。
【0094】
粉砕段階後に得られる重合体粉末であるベース樹脂は粒径が約150μm~850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、本発明は上述した例に限定されるものではない。
【0095】
そして、このような粉砕段階後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られるベース樹脂を粒径によって分級する。好ましくは粒径が約150μm~850μmである重合体を分級し、このような粒径を有するベース樹脂に対してのみ表面架橋反応段階を経ることができる。
【0096】
一方、発明の一実施形態によれば、前記ベース樹脂粉末を形成した後には表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含む。
【0097】
前記表面架橋段階は、ベース樹脂の表面架橋密度を高めるために表面架橋剤を使用して表面架橋層を形成させる段階で、架橋せずに表面に残っていた水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって架橋するようになり、表面架橋密度が高くなった高吸水性樹脂粒子が形成される。このような熱処理工程により表面架橋密度、すなわち、外部架橋密度は増加することに対して内部架橋密度は変化がなく、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は内部より外部の架橋密度が高い構造を有する。
【0098】
一実施形態の方法では、前記表面架橋層の形成段階で、表面架橋剤、アルコール系溶媒および水を含む表面架橋剤組成物を使用することができる。
【0099】
一方、前記表面架橋剤組成物に含まれる表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用されていた表面架橋剤を特に制限なくすべて使用することができる。例えば、前記表面架橋剤はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選ばれた1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選ばれた1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含むことができる。好ましくは上述した内部架橋剤と同一であるものを使用することができ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル系化合物を使用することができる。
【0100】
このような表面架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.001~2重量部で使用することができる。例えば、前記表面架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上であり、0.5重量部以下、0.3重量部以下の含有量で使用することができる。表面架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節して優れた吸収性能および通液性など諸般物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0101】
一方、前記表面架橋層は添加剤をさらに含むことができる。一例として、アルミニウム硫酸塩および/またはシリカを添加剤としてさらに含んでケーキングを抑制することができる。表面架橋層に均一に含まれたアルミニウム硫酸塩は、高吸水性樹脂粒子の強度を全体的により向上させることができ、液体吸収後にも粒子の形態が維持されるから通液性を向上させることができると予測される。
【0102】
一方、発明の一実施形態による高吸水性樹脂は150~850μmの粒径を有することができる。より具体的には、前記ベース樹脂粉末およびそれを含む高吸水性樹脂の少なくとも95重量%以上が150μm~850μmの粒径を有し、300μm~600μmの粒径を有する粒子を50重量%以上含み得、150μm未満の粒径を有する微粉が3重量%未満になる。
【0103】
また、前記発明の一実施形態による高吸水性樹脂は、基本的な保水能など優れた吸収性能を維持しながらも、より早い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善させた高吸水性樹脂を提供することができる。
【0104】
具体的には、前記高吸水性樹脂2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させて、40℃オーブンで24時間の間膨潤させた後、前記膨潤された高吸水性樹脂を引張圧縮試験機を用いて測定されたゲル強度が0.50N以上である。好ましくは、前記ゲル強度は0.50N~0.9Nであり、好ましくは、0.6N~0.85Nまたは0.65N~0.8Nである。前記アスコルビン酸塩水は0.9wt%塩化ナトリウム(NaCl)および0.005wt%アスコルビン酸水溶液を意味する。
【0105】
前記ゲル強度は小便、体液などに含まれるL-アスコルビン酸(L-Ascorbic acid)成分に対する分解抵抗性を示す指標であり、その測定方法は後述する実験例の部分でより具体的に説明する。
【0106】
前記高吸水性樹脂は、ボルテックス(Vortex)法による吸収速度が50秒以下である。好ましくは、48秒以下、または約46秒以下、または43秒以下であり得る。前記吸収速度はその値が小さいほど優れ、前記吸収速度の下限は理論上0秒であるが、一例として約10秒以上、または約15秒以上、または約20秒以上であり得る。
【0107】
前記吸収速度は国際公開第1987/003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定された。具体的には、吸収速度(あるいはvortex time)は23℃~24±1℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消えるまでの時間を秒単位で測定して算出した。前記時間が短いほど高吸水性樹脂が速い初期吸収速度を有すると見ることができる。
【0108】
また、EDENA法WSP241.2に従って測定された遠心分離保水能(CRC)が36.5g/g以上であり、好ましくは36.5g/g~45.0g/g、または36.5g/g~40.0g/gである。前記遠心分離保水能の測定方法は後述する実験例の部分でより具体的に説明する。
【0109】
EDANA法WSP242.3-10に従って測定された0.7psiの加圧吸収能(AUP)が17g/g以上である。好ましくは17.0g/g~21.0g/g、17.5g/g以上、または18.0g/g以上である。前記加圧吸収能(AUP)の測定方法は後述する実験例の部分でより具体的に説明する。
【0110】
上述した製造方法により収得された高吸水性樹脂は基本的な保水能など優れた吸収性能を維持しながらも、より速い吸収速度および優れたゲル強度を同時に改善させた高吸水性樹脂を提供することができる。
【0111】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎなく、発明の権利範囲はこれによって定まるものではない。
【0112】
[実施例]
<高吸水性樹脂の製造>
実施例1
攪拌機、窒素投入器、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸(acrylic acid)100g、32%苛性ソーダ(NaOH)123.5g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.2g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.008g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.06g、カカプセル型発泡剤(F-36D、SDI Korea)0.1g、28%ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate)水溶液0.09g、水59g、下記化学式3’-1の繰り返し単位を含む分岐状高分子0.3g、EDTA-4Na 0.1gを混合して全体固形分濃度が43重量%である単量体組成物を製造した。前記単量体組成物を10cmの幅、2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min~2,000mL/minの供給速度で供給した。前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cmの強度を有する紫外線を照射して、60秒間重合反応を行った。
【0113】
【化4】
【0114】
重合反応進行後、ミートチョッパー(meat chopper)で切断して、Air-flow ovenを用いて185℃で40分間乾燥した。
【0115】
製造したベース樹脂粉末100gに超純水4g、プロピレングリコール(Propylene glycol)0.5g、エポキシ系表面架橋剤(EJ-1030,JSI Co.)0.10g、硫酸アルミニウム(Aluminum sulfate)0.2g、Aerosil200 0.06gの混合溶液を投与して2分間混合した。これを140℃で40分間乾燥した後、分級して150~850μmの大きさの粒子を得て高吸水性樹脂を製造した。
【0116】
実施例2~9
重合段階の成分として下記表1の成分および含有量を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂組成物を製造した。
【0117】
比較例1
攪拌機、窒素投入器、温度計を取り付けた3Lガラス容器にアクリル酸(acrylic acid)100g、32%苛性ソーダ(NaOH)123.5g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.2g、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.008g、ジアクリレート0.2g、カカプセル型発泡剤(F-36D、SDI Korea)0.1g、28%ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate)水溶液0.09g、水59gを混合して全体固形分濃度が43重量%である単量体組成物を製造した。前記単量体組成物を10cmの幅、2mの長さを有し、50cm/minの速度で回転する回転式ベルト上に、500mL/min~2,000mL/minの供給速度で供給した。前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cmの強度を有する紫外線を照射して、60秒間重合反応を行った。
【0118】
重合反応進行後、ミートチョッパー(meat chopper)で切断して、Air-flow ovenを用いて185℃で40分間乾燥した。
【0119】
製造したベース樹脂粉末100gに超純水7g、プロピレングリコール(Propylene glycol)0.5g、エポキシ系表面架橋剤(EJ-1030,JSI Co.)0.10g、硫酸アルミニウム(Aluminum sulfate)0.8g、Aerosil200 0.04gの混合溶液を投与して2分間混合した。これを140℃で40分間乾燥した後、分級して150~850μmの大きさの粒子を得て高吸水性樹脂を製造した。
【0120】
比較例2~3
重合段階の成分として下記表1の成分および含有量を使用したことを除いては、比較例1と同様の方法で高吸水性樹脂組成物を製造した。
【0121】
比較例4および5
重合段階の成分として下記表1の成分および含有量を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂組成物を製造した。
【0122】
【表1】
【0123】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂組成物に対して、次のような方法で物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0124】
特に表記しない限り、下記物性評価はすべて常温(25℃)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。前記アスコルビン酸塩水は0.9wt%塩化ナトリウム(NaCl)および0.005wt%アスコルビン酸水溶液を意味する。
【0125】
(1)遠心分離保水能(CRC,Centrifuge Retention Capacity)
高吸水性樹脂中の150μm~850μmの粒径を有するものを取って、欧州不織布工業会(European Disposables andNonwovens Association,EDANA)規格のEDANA WSP241.2に従って無荷重下吸収倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
【0126】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得た樹脂から、#30-50のふるいで分級した樹脂を得た。このような樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同じ操作をした後にその時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0127】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0128】
(2)加圧吸収能(AUP,Absorbency Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸収能を、EDANA法WSP242.3-10に従って測定した。加圧吸収能の測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級分を使用した。
【0129】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400mesh金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で金網上に吸水性樹脂W(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さく円筒の内壁との間隙がなく上下動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0130】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間の間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0131】
得られた各質量を用いて次の式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0132】
[数式2]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0133】
(3)吸収速度(Vortex,sec)
高吸水性樹脂のうちの150~850μmの粒径を有するものを取って、24±1℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消えるまでの時間を秒単位で測定して算出した。
【0134】
(4)ゲル強度(Gel Strength,N)
高吸水性樹脂のうちの150μm~850μmの粒径を有するものを取って、高吸水性樹脂2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させて、40℃オーブンで24時間の間膨潤させた後、前記膨潤された高吸水性樹脂を引張圧縮試験機を用いてゲル強度を測定した。
【0135】
具体的には、前記膨潤された高吸水性樹脂を引張圧縮試験機である、デジタルフォースゲージFGP-2を用いて測定し、ティップ(tip)が貫通(penetration)されることによりティップ(tip)に加えられる力(N)のピーク(peak)値を下記の条件により3回測定した後、その算術平均値をゲル強度(単位:N)とする。
【0136】
Tip size:terminal diameter 10±0.1 mm
Beaker size:50±0.1 mm
Penetation speed:500±0.5 mm/min
【0137】
前記実施例と比較例に関して表面架橋後の高吸水性樹脂の物性値を下記表2に記載した。
【0138】
【表2】
【0139】
表2のデータ内容を参照すると、本発明により製造された実施例の高吸水性樹脂は3種の特定の添加剤を重合段階で組み合わせて使用することによって、保水能および加圧下吸収能など諸吸収性能に優れ、初期吸収速度が非常に早く、同時に優れたゲル強度を実現できることを確認した。
【0140】
これに比べて本願発明の3種の添加剤のうち一部成分を含まない実施例の場合、目的とする架橋構造の形成が難しく、そのため、優れた吸収性能とゲル強度を同時に実現することが難しく、特に、ゲル強度が実施例に比べて顕著に低下することを確認することができた。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ系内部架橋剤、キレート剤およびカプセル型発泡剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合した架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥してベース樹脂粉末を形成する段階;および
表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理してベース樹脂粉末の表面を架橋する段階を含み、
前記エポキシ系内部架橋剤はエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール) ジグリシジルエーテル(n=4~13)またはこれらの組み合わせであり、
前記カプセル型発泡剤は炭化水素を含むコアと前記コアを囲んで熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有する
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して、
エポキシ系内部架橋剤0.01~10重量部、キレート剤0.01~10重量部およびカプセル型発泡剤0.01~10重量部で含まれる、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記エポキシ系内部架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq~400g/eqである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、フェノール酸、クエン酸、アミノ酸およびこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記カプセル型発泡剤で、
前記炭化水素はn-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群より選ばれた1種以上であり、
前記熱可塑性樹脂は(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成された群より選ばれた1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記架橋重合体は、側鎖にポリアルキレングリコールを含むポリ(メタ)アクリル酸の分岐状高分子をさらに含んで架橋重合される、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記分岐状高分子は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部~10重量部で含まれる、請求項6に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記乾燥段階は、150℃~250℃の温度で10分~120分間行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記高吸水性樹脂は、高吸水性樹脂2.5gをアスコルビン酸塩水50gに浸漬させて、40℃オーブンで24時間の間膨潤させた後、前記膨潤された高吸水性樹脂を引張圧縮試験機を用いて測定されたゲル強度が0.50N以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂は、ボルテックス法による吸収速度が50秒以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は、EDENA法WSP241.2に従って測定された遠心分離保水能(CRC)が36.5g/g以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP242.3-10の方法に従って測定された0.7psiの加圧吸収能(AUP)が17g/g以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【外国語明細書】