(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023499
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20250207BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250207BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20250207BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H10K59/10
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127660
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】下村 嘉士
(72)【発明者】
【氏名】江澤 光晴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB06
4K029HA01
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】アライメント動作時における基板とマスクとの距離を短くすることのできるアライメント装置、成膜装置、アライメント方法、及び成膜方法を提供する。
【解決手段】ウエハ21の成膜面と平行な第1方向においてウエハ21とマスク12との相対的な位置を調整する調整機構と、前記成膜面と交差する第2方向において、ウエハ21とマスク12とを相対的に移動させる移動機構と、を備えるアライメント装置であって、ウエハ21とマスク12との前記第2方向の距離が、前記移動機構によりウエハ21とマスク12とを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離に配された状態で、前記調整機構による調整が行われることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の成膜面と平行な第1方向において前記基板とマスクとの相対的な位置を調整する調整機構と、
前記成膜面と交差する第2方向において、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる移動機構と、
を備えるアライメント装置であって、
前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が、前記移動機構により前記基板と前記マスクとを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離に配された状態で、前記調整機構による調整が行われることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
使用される前記マスクに応じて記憶された前記位置情報に基づいて、前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が前記規定距離となるように、前記移動機構を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記規定距離は、前記位置情報と、使用される前記マスクの前記第2方向の変形量と、前記基板の前記第2方向の変形量とに基づいて規定されることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記基板と前記マスクのうちのいずれか一方を移動させるための駆動機構を3箇所以上有しており、これら複数の駆動機構によって、前記基板と前記マスクのうちのいずれか一方が、前記第2方向と、前記第2方向に直交する任意の軸を中心に回転する回転方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記位置情報は、前記基板と前記マスクとの平行度が所定の範囲内、かつ前記基板と前記マスクとが接触した状態から剥離させた際に得られる情報であることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記マスクを保持するマスク台と、
前記基板を保持する吸着部材と、
を備え、
前記調整機構及び前記移動機構は、前記マスク台と前記吸着部材のうちの少なくとも一方を移動させる機構であることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記基板と前記マスクとが離れた状態から接触した状態、及び前記基板と前記マスクとが接触した状態から剥離した状態を検知する検知手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記基板と前記マスクのうちのいずれか一方を移動させるための駆動機構を3箇所以上有しており、
前記検知手段は、複数の前記駆動機構をそれぞれ制御する制御電流の測定値によって、前記基板と前記マスクとが離れた状態から接触した状態、及び前記基板と前記マスクとが接触した状態から剥離した状態を検知することを特徴とする請求項7に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記検知手段は、複数の前記駆動機構により前記基板と前記マスクとが近づく方向に移動する過程で前記制御電流が上昇し始めることで、前記基板と前記マスクとが離れた状態
から接触した状態への移行を検知し、複数の前記駆動機構により前記基板と前記マスクとが離れる方向に移動する過程で前記制御電流の下降状態が終了した際に、前記基板と前記マスクとが接触した状態から剥離した状態を検知することを特徴とする請求項8に記載のアライメント装置。
【請求項10】
前記位置情報は、
全ての前記駆動機構に対する前記制御電流の値が予め定めた範囲内になった後に前記基板と前記マスクとが離れるように複数の前記駆動機構が制御され、前記検知手段によって、前記基板と前記マスクとが接触した状態から剥離した状態に移行したと検知された際の情報であることを特徴とする請求項9に記載のアライメント装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載のアライメント装置と、
前記基板の成膜面に薄膜を形成するための成膜源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
調整機構を用いて、基板の成膜面と平行な第1方向において前記基板とマスクとの相対的な位置を調整するアライメント方法であって、
前記成膜面と交差する第2方向において、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる移動機構を用いて、前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が、前記移動機構により前記基板と前記マスクとを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離となるように、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる第1工程と、
前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が前記規定距離の状態で、前記調整機構によって、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する第2工程と、
を有することを特徴とするアライメント方法。
【請求項13】
請求項12に記載のアライメント方法により、前記基板と前記マスクとの相対的な位置が調整された後に、成膜源を用いて、前記基板の成膜面に薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント装置、成膜装置、アライメント方法、及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸着物質が成膜される。成膜の前処理としてマスクと基板とのアライメントが行われ、重ね合わされる。アライメントの動作時に、マスクと基板との距離が離れていると、重ね合わせる際にアライメント精度が低下する場合がある。そこで、アライメントの動作に先立って、マスクと基板との相対的な距離を検出して、アライメント動作時のマスクと基板との距離を短くする技術が知られている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許06814879号公報
【特許文献2】特開2022-57675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスク及び基板には撓みが生じるため、撓み量を踏まえて、マスクと基板との相対的な距離を短くするのは難しい。特許文献2では、基板とマスクが接触した際の位置情報に基づいて、基板とマスクとを離間させて、これら基板とマスクとの距離を短くした状態でアライメントを行う技術が開示されている。このような技術を採用した場合、アライメント動作時に、基板とマスクとの距離を短くすることができるものの、基板とマスクとが接触した状態では、マスクにおける基板に接触する部分は基板に押されて撓んだ状態となる。この時のマスクの撓み量は検出できないため、この状態から基板とマスクとを確実に離間させるために、予め定めた距離だけ基板とマスクを離間させると、基板とマスクの距離が十分短くならないこともある。従って、未だ、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、アライメント動作時における基板とマスクとの距離を短くすることのできるアライメント装置、成膜装置、アライメント方法、及び成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアライメント装置は、
基板の成膜面と平行な第1方向において前記基板とマスクとの相対的な位置を調整する調整機構と、
前記成膜面と交差する第2方向において、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる移動機構と、
を備えるアライメント装置であって、
前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が、前記移動機構により前記基板と前記マスクとを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離に配された状態で、前記調整機構による調整が行われることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の成膜装置は、
上記のアライメント装置と、
前記基板の成膜面に薄膜を形成するための成膜源と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のアライメント方法は、
調整機構を用いて、基板の成膜面と平行な第1方向において前記基板とマスクとの相対的な位置を調整するアライメント方法であって、
前記成膜面と交差する第2方向において、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる移動機構を用いて、前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が、前記移動機構により前記基板と前記マスクとを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離となるように、前記基板と前記マスクとを相対的に移動させる第1工程と、
前記基板と前記マスクとの前記第2方向の距離が前記規定距離の状態で、前記調整機構によって、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する第2工程と、
を有することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の成膜方法は、
上記のアライメント方法により、前記基板と前記マスクとの相対的な位置が調整された後に、成膜源を用いて、前記基板の成膜面に薄膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、アライメント動作時における基板とマスクとの距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図。
【
図3】本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図。
【
図4】本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図。
【
図5】本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図。
【
図6】本発明の実施例に係る成膜装置の動作説明図。
【
図7】比較例に係るアライメント動作前の動作説明図。
【
図8】本発明の実施例に係るアライメント動作前の動作説明図。
【
図12】成膜装置の全体動作例を示すフローチャート。
【
図13】マスクラフアライメントの動作例を示すフローチャート。
【
図14】ウエハラフアライメントの動作例を示すフローチャート。
【
図15】ファインアライメントの動作例を示すフローチャート。
【
図16】マスクをウエハに近接させる動作例を示すフローチャート。
【
図17】マスクをウエハに近接させ始める際の磁気浮上ステージの周辺を拡大した図。
【
図18】マスクとウエハとが接触している際の磁気浮上ステージの周辺を拡大した図。
【
図19】ステージのリニアモータ固定子に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図。
【
図20】ステージのリニアモータ固定子に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図。
【
図21】ステージのリニアモータ固定子に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(実施例)
図1~
図22を参照して、本発明の実施例に係るアライメント装置、成膜装置、アライメント方法、及び成膜方法について説明する。
図1、
図9、
図10、
図17及び
図18には、便宜上、XYZ軸を示している。XY平面は基板の成膜面と平行な面であり、この面に平行な方向は第1方向に相当する。また、Z軸に平行な方向は基板の成膜面と交差する(ここでは、直交する)。このZ軸に平行な方向は第2方向に相当する。
【0014】
<成膜装置の概要>
特に、
図1を参照して、本実施例に係るアライメント装置を備える成膜装置の概要について説明する。
図1は実施例に係る成膜装置1の概略構成図であり、正面から成膜装置1を見た構成を概略的に示している。成膜装置1には、磁気浮上ステージ2が備えられている。磁気浮上ステージ2は、ステージ支持体3を介して、真空チャンバ4の内側に固定される。そして、成膜装置1には、除振台5が真空チャンバ4の天板上に除振台ベース6を介して配設される。また、支持フレーム7が除振台5上に支持され、真空チャンバ4から伝わる振動が抑制される。支持フレーム7上に置かれたマスク駆動機構8によってマスク支持支柱9が上下に駆動可能に構成される。マスク支持支柱9の駆動の際はベローズ10が伸縮する。このベローズ10によって、室内の真空度が維持される。マスク支持支柱9は、その下端側が真空チャンバ4に配されてマスク台11を支持する。マスク台11の上には、マスク12を固定したマスクフレーム13が不図示のロボットハンドと不図示の粗動ステージとによって搬入され、載置される。ここで、マスクフレーム13を載置するために不図示のロボットハンドと不図示の粗動ステージとが出入りする際には、マスク駆動機構8によりマスク台11は下降して退避する。マスク12の下方には成膜源としての蒸発源14が設置されている。なお、本実施例においては、成膜装置の一例として真空蒸着装置を例にして説明する。この場合、成膜源は蒸発源となる。しかしながら、本発明における成膜装置は、例えばスパッタリング装置にも適用可能である。この場合、成膜源はスパッタリングカソードとなる。
【0015】
そして、アライメントを行うために用いられるアライメントカメラ15が支持フレーム7によって支持されている。アライメントカメラ15も支持フレーム7により支持されることで、同じく真空チャンバ4からの振動が抑制され、高精度での計測が可能である。真空チャンバ4の天板にはアライメント計測用のビューポート16が設置されており、大気側から真空チャンバ4の内側を計測することができる。アライメントカメラ15は、X方向、Y方向、Z方向周りの3軸を計測するために、少なくとも2台以上設置される。ここでは、2台設置された例により説明する。また、アライメントカメラ15は、視野が狭いが精度の高いファインカメラと、視野が広いが精度が低いラフカメラとが近接して設置されており、計測するカメラを切り替えられる構成となっている。ここで、ラフカメラの視野内のどの位置がファインカメラの視野になるかは、事前に共通の計測対象を計測して把握されている。さらに、アライメントカメラ15の焦点距離を調整するために上下に移動する駆動軸を有する構成を採用することもできる。
【0016】
また、成膜装置1は、不図示の制御部を有する。制御部は、各種の機構、及び蒸発源14の制御、成膜の制御を行う機能を有する。制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを有するコンピューターにより構成可能である。この場合、制御部の機能は、メモリー又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを用い
てもよいし、組込型のコンピューター又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置1ごとに制御部が設けられてもよく、1つの制御部が複数の成膜装置1を制御してもよい。
【0017】
<成膜装置の動作の概要>
特に、
図2~
図6を参照して、本実施例に係る成膜装置1の動作の概要(マスクの搬入から成膜までの動作の概要)について説明する。
図2~
図6においては、動作の概要説明に必要な構成のみを概略的に示している。また、
図2~
図6においては、マスク12と、基板としてのウエハ21とを移動させるための粗動ステージ30が示されている。この粗動ステージ30については、
図1では省略されている。粗動ステージ30は、粗動ステージ支柱31と、粗動ステージ支持部32と、これらを、X方向、Y方向、Z方向、及びZ方向に平行な軸に対して回転する方向(θ方向)に移動させる移動機構33とを備えている。移動機構33については、ボールネジ機構やラックアンドピニオン機構などの各種部材を往復移動させる機構と、モータなどの各種部材を回転させる機構との組み合わせ等により構成されることは公知技術であり、その具体的な説明は省略する。
【0018】
まず、マスク12が、ロボットハンド40により、真空チャンバ内に搬入され(
図2(a)参照)、粗動ステージ支持部32に載置される(
図2(b)参照)。その後、ロボットハンド40は真空チャンバから退避し、マスク12のマスクラフアライメントが行われる。マスクラフアライメントは、粗動ステージ支柱31及び粗動ステージ支持部32がX方向、Y方向、及びθ方向に移動調整がなされることで行われる。このとき、アライメントカメラ15は、ラフカメラが用いられる。
図3(a)はマスクラフアライメントが行われる際の各部の配置関係を示している。マスクラフアライメントが行われた後に、粗動ステージ支柱31及び粗動ステージ支持部32が下降して、マスク12はマスク台11に載置される(
図3(b)参照)。なお、マスク12がマスク台11に載置された状態で、アライメントカメラ15により撮影されて、マスク12が所望の範囲内に載置されているか確認される。もし、所望の範囲内に載置されていない場合には、再度、マスクラフアライメントが行われ、マスク12が所望の範囲内に載置されるまで、同様の動作が繰り返される。マスク12がマスク台11に載置された後に、粗動ステージ支柱31が回転して、粗動ステージ支持部32がマスクフレーム13の下方の位置から退避する(
図3(c))。そして、粗動ステージ支柱31及び粗動ステージ支持部32は上昇して、ウエハ21を搬入するための動作準備に移行する。
【0019】
次に、ウエハ21が、ロボットハンド40により、真空チャンバ内に搬入され(
図4(a)参照)、粗動ステージ支持部32に載置される(同図(b)参照)。その後、ロボットハンド40は真空チャンバから退避し、ウエハ21のウエハラフアライメントが行われる(同図(c)参照)。ウエハラフアライメントは、粗動ステージ支柱31及び粗動ステージ支持部32がX方向、Y方向、及びθ方向に移動調整がなされることで行われる。このとき、アライメントカメラ15は、ラフカメラが用いられる。
【0020】
ウエハラフアライメントが終了すると、アライメントカメラ15がファインカメラに切り替わり、ウエハ21が、吸着部材としての静電チャック20に吸着されて保持される(
図5(a)参照)。その後、粗動ステージ支持部32は退避し(同図(b)参照)、マスク駆動機構8によりマスク台11が上昇し、マスク12がウエハ21に近接する位置まで移動する(同図(c)参照)。この工程は第1工程である。
【0021】
そして、マスク12とウエハ21との距離が短い状態で(
図6(a)参照)、ファインアライメントが行われる。この工程が第2工程である。ファインアライメントは、磁気浮上ステージ2によって、静電チャック20の移動調整がなされることで行われる。このフ
ァインアライメントが終了すると、吸引マグネット24が不図示の機構により下降して、マスク12が磁気的に吸引されて、ウエハ21に密着する(同図(b)参照)。この状態で、蒸発源14によって、マスク12を介してウエハ21に薄膜が形成される。
【0022】
<ファインアライメントの準備動作>
ファインアライメントを行うための準備動作について、より詳細に説明する。
図5(b)及び
図6(a)を参照して説明した通り、マスク駆動機構8によりマスク台11が上昇し、マスク12がウエハ21に近接する位置まで移動した状態でファインアライメントが行われる。そして、マスク12とウエハ21との距離が短いほど、アライメント精度を高めることができる。
【0023】
そこで、予め、マスク台11をどの位置まで上昇させれば、マスク12とウエハ21との距離を短くすることができるかを測定しておくことで、使用するマスク12に応じて、マスク台11を上昇させる位置を設定することができる。以下、この設定の仕方について説明する。
【0024】
図7には比較例が示されている。この比較例の場合、マスク12を上昇させて(
図7(a)中、矢印S1参照)、マスク12がウエハ21に接触したら上昇動作が停止される(同図(b)参照)。
図7(b)においては、マスク12とウエハ21との接触部分の付近を拡大した図も示している。マスク12がウエハ21に接触した状態においては、マスク12がウエハ21に押圧されるため、接触部分は撓んだ状態となる。
図7(b)中の点線はマスク12がウエハ21に押されていない状態の形状を示しており、図中、Xがウエハ21に押されたことによる撓み量に相当する。マスク12においては、マスクフレーム13に固定する際の変形量など、個体差があり、撓み量Xにはバラツキがある。また、この撓み量Xは測定できない。そのため、ファインアライメントを行うために、マスク12をウエハ21から離間させる際(
図7(c)中、矢印S2参照)には、撓み量Xのバラツキ(誤差)を考慮した上で、マスク12を下降させる必要がある。
【0025】
このように、この比較例の場合には、撓み量Xのバラツキ(誤差)を考慮した上で、マスク12を下降させる必要があるため、マスク12とウエハ21を確実に離間させるためには、ある程度余裕を持たせてマスク12を下降させなければならない。そのため、使用するマスク12によっては、マスク12とウエハ21との距離が十分短くならないこともある。そこで、本実施例においては、撓み量Xのバラツキ(誤差)を考慮する必要なく、マスク12とウエハ21を離間させることで、マスク12とウエハ21との距離を、より一層短くすることができる構成が採用されている。
【0026】
図8には本実施例における設定方法が示されている。本実施例においても、まず、マスク12を上昇させて(
図8(a)中、矢印T1参照)、マスク12がウエハ21に接触したら上昇動作が停止される(同図(b)参照)。そして、本実施例の場合には、その後、マスク12を下降させて(同図(c)中、矢印T2参照)、マスク12がウエハ21から離間したら下降動作が停止される(同図(d)参照)。
【0027】
本実施例の場合には、この
図8(d)に示す状態におけるマスク12の位置を基準位置として、ファインアライメントを行うために、マスク12をウエハ21に近接させる位置まで移動させるための移動量を決めている。使用するマスク12毎に、それぞれ上記の設定がなされる。なお、基準位置にマスク12を配した場合には、マスク12とウエハ21との距離が短すぎて、特に、同じマスク12を2回目以降に使用する場合には、各種誤差によって、マスク12とウエハ21とが摺動してしまうおそれがある。そのため、基準位置にマスク12が配された状態よりも、マスク12とウエハ21との距離が予め定めたクリアランス分だけ長くなるように、マスク12とウエハ21を配した状態でファインアラ
イメントが行われるようにしている。上記のクリアランスは、ウエハ21の寸法公差、マスク12やウエハ21の撓み変形量の誤差などに基づいて設定される。本実施例では、上記比較例における撓み量Xのバラツキ(誤差)を考慮する必要がないため、クリアランスは最小限度に設定可能である。このように、本実施例においては、上記の基準位置の情報(位置情報)に基づいて、ファインアライメントを行う際のマスク12とウエハ21との距離(規定距離)が、マスク毎に予め設定される。そして、使用されるマスクに応じて、マスク12とウエハ21との間隔が規定距離となるように、これらを配した状態でファインアライメントが行われる。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、撓み量Xのバラツキ(誤差)を考慮する必要がないため、比較例に比べて、より確実に、マスク12とウエハ21との距離が短い状態でファインアライメントを行うことができる。
【0029】
以下、ファインアライメントを行うための磁気浮上ステージ2に関する詳細構成、及び上記の設定方法のより具体的な例などについて説明する。
【0030】
<磁気浮上ステージ>
図9に示すように、磁気浮上ステージ2は可動部と固定部とを備えている。可動部は、ステージフレーム17と、ステージフレーム17上に設置された複数の自重補償磁石可動子18と、複数のリニアモータ可動子19とからなる。ステージフレーム17には、静電チャック20が固定され、成膜対象であるウエハ21をフェイスダウン状態で吸着することで保持可能である。ウエハ21も不図示のロボットハンドと不図示の粗動ステージとによって搬入され、静電チャック20に受け渡される。また、ウエハ21を受け渡すためにロボットハンドと粗動ステージとが出入りする際にも、マスク駆動機構8によりマスク台11は下降して退避する。
【0031】
磁気浮上ステージ2における固定部は、ステージ支持体3の下面に固定される自重補償磁石固定子22とリニアモータ固定子23とからなる。
【0032】
ここで、自重補償磁石可動子18と自重補償磁石固定子22との間に発生する推力によって、磁気浮上ステージ2の可動部はステージ支持体3によって支持されている。上記の推力は、磁気浮上ステージ2における可動部の自重に相当するように設定されている。そして、リニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値を変化させることで、リニアモータ可動子19に内蔵される磁石に対して発生するローレンツ力によって必要な推力を出すことが可能となっている。上下方向には、前述の通り自重補償磁石可動子18と自重補償磁石固定子22とによって磁気浮上ステージ2の可動部の自重はキャンセルされている。そのため、リニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルに供給する電流は微小であり、発熱による変形や破損の心配はない。また、必要に応じてリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルごと水冷ジャケットで覆い、冷媒を流して積極的に冷却することも可能である。
【0033】
図10は、磁気浮上ステージ2の上面図である。
図10を用いて、リニアモータ可動子19とリニアモータ固定子23、及び、自重補償磁石可動子18と自重補償磁石固定子22との配置関係について説明する。リニアモータ可動子19は、ステージフレーム17の上面の角部に4か所配置されている。便宜上、
図10においては、リニアモータ可動子の符号を、19a、19b、19c、19dで示している。リニアモータ固定子23は、対向するステージ支持体3(
図10では不図示)の下面に配置されている。便宜上、
図10においては、リニアモータ固定子の符号を、23a、23b、23c、23dで示している。図では簡略化しているが、リニアモータ可動子19a、19b、19c、19dとリニアモータ固定子23a、23b、23c、23dは、それぞれの組み合わせ毎にXYZ
の3方向に推力を発生する構成となっている。リニアモータ固定子23a、23b、23c、23dに内蔵されているボイスコイルもXYZの3方向に推力を発生させるために3個ずつ設けられている。これにより、磁気浮上ステージ2の可動部を6自由度に駆動することが可能である。以下、説明の簡略化のために、リニアモータ固定子23a、23b、23c、23dに内蔵されているボイスコイルは、特に断りがなければZ方向に推力を発生するボイスコイルを指すこととする。
【0034】
また、自重補償磁石可動子18は、重心周りに対称に4か所に配置されている。便宜上、
図10においては、自重補償磁石可動子の符号を、18a、18b、18c、18dで示している。自重補償磁石固定子22は、対向するステージ支持体3の下面に配置されている。便宜上、
図10においては、自重補償磁石固定子22の符号を、22a、22b、22c、22dで示している。これにより、モーメント力に対しても力を受けることができるので、安定した浮上が可能となっている。
【0035】
なお、リニアモータ可動子19とリニアモータ固定子23、及び自重補償磁石可動子18と自重補償磁石固定子22は、本実施例では、4組ずつ設けられる構成を示すが、少なくとも3組以上あればよい。
【0036】
ここで、また
図9を用いて磁気浮上ステージ2の周辺の構成を説明する。マスク12の材質は、例えばインバー等の熱膨張に強い金属箔であるか、もしくはSiウエハを薄く加工したメンブレン膜のような薄膜材料で構成される。上述したように、マスク12はマスクフレーム13に固定されており、ロボットハンド40によって搬送され、不図示の粗動ステージを介してマスク台11に載置される。マスク12とマスクフレーム13の固定方法は、例えば架張された状態でスポット溶接によって固定する方法がある。他にもメカクランプや、接着による固定などでもよく、なるべく固定時にマスク12を歪ませない方法が選択肢として挙げられる。
【0037】
マスク12は面内に磁性体を含んでおり、磁気浮上ステージ2に対して相対的に上下移動可能な吸引マグネット24によって吸い上げることが可能である。ウエハ21は静電チャック20に保持されるが、吸引マグネット24は静電チャック20の吸着面と対向する面に非接触の範囲で接近可能であり、マスク12の吸引に必要な磁束を発生可能に構成されている。静電チャック20及びウエハ21が非磁性体で構成されることで、吸引マグネット24の磁束はマスク12の位置にまで形成され、マスク12を上方向に移動させるための吸引力を発生させることができる。これにより、マスク12は吸引力によってウエハ21に接触し、密着させることができる。ここでの密着性が確保されることで、成膜時における成膜材料の回り込みを防ぐことが可能となる。
【0038】
さらに、マスク12には、画素パターンに相当する貫通孔が複数個、等間隔に設けられている。真空環境内おいて、高温になった蒸発源14から蒸発した成膜材料がマスク12の貫通孔を通ってウエハ21の表面に蒸着される。
【0039】
図11(a)は、ウエハマーク配置図であり、同図(b)は、マスクマーク配置図である。これらの図を用いてウエハマーク25とマスクマーク26について説明する。ウエハ21にはアライメントカメラ15で位置を計測するためのウエハマーク25が描画されており、マスク12にはマスクマーク26が描画されている。ウエハマーク25とマスクマーク26は、アライメントカメラ15と同数以上が描画されている。本実施例のアライメントカメラ15は2台であり、ウエハマーク25とマスクマーク26はそれぞれ2か所に設けられている。
【0040】
ここで、再度、
図9を用いて磁気浮上ステージ2の周辺の構成を説明する。吸引マグネ
ット24と静電チャック20には、アライメントカメラ15の視野にあたる部分に貫通孔が設けられている。これにより、アライメントカメラ15によってウエハマーク25を計測することができる。
【0041】
また、アライメントカメラ15のセンサは、赤外波長に感度を持つものが好適であり、その場合には、ウエハ21を透過させてマスクマーク26を計測することができる。また、視野内のマークコントラストを確保してマーク認識率を上げるために、光源27をマスク台11に設置し、マスク12の下部から光を照射し、アライメントカメラ15のセンサで受光する構成を採用するのが望ましい。この場合、光源27の光路にあるマスク台11とマスクフレーム13には貫通孔が設けられる。吸引マグネット24、静電チャック20、マスク台11、マスクフレーム13の貫通孔に、光を透過する材料を設けてもよい。
【0042】
<アライメントの詳細>
ウエハ21とマスク12の相対的な位置決め(アライメント)の詳細について説明する。上述したように、ウエハ21の表面に形成される薄膜は、マスク12の貫通孔の位置により決まるため、ウエハ21とマスク12との高精度なアライメントは重要である。ウエハ21とマスク12の相対的な位置関係は、アライメントカメラ15のファインカメラによって、ウエハマーク25とマスクマーク26との位置ずれ量により計測される。しかし、アライメントカメラ15のファインカメラはサンプリング周波数を高くすることが困難なため、磁気浮上ステージ2の位置決めにはよりサンプリング周波数を高くすることができるレーザ変位計28が用いられる。
【0043】
レーザ変位計28は、マスク台11上に設置され磁気浮上ステージ2の可動部を計測している。このレーザ変位計28は少なくともX方向に2か所、Y方向に1か所、Z方向に3か所等、合わせて6か所に配置されており、6自由度の位置を同時計測可能である。そして、レーザ変位計28の6自由度情報を元に幾何学的な座標変換を実施して、磁気浮上ステージ2の重心周りの変位と角度変化に換算する。その結果を元に推力分配を実施し、
図10に示した各リニアモータを駆動することで高精度な位置決めが可能である。レーザ変位計28から得た位置情報を座標変換し、推力を算出する計算は不図示の装置制御部で行う。
【0044】
また、レーザ変位計28は、マスク台11上のマスク12の近傍に固定されており、真空環境内においてアッベ誤差などの影響を受けず直接的にマスク12と磁気浮上ステージ2との位置決めが可能な構成となっている。さらに、レーザ変位計28はマスク台11を介して支持フレーム7が置かれる除振台5によってチャンバからの振動が抑制されているので安定した計測が可能となっている。一方で、磁気浮上ステージ2は低いバネ性の自重補償磁石で支持されており、同様にチャンバからの振動が抑制された状態である。
【0045】
そして、ステージフレーム17の材質は、例えば高剛性のセラミック部材を用いることで高い固有振動数を得ることができ、磁気浮上ステージ2を制御する際に発生する機械的な自励振動を高周波側に設定できる。これにより、レーザ変位計28と各リニアモータを用いたフィードバック制御ループは高帯域とすることが可能であり、外乱振動を大幅に抑制することができる。
【0046】
これらにより、磁気浮上ステージ2上のウエハ21とマスク台11に設置されたマスク12との相対位置の高精度な位置決めを実現する。
【0047】
次に、成膜装置1のアライメントに関する全体動作例の概要について説明する。
図12は、成膜装置1のアライメントに関する全体動作例を示すフローチャートである。ここで、本フローチャートは、真空チャンバ4の内側を真空環境にした状態で行われる。
【0048】
以下の説明において、各ステップについては、ステップS1は単にS1、ステップS2では単にS2というように、「ステップ」を省略する。まず、マスクフレーム13に固定されたマスク12がロボットハンドにより搬入される。そして、アライメントカメラ15におけるラフカメラでマスク12を位置決めしてからマスク台11に載置する。このS1をマスクラフアライメントと表記する。S1の詳細は後述する。
【0049】
S2で、ウエハ21がロボットハンド40により搬入される。そして、アライメントカメラ15におけるラフカメラでウエハ21を位置決めしてから静電チャック20にウエハ21が吸着される。このS2をウエハラフアライメントと表記する。S2の詳細についても後述する。
【0050】
S3で、マスク12をウエハ21に近接させる。S3の詳細についても後述する。
【0051】
S4で、マスク12とウエハ21との相対的な位置ずれ量をアライメントカメラ15におけるファインカメラで計測し、規格内に調整した後に、吸引マグネット24を起動してマスク12を吸着し、マスク12とウエハ21とを重ね合わせる。このS4をファインアライメントと表記する。S4の詳細についても後述する。
【0052】
S5で、高温になった蒸発源14から蒸発した成膜材料がマスク12の貫通孔を通ってウエハ21の表面に蒸着される。なお、蒸着中も、マスク12とウエハ21との相対的な位置ずれ量をアライメントカメラ15のファインカメラで計測して位置ずれ量を確認する構成が採用されることで、蒸着の品質が保証される。
【0053】
以下、S1、S2、S4の詳細を説明する。ステップが前後するが、その後にS3の詳細を説明する。
【0054】
まず、S1の詳細を説明する。
図13は、S1であるマスクラフアライメントの動作例を示すフローチャートである。
【0055】
S1-1で、ロボットハンドと粗動ステージとの駆動スペースを確保するために、マスク駆動機構8によりマスク台11は下降して退避する。S1-2で、マスク12を固定したマスクフレーム13がロボットハンドによって搬入される。そして、S1-3で、マスク12をロボットハンドから粗動ステージに受け渡される。この際、アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに2か所のマスクマーク26が、ファインカメラの視野内に入る位置まで粗動ステージにより位置決めがなされる。
【0056】
S1-4で、アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに2か所のマスクマーク26が、ファインカメラの視野内に入っているか判定される。入っていない場合はS1-5に、入っている場合はS1-6に進む。
【0057】
S1-5で、粗動ステージによる位置決め動作が再度なされる。アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに、2か所のマスクマーク26が、ファインカメラの視野内に入る位置まで粗動ステージによる位置決めが繰り返される。
【0058】
S1-6で、マスクフレーム13に固定されたマスク12は、粗動ステージによるZ軸方向のみの駆動により、マスク台11に載置される。
【0059】
S1-7で、S1-6におけるマスク12のマスク台11への載置時に、位置ずれをしていないか確認するために、アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内そ
れぞれに2か所のマスクマーク26が、ファインカメラの視野内に入っているか判定される。入っていない場合には載置時に位置ずれしておりS1-8に、入っている場合はS1-9に進む。
【0060】
S1-8で、粗動ステージで再度位置決めするために、マスクフレーム13に固定されたマスク12を粗動ステージが保持する。その後、前述したS1-5に進む。
【0061】
S1-9で、マスクラフアライメントが完了したので粗動ステージは退避する。
【0062】
次に、S2の詳細を説明する。
図14は、S2であるウエハラフアライメントの動作例を示すフローチャートである。
【0063】
S2-1で、ウエハ21がロボットハンド40によって搬入される。そして、S2-2で、ウエハ21がロボットハンドから粗動ステージに受け渡される。この際、アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに2か所のウエハマーク25が入る位置まで粗動ステージにより位置決めがなされる。
【0064】
S2-3で、アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに2か所のウエハマーク25が、ファインカメラの視野内に入っているか判定される。入っていない場合はS2-4に、入っている場合はS2-5に進む。
【0065】
S2-4で、粗動ステージによる位置決め動作が再度なされる。アライメントカメラ15におけるラフカメラ2台の視野内それぞれに2か所のウエハマーク25が、ファインカメラの視野内に入る位置まで粗動ステージによる位置決めが繰り返される。
【0066】
S2-5で、ウエハ21は、粗動ステージによるZ軸方向のみの駆動により、静電チャック20に接触する。S2-6で、静電チャック20を起動することで、ウエハ21は静電チャック20に吸着される。
【0067】
S2-7で、S2-6における静電チャック20へのウエハ21の吸着時に、位置ずれをしていないか確認するために、アライメントカメラ15におけるファインカメラ2台それぞれで、2か所のウエハマーク25が視野内に入っているか判定される。入っていない場合には吸着時に位置ずれをしておりS2-8に、入っている場合はS2-9に進む。
【0068】
S2-8で、粗動ステージで再度位置決めするために、ウエハ21を粗動ステージが保持する。その後、前述したS2-4に進む。
【0069】
S2-9で、ウエハラフアライメントが完了したので粗動ステージは退避する。
【0070】
次に、S4の詳細を説明する。
図15は、S4であるファインアライメントの動作例を示すフローチャートである。
【0071】
S4-1で、アライメントカメラ15におけるファインカメラ2台それぞれで、2か所のウエハマーク25とマスクマーク26との相対的な位置ずれ量が規格内に入っているか判定される。入っていない場合はS4-2に、入っている場合はS4-3に進む。
【0072】
S4-2で、磁気浮上ステージ2を駆動することで、再度、位置決め動作がなされて、2か所のウエハマーク25とマスクマーク26との相対的な位置ずれ量が規格内に入るまで、同じ動作が繰り返される。
【0073】
S4-3で、吸引マグネット24を起動し、マスク12を上方向に吸引し、ウエハ21に接触させ、密着させる。S4-4で、S4-3の密着時に位置ずれをしていないか確認のために、アライメントカメラ15におけるファインカメラ2台それぞれで、2か所のウエハマーク25とマスクマーク26との相対的な位置ずれ量が規格内に入っているか判定される。入っていない場合はS4-5に、入っている場合はファインアライメントを完了する。
【0074】
S4-5で、磁気浮上ステージ2で再度位置決めするために、吸引マグネット24による吸引動作を停止させて、マスク12をウエハ21から剥離させる。その後、前述したS4-2に進み、同様の動作が繰り返される。
【0075】
ここで、S4-3でマスク12をウエハ21に密着させて重ね合わせる際に、マスク12とウエハ21とが離れていると位置ずれが発生する場合がある。マスク12とウエハ21との平行度に誤差が有る場合も、重ね合わせる際にアライメント精度が低下する場合がある。
【0076】
また、S4-2で磁気浮上ステージ2を駆動する際に、マスク12とウエハ21とが接触していると、摩擦力で磁気浮上ステージ2が発振する場合や、摩擦力でマスク12とウエハ21とが損傷する場合がある。
【0077】
そのため、マスク12とウエハ21とが接触していない距離で、できるだけ近接させるS3が重要になる。
【0078】
しかしながら、マスク12はウエハ21上への蒸着物質の成膜を阻害しないように薄い構造となっており、マスク12製造時の残留応力や、吸引マグネット24の磁力により、マスク12がウエハ21側に凸に撓むことが有る。このマスク12の撓みは、マスクフレーム13に固定されたマスク12をマスク台11に載置した状況で発生する成分であり、マスク12とウエハ21において、どの位置でどれ位の距離だけ近接しているのか把握する事は難しい。そのため、上記の比較例でも説明したように、従来、マスク12とウエハ21は、これらが確実に接触しない位置まで大きめに離間させる必要があった。これに対し、本実施例においては、上記の通り、アライメント動作時に、マスク12とウエハ21との距離をより短くすることを可能としている。
【0079】
以下、マスク12をウエハ21に近接させるS3の詳細を説明する。
図16は、S3のマスク12をウエハ21に近接させる動作例を示すフローチャートである。
【0080】
S3-1で、マスク駆動機構8を上昇させることでマスク12はウエハ21に近接する。
図17は、マスク12をウエハ21に近接させ始める際の磁気浮上ステージ2の周辺を拡大した図である。この図に示すように、マスク12とウエハ21とを搬入するロボットハンドと粗動ステージとの駆動スペースを確保するために、マスク駆動機構8によりマスク台11は下降して退避している。説明の便宜上、この図では、マスク12の撓みを大きめに示しているが、マスク12がウエハ21側に凸に撓む状態が示されている。
【0081】
S3-2で、マスク12がウエハ21に接触されたことを検知すると、マスク駆動機構8の上昇動作は終了する。
図18は、マスク12とウエハ21とが接触している際の磁気浮上ステージ2の周辺を拡大した図である。この図に示すように、マスク12は、撓みがある箇所でウエハ21と接触する。
【0082】
マスク12とウエハ21との接触を検知する方法について説明する。
図19は、マスク12とウエハ21との接触を検知した際の磁気浮上ステージ2におけるリニアモータ固定
子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図である。
図19(a)は、リニアモータ固定子23aに内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答を示している。同様に、同図(b)はリニアモータ固定子23b、同図(c)はリニアモータ固定子23c、同図(d)はリニアモータ固定子23dにそれぞれ内蔵されるボイスコイルの電流値を示している。
図19において、マスク12とウエハ21とが接触するまでは非接触時の電流値であり、電流値は変化しない。マスク12とウエハ21とが接触し始めると、磁気浮上ステージ2には接触による力が加わるが、磁気浮上ステージ2はリニアモータ固定子23への電流値を増やして指令位置を維持しようと位置決め制御がなされる。そのため、図示のように各リニアモータ固定子23a、23b、23c、23dに内蔵されたボイスコイルの電流値は増大する。
【0083】
ここで、マスク12とウエハ21との平行度の誤差により、各リニアモータ固定子23a、23b、23c、23dに内蔵されたボイスコイルの電流値の増大量には差異が発生する。
図19では、リニアモータ固定子23aが設置されている側がマスク12とウエハ21との距離が近かったために、リニアモータ固定子23aに内蔵されたボイスコイルの電流値が他のリニアモータ固定子23に内蔵されたボイスコイルの電流値より大きくなった場合を示している。このようにリニアモータ固定子23に内蔵されたボイスコイルの電流値の増大より、マスク12とウエハ21との接触が検知されると共に、マスク12とウエハ21との平行度も検知可能である。
【0084】
本実施例では、最も増大量が大きいリニアモータ固定子23aに内蔵されたボイスコイルの電流値が予め定めた規格範囲の上限値まで増大したことを検知した時点で、マスク12とウエハ21とが接触したと判定する構成が採用されている(S3-2)。
【0085】
S3-3で、電流値の規格範囲の上限値に達したリニアモータ可動子19とリニアモータ固定子23の組み合わせのみを、マスク12とウエハ21とが離れる方向に駆動する。駆動は、リニアモータ固定子23の電流値が予め定めた規格範囲の下限値になるまで行う。本実施例では、リニアモータ可動子19aとリニアモータ固定子23aの組み合わせのみを駆動する。
図20は、リニアモータ固定子23の電流値が予め定めた規格範囲の下限値になるまでの、磁気浮上ステージ2のリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図である。この図では、マスク12とウエハ21とが離れる方向に駆動したリニアモータ固定子23aに内蔵されたボイスコイルの電流値が予め定めた規格範囲の下限値まで低下していることを示している。その際に、リニアモータ固定子23a以外のリニアモータ固定子23に内蔵されたボイスコイルの電流値の低下は、リニアモータ固定子23aに内蔵されたボイスコイルの電流値の低下量より小さく、リニアモータ固定子23ごとの非接触時からの電流値の変化量の差異は小さくなる。
【0086】
S3-4で、全てのリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の非接触時からの変化量が規格範囲の下限値から規格範囲の上限値の間に入っているか判定される。入っていない場合はS3-5に、入っている場合はS3-6に進む。
図20に示した例では、全てのリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルの電流値が規格範囲に入っていないため、S3―5に進む。
【0087】
S3-5で、磁気浮上ステージ2を下降させることでマスク12にウエハ21を押し付ける。ここで、S3-1と同様にマスク駆動機構8を上昇させることでマスク12をウエハ21に押し付けても良いが、既にマスク12とウエハ21とが接触した状態であるので、より高精度駆動が可能な磁気浮上ステージ2により行う方が好ましい。
【0088】
そして、S3-2で、リニアモータ固定子23aに内蔵されたボイスコイルの電流値が予め定めた規格範囲の上限値まで増大したことを検知した時点で、磁気浮上ステージ2の
下降が終了する。
図21は、再度、リニアモータ固定子23の電流値が予め定めた規格範囲の上限値になるまでのボイスコイルを流れる電流値の時間応答例を示した図である。1度目のS3-2の時間応答例である
図19と比較して、各リニアモータ固定子23に内蔵されたボイスコイルの電流値の差異が小さくなる。以上のような動作が、S3-4で、全てのリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値の非接触時からの変化量が規格範囲の下限値から規格範囲の上限値の間に入るまで繰り返し行われる。これにより、マスク12とウエハ21が予め定めた平行度が満たされる。
【0089】
S3-6で、マスク駆動機構8を下降させることでマスク12とウエハ21とが剥離される。剥離したことは、全てのリニアモータ固定子23に内蔵されるボイスコイルを流れる電流値が非接触時の値まで下がったことで判定される。この時点で、マスク12とウエハ21との平行度が満たされた状態で、マスク12の最もウエハ21に近接している箇所とウエハ21とがZ方向で同じ位置になる。
【0090】
S3-7で、S4であるファインアライメントを実施する際のマスク12とウエハ21とのギャップ量(クリアランス分)だけ、マスク駆動機構8が下降する。
【0091】
以上のフローチャートにより、撓んでおり、かつ平面度が不十分なマスク12を、ウエハ21と任意のギャップ量の位置において、平行に調整することができ、マスク12とウエハ21とを高精度にアライメントすることができる。それにより、密着させて重ね合わせる際のマスク12とウエハ21との位置ずれを抑制して高精度な蒸着を実現できる。
【0092】
なお、以上のS3の動作は、初めて使用するマスク12について行えば、当該マスク12について、ウエハ21とマスク12とを接触させた状態から剥離させた際の位置情報を記憶させておくことができる。従って、当該マスクを使用する場合には、2回目以降は、初回におけるファインアライメントを行った際の位置までマスクを移動させて、ファインアライメントを行うようにすればよい。
【0093】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置1を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を示し、有機EL表示装置の製造方法を例示する。
【0094】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図22(a)は有機EL表示装置150の全体図、
図22(b)は1画素の断面構造を表している。
【0095】
図22(a)に示すように、有機EL表示装置150の表示領域151には、発光素子を複数備える画素152がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域151において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子152R、第2発光素子152G、第3発光素子152Bの組み合わせにより画素152が構成されている。画素152は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0096】
図22(b)は、
図22(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素152は、複数の発光素子からなり、各発光素子は、基板153上に、第1電極(陽極)154と、正孔輸送層155と、発光層156R、156G、156Bのいずれかと、電子輸送層157と、第2電極(陰極)158と、を有している。これらのうち、正孔輸送層15
5、発光層156R、156G、156B、電子輸送層157が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層156Rは赤色を発する有機EL層、発光層156Gは緑色を発する有機EL層、発光層156Bは青色を発する有機EL層である。発光層156R、156G、156Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極154は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層155と電子輸送層157と第2電極158は、複数の発光素子152R、152G、152Bで共通に形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極154と第2電極158とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極154間に絶縁層159が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層140が設けられている。
【0097】
図22(b)では正孔輸送層155や電子輸送層157は一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を備える複数の層で形成されてもよい。また、第1電極154と正孔輸送層155との間には第1電極154から正孔輸送層155への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極158と電子輸送層157の間にも電子注入層が形成することもできる。
【0098】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0099】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極154が形成された基板153を準備する。
【0100】
第1電極154が形成された基板153の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極154が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層159を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0101】
絶縁層159がパターニングされた基板153を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層155を、表示領域の第1電極154の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層155は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層155は表示領域151よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0102】
次に、正孔輸送層155までが形成された基板153を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持台及び静電チャックで保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板153の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層156Rを成膜する。
【0103】
発光層156Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層156Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層156Bを成膜する。発光層156R、156G、156Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域151の全体に電子輸送層157を成膜する。電子輸送層157は、3色の発光層156R、156G、156Bに共通の層として形成される。
【0104】
電子輸送層157まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極158を成膜する。
【0105】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層140を成膜して、有機EL表示装置15
0が完成する。
【0106】
絶縁層159がパターニングされた基板153を成膜装置に搬入してから保護層140の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0107】
(まとめ)
本実施例に係る成膜装置1においては、基板としてのウエハ21の成膜面と平行な第1方向(XY平面に平行な方向)においてウエハ21とマスク12との相対的な位置を調整する調整機構を備えている。本実施例においては、ラフアライメントにおいては、粗動ステージ30が調整機構に相当する。また、ファインアライメントにおいては、磁気浮上ステージ2が調整機構に相当する。このように、本実施例では、ウエハ21とマスク12との相対的な位置を調整するために、基板としてのウエハ21を移動させる構成が採用されている。ただし、本発明においては、基板とマスクとの第1方向の相対的な位置を調整するための調整機構は、基板を静止させた状態でマスクを移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。
【0108】
また、成膜装置1においては、第2方向において、ウエハ21とマスク12とを相対的に移動させる移動機構を備えている。マスク12をZ方向に移動させるマスク駆動機構8と磁気浮上ステージ2がいずれも移動機構に相当する。
【0109】
そして、本実施例においては、ウエハ21とマスク12との第2方向の距離が、移動機構によりウエハ21とマスク12とを接触させた状態から剥離させた際の位置情報に基づいて規定された規定距離に配された状態で、調整機構による調整(ファインアライメント)が行われる。
【0110】
また、本実施例においては、使用されるマスク12に応じて記憶された位置情報に基づいて、ウエハ21とマスク12との第2方向の距離が、上記の規定距離となるように、移動機構を制御する制御手段としての制御部が設けられている。
【0111】
上記の規定距離は、上記の位置情報と、クリアランス(使用されるマスク12の第2方向の変形量と、ウエハ21の第2方向の変形量)とに基づいて規定される。すなわち、上記のS3-7において、マスク12とウエハ21とが剥離された後に、ファインアライメントを実施するために、所定量(ギャップ量(クリアランス分))だけ、マスク駆動機構8を下降させて、マスク12をウエハ21から更に離間させる構成が採用されている。上記の通り、マスク12とウエハ21とが剥離されたことを検知した際の状態でファインアライメントを行うと、これらの間隔が狭すぎて、マスク12とウエハ21が摺動してしまうおそれもある。また、同じマスク12が2度以上使用される場合には、ウエハ21とマスク12を接触させてから離間させる動作は行わないため、ウエハ21の寸法公差やマスク12等の状態によっては、ウエハ21とマスク12が摺動してしまうおそれがある。そこで、使用されるマスク12の第2方向の変形量と、ウエハ21の第2方向の変形量とに基づいて、予め定めた所定量(ギャップ量)分を考慮して、上記の規定距離を規定する構成を採用している。
【0112】
また、本実施例においては、移動機構は、ウエハ21とマスク12のうちのいずれか一方を移動させるための駆動機構を3箇所以上有しており、これら複数の駆動機構によって、ウエハ21とマスク12のうちのいずれか一方が、第2方向と、第2方向に直交する任意の軸を中心に回転する回転方向に移動可能に構成されている。より具体的には、移動機
構としての磁気浮上ステージ2が、静電チャック20によりウエハ21を移動させるための駆動機構としてのリニアモータ可動子19及びリニアモータ固定子23を4箇所有している。そして、4箇所のリニアモータ可動子19及びリニアモータ固定子23からなる駆動機構によって、ウエハ21が第2方向(Z軸方向)と、第2方向に直交する任意の軸を中心に回転する回転方向に移動可能に構成されている。つまり、複数の駆動機構によって、ウエハ21を、XY平面(本実施例では水平面に平行な面)に対して、任意の方向に傾くように制御することが可能となっている。これにより、ウエハ21とマスク12の平行度を調整することができる。なお、本実施例では、ウエハ21の傾き等を調整する構成を示したが、マスク12の傾きを調整する構成を採用することもできるし、両者の傾きを調整する構成を採用することもできる。
【0113】
また、上記のS3で説明したように、上記の位置情報は、ウエハ21とマスク12との平行度が所定の範囲内、かつウエハ21とマスク12とが接触した状態から剥離させた際に得られる情報であると好適である。
【0114】
また、本実施例においては、マスク12を保持するマスク台11と、ウエハ21を保持する吸着部材としての静電チャック20とを備えている。そして、調整機構及び移動機構は、上記の通り、マスク台11と静電チャック20のうちの少なくとも一方を移動させる機構である。
【0115】
また、本実施例においては、ウエハ21とマスク12とが離れた状態から接触した状態、及びウエハ21とマスク12とが接触した状態から剥離した状態を検知する検知手段を備えている。この検知手段は、S3で説明した通り、リニアモータ固定子23に内蔵されたボイスコイルの電流値の変化に基づいて、ウエハ21とマスク12との接触及び剥離を検知する手段である。すなわち、検知手段は、複数の駆動機構をそれぞれ制御する制御電流の測定値によって、ウエハ21とマスク12とが離れた状態から接触した状態、及びウエハ21とマスク12とが接触した状態から剥離した状態を検知する。より具体的には、検知手段は、複数の駆動機構によりウエハ21とマスク12とが近づく方向に移動する過程で上記の制御電流が上昇し始めることで、ウエハ21とマスク12とが離れた状態から接触した状態への移行を検知する。また、検知手段は、複数の駆動機構によりウエハ21とマスク12とが離れる方向に移動する過程で上記の制御電流の下降状態が終了した際に、ウエハ21とマスク12とが接触した状態から剥離した状態を検知する。
【0116】
上記の位置情報は、全ての駆動機構に対する上記の制御電流の値が予め定めた範囲内(
図19~
図21に示す規格範囲の下限値から上限値の範囲)になった後にウエハ21とマスク12とが離れるように複数の駆動機構が制御され、検知手段によって、ウエハ21とマスク12とが接触した状態から剥離した状態に移行したと検知された際の情報であるとよい。
【符号の説明】
【0117】
1:成膜装置 2:磁気浮上ステージ 3:ステージ支持体 4:真空チャンバ 5:除振台 6:除振台ベース 7:支持フレーム 8:マスク駆動機構 9:マスク支持支柱 10:ベローズ 11:マスク台 12:マスク 13:マスクフレーム 14:蒸発源 15:アライメントカメラ 16:ビューポート 17:ステージフレーム 18:自重補償磁石可動子 19:リニアモータ可動子 20:静電チャック 21:ウエハ
22:自重補償磁石固定子 23:リニアモータ固定子 24:吸引マグネット 25:ウエハマーク 26:マスクマーク 27:光源 28:レーザ変位計 30:粗動ステージ 31:粗動ステージ支柱 32:粗動ステージ支持部 33 移動機構 40:ロボットハンド