IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

特開2025-2364澱粉質食品用組成物、澱粉質食品、澱粉質食品の製造方法及び澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002364
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】澱粉質食品用組成物、澱粉質食品、澱粉質食品の製造方法及び澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/005 20060101AFI20241226BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20241226BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20241226BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20241226BHJP
   A21D 13/28 20170101ALN20241226BHJP
【FI】
A23D7/005
A23L7/109 A
A23L5/10 C
A23L7/10 E
A21D13/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102484
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】長岡 優
【テーマコード(参考)】
4B023
4B026
4B032
4B035
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LE13
4B023LE14
4B023LE18
4B023LE21
4B023LE22
4B023LK05
4B023LK08
4B023LL04
4B023LP20
4B026DC02
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK10
4B026DL03
4B026DL05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B026DX03
4B032DB01
4B032DK09
4B032DK14
4B032DK16
4B032DL20
4B032DP54
4B032DP59
4B035LC16
4B035LE16
4B035LG12
4B035LG20
4B035LK13
4B035LP01
4B035LP21
4B035LP26
4B035LP43
4B046LA02
4B046LA04
4B046LA05
4B046LA06
4B046LA09
4B046LB10
4B046LC20
4B046LG10
4B046LG11
4B046LG15
4B046LG17
4B046LG53
4B046LP41
4B046LP56
4B046LP69
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】澱粉質食品のレンジ焼けを抑制することのできる新規な素材を提供する。
【解決手段】
水、食用油脂、乳化剤及び多糖類を含有する澱粉質食品用組成物であって、多糖類が、果実由来食物繊維、イヌリン及びセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、澱粉質食品用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、食用油脂、乳化剤及び多糖類を含有する澱粉質食品用組成物であって、
前記多糖類が、果実由来食物繊維、イヌリン及びセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、澱粉質食品用組成物。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項3】
前記多糖類の含有量が、前記澱粉質食品用組成物全体に対して0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項4】
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項5】
前記乳化剤の含有量が、前記澱粉質食品用組成物全体に対して0.05質量%以上15質量%以下である、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項6】
前記澱粉質食品が麺類である、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項7】
澱粉質食品のレンジ焼け抑制のために用いられる、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物が付着された、澱粉質食品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む、澱粉質食品の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉質食品用組成物、澱粉質食品、澱粉質食品の製造方法及び澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジは、マイクロ波を食品に照射することで食品に含まれる水分子を振動させ、その際に生じる摩擦熱で食品を発熱させる調理器具である。冷凍食品、チルド食品及び冷蔵食品等を加熱して喫食する際、電子レンジがよく使用されるが、電子レンジで加熱すると、食品全体が均質に加熱されず、加熱ムラが生じる場合があり、顕著になると食品への部分的な過加熱による硬化、焦げ等が生じることがある。この部分的に過加熱となる現象を「レンジ焼け」と言う。
【0003】
このようなレンジ焼けを改善しようとする技術として、特許文献1には、特定量の水、油脂、多価アルコール及び乳化剤を含む電子レンジ解凍・加熱食品用組成物により、食品の表面を被覆することで電子レンジ解凍・加熱食品のレンジ焼けを解消できることが記載されている。特許文献2には、米を炊く場合に、乳化剤、多価アルコール及び水を特定割合で乳化処理した高油分乳化油脂組成物を炊飯前の全材料中0.1質量%以上5質量%以下添加することで、レンジ焼けが起き難い冷凍米飯を製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-2024号公報
【特許文献2】特開2015-8647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制することのできる新規な素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、水、食用油脂、乳化剤及び特定の多糖類を含有する澱粉質食品用組成物を用いることで、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の澱粉質食品用組成物、澱粉質食品、澱粉質食品の製造方法及び澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法が提供される。
[1] 水、食用油脂、乳化剤及び多糖類を含有する澱粉質食品用組成物であって、
前記多糖類が、果実由来食物繊維、イヌリン及びセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、澱粉質食品用組成物。
[2] 前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の澱粉質食品用組成物。
[3] 前記多糖類の含有量が、前記澱粉質食品用組成物全体に対して0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の澱粉質食品用組成物。
[4] 前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3に記載の澱粉質食品用組成物。
[5] 前記乳化剤の含有量が、前記澱粉質食品用組成物全体に対して0.05質量%以上15質量%以下である、請求項1~4に記載の澱粉質食品用組成物。
[6] 前記澱粉質食品が麺類である、請求項1~5に記載の澱粉質食品用組成物。
[7] 澱粉質食品のレンジ焼け抑制のために用いられる、請求項1~6に記載の澱粉質食品用組成物。
[8] 請求項1~7に記載の澱粉質食品用組成物が付着された、澱粉質食品。
[9] 請求項1~7に記載の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む、澱粉質食品の製造方法。
[10] 請求項1~7に記載の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための具体的な態様を説明する。ただし、以下の説明は本発明の一態様に過ぎず、発明を限定するものではない。なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
(澱粉質食品用組成物)
本実施形態において、澱粉質食品用組成物は、水、食用油脂、乳化剤及び多糖類を含有し、前記多糖類が、果実由来食物繊維、イヌリン及びセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
(水)
本実施形態において、水は食用のものであれば特に限定されない。
澱粉質食品用組成物中の水の含有量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物全体に対して好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、よりいっそう好ましくは90質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは97質量%以下、さらにより好ましくは96質量%以下、よりいっそう好ましくは95質量%以下である。
【0012】
(食用油脂)
本実施形態において、食用油脂は、食用として用いられている油脂であれば特に限定されないが、液状油であることが好ましい。具体的には、1気圧下、25℃にて液状のすなわち流動性を有する油である。より好ましくは15℃で液状である油であり、さらに好ましくは5℃で液状である油である。
【0013】
食用油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、えごま油、アマニ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、こめ油、落花生油、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油、椿油、茶油、カラシ油、カポック油、カヤ油、クルミ油、ケシ油等の植物油脂;牛脂、豚脂、乳脂、鶏油、魚油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられ、これらの食用油脂を分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂も含まれる。また、前記植物油脂には、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸大豆油、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸サフラワー油等のオレイン酸含量を高めるように品種改良された油糧由来の油脂も含む。食用油脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、食用油脂は、菜種油、大豆油、パーム油、コーン油、こめ油、紅花油、綿実油、ひまわり油及びオリーブ油からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、菜種油及び大豆油からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0014】
澱粉質食品用組成物中の食用油脂の含有量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上、よりいっそう好ましくは5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下、よりいっそう好ましくは8質量%以下である。
【0015】
(乳化剤)
本実施形態において、乳化剤は食用のものであれば特に限定されない。例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。乳化剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、乳化剤は、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0017】
本実施形態において、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度は特に問わないが、好ましくは1超12以下であり、より好ましくは2以上10以下であり、さらに好ましくは2及び10からなる群から選択される1種である。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は特に問わないが、好ましくは炭素数が12以上22以下の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が18以上22以下の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数が18の脂肪酸であり、さらにより好ましくはオレイン酸である。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの親水性親油性バランス(HLB)は特に問わないが、好ましくは0以上14以下であり、より好ましくは1以上12以下であり、さらに好ましくは2以上10以下であり、さらにより好ましくは3以上8以下である。なお、HLB(Hydrophile Lipophile Balance)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値である。
【0018】
本実施形態において、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルのポリグリセリンの平均重合度は特に問わないが、好ましくは1超12以下であり、より好ましくは2以上10以下であり、さらに好ましくは3以上6以下である。
【0019】
澱粉質食品用組成物中の乳化剤の含有量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物全体に対して好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらにより好ましくは0.12質量%以上、よりいっそう好ましくは0.3質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、さらにより好ましくは5質量%以下、よりいっそう好ましくは4質量%以下である。
【0020】
(多糖類)
本実施形態における多糖類は、果実由来食物繊維、イヌリン及びセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である。多糖類は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(果実由来食物繊維)
本実施形態において、果実由来食物繊維は、果実由来の食用の食物繊維であれば特に限定されないが、例えば、シトラスファイバー(オレンジ、レモン、ライム等の柑橘類由来のファイバー)、リンゴファイバー、柿ファイバー、イチジクファイバー、パイナップルファイバー、アボガドファイバー、バナナファイバー、ブドウファイバー、梨ファイバー、スイカファイバー、いちごファイバー等が挙げられる。但し、果実由来食物繊維は、果実から精製して得られたイヌリン及びセルロース誘導体は除く。澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、果実由来食物繊維は、好ましくはシトラスファイバーである。
また、果実由来食物繊維は、好ましくは水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維を含有する複合型食物繊維である。複合型食物繊維の水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維の割合は特に限定されないが、複合型食物繊維中の水溶性食物繊維の含有量が、水不溶性食物繊維の含有量に対する質量比で、例えば、0.1以上10以下、0.2以上8以下、0.3以上6以下、0.4以上5以下、0.5以上4以下、0.6以上3以下、0.7以上2以下、0.8以上1.5以下、0.9以上1.2以下等である。
【0022】
(イヌリン)
イヌリンは、スクロースのフルクトース残基にフルクトース分子がβ(2-1)結合で直鎖状に結合した多糖類である。本実施形態におけるイヌリンの平均重合度は特に限定されないが、例えば、平均重合度が5~40のものを用いることができる。
【0023】
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体は、セルロースを部分的に変性した水溶性高分子を表す。
本実施形態におけるセルロース誘導体は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、セルロースの有するヒドロキシ基にエーテル結合で異なる置換基を導入したセルロースエーテルであることが好ましく、セルロースエーテルの中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであることがさらに好ましい。
【0024】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中のメトキシ基含有量は特に限定されないが、例えば、メトキシ基含有量がヒドロキシプロピルメチルセルロース全体に対して、19.0%以上30.0%以下のものを用いることができる。なお、メトキシ基含有量は、「第9版食品添加物公定書規格(2018) B 一般試験法 38.メトキシ基定量法(メチルセルロース)およびD 成分規格・保存基準各条 ヒドロキシプロピルセルロースの項(ヒドロキシプロピルセルロース)」に従って測定するものとする。
【0025】
澱粉質食品用組成物中の多糖類の含有量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、さらにより好ましくは0.1質量%以上、よりいっそう好ましくは0.2質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以下、よりいっそう好ましくは1質量%以下である。
【0026】
本実施形態において、澱粉質食品用組成物は、上記以外の成分を含んでもよい。例えば、香料、酵素製剤、アルカリ製剤、リン酸塩、増粘剤、色素、酸化防止剤、静菌剤、調味料等の通常食品に用いられる成分を含んでもよい。
【0027】
本実施形態において、澱粉質食品用組成物は、レンジ焼け抑制のために用いられることが好ましい。
【0028】
(澱粉質食品)
本実施形態において、澱粉質食品とは、小麦粉、澱粉、米、米粉、そば粉、くず粉、アワ粉及びその他穀物類等の澱粉質(炭水化物)を主原料として加工された食品のことを指す。例えば、麺類、米飯類、パン類、麺皮類、中華まん類、餅類及び団子類等が挙げられ、好ましくは麺類及び米飯類からなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは麺類である。
【0029】
麺類としては、パスタ、うどん、中華麺、蕎麦、そうめん、ひやむぎ、冷麺、ビーフン、きしめん、焼きそば等が挙げられる。米飯類としては、白飯、おにぎり、チャーハン、ピラフ、赤飯、炊き込みご飯等が挙げられる。麺類及び米飯類を含む澱粉質食品としては、そばめし等が挙げられる。パン類としては、食パン、ロールパン、ドッグパン、サンドウィッチ、蒸しパン等が挙げられる。麺皮類としては、餃子の皮、ワンタンの皮、シュウマイの皮、春巻きの皮等が挙げられる。中華まん類としては、肉まん、豚まん、あんまん等が挙げられる。
【0030】
本実施形態において、澱粉質食品は、電子レンジ調理用の澱粉質食品であることが好ましい。電子レンジ調理(マイクロ波加熱調理)する際の加熱条件等は特に限定されず、澱粉質食品の種類等に応じて適宜設定すればよい。また、澱粉質食品は、電子レンジ調理前に冷凍保存又は冷蔵保存されることが好ましい。冷凍温度は、例えば-100℃以上0℃未満とすることができ、-50℃以上0℃未満が好ましい。冷蔵温度は、例えば0℃以上15℃以下とすることができ、0℃以上10℃以下が好ましい。
【0031】
本実施形態において、澱粉質食品は、上述の澱粉質食品用組成物が付着された澱粉質食品であることが好ましい。澱粉質食品用組成物が付着されることにより、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制することができる。
【0032】
(澱粉質食品用組成物の製造方法)
本実施形態において、澱粉質食品用組成物の製造方法は、上述の水、上述の食用油脂、上述の乳化剤及び上述の多糖類を混合する工程を含む。前記混合する方法や手順は特に限定されないが、例えば以下の手順で混合することができる。
(工程1)上述の食用油脂及び上述の乳化剤を混合する工程
(工程2)(工程1)の後、さらに上述の多糖類を混合する工程
(工程3)(工程2)の後、さらに上述の水を混合する工程
【0033】
(工程1)において、さらに加熱処理することが好ましい。加熱処理の条件は特に限定されないが、上述の食用油脂及び上述の乳化剤の混合物の温度が、例えば20℃以上100℃以下、好ましくは40℃以上80℃以下となるまで加熱処理する。
(工程2)において、多糖類を混合するタイミングは特に限定されないが、(工程1)で得た混合物の温度が、例えば60℃以下、好ましくは50℃以下となった時点で混合することが好ましい。
【0034】
(澱粉質食品の製造方法)
本実施形態において、澱粉質食品の製造方法は、上述の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む。澱粉質食品用組成物を付着させる方法は特に限定されないが、例えば、噴霧、塗布、浸漬、和える、澱粉質食品用組成物を含む水で加熱調理する(例えば、麺を茹でる、米を炊飯する等)から適宜採用することができる。
【0035】
付着させる澱粉質食品用組成物の添加量は、澱粉質食品の種類や付着方法等により適宜設定することができる。
澱粉質食品が麺類の場合、澱粉質食品用組成物の添加量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物を付着前の麺類(加熱調理後の麺)100質量部に対して、例えば0.5質量部以上であり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらにより好ましくは3質量部以上、よりいっそう好ましくは5質量部以上である。また、例えば100質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下等であってもよい。
澱粉質食品が米飯類の場合、澱粉質食品用組成物の添加量は、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制させる観点から、澱粉質食品用組成物を付着前の米飯類(加熱調理後の米飯)100質量部に対して、例えば0.5質量部以上であり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらにより好ましくは3質量部以上、よりいっそう好ましくは5質量部以上である。また、例えば100質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下等であってもよい。
【0036】
澱粉質食品の製造方法は、上述の澱粉質食品用組成物を付着させる工程の後、さらに冷凍保存又は冷蔵保存する工程を含んでもよい。冷凍温度及び冷蔵温度は、上述の通りである。
【0037】
(澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法)
本実施形態において、澱粉質食品のレンジ焼けを抑制する方法は、上述の澱粉質食品用組成物を付着させる工程を含む。澱粉質食品用組成物を付着させる方法や、付着させる澱粉質食品用組成物の添加量は、上述の通りである。
【実施例0038】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。以下の例において、断りのない場合、「%」とは「質量%」である。また、断りのない場合、「部」とは「質量部」である。
【0039】
澱粉質食品用組成物の原材料として、主に以下のものを使用した。
[食用油脂]
・菜種油:AJINOMOTO さらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製(5℃で液状、上昇融点5℃以下)
[乳化剤]
・ジグリセリン脂肪酸エステル:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製(構成脂肪酸:オレイン酸、ポリグリセリンの平均重合度:2、HLB:7.4)
・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:ポエムPR-400、理研ビタミン株式会社製(ポリグリセリンの平均重合度:4以下)
・デカグリセリン脂肪酸エステル:サンソフトQ-175S、太陽化学株式会社製(構成脂肪酸:オレイン酸、ポリグリセリンの平均重合度:10、HLB:4.5)
[多糖類]
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース:メトローズSFE4000、信越化学工業株式会社製(メトキシ基:27.0-30.0%、ヒドロキシプロポキシ基:4.0-7.5%)
・シトラスファイバー:NUTRAVA、CPケルコ社製(水溶性食物繊維及び不溶性食物繊維を含む複合型食物繊維)
・イヌリン:フラクトファイバーFujiFF、フジ日本精糖株式会社製(イヌリンの平均重合度:5~29)
【0040】
<試験例1>
(1)澱粉質食品用組成物の調製
表1に記載の配合で以下の手順により澱粉質食品用組成物を調製した。
1.バイアル瓶に乳化剤及び食用油脂を測りとり、加熱し60℃に達温後、5分間攪拌した。
2.上記1.を放冷し40℃以下になったところで多糖類を少しずつ投入し、5分間攪拌した。
3.多糖類が分散したことを確認後、水を投入しさらに5分間攪拌した。
【0041】
(2)パスタの調製
1.ボウルに上記(1)で調製した各澱粉質食品用組成物を10g若しくは20g(パスタ茹で麺100質量部に対して5質量部若しくは10質量部)測りとった。
2.鍋にお湯6kg(パスタ乾麺100gに対して1kg)を用意し、パスタを茹でる直前に塩90g(お湯の重量に対して1.5%)を投入した。
3.上記2.のお湯にパスタ乾麺600g(マ・マー1.8mm、日清フーズ株式会社製)を投入し、11分間茹でた。
4.茹であがったパスタをザルにとり30秒間静置し湯切りした。
5.上記1.のボウルに上記4.のパスタ茹で麺200gを投入し、1分間和えた。
6.パスタ皿に上記5.のパスタをドーナツ型に盛り、ショックフリーザー(ブラストチラー&ショックフリーザーHBC-12A3、ホシザキ電気株式会社製、庫内-10℃設定)で30分間冷却した。
7.冷却後、冷凍庫(-18~-20℃)で1日以上保管した。
【0042】
(3)評価
冷凍保管したパスタを電子レンジ(スチームオーブンレンジNE-S265、パナソニック株式会社製)で600Wの条件で5分間加熱した。加熱後のパスタのレンジ焼け(麺の部分的な過加熱による硬化、焦げがあるか)について、4名の専門パネルにより以下の基準で評価した。専門パネルの平均点を表1にあわせて示す。
【0043】
[麺のレンジ焼け]
2:レンジ焼けがない
1:比較例1よりレンジ焼けが少ない
0:比較例1と同等
-1:比較例1よりレンジ焼けが多い
-2:比較例1よりレンジ焼けが非常に多い
【0044】
【表1】
【0045】
その結果、表1に示されるように、各実施例では比較例1に比べて、麺のレンジ焼けを抑制できることがわかった。