(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002374
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102511
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】江藤 隼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 慧
(72)【発明者】
【氏名】越智 学
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058EA02
2G058EA04
2G058EA07
2G058EA14
2G058EB01
2G058ED15
2G058ED21
2G058ED31
2G058ED38
2G058GB05
2G058GB06
2G058GB10
(57)【要約】
【課題】
本発明は、自動分析装置に対して、分注される微量な液体の分注量を安定して高精
度の下にモニタすることが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
液体を分注する分注プローブを含む分注機構と、前記液体を分注される反応容器と、前記液体の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、自動分析装置は、プローブ113が前記反応セル104に前記液体1000を吐出する様子が観察可能な場所に位置する撮像装置201と、撮像装置201が取得した画像を用いて前記液体の形状や輪郭情報を抽出する画像処理部211と、前記画像処理部211と光学的特性の測定結果とを紐づけた情報が保存された記憶部220と、画像処理部211と記憶部220を用いて前記液体の液量を測定する演算部212とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の液体を分注する分注プローブと、
前記分注プローブから液体を分注する反応容器と、
前記反応容器中の液体の成分を分析する分析機構と、
を備えた自動分析装置において、
前記分注プローブから前記反応容器中に分注される液体の該反応容器との接触状態を検出する分注検出部と、
前記接触状態を撮像する撮像装置と、
前記分注検出部からの情報に基づき、前記撮像装置が撮像した画像の中から前記反応容器に分注された液体の量を判定するための画像を選択し、選択された画像から液体の特徴量を抽出する画像処理部と、
前記液体の特徴量と前記分析機構で分析された液体の成分量の情報とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されたデータベースに基づき、抽出された前記特徴量から前記分注機構で分注された液体の量を演算する液体量演算部と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記特徴量は少なくとも液体の形状、または輪郭の情報を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分注検出部は前記分注プローブ内の圧力を検出する圧力センサ、または前記分注プローブが前記反応容器中の液体に接触したことを検出する液面センサのいずれかであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記分析機構は、前記反応容器中の液体の吸光度を測定する光度計であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記画像処理部が選択する画像は、前記分注プローブが前記反応容器中の液体から離脱したことを前記分注検出部が検出した時点の直前の時点での画像であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記液体量演算部が演算した液体の量が、前記制御部が設定した分注量と異なる場合に、前記自動分析装置の異常を報知する報知手段を備える判定部を有していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記記憶部に記憶されている関連付けたデータベースは、分注する液体の物性毎に異なる関連付けとなっていることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料容器に収容された血液や尿などの生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に分析が異常なく行われたかどうかの検証が可能な自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置、例えば生化学自動分析装置では、血清や尿などの生体試料(以下試料と称する)の定性・定量分析を行う。こうした生化学自動分析装置では、一般に、分注プローブを用いて試料や試薬を反応容器などに所定量分注して反応させ、反応液に生じる色調や濁りの変化を、分光光度計等の測光ユニットにより光学的に測定することで分析を行っている。
【0003】
正確な分析結果を得るためには、各容器から反応容器へ予め設定された量を正確に分注することが必要不可欠である。そのため、各種センサを用いて反応容器への分注が正常に行われていることを確認できる装置を備えることが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「分注対象の液体を収容した容器に分注プローブを挿入して液体を吸引した後、分注プローブを反応容器に挿入して液体を吐出することにより、分注対象の液体を分注する分注装置と、分注プローブの先端から反応容器に液体が吐出される位置を撮像する撮像装置と、反応容器を挟んで撮像装置と対向するように配置され、撮像装置により撮像される領域の少なくとも中央部に上下方向に延在するよう配置された明部と、明部の少なくとも側方の一方側に配置され、明部よりも明度の低い暗部とを有する背景部とを備える。」ことが開示されている。
【0005】
また特許文献2には、「検体と試薬を反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、分注される前記液体に対する非親和性処理が施された壁面からなる保持部を有し、前記保持部によって前記液体を略球形に保持するモニタ容器と、前記保持部に保持された液体の形状を撮像し、この撮像された液体の形状をもとに前記液体の液量を算出する液量算出手段と、を備える」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-9532号公報
【特許文献2】特開2009-156793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、反応容器に液体を分注した後に画像を撮像するため、反応容器内の液体が微量な場合、液体の形状を観測できずに液量を読み間違える可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法では、保持部に施された非親和性処理によって保持部内に付着している液体が略球体を維持しているため、保持部の非親和性処理が劣化してしまうと保持部内の液体が略球体を維持するのが困難となる。そのため、保持部の非親和性処理が十分に行われているかを監視する必要がある。
【0009】
そして、モニタ容器に液体を分注した後に、液体を撮像する位置にモニタ容器を移動する場合、モニタ容器の振動等により保持部内の液体も移動し、液体が略球体を維持することが困難となる。略球体を維持できなくなった液体を撮像画像のみで液量を算出する場合、液量を読み間違える可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、液体の分注量を検証することができ、分析の信頼性を向上することができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0012】
所定量の液体を分注する分注プローブと、前記分注プローブから液体を分注する反応容器と、前記反応容器中の液体の成分を分析する分析機構と、を備えた自動分析装置において、前記分注プローブから前記反応容器中に分注される液体の該反応容器との接触状態を検出する分注検出部と、前記接触状態を撮像する撮像装置と、前記分注検出部からの情報に基づき、前記撮像装置が撮像した画像の中から前記反応容器に分注された液体の量を判定するための画像を選択し、選択された画像から液体の特徴量を抽出する画像処理部と、前記液体の特徴量と前記分析機構で分析された液体の成分量の情報とを関連付けたデータベースを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されたデータベースに基づき、抽出された前記特徴量から前記分注機構で分注された液体の量を演算する液体量演算部と、を備えた自動分析装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体の分注量を検証することができ、分析の信頼性を向上することができる自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の自動分析装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例1の自動分析装置における分注装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1の自動分析装置における分注液量測定装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1の自動分析装置における測定ユニットの構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1の液量測定のキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例1の撮像装置が撮像した画像の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1の液体特徴量抽出の対象となる画像の選択に関する説明図である。
【
図8】本発明の実施例1の吸光度と液量の関係性に関する説明図である。
【
図9】本発明の実施例1の記憶部に格納した液体量参照データの一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例1の液量測定処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2の液体特徴量抽出の対象となる画像を選択する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態の自動分析装置の概略構成図である。自動分析装置10は、反応セル104内で試料と試薬とを化学反応させた反応液を測定して成分分析を行うための装置である。
【0017】
この自動分析装置10は、主要な構成として、試料容器100、試料ラック101、試薬容器102、試薬ディスク103、反応セル104、反応ディスク105、試料分注機構106、試薬分注機構107、攪拌ユニット108、測定ユニット109、洗浄ユニット110、制御部111、表示部112を有している。
【0018】
反応ディスク105には、反応セル104が円周状に配置されている。反応セル104は試料と試薬とを混合させた混合液を収容するための容器であり、反応ディスク105上に複数並べられている。反応ディスク105の近くには、試料を収めた試料容器100を複数搭載した試料ラック101が配置されている。
【0019】
反応ディスク105と試料容器100との間には、回転及び上下動可能な試料分注機構106が配置されている。試料分注機構106は回転軸を中心に円弧を描きながら水平移動し、上下移動して試料容器100から反応セル104への試料分注を行う。
【0020】
試薬ディスク103は、その中に試薬を収容した試薬容器102等が複数個円周上に載置可能となっている保管庫である。試薬ディスク103は保冷されている。
【0021】
反応ディスク105と試薬ディスク103の間には、回転及び上下動が可能な試薬分注機構107が設置されている。試薬分注機構107は、上下および水平移動が行い、試薬容器102、希釈液ボトル、前処理用試薬容器等から吸引した試薬、洗剤、希釈液、前処理用試薬等を反応セル104に分注する。
【0022】
反応ディスク105の周囲には、反応セル104内部を洗浄する洗浄ユニット110、反応セル104内の反応液に光を照射し、通過した光の吸光度を測定するための測定ユニット109、反応セル104へ分注した試料と試薬とを混合する攪拌ユニット108等が配置されている。
【0023】
各機構は制御部111に接続され、制御部111によりその動作が制御され、反応液の成分量分析を行う。制御部111は記憶部220に接続され、自動分析装置内の上述した各機構の制御のパラメータ、各シーケンスごとの位置、測定ユニット109の測定結果であるところの吸光度データ等が記憶されている。
【0024】
上述のような自動分析装置10による検査試料の分析処理は、以下の順に従い実行される。まず、反応ディスク105近くに搬送された試料ラック101の上に載置された試料容器100内の試料を、試料分注機構106により反応ディスク105上の反応セル104へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク103上の試薬容器102から試薬分注機構107により、先に試料を分注した反応セル104に対して分注する。続いて、攪拌ユニット108で反応セル104内の試料と試薬との混合液の攪拌を行う。
【0025】
その後、光源から発生させた光を混合液の入った反応セル104に透過させ、透過光の吸光度を測定ユニット109により測定する。測定ユニット109により測定された反応液の吸光度により、制御部111が検量線データやランベルト・ベアーの法則に基づき成分量を分析する。なお、測定ユニット109を用いて所定の成分の濃度を求める自動分析装置を例として説明するが、後述の実施例にて開示される技術は他の光学的手段を用いて試料を測定する免疫自動分析装置や凝固自動分析装置に用いても良い。
【実施例0026】
図2は、本実施例1における分注装置の構成図である。この分注装置は、
図1の試料分注機構106、試薬分注機構107のいずれに対しても適用することができる。プローブ113を保持し、回転駆動可能なアーム114が、上下に駆動可能なシャフト115上に設置されている。プローブ113、圧力センサ116、シリンジポンプ117は配管118を介して接続されている。この分注流路は先端側がプローブ113により開放されていて、基部側が電磁弁119により開放・閉止できるよう構成されている。
【0027】
液面検知センサ120はプローブ113と接続されている。液体を分注する際は、プローブ113の先端を液面検知センサ120の信号に基づいて試料・試薬に浸漬させ、電磁弁119を閉止して、シリンジポンプ117により液体(試料や試薬)を吸引・吐出する。
【0028】
分注動作終了後は基部側から電磁弁119を開放し洗浄水を供給する。センサ信号の受信やモータ駆動信号の送信は制御部111が制御する。液面検知センサ120は一般的には静電容量の変化に基づき、プローブ113が容器中の液体に接触したか否かを判定する。
【0029】
すなわち、プローブ113と容器は疑似的にコンデンサを形成するため、プローブ113が容器の上方にある場合は、その距離に応じた空気の静電容量であるが、プローブ113が容器中の液体に接触した場合、液体の静電容量(その値は空気の静電容量に比して小さい)に変化する。この静電容量の変化に基づきプローブ113が容器中の液面に接触したか否かを判定する。
【0030】
図3は、本実施例1における分注装置の分注液量測定装置の構成図である。分注液量算出部200は、反応セル104に分注プローブ113から吐出される液体1000の液量を測定する部分である。
【0031】
分注液量算出部200は、撮像装置201と撮像制御部210を有している。撮像装置201は、反応セル104の底面付近が観測可能な箇所に配置されている。例えば、反応セル104の側面や下方、上方に撮像装置201を配置することで反応セル104の底面は観測可能である。ただし、反応セル104の側面、下方から反応セル104の底面付近を観測するためには反応ディスク105に加工が必要である。
【0032】
撮像制御部210は、撮像装置201による液体1000の撮像を制御すると共に、撮像した液体の画像信号を処理するECU等を用いた制御手段である。画像処理部211は、撮像装置201が撮像した画像信号を処理し、液体1000の特徴量を出力する。
【0033】
特徴量とは、液体の形状や輪郭等の情報を指している。演算部212は、画像処理部211が処理して得た液体1000の形状をもとに液体の液量を演算する。判定部213は、演算部212が演算した液体1000の液量と制御部111が設定した分注量に対して異常値でないかを判定する。画像処理部211で取得した液体の特徴量と、演算部212が演算した液体の液量と、判定部213の結果は、制御部111を介して表示部112に表示される。
【0034】
図4は、本実施例1における自動分析装置の測定ユニット109の構成図を示す。測定ユニット109は光源310と、分光器320と、検出部330と、増幅器340と、信号処理部350と、で構成される。
【0035】
分析時には、光源ランプ310から発せられた入射光311が、反応セル104内に格納されている液体1000を透過してきた透過光312が分光器320により各波長に分けられ、検出部330で波長ごとに受光した光の強度に応じた電流に変換し、増幅器340で微弱な電流信号を取扱しやすい電圧信号に増幅後、信号処理部350で補正等の処理を行い最終的な吸光度として出力される。
【0036】
出力された吸光度の結果データは表示部112に表示される。また、出力された吸光度は液量演算部360を用いて分注装置が分注した液体の量を算出する。そして、算出した液体量は記憶部220に保存される。
【0037】
図5は、本実施例1における液量測定のキャリブレーション処理を示すフローチャートである。これは、装置を稼働する前に行う処理であり、この処理で測定されたデータは記憶部220に保存される。装置稼働時は、この処理で保存されたデータに基づいて液量の測定が行われる。
【0038】
本図によれば、制御部111により、分注装置が試料容器100から反応セル104へ試料を分注することを指令されることで処理が開始される。
【0039】
処理が開始されると直ちに、液量測定キャリブレーションモードに遷移する(ステップS101)。
【0040】
ステップS102では、制御部111が試料分注機構106を動作させ、試料容器100に移動させ、プローブ113に試料容器100に格納されている液体を吸引(注入)することを指示する。
【0041】
ステップS103では、制御部111が撮像装置201に反応セル104の様子を撮像することを指示する。これは、試料分注機構106が反応セル104へ液体1000を吐出する前の反応セル104を確認するための画像であり、反応セル104内にコンタミ等の付着物がないかを確認する。
【0042】
ステップS104では、制御部111が試料分注機構106を動作させ、試料容器100から反応セル104に移動させる。そして、プローブ113から反応セル104に液体を吐出することを指示する。ここで、試料容器100から反応セル104へ吐出される液体の量は数μLオーダーと微量である。
【0043】
ステップS105では、制御部111が撮像装置201にプローブ113が反応セル104へ液体1000を吐出する様子を撮像することを指示する。ここで、撮像装置201が撮像を開始するタイミングは、試料分注機構106の状態によって判定する。
【0044】
例えば、圧力センサ116の値をトリガ―にして撮像を開始する。そして、撮像装置201は試料分注機構106が反応セル104への液体の吐出動作が完了するまでは撮像を続ける。
【0045】
ステップS106では、制御部111が液体1000の吐出動作が完了したことを受けて、撮像装置201に撮像の停止を指示する。
【0046】
ステップS107では、撮像装置201が撮像した画像を画像処理部に送信する。
【0047】
ステップS108では、画像処理部211が撮像した画像の中から特徴量を抽出する画像を選択し、選択した画像に基づいて、液体の特徴量を取得する。特徴量とは、液体の形状や輪郭等の情報を指している。液体の形状とは、例えば液体の形に加えて、液体が反応セル104のどこに吐出されているかという情報を示す。輪郭情報とは、例えば吐出した液体の形が回転楕円面の半部であるとき、反応セル104の底面に付着した液体の長半径と短半径と、反応セル104の底面からの液体の高さ等を示す。
【0048】
図6は、撮像装置201が取得した画像の一例を示した図である。本実施例では、反応セル104の側面のみを撮像装置201で撮像した画像400について説明する。
【0049】
反応セル104の側面のみを撮像装置201で撮像した場合、液体の特徴量として取得できる主な情報は、液体1000が反応セル104のどこに吐出されているかという情報と反応セル104の底面からの液体1000の高さ情報である。
【0050】
例えば、画像400は液体1000が反応セル104の底面のみに接触しており、側面には接触していないという情報と反応セル104底面に付着している液体の長さa、反応セル104底面からの液体1000の高さbという情報が取得できる。
【0051】
ここで、液体の特徴量を取得する用の分注画像は、プローブ113が液体1000から離脱する直前の画像を使うことで液体の特徴量が安定して取得することができる。
【0052】
図7は、撮像装置201が取得した画像を時系列順に示した一例の図である。本実施例では、反応セル104の側面を撮像装置201で撮像した例について説明する。反応セル104内に液体1000を吐出している最中の画像510では、プローブ113内に液体1000がまだ残留している状態であるため、最終的な反応セル104内の液体1000の量を測定することは不可能である。
【0053】
その一方で、反応セル104内への液体1000の吐出が完了し、プローブ113が液体1000から離脱した後の画像530は、液体1000が反応セル104の底面に濡れ拡がってしまうため、液体の接触角θが小さくなってしまい液体の形状や輪郭情報を取得することが困難となる。
【0054】
それに対し、反応セル104内への液体1000の吐出が完了しているが、プローブ113が液体1000から離脱していない画像520は、接触角θが大きくなるため液体の形状、輪郭情報の取得が容易となる。
【0055】
反応セル104内への液体1000の吐出が完了しているが、プローブ113が液体1000から離脱していない画像520は、試料分注機構106内の圧力センサ116の値から反応セル104内への液体1000の吐出が完了していることを判定し、制御部111で撮像装置201で取得した画像から、プローブ113と液体1000が離脱した最初の画像をトリガ―にその前の画像を液体の特徴量を取得するための画像として採用することにより、取得できる。
【0056】
ステップS109では、記憶部220に画像処理部211にて取得した液体の特徴量を保存する。
【0057】
ステップS110では、制御部111が試薬分注機構107を動作させ、試薬ディスク103上の試薬容器102に格納されている液体を反応セル104へ分注させる。
【0058】
ステップS111では、制御部111が測定ユニット109を動作させ、試料容器100の液体と試薬容器102の液体が分注された反応セル104に光源を照射する。
【0059】
ステップS112では、制御部111が測定ユニット109を動作させ、信号処理部350から出力された吸光度のデータを演算部に送信する。
【0060】
ステップS113では、液量演算部360にて測定ユニット109から得られた吸光度データに基づいて、反応セル104内に分注された試料容器100の液体の液量を算出する。
【0061】
図8に信号処理部350から出力された吸光度データの一例を示す。反応セル104内の内容物が同じである場合、吸光度のピークができる波長も同じとなる。
【0062】
本実施例では、吸光度は所定の成分の濃度を示しているため、試料容器100の液体の量を測定する場合、反応セル104内に分注された試薬容器102から分注される試薬の量が一定値であれば、試料容器100の液体の量によって液体中に含まれる測定対象成分の濃度が濃くなる。よって、反応セル104内の試薬容器102の液体の量が一定値であれば、吸光度のピークの大きさによって反応セル104内の試料容器100の液体の量を演算できる。
【0063】
ステップS114では、記憶部220に演算部で吸光度のデータから算出した反応セル104内の試料容器100の液体の液量情報を保存する。
【0064】
ステップS115では、記憶部220に保存した液体の特徴量と液体の液量情報を紐づけて、液体量参照データとして再度記憶部に保存する。
【0065】
図9に記憶部に格納した液体量参照データの一例を示す。本実施例では、反応セル104の側面を撮像装置201で撮像し、液体の特徴量として、液体1000の付着位置と形状、輪郭の面積を対象とする。
【0066】
例えば、液体1000は反応セル104の底面のみに付着しており、反応セル104の側面から見て半楕円の形をしている場合、反応セル104底面に付着している長さaと反応セル104底面からの液体の高さbによって輪郭の面積S(=πab)を導出することができる。
【0067】
導出した輪郭の面積Sと液体の液量情報との関係性を保存する。これを繰り返し行うことで、輪郭の面積Sと液量の相対関係を統計的に導出することが可能となる。液体量参照データのサンプルが多いほど測定の精度は増す。
【0068】
画像処理部211で取得した液体の特徴量と演算部212が吸光度のデータに基づいて算出した液体の液量を表示部112に出力させ、処理が終了する。
【0069】
図10は、本実施例1における撮像装置を用いた分注液量測定の方法を示すフローチャートである。
【0070】
制御部111により、分注装置が試料容器100から反応セル104へ試料を分注することを指令されることで処理が開始される。
【0071】
ステップS201では、制御部111が試料分注機構106を動作させ、試料容器100に移動させ、プローブ113から試料容器100に格納されている液体を注入することを指示する。
【0072】
ステップS202では、制御部111が撮像装置201に反応セル104の様子を撮像することを指示する。これは、試料分注機構106が反応セル104へ液体1000を吐出する前の反応セル104を確認するための画像であり、反応セル104内にコンタミ等の付着物がないかを確認する。
【0073】
ステップS203では、制御部111が試料分注機構106を動作させ、試料容器100から反応セル104に移動させる。そして、プローブ113から反応セル104に液体を吐出することを指示する。
【0074】
ステップS204では、制御部111が撮像装置201にプローブ113が反応セル104へ液体1000を吐出する様子を撮像することを指示する。ここで、撮像装置201が撮像を開始するタイミングは、試料分注機構106の状態によって判定する。
【0075】
例えば、圧力センサ116の値をトリガ―にして撮像を開始する。そして、撮像装置201は試料分注機構106が反応セル104への液体の吐出動作が完了するまでは撮像を続ける。
【0076】
ステップS205では、制御部111が液体1000の吐出動作が完了したことを受けて、撮像装置201に撮像の停止を指示する。
【0077】
ステップS206では、撮像装置201が撮像した画像を画像処理部に送信する。
【0078】
ステップS207では、画像処理部211が撮像した画像に基づき、液体の特徴量を取得する。特徴量とは、液体の形状や輪郭等の情報を指している。
【0079】
液体の形状とは、例えば液体の形に加えて、液体が反応セル104のどこに吐出されているかという情報を示す。輪郭情報とは、例えば吐出した液体の形が回転楕円面の半部であるとき、反応セル104の底面に付着した液体の長半径と短半径と、反応セル104の底面からの液体の高さ等を示す。
【0080】
ステップS208では、演算部212が画像処理部211にて取得した液体の特徴量と記憶部220に保存されている液体量参照データと照合し、反応セル104内の試料容器100から分注された液体の量を導出する。
【0081】
ステップS209では、判定部213が制御部111が試料分注機構106に指令した分注量に対して、ステップS208で導出した試料容器100から分注された液体の量が異常値でないかを判定する。
【0082】
異常値でない場合は、画像処理部211で取得した液体の特徴量と、演算部212が導出した液体の液量と、判定部213の結果を表示部112に出力させ、処理が終了する。
【0083】
異常値であった場合、ステップS210に移行する。
【0084】
ステップS210は、ステップS209で判定部213が制御部111が試料分注機構106に指令した分注量に対して、ステップS208で導出した試料容器100から分注された液体の量が異常値と判定した時に行われる。
【0085】
表示部112が、試料分注機構106に分注異常が発生していることを報知する。また、画像処理部211で取得した液体の特徴量と演算部212が導出した液体の液量を表示部112に出力させ、処理が終了する。
【0086】
このように、反応セル104内に吐出される液体1000をプローブ113と液体1000が離脱する直前の画像510を撮像装置201を用いて取得し、取得した画像を用いて液体の形状や輪郭情報等の特徴量を抽出し、この特徴量とあらかじめ記憶部220に格納された液体の特徴量と吸光度のデータから算出した液量情報を紐づけた液体量参照データとをもとに分注された液体の液量を演算することで、数μLオーダーと微量である反応セル104内の液体の分注量を安定して高精度の下にモニタすることができる。
【0087】
これにより自動分析装置10は、分注精度を担保および確認することが可能となり、高品位で信頼性に優れたものとなる。
実施例1では、液体の特徴量を取得する用の分注画像を取得するため、撮像装置201でプローブ113が液体1000から離脱する最初の画像をトリガ―とすることで画像を取得していたが、液面検知センサ120を用いて画像を取得することも可能である。
ステップS301では、制御部111が試料分注機構106を動作させ、試料容器100から反応セル104に移動させる。そして、プローブ113から反応セル104に液体を吐出することを指示する。
ステップS302では、圧力センサ116の値が閾値に達するか否かを判別する。閾値の詳細については後述する。圧力センサ116の値が閾値に達した場合、ステップS303に移行し、達していない場合、再度判別を行う。
プローブ113が液体1000から離脱するときに液面検知センサ120の値は変化する。そのため、液面検知センサ120の値を監視すれば、プローブ113が液体1000から離脱したか否かを判別することが可能である。液面検知センサ120の値が閾値に達した場合、ステップS305に移行し、達していない場合、再度判別を行う。
実施例2によれば、分注機構に既に備わっている液面検知センサ120でプローブ113が液体1000から離脱する判定をすることが可能となり、画像処理部211への負荷を軽減することができ、演算速度を向上することが可能となる。