(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025023763
(43)【公開日】2025-02-17
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/231 20110101AFI20250207BHJP
H04N 21/433 20110101ALI20250207BHJP
【FI】
H04N21/231
H04N21/433
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128195
(22)【出願日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】長坂 正史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164GA02
5C164SA21S
5C164SB13S
5C164SB21S
5C164SB36P
5C164TA05S
5C164UB11S
5C164UB21S
5C164UB38P
(57)【要約】
【課題】右旋円偏波のみを用いて衛星放送3を介してリアルタイム放送用と蓄積放送用の各放送コンテンツを16APSKにより同時送信可能とする送信装置2、及びその受信装置4を提供する。
【解決手段】本発明の送信装置2は、標準規格ISDB-S3に準拠した衛星放送システム1において、リアルタイム放送TLVとは別に蓄積放送用の放送コンテンツファイルを送出制御信号に従ってパケット分割して蓄積放送の放送信号とする蓄積放送TLVに変換し、放送衛星3における1つの衛星中継器で伝送するよう時分割多重した1系列の合成TLVストリームを形成し、16APSKの変調信号を生成して右旋円偏波のアップリンク信号を生成し、衛星放送信号として送信アンテナ2aを用いて放送衛星3に送信する。本発明の受信装置4は、放送衛星3を介して右旋円偏波の当該衛星放送信号を受信し、リアルタイム放送用と蓄積放送用の各放送コンテンツを同時受信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準規格ISDB-S3に準拠した衛星放送システムにおける12GHz帯衛星放送として右旋円偏波のみを利用して放送衛星を介してリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを同時送信する送信装置であって、
所定チャンネルの第1の放送コンテンツをリアルタイム放送で送信するために、誤り訂正符号化処理を施した第1の放送コンテンツのデータをリアルタイム放送の放送信号とするリアルタイム放送TLVとしてTLV形式のパケットを生成して出力する番組送出設備と、
外部入力された蓄積放送で送信するための第2の放送コンテンツの原データに対し受信装置側で復号可能な圧縮符号化処理を施して、蓄積放送用の放送コンテンツファイルを生成するファイル変換部と、
前記第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて、少なくとも第2の放送コンテンツの全内容を記憶する機能を有する大容量ストレージと、
前記番組送出設備からの蓄積放送を送信制御するための送出制御信号に従って、前記大容量ストレージに保存された第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて所定のファイル配信方式によるパケット分割を行い、誤り訂正符号化処理を施した上で、蓄積放送の放送信号とする蓄積放送TLVとしてTLV形式のパケットに変換して出力するファイル送出サーバーと、
前記第1の放送コンテンツに関するリアルタイム放送TLVと前記第2の放送コンテンツに関する蓄積放送TLVとを入力して、前記放送衛星における1つの衛星中継器で伝送するように、それぞれ1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成するTLV多重部と、
前記TLV多重部から入力される1系列の合成TLVストリームについて16APSKの変調処理を施して変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号に対して所定の周波数帯への周波数変換処理及び増幅処理を施して右旋円偏波のアップリンク信号を生成し、衛星放送信号として、所定の送信アンテナを用いて前記放送衛星に送信する高周波部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記TLV多重部は、リアルタイム放送TLV用の特定のチャンネル領域として割り当て可能とするスロットを、前記蓄積放送TLVの伝送領域として置き換えることで前記1系列の合成TLVストリームを形成することを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送信装置から、前記衛星放送システムにおける12GHz帯衛星放送として右旋円偏波のみを利用して前記放送衛星を介して同時送信されたリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを含む前記1系列の合成TLVストリームを含む衛星放送信号を受信する受信装置であって、
ユーザーが指定する放送コンテンツを含む1つ以上の合成TLVストリームを選択し視聴動作を指定するTLVストリーム選択信号に基づいて、前記放送衛星を介して伝送された前記衛星放送信号について中間周波数帯域に周波数変換が施されたIF帯衛星放送信号から、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの双方を含む前記1系列の合成TLVストリームを選択し、前記1系列の合成TLVストリームにおけるリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを誤り訂正復号処理を施した上で分離して出力するTLVストリーム選択部と、
前記TLVストリーム選択部から逐次出力される蓄積放送TLVを蓄積し、前記所定のファイル配信方式によるパケット分割の逆処理を行いながら、第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルを復元して保存する蓄積サーバーと、
前記蓄積サーバーから蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して再構成される蓄積放送TLVと前記TLVストリーム選択部から逐次出力されるリアルタイム放送録画TLVのいずれか一方又は双方を保存するストレージと、
ユーザーが指定する放送コンテンツを視聴要求として選択指定する放送選択信号に応じて、リアルタイム放送TLV、リアルタイム放送録画TLV、及び蓄積放送TLVのうちいずれかで受信したデータを選択し、映像及び音声の圧縮符号化信号に分離して出力するMMT分離部と、
前記放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、前記ストレージに保存したリアルタイム放送録画TLVについてユーザーの選択による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたときは、前記ストレージに保存したリアルタイム放送録画TLVのデータを読み出して前記MMT分離部に出力し、前記放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、前記蓄積サーバーから読み出して前記ストレージに保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたときは、前記蓄積サーバーから蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して蓄積放送TLVを再構成して前記ストレージに保存し、前記ストレージに保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生を行うようにMMT形式の放送コンテンツデータを格納した蓄積放送TLVを読み出してMMT分離部に出力するよう制御する読み出し制御部と、
前記MMT分離部から出力された映像の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器に出力する映像デコーダと、
前記MMT分離部から出力された音声の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器に出力する音声デコーダと、
ユーザー操作に基づいて、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求に対応する信号として、前記TLVストリーム選択信号、前記放送選択信号、及び前記再生信号を送出する操作部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記TLVストリーム選択部は、N(Nは1以上の整数)組のチューナー部、復調部及びTLV分離部を備え、Nに応じた数の合成TLVストリームを受信可能とし、
N(Nは1以上の整数)組のうち少なくとも1つのチューナー部は、前記TLVストリーム選択信号に基づいて、対応する周波数選択を行い、前記1系列の合成TLVストリームの16APSKの変調信号を抽出する機能を有し、
該チューナー部の出力を入力する復調部は、前記1系列の合成TLVストリームの変調信号に対し16APSKの復調処理を施して当該リアルタイム放送TLVと当該蓄積放送TLVとを抽出し、それぞれのTLVパケットのペイロード部分に格納されたデータに対して誤り訂正復号処理を施したリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを生成する機能を有し、
該復調部の出力を入力するTLV分離部は、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを判別して分離し、蓄積放送TLVについては前記蓄積サーバーへ、リアルタイム放送TLVについては前記MMT分離部へ、リアルタイム放送TLVについてリアルタイムに視聴せずに録画するときはリアルタイム放送録画TLVとして蓄積放送TLVとは区別して前記ストレージへ出力する機能を有することを特徴とする、請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記TLVストリーム選択部は、前記TLVストリーム選択信号に基づいて、前記IF帯衛星放送信号から、前記1系列の合成TLVストリームとともに、別系列の合成TLVストリームを選択し、該別系列の合成TLVストリームに係るチャンネルのリアルタイム放送用の放送コンテンツを受信しリアルタイムで視聴可能としながら、前記1系列の合成TLVストリームの同時受信を行うために、N>1としたN系列の合成TLVストリームを受信可能とするN(N>1)組のチューナー部、復調部及びTLV分離部を備えることを特徴とする、請求項4に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送を介してリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを同時送信可能とする送信装置、及びその受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
西暦2000年からデジタル化して開始されている現行の衛星放送は12GHz帯の電波を用いており、その12GHz帯の衛星放送信号は衛星放送用の受信アンテナを介して受信された後、同軸ケーブルを用いて宅内配信システムへと送出し受信装置まで伝送される。そして、安定した受信伝送のために、衛星放送用の受信アンテナに対してコンバータ(LNB:Low noise block converter)が設けられ、衛星放送信号の放送用周波数を中間周波数(IF)帯域に周波数変換するようになっている。
【0003】
また、東経110度静止軌道上から送信される衛星放送は、現状、BSデジタル放送(以下、「BS」と略す。)と広帯域CSデジタル放送(以下、「CS」と略す。)がある。
【0004】
衛星放送サービスの沿革について概略説明するに、従来の衛星放送サービス(BS/CS)は、11.70~12.75GHz(12GHz帯)の電波を用いており、従来の偏波は右旋円偏波(以下、「右旋」とも略す。)のみが使われていた。
【0005】
そして、西暦2018年に、超高精細映像と22.2マルチチャンネルの立体音響から成るスーパーハイビジョン(4K・8K)の放送コンテンツを伝送可能とする衛星放送サービス(以下、「新4K8K衛星放送」と略す。)が、世界に先駆けて日本で開始された。この新4K8K衛星放送では、左旋円偏波(以下、「左旋」とも略す。)の利用も始まった。右旋と左旋は直交関係にあるため、左旋は、右旋と同じ周波数で別の放送コンテンツを送信することができ、周波数の有効利用が可能となる。
【0006】
新4K8K衛星放送では、新しい衛星伝送方式のISDB-S3が採用された。ISDB-S3はARIB標準規格STD-B44で規定されており、実用形態では変調方式に16APSK(Amplitude Phase Shift Keying)を用いることで、1衛星中継器の伝送容量は100Mbpsに拡大した。
【0007】
これらの衛星放送サービスでは、1つの衛星中継器をスロットと呼ばれる単位で時分割多重した1系列の合成TLVストリームにより、同時に複数の放送コンテンツを放送することができる。ISDB-S3では、仕様上、1衛星中継器を用いて伝送する1系列の合成TLVストリームとして、1フレームあたり120スロットに分割し、5スロット単位で複数の放送コンテンツを割り当てることができるようになっている。
【0008】
ただし、新4K8K衛星放送のうち8K衛星放送では、左旋用の衛星中継器を1つ占有しており、即ち120スロットを使用しており、その伝送容量は100Mbpsである。
【0009】
一方、新4K8K衛星放送のうち4K衛星放送では、1つの衛星中継器で複数の放送コンテンツが同時に提供され、1放送コンテンツは40スロットを使用しており、即ち、1つの衛星中継器で4K衛星放送として同時に最大3つの放送コンテンツを伝送可能としている。尚、4K衛星放送は右旋と左旋で行われている。
【0010】
ところで、これらの衛星放送サービスは、12GHz帯を用いるため同軸ケーブルの減衰が大きく、そのままの周波数で宅内に伝送することは難しい。このため、衛星放送用の受信アンテナのコンバータで中間周波数(IF)に変換しており、ARIB標準規格STD-B63にて望ましいとされるIF帯域が示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
より具体的には、右旋IFには1032.23MHz~2070.25MHz、左旋IFには2224.41MHz~3223.25MHzが望ましいとされ、このように左旋IFは右旋IFに比べて高い周波数に設定されている。そのため、従来からある右旋IF用の宅内配信システムでは、左旋の衛星放送を受信することができない。つまり、8K衛星放送は左旋のみで放送されていることから、8K衛星放送を視聴するためには左旋IFに対応した宅内配信システムを新たに導入する必要がある。
【0012】
この問題を解決する一手法として、右旋で8K衛星放送のリアルタイム放送を行うことが考えられ、この場合では従来の宅内配信システムを利用できる。ただし、8K衛星放送の伝送容量は100Mbpsであり、衛星中継器を1つ占有するため、右旋用の衛星中継器を8K衛星放送用に1つ確保する必要性が生じる。しかし、右旋用の衛星中継器は全て既存の放送コンテンツの伝送で使用されており、空きがないことから実現性に乏しい。
【0013】
別手法として、変調方式に32APSKを用いれば、1衛星中継器あたりの伝送容量を16APSKの約1.2倍に拡大することができ、4K衛星放送には同時に最大4つの放送コンテンツを伝送することができる。そして、衛星中継器のチャンネル割り当てを整理することで、8K衛星放送に右旋用の衛星中継器を確保することができる。しかし、16APSKから32APSKへとより多値化することで所要C/Nが増加し、降雨マージンが減少することから実現性に乏しい。特に、開口径45cmの一般的な衛星放送用の受信アンテナでは、十分な衛星放送受信に係るサービス時間率が確保できない。
【0014】
このため、右旋円偏波のみを用いて衛星放送を介して8K衛星放送に係る放送コンテンツを16APSKにより送信及び受信可能とする新たな技法が望まれる。そこで、蓄積放送を利用する形態が考えられる。
【0015】
例えば、TLV(Type Length Value)を利用し、放送衛星を介する衛星放送伝送路を用いて蓄積放送用の放送コンテンツをダウンロードする受信装置が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0016】
また、ネットワーク上のサーバーから、地上波や衛星波などにより過去に放送された放送コンテンツに対応するデータを蓄積放送用の放送コンテンツとしてダウンロード可能とする受信装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0017】
また、過去に放送された衛星放送用の放送コンテンツを蓄積し、その放送時刻や放送チャンネルに応じた仮想チャンネルを設定して、後発的に視聴者が希望する蓄積した放送コンテンツを視聴可能とする受信装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0018】
尚、全国向けの衛星放送について、特定地域向けのCM等の内容に差し替えて受信可能とすることで放送サービスの個別化を図るために、視聴者(ユーザー)によって指定される郵便番号に対応する内容(特定地域向けのCM等)に差し替わるように制御する端末装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003-284034号公報
【特許文献2】特開2006-50426号公報
【特許文献3】特許第3452509号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】“高度広帯域衛星デジタル放送用受信装置(望ましい仕様) 標準規格 ARIB STD-B63 1.10版”、2022年10月6日改定
【非特許文献2】“デジタル放送におけるダウンロード方式 標準規格 ARIB STD-B45 3.0版”、2014年 3月18日改定
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、西暦2018年に開始された新4K8K衛星放送における8K衛星放送は、左旋円偏波(左旋)のみで放送されていることから、8K衛星放送を視聴するためには左旋IFに対応した宅内配信システムを新たに導入する必要がある。つまり、従来からある右旋IF用の宅内配信システムでは、左旋IFに対応していないため、左旋の衛星放送を受信することができない。
【0022】
この問題を解決する一手法として、上述したように、右旋で8K衛星放送のリアルタイム放送を行うことが考えられるが、衛星中継器を1つ占有するため、右旋用の衛星中継器は全て既存の放送コンテンツの伝送で使用されており、空きがないことから実現性に乏しい。
【0023】
別手法として、上述したように、変調方式に32APSKを用いれば、1衛星中継器あたりの伝送容量を拡大することができ、8K衛星放送用に右旋の衛星中継器を確保することができる。しかし、16APSKから32APSKへとより多値化することで所要C/Nが増加し、降雨マージンが減少してしまい、十分な衛星放送受信に係るサービス時間率が確保できない。
【0024】
このため、右旋円偏波のみを用いて衛星放送を介して8K衛星放送に係る放送コンテンツを16APSKにより送信及び受信可能とする新たな技法が望まれる。そこで、蓄積放送を利用する形態が考えられる。
【0025】
ここで、非特許文献2には、TLVを利用し、衛星中継器を介する放送伝送路を用いて蓄積放送用の放送コンテンツをダウンロードする受信装置が開示されている。この非特許文献2に開示される構成は、視聴者(ユーザー)によるユーザーリクエストや予め定められた配信スケジュール情報に基づいてダウンロードする日時を決定し、逐次ダウンロード処理を行う技術である。よって、非特許文献2に開示される受信装置では、視聴者(ユーザー)は、当該蓄積放送用の放送コンテンツを、当該リアルタイム放送用の放送コンテンツと同時に受信して視聴することができず、予めダウンロードする日時が決定されたときしか視聴できない。
【0026】
また、特許文献1には、ネットワーク上のサーバーから、地上波や衛星波などにより過去に放送された放送コンテンツに対応するデータを蓄積放送用の放送コンテンツとしてダウンロード可能とする受信装置が開示されている。この特許文献1に開示される構成は、視聴者(ユーザー)が利用する受信装置と当該サーバーとの通信回線(インターネット等)との接続が必須である。よって、特許文献1に開示される受信装置では、視聴者(ユーザー)は、衛星放送のみでは蓄積放送用の放送コンテンツを視聴できない。
【0027】
また、特許文献2には、過去に放送された衛星放送用の放送コンテンツを蓄積し、その放送時刻や放送チャンネルに応じた仮想チャンネルを設定して、後発的に視聴者が希望する蓄積した放送コンテンツを視聴可能とする受信装置が開示されている。この特許文献2に開示される構成は、過去に放送された衛星放送用の放送コンテンツを蓄積し視聴可能とする形態である。よって、特許文献2に開示される受信装置では、視聴者(ユーザー)は、過去にリアルタイム放送で放送された放送コンテンツしか視聴できず、リアルタイム放送として未放送の放送コンテンツを視聴することはできない。
【0028】
尚、特許文献3には、特定地域向けのCM等の内容に差し替えて受信可能とすることで放送サービスの個別化を図るために、視聴者(ユーザー)によって指定される郵便番号に対応する内容(特定地域向けのCM等)に差し替わるように制御する端末装置が開示されている。この特許文献3に開示される構成は、郵便番号等のユーザー情報に基づき、ユーザーごとに個別化した番組(CMなど)を再生する技術である。よって、特許文献3に開示される受信装置では、視聴者(ユーザー)は、郵便番号等のユーザー情報の設定を要し、蓄積放送の用途への転用には向いていない。
【0029】
このため、蓄積放送を利用するとしても、右旋円偏波のみを用いて衛星放送を介してリアルタイム放送用と蓄積放送用の各放送コンテンツを16APSKにより同時に送信及び受信する技法が望まれる。
【0030】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、右旋円偏波のみを用いて衛星放送を介してリアルタイム放送用と蓄積放送用の各放送コンテンツを16APSKにより同時送信可能とする送信装置、及びその受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の送信装置は、標準規格ISDB-S3に準拠した衛星放送システムにおける12GHz帯衛星放送として右旋円偏波のみを利用して放送衛星を介してリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを同時送信する送信装置であって、所定チャンネルの第1の放送コンテンツをリアルタイム放送で送信するために、誤り訂正符号化処理を施した第1の放送コンテンツのデータをリアルタイム放送の放送信号とするリアルタイム放送TLVとしてTLV形式のパケットを生成して出力する番組送出設備と、外部入力された蓄積放送で送信するための第2の放送コンテンツの原データに対し受信装置側で復号可能な圧縮符号化処理を施して、蓄積放送用の放送コンテンツファイルを生成するファイル変換部と、前記第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて、少なくとも第2の放送コンテンツの全内容を記憶する機能を有する大容量ストレージと、前記番組送出設備からの蓄積放送を送信制御するための送出制御信号に従って、前記大容量ストレージに保存された第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて所定のファイル配信方式によるパケット分割を行い、誤り訂正符号化処理を施した上で、蓄積放送の放送信号とする蓄積放送TLVとしてTLV形式のパケットに変換して出力するファイル送出サーバーと、前記第1の放送コンテンツに関するリアルタイム放送TLVと前記第2の放送コンテンツに関する蓄積放送TLVとを入力して、前記放送衛星における1つの衛星中継器で伝送するように、それぞれ1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成するTLV多重部と、前記TLV多重部から入力される1系列の合成TLVストリームについて16APSKの変調処理を施して変調信号を生成する変調部と、前記変調信号に対して所定の周波数帯への周波数変換処理及び増幅処理を施して右旋円偏波のアップリンク信号を生成し、衛星放送信号として、所定の送信アンテナを用いて前記放送衛星に送信する高周波部と、を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の送信装置において、前記TLV多重部は、リアルタイム放送TLV用の特定のチャンネル領域として割り当て可能とするスロットを、前記蓄積放送TLVの伝送領域として置き換えることで前記1系列の合成TLVストリームを形成することを特徴とする。
【0033】
更に、本発明の受信装置は、本発明の送信装置から、前記衛星放送システムにおける12GHz帯衛星放送として右旋円偏波のみを利用して前記放送衛星を介して同時送信されたリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを含む前記1系列の合成TLVストリームを含む衛星放送信号を受信する受信装置であって、ユーザーが指定する放送コンテンツを含む1つ以上の合成TLVストリームを選択し視聴動作を指定するTLVストリーム選択信号に基づいて、前記放送衛星を介して伝送された前記衛星放送信号について中間周波数帯域に周波数変換が施されたIF帯衛星放送信号から、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの双方を含む前記1系列の合成TLVストリームを選択し、前記1系列の合成TLVストリームにおけるリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを誤り訂正復号処理を施した上で分離して出力するTLVストリーム選択部と、前記TLVストリーム選択部から逐次出力される蓄積放送TLVを蓄積し、前記所定のファイル配信方式によるパケット分割の逆処理を行いながら、第2の放送コンテンツに関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルを復元して保存する蓄積サーバーと、前記蓄積サーバーから蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して再構成される蓄積放送TLVと前記TLVストリーム選択部から逐次出力されるリアルタイム放送録画TLVのいずれか一方又は双方を保存するストレージと、ユーザーが指定する放送コンテンツを視聴要求として選択指定する放送選択信号に応じて、リアルタイム放送TLV、リアルタイム放送録画TLV、及び蓄積放送TLVのうちいずれかで受信したデータを選択し、映像及び音声の圧縮符号化信号に分離して出力するMMT分離部と、前記放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、前記ストレージに保存したリアルタイム放送録画TLVについてユーザーの選択による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたときは、前記ストレージに保存したリアルタイム放送録画TLVのデータを読み出して前記MMT分離部に出力し、前記放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、前記蓄積サーバーから読み出して前記ストレージに保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたときは、前記蓄積サーバーから蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して蓄積放送TLVを再構成して前記ストレージに保存し、前記ストレージに保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生を行うようにMMT形式の放送コンテンツデータを格納した蓄積放送TLVを読み出してMMT分離部に出力するよう制御する読み出し制御部と、前記MMT分離部から出力された映像の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器に出力する映像デコーダと、前記MMT分離部から出力された音声の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器に出力する音声デコーダと、ユーザー操作に基づいて、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求に対応する信号として、前記TLVストリーム選択信号、前記放送選択信号、及び前記再生信号を送出する操作部と、を備えることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の受信装置において、前記TLVストリーム選択部は、N(Nは1以上の整数)組のチューナー部、復調部及びTLV分離部を備え、Nに応じた数の合成TLVストリームを受信可能とし、N(Nは1以上の整数)組のうち少なくとも1つのチューナー部は、前記TLVストリーム選択信号に基づいて、対応する周波数選択を行い、前記1系列の合成TLVストリームの16APSKの変調信号を抽出する機能を有し、該チューナー部の出力を入力する復調部は、前記1系列の合成TLVストリームの変調信号に対し16APSKの復調処理を施して当該リアルタイム放送TLVと当該蓄積放送TLVとを抽出し、それぞれのTLVパケットのペイロード部分に格納されたデータに対して誤り訂正復号処理を施したリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを生成する機能を有し、該復調部の出力を入力するTLV分離部は、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを判別して分離し、蓄積放送TLVについては前記蓄積サーバーへ、リアルタイム放送TLVについては前記MMT分離部へ、リアルタイム放送TLVについてリアルタイムに視聴せずに録画するときはリアルタイム放送録画TLVとして蓄積放送TLVとは区別して前記ストレージへ出力する機能を有することを特徴とする。
【0035】
また、本発明の受信装置において、前記TLVストリーム選択部は、前記TLVストリーム選択信号に基づいて、前記IF帯衛星放送信号から、前記1系列の合成TLVストリームとともに、別系列の合成TLVストリームを選択し、該別系列の合成TLVストリームに係るチャンネルのリアルタイム放送用の放送コンテンツを受信しリアルタイムで視聴可能としながら、前記1系列の合成TLVストリームの同時受信を行うために、N>1としたN系列の合成TLVストリームを受信可能とするN(N>1)組のチューナー部、復調部及びTLV分離部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、8K衛星放送に対する衛星中継器の柔軟な割り当てが可能となり、衛星放送の番組数を増加させることもできるようになる。また、右旋円偏波での8K衛星放送が可能となり、従来の右旋IFのみに対応した受信設備でも8K衛星放送の受信・視聴が可能となる。また、本発明によれば、映像デコーダ及び音声デコーダは、既存の8K衛星放送受信用のものと同じものを活用できる。そのため、本発明に係る受信装置を低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による一実施形態の衛星放送システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明による一実施形態の衛星放送システムにおける送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システムに係る合成TLVスロットの構成と、合成TLVストリームのフレームフォーマットを例示する図である。
【
図4】本発明による一実施形態の衛星放送システムにおける受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】(a),(b)は、それぞれ従来技術から想定されるスロット割り当てによる受信例(N=1のとき)を説明する図である。
【
図6】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システムに係るスロット割り当てによる第1の受信例(N=1のとき)を説明する図である。
【
図7】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システムに係るスロット割り当てによる第2の受信例(N>1のとき)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
〔衛星放送システム〕
図1は、本発明による一実施形態の衛星放送システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示す衛星放送システム1は、新4K8K衛星放送の標準規格ISDB-S3(ARIB標準規格STD-B44)に準拠したものであるが、12GHz帯衛星放送として右旋円偏波のみを利用して衛星放送伝送路経由で4K8K衛星放送に係る放送コンテンツを信号伝送するように構成される。より具体的に、衛星放送システム1は、送信アンテナ2aを用いて4K8K衛星放送に係るアップリンク信号を放送衛星3に送信する送信装置2、そのアップリンク信号をダウンリンク信号へと変換して中継する放送衛星3、及び受信アンテナ4aを用いて4K8K衛星放送に係るダウンリンク信号を放送衛星3から受信する受信装置4を備える。
【0039】
本発明による一実施形態の送信装置2は、リアルタイム放送、及び蓄積放送に関して1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数(120スロット)のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成する。そして、送信装置2は、当該1系列の合成TLVストリームについて変調方式を16APSKとして変調処理を施し、17GHz帯右旋円偏波のアップリンク信号を衛星放送信号として生成して送信アンテナ2aを用いて放送衛星3に送信する。
【0040】
放送衛星3は、新4K8K衛星放送の標準規格ISDB-S3(ARIB標準規格STD-B44)に準拠した12GHz帯衛星放送に用いられるものであり、複数系列の合成TLVストリーム数に応じて稼働する所定数の衛星中継器(図示略)を備える。放送衛星3は、送信装置2によって生成された17GHz帯右旋円偏波のアップリンク信号を受信して、12GHz帯右旋円偏波のダウンリンク信号へと変換し衛星放送信号として受信装置4に向けて放射することで、中継伝送する。尚、1つの衛星中継器に対して1系列の合成TLVストリームが割り当てられる。
【0041】
本発明による一実施形態の受信装置4は、受信アンテナ4aを用いて放送衛星3から放射された12GHz帯右旋円偏波のダウンリンク信号を衛星放送信号として受信して復調し、当該1系列の合成TLVストリームを取得する。そして、受信装置4は、取得した当該1系列の合成TLVストリームを基に、4K衛星放送の放送コンテンツをリアルタイム放送で、8K衛星放送の放送コンテンツを蓄積放送で視聴可能とする。
【0042】
以下、より具体的に、本発明による一実施形態の衛星放送システム1における送信装置2、及び受信装置4の構成について説明する。
【0043】
〔送信装置〕
図2は、本発明による一実施形態の衛星放送システム1における送信装置2の概略構成を示すブロック図である。
図2に示す送信装置2は、右旋円偏波の12GHz帯衛星放送として、4K衛星放送の放送コンテンツをリアルタイム放送で、8K衛星放送の放送コンテンツを蓄積放送で同時送信可能とするように構成され、番組送出設備20と、ファイル変換部21と、大容量ストレージ22と、ファイル送出サーバー23と、TLV多重部24と、変調部25と、高周波部26と、を備える。
【0044】
番組送出設備20は、所定チャンネルの第1の放送コンテンツ(4K衛星放送)をリアルタイム放送で送信するために、誤り訂正符号化処理を施した第1の放送コンテンツのデータをリアルタイム放送の放送信号とするTLV(Type Length Value)形式のパケット(以下、「TLVパケット」とも称し、特にリアルタイム放送のTLVパケットを「リアルタイム放送TLV」とも称する。)を生成し、TLV多重部24に出力する。尚、番組送出設備20を含む送信装置2は、放送局によって衛星放送の放送番組のために管理・運営される。
【0045】
ここで、ARIB標準規格STD-B44(ISDB-S3)で規定されている「新4K8K衛星放送」の放送信号はTLVであり、本発明に係る当該リアルタイム放送の放送信号として用いるTLV形式のパケットも、ARIB標準規格STD-B44(ISDB-S3)で規定されているものと同一形式である。また、ARIB標準規格STD-B44(ISDB-S3)では、ARIB標準規格STD-B10に規定される「デジタル放送に使用する番組配列情報」、及びARIB標準規格STD-B60に規定される「デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式」を準拠することが規定されており、MMT形式の放送コンテンツデータをTLV形式のパケットで伝送することで、蓄積放送の放送信号として用いることができる。尚、TLV形式のパケットに格納されるMMT形式のデータは、MMTP(MMT Protocol)パケットに格納した上で、IP(Internet Protocol)パケットで伝送可能となっている。加えて、ARIB標準規格STD-B60では、送信装置2が、所定のMMTPパケットにMMT-SI(MMT-Signaling Information)として規定する各種のメッセージ(制御情報としてのPA(Package Access)メッセージや番組配列情報を伝送するためのM2セクションメッセージ等)を記述したTLVパケットを、伝送する合成TLVストリームに周期的に多重伝送できるように規定され、受信装置4側では衛星放送伝送路経由で合成TLVストリームに関する番組配列情報を取得できる。
【0046】
ファイル変換部21は、エンコーダとして機能するものであり、蓄積放送事業者から得られる外部入力された蓄積放送で送信するための蓄積放送用の第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)の原データ(映像及び音声の圧縮符号化前の原信号)に対し受信装置4側で復号可能な圧縮符号化処理を施して、蓄積放送用の放送コンテンツファイルを生成し、大容量ストレージ22に保存する。ここで、当該蓄積放送用の放送コンテンツファイルのファイル形式及びディレクトリ構造は、送信装置2及び受信装置4間で予め定められたものとなっており、即ち受信装置4で再生可能な形式及び構造に合わせたものとなっている。
【0047】
大容量ストレージ22は、第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて、少なくとも第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)の全内容を記憶する機能を有し、例えば複数のハードディスク等で実現できる。
【0048】
ファイル送出サーバー23は、番組送出設備20からの蓄積放送を送信制御するための送出制御信号に従って、大容量ストレージ22に保存された第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルについて、所定のファイル配信方式によるパケット分割を行い、誤り訂正符号化処理を施した上で、蓄積放送の放送信号とするTLV形式のパケット(以下、「蓄積放送TLV」とも称する。)に変換し、TLV多重部24に出力する。ファイルのパケット分割に用いる当該所定のファイル配信方式には、例えば、単一方向のファイル配信方式であるFLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport)を用いることができる。また、蓄積放送用の放送コンテンツファイルに関する蓄積放送TLVの送出タイミングは、衛星放送の放送番組を管理・運営する放送局が定めた放送スケジュールに従って、番組送出設備20によって生成された送出制御信号に従う。
【0049】
TLV多重部24は、第1の放送コンテンツ(4K衛星放送)に関するリアルタイム放送TLVと第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送TLVとを入力して、放送衛星3における1つの衛星中継器で伝送するように、それぞれ1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数(120スロット)のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成し、変調部25に出力する。
【0050】
図3(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システム1に係る合成TLVスロットの構成と、合成TLVストリームのフレームフォーマットを例示する図である。まず、
図3(a)に示すように、リアルタイム放送TLV及び蓄積放送TLVに係るTLVパケットは、4バイト長のTLVヘッダと、データを格納するTLVパケットペイロードから構成される。TLVヘッダは、パケットタイプフィールド(タイプ識別を示す1バイトと、タイプ(Type)を示す1バイト)と、パケット長さフィールド(length)を示す2バイトから構成される。
【0051】
図3(a)に示すように、合成TLVスロットは、スロットヘッダ、主信号、TMCC基本情報、TMCC伝送情報又はNULLの領域を有し、その主信号の領域には、複数のTLVパケットが格納され、合成TLVスロットを構成するTLVパケットにおけるパケットタイプフィールドにおけるタイプ識別には“0x71”が付与される。尚、0xは16進数であることを意味する。本発明に係る構成では、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを、それぞれ1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節して時分割多重する構成としているため、各スロット内ではリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVが混在することはないようにしている。リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの各TLVパケットペイロード部分には、リアルタイム放送用及び蓄積放送用にそれぞれ誤り訂正符号化されたデータが格納される。リアルタイム放送用及び蓄積放送用の誤り訂正符号化処理は、ARIB標準規格STD-B44で規定されているものと同一形式である。
【0052】
また、
図3(b)に示すように、合成TLVストリームは、120スロットで1フレームが構成され、受信装置4側における復調・復号に必要な制御信号(即ち、TMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)基本情報やTMCC伝送情報を記述したTMCC信号)も付加される。ここで、
図3(b)のスロット♯120に例示するように、5スロットに1つの割合(スロット♯5,♯10,…♯120)、ダミースロットが割り当てられる。
【0053】
1系列の合成TLVストリームは、TMCC信号におけるTMCC伝送情報に含まれるTLVストリームIDを用いて特定することができる。尚、TMCC基本情報は、1スロットあたり35バイトの情報で完結しており、2フレーム先行して伝送されるため、このTMCC基本情報のみを抽出できるような同期信号、120スロットにおける先頭スロットを識別するためのフラグ、120スロット分のスロットカウンタ等の情報が付与される。また、TMCC伝送情報は、1スロット目から8スロット目までに配置され、1スロットあたり最大165バイトの情報で完結しており、2フレーム先行して伝送され、復調(本例では16APSKの復調)・復号(本例では誤り訂正復号、及び合成TLVストリームID等)に必要な情報が記述される。
【0054】
そして、合成TLVストリームには、TLV多重化方式の制御情報(TLV-SI)を記述したTLVパケットが周期的に挿入され、このTLV-SIには各放送サービスの物理チャンネルを特定する周波数やサービスリスト記述子など衛星放送伝送路に関する制御情報を記述したTLV-NIT(Network Information Table)等が記述される。TLV-NITのサービスリスト記述子は、ARIB標準規格STD-B32で規定されており、受信装置4側で、このサービスリスト記述子を参照することで、リアルタイム放送のみの合成TLVストリームであるか、蓄積放送を含む合成TLVストリームであるかを判別できるようにすることができる。例えば、サービスリスト記述子が0x01なら「テレビジョン放送」(即ち、リアルタイム放送)として識別でき、0xC1ならば「TLVを用いた蓄積放送」(即ち、蓄積放送)を含むとして識別できる。ここで、合成TLVストリームにおける1フレームのいずれのスロットに蓄積放送TLVが含まれているかについては、リアルタイム放送の所定のチャンネルの放送コンテンツに置き換えて蓄積放送の放送コンテンツを割り当てる態様であれば、当該0xC1を参照することにより通常の選局動作で識別できる。ただし、蓄積放送に対して、送信装置2側で、1フレームのいずれのスロットに蓄積放送TLVを割り当てるかを可変的に指定できるようにする場合では、合成TLVストリームにおける1フレームのいずれのスロットに蓄積放送TLVが含まれているかも識別できるように、サービスリスト記述子において現在未定義の0xC3~0xFFのうちいずれかの記述子を新規に割り当てるようにするのが好ましい。
【0055】
ところで、第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送に要する時間は、第1の放送コンテンツ(4K衛星放送)に関するリアルタイム放送の情報レートX[Mbps]と第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送の伝送容量Y[Mbps]の比にリアルタイムの放送時間(Z時間)を掛けたものであり、(X/Y)×Z[時間]と表すことができる。例えば、1時間の8K衛星放送の放送コンテンツ(情報レート100[Mbps])を伝送容量50[Mbps]の蓄積放送で送信する場合、放送に要する時間は2時間である。
【0056】
従って、実時間(リアルタイムの放送時間)よりも長い時間をかけて伝送する蓄積放送は、衛星放送の伝送容量を超える情報レートのコンテンツを放送することができる。そこで、本実施形態における送信装置2では、上述したように、ファイル送出サーバー23が、番組送出設備20からの蓄積放送を送信制御するための送出制御信号に従って、蓄積放送TLVを生成し出力するようにしている。また、TLV多重部24により、
図6及び
図7を参照して第1及び第2の受信例を後述するが、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVについて、放送衛星3における1つの衛星中継器で伝送するように、それぞれ1フレームに対しスロット数で二つ以上に分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数(120スロット)のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成し、変調部25に出力するようにしている。
【0057】
変調部25は、TLV多重部24から入力される当該1系列の合成TLVストリームについて16APSKの変調処理を施して変調信号を生成し、高周波部26に出力する。
【0058】
高周波部26は、変調部25から入力される当該1系列の合成TLVストリームに関する変調信号に対して所定の周波数帯(17GHz帯)への周波数変換処理及び増幅処理を施して17GHz帯右旋円偏波のアップリンク信号を生成し、衛星放送信号として、送信アンテナ2aを用いて放送衛星3に送信する。
【0059】
尚、放送衛星3は、少なくとも右旋円偏波に係る12チャンネル分のリアルタイム放送の放送コンテンツを同時中継伝送可能とするために、事実上、常時空きの或る衛星中継器は存在していない。また、放送衛星3の現行運用では、リアルタイム放送の放送コンテンツとして最大3チャンネル分を割り当てた1系列の合成TLVストリームを1つの衛星中継器に割り当てることができるが、1つの衛星中継器は1系列の合成ストリームあたり1チャンネル分のリアルタイム放送の放送コンテンツで稼働することもある。そこで、本発明に係る送信装置2は、右旋円偏波のみで、従来からのリアルタイム放送TLVのみからなる1系列の合成TLVストリームとは別に、上述したリアルタイム放送TLV(4K衛星放送)と、蓄積放送TLV(8K衛星放送)とを含む1系列の合成TLVストリームを形成するものとしている。さらに、送信装置2は、これら複数系列の合成TLVストリームに対応する複数系列のアップリンク信号を放送衛星3におけるそれぞれ別個の衛星中継器に割り当てるようにして同時送信する衛星放送信号を生成し、送信アンテナ2aを用いて放送衛星3に送信することができる。また、送信装置2は、本発明に係るリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを含む1系列の合成TLVストリームを1本のみ形成する場合に限定する必要はなく複数本を同時伝送するよう形成することもできる。
【0060】
〔受信装置〕
図4は、本発明による一実施形態の衛星放送システム1における受信装置4の概略構成を示すブロック図である。
図4に示す受信装置4は、右旋円偏波の12GHz帯衛星放送として、4K衛星放送の放送コンテンツをリアルタイム放送で、8K衛星放送の放送コンテンツを蓄積放送で同時受信可能とするように構成され、コンバータ40と、TLVストリーム選択部41と、蓄積サーバー43と、ストレージ44と、MMT分離部45と、読み出し制御部46と、映像デコーダ47と、音声デコーダ48と、操作部49と、を備える。
【0061】
コンバータ40は、受信アンテナ4aを用いて放送衛星3から放射されたダウンリンク信号(即ち、衛星放送信号)を受信し、中間周波数(IF)帯域に周波数変換を施してIF帯衛星放送信号を生成し、TLVストリーム選択部41に出力する。尚、コンバータ40について、受信アンテナ4aに内蔵されているときは、受信装置4自体がコンバータ40を備える必要はない。
【0062】
TLVストリーム選択部41は、操作部49を介してユーザーが指定する放送コンテンツを含む1つ以上の合成TLVストリームを選択し視聴動作を指定するTLVストリーム選択信号に基づいて、コンバータ40から入力されるIF帯衛星放送信号から、当該TLVストリーム選択信号に対応する合成TLVストリームを選択的に出力する機能部である。特に、本発明に係るTLVストリーム選択部41は、TLVストリーム選択信号に基づいて、コンバータ40から入力されるIF帯衛星放送信号からリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの双方を含む当該1系列の合成TLVストリームを選択し、当該1系列の合成TLVストリームにおけるリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを誤り訂正復号処理を施した上で分離して、蓄積放送TLVについては蓄積サーバー43へ、リアルタイム放送TLVについてはMMT分離部45へ、更に、リアルタイム放送TLVについてリアルタイムに視聴せずに録画するときはリアルタイム放送録画TLVとして蓄積放送TLVとは区別してストレージ44へ出力する。
【0063】
より具体的に、TLVストリーム選択部41は、N(Nは1以上の整数)組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備え、Nに応じた数の合成TLVストリームを受信可能としている。例えば、N=1であれば1系列の合成TLVストリームを受信可能とし、N>1であればNに応じた複数系列の合成TLVストリームを受信可能とすることを意味している。即ち、N=1であれば本発明に係るリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの双方を含む1系列の合成TLVストリーム、又はそれ以外の既存のリアルタイム放送TLVのみからなる1系列の合成TLVストリーム、について選択的に受信可能である。N>1であればNに応じて本発明に係る1系列又は複数系列の合成TLVストリーム、又はそれ以外の既存の1系列又は複数系列の合成TLVストリーム、或いはこれらの組み合わせの複数系列の合成TLVストリーム、について選択的に同時受信可能となる。
【0064】
従って、N≧1であれば、少なくとも本発明に係るリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVの双方を含む1系列の合成TLVストリームを選択的に受信可能であり、N>1であれば本発明に係る1系列の合成TLVストリームを受信しながら、それ以外の別系列の合成TLVストリームを同時受信することができる。尚、12GHz帯右旋のBSのチャンネル数は12であるため、Nの最大値は12とすることができる。以下では、主として、本発明に係る1系列の合成TLVストリームを選択受信する例を説明する。
【0065】
つまり、N(Nは1以上の整数)組のうち少なくとも1つのチューナー部42aは、コンバータ40から入力されるIF帯衛星放送信号から、操作部49を介してユーザーが指定する第1の放送コンテンツ(4K衛星放送)に関するリアルタイム放送TLVと第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送TLVの双方を含む合成TLVストリームを選択するTLVストリーム選択信号に基づいて、対応する周波数選択(選局)を行い、当該合成TLVストリームの変調信号(16APSK)を抽出して対応する復調部42bに出力する。コンバータ40とチューナー部42aとの接続は、一般的に適宜に分配器を介して同軸ケーブルで接続されるが、ARIB標準規格STD-B63では光信号による入力も規定されており、光ファイバケーブルで接続された分配器が用いられるとしてもよい。
【0066】
当該チューナー部42aの出力を入力する復調部42bは、当該合成TLVストリームの変調信号に対し16APSKの復調処理を施して当該リアルタイム放送TLVと当該蓄積放送TLVとを抽出し、それぞれのTLVパケットのペイロード部分に格納されたデータに対して誤り訂正復号処理を施したリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを生成して、対応するTLV分離部42cに出力する。誤り訂正復号処理に必要な情報は、ARIB標準規格STD-B44で規定されている既存の方法と同様に、予め2フレーム先行して受信していた当該合成TLVストリームのTMCC信号から得られる。
【0067】
当該復調部42bの出力を入力するTLV分離部42cは、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを判別して分離し、蓄積放送TLVについては蓄積サーバー43へ、リアルタイム放送TLVについてはMMT分離部45へ、更に、リアルタイム放送TLVについてリアルタイムに視聴せずに録画するときはリアルタイム放送録画TLVとして蓄積放送TLVとは区別してストレージ44へ出力する。尚、リアルタイム放送TLVについてリアルタイムに視聴するか、リアルタイム放送録画TLVとしてストレージ44へ出力するかは、TLVストリーム選択信号により識別されるようになっている。
【0068】
尚、TLVストリーム選択部41は、上述したように、TLV-NITのサービスリスト記述子を利用して、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを分離することができる。
【0069】
蓄積サーバー43は、TLVストリーム選択部41から逐次出力される蓄積放送TLVを蓄積し、上述した所定のファイル配信方式によるパケット分割の逆処理を行いながら、第2の放送コンテンツ(8K衛星放送)に関する蓄積放送用の放送コンテンツファイルを復元して保存する。
【0070】
ストレージ44は、TLVストリーム選択部41におけるTLV分離部42c、並びに蓄積サーバー43に対しそれぞれUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等で接続したハードディスクやSSDなどで構成され、蓄積サーバー43から蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して再構成される蓄積放送TLVとTLVストリーム選択部41から逐次出力されるリアルタイム放送録画TLVのいずれか一方又は双方を保存する。尚、ストレージ44における蓄積サーバー43からの蓄積放送用の放送コンテンツファイルの読み出しは、後述する再生信号によって作動する。
【0071】
MMT分離部45は、操作部49を介してユーザーが指定する放送コンテンツを視聴要求として選択指定する放送選択信号に応じて、リアルタイム放送TLV、リアルタイム放送録画TLV、及び蓄積放送TLVのうちいずれかで受信したデータを選択し、映像及び音声の圧縮符号化信号に分離してそれぞれ映像デコーダ47及び音声デコーダ48に出力する。
【0072】
より具体的には、MMT分離部45は、操作部49からの放送選択信号に応じて、TLVストリーム選択部41から入力されるリアルタイム放送TLVについてリアルタイム視聴するか、ストレージ44に保存したリアルタイム放送録画TLVについてユーザーの選択による再生により視聴するか、蓄積サーバー43から読み出してストレージ44に保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴するか、を判別し、判別結果に対応するTLVパケットのデータを映像及び音声の圧縮符号化信号に分離してそれぞれ映像デコーダ47及び音声デコーダ48に出力する。
【0073】
読み出し制御部46は、操作部49からの放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、ストレージ44に保存したリアルタイム放送録画TLVについてユーザーの選択による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたとき(操作部49から受信したとき)は、ストレージ44に保存したリアルタイム放送録画TLVのデータを読み出してMMT分離部45に出力するよう制御する。
【0074】
また、読み出し制御部46は、操作部49からの放送選択信号の出力と同期して、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、蓄積サーバー43から読み出してストレージ44に保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴する旨を示す再生信号を受け付けたとき(操作部49から受信したとき)は、蓄積サーバー43から蓄積放送用の放送コンテンツファイルをMMT形式の放送コンテンツデータとして読み出して蓄積放送TLVを再構成してストレージ44に保存し、そのストレージ44に保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生を行うようにMMT形式の放送コンテンツデータを格納した蓄積放送TLVを読み出してMMT分離部45に出力するよう制御する。
【0075】
映像デコーダ47は、MMT分離部45から出力された映像の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器(図示略)に出力する。
【0076】
音声デコーダ48は、MMT分離部45から出力された音声の圧縮符号化信号を再生可能に復号して所定の再生機器(図示略)に出力する。
【0077】
操作部49は、ユーザー操作に基づいて、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求に対応する信号として、当該TLVストリーム選択信号、当該放送選択信号、及び当該再生信号を送出する機能部である。即ち、この視聴要求に対応する信号には、以下の3つがある。
【0078】
(TLVストリーム選択信号)
TLVストリーム選択信号は、操作部49からTLVストリーム選択部41へと出力され、TLVストリーム選択部41においてユーザーが指定する放送コンテンツを含む1系列以上(N≧1)の合成TLVストリームを選択し視聴動作を指定する信号である。
【0079】
(放送選択信号)
放送選択信号は、操作部49からMMT分離部45へと出力され、MMT分離部45においてリアルタイム放送TLV、リアルタイム放送録画TLV、及び蓄積放送TLVのうちいずれかで受信したデータを映像及び音声の圧縮符号化信号に分離して出力するようにユーザーが指定する放送コンテンツを視聴要求として選択指定する信号である。即ち、放送選択信号は、MMT分離部45の入力を切り替える信号である。ユーザーが、操作部49を操作するユーザーインターフェースを用いてリアルタイム放送TLV、リアルタイム放送録画TLV、及び蓄積放送TLVのうちいずれかを視聴するとして選択したときに、対応する放送選択信号が操作部49からMMT分離部45に出力される。
【0080】
(再生信号)
再生信号は、操作部49から読み出し制御部46へと出力され、読み出し制御部46においてストレージ44に保存したリアルタイム放送録画TLVについてユーザーの選択による再生により視聴する旨、又は蓄積サーバー43から読み出してストレージ44に保存した蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生又は所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴する旨を示す信号である。
【0081】
蓄積放送TLVについてのユーザーの選択による再生は、つぎの通りである。まず、ユーザーが、操作部49を操作するユーザーインターフェースを用いて、蓄積サーバー43に蓄積した蓄積放送用の放送コンテンツに関するコンテンツファイルを選択する。この選択結果は、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、蓄積サーバー43から読み出してストレージ44に保存した当該コンテンツファイルに対応する蓄積放送TLVについてユーザーの選択による再生により視聴する旨を示す再生信号として操作部49から読み出し制御部46に出力される。つぎに、読み出し制御部46は、該当するコンテンツファイルに対応する蓄積放送TLVをストレージ44から読み出し、MMT分離部45に送信する。MMT分離部45は、操作部49から対応して出力される放送選択信号に基づいて、リアルタイム放送で受信したデータの場合と同様に、当該蓄積放送TLVのデータを映像及び音声の圧縮符号化信号に分離して出力する。
【0082】
蓄積放送TLVについての所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生は、つぎの通りである。まず、ユーザーが、操作部49を操作するユーザーインターフェースを用いて、衛星放送伝送路を介して送信装置2から事前に取得した番組配列情報を参照し、蓄積サーバー43に蓄積した蓄積放送用の放送コンテンツに関するコンテンツファイルを選択する。この選択結果は、ユーザーが指定する放送コンテンツの視聴要求として、蓄積サーバー43から読み出してストレージ44に保存した当該コンテンツファイルに対応する蓄積放送TLVについて所定の番組配列情報に基づく時刻制御による再生により視聴する旨を示す再生信号として操作部49から読み出し制御部46に出力される。つぎに、読み出し制御部46は、該当するコンテンツファイルに対応する蓄積放送TLVをストレージ44から読み出し、MMT分離部45に送信する。MMT分離部45は、操作部49から対応して出力される放送選択信号に基づいて、リアルタイム放送で受信したデータの場合と同様に、当該蓄積放送TLVのデータを映像及び音声の圧縮符号化信号に分離して出力する。
【0083】
〔従来技術から想定される技法の課題と、本発明による作用・効果〕
(従来技術から想定される技法)
従来技術から想定される技法と、本発明との差異を明確にするために、まず、
図5(a),(b)には、それぞれ従来技術から想定されるスロット割り当てによる受信例(N=1のとき)を説明する図を示している。ここでは、TLVストリーム選択部41は、N=1とした1組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備えている場合を想定して説明する。
【0084】
新4K8K衛星放送は、複数の番組をTLVパケットで多重して複数系列の合成TLVストリームを形成して伝送している。例えば、
図5(a)に示す通り、4K衛星放送(リアルタイム放送)は、チャンネル単位の放送コンテンツとして1系列の合成TLVストリームにおける1フレームあたり1チャンネル分40スロットを使用し、1衛星中継器で4K衛星放送のリアルタイム放送として最大3番組(♯1~♯3の3チャンネル分)を伝送している。しかし、これまでの新4K8K衛星放送では、8K衛星放送(リアルタイム放送)を行うためには120スロットが必要であり左旋円偏波を用いるしかなく、仮に、
図5(b)に示すように右旋円偏波を用いるようにすると衛星中継器を1つ占有することが必須となる。このため、送信装置2としては、
図5(b)に示すような右旋円偏波を用いる8K衛星放送(リアルタイム放送)のスロット割り当てはできない。従って、受信装置4としては、N=1の場合では、右旋円偏波のみで4K衛星放送(リアルタイム放送)と、8K衛星放送(リアルタイム放送)の同時受信は不可である。
【0085】
(本発明(N=1のとき))
図6(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システム1に係るスロット割り当てによる第1の受信例(N=1のとき)を説明する図である。即ち、TLVストリーム選択部41は、N=1とした1組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備えている場合を想定して説明する。
【0086】
まず、本実施形態の衛星放送システム1においても、新4K8K衛星放送の標準規格に準拠しており、複数の番組をTLVパケットで多重して複数系列の合成TLVストリームを形成して伝送する。例えば、
図6(a)に示す通り、4K衛星放送(リアルタイム放送)は、チャンネル単位の放送コンテンツとして1系列の合成TLVストリームにおける1フレームあたり1チャンネル分40スロットを使用し、1衛星中継器で4K衛星放送のリアルタイム放送として最大3番組(♯1~♯3の3チャンネル分)を伝送できる。更に、本実施形態の衛星放送システム1では、
図4に示すNに関してN=1(若しくはN≧1でもよい。)のとき、
図6(b)に示す通り、4K衛星放送(リアルタイム放送)には1チェンネル分の放送コンテンツ(ここでは♯1を例示しているが、この代わりに♯2又は♯3、或いは別チャンネルの放送コンテンツでもよい。)用の40スロットを使用し、8K衛星放送(蓄積放送)には80スロットを使用し、1フレームに対しスロット数で二分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数(120スロット)のフレームで構成される1系列の合成TLVストリームを形成している。ただし、本発明に係る1系列の合成TLVストリームにおいて、
図6(b)の例のような1フレームあたりのスロット数を二分割とする例に限定する必要はなく、二つ以上の分割とすることができる。このため、送信装置2としては、
図6(b)に示すような4K衛星放送(リアルタイム放送)と、8K衛星放送(蓄積放送)とを含む1系列の合成TLVストリームを形成することで、受信装置4としては、N=1の場合でも、右旋円偏波のみで4K衛星放送(リアルタイム放送)と、8K衛星放送(蓄積放送)の同時受信ができるようになる。
【0087】
(本発明(N>1のとき))
図7(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の衛星放送システム1に係るスロット割り当てによる第2の受信例(N>1のとき)を説明する図である。即ち、TLVストリーム選択部41は、N>1とした複数組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備えている場合を想定して説明する。
【0088】
ここで、蓄積放送を受信するためには、蓄積放送が行われている衛星中継器を介して所望のチャンネルの放送コンテンツを伝送する合成TLVストリームを常時受信しておく必要がある。このため、N=1の場合では、他のチャンネルで放送中の放送コンテンツを視聴するときにTLVストリーム選択部41におけるチューナー部42aの選局の切り替えを要するという課題がある。そこで、受信装置4としては、N(Nは2以上の整数)組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備えるとするのが好適である。
【0089】
まず、本実施形態の衛星放送システム1においても、新4K8K衛星放送の標準規格に準拠しており、複数の番組をTLVパケットで多重して複数系列の合成TLVストリームを形成して伝送する。例えば、
図7(a)に示す通り、既存の或る別系列の合成TLVストリームにおいて、4K衛星放送(リアルタイム放送)は、チャンネル単位の放送コンテンツとして当該別系列の合成TLVストリームにおける1フレームあたり1チャンネル分40スロットを使用し、1衛星中継器で4K衛星放送のリアルタイム放送として最大3番組(♯1~♯3の3チャンネル分)を伝送できる。更に、本実施形態の衛星放送システム1では、
図4に示すNに関してN>1のとき、
図7(b)に示す通り、
図7(a)に示す当該別系列の合成TLVストリームとは別個に、本発明に係る1系列の合成TLVストリームでは、4K衛星放送(リアルタイム放送)には1チェンネル分(例えば♯4)40スロットを使用し、8K衛星放送(蓄積放送)には80スロットを使用し、1フレームに対しスロット数で二分割し割り当て調節した時分割多重により所定スロット数(120スロット)のフレームで構成されたものとしている。ただし、本発明に係る1系列の合成TLVストリームにおいて、
図7(b)の例のような1フレームあたりのスロット数を二分割とする例に限定する必要はなく、二つ以上の分割とすることができる。
【0090】
このため、送信装置2としては、右旋円偏波のみで、上述したリアルタイム放送TLV(4K衛星放送)と、蓄積放送TLV(8K衛星放送)とを含む1系列の合成TLVストリームとは別に、別系統の合成TLVストリームを形成し、これら複数系列の合成TLVストリームに対応する複数系列のアップリンク信号を放送衛星3におけるそれぞれ別個の衛星中継器に割り当てるようにして同時送信することができる。そこで、受信装置4は、TLVストリーム選択部41として、TLVストリーム選択信号に基づいて、当該IF帯衛星放送信号から、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを含む当該1系列の合成TLVストリームとともに、別系列の合成TLVストリームを選択し、該別系列の合成TLVストリームに係るチャンネルのリアルタイム放送用の放送コンテンツを受信しリアルタイムで視聴可能としながら、当該1系列の合成TLVストリームの同時受信を行うために、N>1としたN系列の合成TLVストリームを受信可能とするN(N>1)組のチューナー部42a、復調部42b及びTLV分離部42cを備えるように構成するのが好適である。これにより、受信装置4としては、右旋円偏波のみで、例えば
図7(a)に示す或るリアルタイム放送TLVのみからなる別系列の合成TLVストリームに係るチャンネルの放送コンテンツを受信しリアルタイムで視聴可能としながら、
図7(b)に示すリアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとを含む1系列の合成TLVストリームの受信に基づいて蓄積放送TLVにおける蓄積放送(8K衛星放送)の放送コンテンツの同時受信を行って視聴のために蓄積することが可能になる。
【0091】
従って、本実施形態の衛星放送システム1に係る送信装置2及び受信装置4によれば、8K衛星放送に対する衛星中継器の柔軟な割り当てが可能となり、衛星放送の番組数を増加させることもできるようになる。また、右旋円偏波での8K衛星放送が可能となり、従来の右旋IFのみに対応した受信設備でも8K衛星放送の受信・視聴が可能となる。また、本実施形態の衛星放送システム1に係る送信装置2及び受信装置4によれば、映像デコーダ及び音声デコーダは、既存の8K衛星放送受信用のものと同じものを活用できる。そのため、本発明に係る受信装置4を低コストで実現することができる。
【0092】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態の例に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、
図6(b)及び
図7(b)の例では、4K衛星放送(リアルタイム放送)については40スロットとし、8K衛星放送(蓄積放送)については80スロットとする例を説明したが、4K衛星放送(リアルタイム放送)については2チャンネル分の80スロットとし、8K衛星放送(蓄積放送)については40スロットとすることもできる。つまり、TLV多重部24は、リアルタイム放送TLV用の特定のチャンネル領域として割り当て可能とするスロットを、蓄積放送TLVの伝送領域として置き換えることで、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとについて例えば前半部と後半部の二分割とする形態の当該1系列の合成TLVストリームを形成することができる。尚、その前半部を蓄積放送とし後半部をリアルタイム放送とすることもできる。また、このような二分割とする形態に限らず、放送コンテンツの伝送に係る最小スロット数である5スロット単位で最大24分割とする形態とすることもでき、サービスリスト記述子で判別可能に構成することができる。例えば、本発明に係る1系列の合成ストリームでは、リアルタイム放送TLV及び蓄積放送TLVに係る3種類の放送コンテンツを同時伝送する際に、1フレームあたり40スロットずつで分割し、例えば4K衛星放送#1+4K衛星放送#2+8K蓄積放送とするような構成も実現可能である。従ってTLV多重部24は、リアルタイム放送TLVと蓄積放送TLVとについて二つ以上に分割する形態の当該1系列の合成TLVストリームを形成し、サービスリスト記述子で判別可能とする構成とすることができる。これにより、複雑なスロット判別を要することなく、TLV-NITのサービスリスト記述子の判別のみで、リアルタイム放送のみの合成TLVストリームであるか、蓄積放送を含む合成TLVストリームであるかを判別できる。また、上述した実施形態の例では、リアルタイム放送で伝送する第1の放送コンテンツを4K衛星放送の放送コンテンツとし、蓄積放送で伝送する第2の放送コンテンツを8K衛星放送の放送コンテンツとする例を説明したが、2K衛星放送や6K衛星放送など、その他の放送コンテンツの組み合わせとすることもできる。
【0093】
従って、本発明は、上述の実施形態の例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、8K衛星放送に対する衛星中継器の柔軟な割り当てが可能となり、また、従来の右旋IFのみに対応した受信設備でも8K衛星放送の受信・視聴が可能となるので、衛星放送を介してリアルタイム放送用の放送コンテンツと、蓄積放送用の放送コンテンツとを同時送信可能とする衛星放送システムの用途に有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 衛星放送システム
2 送信装置
2a 送信アンテナ
3 放送衛星
4 受信装置
4a 受信アンテナ
20 番組送出設備
21 ファイル変換部
22 大容量ストレージ
23 ファイル送出サーバー
24 TLV多重部
25 変調部
26 高周波部
40 コンバータ
41 TLVストリーム選択部
42a チューナー部
42b 復調部
42c TLV分離部
43 蓄積サーバー
44 ストレージ
45 MMT分離部
46 読み出し制御部
47 映像デコーダ
48 音声デコーダ
49 操作部