(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024968
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ビーム位置測定方法及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20250214BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20250214BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20250214BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01L21/30 541N
G03F7/20 504
H01L21/30 541W
H01J37/147 C
H01J37/22 502B
H01J37/22 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129380
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】七尾 翼
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 修
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101AA27
5C101EE22
5C101EE48
5C101FF02
5C101FF48
5C101GG19
5C101HH03
5C101HH21
5C101HH23
5C101HH27
5C101JJ02
5F056AA07
5F056BA08
5F056BB07
5F056BD03
5F056BD06
5F056CB13
5F056CC04
5F056CD01
(57)【要約】
【課題】ビーム位置を正確に測定し、かつスループットの低下を抑制する。
【解決手段】本実施形態によるビーム位置測定方法は、基板が載置されるステージ上に設けられたマークを荷電粒子ビームでスキャンし、条件毎にビーム照射位置を測定し、基準条件で前記マークをスキャンし、得られた前記基準条件でのビーム照射位置の測定結果に基づいてドリフト量を算出し、前記ドリフト量を用いて、測定した条件毎の前記ビーム照射位置を補正するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるステージ上に設けられたマークを荷電粒子ビームでスキャンし、条件毎にビーム照射位置を測定し、
基準条件で前記マークをスキャンし、得られた前記基準条件でのビーム照射位置の測定結果に基づいてドリフト量を算出し、
前記ドリフト量を用いて、測定した条件毎の前記ビーム照射位置を補正する、ビーム位置測定方法。
【請求項2】
前記条件は、前記荷電粒子ビームのビーム位置又は偏向電圧である、請求項1に記載のビーム位置測定方法。
【請求項3】
前記ドリフト量の測定は、予め設定された測定間隔又は予め設定された測定頻度毎に、或いは、所定の測定時間又は所定の測定回数を超えた後、前記測定間隔又は前記測定頻度を変更して行われる、請求項1又は2に記載のビーム位置測定方法。
【請求項4】
前記条件は、前記ビーム位置であり、マルチ荷電粒子ビームを複数の領域で分割し、領域毎に前記基準条件でスキャンを行い、前記補正したビーム照射位置に基づき前記マルチ荷電粒子ビームのビームアレイ形状を算出する、請求項2に記載のビーム位置測定方法。
【請求項5】
前記条件は、偏向器に印加する偏向電圧であり、複数の異なる偏向電圧における前記補正したビーム照射位置を用いて前記荷電粒子ビームの偏向感度を算出する、請求項2に記載のビーム位置測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載のビーム位置測定方法で算出されたビームアレイ形状に基づいて、前記マルチ荷電粒子ビームの照射条件を補正し、前記描画対象基板にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム位置測定方法及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスの回路線幅はさらに微細化されてきている。これらの半導体デバイスへ回路パターンを形成するための露光用マスク(ステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)を形成する方法として、優れた解像性を有する電子ビーム描画技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置は、偏向器に印加する電圧を制御して電子ビームの偏向量を調整し、基板上の所望の位置に電子ビームを照射する。基板上での電子ビームの照射位置を高精度に保つためには、偏向感度を正確に把握することが重要である。そのため、偏向電圧を変えながら、複数の異なる偏向電圧でのビーム照射位置を測定し、偏向感度を算出している。ビーム位置は、ステージ上に配置されたマークをビームでスキャンし、反射電子を検出することで測定できる。
【0004】
電子ビーム描画装置として、マルチビームを使った描画装置の開発が進められている。マルチビームを用いることで、1本の電子ビームで描画する場合に比べて多くのビームを照射できるので、スループットを大幅に向上させることができる。マルチビーム描画装置では、例えば、電子源から放出された電子ビームを複数の開口が設けられた成形アパーチャアレイ基板に通してマルチビームを形成し、各ビームのブランキング制御を行い、制限アパーチャ部材で遮蔽されなかった各ビームが基板に照射される。
【0005】
マルチビーム描画装置では、複数のビームを一度に照射し、成形アパーチャアレイ基板の同じ開口又は異なる開口を通過して形成されたビーム同士をつなげていき、所望の図形形状のパターンを描画する。そのため、基板上に照射されるマルチビーム全体像の形状(ビームアレイ形状)が描画図形のつなぎ精度となって現れる。
【0006】
マルチビームによる描画精度を高く保つためには、ビームアレイ形状を正確に把握することが重要である。そのため、一部領域のビームのみオンにし、オンビームでマークをスキャンしてビーム位置を測定する処理を、オンビーム領域を切り替えながら全面にわたって行い、ビームアレイ形状を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-218474号公報
【特許文献2】特開2007-49024号公報
【特許文献3】特開平5-290787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子ビーム描画装置では、反射電子などによってビーム近傍のコンタミネーションや絶縁物に電荷がたまり、ビーム位置変動(ドリフト)が発生することがある。このようなビーム位置変動が生じると、偏向感度やビームアレイ形状を正確に測定できず、描画精度を劣化させるおそれがある。
【0009】
本発明は、ビーム位置を正確に測定し、かつスループットの低下を抑制できるビーム位置測定方法及び正確なビーム位置測定結果に基づいて補正されたビームを用いて高精度に描画を行う荷電粒子ビーム描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によるビーム位置測定方法は、基板が載置されるステージ上に設けられたマークを荷電粒子ビームでスキャンし、条件毎にビーム照射位置を測定し、基準条件で前記マークをスキャンし、得られた前記基準条件でのビーム照射位置の測定結果に基づいてドリフト量を算出し、前記ドリフト量を用いて、測定した条件毎の前記ビーム照射位置を補正するものである。
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、本発明によるビーム位置測定方法で算出されたビームアレイ形状に基づいて、前記マルチ荷電粒子ビームの照射条件を補正し、前記描画対象基板にパターンを描画するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビーム位置を正確に測定し、かつスループットの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態によるマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
【
図4】ビームアレイ形状測定方法を説明するフローチャートである。
【
図5】ビームアレイ形状の測定方法を説明する図である。
【
図6】算出されるビームアレイ形状の例を示す図である。
【
図7】基準条件でのビーム位置測定と、ビームアレイ形状の測定とのタイミングの例を示す図である。
【
図8】ビームアレイ形状の算出方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0015】
図1は、本実施形態における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置は、描画部1と制御部100を備えている。描画装置は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部1は、鏡筒2と描画室20を備えている。鏡筒2内には、電子源4、照明レンズ6、成形アパーチャアレイ基板8、ブランキングアパーチャアレイ基板10、縮小レンズ12、制限アパーチャ部材14、対物レンズ15、コイル16、主偏向器17(偏向器)、及び副偏向器(図示略)が配置されている。
【0016】
描画室20内には、XYステージ22及び検出器26が配置される。XYステージ22上には、描画対象となる基板70が配置される。基板70には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、基板70には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0017】
XYステージ22上には、XYステージ22の位置測定用のミラー24が配置される。また、XYステージ22上には、ビームキャリブレーション用の金属製の反射マークMが設けられている。反射マークMは、電子ビームで走査することで位置を検出しやすいように例えば十字型の形状になっている(
図3参照)。検出器26は、反射マークMの十字を電子ビームで走査する際に、反射マークMからの反射電子を検出する。
【0018】
制御部100は、制御計算機110、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプ131、コイル制御回路132、レンズ制御回路133、検出アンプ134、ステージ位置検出器135、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。
【0019】
偏向制御回路130、コイル制御回路132、レンズ制御回路133、検出アンプ134、ステージ位置検出器135、及び記憶装置140は、バスを介して制御計算機110に接続されている。記憶装置140には、描画データが外部から入力され、格納されている。
【0020】
偏向制御回路130には、DACアンプ131が接続される。DACアンプ131は主偏向器17に接続される。コイル制御回路132には、コイル16が接続されている。レンズ制御回路133には、対物レンズ15が接続されている。
【0021】
制御計算機110は、描画データ処理部111、描画制御部112及びビームアレイ形状測定部113の機能を備える。制御計算機110の各部の機能は、ハードウェアで実現されてもよいし、ソフトウェアで実現されてもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御計算機110の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを記録媒体に収納し、電気回路を含むコンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0022】
図2は、成形アパーチャアレイ基板8の構成を示す概念図である。
図2に示すように、成形アパーチャアレイ基板8には、縦(y方向)方向及び横(x方向)に複数の開口部80が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。各開口部80は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ径の円形であっても構わない。
【0023】
電子源4から放出された電子ビーム30は、照明レンズ6によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板8全体を照明する。電子ビーム30は、成形アパーチャアレイ基板8複数の開口部80が含まれる領域を照明する。これらの複数の開口部80を電子ビーム30の一部がそれぞれ通過することで、
図1に示すようなマルチビーム30a~30eが形成されることになる。
【0024】
ブランキングアパーチャアレイ基板10には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板8の各開口部80に対応する位置にマルチビームの各ビームが通過する通過孔(開口部)が形成されている。各通過孔の近傍には、ビームを偏向するブランキング偏向用の電極(ブランカ:ブランキング偏向器)が配置されている。
【0025】
各通過孔を通過する電子ビーム30a~30eは、それぞれ独立に、ブランカから印加される電圧によって偏向される。この偏向によってブランキング制御が行われる。このように、複数のブランカが、成形アパーチャアレイ基板8の複数の開口部80を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0026】
ブランキングアパーチャアレイ基板10を通過したマルチビーム30a~30eは、縮小レンズ12によって、各々のビームサイズと配列ピッチが縮小され、制限アパーチャ部材14に形成された中心の開口に向かって進む。ブランキングアパーチャアレイ基板10のブランカにより偏向された電子ビームは、その軌道が変位し、制限アパーチャ部材14の中心の開口から位置がはずれ、制限アパーチャ部材14によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ10のブランカによって偏向されなかった電子ビームは、制限アパーチャ部材14の中心の開口を通過する。
【0027】
制限アパーチャ部材14は、ブランキングアパーチャアレイ基板10のブランカによってビームOFFの状態になるように偏向された各電子ビームを遮蔽する。
【0028】
制限アパーチャ部材14を通過したマルチビーム30a~30eは、コイル16によりアライメント調整され、対物レンズ15により焦点が合わされ、基板70上で所望の縮小率のパターン像となる。主偏向器17は、制限アパーチャ部材14を通過した各電子ビーム(マルチビーム全体)を同方向にまとめて偏向し、基板70上の描画位置(照射位置)に照射する。
【0029】
XYステージ22が連続移動している時、ビームの描画位置(照射位置)がXYステージ22の移動に追従するように主偏向器17によってトラッキング制御される。XYステージ22の位置は、ステージ位置検出器135からXYステージ22上のミラー24に向けてレーザを照射し、その反射光を用いて測定される。
【0030】
一度に照射されるマルチビームは、理想的には成形アパーチャアレイ8の複数の開口部80の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。この描画装置は、ショットビームを連続して順に照射していくラスタースキャン方式で描画動作を行い、所望のパターンを描画する際、パターンに応じて必要なビームがブランキング制御によりビームONに制御される。
【0031】
制御計算機110の描画データ処理部111は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換を行って、ショットデータを生成する。ショットデータには、基板70の描画面を例えばビームサイズで格子状の複数の照射領域に分割した各照射領域への照射有無、及び照射時間等が定義される。
【0032】
描画制御部112は、ショットデータ及びステージ位置情報に基づいて、偏向制御回路130に制御信号を出力する。偏向制御回路130は、制御信号に基づいて、ブランキングアパーチャアレイ基板10の各ブランカの印加電圧を制御する。また、偏向制御回路130は、XYステージ22の移動に追従するようにビーム偏向するための偏向量データ(トラッキング偏向データ)を演算する。デジタル信号であるトラッキング偏向データは、DACアンプ131に出力され、DACアンプ131は、デジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して、トラッキング偏向電圧として主偏向器17に印加する。
【0033】
マルチビーム方式の描画装置では、描画対象の基板70に、成形アパーチャアレイ基板8の複数の開口部80の配列ピッチに所定の縮小率を乗じたピッチで並んだ多数のビームを一度に照射し、ビーム同士をつなげてビームピッチを埋めることで、所望の図形形状のパターンを描画する。そのため、描画処理前や描画処理中に、ビーム位置を検出し、ビームアレイ形状を測定して寸法を調整したり、各ビームの照射量を変調したりする必要がある。
【0034】
本実施形態に係る描画装置は、位置測定用のマークを用いてビームアレイ形状を測定する。位置測定用マークとしては、ステージ上に設けられたマルチビームを一本ずつ透過させて測定する透過マークや、ステージ上やマスク基板上に設けられた反射電子を測定する反射マークを用いることができる。本実施形態では、位置測定用マークとして、XYステージ22上に設けられた反射マークMを用いる構成について説明する。反射マークMは例えば
図3に示すような十字形状である。一部領域のビームのみオンにし、主偏向器17でオンビームを前後左右(x方向及びy方向)へと偏向して、反射マークMの十字を走査し、反射電子を検出器26で検出し、検出アンプ134で増幅してデジタルデータに変換した上で、測定データを制御計算機110に出力する。
【0035】
ビームアレイ形状測定部113が、測定された反射電子を時系列で並べたプロファイル(反射電子の強度の変化)と、その時のステージ位置とから、ビームの位置(オンビーム領域の中心)を計算する。ビームアレイ形状測定部113は、オンビーム領域毎のビーム位置から、ビームアレイ形状を測定する。ビームアレイ形状の測定方法を
図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0036】
ブランキングアパーチャアレイ基板10を複数の測定領域に分割し、各測定領域に対応するビームで反射マークMをスキャンする。言い換えれば、成形アパーチャアレイ基板8を複数の測定領域に分割し、各測定領域の開口部80を通過したビームをオンにして反射マークMをスキャンする。
【0037】
まず、ブランキングアパーチャアレイ基板10の領域分割数n(nは2以上の整数)を決定する(ステップS21)。ブランキングアパーチャアレイ基板10(成形アパーチャアレイ基板8)を複数の測定領域に分割するのは、成形アパーチャアレイ基板8の領域毎に歪みを測定するためである。また、ビームスキャンに使用する主偏向器17の最大偏向量がブランキングアパーチャアレイ基板10の全域をカバーできるほど大きくないため、測定に使用する偏向量はビームアレイ形状に歪みが生じない程度に小さいことが好ましい。
【0038】
まだ測定を行っていない領域を選択し、測定領域を決定する(ステップS22)。XYステージ22を移動し、測定領域のビームの直下の位置に反射マークMを配置する(ステップS23)。
【0039】
例えば、測定領域のブランカの印加電圧を0V、その他の領域(非測定領域)のブランカの印加電圧を5Vとし、測定領域のブランカによりビームオンとされた複数のビームを主偏向器17でXY方向に偏向させて、反射マークMをスキャンし、検出器26が反射電子を検出する(ステップS24)。
【0040】
制御計算機110は、検出器26により検出された反射電子を時系列で並べたプロファイル(反射電子の強度の変化)を生成する(ステップS25)。
【0041】
ビームアレイ形状測定部113は、ステージ位置検出器135により検出されたステージ位置を用いて、測定領域に対応するビーム位置(オンビーム領域の中心座標)を算出する(ステップS26)。
【0042】
このようなステージ移動、反射マークMのスキャン、及びオンビーム位置算出を、ブランキングアパーチャアレイ基板10のn個の測定領域全てに対して行う(ステップS22~S27)。
図5は、測定領域の切り替えに伴い、XYステージ22を移動し、測定領域のビームの直下の位置に反射マークMを配置する例を示している。
【0043】
全ての測定領域についての測定終了後(ステップS27_Yes)、ビームアレイ形状測定部113は、各測定領域のビーム位置に基づいて、ビームアレイ形状を算出する(ステップS28)。例えば、ビームアレイ形状測定部113は、n個の測定領域に対応するオンビーム領域の中心座標を3次多項式でフィッティングし、ビームアレイ形状を表す多項式を求める。この多項式をグラフにプロットすると、例えば
図6に示すようなビームアレイ形状が得られる。
図6は、理想格子を設定し、そこからのズレ分をプロットしてビームアレイ形状を視覚的に捉えやすく示したものである。
【0044】
描画装置では、反射電子などによってビーム近傍のコンタミネーションや絶縁物に電荷がたまり、ビーム位置変動(ドリフト)が発生する。そのため、ビーム位置変動量を測定し、ビーム位置測定結果を補正して、ビームアレイ形状を算出することが好ましい。
【0045】
例えば、定期的に基準条件でビーム位置を測定し、位置変化量(ドリフト量)を求める。求めた位置変化量に基づいてビームアレイ形状算出に用いるビーム位置を補正する。基準条件でのビーム位置測定は、例えば、中央のビームの位置測定である。ブランキングアパーチャアレイ基板10(成形アパーチャアレイ基板8)の中央に位置する1又は複数個のビームのみオンにし、オンビームで反射マークMをスキャンし、反射電子の検出結果からビーム位置を測定する。そして、測定結果と設計値(理想値)との差分をドリフト量として求める。
【0046】
測定(描画)開始直後はドリフトの変動が大きいため、基準条件でのビーム位置測定(ドリフト測定)の間隔を短くする。時間の経過に伴いドリフトが収まった後は、ドリフト測定の間隔を長くする。これにより、スループットの低下を抑制できる。
【0047】
図7に、基準条件でのビーム位置測定(ドリフト測定)と、条件1~条件nでのビーム位置測定とのタイミングの例を示す。条件1~条件nは、それぞれオンビーム領域が異なる。
【0048】
測定(描画)開始直後は、ドリフト測定を第1ドリフト測定間隔t1で行う。すなわち、時間t1経過毎に基準条件でビーム位置を測定し、ドリフト量を求める。
【0049】
条件1~条件nでのビーム位置測定結果は、直前に求めたドリフト量に基づいて補正する。例えば、
図7の条件3でのビーム位置測定結果は、時刻t1で測定したドリフト量を用いて補正する。同様に、条件5でのビーム位置測定結果は、時刻2×t1で測定したドリフト量を用いて補正する。
【0050】
条件1~条件nでのビーム位置測定結果の補正に用いるドリフト量を、前後のドリフト測定で求めたドリフト量を用いた内挿により算出してもよい。例えば、時刻0で測定したドリフト量及び時刻t1で測定したドリフト量を用いた内挿により条件2でのビーム位置測定時におけるドリフト量を推定し、推定ドリフト量を用いて、条件2でのビーム位置測定結果を補正する。
【0051】
内挿ではなく外挿により、条件1~条件nでのビーム位置測定時におけるドリフト量を推定してもよい。
【0052】
測定間隔変更時間T0(T0>t1)が経過した後は、ドリフト測定の測定間隔を長くし、第2ドリフト測定間隔t2(t2>t1)でドリフト測定を行う。さらなる時間経過後に、ドリフト測定間隔をt2からt3(t3>t2)に変更してもよい。さらに、測定間隔変更時間を、T0から、T1、T2、・・・(T0<T1<T2<・・・)と徐々に変動させて(更新して)もよい。
【0053】
条件1~条件nでのビーム位置測定結果をドリフト量の分だけ補正し、多項式フィッティングすることで、ビームアレイ形状を求めることができる。ビーム位置測定結果をドリフト量の分だけ補正するのに代えて、条件1~条件nでビーム位置測定する際に、ドリフト量の分だけ偏向位置を補正して反射マークMをスキャンしてもよい。
【0054】
図8は、ドリフト測定間隔や測定間隔変更時間の設定を更新しながらビームアレイ形状を算出する方法を説明するフローチャートである。
【0055】
基準条件でビーム位置を測定し、ドリフト量を算出する(ステップS101、S102)。
【0056】
測定間隔変更時間の設定を更新するタイミングの場合は(ステップS103_Yes)、測定間隔変更時間を更新する(ステップS104)。例えば、測定間隔変更時間をT0からT1に更新する。測定間隔変更時間の設定を更新するタイミングは任意であり、所定時間の経過でもよいし、所定回数のドリフト測定でもよい。
【0057】
測定間隔変更時間が経過した場合は(ステップS105_Yes)、ドリフト測定間隔を変更する(ステップS106)。例えば、ドリフト測定間隔をt1からt2に変更する。
【0058】
前回のドリフト測定からドリフト測定間隔の時間が経過し、ドリフト測定のタイミングになったら(ステップS107_Yes)、ドリフト測定を行う(ステップS101,S102)。例えば、
図7に示す1回目のドリフト測定(基準条件でのビーム位置測定)から時間t1が経過したら、2回目のドリフト測定を行う。
【0059】
条件を切り替えて(オンビーム領域を変えて)、ビーム位置測定を行う(ステップS108)。ビーム位置測定結果は、直前のドリフト測定等で求めたドリフト量を用いて補正する。
【0060】
全条件(条件1~n)でビーム位置測定を行うまで、ステップS101~S108を繰り返す。
【0061】
全条件でのビーム位置測定が完了すると(ステップS109_Yes)、ドリフト量を用いて補正されたビーム位置測定結果に基づいて、ビームアレイ形状を算出する(ステップS110)。
【0062】
このように、本実施形態によれば、スループットの低下を抑制しつつ、ビーム位置を正確に測定し、ビームアレイ形状を高精度に求めることができる。求めたビームアレイ形状に基づいて、ビームアレイ形状の歪みの影響が出ないように、各ビームの照射量や、描画するパターンの位置や寸法、ビームの電子光学条件等のビーム照射条件を補正することで、所望のパターンを高精度に描画できる。
【0063】
上記実施形態では、測定間隔変更時間が経過すると、ドリフト測定の測定間隔を変更する例について説明したが、ドリフト測定を所定回数行うと、測定間隔を変更するとしてもよい。
【0064】
予め測定間隔や測定頻度を設定したテーブルを作成し、テーブルに基づいて測定を行ってもよい。
【0065】
上記実施形態では、測定したドリフト量を、ビームアレイ形状測定時のビーム位置補正に用いていたが、主偏向器17や副偏向器の偏向感度測定時のビーム位置補正に用いてもよい。偏向電圧を変えながら、複数の偏向電圧でのビーム位置を測定し、ビーム位置測定結果をドリフト量の分だけ補正して、偏向感度(偏向電圧に対する偏向距離の変動率)を求める。基準条件でのビーム位置測定(ドリフト測定)では、例えば、偏向量(偏向電圧)をゼロにする。そして、求められた偏向感度に基づき偏向範囲が確認される。
【0066】
上記実施形態では、電子ビーム描画装置としてマルチビーム描画装置を用いる例について説明したが、シングルビーム描画装置の偏向感度補正等に適用することもできる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 描画部
2 鏡筒
4 電子銃
6 照明レンズ
8 成形アパーチャアレイ
10 ブランキングアパーチャアレイ
12 縮小レンズ
14 制限アパーチャ部材
15 対物レンズ
16 コイル
17 主偏向器
20 描画室
22 XYステージ
50 電流検出器
100 制御部
110 制御計算機