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特開2025-25449基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025449
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20250214BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20250214BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20250214BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C23C14/50 D
H10K71/60
H10K71/16
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130217
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大智
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG02
3K107GG33
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA01
4K029HA04
4K029JA01
4K029KA01
4K029KA09
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】基板の撓み方のばらつきを抑制することが可能な基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板を支持する複数の支持具を有する基板支持装置であって、複数の支持具は、第1傾斜方向に傾斜した支持面を有する第1支持具と、第2傾斜方向に傾斜した支持面を有する第2支持具と、の組み合わせからなり、第1傾斜方向及び第2傾斜方向は異なる方向であって、これら複数の支持面によって基板を支持することを特徴とする基板支持装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する複数の支持具を有する基板支持装置であって、
前記複数の支持具は、第1傾斜方向に傾斜した支持面を有する第1支持具と、第2傾斜方向に傾斜した支持面を有する第2支持具と、の組み合わせからなり、
前記第1傾斜方向及び前記第2傾斜方向は異なる方向であって、これら複数の前記支持面によって前記基板を支持することを特徴とする基板支持装置。
【請求項2】
前記基板支持装置に保持された前記基板に撓みが生じていないと仮定した場合の前記基板の表面に平行な仮想的な面を仮想面とし、
前記第1支持具の前記支持面は、前記仮想面に対し第1角度だけ傾斜した第1傾斜面からなり、
前記第2支持具の前記支持面は、前記仮想面に対し第2角度だけ傾斜した第2傾斜面からなり、
前記第1支持具と前記第2支持具との組み合わせを支持具組とし、前記仮想面に平行な第1方向に沿って並ぶ複数の前記支持具組を有する請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面は、前記第1方向に沿って前記仮想面からの距離が大きくなるように傾斜し、
前記第2傾斜面は、前記第1方向に沿って前記仮想面からの距離が小さくなるように傾斜する請求項2に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記支持具組は、前記第1支持具と、前記第1支持具より前記第1方向側に位置する前記第2支持具と、の組であり、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とにより前記第1方向に沿って谷形状の支持面が形成される請求項2又は3に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記支持具組は、前記第2支持具と、前記第2支持具より前記第1方向側に位置する前記第1支持具と、の組であり、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面とにより前記第1方向に沿って山形状の支持面が形成される請求項2又は3に記載の基板支持装置。
【請求項6】
前記第1角度及び前記第2角度は、固定である請求項2又は3に記載の基板支持装置。
【請求項7】
前記第1角度及び前記第2角度は、可変である請求項2又は3に記載の基板支持装置。
【請求項8】
前記第1角度及び前記第2角度は、前記仮想面に対し-45度から+45度の範囲で可変である請求項7に記載の基板支持装置。
【請求項9】
前記第1角度及び前記第2角度は、前記仮想面に対し-30度から+30度の範囲で可変である請求項7に記載の基板支持装置。
【請求項10】
前記仮想面に対し平行の支持面を有する第3支持具をさらに有する請求項2又は3に記載の基板支持装置。
【請求項11】
前記基板を介して前記第3支持具を押圧する押圧具をさらに有し、
前記第1支持具及び前記第2支持具の前記支持面により前記基板を支持するとともに、前記第3支持具と前記押圧具とにより前記基板を挟持する請求項10に記載の基板支持装置。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の基板支持装置と、
前記基板に成膜する成膜手段と、
を備える成膜装置。
【請求項13】
基板上に所定パターンの成膜を行う成膜方法であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の基板支持装置により、前記基板をマスクの上に載置する工程と、
前記基板に前記マスクを介して成膜する成膜工程と、
を含む成膜方法。
【請求項14】
基板上に形成された有機膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項13に記載の成膜方法により前記有機膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
基板上に形成された金属膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項13に記載の成膜方法により前記金属膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記電子デバイスが、有機EL表示装置の表示パネルであることを特徴とする請求項14に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板の大型化・薄型化が進んでおり、基板の自重による撓みの影響が大きくなっている。また、成膜領域を基板中央部に設ける関係上、基板を支持・挟持できるのは基板の外周部(周縁部)に限られている。
【0003】
マスクを介して基板上に成膜を行う成膜装置では、基板の外周部(四辺)を支持して基板を保持する基板支持装置を用いて、基板をマスクに載置して密着させ、その状態で成膜を行う。矩形の基板の場合、基板の外周のうち、一方の対向辺部(例えば長辺部)では基板を挟持し、他方の対向辺部(例えば短辺部)では基板を挟持せずに支持のみする構成のものがある。特許文献1では、基板の長辺は支持具と押圧具とによって基板を挟持し、基板の短辺は支持具のみで基板を下方から支持する基板支持装置において、短辺を支持する複数の支持具のうち一部の支持具の高さを他の支持具の高さと異ならせ、又は、一部の支持具間の距離を他の支持具間の距離と異ならせることにより、基板支持装置に保持された基板の撓み方(撓みの様相、撓みモードともいう)が基板毎にばらつくことを抑制することが記載されている。また、特許文献2には、基板を保持するロボットハンドのハンド部をモータにより回転可能に構成し、ハンド部を回転させることで、撓んだ状態の基板がハンド部に載置された場合でもハンド部と基板との密着度合が高くなるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-197361号公報
【特許文献2】特開2001-277169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように基板の周辺を支持すると、基板が自重で撓み、基板の中央がへこむ。また、支持のみがされている基板の周辺についても、基板に撓みが生じる。この際、基板の撓み方は基板ごとに異なる。したがって、基板の外周を複数の支持具によって支持する場合、基板と複数の支持具との接触状態もまた基板ごとに異なってしまう。さらに、基板をマスクの上に載置する際に基板とマスクとの間にずれが生じるが、そのずれ方も基板ごとに異なってしまう。そうすると、基板をマスクの上に載置する際に、マスク上での基板の位置が基板ごとに異なってしまうという不都合が生じる。これは、基板とマスクとのアライメントに要する時間の増大に繋がり、製造時間(タクトタイム)の増加に繋がる。
【0006】
従来の比較的小さいサイズの基板では、特許文献1に記載の構成のように、短辺を支持する支持具の高さを一部変更することで、基板ごとの撓み方のばらつきを抑制することができたが、近年の基板サイズの大型化により、支持具の高さの変更では撓み方のばらつきを抑えることが困難になってきている。特許文献2のロボットハンドを用いれば、様々な撓み方に対応することは可能だが、生産性の向上やアライメント精度の向上のためには、撓み方のばらつきそのものを抑えることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、基板の撓み方のばらつきを抑制することが可能な基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板を支持する複数の支持具を有する基板支持装置であって、
前記複数の支持具は、第1傾斜方向に傾斜した支持面を有する第1支持具と、第2傾斜方向に傾斜した支持面を有する第2支持具と、の組み合わせからなり、
前記第1傾斜方向及び前記第2傾斜方向は異なる方向であって、これら複数の前記支持面によって前記基板を支持することを特徴とする基板支持装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の撓み方のばらつきを抑制することが可能な基板支持装置、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子デバイスの製造装置の構成の一部を模式的に示す上視図。
図2】成膜装置の構成を模式的に示す断面図。
図3】基板保持ユニットの構成を示す図。
図4】実施例1の基板保持ユニットを説明する図。
図5】基板の載置方法(基板の受け取り~基板の支持)を説明する図。
図6】基板の載置方法(第1アライメント)を説明する図。
図7】基板の載置方法(第2アライメント)を説明する図。
図8】基板の載置方法(第2アライメント)を説明する図。
図9】基板の載置方法(冷却板下降~挟持解放)を説明する図。
図10】実施例2の基板保持ユニットを説明する図。
図11】実施例3の基板保持ユニットを説明する図。
図12】実施例4の基板保持ユニットを説明する図。
図13】有機EL表示装置の全体図及び、有機EL電子デバイスの1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関し、特に、基板の高精度な搬送及び位置調整のための技術に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。なかでも、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板の搬送精度及び基板とマスクのアライメント精度のさらなる向上が要求されているため、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0013】
<製造装置及び製造プロセス>
図1は、電子デバイスの製造装置の構成の一部を模式的に示す上視図である。図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mm、厚
み約0.5mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0014】
電子デバイスの製造装置は、一般に、図1に示すように、複数の成膜室111、112と、搬送室110とを有する。搬送室110内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット119が設けられている。搬送ロボット119は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0015】
各成膜室111、112にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。搬送ロボット119との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。各成膜室の成膜装置は、成膜対象が有機膜であるか金属膜であるかの違いや蒸着源の違いやマスクの違いなど細かい点で相違する部分はあるものの、基本的な構成(特に基板の搬送やアライメントに関わる構成)はほぼ共通している。以下、各成膜室の成膜装置の共通構成について説明する。
【0016】
<成膜装置>
図2は、成膜装置の構成を模式的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板は水平面(XY平面)と平行となるよう固定されるものとし、このときの基板の短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。またZ軸まわりの回転角をθで表す。
【0017】
成膜装置は、真空チャンバ200を有する。真空チャンバ200の内部は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。真空チャンバ200の内部には、概略、基板保持ユニット210と、マスク220と、マスク台221と、冷却板230と、蒸着源240が設けられる。基板保持ユニット210は、搬送ロボット119から受け取った基板10を保持・搬送する基板支持装置であり、基板ホルダとも呼ばれる。マスク220は、基板10上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、枠状のマスク台221の上に固定されている。成膜時にはマスク220の上に基板10が載置される。したがってマスク220は基板10を載置する載置体ともいう。冷却板230は、成膜時に基板10(のマスク220とは反対側の面)に密着し、基板10の温度上昇を抑えることで有機材料の変質や劣化を抑制する部材である。冷却板230がマグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板とは、磁力によってマスク220を引き付けることで、成膜時の基板10とマスク220の密着性を高める部材である。蒸着源240は、蒸着材料、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成される(いずれも不図示)。
【0018】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、Xアクチュエータ(不図示)、Yアクチュエータ(不図示)、θアクチュエータ(不図示)が設けられている。これらのアクチュエータは、例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成される。基板Zアクチュエータ250は、基板保持ユニット210の全体を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段(基板昇降手段)である。クランプZアクチュエータ251は、基板保持ユニット210の挟持機構(後述)を開閉させるための駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させるための駆動手段である。Xアクチュエータ、Yアクチュエータ、θアクチュエータ(以下まとめて「XYθアクチュエータ」と呼ぶ)は基板10のアライメントのための駆動手段である。XYθアクチュエータは、基板保持ユニット210及び冷却板230の全体を、X方向移動、Y方向移動、θ回転させ
る。なお、実施例1では、マスク220を固定した状態で基板10のX,Y,θを調整する構成としたが、マスク220の位置を調整し、又は、基板10とマスク220の両者の位置を調整することで、基板10とマスク220のアライメントを行ってもよい。
【0019】
真空チャンバ200の上(外側)には、基板10及びマスク220のアライメントのために、基板10及びマスク220それぞれの位置を測定するカメラ260、261が設けられている。カメラ260、261は、真空チャンバ200に設けられた窓を通して、基板10とマスク220を撮影する。その画像から基板10上のアライメントマーク及びマスク220上のアライメントマークを認識することで、各々のXY位置やXY面内での相対ずれを計測することができる。短時間で高精度なアライメントを実現するために、大まかに位置合わせを行う第1アライメント(「ラフアライメント」とも称す)と、高精度に位置合わせを行う第2アライメント(「ファインアライメント」とも称す)の2段階のアライメントを実施することが好ましい。その場合、低解像だが広視野の第1アライメント用のカメラ260と狭視野だが高解像の第2アライメント用のカメラ261の2種類のカメラを用いるとよい。実施例1では、基板10及びマスク220それぞれについて、対向する一対の辺の2箇所に付されたアライメントマークを2台の第1アライメント用のカメラ260で測定し、基板10及びマスク220の4隅に付されたアライメントマークを4台の第2アライメント用のカメラ261で測定する。
【0020】
成膜装置は、制御部270を有する。制御部270は、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、XYθアクチュエータ、及びカメラ260、261の制御の他、基板10の搬送及びアライメント、蒸着源の制御、成膜の制御などの機能を有する。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0021】
なお、基板10の保持・搬送及びアライメントに関わる構成部分(基板保持ユニット210、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、XYθアクチュエータ、カメラ260、261、制御部270など)は、「基板載置装置」、「基板挟持装置」、「基板搬送装置」などとも呼ばれる。
【0022】
<基板保持ユニット>
図3を参照して基板保持ユニット210の構成を説明する。図3は基板保持ユニット210の斜視図である。
【0023】
基板保持ユニット210は、挟持機構によって基板10の周縁部を挟持することにより、基板10を保持・搬送する手段である。具体的には、基板保持ユニット210は、基板10の4辺それぞれを下から支持する複数の支持具300が設けられた支持枠体301と、長辺部の支持具300との間で基板10を挟み込む複数の押圧具302が設けられたクランプ部材303と、を有する。一対の支持具300と押圧具302とで1つの挟持機構が構成される。図3の例では、基板10の短辺に沿って3つの支持具300が配置され、長辺に沿って6つの挟持機構(支持具300と押圧具302のペア)が配置されており、長辺2辺を挟持する構成となっている。ただし挟持機構の構成は図3の例に限られず、処理対象となる基板のサイズや形状あるいは成膜条件などに合わせて、挟持機構の数や配置を適宜変更してもよい。なお、支持具300は「受け爪」又は「フィンガ」とも呼ばれ、
押圧具302は「クランプ」とも呼ばれる。
【0024】
搬送ロボット119から基板保持ユニット210への基板10の受け渡しは例えば次のように行われる。まず、クランプZアクチュエータ251によりクランプ部材303を上昇させ、押圧具302を支持具300から離間させることで、挟持機構を解放状態にする。搬送ロボット119によって支持具300と押圧具302の間に基板10を導入した後、基板10を支持具300によって支持する。この状態で基板Zアクチュエータ250により基板保持ユニット210を駆動することで、基板10を昇降(Z方向移動)させることができる。なお、クランプZアクチュエータ251は基板保持ユニット210と共に上昇/下降するため、基板保持ユニット210が昇降しても挟持機構の状態は変化しない。
【0025】
なお、図3の符号101は、基板10の4隅に付された第2アライメント用のアライメントマークを示し、符号102は、基板10の短辺中央に付された第1アライメント用のアライメントマークを示している。
【0026】
(実施例1)
図4(a)~図4(e)は、実施例1の基板保持ユニット210を説明する図である。
【0027】
図4(a)は、基板保持ユニット210及び基板10を上方から見た模式図である。図に示すように、基板保持ユニット210の支持具は、基板10の周縁部103(支持可能なエリア)を支持する。上述したように、基板10の長辺は支持具300と押圧具302とによって挟持される一方、基板10の短辺は支持具300によって支持されるのみである。ここで、短辺側の支持具は、第1支持具41と第2支持具42との組み合わせを支持具組400とし、基板10の第1辺(実施例1では短辺)の延びる第1方向(実施例1ではX方向)に沿って並ぶ複数の支持具組400からなる第1辺用支持具群を構成する。基板10の第2辺(実施例1では長辺)の延びる第2方向(実施例2ではY方向)に沿って並ぶ複数の支持具300と押圧具302とにより第2辺用支持具群が構成される。
【0028】
図4(d)は支持具組400の側面図、図4(e)は支持具組400の上面図である。支持具組400を構成する第1支持具41は、基板保持ユニット210に保持された基板10に撓みが生じていないと仮定した場合の基板10の表面に平行な仮想面11に対し、第1角度φ1だけ傾斜した第1傾斜面51を有する。また、第2支持具42は、仮想面11に対し第2角度φ2だけ傾斜した第2傾斜面52を有する。第1傾斜面は、第1方向(X方向)に沿って仮想面11からの距離が大きくなるように第1傾斜方向に傾斜し、基板10を支持する支持面を構成する。第2傾斜面は、第1方向(X方向)に沿って仮想面11からの距離が小さくなるように第2傾斜方向に傾斜し、基板10を支持する支持面を構成する。すなわち、第1傾斜方向と第2傾斜方向は異なる方向であり、これら複数の支持面によって基板10の辺縁部(実施例1でた短辺)が支持される。
【0029】
実施例1では、支持具組400は、第1支持具41と、第1支持具41より第1方向側(X方向側)に位置する第2支持具42との組であり、図4(d)に示すように、第1傾斜面51と第2傾斜面52とが向かい合い、第1方向に沿った谷形状となる。第1角度φ1、第2角度φ2は、等しい角度でもよいし、異なる角度でもよい。第1角度φ1、第2角度φ2は、15度~45度とする。
【0030】
図4(b)は、図4(a)のAA線に沿った断面図であり、基板10の中央部における断面図である。図4(c)は、図4(a)のBB線に沿った断面図であり、基板10の短辺部における断面図である。基板10の中央部においては、図4(b)に示すように中央が自重によって下向きに撓む。一方、基板10の短辺部においては、図4(c)に示すように、複数の支持具組400によって谷形状と山形状が交互に形成され、これら谷形状と
山形状に沿った撓みが生じる。
【0031】
このように、実施例1では、短辺部において、基板10の自重を利用して基板10を複数の支持具組400によって形成される谷形状と山形状に沿って積極的に撓ませることにより、基板10ごとの特性の相違によらず、基板保持ユニット210が基板10を保持する際の、基板10の撓み方(撓みの様相、撓みモード)を一定にすることができ、基板による撓み方のばらつきを抑制することができる。
【0032】
以下、図5図9を参照して、基板保持ユニット210が基板10を搬送ロボットから受け取ってマスク220の上に載置するまでの一連の処理について、説明する。
【0033】
図5(a)は、搬送ロボット119のロボットハンド501に保持された基板10を、基板保持ユニット210に受け渡す際の状態を示す。なお、ロボットハンド501に保持された基板10は自重により中央が下に撓んでいる。
【0034】
図5(b)は、基板10の受け渡しが完了し、ロボットハンド501が抜き取られた状態を示す。基板保持ユニット210の複数の支持具組400によって支持された基板10の短辺は、複数の支持具組400の谷形状と山形状によって形成される一定の撓み方で撓む。そのため、ロボットハンド501と基板保持ユニット210の間で基板10の受け渡しを行う際の基板10のずれを抑制できる。
【0035】
次に、図6(a)に示すように、基板10の長辺部が挟持された上で、基板10をマスク220とは接触しない位置まで下降させる。基板10の長辺部の挟持は、クランプ部材303を下降させて押圧具302を所定の押圧力で支持具300に押し当てることによって行われる。基板10の下降は、基板Zアクチュエータ250によって基板保持ユニット210を駆動することによって行われる。なお、基板保持ユニット210の高さは固定したまま、マスク台221をマスク昇降手段によって昇降させることによって、基板10をマスク220に載置してもよい。
【0036】
なお、ここでは、基板10の長辺部を挟持した状態で基板10を下降させているが、基板10を挟持することなく下降させてもかまわない。
【0037】
図6(b)は、第1アライメントを示す図である。第1アライメントは、大まかな位置合わせを行うアライメント処理であり、「ラフアライメント」とも称される。第1アライメントでは、カメラ260によって基板10に設けられた基板アライメントマーク102とマスク220に設けられたマスクアライメントマーク(不図示)を認識し、各々のXY位置やXY面内での相対的なずれを計測し、位置合わせを行う。第1アライメントに用いるカメラ260は、大まかな位置合わせができるように、低解像だが広視野なカメラである。位置合わせの際には、基板10(基板保持ユニット210)の位置を調整してもよいし、マスク220の位置を調整してもよいし、基板10とマスク220の両者の位置を調整してもよい。
【0038】
第1アライメント処理が完了したら、図6(c)に示すように基板10をさらに下降させて、基板10をマスク220上に載置する。ここで、基板10をマスク220上に載置した状態とは、基板10とマスク220が接触している状態を意味する。すなわち、基板10をマスク220上に載置した状態とは、基板10がマスク220と接触開始した時点、基板10とマスク220の接触面積が接触開始時点よりも増えた時点、及び基板10がマスク220に完全に載置された時点のいずれの時点の状態も含む。図7(a)は、基板10がマスク220に完全に載置された状態を示す。
【0039】
図7(b)から図8(c)は第2アライメントを説明する図である。第2アライメントは、高精度な位置合わせを行うアライメント処理であり、「ファインアライメント」とも称される。まず、図7(b)に示すように、カメラ261によって基板10に設けられた基板アライメントマーク101とマスク220に設けられたマスクアライメントマーク(不図示)を認識し、各々のXY位置やXY面内での相対ずれを計測する。カメラ261は、高精度な位置合わせができるように、狭視野だが高解像なカメラである。計測されたずれが閾値を超える場合には、位置合わせ処理が行われる。以下では、計測されたずれが閾値を超える場合について説明する。
【0040】
計測されたずれが閾値を超える場合には、図7(c)に示すように、基板Zアクチュエータ250を駆動して、基板10を上昇させてマスク220から離す。このとき、基板保持ユニット210によって支持される基板10の撓み方が短辺側の複数の支持具組400によって一律になるため、基板10の昇降動作によるランダムな位置ずれの発生を抑制でき、アライメント精度が向上する。
【0041】
図8(a)では、カメラ261によって計測されたずれに基づいてXYθアクチュエータを駆動して、位置合わせを行う。位置合わせの際には、基板10(基板保持ユニット210)の位置を調整してもよいし、マスク220の位置を調整してもよいし、基板10とマスク220の両者の位置を調整してもよい。
【0042】
その後、図8(b)に示すように再び基板10を下降させて、基板10をマスク220上に載置する。そして、図8(c)に示すように、カメラ261によって基板10及びマスク220のアライメントマークの撮影を行い、ずれを計測する。計測されたずれが閾値を超える場合には、上述した位置合わせ処理が繰り返される。
【0043】
ずれが閾値以内になった場合には、図9(a)に示すように、冷却板Zアクチュエータを駆動して、冷却板230を下降させて基板10に密着させる。実施例1では、冷却板230はマグネット板を兼ねており、磁力によってマスク220を引き付けることで、基板10とマスク20の密着性を高める。
【0044】
冷却板(マグネット板)の下降が完了したら、図9(b)に示すように、クランプ部材303を上昇させて、基板10の長辺部の挟持を解除(アンクランプ)する。その後、図9(c)に示すように、基板保持ユニット210を下降させる。
【0045】
以上の工程により、マスク220上への基板10の載置処理が完了し、成膜装置による成膜処理(蒸着処理)が行われる。
【0046】
実施例1によれば、基板保持ユニット210によって基板10を保持する際に、短辺側の複数の支持具組400によって形成される山形状と谷形状に沿って基板10を自重によって撓ませる。これにより、基板10ごとの均質度に差があったとしても、基板10の撓み方を同一とすることができる。したがって、基板10をマスク220に載置する際に載置位置が基板ごとにばらつくことを抑制できる。これにより、アライメントを高精度かつ短時間で完了することができる。さらには、基板への成膜処理を高精度かつ短時間に完了することができる。
【0047】
(実施例2)
図10(a)~図10(e)は、実施例2の基板保持ユニット210を説明する図であり、図4(a)~図4(e)に対応する図である。実施例2の実施例1に対する相違点は、支持具組400は、第2支持具42と、第2支持具42より第1方向側(X方向側)に位置する第1支持具41との組であり、図10(d)に示すように、第1傾斜面51と第
2傾斜面52とが背中合わせになり、第1方向に沿った山形状となる点である。これにより、図10(c)に示すように、基板10の短辺の撓み方が実施例1と異なる態様となるが、基板によらず一定の撓み方で撓むことにより、基板ごとの撓み方のばらつきを抑制する効果は実施例1と同様に得られる。
【0048】
(実施例3)
図11(a)~図11(e)は、実施例3の基板保持ユニット210を説明する図であり、図4(a)~図4(e)に対応する図である。実施例2の実施例1に対する相違点は、基板10の短辺を支持する支持具のうちに、基板10に対向する面が傾斜面ではない第3支持具43が含まれている点である。第3支持具43の上面53は、仮想面11と平行であり、長辺を支持する支持具300と同様の構成である。この場合、さらに、第3支持具43との間で基板10を挟み込む押圧具302を備えてもよい。
【0049】
これにより、基板10の短辺においては、第3支持具43と押圧具302とで挟持により基板10を支持する箇所と、支持具組400の第1支持具41と第2支持具42とで下方からの支持のみにより支持する箇所と、が混在することになる。このような構成によっても、基板10の短辺の撓み方が実施例1と異なる態様となるが、基板によらず一定の撓み方で撓むことにより、基板ごとの撓み方のばらつきを抑制する効果は実施例1と同様に得られる。
【0050】
(実施例4)
図12(a)~図12(e)は、実施例4の基板保持ユニット210を説明する図であり、図4(a)~図4(e)に対応する図である。実施例4の実施例1に対する相違点は、第1支持具41及び第2支持具42が回転可能に構成され、仮想面11に対して第1傾斜面51のなす第1角度φ1及び第2傾斜面52のなす第2角度φ2が可変である点である。詳細には、第1支持具41は、Y方向に延びる回転軸81を有し、回転軸81にはモータ71が接続され、モータ71の駆動力により回転軸81を回転させることで、第1角度φ1を変化させることができる。また、第2支持具42は、Y方向に延びる回転軸82を有し、回転軸82にはモータ72が接続され、モータ72の駆動力により回転軸82を回転させることで、第2角度φ2を変化させることができる。
【0051】
なお、各支持具の回転軸に駆動力を入力するための構成は、回転軸毎に独立のモータを備える構成でもよいし、単独又は支持具の総数より少ない数のモータの出力する駆動力をギア等で構成される駆動伝達機構により各支持具の回転軸に伝達する構成でもよい。第1角度φ1及び第2角度φ2の可変範囲は、-45度から+45度とすることができる。また、第1角度φ1及び第2角度φ2の可変範囲は、-30度から+30度とすることができる。角度の可変角度をマイナスからプラスの範囲とすることにより、1つの支持具組において、2つの支持具の傾斜面が向かい合わせになる(谷形状となる)状態と背中合わせになる(山形状となる)状態とを任意に設定可能となる。
【0052】
実施例4によれば、図12(c)に示すように、例えば、第1支持具41と第2支持具42の傾斜面が向かい合い谷形状となる支持具組400に対し、谷形状が深くなるように傾斜面の角度を変更した第1支持具44と第2支持具45からなる支持具組401を有するようにできる。また、第1支持具46と第2支持具47の傾斜面が背中合わせになり山形状となる支持具組402を有するようにできる。図12(c)に示すように、基板10の短辺を支持する複数の支持具組のうちに、第1角度φ1及び第2角度φ2が異なる支持具組が少なくとも1組含まれるようにしてもよいし、複数の支持具組の各々の第1角度φ1及び第2角度φ2を一斉に変更するようにしてもよい。第1角度φ1及び第2角度φ2の変更は、基板10の種類や成膜装置の使用環境条件等に応じて変更してもよい。
【0053】
なお、実施例4ではモータの駆動力によって第1支持具及び第2支持具の傾斜面の角度が変更される構成を例示したが、モータを有せず、手動で第1支持具及び第2支持具を回転可能な構成としてもよい。この場合、作業者による手作業の角度調整が必要となるが、簡易な構成で第1支持具及び第2支持具の支持面の角度が可変な基板保持ユニットを実現できる。
【0054】
実施例1~3では短辺を支持する支持具の傾斜面の角度は予め設定された固定の角度であったため、簡易な機構で基板の撓みを誘導し、基板ごとの撓み方のばらつきを抑制する効果が得られるという利点がある。実施例4では、短辺を支持する支持具の傾斜面の角度が可変であるため、基板の種類等によって撓み方のばらつきを抑制するのに最も適した形状に基板の撓みを誘導することが可能となる。
【0055】
なお、以上の各実施例では、基板10の短辺を支持する支持具に傾斜面を設ける例を説明したが、基板10の長辺を支持する支持具に傾斜面を設けてもよい。
【0056】
(電子デバイスの製造方法の実施例)
次に、上記の各実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0057】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図13(a)は有機EL表示装置60の全体図、図13(b)は1画素の断面構造を表している。
【0058】
図13(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0059】
図13(b)は、図13(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、実施例では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応する所定パターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0060】
有機EL層を発光素子単位に形成するためには、マスクを介して成膜する方法が用いられる。近年、表示装置の高精細化が進んでおり、有機EL層の形成には開口の幅が数十μmのマスクが用いられる。このようなマスクを用いた成膜の場合、マスクが成膜中に蒸発
源から受熱して熱変形するとマスクと基板との位置がずれてしまい、基板上に形成される薄膜のパターンが所望の位置からずれて形成されてしまう。そこで、これら有機EL層の成膜には本発明にかかる成膜装置(真空蒸着装置)が好適に用いられる。
【0061】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0062】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0063】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0064】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0065】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0066】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0067】
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0068】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0069】
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
10:基板
41:第1支持具
42:第2支持具
210:基板保持ユニット
図1
図2
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