(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025747
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】搬送装置、及び、被搬送物の搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H01L21/68 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130840
(22)【出願日】2023-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 剛史
(72)【発明者】
【氏名】千東 謙太
(72)【発明者】
【氏名】白濱 智宏
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 文弘
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA09
5F131DB22
5F131DB72
5F131DB86
5F131EA03
5F131EB16
(57)【要約】
【課題】被搬送物に割れが発生することを防止できる搬送装置を提供する。
【解決手段】被搬送物(11)を保持する保持面(17)を有する保持テーブル(16)に対して、被搬送物を搬送する搬送装置(30)であって、搬送装置は、被搬送物を保持する保持部(35)、保持面に対して気体を噴射するブローノズル(40)と保持面に向かう方向に吸引力を発生させるバキュームノズル(50)の少なくともいずれかを含むノズルユニット、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を保持する保持面を有する保持テーブルに対して、被搬送物を搬送する搬送装置であって、
該搬送装置は、
被搬送物を保持する保持部と、
該保持面に対して気体を噴射するブローノズルと、該保持面に向かう方向に吸引力を発生させるバキュームノズルと、の少なくともいずれかを含むノズルユニットと、
を備える搬送装置。
【請求項2】
該ブローノズルは、該保持部を該保持面に相対的に接近させる際の進行方向前側に固定されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
該バキュームノズルは、該ブローノズルより、該保持部を該保持面に相対的に接近させる際の進行方向前側に固定されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送装置を用いた被搬送物の搬送方法であって、
該保持部を該保持テーブルの該保持面に対して相対的に接近させながら、該ブローノズルから気体を供給し、少なくとも該保持面に付着した異物を除去する第1ブローステップと、
該保持部を該保持面に対して相対的に接近させながら、該バキュームノズルによって、少なくとも該保持面に付着した異物を除去する第1バキュームステップと、
のいずれかを実施する異物除去ステップと、
該異物除去ステップの後に、搬送アームで該保持面に被搬送物を載置する載置ステップと、
を備える被搬送物の搬送方法。
【請求項5】
該第1ブローステップは、該保持部で被搬送物を保持した状態で実施する請求項4に記載の被搬送物の搬送方法。
【請求項6】
該載置ステップ後、該保持部を該保持面から相対的に離反させながら該ブローノズルから該被搬送物に対して気体を噴射して、該被搬送物に付着した異物を除去する第2ブローステップを備える請求項4に記載の被搬送物の搬送方法。
【請求項7】
該保持面に保持された被搬送物に該保持部を相対的に接近させながら、該ブローノズルから被搬送物に気体を噴射して被搬送物の異物を除去する第3ブローステップと、
該第3ブローステップ後、該保持部で該保持面から被搬送物を搬出する被搬送物搬出ステップと、
をさらに備える請求項4に記載の被搬送物の搬送方法。
【請求項8】
該保持テーブルは、該搬送アームの搬送時に開放されるシャッターを有するプラズマエッチング装置のチャンバー内に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の被搬送物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を搬送する搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスなどの製造に用いる処理装置は、被搬送物を搬送して所要位置まで搬送する搬送装置を備えている。例えば、特許文献1に開示される搬送装置は、ウエーハを吸引保持した保持部を、処理装置の保持テーブル(チャックテーブル)の位置まで搬送し、保持テーブルの保持面にウエーハを載置して受け渡す。
【0003】
特許文献2には、切削装置において、被加工物をチャックテーブルに搬送する搬送手段などに、イオン化したエアーを噴出するイオン化エアー噴出手段を配設し、プラスマイナスのイオンバランスがとれたエアーを被加工物に対して噴出することで、被加工物に静電気が帯電することによるデバイスの静電破壊を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-106390号公報
【特許文献2】特開2002-066865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような搬送装置で被搬送物を搬送する際に、処理装置の保持テーブルの保持面に異物が付着していた場合、被搬送物を保持面に載置する際に、異物を起点に被搬送物に割れが発生するおそれがあった。そのため、被搬送物を保持テーブルの保持面に載置する前に、保持面の異物を除去したいという課題があった。
【0006】
特許文献2の切削装置は、被加工物の帯電防止を目的として、搬送手段から被加工物に向けてイオン化したエアーを噴出するものであり、チャックテーブルや被加工物に付着した異物の除去を実現するものではなかった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、被搬送物に割れが発生することを防止できる搬送装置及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、被搬送物を保持する保持面を有する保持テーブルに対して、被搬送物を搬送する搬送装置であって、該搬送装置は、被搬送物を保持する保持部と、該保持面に対して気体を噴射するブローノズルと、該保持面に向かう方向に吸引力を発生させるバキュームノズルと、の少なくともいずれかを含むノズルユニットと、を備える。
【0009】
該ブローノズルは、該保持部を該保持面に相対的に接近させる際の進行方向前側に固定されることが好ましい。
【0010】
該バキュームノズルは、該ブローノズルより、該保持部を該保持面に相対的に接近させる際の進行方向前側に固定されることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様は、上記の搬送装置を用いた被搬送物の搬送方法であって、該保持部を該保持テーブルの該保持面に対して相対的に接近させながら、該ブローノズルから気体を供給し、少なくとも該保持面に付着した異物を除去する第1ブローステップと、該保持部を該保持面に対して相対的に接近させながら、該バキュームノズルによって、少なくとも該保持面に付着した異物を除去する第1バキュームステップと、のいずれかを実施する異物除去ステップと、該異物除去ステップの後に、搬送アームで該保持面に被搬送物を載置する載置ステップと、を備える。
【0012】
該第1ブローステップは、該保持部で被搬送物を保持した状態で実施する。
【0013】
該載置ステップ後、該保持部を該保持面から相対的に離反させながら該ブローノズルから該被搬送物に対して気体を噴射して、該被搬送物に付着した異物を除去する第2ブローステップを備えてもよい。
【0014】
該保持面に保持された被搬送物に該保持部を相対的に接近させながら、該ブローノズルから被搬送物に気体を噴射して被搬送物の異物を除去する第3ブローステップと、該第3ブローステップ後、該保持部で該保持面から被搬送物を搬出する被搬送物搬出ステップと、をさらに備えてもよい。
【0015】
該保持テーブルは、該搬送アームの搬送時に開放されるシャッターを有するプラズマエッチング装置のチャンバー内に設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の搬送装置及び搬送方法によれば、被搬送物の搬送時に、ブローノズルからの気体の噴射と、バキュームノズルによる吸引力と、の少なくともいずれかを行って、保持テーブルの保持面から異物を除去するので、被搬送物の保持に際して、異物が原因で被搬送物に割れが発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】プラズマエッチング装置の構成を示す図である。
【
図2】搬送装置の第1の実施形態を示す上面図である。
【
図7】搬送装置の第2の実施形態を示す上面図である。
【
図12】搬送装置の第3の実施形態を示す上面図である。
【
図13】第1ブローステップと第1バキュームステップとを同時に行っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態の搬送装置及び搬送方法を適用した処理装置の一例として、プラズマエッチング装置10を示している。プラズマエッチング装置10は、半導体デバイスが形成されたウエーハやパッケージ基板などのワーク11に対して、プラズマ化したガスによってエッチング(プラズマエッチング)を行う装置である。
【0019】
プラズマエッチング装置10を用いて行うプラズマエッチングでは、ワーク11に対して溝を形成したり、ワーク11においてレーザー加工による熱の影響を受けた部分を除去して抗折強度を向上させたりすることができる。なお、プラズマエッチング装置10で実施する加工の内容は、これに限定されない。
【0020】
プラズマエッチング装置10に対してワーク11を搬送する搬送装置30を備える。ワーク11は、プラズマエッチング装置10における加工対象の被加工物であり、かつ、搬送装置30による搬送対象の被搬送物である。
【0021】
プラズマエッチング装置10と搬送装置30は、図示を省略する制御部によって制御される。プラズマエッチング装置10と搬送装置30とを統括して制御する制御部を備えていてもよいし、プラズマエッチング装置10の制御部と搬送装置30の制御部を個別に備えて連係させてもよい。以下の説明におけるプラズマエッチング装置10と搬送装置30の各部の動作は、制御部に記憶した制御プログラムに基づいて、制御部が制御して実行させる。つまり、本発明における搬送方法は、制御部を主体として実施される。
【0022】
プラズマエッチング装置10は、箱型のチャンバー12を有し、チャンバー12の内部には、外気と隔てられるチャンバー内空間13が形成されている。チャンバー12の側壁に、チャンバー内空間13を外部と連通させる開口14が形成されており、開口14を開閉するシャッター15が設けられている。シャッター15を開放することにより、開口14を通して、チャンバー内空間13へのワーク11の搬入と、チャンバー内空間13からのワーク11の搬出と、を行うことができる。ワーク11の搬入及び搬出は、搬送装置30を用いて行われる。
【0023】
チャンバー12の内部に、ワーク11を保持する保持面17を有する保持テーブル16が設けられている。保持テーブル16は、静電吸着によってワーク11を保持面17に保持する静電吸着テーブルである。保持テーブル16は、酸化アルミニウムや酸化チタンなどの誘電体で形成されており、保持テーブル16の内部には電極18が配設されている。電極18には電圧印加部19が接続している。電極18によって保持面17に直流電圧を印加すると、保持面17とワーク11との間に静電吸着力が発生してワーク11が保持される。
【0024】
チャンバー12の内部には、保持テーブル16の上方に位置するガス供給ヘッド20が設けられている。ガス供給ヘッド20は、チャンバー12に対して昇降可能に支持されている。ガス供給ヘッド20の下面に複数のガス吐出口21が形成されており、それぞれのガス吐出口21は、ガス供給ヘッド20の内部に形成したガス供給路22に連通している。ガス供給路22は、チャンバー12の外部に設けたプラズマ発生部23に接続し、ガス供給源24がプラズマ発生部23に接続している。
【0025】
ガス供給源24は、エッチングガスや不活性ガスを混合した混合ガスをプラズマ発生部23に供給する。プラズマ発生部23は、混合ガスに高周波電圧を加える電極を備えており、混合ガスに高周波電圧を作用させることで、混合ガス中のエッチングガスや不活性ガスをプラズマ化(ラジカル化、イオン化など)させる。プラズマ発生部23によってプラズマ化したエッチングガスや不活性ガスが、ガス供給路22を通ってガス供給ヘッド20に供給されて、ガス吐出口21から吐出される。このように、プラズマエッチング装置10は、プラズマ化したガスをチャンバー12の外部からチャンバー内空間13に導入する、リモートプラズマ方式の装置である。
【0026】
チャンバー12の下部に排気管25が接続している。排気管25は、開閉弁26を介して排気ポンプ27に接続している。開閉弁26を開いて排気ポンプ27を駆動させることにより、排気管25を通してチャンバー内空間13からエアー(空気)やガスを排出して、チャンバー内空間13を減圧することができる。
【0027】
プラズマエッチング装置10に対してワーク11を搬送する搬送装置30を備える。搬送装置30は、搬送アーム31と、搬送アーム31を上下方向に移動させる昇降機構32と、搬送アーム31を水平方向に移動させる水平移動機構33と、を備えている。
【0028】
昇降機構32と水平移動機構33はそれぞれ、対象物を直線的に移動させることが可能な周知の駆動機構によって構成されている。例えば、ボールネジをモータによって回転させ、ボールネジの延在する方向に対象物を移動させる構成のボールネジ機構などを、昇降機構32や水平移動機構33に適用可能である。
【0029】
搬送アーム31は、水平方向に延在するアーム部34と、アーム部34によって支持される保持部35と、を有している。保持部35は、ワーク11の形状及び面積に対応した板状の保持プレートであり、保持部35の下面に複数の吸引孔(図示略)が形成されている。保持部35の吸引孔は吸引路36に連通しており、吸引路36は開閉弁37を介して吸引源38に接続している。開閉弁37を開いて吸引源38を駆動させると、吸引路36からエアーが吸引されて、保持部35の吸引孔に吸引力が作用する。この吸引力によって、保持部35の下面にワーク11を保持することができる。
【0030】
なお、搬送アーム31においてワーク11を保持する方法は、上記の構造には限定されない。例えば、保持部35の下面に複数の吸引孔を形成する代わりに、保持部35の下部に設けた複数の吸着パッドに吸引力を作用させ、複数の吸着パッドを介してワーク11を保持する構造でもよい。あるいは、保持部35の下面に、エアーを噴出させる複数の噴出孔を設け、噴出孔からエアーを噴射して、ベルヌーイの定理による効果を利用して、保持部35の下面にワーク11を引き付ける構造でもよい。
【0031】
プラズマエッチング装置10でワーク11をプラズマエッチング加工する際には、搬送装置30によってワーク11をプラズマエッチング装置10に搬送する。搬送装置30は、チャンバー12の外部に位置する支持部(図示略)からワーク11を受け取り、開閉弁37を開くと共に吸引源38を駆動して、保持部35の下面にワーク11を吸引保持する。昇降機構32を動作させて上下方向における搬送アーム31の位置を制御して、搬送アーム31の高さ位置を、チャンバー12の開口14の高さ位置に対して一致させる。プラズマエッチング装置10は、シャッター15を閉鎖位置から開放位置に移動させて、開口14を開放させる。
【0032】
続いて、搬送装置30は、水平移動機構33を動作させて、保持テーブル16側に向けて搬送アーム31を水平方向に移動させる。水平方向に移動する搬送アーム31が、開口14を通過してチャンバー内空間13に入る。保持部35が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させ、ワーク11の下面を保持テーブル16の保持面17に載せる。
【0033】
保持面17にワーク11を載せたら、開閉弁37を閉じ、吸引源38の駆動を停止させて、保持部35にワーク11を吸引保持する状態を解除する。電圧印加部19から電極18に直流電圧を印加し、保持テーブル16と保持面17とワーク11との間に静電吸着力を発生させて、保持面17にワーク11を吸着保持させる。この段階で、搬送アーム31の保持部35から保持テーブル16へのワーク11の受け渡しが完了する。
【0034】
搬送アーム31から保持テーブル16へのワーク11の受け渡しが完了したら、昇降機構32によって搬送アーム31を上昇させてワーク11から保持部35を離間させる。続いて、水平移動機構33によって、搬送アーム31をチャンバー内空間13から離脱させる方向に移動させる。搬送アーム31が開口14を通過したら、シャッター15を閉鎖位置へ移動させて開口14を塞ぐ。
【0035】
プラズマエッチング装置10は、シャッター15を閉じてチャンバー内空間13が密閉されたら、開閉弁26を開いて排気ポンプ27を駆動させ、排気管25を通してチャンバー内空間13を減圧させる。また、ガス供給源24から供給された混合ガスに含まれるエッチングガスや不活性ガスを、プラズマ発生部23でプラズマ化させる。プラズマ化したガスが、ガス供給路22を通ってガス供給ヘッド20のガス吐出口21から吐出され、減圧状態のチャンバー内空間13に導入される。そして、ワーク11に対してプラズマエッチング加工が行われる。
【0036】
ワーク11に対するプラズマエッチング加工が完了したら、排気ポンプ27の駆動を停止し、チャンバー内空間13にエアーを流入させて、チャンバー内空間13の減圧状態を解除して、チャンバー内空間13を大気圧と同程度の圧力にする。チャンバー内空間13の圧力調整が完了したら、シャッター15を閉鎖位置から開放位置へ移動させて開口14を開放する。
【0037】
続いて、プラズマエッチング完了後のワーク11を、搬送装置30を用いてチャンバー内空間13から搬出する。搬送装置30は、水平移動機構33を動作させて、保持テーブル16側に向けて搬送アーム31を水平方向に移動させる。水平方向に移動する搬送アーム31が、開口14を通過してチャンバー内空間13に入る。
【0038】
搬送アーム31が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させて保持部35をワーク11に接近させる。開閉弁37を開き、吸引源38を駆動させて、保持部35にワーク11を吸引保持する。また、電圧印加部19から電極18への直流電圧の印加を停止し、保持テーブル16と保持面17によるワーク11の静電吸着を解除させる。
【0039】
保持部35がワーク11を吸引保持したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を上昇させ、ワーク11を保持した保持部35を保持テーブル16から上方へ離間させる。続いて、水平移動機構33を動作させて、搬送アーム31をチャンバー内空間13から理離脱させる方向、すなわち、保持テーブル16の保持面17から保持部35を離反させる方向に移動させる。搬送アーム31が開口14を通過したら、シャッター15を閉鎖位置へ移動させて開口14を塞ぐ。
【0040】
以上のようにして、プラズマエッチング装置10において、チャンバー内空間13内の保持テーブル16へのワーク11の搬入、チャンバー内空間13内でのワーク11に対するプラズマエッチング加工、加工後のワーク11のチャンバー内空間13からの搬出、が行われる。
【0041】
ところで、プラズマエッチング装置10にワーク11を搬送して保持テーブル16の保持面17にワーク11を保持させる際に、保持面17に異物が付着していると、保持面17にワーク11を保持させる力(搬送装置30の搬送アーム31がワーク11を保持テーブル16に載置して押し付ける力、保持テーブル16が保持面17にワーク11を静電吸着する力、など)に応じて、異物の箇所でワーク11に対して局所的な強い負荷が作用し、異物を起点としてワーク11に割れが発生するおそれがある。
【0042】
特に、プラズマエッチング装置10においてワーク11に対して行われるプラズマエッチング加工は、液体を供給しないドライエッチングであるため、保持テーブル16の保持面17に異物が付着している場合に、洗浄液や加工液などの液体を供給して異物を洗浄することができないという制約がある。
【0043】
ここで、出願人は、搬送装置30が備えるノズルユニットからの気体の噴射や吸引力の発生を利用して、保持テーブル16の保持面17に付着した異物を除去することによって、保持面17を液体によって洗浄できない条件下であっても、保持面17への異物の付着を原因としたワーク11の割れが発生することを防止できるという着想に至った。以下、このような特徴を備えた搬送装置30の実施形態を説明する。
【0044】
図2から
図6は、搬送装置30の第1の実施形態を示している。
図7から
図11は、搬送装置30の第2の実施形態を示している。
図12及び
図13は、搬送装置30の第3の実施形態を示している。
図2、
図7、
図12は、各実施形態の搬送装置30の上面図であり、
図3から
図6、
図8から
図11、
図13は、各実施形態の搬送装置30の断面図である。これらの各実施形態において、チャンバー12の外側からチャンバー内空間13内の保持テーブル16に保持部35を接近させる際の搬送アーム31の移動方向を、進行方向Eaとする。また、チャンバー内空間13内の保持テーブル16からチャンバー12の外側に保持部35を離反させる搬送アーム31の移動方向を、離反方向Ebとする。また、各実施形態では、ワーク11は円形であり、保持部35はワーク11に対応した円板形状である。
【0045】
搬送装置30の第1の実施形態では、ノズルユニットとして、搬送アーム31の保持部35にブローノズル40を備えている。
図2に示すように、ブローノズル40は、保持部35の外縁に沿って、周方向の所定の範囲に設けられている。詳しくは、ブローノズル40は、搬送アーム31がチャンバー12の外側に位置する状態で、保持部35のうち、保持テーブル16側に向く約半周の領域に固定されている。換言すれば、ブローノズル40は、保持部35を保持テーブル16の保持面17に相対的に接近させる際の進行方向Eaの前側に固定されている。
【0046】
ブローノズル40は、内部に空洞状の気体供給路を有する管状構造(円筒構造)の本体部41を備え、本体部41は、保持部35の周方向に延在する湾曲した形状を有している。ブローノズル40は、本体部41の長手方向に所定の間隔で、複数の噴射口42を備えている。各噴射口42は、保持部35の外周方向よりもやや下向きに開口している。つまり、進行方向Ea側の斜め下方に向けて、各噴射口42が形成されている。本体部41の長手方向において複数の噴射口42が形成されている範囲は、保持テーブル16の保持面17の直径よりも広い。つまり、複数の噴射口42から、保持面17の直径をカバー可能な範囲に気体Fが噴射される。
【0047】
本体部41内の気体供給路は、開閉弁43を介して気体供給源44に接続している。開閉弁43を開いて気体供給源44を駆動させると、気体供給源44から送出された気体Fが、本体部41の気体供給路を通って、ブローノズル40の噴射口42から噴射される。気体供給源44から送出される気体Fは、例えば、エアー(空気)や窒素などの不活性ガスであり、ブローノズル40から噴射されて保持面17やワーク11に対して接触したときに、保持面17やワーク11に対して悪影響を及ぼさない性質の気体が選択される。
【0048】
以上のように構成された第1の実施形態の搬送装置30では、少なくとも、ワーク11を保持テーブル16に搬入する際に、ブローノズル40からの気体Fの噴射によって、保持テーブル16の保持面17に付着した異物を除去する異物除去ステップを行う。
【0049】
異物除去ステップでは、
図3に示すように、第1ブローステップを行う。第1ブローステップは、ワーク11を保持部35で保持した状態で実施され、保持部35をチャンバー12の外部からチャンバー内空間13に移動させて保持テーブル16に接近させる動作中に、ブローノズル40から気体Fを噴射し、保持面17に付着した異物Dを除去する。また、第1ブローステップでは、ブローノズル40と保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物についても、ブローノズル40から噴射される気体Fによって、保持面17の外側に吹き飛ばして除去することができる。
【0050】
詳しくは、ワーク11を保持テーブル16に搬入する際に、シャッター15を開放動作させて開口14を開く。そして、保持部35がワーク11を保持している状態の搬送アーム31を、水平移動機構33によって保持テーブル16の保持面17に対して進行方向Eaに移動させ、保持部35と保持面17を相対的に接近させる。その際に、開閉弁43を開いて気体供給源44を駆動させて、ブローノズル40の噴射口42から気体Fを噴射する。
【0051】
ワーク11を保持する保持部35が開口14を通過して保持テーブル16に接近すると、進行方向Eaの前側に配設したブローノズル40から噴射された気体Fが、保持面17に対して吹き付けられ、保持面17に付着した異物Dや、保持面17の周辺に浮遊する異物を、気体Fの圧力で吹き飛ばして保持面17及びその周辺から除去する。これにより、ワーク11を保持テーブル16に受け渡す前に、保持面17上に異物が無いクリーンな状態にさせることができる。
【0052】
保持部35を保持テーブル16の保持面17に相対的に接近させる際の進行方向Eaの前側にブローノズル40を設置し、保持部35を進行方向Eaに移動させながら、ブローノズル40からの気体Fの噴射を行うので、搬送アーム31の移動距離を活かして保持面17の全体に気体Fを噴射し、保持面17の径方向外側に異物Dを排出することができる。
【0053】
第1ブローステップの後、載置ステップを行う。
図4に示すように、載置ステップでは、ワーク11の全体が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させ、ワーク11を保持面17に載せる。ワーク11を保持部35に吸引保持する状態を解除すると共に、電圧印加部19から電極18に電圧印加を行ってワーク11を保持面17に吸着保持させる。
【0054】
先に実施した第1ブローステップにおいて、ブローノズル40から気体Fを噴射して保持面17から異物を除去しているので、保持面17に載せたワーク11の下面側に異物が入り込まず、保持面17にワーク11を保持させる際に、ワーク11に対して局所的な負荷が作用せず、異物を起点としたワーク11の割れを防止できる。
【0055】
また、第1ブローステップは、保持部35でワーク11を保持した状態で実施し、チャンバー内空間13にワーク11を搬入するために行うシャッター15の開放動作を利用して、ブローノズル40を備えた保持部35に開口14を通過させて、ブローノズル40から保持面17に向けて気体Fを噴射可能な状態にさせる。つまり、保持面17から異物Dを除去する清掃のためだけにシャッター15を開放動作させることがないので、開口14が開放される時間を最小限にできる。さらに、第1ブローステップは、ワーク11を保持テーブル16に搬入する際に搬送アーム31が移動する時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0056】
チャンバー内空間13にある保持テーブル16にワーク11を搬入する際は、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐために、大気へのチャンバー内空間13の開放頻度を最低限にしたいという要望がある。ワーク11の搬入時に異物除去を実施する第1ブローステップによれば、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。
【0057】
載置ステップ後、第2ブローステップを行う。
図5に示すように、第2ブローステップでは、保持テーブル16にワーク11を受け渡した搬送アーム31を、チャンバー内空間13からチャンバー12の外側に移動させる動作中に、ブローノズル40から気体Fを噴射し、ワーク11に付着した異物を除去する。また、第2ブローステップでは、ブローノズル40とワーク11及び保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物についても、ブローノズル40から噴射される気体Fによって、保持面17の外側に吹き飛ばして除去することができる。
【0058】
詳しくは、保持部35がワーク11の保持を解除した状態の搬送アーム31を、昇降機構32を動作させて上昇させ、続いて、水平移動機構33を動作させて搬送アーム31を離反方向Ebへ移動させ、保持部35を保持面17から相対的に離反させながらブローノズル40の噴射口42から気体Fを噴射する。ブローノズル40から噴射された気体Fが、ワーク11の上面に吹き付けられ、ワーク11の上面に付着した異物(図には示していない)や、ワーク11及び保持面17の周辺に浮遊する異物を吹き飛ばして、ワーク11の径方向外側に排出する。
【0059】
これにより、保持テーブル16に受け渡した後のワーク11上に異物が無いクリーンな状態にさせることができ、その後にワーク11に対して行うプラズマエッチングを、異物の影響を受けずに実施させることができる。
【0060】
第2ブローステップでは、ワーク11を保持テーブル16に受け渡した後の搬送アーム31を、チャンバー内空間13から離脱させる離反方向Ebに移動させながら、ブローノズル40からの気体Fの噴射を行うので、搬送アーム31の移動距離を活かしてワーク11の上面全体に気体Fを噴射し、ワーク11の径方向外側に異物を排出することができる。
【0061】
また、第2ブローステップは、チャンバー内空間13からチャンバー12の外部に搬送アーム31を離脱させる際に実施されるので、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。さらに、第2ブローステップは、保持テーブル16から保持部35を離反させる(チャンバー内空間13から搬送アーム31を離脱させる)移動時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0062】
第2ブローステップを実施しながら離反方向Ebに移動する搬送アーム31が、開口14を通過してチャンバー内空間13の外側に出たら、シャッター15を閉鎖動作させて開口14を閉じる。
【0063】
続いて、チャンバー内空間13を減圧し、プラズマ発生部23でプラズマ化したガスを、ガス供給ヘッド20からチャンバー内空間13に導入して、ワーク11に対してプラズマエッチング加工を行う。プラズマエッチングが完了したら、チャンバー内空間13の減圧状態を解除し、シャッター15を開放位置に移動させる。
【0064】
プラズマエッチング後、第3ブローステップを行う。
図6に示すように、第3ブローステップでは、ワーク11を保持していない搬送アーム31をチャンバー12の外部からチャンバー内空間13に移動させる動作中に、ブローノズル40から気体Fを噴射し、ワーク11に付着した異物を除去する。また、第3ブローステップでは、ブローノズル40とワーク11及び保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物についても、ブローノズル40から噴射される気体Fによって、保持面17の外側に吹き飛ばして除去することができる。
【0065】
詳しくは、保持部35がワーク11を保持していない状態の搬送アーム31を、水平移動機構33によって保持テーブル16の保持面17に対して進行方向Eaに移動させ、保持部35と保持面17とを相対的に接近させながら、ブローノズル40の噴射口42から気体Fを噴射する。
【0066】
プラズマエッチング後にシャッター15を開放位置に移動させて開口14を開放しており、進行方向Eaに移動する保持部35が開口14を通過して保持テーブル16に接近すると、ブローノズル40から噴射された気体Fが、ワーク11の上面に吹き付けられ、ワーク11の上面に付着した異物や、ワーク11及び保持面17の周辺に浮遊する異物を、ワーク11の径方向外側に排出する。
【0067】
これにより、先の第2ブローステップ以降にワーク11に付着した異物や、プラズマエッチング加工の際に発生してワーク11に付着した異物などを、ワーク11から除去することができ、加工後のワーク11をクリーンな状態にさせることができる。
【0068】
第3ブローステップは、チャンバー内空間13からワーク11を搬出する準備段階として、進行方向Eaに搬送アーム31を移動させて保持テーブル16に接近させる動作を利用して行われる。そのため、ワーク11から異物を除去する清掃のためだけにシャッター15を開放動作させることがないので、開口14が開放される時間を最小限にでき、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。さらに、第3ブローステップは、保持テーブル16に保持部35を接近させる(チャンバー内空間13に搬送アーム31を挿入させる)移動時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0069】
搬送アーム31がチャンバー内空間13に挿入され、保持部35が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させ、保持部35にワーク11を吸引保持する。また、保持テーブル16の保持面17へのワーク11の吸着保持を解除する。第3ブローステップにおいて、ブローノズル40から気体Fを噴射してワーク11の上面から異物を除去しているので、保持部35の下面とワーク11の上面との間に異物が入り込まない。従って、保持部35にワーク11を保持させる際に、異物を起点としてワーク11が割れることを防止できる。
【0070】
第3ブローステップ後、被搬送物搬出ステップを行う。被搬送物搬出ステップでは、保持部35がワーク11を保持した状態の搬送アーム31を、昇降機構32を動作させて上昇させ、続いて、水平移動機構33を動作させて搬送アーム31を離反方向Ebへ移動させる。
【0071】
この被搬送物搬出ステップの際に、第4ブローステップとして、ブローノズル40から気体Fを噴射して、保持面17の上面を清掃することも可能である。プラズマエッチングの際には、保持面17の上面はワーク11に覆われていて異物の付着が生じにくい状態であるが、プラズマエッチング後に保持面17からワーク11を引き上げた後に、チャンバー内空間13に浮遊していた異物が保持面17に付着する可能性がある。このような保持面17上の異物を、第4ブローステップの実施によって除去することができる。なお、次に加工するワーク11を保持テーブル16に搬入する際に、先に説明した第1ブローステップを実施することで、保持面17上の異物を除去できるので、第4ブローステップは実施しなくても良い。
【0072】
第4ブローステップが有用な場合として、例えば、次のプラズマエッチング加工までの待機時間が長く、保持面17上に異物が付着したままの状況が長く続くことにより、異物が周囲の空気中の水分を吸収して保持面17から離れにくくなる(固着する)場合などが挙げられる。このような場合には、第4ブローステップを実施して保持面17を清掃してから、一連の加工サイクルを完了することで、保持面17への異物の付着防止効果が向上する。
【0073】
第4ブローステップの実施の有無に関わらず、離反方向Ebへ移動する搬送アーム31が開口14を通過したら、シャッター15を閉鎖位置に移動させて開口14を閉じ、チャンバー内空間13を大気に対して遮断された密閉状態にして、被搬送物搬出ステップを完了する。
【0074】
このようにして、プラズマエッチング装置10における一連の加工と、第1の実施形態の搬送装置30による一連の搬送動作とが、完了する。
【0075】
なお、上記のいずれのブローステップでも、複数回実施して異物除去効果を高めても良い。詳しくは、1度のブローステップにおいて、保持部35を進行方向Eaと離反方向Ebに複数回移動させながらブローノズル40から気体Fを噴射することによって、保持面17及びその周辺への気体Fの吹き付けを複数回実施することができる。
【0076】
また、それぞれのブローステップにおける、搬送アーム31の移動速度を変更することも可能である。例えば、搬送アーム31の移動速度を遅くして、保持面17やワーク11に対する単位面積当たりの気体Fの吹き付けの総量を多くして、異物除去効果を向上させることができる。
【0077】
さらに、気体供給源44から送出される気体の流速や流量を可変にして、それぞれのブローステップにおいて、ブローノズル40から噴射される気体Fの風量や風圧を変更することも可能である。例えば、保持面17やワーク11への異物の付着が発生しやすい条件下では、ブローノズル40から噴射する気体Fの風量や風圧を大きくするように制御する。
【0078】
以上のように、第1の実施形態の搬送装置30では、ワーク11を保持テーブル16の保持面17に搬入する際や、ワーク11を保持テーブル16の保持面17から搬出する際に、保持部35に設けたブローノズル40から気体Fを噴射して(ブローステップを実施して)、保持面17やワーク11を洗浄して異物を除去することができる。気体Fの噴射による洗浄であるため、ワーク11に対してドライ加工であるプラズマエッチングを行うプラズマエッチング装置10においても、効果的な洗浄を実施することが可能である。
【0079】
搬送装置30の第2の実施形態では、ノズルユニットとして、搬送アーム31の保持部35にバキュームノズル50を備えている。
図7に示すように、バキュームノズル50は、保持部35の外縁に沿って、周方向の所定の範囲に設けられている。詳しくは、バキュームノズル50は、保持部35のうち、搬送アーム31がチャンバー12の外側に位置する状態で、保持テーブル16側に向く約半周の領域に固定されている。換言すれば、バキュームノズル50は、保持部35を保持テーブル16の保持面17に相対的に接近させる際の進行方向Eaの前側に固定されている。
【0080】
バキュームノズル50は、内部に空洞状の気体吸引路を有する管状構造(角筒構造)の本体部51を備え、本体部51は、保持部35の周方向に延在する湾曲した形状を有している。本体部51の下面側に吸引口52を備えている。吸引口52は下向きに開口しており、本体部51の長手方向の略全体に亘って連続して吸引口52が形成されている。本体部51の長手方向において吸引口52が形成されている範囲は、保持テーブル16の保持面17の直径よりも広い。つまり、吸引口52に、保持面17の直径をカバー可能な範囲の吸引力Gを作用させることができる。
【0081】
図8から
図11に示すバキュームノズル50の吸引口52は、進行方向Ea及び離反方向Ebに対して略垂直(真下)に向く形状であるが、バキュームノズル50が備える吸引口の形状はこれに限定されない。例えば、バキュームノズル50は、下方に進むほど進行方向Eaの前側に傾斜した形状の吸引口を備えても良い。また、バキュームノズル50は、異なる方向に開口する複数の吸引口を備えていても良い。
【0082】
本体部51内の気体吸引路は、開閉弁53を介して吸引源54に接続している。開閉弁53を開いて吸引源54を駆動させると、吸引口52からエアーが吸引され、吸引力Gが発生する。なお、
図8では、吸引力Gを表す矢印を、バキュームノズル50の長手方向に間隔を空けて間欠的に示しているが、実際には、バキュームノズル50の長手方向に連続して形成された吸引口52の全体に亘って吸引力Gが作用する。
【0083】
以上のように構成された第2の実施形態の搬送装置30では、少なくとも、ワーク11を保持テーブル16に搬送する際に、バキュームノズル50に作用する吸引力Gによって、保持テーブル16の保持面17に付着した異物を除去する異物除去ステップを行う。
【0084】
異物除去ステップでは、
図8に示すように、第1バキュームステップを行う。第1バキュームステップは、ワーク11を保持部35で保持した状態で実施され、保持部35をチャンバー12の外部からチャンバー内空間13に移動させて保持テーブル16に接近させる動作中に、バキュームノズル50において保持面17に向かう方向に吸引力Gを発生させて、保持面17に付着している異物Dや、バキュームノズル50と保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物を吸引して除去する。つまり、バキュームノズル50による吸引力Gが作用する方向(保持面17に向かう方向)とは、保持面17に付着した異物と、バキュームノズル50と保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物、の少なくともいずれかに吸引力を発生させられる方向を示す。
【0085】
詳しくは、ワーク11を保持テーブル16に搬入する際に、シャッター15を開放動作させて開口14を開く。そして、保持部35がワーク11を保持している状態の搬送アーム31を、水平移動機構33によって保持テーブル16の保持面17に対して進行方向Eaに移動させ、保持部35と保持面17とを相対的に接近させる。その際に、開閉弁53を開いて吸引源54を駆動させて、バキュームノズル50の吸引口52に吸引力Gを作用させる。
【0086】
ワーク11を保持する保持部35が開口14を通過して保持テーブル16に接近すると、進行方向Eaの前側に配設したバキュームノズル50の吸引口52に作用する吸引力Gによって、保持面17に付着した異物Dや、保持面17の周辺に浮遊する異物が、吸引口52から吸引されて除去される。これにより、ワーク11を保持テーブル16に受け渡す前に、保持面17上に異物が無いクリーンな状態にさせることができる。
【0087】
保持部35を保持テーブル16の保持面17に相対的に接近させる際の進行方向Eaの前側にバキュームノズル50を設置し、保持部35を進行方向Eaに移動させながら、バキュームノズル50による異物Dの吸引を行うので、搬送アーム31の移動距離を活かして保持面17の全体に吸引力Gを作用させて、保持面17から異物Dを除去することができる。
【0088】
第1バキュームステップの後、載置ステップを行う。
図9に示すように、載置ステップでは、ワーク11の全体が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させ、ワーク11を保持面17に載せる。ワーク11を保持部35に吸引保持する状態を解除すると共に、電圧印加部19から電極18に電圧印加を行って保持面17にワーク11を吸着保持させる。
【0089】
先に実施した第1バキュームステップにおいて、バキュームノズル50に発生させた吸引力Gで保持面17から異物を除去しているので、保持面17に載せたワーク11の下面側に異物が入り込まず、保持面17にワーク11を保持させる際に、ワーク11に対して局所的な負荷が作用せず、異物を起点としたワーク11の割れを防止できる。
【0090】
また、第1バキュームステップは、保持部35でワーク11を保持した状態で実施し、チャンバー内空間13にワーク11を搬入するために行うシャッター15の開放動作を利用して、バキュームノズル50を備えた保持部35に開口14を通過させて、バキュームノズル50によって保持面17上の異物Dを吸引除去可能な状態にさせることができる。つまり、保持面17から異物Dを除去する清掃のためだけにシャッター15を開放動作させることがないので、開口14が開放される時間を最小限にできる。さらに、第1バキュームステップは、ワーク11を保持テーブル16に搬入する際に搬送アーム31が移動する時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0091】
従って、ワーク11の搬入時に異物除去を実施する第1バキュームステップによれば、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。
【0092】
載置ステップ後、第2バキュームステップを行う。
図10に示すように、第2バキュームステップでは、保持テーブル16にワーク11を受け渡した搬送アーム31を、チャンバー内空間13からチャンバー12の外側に移動させる動作中に、バキュームノズル50に吸引力Gを発生させ、ワーク11に付着した異物を吸引して除去する。また、第2バキュームステップでは、バキュームノズル50とワーク11及び保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物についても、吸引力Gによってバキュームノズル50に吸引して除去することができる。
【0093】
詳しくは、保持部35がワーク11の保持を解除した状態の搬送アーム31を、昇降機構32を動作させて上昇させ、続いて、水平移動機構33を動作させて搬送アーム31を離反方向Ebへ移動させ、保持部35を保持面17から相対的に離反させながらバキュームノズル50の吸引口52からの吸引を行い、ワーク11の上面に付着した異物(図には示していない)や、ワーク11及び保持面17の周辺に浮遊する異物を吸引して除去する。
【0094】
これにより、保持テーブル16に受け渡した後のワーク11上に異物が無いクリーンな状態にさせることができ、その後にワーク11に対して行うプラズマエッチングを、異物の影響を受けずに実施させることができる。
【0095】
第2バキュームステップでは、ワーク11を保持テーブル16に受け渡した後の搬送アーム31を、チャンバー内空間13から離脱させる離反方向Ebに移動させながら、バキュームノズル50での吸引を行うので、搬送アーム31の移動距離を活かしてワーク11の上面全体に吸引力を作用させて、ワーク11から異物を除去することができる。
【0096】
また、第2バキュームステップは、チャンバー内空間13からチャンバー12の外部に搬送アーム31を離脱させる際に実施されるので、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。さらに、第2バキュームステップは、保持テーブル16から保持部35を離反させる(チャンバー内空間13から搬送アーム31を離脱させる)移動時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0097】
第2バキュームステップを実施しながら離反方向Ebに移動する搬送アーム31が、開口14を通過してチャンバー内空間13の外側に出たら、シャッター15を閉鎖動作させて開口14を閉じる。
【0098】
続いて、チャンバー内空間13を減圧し、プラズマ発生部23でプラズマ化したガスを、ガス供給ヘッド20からチャンバー内空間13に導入して、ワーク11に対してプラズマエッチング加工を行う。プラズマエッチングが完了したら、チャンバー内空間13の減圧状態を解除し、シャッター15を開放位置に移動させる。
【0099】
プラズマエッチング後、第3バキュームステップを行う。
図11に示すように、第3バキュームステップでは、ワーク11を保持していない搬送アーム31をチャンバー12の外部からチャンバー内空間13に移動させる動作中に、バキュームノズル50に吸引力Gを発生させ、ワーク11に付着した異物を吸引して除去する。また、第3バキュームステップでは、バキュームノズル50とワーク11及び保持面17との周辺の雰囲気中に浮遊する異物についても、吸引力Gによってバキュームノズル50に吸引して除去することができる。
【0100】
詳しくは、保持部35がワーク11を保持していない状態の搬送アーム31を、水平移動機構33によって保持テーブル16の保持面17に対して進行方向Eaに移動させ、保持部35と保持面17を相対的に接近させながら、バキュームノズル50の吸引口52に吸引力Gを作用させる。
【0101】
プラズマエッチング後にシャッター15を開放位置に移動させて開口14を開いており、進行方向Eaに移動する保持部35が開口14を通過して保持テーブル16に接近すると、バキュームノズル50の吸引力Gがワーク11の上面に作用し、ワーク11の上面に付着した異物や、ワーク11及び保持面17の周辺に浮遊する異物が、バキュームノズル50の吸引口52に吸い込まれてワーク11から除去される。
【0102】
これにより、先の第2バキュームステップ以降にワーク11に付着した異物や、プラズマエッチング加工の際に発生してワーク11に付着した異物などを、ワーク11から除去することができ、加工後のワーク11をクリーンな状態にさせることができる。
【0103】
第3バキュームステップは、チャンバー内空間13からワーク11を搬出する準備段階として、進行方向Eaに搬送アーム31を移動させて保持テーブル16に接近させる動作を利用して行われる。そのため、ワーク11から異物を除去する清掃のためだけにシャッター15を開放動作させることがないので、開口14が開放される時間を最小限にでき、チャンバー12の開口14の開閉頻度を削減して、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐ効果が得られる。さらに、第3バキュームステップは、保持テーブル16に保持部35を接近させる(チャンバー内空間13に搬送アーム31を挿入させる)移動時間に実施され、異物除去のための時間を別途必要としないので、生産性を低下させることがない。
【0104】
搬送アーム31がチャンバー内空間13に挿入され、保持部35が保持テーブル16の直上に達したら、昇降機構32を動作させて搬送アーム31を下降させ、保持部35にワーク11を吸引保持する。また、保持テーブル16の保持面17へのワーク11の吸着保持を解除する。第3バキュームステップにおいて、バキュームノズル50による吸引を行ってワーク11の上面から異物を除去しているので、保持部35の下面とワーク11の上面との間に異物が入り込まない。従って、保持部35にワーク11を保持させる際に、異物を起点としてワーク11が割れることを防止できる。
【0105】
第3バキュームステップ後、被搬送物搬出ステップを行う。被搬送物搬出ステップでは、保持部35がワーク11を保持した状態の搬送アーム31を、昇降機構32を動作させて上昇させ、続いて、水平移動機構33を動作させて搬送アーム31を離反方向Ebへ移動させる。
【0106】
この被搬送物搬出ステップの際に、第4バキュームステップとして、バキュームノズル50による吸引を行って、保持面17の上面を清掃することも可能である。プラズマエッチング後に保持面17からワーク11を引き上げた後に、チャンバー内空間13に浮遊していた異物が保持面17に付着した場合、このような保持面17上の異物を、第4バキュームステップの実施によって除去することができる。なお、次に加工するワーク11を保持テーブル16に搬入する際に、先に説明した第1バキュームステップを実施することで、保持面17上の異物を除去できるので、第4バキュームステップは実施しなくても良い。
【0107】
上記の第4ブローステップの場合と同様に、第4バキュームステップが有用な場合として、例えば、次のプラズマエッチング加工までの待機時間が長い場合が挙げられる。このような場合には、第4バキュームステップを実施して保持面17を清掃してから一連の加工サイクルを完了することで、保持面17上の異物を除去する効果が向上する。
【0108】
第4バキュームステップの実施の有無に関わらず、離反方向Ebへ移動する搬送アーム31が開口14を通過したら、シャッター15を閉鎖位置に移動させて開口14を閉じ、チャンバー内空間13を大気に対して遮断された密閉状態にして、被搬送物搬出ステップを完了する。
【0109】
このようにして、プラズマエッチング装置10における一連の加工と、第2の実施形態の搬送装置30による一連の搬送動作とが、完了する。
【0110】
なお、上記のいずれのバキュームステップでも、複数回実施して異物除去効果を高めても良い。詳しくは、1度のバキュームステップにおいて、保持部35を進行方向Eaと離反方向Ebに複数回移動させながらバキュームノズル50に吸引力Gを発生させることによって、保持面17及びその周辺への吸引動作を複数回実施することができる。
【0111】
また、それぞれのバキュームステップにおける、搬送アーム31の移動速度を変更することも可能である。例えば、搬送アーム31の移動速度を遅くして、保持面17やワーク11に対する単位面積当たりの吸引時間を長くして、異物除去効果を向上させることができる。
【0112】
さらに、吸引源54の吸引力を可変にして、それぞれのバキュームステップにおいて、バキュームノズル50の吸引力Gを変更することも可能である。例えば、保持面17やワーク11への異物の付着が発生しやすい条件下では、バキュームノズル50の吸引力Gを大きくするように制御する。
【0113】
以上のように、第2の実施形態の搬送装置30では、ワーク11を保持テーブル16の保持面17に搬入する際や、ワーク11を保持テーブル16の保持面17から搬出する際に、保持部35に設けたバキュームノズル50による吸引を行って、保持面17やワーク11を洗浄して異物を除去することができる。吸引による洗浄であるため、ワーク11に対してドライ加工であるプラズマエッチングを行うプラズマエッチング装置10においても、効果的な洗浄を実施することが可能である。
【0114】
搬送装置30の第3の実施形態では、搬送アーム31が備えるノズルユニットとして、保持部35にブローノズル40とバキュームノズル50の両方を固定している。
図12及び
図13に示すように、ブローノズル40とバキュームノズル50の基本的な構造は、上記の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であるが、バキュームノズル50が、ブローノズル40よりも、保持部35を保持テーブル16の保持面17に相対的に接近させる際の進行方向Eaの前側に固定されている。換言すれば、バキュームノズル50が、ブローノズル40よりも、保持部35の径方向外側に配置されている。バキュームノズル50は、保持部35に対して支持ブラケット55を介して支持されており、ブローノズル40を跨ぐように径方向外側に配置される。
【0115】
図13に示すように、バキュームノズル50はさらに、ガイドプレート56を備えている。ガイドプレート56は、本体部51のうち、径方向外側の壁部を下方に延長して構成されており、下方に進むにつれて径方向内側へ入り込む傾斜形状になっている。
【0116】
保持部35がワーク11を保持している状態で、ワーク11の下面よりも下方にガイドプレート56の下端が突出しないように構成されている。この構成により、ワーク11を保持テーブル16の保持面17に載置する載置ステップの際に、ガイドプレート56は保持面17に接触せず、ガイドプレート56が保持面17を損傷させたり、ガイドプレート56が保持部35の下降を妨げたりすることを防止できる。
【0117】
また、ワーク11を保持面17に搬入する際には、ワーク11の下面が保持面17に接触しないように搬送アーム31の高さ位置を設定した上で、水平移動機構33によって搬送アーム31を水平方向に移動させる。そのため、ワーク11の下面よりも下方にガイドプレート56の下端が突出しないように構成することにより、搬送アーム31を水平方向に移動させる際に、ガイドプレート56が保持テーブル16に対して干渉することを防止できる。
【0118】
第3の実施形態の搬送装置30は、上記の第1及び第2の実施形態と同様に、異物除去ステップとして、少なくとも、ブローノズル40からの気体Fの噴射を用いた上記の第1ブローステップと、バキュームノズル50に発生させた吸引力Gを用いた上記の第1バキュームステップと、を行い、ワーク11を保持テーブル16の保持面17へ搬入する際に、保持面17上の異物や、保持面17の周辺を浮遊する異物を除去する。
【0119】
また、第3の実施形態の搬送装置30は、載置ステップ後、ブローノズル40からの気体Fの噴射を用いた上記の第2ブローステップと、バキュームノズル50に発生させた吸引力Gを用いた上記の第2バキュームステップと、を行い、ワーク11の上面に付着した異物や、ワーク11及び保持面17の周辺を浮遊する異物を除去する。
【0120】
また、第3の実施形態の搬送装置30は、プラズマエッチング装置10でのプラズマエッチング加工後、ブローノズル40からの気体Fの噴射を用いた上記の第3ブローステップと、バキュームノズル50に発生させた吸引力Gを用いた上記の第3バキュームステップと、を行い、ワーク11の上面に付着した異物や、ワーク11及び保持面17の周辺を浮遊する異物を除去する。
【0121】
第3の実施形態の搬送装置30は、さらに、被搬送物搬出ステップの際に、ブローノズル40からの気体Fの噴射を用いた上記の第4ブローステップと、バキュームノズル50に発生させた吸引力Gを用いた上記の第4バキュームステップと、を行って、保持面17上の異物や、保持面17の周辺を浮遊する異物を除去してもよい。
【0122】
ブローノズル40とバキュームノズル50とを保持部35の径方向に隣接して設置し、ブローノズル40から気体Fを噴射するブローステップと、バキュームノズル50に吸引力Gを発生させるバキュームステップと、を同時期に行うことによって、ブローノズル40から噴射した気体Fで径方向外側に向けて排除した異物Dを、バキュームノズル50に吸引して回収することができる。これにより、保持面17やワーク11を洗浄することに加えて、保持面17の周囲に異物Dを飛散させることを防ぐ効果が得られる。つまり、プラズマエッチング装置10のチャンバー内空間13において、保持面17やワーク11以外の箇所についても、クリーンな状態にさせることができる。
【0123】
特に、保持部35の径方向外側(進行方向Ea側)に気体Fを噴射するブローノズル40に対して、さらに径方向外側(進行方向Ea側)にバキュームノズル50を配置しているので、ブローノズル40からの気体Fで浮き上がらせた異物Dが進行する先にバキュームノズル50の吸引口52が配設されており、吸引口52から効率的に異物Dを吸引して回収できる。
【0124】
さらに、ブローノズル40からの気体Fで浮き上がらせた異物Dは、バキュームノズル50に設けたガイドプレート56に沿って吸引口52側に進みやすくなっており、より一層効率的に異物Dを吸引できる。
【0125】
なお、ノズルユニットとして、ブローノズル40とバキュームノズル50の両方を備える場合に、状況に応じて、ブローノズル40からの気体Fの供給と、バキュームノズル50による吸引力Gの発生と、のいずれか一方だけを選択的に実施することも可能である。
【0126】
一例として、搬送アーム31を進行方向Eaに移動させてワーク11を保持テーブル16の保持面17に搬入する際には、ブローノズル40から気体Fを噴射させつつ、バキュームノズル50での吸引を行い、第1エアブローステップと第1バキュームステップの両方を実施する。その後は、搬送アーム31を離反方向Ebに移動させる際に、第2エアブローステップと第2バキュームステップのいずれか一方のみを行う。また、搬送アーム31を再び進行方向Eaに移動させる際に、第3エアブローステップと第3バキュームステップのいずれか一方のみを行う。
【0127】
以上に説明した通り、上記の各実施形態の搬送装置30と、搬送装置30を用いた搬送方法とによれば、保持部35が備えるブローノズル40からの気体Fの噴射や、保持部35が備えるバキュームノズル50での吸引を用いて、保持テーブル16の保持面17から異物を除去するので、被搬送物であるワーク11を保持面17に保持させる際に、ワーク11に割れが発生することを防止できる。
【0128】
また、保持部35が備えるブローノズル40からの気体Fの噴射や、保持部35が備えるバキュームノズル50での吸引を用いて、ワーク11自体からも異物を除去できるので、ワーク11に割れが発生することを、より確実に防止できる。
【0129】
保持面17にワーク11を搬入する際の搬送アーム31の進行方向Eaへの挿入動作や、ワーク11を保持面17に受け渡した後の搬送アーム31の離反方向Ebへの離脱動作や、ワーク11を保持面17から搬出するための搬送アーム31の進行方向Eaへの再挿入動作などに伴って、ブローノズル40からの気体Fの噴射や、バキュームノズル50での吸引力Gの発生を行う。
【0130】
つまり、ワーク11の搬送に関する搬送アーム31の一連の移動の期間を利用して、異物を除去するための気体Fの噴射や吸引力Gの発生を実施するので、異物を除去する洗浄工程を単独で行う時間を要しない。そのため、プラズマエッチング装置10での加工動作を妨げずに、優れた時間効率で異物の除去を行うことができる。
【0131】
また、異物を除去する清掃のためだけにシャッター15を開放動作させることがなく、ワーク11の搬送に要するタイミングのみで開口14を開放し、当該開放の期間を利用して異物の清掃を行うので、開口14が開放される時間を最小限にし、チャンバー内空間13への異物の進入を防ぐことができる。
【0132】
本発明の搬送装置及び搬送方法の搬送対象である被搬送物は、半導体ウエーハやパッケージ基板など様々であり、その形状についても円形や矩形など様々である。つまり、被搬送物の種類や形状は、限定されない。そして、被搬送物の形状や種類に応じて、搬送装置の構成を適宜変更することが可能である。
【0133】
詳しくは、上記の各実施形態の搬送装置30は、円形のワーク11に対応する円板形状の保持部35を備え、ブローノズル40とバキュームノズル50がそれぞれ、保持部35の外縁(周方向)に沿う円弧形状であるが、保持部、ブローノズル、バキュームノズルなどの形状は上記実施形態には限定されない。
【0134】
例えば、被搬送物が矩形であり、これに対応して、搬送装置の保持部を矩形の板状に構成しても良い。この場合、ブローノズルやバキュームノズルは、当該矩形状の保持部の一辺(上記実施形態での進行方向Ea側に位置する一辺)に沿う直線状の形状にすることができる。
【0135】
上記の各実施形態の搬送装置30は、板状のワーク11を、他の部材を介さずに保持部35の下面で直接に保持している。被搬送物の異なる形態として、半導体ウエーハやパッケージ基板などのワークが、リング状のフレームにテープを介して保持されていても良い。つまり、ワークとテープとフレームとを含んだユニットとして、被搬送物を構成しても良い。この場合、搬送アームは、保持部が備える吸着パッドによってフレームを保持して搬送しても良い。また、保持部は、板状ではなく、フレームに沿うリング状や、複数の吸着パッドを接続する十字形状などであっても良い。
【0136】
上記実施形態のブローノズル40は、それぞれの断面位置における向きが略共通である一種類の噴射口42を複数個備えているが、ブローノズルは、開口方向が異なる複数種類の噴射口を備えていてもよい。
【0137】
例えば、上記実施形態の噴射口42に加えて、鉛直方向下方に開口する別タイプの噴射口を備えてもよい。この別タイプの噴射口から噴射される気体は、略真下(ブローノズルの直下)に進むため、噴射口42から斜め下方に噴射される気体Fに比べて、保持面17の径方向外側に異物を排出する効果は限定的になるが、保持面17やワーク11の上面から異物を浮き上がらせる効果は得られるので、搬送装置30の第3の実施形態(
図12、
図13)のように、バキュームノズルとの併用によってノズルユニットの近傍で異物を回収する場合には有用である。
【0138】
上記の各実施形態の搬送装置30は、搬送アーム31が保持部35の下面側にワーク11を保持するタイプであるが、保持部の上面側にワーク(被搬送物)を保持するタイプの搬送装置に適用することも可能である。例えば、搬送アームの保持部の一部に切り欠きが形成されており、搬送時に、保持テーブルの保持面から上昇したピンが保持部の切り欠きに挿入され、保持部の上面側に保持されたワークを受け取り、保持部が退避した後にピンが下降してワークを保持テーブルに保持する、という構成の搬送装置及び処理装置が知られている。また、搬送アームの保持部がU字形状であり、保持部の中央の切り欠きに収まるサイズの保持テーブルを備え、保持部の切り欠きに保持テーブルを進入させて、保持部の上面側に保持されたワークを保持テーブルに受け渡す、という構成の搬送装置及び処理装置が知られている。このような搬送装置及び処理装置においても、被搬送物を保持して搬送する保持部にノズルユニットを備えて、ノズルユニットからの気体の噴射や吸引を行う異物除去ステップを実施することで、上記の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0139】
上記の各実施形態は、プラズマエッチング装置10にワーク11を搬送するための搬送装置30に適用している。プラズマエッチング装置10は、洗浄液を用いた保持面17の洗浄や、保持面17及びワーク11への加工液の供給を行わずに、ドライな環境下でワーク11を処理するため、液体による保持面17やワーク11の洗浄効果が得られない。従って、プラズマエッチング装置10にワーク11を搬送する搬送装置30に本発明を適用することで、高い効果が得られる。
【0140】
しかし、本発明による搬送装置及び搬送方法は、プラズマエッチング装置以外の処理装置へのワークの搬送にも適用が可能である。例えば、切削装置、研削装置、研磨装置、バイト切削装置、洗浄装置、検査装置、テープ貼着装置、テープ剥離装置、保護膜形成装置など、ワークに対して各種の処理を施す処理装置への搬送装置及び搬送方法として、本発明を適用可能である。これらの処理装置においても、ワークを保持テーブルの保持面に載置する前に、保持面の異物を除去したいという課題が存在しており、本発明が有用である。
【0141】
例えば、切削装置、研削装置、研磨装置などは、ワークを処理する際に加工液を供給して加工点付近の異物を洗い流すが、その前のワークを搬送して保持テーブルの保持面に載置する段階では、異物が洗い流されずに保持面に付着している可能性がある。また、テープ貼着装置やテープ剥離装置などは、洗浄液や加工液などの液体を供給せずにワークの処理を行う場合が多く、上記のプラズマエッチング装置10と同様に、ドライな環境下で保持テーブルの保持面に異物が付着した状態になりやすい。従って、プラズマエッチング装置以外の処理装置についても、本発明の搬送装置及び搬送方法が効果を奏する。
【0142】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上説明したように、本発明の搬送装置及び搬送方法では、被搬送物の搬送時に、ブローノズルからの気体の噴射と、バキュームノズルによる吸引力と、の少なくともいずれかを行って、保持テーブルの保持面やワークから異物を除去するので、被搬送物の保持に際して、異物が原因で被搬送物に割れが発生することを防止できる。
【符号の説明】
【0144】
10 :プラズマエッチング装置
11 :ワーク(被搬送物)
12 :チャンバー
13 :チャンバー内空間
14 :開口
15 :シャッター
16 :保持テーブル
17 :保持面
18 :電極
19 :電圧印加部
20 :ガス供給ヘッド
21 :ガス吐出口
22 :ガス供給路
23 :プラズマ発生部
24 :ガス供給源
25 :排気管
26 :開閉弁
27 :排気ポンプ
30 :搬送装置
31 :搬送アーム
32 :昇降機構
33 :水平移動機構
34 :アーム部
35 :保持部
36 :吸引路
37 :開閉弁
38 :吸引源
40 :ブローノズル(ノズルユニット)
41 :本体部
42 :噴射口
43 :開閉弁
44 :気体供給源
50 :バキュームノズル(ノズルユニット)
51 :本体部
52 :吸引口
53 :開閉弁
54 :吸引源
55 :支持ブラケット
56 :ガイドプレート
D :異物
Ea :進行方向
Eb :離反方向
F :気体
G :吸引力