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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026308
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】被膜性向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20250214BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20250214BHJP
   A23G 3/42 20060101ALI20250214BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20250214BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20250214BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20250214BHJP
   A23K 10/35 20160101ALI20250214BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L5/00 F
A23L5/10 E
A23G3/42
A23L27/60 A
A23L29/212
A23L7/157
A23K10/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090187
(22)【出願日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2023131493
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
【テーマコード(参考)】
2B150
4B014
4B025
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
2B150AA08
2B150AB20
2B150AE12
2B150BB10
2B150BE01
2B150BE03
2B150CE02
2B150CE05
2B150CE11
2B150CE28
2B150CE30
2B150CJ02
4B014GB08
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP27
4B014GQ05
4B014GQ17
4B025LB05
4B025LD02
4B025LD03
4B025LG26
4B025LG28
4B025LG52
4B025LG60
4B025LP01
4B025LP10
4B035LC16
4B035LE17
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG42
4B035LG43
4B035LG57
4B035LP07
4B035LP26
4B035LP31
4B035LP59
4B047LB09
4B047LG11
4B047LG27
4B047LG66
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】飲食品等に対する被膜性に優れる被膜性向上剤等を提供する。
【解決手段】α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上であるα化澱粉を含む、被膜性向上剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上であるα化澱粉を含む、被膜性向上剤。
【請求項2】
前記α澱粉のα化度が70%以上である、請求項1に記載の被膜性向上剤。
【請求項3】
前記α化澱粉が、1)および2)をα化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の被膜性向上剤。
1)コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、ヒヨコマメ澱粉、エンドウ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化、酸処理および酵素処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉
【請求項4】
前記α化澱粉のD50が、5μm以上180μm以下である、請求項1に記載の被膜性向上剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の被膜性向上剤を含む、澱粉組成物。
【請求項6】
前記α化澱粉の含有量が、澱粉組成物の全質量に対して、1質量%以上80質量%以下である、請求項5に記載の澱粉組成物。
【請求項7】
表面被覆剤として使用される、請求項5に記載の澱粉組成物。
【請求項8】
結着剤として使用される、請求項5に記載の澱粉組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の被膜性向上剤を含む、飲食品。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の被膜性向上剤を含む、団子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜性向上剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉は、グルコースのα1―4グリコシド結合からなる直鎖状のアミロースと、α1-4グルカンがα1―6グリコシド結合で分岐した分岐状のアミロペクチンとからなる。澱粉は、分子の規則性を有する結晶性の高分子である。
【0003】
澱粉を水中で加熱すると、アミロースやアミロペクチンが吸水することによって分子の規則性を失い(澱粉の結晶性が消失して非晶質化し)、透明性が向上して粘度が上昇する現象、いわゆるα化(糊化)が生じる。α化した澱粉を迅速に脱水すると、糊化状態を保持(非晶質の状態を保持)したα化澱粉を得ることができる。α化澱粉に冷水を加えると、再度膨潤して糊状とすることができるため、α化澱粉は食品添加剤等として広く使用されている。
【0004】
α化澱粉の特性は、α化澱粉の製造条件等に応じて異なることが知られており、従来検討が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、所定のパラメータを有するα化澱粉に係る発明が記載されている。特許文献1には、澱粉に対して所定の架橋処理および酵素処理を行った後にドラムドライにてα化することにより、水への分散性に優れており、水を加えても、ママコ(α化澱粉を水に分散または溶解させる際に生じるα化澱粉の塊状物)の形成を抑制でき、しかも十分な粘度を呈するα化澱粉が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/225872号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のα化澱粉を含む従来のα化澱粉は、吸水による粘度向上を利用した増粘剤等として使用されている。しかしながら、例えば、食品表面にα化澱粉を付着させると、食品中の水分を吸水することでα化澱粉は増粘するものの、食品はパサつくことがあった。このような観点において、従来のα化澱粉は、その吸水性により飲食品等に対する被膜性が十分とはいえないことがあった。
【0008】
そこで、本発明は、飲食品等に対する被膜性に優れる被膜性向上剤等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、所定のα化澱粉を用いることにより、飲食品等に対する被膜性が向上することを見出した。すなわち、本発明は、例えば以下の態様を有する。
【0010】
[1]α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上であるα化澱粉を含む、被膜性向上剤。
[2]前記α澱粉のα化度が70%以上である、上記[1]に記載の被膜性向上剤。
[3]前記α化澱粉が、1)および2)をα化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上である、上記[1]または[2]に記載の被膜性向上剤。
1)コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、ヒヨコマメ澱粉、エンドウ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化、酸処理および酵素処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉
[4]前記α化澱粉のD50が、5μm以上180μm以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の被膜性向上剤。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の被膜性向上剤を含む、澱粉組成物。
[6]前記α化澱粉の含有量が、澱粉組成物の全質量に対して、1質量%以上80質量%以下である、上記[5]に記載の澱粉組成物。
[7]表面被覆剤として使用される、上記[5]または[6]に記載の澱粉組成物。
[8]結着剤として使用される、上記[5]または[6]に記載の澱粉組成物。
[9]上記[1]~[4]のいずれかに記載の被膜性向上剤を含む、飲食品。
[10]上記[1]~[4]のいずれかに記載の被膜性向上剤を含む、団子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飲食品等に対する被膜性に優れる被膜性向上剤等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
1.被膜性向上剤
本発明に係る被膜性向上剤は、α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上であるα化澱粉を含む。
【0014】
理論に束縛されるものではないが、本発明に係る被膜性向上剤は、α化度および接触角が上記範囲であることにより吸水性と撥水性の両機能がバランスよく備わり、優れた被膜性を発揮できるものと考えられる。
例えば、前記α化度および接触角を有するα化澱粉を飲食品に付着させた場合、α化澱粉のα化度が高いため飲食品を表面被覆することができ、また、α化澱粉の接触角が高い(濡れ性が低い)ためα化澱粉は飲食品の食感を低下させるほど水分を吸水せず、α化澱粉と飲食品との接触面に澱粉の被膜が形成されうる。その結果、得られる飲食品は、優れた食感を有しうる。例えば、フライ、天ぷらの打ち粉として本発明に係る被膜性向上剤を使用する場合、フライ、天ぷらの内容物の食感が優れる。
また、飲食品中に前記α化度および接触角を有するα化澱粉を含有させる場合、α化澱粉のα化度が高いため飲食品成分どうしを結着することができ、また、α化澱粉の接触角が高い(濡れ性が低い)ため飲食品が水に接触した場合にα化澱粉による撥水機能により飲食品表面に澱粉の被膜が形成されうる。その結果、水による飲食品の崩壊を抑制することができる。例えば、医薬品、サプリメントの結着剤として本発明に係る被膜性向上剤を使用する場合、医薬品やサプリメントは徐放性を示しうる。また、魚の釣り餌の結着剤として本発明に係る被膜性向上剤を使用する場合、釣り餌を水中に投下しても釣り餌は水中で容易に崩壊せず、形状を保持することができる。さらに、つくね、肉団子、つみれ等の結着剤として本発明に係る被膜性向上剤を使用する場合、煮崩れが生じにくく、形状を保持することができる。
【0015】
一実施形態において、被膜性向上剤は表面被覆剤として使用される。なお、本明細書において、「表面被覆剤」とは、飲食品等の表面に適用されて飲食品等の表面の少なくとも一部を被覆するものである。被膜性向上剤が表面被覆剤として使用される具体例としては、たれ、フライ(天ぷら、揚げ物等)の衣等が挙げられる。被膜性向上剤が表面被覆剤として使用される場合、被膜性向上剤と飲食品等との接触面に澱粉の被膜が形成される等により、調理時の歩留まりが向上する等の効果を生じうる。
【0016】
一実施形態において、被膜性向上剤は結着剤として使用される。なお、本明細書において、「結着剤」とは、飲食品等に添加剤として混合されて、飲食品等の保水性を向上させる、形状を保持する等の機能を発揮するものである。被膜性向上剤が結着剤として使用される場合の飲食品等の具体例としては、マヨネーズ、カスタードクリーム、団子、ハンバーグ、卵料理、チルド麺、即席麺、ケーキ類、菓子パン、菓子類等が挙げられる。被膜性向上剤が結着剤として使用される場合、飲食品等に含まれる被膜性向上剤の撥水機能により、飲食品表面に澱粉の被膜を形成する等により、水中、口腔内で飲食品が容易に崩壊せず、形状を保持することができる。
【0017】
<α化澱粉>
本発明に係るα化澱粉は、α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上である。
【0018】
α化澱粉のα化度は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上、95%以上であることが特に好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0019】
α化澱粉の接触角は、40.0度以上であることが好ましく、43度以上であることがより好ましく、48度以上150度以下、50度以上130度以下であることがさらに好ましく、60度以上120度以下であることが特に好ましく、70度以上110度以下であることが非常に好ましい。
【0020】
α化澱粉のD50は、5μm以上180μm以下であることが好ましく、10μm以上150μm以下であることがより好ましく、10μm以上135μm以下であることがさらに好ましく、15μm以上100μm以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「D50」はメディアン径を意味し、実施例に記載の方法で測定される。
【0021】
α化澱粉は、1)および2)をα化処理してなる澱粉から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
1)コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、ヒヨコマメ澱粉、エンドウ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化、酸処理および酵素処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉
【0022】
前記加工澱粉の原料澱粉として、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。原料澱粉の由来となる植物の具体例として、トウモロコシ、もちトウモロコシ(ワキシーコーン)、ハイアミローストウモロコシ、米、もち米、小麦、エンドウ、甘藷、馬鈴薯、もち馬鈴薯、タピオカ、ワキシータピオカ、ヒヨコマメ、サゴヤシ等が挙げられる。
【0023】
前記加工澱粉の加工例としては、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、酸処理澱粉などが挙げられ、好ましくは、リン酸架澱粉又はアセチル化リン酸架橋澱粉である。
【0024】
α化澱粉は、単独で用いても、α化度および接触角のいずれか一以上が異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
なお、「α化処理(アルファー化処理)」とは、未加工澱粉および加工澱粉から選ばれる澱粉をα化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上となるように処理することを意味する。
【0026】
一実施形態において、「α化処理」は、せん断粉砕処理であることが好ましい。「せん断粉砕処理」とは、物体にせん断力を与えて粉砕することである。せん断粉砕処理時に加わる強いせん断力、圧縮力、衝撃力および磨砕力等により澱粉のα化処理をすることができる。せん断粉砕処理は、せん断粉砕機を用いて行うことができる。このようなせん断粉砕機としては、例えば、臼型粉砕機、エクストルーダー、ロールクラッシャー、カッターミル、らいかい機、リングミル、ローラーミル、ボールミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、アトライター、ビーズミル等が挙げられる。これらのうち、せん断粉砕機は、臼型粉砕機、エクストルーダーであることが好ましく、臼型粉砕機であることがより好ましい。せん断粉砕処理、例えば、エクストルーダーを用いたせん断処理では、低加水かつ短時間でα化処理を行うことができ、臼型粉砕機を用いたせん断粉砕処理では、無加水かつ短時間でα化処理を行うことができる。
【0027】
α化澱粉のα化度および接触角は製造条件を適宜変更することで制御することができる。
【0028】
例えば、α化処理前の澱粉の水分含有量は、澱粉の全質量に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、6.5質量%以上18.5質量%以下、8質量%以上17質量%以下、4質量%以上14質量%以下、3.5質量%以上13.5質量%以下、3質量%以上13質量%以下であることがより好ましい。なお、澱粉の水分含有量は、加熱乾燥式水分計MX-50(株式会社エー・アンド・デイ製)により測定される。
【0029】
また、α化処理を臼型粉砕機を用いて行う場合には、上臼および下臼の間の距離(臼間ギャップ)、温度、回転速度等を調整することで、α化澱粉のα化度および接触角することができる。
α化処理を臼型粉砕機を用いて行う場合、臼間ギャップは、0μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下、5μm以上30μm以下、5μm以上20μm以下、10μm以上40μm以下、10μm以上30μm以下、10μm以上20μm以下であることがより好ましく、5μm以上15μm以下、7.5μm以上15μm以下、5μm以上12.5μm以下、7.5μm以上12.5μm以下であることがさらに好ましい。
α化処理を臼型粉砕機を用いて行う場合、加熱温度は、70℃以上200℃以下であることが好ましく、70℃以上180℃以下、70℃以上150℃以下、70℃以上120℃以下、70℃以上110℃以下、90℃以上180℃以下、90℃以上150℃以下、90℃以上120℃以下、90℃以上110℃以下、100℃以上180℃以下、70℃以上150℃以下、100℃以上120℃以下であることがより好ましい。
α化処理を臼型粉砕機を用いて行う場合、回転速度は、90rpm以上250rpm以下であることが好ましく、90rpm以上200rpm以下、90rpm以上180rpm以下、90rpm以上160rpm以下、120rpm以上200rpm以下、120rpm以上180rpm以下、120rpm以上160rpm以下であることがより好ましい。
【0030】
また、α化処理をエクストルーダーを用いて行う場合には、バレル温度は、30℃以上200℃以下であることが好ましく、30℃以上150℃以下、40℃以上140℃以下、50℃以上130℃以下、50℃以上120℃以下であることがより好ましい。
また、α化処理をエクストルーダーを用いて行う場合には、出口温度は、80℃以上180℃以下であることが好ましく、80℃以上160℃以下、80℃以上150℃以下、90℃以上150℃以下、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。
また、α化処理をエクストルーダーを用いて行う場合には、熱処理時間は、1秒以上1200秒以下であることが好ましく、1秒以上600秒以下であることがより好ましく、1秒以上60秒以下であることがさらに好ましく、1秒以上30秒以下であることがさらにより好ましい。
また、α化処理をエクストルーダーを用いて行う場合には、スクリュー回転数は、1rpm以上5000rpm以下であることが好ましく、1rpm以上2500rpm以下であることがより好ましく、1rpm以上1500rpm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
一実施形態において、α化澱粉の含有量は、被膜性向上剤の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下、80質量%以上100質量%以下、90質量%以上100質量%以下、95質量%以上100質量%以下、70質量%以上97.5質量%以下、80質量%以上97.5質量%以下、90質量%以上97.5質量%以下、95質量%以上97.5質量%以下であることがさらに好ましい。
また、別の一実施形態において、α化澱粉の含有量は、被膜性向上剤の全質量に対して、100質量%である。
【0032】
<添加剤>
被膜性向上剤は、添加剤を含むことができる。
添加剤としては、上記α化澱粉以外の他の被膜性向上剤が挙げられる。当該添加剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
2.澱粉組成物
本発明の一形態によれば、澱粉組成物が提供される。澱粉組成物は、上述した被膜性向上剤を含む。澱粉組成物は、さらに他の澱粉類、添加剤を含みうる。
【0034】
<被膜性向上剤>
被膜性向上剤は、上述したものが使用される。
【0035】
α化澱粉の含有量は、澱粉組成物の全質量に対して、0.1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、1質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
一実施形態において、α化澱粉の含有量は、澱粉組成物の全質量に対して、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上60質量%以下、10質量%以上40質量%以下、10質量%以上30質量%以下、15質量%以上60質量%以下、15質量%以上40質量%以下、15質量%以上30質量%以下、25質量%以上60質量%以下、30質量%以上60質量%以下、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の澱粉組成物は、好ましくは表面被覆剤の用途に使用される。
【0037】
一実施形態において、α化澱粉の含有量は、澱粉組成物の全質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下、0.1質量%以上3質量%以下、0.1質量%以上1.9質量%以下、0.1質量%以上1.5質量%以下、0.1質量%以上0.9質量%以下、0.1質量%以上0.3質量%以下、0.3質量%以上10質量%以下、0.3質量%以上5質量%以下、0.3質量%以上3質量%以下、0.3質量%以上1.9質量%以下、0.3質量%以上1.5質量%以下、0.3質量%以上0.9質量%以下、1.5質量%以上10質量%以下、1.5質量%以上5質量%以下、1.5質量%以上3質量%以下、1.5質量%以上1.9質量%以下、1.9質量%以上10質量%以下、1.9質量%以上5質量%以下、1.9質量%以上3質量%以下、3質量%以上10質量%以下、3質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の澱粉組成物は、好ましくは結着剤の用途に使用される。
【0038】
<他の澱粉類>
澱粉組成物は、他の澱粉類を含むことができる。他の澱粉類を添加することで、物性および効果の調整、製造コストの低減等をすることができる。
【0039】
他の澱粉類は、1)、2)、およびこれらのα化澱粉(α化度が50%未満および/または接触角が40度未満)のいずれかを含む。
1)コーン澱粉、ワキシーコーン澱粉、ハイアミロースコーン澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシータピオカ澱粉、ヒヨコマメ澱粉、エンドウ澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉および米澱粉からなる群から選ばれる未加工澱粉
2)前記未加工澱粉にヒドロキシプロピル化、アセチル化、架橋、酸化、酸処理および酵素処理からなる群から選ばれる1種又は2種以上の加工処理が施されてなる加工澱粉
【0040】
これらのうち、他の澱粉類は、1)および2)のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。また、これらの他の澱粉類は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
なお、α化澱粉(α化度が50%未満および/または接触角が40度未満)については、従来の方法、例えば、澱粉を含む原料に加水し、加熱した後、迅速に脱水することで製造することができる。この際使用される乾燥機としては、例えば、ドラムドライヤー、スプレードライヤー等が挙げられる。
【0042】
<添加剤>
澱粉組成物は、添加剤を含むことができる。
澱粉組成物に含まれる添加剤は、その用途に応じて異なる。ただし、添加剤に澱粉類は含まれない。
【0043】
例えば、澱粉組成物が表面被覆剤の用途に使用される場合、添加剤としては、天ぷらやフライの衣に一般に使用される材料、調味料が挙げられる。
【0044】
天ぷらやフライの衣に一般に使用される材料としては、例えば、卵、卵白、卵白粉末、パン粉、水等が挙げられる。
【0045】
また、調味料としては、例えば、砂糖、食塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん、グルタミン酸およびその塩、イノシン酸およびその塩、食用油脂等が挙げられる。
【0046】
また、澱粉組成物が結着剤の用途に使用される場合、適用される製品の主要成分、調味料等が挙げられる。
【0047】
適用される製品の主要成分としては、マヨネーズ、カスタードクリーム、団子、ハンバーグ、卵料理、チルド麺、即席麺、ケーキ類、菓子パン、菓子類等を構成する成分が挙げられる。
【0048】
なお、調味料は、表面被覆剤の用途において例示したものと同様である。
【0049】
上述の添加剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
<澱粉組成物の用途>
澱粉組成物は、被膜性向上剤と同様の用途に使用することができる。
【0051】
一実施形態において、澱粉組成物は表面被覆剤として使用される。
【0052】
また、別の一実施形態において、澱粉組成物は結着剤として使用される。
【0053】
3.飲食品
本発明の一形態によれば、飲食品が提供される。
一実施形態において、飲食品は、上述の被膜性向上剤を含む。
また、別の一実施形態において、飲食品は、上述の澱粉組成物を含む。
【0054】
飲食品としては、特に制限されないが、フライ(天ぷら、揚げ物等);中華丼、麻婆豆腐、麻婆茄子、あんかけ焼きそば、中華スープ、エビチリ、回鍋肉等の中華あん使用食品;マヨネーズ、ケチャップ、カスタードクリーム等の乳化物;団子、ハンバーグ等の肉成形物;チルド麺、即席麺等の麺類;ケーキ類、菓子パン、菓子類等の菓子;医薬品、サプリメント等の治療剤・健康増進剤が挙げられる。
【0055】
これらのうち、飲食品は、フライ(天ぷら、揚げ物等)、マヨネーズ、団子、ハンバーグ、医薬品、サプリメントであることが好ましい。
【0056】
好ましい一実施形態において、被膜性向上剤を含む、団子が提供される。また、一実施形態において、澱粉組成物を含む、団子が提供される。前記団子は、つくね、肉団子、つみれの他、魚の餌等を含む。
【0057】
好ましい一実施形態において、被膜性向上剤または澱粉組成物が表面被覆剤として使用される場合、被膜性向上剤または澱粉組成物は、飲食品中において衣等の形態で含まれる。このような場合、得られる飲食品は、食感がサクサクとする(サクミがある)、歯切れがよい(ヒキがない)表面のべとつきがない(ヌメリがない)、中身の鮮度が高い等のうち少なくとも1つの効果を奏しうる。
【0058】
好ましい一実施形態において、被膜性向上剤または澱粉組成物が結着剤として使用される場合、被膜性向上剤または澱粉組成物は、飲食品中において構成成分等の形態で含まれる。このような場合、得られる飲食品は、水中であっても形状を保持することができる、煮崩れが生じにくい、べたつきがない、伸びがある、コシがある、徐放性を示す、硬度が向上する、食感に優れる、乳化物の成分分離を抑制できる等のうち少なくとも1つの効果を奏しうる。
【実施例0059】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
1.未糊化澱粉
以下の製造例および実施例において使用した未糊化澱粉は以下のとおりである。
アクトボディーATP-25:アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
ジェルコールBP-200:馬鈴薯澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
KT-10:油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
TP-1:タピオカ架橋澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
タピオカ澱粉:(株式会社J-オイルミルズ製)
エンドウ澱粉:(株式会社J-オイルミルズ製)
ワキシー(Y):ワキシーコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製)
【0061】
2.α化澱粉(α化度が50%以上かつ接触角が40度以上)の製造
[製造例1]
タピオカ澱粉を臼型粉砕機であるHSM-90(株式会社セイシン製)を用いてせん断粉砕することで、せん断物を得た。
次いで、得られたせん断物を、JIS―Z8801―1規格における目開き60mmの篩を用いて分級し、篩を通過したものを回収することで、α化澱粉を製造した。
【0062】
なお、臼型粉砕機であるHSM-90は、上下2枚の金属製の臼(上臼および下臼)と、前記上臼に接続される温度調節器と、前記下臼に接続される回転駆動器と、を備えている。
臼型粉砕機によるせん断粉砕の条件は、上臼および下臼の間の距離、すなわち、臼間ギャップが10μm、加熱温度が120℃、回転速度が150rpmであった。
【0063】
製造したα化澱粉のα化度、接触角、D10、D50、およびD90は以下の方法で測定した。得られた結果を下記表1に示す。
【0064】
<α化度>
β-アミラーゼ・プルラナーゼ(BAP)法により測定した。
具体的には、「澱粉化学」、第28巻、第4号、235~240頁(1981年)の「β-アミラーゼ・プルラナーゼ(BAP)系を用いた澱粉の糊化度、老化度の新測定法」に記載される方法に則り、α化澱粉のα化度(%)を測定した。
【0065】
<接触角>
θ/2法(A half-angle Method)により接触角を測定した。
具体的には、ガラス基板上にルクセル(直径:32mm、高さ:10mm)を配置し、ルクセル中にα化澱粉を充填した。スライドガラスを用いてルクセル中のα化澱粉の表面が水平となるようにならした。
ルクセルに充填した澱粉上に0.01%のビートレッド液を10μL滴下した後、澱粉上にビートレッド液の混合溶液の液滴が形成された。
マイクロスコープVHX7000(株式会社キーエンス製)を用いて、液滴の半径(r)および高さ(h)を測定し、以下の式により、接触角(θ)を算出した。
【数1】
【0066】
<D10、D50、D90
α化澱粉について、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)を用いて、粒度分布(体積基準)を測定した(移動相:エタノール、循環強度:1、撹拌強度:1、超音波強度:5、超音波時間:30sec)。
【0067】
なお、粒度分布を積算分布曲線(縦軸:相対粒子量、横軸:粒子径)としたとき、相対粒子量(縦軸)10%における粒子径(横軸)がD10であり、相対粒子量(縦軸)50%における粒子径(横軸)がD50(メディアン径)であり、相対粒子量(縦軸)90%における粒子径(横軸)がD90である。
【0068】
[製造例2~7]
使用する原料、臼型粉砕機におけるせん断粉砕の条件(臼間ギャップ、温度、回転数)、分級の条件(篩の目開き)を表1のとおり変更したことを除いては、製造例1と同様の方法でα化澱粉を製造した。
製造例2~7のα化澱粉について、製造例1と同様の方法で、α化度、接触角、D10、D50、およびD90を測定した。得られた結果を下記表1に示す。
【0069】
[製造例8]
ワキシーコーンスターチをパラレル二軸スクリューエクストルーダーであるProcess 11(Thermo Scientific製)を用いてせん断粉砕することで、α化澱粉を製造した。
【0070】
エクストルーダーによるせん断粉砕は、バレル温度50~120℃、ダイ温度140℃、出口品温137℃、フィード量13.3g/min、加水量10.6%(対粉)、ダイ口径2.0mm、LD比40、スクリュー回転数200rpmの条件で行った。
【0071】
製造例8のα化澱粉について、製造例1と同様の方法で、α化度、接触角、D10、D50、およびD90を測定した。得られた結果を下記表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
[参考例1~4]
表2に記載される未糊化澱粉について、製造例1と同様の方法で、α化度、接触角、D10、D50、およびD90を測定した。得られた結果を下記表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
3.市販のα化澱粉
市販のα化澱粉として以下のものを用いた。
なお、製品例1~5は、α化度が50%以上であるが、接触角が40度未満であるα化澱粉である。他方、製品例6は、α化度が50%以上、かつ、接触角が40度以上であるα化澱粉である。
【0076】
製品例1:マツノリンM-22:α化タピオカ澱粉(タピオカ澱粉をドラムドライでα化したもの、松谷化学工業株式会社製)
製品例2:ジェルコールGT-α:α化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(アクトボディーATP-25をドラムドライでα化したもの、株式会社J-オイルミルズ製)
製品例3:ジェルコールGT-α(200メッシュ処理品):α化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(製品例2のジェルコールGT-αを、JIS―Z8801―1規格における目開き200μmの篩を用いて分級し、篩を通過したものを回収したもの)
製品例4:アルファ化デンプンPF:α化馬鈴薯澱粉(馬鈴薯澱粉をドラムドライでα化したもの、中央食糧株式会社製)
製品例5:アルファーワキシーコーンスターチ:α化ワキシーコーンスターチ(ワキシーコーンスターチをドラムドライでα化したもの、株式会社J-オイルミルズ製)
製品例6:BS-600:α化馬鈴薯澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)
【0077】
製品例1~6のα化澱粉(α化度が50%以上かつ接触角が40度以上)について、製造例1と同様の方法で、α化度、接触角、D10、D50、およびD90を測定した。得られた結果を下記表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
4.被膜性向上剤および澱粉組成物の製造
[実施例1]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)50質量部、卵白粉末1質量部、およびKT-10を49質量部を混合することで、澱粉組成物を製造した。
【0080】
[実施例2]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0081】
[比較例1]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例1のα化澱粉を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0082】
[比較例2]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、微粉パン粉を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0083】
[比較例3]
KT-10を単独で用いた。
【0084】
[実施例3]
製造例1のα化澱粉20質量部(被膜性向上剤)、卵白粉末1質量部、およびTP-1を79部を混合することで、澱粉組成物を製造した。
【0085】
[実施例4~6]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、表4に記載のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例3と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0086】
[比較例4]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、微粉パン粉を用いたことを除いては、実施例3と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0087】
[比較例5]
TP-1を単独で用いた。
【0088】
[比較例6]
製造例1のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、ジェルコールCB-10を用いたことを除いては、実施例3と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0089】
[実施例7]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)2質量部、フィッシュミール8質量部、および水11質量部を混合することで、澱粉組成物を製造した。
【0090】
[実施例8]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製造例4のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例7と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0091】
[実施例9]
α化澱粉(被膜性向上剤)の添加量を1質量部に変更し、ジェルコールBP-200を1質量部を追加添加したことを除いては、実施例8と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0092】
[実施例10~11]
α化澱粉(被膜性向上剤)の添加量、およびジェルコールBP-200の添加量を表4のとおり変更したことを除いては、実施例9と同様の方法で澱粉組成物を製造した。
【0093】
[実施例12~13]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、表4に記載のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例7と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0094】
[比較例7]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、アクトボディーATP-25を使用したことを除いては、実施例7と同様の方法で澱粉組成物を製造した。
【0095】
[比較例8~10]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、表4に記載のα化澱粉を使用したことを除いては、実施例7と同様の方法で澱粉組成物を製造した。
【0096】
[比較例11]
α化澱粉(被膜性向上剤)の添加量を1質量部に変更し、ジェルコールBP-200を1質量部追加添加したことを除いては、実施例7と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0097】
[実施例14]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)1質量部およびブドウ糖19質量部を混合することで、澱粉組成物を製造した。
【0098】
[実施例15]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0099】
[実施例16~17]
α化澱粉(被膜性向上剤)の添加量を表5のとおり変更し、アクトボディーATP-25を表5の量で追加添加したことを除いては実施例15と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0100】
[実施例18]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製造例8のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0101】
[比較例12]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、アクトボディーATP-25を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0102】
[比較例13]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例2のα化澱粉を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0103】
[比較例14]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例3のα化澱粉を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0104】
[比較例15]
α化澱粉(被膜性向上剤)の添加量を0.5質量部に変更し、アクトボディーATP-25を0.5質量部追加添加したことを除いては、比較例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0105】
[比較例16]
製造例2のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例5のα化澱粉を用いたことを除いては、実施例14と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0106】
[実施例19]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)0.5質量部、マヨネーズ(味の素株式会社製)19.5質量部、およびこめ油1質量部を混合することで、澱粉組成物を製造した。
【0107】
[実施例20]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例6のα化澱粉(被膜性向上剤)を用いたことを除いては、実施例18と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0108】
[比較例17]
製造例3のα化澱粉(被膜性向上剤)に代えて、製品例2のα化澱粉を用いたことを除いては、実施例18と同様の方法で、澱粉組成物を製造した。
【0109】
[比較例18]
マヨネーズを単独で用いた。
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
5.評価
[エビの天ぷら]
実施例1~6、比較例1~6の澱粉組成物を用いてエビの天ぷらを調理し、評価した。
【0115】
具体的には、冷凍された伸ばしエビを解凍した後、水をふき取った。解凍エビに澱粉混合物をパウダリングした。この際、パウダリングされた澱粉組成物の質量は、解凍エビの質量に対して、4~6質量%であった。
【0116】
パウダリング後のエビに対して、バッター液を用いてバッタリングした。
具体的には、バッター液である天ぷら粉黄金(昭和産業株式会社製)に、パウダリング後のエビをとおしてバッタリングを行った。なお、バッタリングは2回実施した。
バッタリング後のエビにおける、衣率(バッター液が付着した質量)は、バッタリング後のエビの全質量に対して、65~66質量%であった。
【0117】
バッタリング後のエビを加熱調理することでエビの天ぷらを得た。エビの天ぷらの質量は、加熱調理前のエビ(バッタリング後のエビ)の質量に対して、76~79質量%であった。
【0118】
エビの天ぷらを-20℃で7日間冷凍し、冷凍のエビの天ぷらを得た。
【0119】
冷凍のエビの天ぷらを170℃で再加熱調理することで、エビの天ぷらを得た。
【0120】
再加熱調理したエビの天ぷらを6時間常温で静置し、電子レンジでレンジアップ(500W、1分)した後、ヌメリ・ヒキ、衣、中身を以下の基準に従って評価した。得られた結果を下記表8に示す。
【0121】
<ヌメリ・ヒキ>
エビの天ぷらを試食し、エビの天ぷらの衣における打ち粉層に相当する部分のヌメリとヒキ(衣の引きちぎりやすさとベタツキ)を以下の基準に従って評価した。
5:全くヌメリもヒキもない
4:ほとんどヌメリもヒキもない
3:すこしヌメリとヒキがある
2:ややヌメリとヒキがある
1:ヌメリとヒキがある
【0122】
<衣>
エビの天ぷらのを試食し、衣の食感を以下の基準に従って評価した。
5:非常にサクサクしている
4:サクサクしている
3:ややサクサクしている
2:ガミーな食感
1:非常にガミーな食感(付着性がある)
【0123】
<中身>
エビの天ぷらのを試食し、エビの食感を以下の基準に従って評価した。なお、中身の評価が高い場合、エビとの接触面により澱粉の被膜が形成されて食感が維持できたと考えられる。
5:非常にプリプリしている
4:プリプリしている
3:ややパサついている
2:パサついている
1:非常にパサついている
【0124】
【表8】
【0125】
[養鰻用餌]
実施例7~13、比較例7~11の澱粉組成物を団子の形状に成形することで、養鰻用餌を作製し、養鰻用餌の伸び、コシ、べたつき、形状、濁度を評価した。得られた結果を下記表9に示す。
【0126】
<伸び>
養鰻用餌を手で引っ張り、以下の基準で養鰻用餌の伸びを評価した。
5:とても伸びる
4:良く伸びる
3:伸びる
2:少し伸びる
1:伸びない
【0127】
<コシ>
養鰻用餌を手で潰した際の弾力、以下の基準で養鰻用餌のコシを評価した。
5:とても強い
4:良くある
3:ある
2:少しある
1:ない
【0128】
<べたつき>
養鰻用餌を手で触り、以下の基準で養鰻用餌のべたつきを評価した。
5:ない
4:少しある
3:ある
2:良くある
1:とてもある
【0129】
<形状>
養鰻用餌(約20g)を80mLの水に浸し、常温(23℃)で静置した。24時間後、団子の形状を目視で確認し、以下の基準で養鰻用餌の形状を評価した。
5:団子状を維持し、崩れた残骸は見られない
4:割れ目等が確認され、一部崩れた残骸が見られる
3:崩れた残骸が多数みられる
2:団子は確認されるが、とても崩れている
1:団子は確認されず
【0130】
<濁度>
養鰻用餌(約20g)を80mLの水に浸し、常温(23℃)で静置した。24時間後、定性ろ紙No.2(φ90)にてろ過した。ろ液の濁度を吸光度計GENESYS150(Thermo Scientific製)で測定した。この際、測定波長は660nmである。なお、濁度の値が小さいほど、α化澱粉による撥水機能により養鰻用餌表面に澱粉の被膜が形成され、水中で崩壊せずに形状を保持できたといえる。
【0131】
【表9】
【0132】
[錠菓]
実施例14~18、比較例12~16の澱粉組成物を、錠剤成形機HANDTAB-100(市橋精機株式会社)を用いて成形することで、錠菓(0.25g)を製造した。
【0133】
製造した錠菓について、崩壊性、水中Brix、溶解率、硬度を評価した。得られた結果を下記表10に示す。
【0134】
<崩壊性>
15mLのチューブに水5mLを投入した後、錠菓1粒を添加し、静置した。10分後、チューブ内を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
3:錠菓の形がはっきりと残っている
2:錠菓の形が残っている
1:錠菓の形が少し見られる
0:錠菓は全く見られず
【0135】
<上清Brix>
15mLのチューブに水5mLを投入した後、錠菓1粒を添加し、静置した。10分後、チューブ内の上清をピペットで回収し、Brix0~10の測定が可能なBrix計(株式会社アタゴ製)を用いて測定した。
【0136】
<溶解率>
15mLのチューブに水5mLを投入した後、錠菓1粒を添加し、静置した。10分後、チューブ内の沈殿物で回収し、105℃で24時間乾燥し、次いで、減圧乾燥機にて105℃で1時間乾燥した。得られた沈殿乾燥物の質量を測定し、以下の式により溶解率を算出した。
【数2】
【0137】
<硬度>
テクスチャーアナライザーTA-XT Plus/5(英弘精機株式会社製)を用いて錠菓の硬度を測定した。この際、5mmニードルを用い、侵入速度0.1mm/秒の条件で測定した。
【0138】
【表10】
【0139】
[マヨネーズ]
実施例19~20および比較例17~18の澱粉組成物(マヨネーズ)について、食感および離油性を評価した。得られた結果を下記表11に示す。
【0140】
<食感>
澱粉組成物(マヨネーズ)を喫食し、以下の基準に従って評価した。
3:滑らかで軽い食感
2:軽めの食感であるがボソボソとしている
1:ゲル感のある食感でありザラツキがある
【0141】
<離油性>
澱粉組成物(マヨネーズ)を冷凍した後、常温(23℃)で解凍した。当該冷解凍を合計3回繰り返した後、マヨネーズを目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
3:マヨネーズに部分的な離油が見られる
2:マヨネーズに離油が見られる
1:マヨネーズに明らかな離油が見られる
【表11】