(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026386
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】船舶の施工方法及び船舶の燃料供給装置の構成要素
(51)【国際特許分類】
B63B 73/20 20200101AFI20250214BHJP
【FI】
B63B73/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129942
(22)【出願日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2023130468
(32)【優先日】2023-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貴士
(72)【発明者】
【氏名】江川 了慈
(57)【要約】
【課題】船舶用燃料の供給設備の施工において、船舶建造場での作業量を増大させず、施工時間の短縮及び施工労力の削減を図ること。
【解決手段】燃料供給ポンプユニット1、熱交換器ユニット2、バッファタンクユニット3を陸上で準備し、各ユニット1、2、3は、燃料供給装置を構成する機器を隔壁筺に収納し、各機器への配管及び配線が隔壁筺の外部まで引き出されており、各ユニット1、2、3を燃料調整室6内に設置し、各ユニット1、2、3間の配管及び配線を接続し、各ユニット1、2、3から燃料調整室6の外への配管及び配線を接続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用の燃料をエンジンに供給するために船舶の燃料調整室内に設置される燃料供給ポンプユニット、熱交換器ユニット、バッファタンクユニットとを陸上において各々準備し、
前記燃料供給ポンプユニットは、燃料を送出するポンプを隔壁筺に収納し、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記熱交換器ユニットは、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器を隔壁筺に収納し、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記バッファタンクユニットは、前記燃料を貯蔵するバッファタンクを隔壁筺に収納し、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記各ユニットを、前記燃料調整室内に設置し、
前記燃料調整室内において、燃料供給装置を構成するように前記各ユニット間の配管及び配線を接続し、前記各ユニットから前記燃料調整室の外へ接続される配管及び配線を接続する
ことを特徴とする船舶の施工方法。
【請求項2】
燃料バルブトレインユニットを陸上において準備し、
前記燃料バルブトレインユニットは、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを隔壁筺に収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記燃料バルブトレインユニットを、前記燃料調整室内又は機関室内に設置し、
燃料供給装置を構成するように、ユニット間の配管及び配線を接続する、
ことを特徴とする請求項1記載の船舶の施工方法。
【請求項3】
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶の施工方法。
【請求項4】
前記各ユニットにおいて各機器を収納する前記隔壁筺には、換気装置を設置しておく
ことを特徴とする請求項3記載の船舶の施工方法。
【請求項5】
前記各ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶の施工方法。
【請求項6】
前記燃料調整室内に、前記各ユニットが共有するメンテナンススペースを設けておく
ことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶の施工方法。
【請求項7】
前記各ユニットのそれぞれには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器を設置する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の船舶の施工方法。
【請求項8】
船舶用の燃料をエンジンに供給するために船舶の燃料調整室内に設置される燃料調整ユニットを陸上において準備し、
前記燃料調整ユニットは、燃料を送出するポンプ、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器、前記燃料を貯蔵するバッファタンクを、隔壁筺に収納し、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記燃料調整ユニットを、前記燃料調整室内に設置し、
前記燃料調整室内において、前記燃料調整ユニットから前記燃料調整室の外へ接続される配管及び配線を接続する
ことを特徴とする船舶の施工方法。
【請求項9】
前記燃料調整ユニットは、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを、前記隔壁筺に収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成されている
ことを特徴とする請求項8記載の船舶の施工方法。
【請求項10】
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする請求項8又は9記載の船舶の施工方法。
【請求項11】
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺には、換気装置を設置しておく
ことを特徴とする請求項10記載の船舶の施工方法。
【請求項12】
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする請求項8又は9記載の船舶の施工方法。
【請求項13】
前記燃料調整室内に、前記燃料調整ユニットの各機器のメンテナンスを前記燃料調整ユニットの外で行うためのメンテナンススペースを設けておく
ことを特徴とする請求項8又は9記載の船舶の施工方法。
【請求項14】
前記燃料調整ユニットには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器を設置する
ことを特徴とする請求項8又は9記載の船舶の施工方法。
【請求項15】
船舶用の燃料を送出するポンプが隔壁筺に収納され、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料供給ポンプユニットと、
前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器が隔壁筺に収納され、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている熱交換器ユニットと、
前記燃料を貯蔵するバッファタンクが隔壁筺に収納され、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されているバッファタンクユニットと、
を備えたことを特徴とする船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項16】
燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインが隔壁筺に収納され、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料バルブトレインユニット
を備えたことを特徴とする請求項15記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項17】
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする請求項15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項18】
前記各ユニットにおいて各機器を収納する前記隔壁筺には、換気装置が設置されている
ことを特徴とする請求項17記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項19】
前記各ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする請求項15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項20】
前記各ユニットのそれぞれには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器が設置されている
ことを特徴とする請求項15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項21】
燃料を送出するポンプ、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器、前記燃料を貯蔵するバッファタンクが、隔壁筺に収納され、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料調整ユニットであることを特徴とする船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項22】
前記燃料調整ユニットは、前記隔壁筺に、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている
ことを特徴とする請求項21記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項23】
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする請求項21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項24】
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺には、換気装置が設置されている
ことを特徴とする請求項23記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項25】
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする請求項21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【請求項26】
前記燃料調整ユニットには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器が設置されている
ことを特徴とする請求項21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の施工方法に関し、詳しくは、船舶用の燃料を供給するための設備を対象とし、船舶建造場での施工作業量を増大させることなく、施工時間の短縮及び施工労力の削減が図られた船舶の施工方法及び船舶の燃料供給装置の構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶推進用エンジンにおいては、エンジン排ガス中の二酸化炭素の削減のため、従来の重油に代えて、アンモニア(NH3)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、LNG(Liquefied Natural Gas)、または、メタノール(CH3OH)などを燃料として用いるエンジンへの期待が高まっている。
また、第1燃料を重油とし、第2燃料をアンモニア、LPG、LNG、または、メタノールなどとする二元燃料エンジンも提案されている。
さらに、二元燃料が利用できるように船舶を改造することによって、船舶の利用可能期間を延長することも期待されている。
【0003】
ところで、従来の船舶の施工方法では、ブロック式建造法が一般的になっている。ブロック式建造法は、船舶内の設備をいくつかのブロックに分けて船外で建造し、最後に船舶建造場でつなぎ合わせる施工方法である。複数のブロックを同時並行で建造することができるので、施工期間を短縮できるとされている。
【0004】
特許文献1には、重油燃料を送出するポンプに関して、附属設備も取り囲むように陸上でブロックを構成し、船舶建造場での施工作業を削減することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、二元燃料の第2燃料のような、揮発性又は毒性を有する燃料を供給するための設備を対象としていない。揮発性又は毒性を有する燃料を供給するには、エンジンが設置される機関室とは別に、燃料調整室を設ける必要がある。燃料調整室では、必要となる附属設備が、重油燃料を送出するポンプより多いので、特許文献1に記載の方法では対応できない。
【0007】
また、燃料調整室では、漏洩対策として、機関室より厳しい対応が必要である。漏洩対策としては、例えば、一定の容量を有する換気装置及びダクトを設ける必要があるが、燃料調整室内は通路も含めると大きな容積になるので、必要な換気装置の容量がさらに大きくなり、船舶建造場での施工作業量がさらに増大するという問題がある。
【0008】
また、船舶用の燃料の供給のための配管への接続を船舶建造場で行った場合には、配管の圧力損失を再度考慮しなければならず、ポンプの能力が足りなくなる虞があるという問題もある。
【0009】
そこで、本発明の課題は、船舶用の燃料を供給するための設備を対象とし、船舶建造場での施工作業量を増大させることなく、施工時間の短縮及び施工労力の削減が図られた船舶の施工方法及び船舶の燃料供給装置の構成要素を提供することにある。
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.
船舶用の燃料をエンジンに供給するために船舶の燃料調整室内に設置される燃料供給ポンプユニット、熱交換器ユニット、バッファタンクユニットとを陸上において各々準備し、
前記燃料供給ポンプユニットは、燃料を送出するポンプを隔壁筺に収納し、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記熱交換器ユニットは、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器を隔壁筺に収納し、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記バッファタンクユニットは、前記燃料を貯蔵するバッファタンクを隔壁筺に収納し、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記各ユニットを、前記燃料調整室内に設置し、
前記燃料調整室内において、燃料供給装置を構成するように前記各ユニット間の配管及び配線を接続し、前記各ユニットから前記燃料調整室の外へ接続される配管及び配線を接続する
ことを特徴とする船舶の施工方法。
2.
燃料バルブトレインユニットを陸上において準備し、
前記燃料バルブトレインユニットは、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを隔壁筺に収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記燃料バルブトレインユニットを、前記燃料調整室内又は機関室内に設置し、
燃料供給装置を構成するように、ユニット間の配管及び配線を接続する、
ことを特徴とする前記1記載の船舶の施工方法。
3.
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする前記1又は2記載の船舶の施工方法。
4.
前記各ユニットにおいて各機器を収納する前記隔壁筺には、換気装置を設置しておく
ことを特徴とする前記3記載の船舶の施工方法。
5.
前記各ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする前記1又は2記載の船舶の施工方法。
6.
前記燃料調整室内に、前記各ユニットが共有するメンテナンススペースを設けておく
ことを特徴とする前記1又は2記載の船舶の施工方法。
7.
前記各ユニットのそれぞれには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器を設置する
ことを特徴とする前記1又は2記載の船舶の施工方法。
8.
船舶用の燃料をエンジンに供給するために船舶の燃料調整室内に設置される燃料調整ユニットを陸上において準備し、
前記燃料調整ユニットは、燃料を送出するポンプ、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器、前記燃料を貯蔵するバッファタンクを、隔壁筺に収納し、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成され、
前記燃料調整ユニットを、前記燃料調整室内に設置し、
前記燃料調整室内において、前記燃料調整ユニットから前記燃料調整室の外へ接続される配管及び配線を接続する
ことを特徴とする船舶の施工方法。
9.
前記燃料調整ユニットは、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを、前記隔壁筺に収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線を、前記隔壁筺の外部まで引き出して構成されている
ことを特徴とする前記8記載の船舶の施工方法。
10.
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする前記8又は9記載の船舶の施工方法。
11.
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺には、換気装置を設置しておく
ことを特徴とする前記10記載の船舶の施工方法。
12.
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする前記8又は9記載の船舶の施工方法。
13.
前記燃料調整室内に、前記燃料調整ユニットの各機器のメンテナンスを前記燃料調整ユニットの外で行うためのメンテナンススペースを設けておく
ことを特徴とする前記8又は9記載の船舶の施工方法。
14.
前記燃料調整ユニットには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器を設置する
ことを特徴とする前記8又は9記載の船舶の施工方法。
15.
船舶用の燃料を送出するポンプが隔壁筺に収納され、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料供給ポンプユニットと、
前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器が隔壁筺に収納され、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている熱交換器ユニットと、
前記燃料を貯蔵するバッファタンクが隔壁筺に収納され、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されているバッファタンクユニットと、
を備えたことを特徴とする船舶の燃料供給装置の構成要素。
16.
燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインが隔壁筺に収納され、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料バルブトレインユニット
を備えたことを特徴とする前記15記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
17.
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする前記15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
18.
前記各ユニットにおいて各機器を収納する前記隔壁筺には、換気装置が設置されている
ことを特徴とする前記17記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
19.
前記各ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする前記15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
20.
前記各ユニットのそれぞれには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器が設置されている
ことを特徴とする前記15又は16記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
21.
燃料を送出するポンプ、前記燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器、前記燃料を貯蔵するバッファタンクが、隔壁筺に収納され、前記ポンプへの油圧配管及び制御配線、前記ポンプへの燃料供給配管、前記ポンプからの燃料排出配管、前記熱交換器への配管及び制御配線、前記熱交換器への燃料供給配管、前記熱交換器からの燃料排出配管、前記バッファタンクへの供給配管、前記バッファタンクからの排出配管が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている燃料調整ユニットであることを特徴とする船舶の燃料供給装置の構成要素。
22.
前記燃料調整ユニットは、前記隔壁筺に、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン及び燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレインを収納し、前記各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線が、前記隔壁筺の外部まで引き出されている
ことを特徴とする前記21記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
23.
前記燃料は、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールである
ことを特徴とする前記21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
24.
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺には、換気装置が設置されている
ことを特徴とする前記23記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
25.
前記燃料調整ユニットの前記隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板が着脱可能な構造となっている
ことを特徴とする前記21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
26.
前記燃料調整ユニットには、前記燃料が漏洩したガスを検知する機器が設置されている
ことを特徴とする前記21又は22記載の船舶の燃料供給装置の構成要素。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、船舶用の燃料を供給するための設備を対象とし、船舶建造場での施工作業量を増大させることなく、施工時間の短縮及び施工労力の削減が図られた船舶の施工方法及び船舶の燃料供給装置の構成要素を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備を示す平面図。
【
図2】本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備の他の例を示す平面図。
【
図3】本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備のさらに他の例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備を示す平面図である。
【0014】
本発明は、船舶用の燃料を供給するための設備を対象とする船舶の施工方法及び船舶の燃料供給装置の構成要素であって、船舶建造場での施工作業量を増大させることなく、施工時間の短縮及び施工労力の削減を図るものである。
【0015】
本実施形態の船舶の施工方法においては、
図1に示すように、それぞれが燃料供給装置の構成要素である、燃料調整室6内に設置される船舶用の燃料供給装置を構成するポンプを含む燃料供給ポンプユニット1、燃料調整室6内に設置される熱交換器を含む熱交換器ユニット2、及び、燃料調整室6内に設置されるバッファタンクを含むバッファタンクユニット3を、それぞれ予め陸上において準備する。
【0016】
燃料供給ポンプユニット1は、船舶用の燃料をエンジンに供給するためのポンプ及び付属機器一式を隔壁筺に収納して構成し、ポンプへの油圧配管及び制御配線、ポンプへの燃料供給配管、ポンプからの燃料排出配管は、隔壁筺の外部まで引き出しておく。ポンプは、油圧ポンプや、キャンドモータポンプといわれる遠心タイプのポンプなど、種々のものが使用できる。
【0017】
船舶用の燃料としては、例えば、第1燃料が重油である二元燃料の第2燃料が挙げられ、第2燃料としては、アンモニア、LPG、LNG、または、メタノールなどである。これら燃料は、二元燃料として用いず、これら燃料のみで用いられるものであってもよい。これら燃料は、一般的に、可燃性を有し、揮発性又は毒性を有する。
【0018】
燃料が、アンモニアやLPG、メタノールである場合には、燃料供給ポンプユニット1内には、液用低圧ポンプ、高圧ポンプと電動機、それに関連する自動及び手動バルブ、フィルタ、バッファタンクとそれを監視及び調整する計器、ガスを大気中に排出しないための気液分離器又はノックアウトドラム、及びその他の付属機器一式が含まれる。
【0019】
なお、ノックアウトドラムは、ガスを大気中に放出させないためではなく、液体を直接大気へ放出させないためのものである。
燃料がアンモニアである場合には、気液分離器又はノックアウトドラムを経た後のアンモニアガスを、大気放出させないための除害装置を設ける。除害装置は、ユニット化したものを、燃料調整室以外に設置することができる。
【0020】
燃料が、LNGの場合には、燃料供給ポンプユニット1内には、液用低圧ポンプ、気化器、高圧用ガス圧縮機と電動機、それに関連する自動及び手動バルブ、フィルタとそれを監視および調整する計器、ガスを大気に排出しないための気液分離器又はノックアウトドラムが含まれ、また、発電機関のLNG運転を考慮する場合には、タンクからのボイルオフガス(BOG)を圧縮するための圧縮機が含まれる他、BOGを主機関で使用する場合はより高圧のBOG圧縮機、及びその他の付属機器一式が含まれる。
【0021】
燃料が、LNGやLPGである場合には、爆発を抑制するため、気液分離器又はノックアウトドラムの後に、フレアスタック等を設置してもよい。
【0022】
何れの燃料の場合とも、規則要求を満たすために燃料配管を二重管とする場合には、外管と内管との間を換気するためのファンを、燃料調整室6内に設置してもよい。
【0023】
熱交換器ユニット2は、燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器及び付属機器一式を隔壁筺に収納して構成し、熱交換器への配管及び制御配線、熱交換器への燃料供給配管、熱交換器からの燃料排出配管は、隔壁筺の外部まで引き出しておく。
【0024】
燃料が、アンモニアやLPG、メタノールである場合には、燃料をME-LGI機関に液体で噴射するため、熱交換器は、燃料の液温を調整するためのものである。
燃料が、LNGの場合には、燃料をME-GI機関にガスで噴射するため、熱交換器は、燃料を気化させるためのものである。
【0025】
熱交換器の熱媒体としては、海水や、グリコール水といった不凍液や、海水により冷却した清水または不凍液を用いることができる。
【0026】
バッファタンクユニット3は、燃料を貯蔵するバッファタンク及び各種バルブ等の付属機器一式を隔壁筺に収納して構成し、バッファタンクへの供給配管、バッファタンクからの排出配管は、隔壁筺の外部まで引き出しておく。
【0027】
なお、熱交換器及びバッファタンクは、同じユニットの隔壁筺に収納してもよく、また、燃料タンク内の温度調整のために利用することもできる。
【0028】
各ユニット1、2、3において各機器を収納する隔壁筺には、換気装置4a、4b、4cを設置し、図示しないダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気することが好ましい。各ユニット1、2、3ごとに換気装置4a、4b、4cを設けることにより、各換気装置4a、4b、4cの容量を抑え、消費動力の削減を図ることができる。
また、各ユニット1、2、3がメンテナンススペースを含まないことにより、各換気装置4a、4b、4cの小型化、軽量化、省動力化が可能である。
各換気装置4a、4b、4cは、隔壁筺内から空気を吸い出す換気ファンや、隔壁筺内に空気を送り込むブロワーなど、種々の換気装置を用いることができる。
【0029】
各ユニット1、2、3のそれぞれには、各排気口4a、4b、4cの付近に、燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9を設置することも好ましい。燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9としては、種々の方式のガス検知器や、ガス濃度計や、画像によりガス漏洩を確認する機器などが挙げられる。
各ユニット1、2、3内にガスを検知する機器9を設置することにより、ガス漏れ箇所を早期に特定でき、ガス漏洩の被害を最小限に抑えることができる。
【0030】
各ユニット1、2、3の隔壁筺をなす板材には、軽量の材料を選定することが好ましい。また、各ユニット1、2、3の隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板を着脱可能な構造とすることが好ましい。
【0031】
各ユニット1、2、3間の配管及び配線は、接続はしないでおく。そして、各ユニット1、2、3を、船舶建造場の船舶上の燃料調整室6内に設置する。
【0032】
燃料調整室6内において、各ユニット1、2、3間の配管及び配線を接続する。また、各ユニット1、2、3から、燃料調整室6の外へ接続される配管及び配線を接続することにより燃料供給装置が構成される。
さらに、各ユニット1、2、3間の配管及び配線を接続し、燃料バルブトレイン(インターフェース)を介して、機関室に設置されたエンジンに、燃料管によって接続することにより、燃料供給装置を構成してもよい。
【0033】
燃料バルブトレインは、燃料供給ラインに設けられるSVT(Supply Valve Train)と、燃料戻しラインに設けられるRVT(Return Valve Train)とからなる。SVTは、熱交換器を経た燃料をエンジンに送るためのものである。RVTは、燃料をエンジンから、例えば、バッファタンクに戻すためのものである。
【0034】
燃料バルブトレインは、燃料調整室6内に設置して、エンジンとの間を燃料管で繋いでもよいし、機関室内のエンジンの近傍に設置して、エンジンに直接繋いでもよい。
【0035】
なお、船舶内の閉鎖場所を通過する燃料管は、二次的な囲壁により保護しなければならない。この囲壁は、通風ダクト又は二重管装置とすることができる。また、通風ダクト又は二重管装置に、1時間あたり30回の換気を行うことができる排気式の機械通風装置及びガス検知装置を設けなければならない(船級要件IGF9.5.1)。
【0036】
この実施形態では、各換気装置4a、4b、4cの容量が抑えられ、ダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気されるので、燃料調整室6の周囲をなす隔壁の板厚を薄くすることができる。
【0037】
燃料調整室6内には、メンテナンススペース5を設けることが好ましい。メンテナンススペース5は、各ユニット1、2、3に共有化される。燃料調整室6の天井にはクレーンを設置し、各ユニット1、2、3内の機器の何れかをクレーンによってメンテナンススペース5へ移動させることにより、各ユニット1、2、3内の機器に対するメンテナンス作業を実施することができる。
【0038】
本実施形態においては、船舶用の燃料を供給するための設備及びその他の設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管及び配線工事に要する時間を短縮でき、燃料調整室内への据付工事に要する時間も短縮できる。
【0039】
また、本実施形態においては、各設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶建造場での配管漏洩の要確認箇所が削減され、気密試験時間を短縮できる。
【0040】
さらに、本実施形態においては、各設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管等の圧力損失の影響を考慮して、ポンプ等の動力機器を最適化できる。
【0041】
さらにまた、本実施形態においては、各設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶用の燃料が液化アンモニアといった毒性ガスを発するものである場合でも、必要換気ガス量を減らせるため、除害装置への流量を減容化することができる。
【0042】
図2は、本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備の他の例を示す平面図である。
【0043】
本実施形態の施工方法により施工された船舶の設備は、
図2に示すように、前述した各ユニット1、2、3に加えて、燃料供給装置の構成要素として、燃料バルブトレインユニット8を陸上において準備することとしてもよい。
【0044】
燃料バルブトレインユニット8は、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン、燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレイン及び付属機器一式を、隔壁筺に収納し、各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線を、隔壁筺の外部まで引き出して構成されている。
【0045】
燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン(インターフェース)であるSVTを介して、燃料がエンジンに送られる。SVTは、バッファタンク内の燃料を高圧ポンプによってエンジンに供給する過程に存在する補器類(高圧ポンプ、ヒータ、フィルタ)と、エンジンとの間のインターフェースである。SVTには、エンジン内の燃料のパージ、メンテナンス前のガス抜き、メンテナンス後の気密試験などに利用される窒素ガスが供給されることもある。
【0046】
燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレイン(インターフェース)であるRVTを介して、燃料がエンジンからバッファタンクに戻される。バッファタンクに至る系には、クーラが設けられてもよい。RVTは、エンジン内の流量調整や温度調整のために、燃料の一部をバッファタンクに戻すものであり、燃料の一部にシール油が含まれる場合、RVT内で減圧し、クーラを経て、バッファタンクに戻す。この場合、燃料は、バッファタンクとエンジンとの間で循環することになる。
【0047】
燃料バルブトレインユニット8は、前述した各ユニット1、2、3と同様に、燃料調整室内に設置し、燃料調整室内において、燃料バルブトレインユニット8から燃料調整室内及び燃料調整室外へ接続される配管及び配線を接続する。
【0048】
燃料バルブトレインユニット8においても、各燃料バルブトレインを収納する隔壁筺には、換気装置4eを設置し、図示しないダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気することが好ましい。各ユニット1、2、3、8ごとに換気装置4a、4b、4c、4eを設けることにより、各換気装置4a、4b、4c、4eの容量を抑え、消費動力の削減を図ることができる。
また、燃料バルブトレインユニット8がメンテナンススペースを含まないことにより、換気装置4eの小型化、軽量化、省動力化が可能である。
換気装置4eは、各換気装置4a、4b、4cと同様に、隔壁筺内から空気を吸い出す換気ファンや、隔壁筺内に空気を送り込むブロワーなど、種々の換気装置を用いることができる。
【0049】
この実施形態でも、各ユニット1、2、3、8のそれぞれには、各排気口4a、4b、4c、4eの付近に、燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9を設置することも好ましい。燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9としては、上述したように、種々の方式のガス検知器や、ガス濃度計や、画像によりガス漏洩を確認する機器などが挙げられる。
各ユニット1、2、3、8内にガスを検知する機器9を設置することにより、ガス漏れ箇所を早期に特定でき、ガス漏洩の被害を最小限に抑えることができる。
【0050】
燃料バルブトレインユニット8の隔壁筺をなす板材には、軽量の材料を選定することが好ましい。また、燃料バルブトレインユニット8の隔壁筺は、収納した各燃料バルブトレインのメンテナンス用開口ができるように、側面板を着脱可能な構造とすることが好ましい。
【0051】
この実施形態でも、換気装置4eの容量が抑えられ、ダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気されるので、燃料調整室6の周囲をなす隔壁の板厚を薄くすることができる。また、この実施形態でも、燃料バルブトレインユニット8内の各燃料バルブトレインをクレーンによってメンテナンススペース5へ移動させることにより、各燃料バルブトレインに対するメンテナンス作業を実施することができる。
【0052】
本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管及び配線工事に要する時間を短縮でき、燃料調整室内への据付工事に要する時間も短縮できる。
【0053】
また、本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶建造場での配管漏洩の要確認箇所が削減され、気密試験時間を短縮できる。
【0054】
さらに、本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管等の圧力損失の影響を考慮して、ポンプ等の動力機器を最適化できる。
【0055】
さらにまた、本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶用の燃料が液化アンモニアといった毒性ガスを発するものである場合でも、必要換気ガス量を減らせるため、除害装置への流量を減容化することができる。
【0056】
なお、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式は、上述のようにユニット化し、燃料調整室内ではなく、機関室内に設置してもよい。
【0057】
図3は、本発明の実施形態の施工方法により施工された船舶の設備のさらに他の例を示す平面図である。
【0058】
本実施形態の施工方法により施工された船舶の設備は、
図3に示すように、燃料調整室6内に設置される燃料供給装置を構成する船舶用の燃料供給ポンプ、熱交換器、バッファタンクを、予め陸上において、燃料供給装置の構成要素である1つの燃料調整ユニット7として準備してもよい。
この実施形態において、燃料供給ポンプ、熱交換器及びバッファタンクに関する説明は、前述した実施形態(
図1)と同様であり、これを援用する。
【0059】
各機器を収納する燃料調整ユニット7は、船舶用の燃料をエンジンに供給するためのポンプ、燃料の気化又は温度調整を行う熱交換器、燃料を貯蔵するバッファタンクを隔壁筺に収納して構成する。
【0060】
ポンプへの油圧配管及び制御配線、ポンプへの燃料供給配管、ポンプからの燃料排出配管、熱交換器への配管及び制御配線、熱交換器への燃料供給配管、熱交換器からの燃料排出配管、バッファタンクへの供給配管、バッファタンクからの排出配管は、隔壁筺の外部まで引き出しておく。
【0061】
燃料調整ユニット7において各機器を収納する隔壁筺には、換気装置4dを設置し、図示しないダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気することが好ましい。燃料調整ユニット7に換気装置4dを設けることにより、換気装置4dの容量を抑えることができる。
換気装置4dは、隔壁筺内から空気を吸い出す換気ファンや、隔壁筺内に空気を送り込むブロワーなど、種々の換気装置を用いることができる。
【0062】
この実施形態では、燃料調整ユニット7には、換気装置4dの付近に、燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9を設置することも好ましい。燃料が漏洩して気化したガスを検知する機器9としては、上述したように、種々の方式のガス検知器や、ガス濃度計や、画像によりガス漏洩を確認する機器などが挙げられる。
燃料調整ユニット7内にガスを検知する機器9を設置することにより、ガス漏れ箇所を早期に特定でき、ガス漏洩の被害を最小限に抑えることができる。
【0063】
また、燃料調整ユニット7の隔壁筺は、収納した各機器のメンテナンス用開口ができるように、側面板を着脱可能な構造とすることが好ましい。
【0064】
次に、燃料調整ユニット7を、船舶建造場の船舶上の燃料調整室6内に設置する。
【0065】
燃料調整室6内において、燃料調整ユニット7から、燃料調整室6の外へ接続される配管及び配線を、接続する。この実施形態では、換気装置4dの容量が抑えられ、ダクトを通して燃料調整室6外のベントマストに排気されるので、燃料調整室6の周囲をなす隔壁の板厚を薄くすることができる。
【0066】
メンテナンススペース5及び通路は、燃料調整室6内の、燃料調整ユニット7の外に設けることが好ましい。燃料調整室6の天井にはクレーンを設置し、燃料調整ユニット7内の機器の何れかをクレーンによってメンテナンススペース5へ移動させることにより、燃料調整ユニット7内の機器に対するメンテナンス作業を実施することができる。
【0067】
本実施形態においては、船舶用の燃料を供給するための設備及びその他の設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管及び配線工事に要する時間を短縮でき、燃料調整室内への据付工事に要する時間も短縮できる。
【0068】
また、本実施形態においても、各設備を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶建造場での配管漏洩の要確認箇所が削減され、気密試験時間を短縮でき、配管等の圧力損失の影響を考慮して、ポンプ等の動力機器を最適化でき、船舶用の燃料が液化アンモニアといった毒性ガスを発するものである場合でも、必要換気ガス量を減らせるため、除害装置への流量を減容化することができる。
【0069】
なお、燃料調整ユニット7は、燃料供給ラインに設けられる燃料バルブトレイン、燃料戻しラインに設けられる燃料バルブトレイン及び付属機器一式を、前述した各設備と同様に、隔壁筺に収納して構成してもよい。この場合には、各燃料バルブトレインへの配管及び制御配線は、前述した各設備への配管及び制御配線と同様に、隔壁筺の外部まで引き出される。
【0070】
燃料調整室6内において、燃料調整ユニット7内の各燃料バルブトレイン及び付属機器一式から、燃料調整室6内、または、燃料調整室6外へ接続される配管及び配線を、接続する。
【0071】
本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、配管及び配線工事に要する時間を短縮でき、燃料調整室内への据付工事に要する時間も短縮できる。
【0072】
また、本実施形態においても、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式を隔壁筺に収納してユニットとして構成することにより、船舶建造場での配管漏洩の要確認箇所が削減され、気密試験時間を短縮でき、船舶用の燃料が液化アンモニアといった毒性ガスを発するものである場合でも、必要換気ガス量を減らせるため、除害装置への流量を減容化することができる。
【0073】
なお、各燃料バルブトレイン及び付属機器一式は、燃料調整ユニットに含めずに、別途ユニット化してもよい。この場合の燃料バルブトレインユニットは、燃料調整室内または機関室に設置することができる。
また、ユニット化せずに、燃料調整室内に設置して前記燃料調整ユニットと接続してもよいし、機関室内に設置して前記燃料調整ユニットと接続してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料供給ポンプユニット
2 熱交換器ユニット
3 バッファタンクユニット
4a 換気装置
4b 換気装置
4c 換気装置
4d 換気装置
4e 換気装置
5 メンテナンススペース
6 燃料調整室
7 燃料調整ユニット
8 燃料バルブトレインユニット
9 ガスを検知する機器