(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026493
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】自然リンパ系細胞による小膠細胞活性化の抑制
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20250101AFI20250214BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20250214BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250214BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K38/20
A61P25/00
A61P29/00
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024210083
(22)【出願日】2024-12-03
(62)【分割の表示】P 2021502605の分割
【原出願日】2019-06-25
(31)【優先権主張番号】62/698,545
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バタチャリア・アニンダ
(72)【発明者】
【氏名】アレマン・ミンチ・ジャーマン・ロドリゴ
(72)【発明者】
【氏名】デレッキ・ノエル・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ソロッシュ・ペジマン
(72)【発明者】
【氏名】バニー・ホマヨン
(57)【要約】
【課題】自然リンパ系細胞により小膠細胞活性化を抑制する
【解決手段】小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、治療有効量の活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を対象に投与することを含む、方法を提供する。小膠細胞活性化を低減させるため、又は血液脳関門(BBB)透過性を低減させるためにILC2を使用する組成物及び方法が記載される。また、小膠細胞活性化又はBBB透過性を低減させるために活性化ILC2の数を増加させる薬剤を使用する方法及び組成物も記載される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、治療有効量の活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年7月16日出願の米国特許仮出願第62/698,545号の優先権を主張し、参照によりその開示の全体が本書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、小膠細胞活性化を抑制するための方法及び組成物に関する。具体的には、本発明は、II型自然リンパ系細胞、又はII型自然リンパ系細胞の数又は活性を増加させる薬剤を投与することによる、小膠細胞活性化又は血液脳関門の破壊を抑制する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自然リンパ系細胞(ILC)は、その名前が示唆するように、自然免疫及び適応免疫の両方の特徴を示す。ILCは、一般的なリンパ前駆体から生じ、Tヘルパー細胞に類似したサブセットに分化するが、ILCは、適応免疫を象徴する受容体多様性の根底にある体細胞組み換えを受けない。したがって、従来のT細胞とは異なり、ILC2は抗原特異的ではなく、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、及びナチュラルキラーT細胞などの他のリンパ球を同定する特定の系統マーカーも欠いている。ILCは、これらが産生するサイトカイン、並びにこれらの発生及び機能を調節する転写因子に基づいて、3種類(ILC1、ILC2、ILC3)に分類することができる(Spits et al.,2013,Nat Rev Immunol.13(2):145-9)。
【0004】
ILC2は、インターロイキン4(IL-4)、IL-5、IL-9、及びIL-13などの2型サイトカインを主に産生する。これらは自然系細胞として、IL-25及びIL-33などの内因性ダメージ関連分子パターン(DAMPs)である、アラーニンに主に応答する(Neill et al.,2010,Nature 464(7293):1367-1370)。また、活性化ILC2のサブセットは、抗炎症性サイトカインであるIL-10も産生できる(Seehus et al.,2017,Nat Commun.Dec 1;8(1):1900)。このエビデンスは、ILC2が免疫応答において多様な役割を有することを示唆している。喘息のマウスモデルでは、ILC2が好酸球性炎症及び応答性亢進に寄与することが示されており、ヒトの研究において、喘息、アレルギー性鼻炎、好酸球性食道炎、及びアトピー性皮膚炎患者におけるILC2数の増加が明らかとなっている(Doherty et al.,J Allergy Clin Immunol.2017;139(5):1465-1467)。
【0005】
ILC2は組織常在性であり、最初に、粘膜、関門、及び脂肪組織で豊富であることが示されている。しかしながら、最近になって、末梢神経系及び中枢神経系(CNS、PNS)の環境内で予想外にもILC2が検出された(Gadani et al.,2017,J Exp Med.214(2):285-296)。CNSでは、ILCは、病理的にのみ検査されており、ILC2は脊髄損傷後に応答することが示され、ILC3は、髄膜に通常常在し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において疾患誘発性の蓄積及び活性化を呈することが明らかとなった(Hatfield and Brown,2015,Cell Immunol.297(2):69-79)。
【0006】
CNSにおける炎症は、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ハンチントン病、及びHIV認知症を含む多数の神経変性疾患において神経細胞死につながる経路で重要な役割を果たすと考えられている。炎症応答は、通常は神経損傷に応答し、食作用によって損傷した細胞を除去する、CNSの常在免疫細胞である小膠細胞の活性化によって媒介される。
【0007】
神経炎症応答は、運動ニューロンの生存に有益か又は有害であり得る。活性化小膠細胞は、炎症性サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子α、TNFα)、一酸化窒素、及びスーパーオキシドなどの神経毒性分子を放出し得る(Chao et al.,1992,J Immunol.149(8):2736-41)。これらの神経毒性分子は、ニューロンを損傷又は死滅させ、特定の神経疾患に先行するか又は悪化し得る可能性がある。多くの研究では、活性化された小膠細胞は、脳病理学的な特徴であることが見出されている。
【0008】
CNSに影響を及ぼす多くの疾患及び生理学的ストレス要因はまた、血液脳関門(BBB)の機能的完全性も変化させる。これらは、血液から脳への物質の通過を選択的に制限する関門能に影響を及ぼす。BBB破壊は、うつ病、不安、頭のもや、及び自己免疫性脳疾患などの疾患をもたらし得る。
【0009】
小膠細胞の活性化を抑制することにより、神経変性疾患に関連する炎症を低減し、BBB破壊に関連する疾患を予防又は治療するための有望な治療手段が提供される。小膠細胞活性化を調節するために化合物を利用する特定の治療法が提案されている(米国特許出願公開第2011021413号、国際公開第9945950号、米国特許出願公開第20120237482号)が、化合物は、オフターゲット効果を有することが知られている。加えて、幹細胞療法は、小膠細胞活性化を変化させる可能性を有するものとして提案されている(Giunti et al.,2012,Stem Cells.30(9):2044-53、国際公開第2011106476号)。間葉系幹細胞の生存期間がin vivoでわずか数ヶ月であるため、これらの治療法の長期的効果は不明である(Volkman and Offen,2017,Stem Cells,35(8):1867-1880)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、活性化された小膠細胞に関連する神経変性疾患などの疾患を治療できる有効な治療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、小膠細胞活性化の抑制を必要とする対象における小膠細胞活性化の抑制のための方法を提供することによって、この必要性を満たす。これらの方法は、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数及び/又は活性を増加させることを含む。
【0012】
発明者らは、意外にも、髄膜ILC2の数を増加させることにより、小膠細胞の活性化が抑制されることを見出した。発明者らはまた、意外にも、髄膜ILC2が活性化されてIL-10を産生することができ、これが小膠細胞活性化の抑制を媒介することを見出した。特に、発明者らは、ILC欠損マウスが、小膠細胞の炎症応答の阻害と、血液脳関門(BBB)透過性の増加を呈することを見出した。その後のトランスクリプトミクス解析によって、意外にも、IL-10の供給源としての髄膜ILC2が明らかになった。したがって、神経炎症性表現型を調節すると、養子移入されたILC2の髄膜への生着が続き、IL-10中和抗体又はIl10-/-ILC2によって無効化される利点を伴う。加えて、いくつかのマウス組織由来のILC2は、ヒト血液由来のILC2と同様にIL-10適格性を示し、これは、最近説明された組織特異的転写特有のILCREGサブセットに加えて、標準的ILC2についてのこれまで認識されていない免疫調節的役割を示唆している。総じて、これらの発見は、神経炎症及びBBB安定性の抑制における髄膜ILC2の役割を示しており、ILC2系細胞療法が神経炎症性病変の治療に使用できることを意味している。
【0013】
1つの一般的な態様では、本発明は、小膠細胞活性化の抑制、又はBBB透過性の低減、又はBBB安定性の増加を必要とする対象におけるこれらの方法に関する。
【0014】
一実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の抑制を必要とする対象における小膠細胞活性化の抑制の方法であって、治療有効量の活性化ILC2を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本出願は、BBB透過性の低減又はBBB安定性の増加を必要とする対象におけるBBB透過性の低減又はBBB安定性の増加の方法であって、治療有効量の活性化ILC2を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0016】
本出願の実施形態では、活性化ILC2は、ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインと接触させることによって活性化される。
【0017】
本出願の他の実施形態では、細胞は遺伝子改変されており、好ましくは、細胞は、それ以外は同一の非改変細胞と比較して、IL-10産生の増加のために遺伝子改変されている。
【0018】
本出願の実施形態では、治療有効量の活性化ILC2は、静脈内又は髄腔内投与によって、それを必要とする対象に投与される。
【0019】
別の実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減、BBB透過性の低減、又はBBB安定性の増加を必要とする対象におけるこれらの方法であって、治療有効量の、対象において活性化ILC2の数を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供し、好ましくは活性化ILC2は、髄膜ILC2である。
【0020】
更に別の実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減、BBB透過性の低減、又はBBB安定性の増加を必要とする対象におけるこれらの方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
更に別の実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減、BBB透過性の低減、又はBBB安定性の増加を必要とする対象におけるこれらの方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるTImp1の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
本出願の特定の実施形態では、対象は、神経変性疾患、炎症性障害、髄膜炎、脳卒中、神経心理学的障害、慢性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、ウイルス又は細菌感染などの小膠細胞活性化又はBBB破壊に関連する疾患の治療を必要としている。
【0023】
本出願の好ましい実施形態では、対象は、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、及び老化からなる群から選択される神経変性疾患の治療を必要としている。
【0024】
本出願の他の好ましい実施形態では、対象は、うつ病、不安、双極性うつ病、及び統合失調症からなる群から選択される神経心理学的障害の治療を必要としている。
【0025】
別の一般的な態様では、本出願は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物、及びその調製方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の単離された活性化ILC2と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。本出願はまた、治療有効量の単離された活性化ILC2を、医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の調製方法も提供する。
【0027】
別の実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。本出願はまた、治療有効量の薬剤を、医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の調製方法も提供する。
【0028】
更に別の実施形態では、本出願は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10又はTimp1の産生を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。本出願はまた、治療有効量の薬剤を、医薬的に許容される担体と組み合わせることを含む、医薬組成物の調製方法も提供する。
【0029】
本発明のこれら及びその他の態様並びに利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかとなるであろう。本明細書に記載される様々な実施形態の特性の1つ、いくつか、又は全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
上述の「課題を解決するための手段」及び以降の「発明を実施するための形態」は、添付の図面と併せて読むことでより良好に理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施形態そのものに限定されない点は理解されるべきである。
【0031】
図面は、以下のとおりである。
【
図1A】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。ILC:Tbet(ILC1)、GATA3(ILC2)又はRorγt(ILC3)を発現している、CD45
+Lin
-CD90
+及びCD45
+Lin
-CD90
+CD127
+細胞のゲーティング(左から右)を示している、Rag2
-/-髄膜のFACSプロット。
【
図1B】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。髄膜に見られるILC1、2、3の相対頻度(n=4マウス×2の実験)。
【
図1C(i)】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。全組織標本におけるRag2
-/-髄膜の代表的な共焦点画像。静脈洞内に分布したCD90
+細胞(ILC)を示す、CD90(緑)及びLyve1(赤)に対する抗体で標識された矢状静脈洞が示されている。
【
図1C(ii)】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。CD90(緑)、Lyve1(青)及びGATA3(赤)に対する抗体で標識された、Rag2
-/-矢状静脈洞におけるmenILC2の代表的な共焦点画像。
【
図1D】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。死後ヒト髄膜から単離された細胞を示す代表的なFACSプロットで、CD45
+/生/単一イベントが示されており、左プロットは、Lin
-(系統カクテル、CD11c、Fcεr1α)IL7rα
+細胞を示し、右プロットは、ILC2マーカーであるCRTH2及びCD161の標識を示し、2回の実験間の代表的な6つのサンプルを表す。
【
図1E】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。3日間の全身性IL-33治療後のRag2
-/-矢状静脈洞を示す代表的な共焦点画像。CD90(緑)及びGATA3(赤)で標識したILC2、3回の実験のうち1回分を示す。
【
図1F】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。PBS及びIL-33処理マウスから選別されたILC2によって発現された転写物を比較するボルケーノプロット。
【
図1G】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。(i)転写因子、(ii)サイトカイン因子、及び(iii)細胞外マーカーについて、PBS及びIL-33処理マウスから選別された髄膜ILC2を比較するヒートマップ。N=20/20マウス×2回実験。
【
図1H】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。IL-2/IL-7と共に5日間培養し、IL-33で再刺激したRag2
-/-髄膜から選別された、ILC2中のIL13、IL-5、及びIL-10の代表的なFACS細胞内サイトカイン標識。n=20のマウス、2回の実験のうち1回分を示す。
【
図1I】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。IL-33で刺激したmILC2の上清由来のIL-5、IL-13、及びIL-10のLuminex測定値。n=20の髄膜、4ウェル。
【
図1J】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。IL-33による3日間全身処理後のマウスから急性的に単離された、髄膜CD90
+ST2
+細胞のIL-10及びIL-13細胞内サイトカイン標識の代表的なFACSプロット。n=3のマウス、2回の実験のうち1回分を示す。
【
図1K】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。二光子タイムラプスのIL-10抗体捕捉動画から得た静止画像。CD90(緑)及びIL-10(赤)に対する蛍光抗体は、12、40、60及び120分でのIL-10蛍光の増加を示す。3回の実験のうち代表的なものを示す。
【
図1L】髄膜が、IL-10顕性活性化プロファイルを示すILC2に富んでいることを示す。健康なヒトドナーの血液から単離された、無刺激又はIL-33刺激ILC2上清由来のIL-10のLuminex測定値。2回の実験のうち1回から、合計9例のうちN=5の固有のドナーのデータを示す。
【
図2】FACSによって測定された、受動移入後のマウス由来の髄膜ILC2の定量化を示す。
【
図3A】ILC欠損Rag2
-/-γc
-/-マウスがベースラインで髄膜異常を呈することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-脳(海馬)の代表的な共焦点画像。Iba1(緑)は小膠細胞を標識する。
【
図3B】ILC欠損Rag2
-/-γc
-/-マウスがベースラインで髄膜異常を呈することを示す。未処理のRag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-海馬における、Iba1
+細胞/mm
2の数。
**、P<0.01、スチューデントのT検定、n=3/3マウス。
【
図3C】ILC欠損Rag2
-/-γc
-/-マウスがベースラインで髄膜異常を呈することを示す。代表的なFACSプロットは、未処理のRag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスから急性的に単離された小膠細胞の側方散乱(相対粒度)を表す。n=3/3(2回実験)。
【
図3D】ILC欠損Rag2
-/-γc
-/-マウスがベースラインで髄膜異常を呈することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウス由来の小膠細胞での相対CD45発現を示す代表的なヒストグラム。
【
図3E】ILC欠損Rag2
-/-γc
-/-マウスがベースラインで髄膜異常を呈することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスから単離された脳における小膠細胞活性化に関連するマーカーパネルの相対発現。Rag2
-/-対照の割合としての平均蛍光強度(MFI)を示す。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001
****、p<0.0001、Holm-Sidak法による多重T検定、n=3/3(2回実験)。
【
図4A】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの平均臨床的EAEスコア。n=10/10(2回実験)。
【
図4B】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。EAE受動EAE誘導後のRag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスにおける発生率。
**、p<0.01、ANOVA、n=10/10(2回実験)。
【
図4C(i)】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの脳から単離された総CD45
+細胞の割合としての浸潤性T細胞の代表的なFACSプロット。
【
図4C(ii)】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。
図4C(i)の全データのグラフ、n=7/7(2回の実験)。
【
図4D(i)】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの髄膜から単離された総CD45
+細胞の割合としてのT細胞の代表的なFACSプロット。
【
図4D(ii)】ILC欠損マウスにおける実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の重篤度の増加が、T細胞の異常と一致し、髄膜内で停止することを示す。
図4D(i)の全データのグラフ、n=7/7(2回の実験)。
【
図5A】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、ILC2上清及び/又は1μg/mLのR848の存在下又は非存在下(各グラフの下のマトリックスを参照)で培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。2回の実験×2つずつのサンプル。
【
図5B】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、ILC2上清及び/又は1μg/mLのR848の存在下又は非存在下(各グラフの下のマトリックスを参照)で培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。2回の実験×2つずつのサンプル。
【
図5C】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、rIL-33の存在下又は非存在下で培養し、上清をTimp1についてLuminexで分析した。
【
図5D】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、1μg/mLのR848の存在下又は非存在下で培養し、上清をMmp2、3、8、9及び12についてLuminexで分析した。
【
図5E】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、ILC2上清及び/又は1μg/mLのR848の存在下又は非存在下(各グラフの下のマトリックスを参照)で培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。p<0.0001、ANOVA。代表的な2回の実験を示す(2回の実験)。
【
図5F】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、上述のとおりであるが、IL-10及びIL-10rαに対する抗体の存在下又は非存在下も加えて培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。2つずつのウェル(2回の実験)。
【
図5G】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、上述のとおりであるが、IL-10及びIL-10rαに対する抗体の存在下又は非存在下も加えて培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。2つずつのウェル(2回の実験)。
【
図5H】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、上述のとおりであるが、rmIL-10の存在下も含めて培養し、最終上清を分泌因子についてLuminexで分析した。
****、p<0.0001、ANOVA。2つずつのウェル(2回の実験)。
【
図5I】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞を、R848存在下又は非存在下で培養し、IL-2、IL-7、及びIL-33を含有し、ILC2なしか、野生型ILC2由来の上清、又はIl10
-/-ILC2由来の上清を含む単純培地で処理し、最終上清をTimp1についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。
【
図5J】ILC2分泌因子が小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和により抑制が無効になることを示す。小膠細胞をILC2上清又は培地で処理した後、R848で刺激し、最終上清をMmp9及びTimp1についてLuminexで分析した。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、
****、p<0.0001、ANOVA。
【
図6A】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。ILC2のi.v.受動移入後のRag2
-/-γc
-/-マウスから単離された髄膜内のLin
-CD90
+細胞と、これらの細胞のGATA3及びST2標識を示す、代表的なFACSプロット。
【
図6B】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。生着マウスの髄膜由来のCD45細胞のILC2割合、n=3/3マウス(2回実験)。
【
図6C】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。ILC2又はPBS対照のi.v.移入後のRag2
-/-γc
-/-マウスから急性的に単離された小膠細胞の側方錯乱の比較発現を示す、代表的なFACSヒストグラム。n=3/3(2回実験)。
【
図6D】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。ILC2又はPBS対照のi.v.移入後のRag2
-/-γc
-/-マウスから単離された脳のFACSにおける、小膠細胞活性化マーカーのパネルの平均蛍光強度(MFI)によって測定される比較発現。
*、p<0.05、
**、p<0.01、
***、p<0.001、多重T検定、Holm-Sidak法、n=3/3(2回実験)。
【
図6E】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。ILC2又はPBS対照のi.v.移入、及び3日間のIMQ後のRag2
-/-γc
-/-マウスの脳から選別された単球数。スチューデントのT検定、
**、p<0.01、n=5/5、3/3(2回実験)。
【
図6F】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。Eのマウスの脳から選別された小膠細胞によって分泌される因子のLuminex測定。スチューデントのT検定、
**、p<0.01、
****、p<0.0001、n=5/5(2回の実験のうち1回分)。
【
図6G】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。野生型又はIl10
-/- ILC2又はPBSのいずれかの受動移入後のIMQ処理したRag2
-/-γc
-/-マウスより、スライス状の脳海馬実質にエバンスブルー浸潤した代表的な共焦点画像。n=4/4/4(2回実験)。
【
図6H】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。ILC2又はPBS対照のi.v.移入、及び3日間のIMQ後のRag2
-/-γc
-/-マウスの脳から選別された単球数。スチューデントのT検定、
**、p<0.01、n=5/5、3/3(2回実験)。
【
図6I】髄膜内の受動移入されたILC2の生着が、IL-10依存的に神経炎症を抑制する方法である。2日間培養後の小膠細胞分泌因子のLuminex分析。
**、p<0.01、
****、p<0.0001、ANOVA。類似の結果のn=6/5/5(2回実験)。
【
図7A】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。IMQ処理後の野生型、Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの背部の毛がある皮膚の総臨床的皮膚病変スコア。
**、p<0.01、
***、p<0.001、ANOVA、n=4/4/4。
【
図7B】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。3つの群の背部皮膚の代表的なH&E標識。「H」は顕著な角質増殖、「M」は顕著な微小膿瘍、「A」は顕著な表皮肥厚、「I」は顕著な皮膚浸潤、「DP」は顕著な真皮乳頭、「DC」の拡張毛細血管は、野生型の背部の毛がある皮膚で著しかった。「H」は角質増殖、「M」は微小膿瘍、「A」は表皮肥厚、「I」の皮膚浸潤は、Rag2
-/-で著しかった。Rag2
-/-γc
-/-では、顕著な病理的変化が見られなかった。n=4/4/4。
【
図7C】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。3つの群の脳切片の代表的なH&E標識。わずかな微小出血「H」が野生型及びRag2
-/-で見られ、Rag2
-/-γc
-/-マウスで顕著であった。n=4/4/4。
【
図7D】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。0.8mg/日のTLR7アゴニストであるIMQを3日間局所処理した後の野生型、Rag2
-/-及びRag2γc
-/-の脳から単離された総CD45
+細胞の末梢単球(Ly6c
HiCD11b
Hi)の内容を示す代表的なFACSプロット。
【
図7E】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。(D)の定量。p<0.01、
***、p<0.001、ANOVA。n=3/3/3(2回実験)。
【
図7F】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。脳実質のエバンスブルー浸潤を示す、IMQ処理したRag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの脳スライス(海馬)の代表的な共焦点画像。n=3/3(2回実験)。
【
図7G】ILC欠損マウスは、IMQ負荷に対して「分離した」皮膚対脳応答を示す。オープンフィールド試験によって測定するときの、ビヒクル対IMQで処理したRag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスの自発運動行動。Rag2
-/-マウスでは抑制は測定されず、Rag2
-/-マウスと比較して、Rag2γc
-/-マウスで見られた有意な運動抑制は、これもRag2
-/-γc
-/-で見られた神経炎症の増加と一致している。
****、p<0.0001、ANOVA。n=9/9(2回実験)。
【
図8】IL-10の遮断が、ILC2受動移入に関連する抑制効果を無効にすることを示す。PBS(対照)又はIL-10に対する中和抗体の存在下若しくは非存在下でILC2を移入され、採取3日前に0.8mgのIMQで処理したマウスの脳から選別された小膠細胞の上清中の分泌因子についてのLuminex検出が示される。スチューデントのT検定、n=10/5/5マウス、合わせた2回の実験の結果が示される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
背景技術において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいかなる発明に対しても先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0033】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。本明細書に引用する全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、参照によって恰もその全体が本明細書に記載されているものと同様にして組み込まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意すべきである。
【0034】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」、又はそれらの任意の他の変形形態は、明記される整数又は整数群を含むが、任意の他の整数又は整数群を除外することを示唆しないと理解され、非独占又は無制限であることが意図される。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な又はを指すものであり、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0036】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、直列の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0037】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしの第1の要素の適用性を指す。第2の選択肢は、第1の要素なしの第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、本明細書で使用される用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれることが理解され、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たす。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されることはないことを示す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群も包含することを示す。M.P.E.P.§2111.03を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用するところの「対象」とは、本発明の実施形態による方法によって治療される、又は治療された任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物」とは、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0041】
特定の実施形態では、対象は、小膠細胞活性化に関連する障害の治療を必要としている。そのような障害の例としては、神経変性疾患、炎症性障害、神経心理学的障害、慢性疼痛、脊髄損傷、視神経炎、ウイルス又は細菌感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
特定の実施形態では、対象は、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、及び老化からなる群から選択される神経変性疾患の治療を必要としている。
【0043】
特定の好ましい実施形態では、対象は、うつ病、不安、双極性うつ病、及び統合失調症からなる群から選択される神経心理学的障害の治療を必要としている。
【0044】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、また機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外しないことを示すことも理解されたい。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「併用される」は、対象への2つ以上の治療薬の投与との関連において、複数の治療薬の使用を指す。用語「併用される」の使用は、治療薬を対象に投与する順序について限定しない。例えば、第1の治療薬(例えば、本明細書に記載される組成物)を、対象への第2の治療薬の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、同時、又はその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与することができる。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「小膠細胞活性化」は、小膠細胞の自然活性化又は適応活性化に関連するプロセスを指す。このような活性化は、細胞プロセスの短縮及びそれらの細胞体の拡大、並びに炎症性サイトカイン及びケモカイン、活性酸素及び/又は窒素中間体、プロテアーゼ及び補体タンパク質の放出、並びに細胞表面活性化抗原の上方制御を含む、小膠細胞の形態的変化を含み得る。
【0047】
髄膜ILC2がIL-10の分泌によって脳の境界部で強力な調節作用を及ぼすことが、発明者らによって初めて実証されている。ILC欠損マウスは、ベースラインにおける小膠細胞反応性の増加と、並びにEAE及びIMQ介在性全身性炎症のそれぞれのモデルにおける適応性又は自然免疫曝露のいずれかに対する神経炎症応答の悪化を示した。これらの両モデルにおいて、ILC欠損マウスは、脳から通常排除される分子の実質への漏出によって示されるように、末梢細胞の脳浸潤の増加及びBBB完全性の低下を示した。
【0048】
マウスにおける髄膜ILCサブセットの特徴により、ILC2が優勢であり、矢状静脈洞に位置するために、CSF及び血液の両方への潜在的なアクセスを有することが示され、後にヒトの髄膜サンプルを調べると、ILC2の同様の集団を示唆した。対照及びIL-33刺激マウスから選別された髄膜ILC2のRNAseq分析により、転写因子及び細胞外マーカーによって標準的ILC2に密接にマッピングされた活性化プロファイルを明らかにしたが、Il10シグネチャーが予想外にも優勢であった。
【0049】
IL-33で刺激したタンパク質レベルの髄膜ILC2によるIL-10の産生及び放出と、並びに、細胞外マトリックス及び密着結合分解ペプチダーゼであるMmpsを抑制することによって、BBBにおいて保護的であると示されている因子のTimp1を含む、炎症の解消及び組織保護に関連するいくつかの他の因子が続いて確認された。したがって、活性化ILC2由来の上清は、in vitroにおいて小膠細胞からサイトカイン、ケモカイン、及びMmp放出を強力に抑制し、保護効果は、IL-10のシグナル伝達が遮断されるときに大部分が消失することが示された。in vivoでは、ILC2の受動移入を受けたRag2-/-γc-/-マウスは、髄膜ILC2の生着を示した。PBSを投与された対照と比較して、生着したRag2-/-γc-/-マウスは、ベースラインでの過活性化小膠細胞の表現型の調節と、IMQモデルにおいて神経炎症の著しい改善を示した。決定的には、神経保護は、IL-10の中和によって、又はIL-10-/- ILC2の移入後に消失し、ILC2由来IL-10の重要な役割を示している。
【0050】
それらの初期発見以来、ILCサブタイプの多様性は実質的に増えており、いくつかのT細胞種に機能的に類似するものが十分に特徴付けられている(Artis et al.,Nature,2015,517:293-301)。それにもかかわらず、制御性T細胞の結果として生じるILC、すなわち、制御性自然リンパ系細胞は、不在がはっきりと分かったままであった。しかしながら、最近では、標準的ILC2マーカーを欠いており、ILCに共通の予測されるId2に対して、Id3によって区別される転写因子シグネチャーを有する腸内常在系統陰性細胞が、抗CD40誘導大腸炎モデルにおける保護的IL-10の供給源として指定された(Wang et al.,Cell,2017,171(1):201-216)。このように、この細胞は、長期にわたって謎であった「ILCREG」であることが示唆された。更に、組織特異性が非常に高いことが指摘された。その後の発見では、IL-10を選択してIL-13の産生を控える第2の特殊なILCが肺において明らかにされ、「ILC210」と名付けられた(Seehus et al.,Nat Commun.2017,8(1):1900)。したがって、組織特異性は、ILCファミリーによってまだ対処されていない包括的な免疫調節機能を残す。
【0051】
本出願に記載の髄膜ILC2の転写及び機能分析により、IL-33活性化後に高く上方制御されるIL-10が確認された。他のマウス組織から、続いて本明細書に記載されるようにヒト血液からの標準的ILC2においてIL-10産生が更に検出されたことは、ILC2によるIL-10産生が例外ではなく規則的であり得ることを示唆する。本明細書に記載されるRNAseqデータセットで強調されたGata3、Irf4及びNfil3は、他の細胞型でのIL-10産生における真の担当を担うため、更に新たな因子の探索をなくすことに留意されたい。したがって、ILC2は、予想外にも、広範な制御機能を有する主要な自然リンパ系細胞集団を表すことができる。この以前に認識されていなかった古典的なILC2は、新たな治療的アプローチとしてのILC2細胞療法を示唆している。更に、IL-10産生に対するIL-33の重要性が実証されたことを考慮すると、アラーミンの理解は、時間的又は分子的文脈に応じて、修復シグナルを含むことをある程度再考する必要があるであろう。
【0052】
本明細書に記載される観察結果は、髄膜ILC2が、神経免疫ホメオスタシス、ケモカイン、例えばCCL3及びCCL4の調節によって末梢免疫細胞の脳指向的走化性に関与する複数の能力がある因子であり、更に、IL-10及びTimp1の両方、及び恐らくは他のメカニズムを介してBBB完全性において予期せぬ役割を更に果たすことを示唆している。本開示を考慮すると、神経炎症及び関門完全性の調節に有用な追加の因子/薬剤を特定することができる。そのような因子/薬剤は、最終的には、多発性硬化症、髄膜炎若しくは脳卒中におけるBBB破壊、又は慢性炎症を合併する精神障害などのCNS炎症性病変の寛解において、細胞又は低分子療法のいずれかに有用であり得る(Bhattacharya,et al.,2016,Psychopharmacology(Berl).233:1623-36)。
【0053】
一般的な態様では、本発明は、小膠細胞活性化の低減又は抑制、又はBBB破壊の低減を必要とする患者における、これらの方法に関する。
【0054】
本発明の実施形態によると、この方法は、治療有効量の、II型自然リンパ系細胞(ILC2)、好ましくは活性化ILC2を対象に投与することを含む。
【0055】
本明細書で使用するとき、用語「II型自然リンパ系細胞」、「ILC2」、及び「ILC2細胞」はそれぞれ、リンパ系形態を有し、T細胞受容体を欠くが、活性化時に2型ヘルパーT(Th2)細胞関連サイトカインを発現することができる、リンパ級の集団を指す。Th2サイトカインの例としては、インターロイキン4(IL-4)、IL-5、IL-9、IL-10、及びIL-13が挙げられる。ILC2は、自然ヘルパー細胞であると考えられる。
【0056】
ILC2は、本開示を考慮して、当該技術分野において既知の方法を使用して、1つ以上のマーカーの発現によって同定することができる。いくつかの実施形態では、ILC2細胞は、リンパ系マーカーであるCD90の発現検査で陽性であり、リンパ系マーカーであるICOSの発現検査で陽性であり、免疫細胞の運命決定及び成熟に関連する系統マーカー(以下、Linと称する)の発現検査で陰性である。いくつかの実施形態では、ILC2細胞は、リンパ系マーカーであるCD90及びICOSの発現検査で陽性であり、Linの発現に関して陰性であり、更に、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち1つ以上の追加マーカーの発現検査で陽性である。例えば、ヒトILC2細胞は、胃腸管及び肺において見られ、CD161及びTh2細胞に発現する化学誘引物質受容体ホモログ分子(CRTH2)によって同定され得る(Mjosberg et al.,Nat Immunol.2011;12(11):1055-1062)。ILC2は、本開示を考慮して、既知の方法に従って得ることができる。例えば、細胞は、骨髄から単離され、市販のキット及び蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使用して、ILC2を濃縮することができる。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「活性化ILC2」は、ILC2によってTh2サイトカインの産生を誘導する薬剤と接触しているILC2を意味する。いくつかの実施形態では、ILC2は、IL-33、IL-25、IL-7、IL-2、及び/又はこれらの組み合わせなどのサイトカインによって活性化される。
【0058】
活性化ILC2は、本開示を考慮して、当該技術分野において既知の方法を用いて得ることができる。ILC2細胞は、肺組織、胃腸(GI)管、CNS組織、哺乳類血液及び/又は血液製品が挙げられるがこれらに限定されない、ILC2細胞の様々な好適な供給源から単離され得る。いくつかの実施形態では、ILC2細胞は、ヒト臍帯血細胞から誘導され得る。このようなヒト臍帯血細胞は、ドナー対象及び/又は患者自身の臍帯血由来であってもよい。単離中、細胞を、目的の細胞に対応する寸法のDacronメッシュを通して濾過し、次いで、それぞれ50×gで1分間、2回洗浄してよい。細胞生存率をトリパンブルー染料排除により決定できる。>90%生存率を有する細胞を移植に使用することができる。ex vivo細胞は、成体体細胞、成体前駆細胞、成体幹細胞、胚性前駆細胞、又は胚性幹細胞であり得る。このような細胞源は、当業者には周知である。単離後、細胞を、ex vivoで活性化し、任意選択的に改変することができる。
【0059】
ILC2細胞は、他の細胞と共培養することによって、及び/又は、1種以上の刺激性又は活性化分子、例えば様々なサイトカインと培養することによって活性化することができる。例えば、マウスILC2と同様に、ヒトILC2は、in vitro又はex vivoで増殖して活性化され、IL-2、IL-7、及びIL-33又はIL-25に応答してかなりの量のIL-5及びIL-13を産生することができる。いくつかの実施形態では、活性化ILC2細胞は、対象からヒト臍帯血を採取することと、臍帯血からc-Kit陽性細胞を単離することと、IL-33サイトカインの存在下でc-Kit陽性細胞を培養することによって、IL-33活性化ILC2細胞が生成されることと、を含む、in vitro法を用いて生成できる。いくつかの実施形態では、ILC2細胞は、培養中のc-Kit陽性細胞を、1つ以上のサイトカインIL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7に曝露することによって活性化される。いくつかの実施形態では、in vitro法は、ILC2細胞内のST2、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーGメンバー1(KLRG1)、SCA-1又はCD127の発現など、ILC2に対する1つ以上のマーカーの発現を測定することによって、生成されたILC2細胞を分析することを更に含む。いくつかの実施形態では、活性化ILC2細胞は、IL-25応答性であるがILC2とは異なる、多能性前駆細胞2(MPP2)を実質的に含まない。
【0060】
IL-33は、IL-1スーパーファミリーに属するサイトカインである。これは、核内転写因子及び炎症促進性サイトカインとして作用する二重機能タンパク質である。核局在とヘテロクロマチンとの会合は、N末端ドメインによって媒介され、IL-33がNF-κB複合体のp65サブユニットの新規転写調節因子として機能することを可能にする。C末端ドメインは、ST2受容体への結合と、分極したTh2細胞及びILC2細胞からの2型サイトカイン(例えば、IL-5及びIL-13)の産生の活性化に十分である。したがって、いくつかの実施形態では、活性化ILC2細胞は、ILC2細胞をIL-33又はそのC末端ドメインと接触させることによって生成され得る。
【0061】
活性化の長さは実験的に決定することができ、ILC2の起源、サイトカイン、及び/又は活性化に使用される条件などの要因に依存し得る。特定の実施形態では、ILC2を、IL-33、IL-25、IL-2、IL-7、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)などの薬剤と、少なくとも30分間(例えば、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、又は8時間)接触させる。好ましい実施形態では、ILC2を、対象に投与される前に、活性化のために少なくとも4時間サイトカインと接触させる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明に有用な活性化ILCは、CD90、SCA-1、iCOS及び/又はST2を発現し、IL-25及び/又はIL-33に応答し、IL-10、IL-5、及びIL-13を生成する。
【0063】
本出願の特定の実施形態では、投与されたILC2は遺伝子改変されている。当業者であれば、本開示を考慮して、当該技術分野において既知の方法を利用して、遺伝子改変を細胞に導入できると認識するであろう。例えば、任意の所与の関連因子の遺伝子発現を操作するために、1種以上のウイルスベクター若しくは1種のウイルスベクター、並びにmRNA、siRNA、miRNAの使用を含むその他遺伝子送達及び編集ツール、又は別の遺伝子改変を使用することができる。
【0064】
特定の実施形態では、ILC2を改変し、サイトカインを含むがこれらに限定されない免疫調節分子を発現させてよく、好ましくは、ILC2はIL-10を発現するように改変される。特定の実施形態では、ILC2を遺伝子改変し、ILC2数の増加及び/又はIL-10産生の増加をもたらす薬剤を発現させてよく、好ましくは、ILC2はIL-33受容体を発現するように改変される。特定の実施形態では、ILC2細胞を遺伝子改変し、小膠細胞活性化の低減に有効であることが知られている1つ以上のタンパク質、例えばTGF-βなど、目的の1つ以上の他の産物を発現させてよい。
【0065】
本明細書で使用するとき、「自家」は、対象又は宿主の組織又は細胞由来の生物学的物質又は細胞を指す。対象に投与される活性化ILC2は、自家であってもよい。
【0066】
本明細書で使用するとき、「異種」とは、対象若しくは宿主とは異なる種、又は同じ種の異なる固体の組織若しくは細胞由来の生物学的物質又は細胞(例えば、アロジェネイック又はゼノジニック)を指す。対象に投与される活性化ILC2は、異種であってもよい。
【0067】
本出願の特定の実施形態では、小膠細胞活性化又はBBB透過性の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化又はBBB透過性の低減の方法は、治療有効量の、対象において活性化ILC2の数を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む。活性化ILC2の数を増加可能な薬剤の例としては、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7などのILCを活性化可能な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
対象における活性化ILC2の数の増加とは、対象における全活性化ILC2の数の増加、又は特定の組織常在活性化ILC2の数の増加を意味し得る。ILC2は、哺乳類の皮膚、肺、肝臓、腸、脂肪、及び脳内に存在する。好ましい実施形態では、対象は、本発明の1つ以上の治療の結果として、活性化髄膜ILC2の数が増加している。
【0069】
ILC2を活性化し、活性化ILCの数を増加させることができると知られている薬剤に加えて、小膠細胞活性化又はBBB破壊の低減を必要とする対象において小膠細胞活性化又はBBB破壊の低減のために有用な他の薬剤は、
(1)ILC2を、ILC2の増殖及び活性化に好適な条件下で、試験化合物と接触させることと、
(2)活性化ILC2の数を測定することと、を含む、方法を用いて同定できる。
【0070】
ILC2の増殖及び活性化に好適な条件は、当業者に既知である。細胞をex vivoで増殖させるための好適な増殖培地は、当該技術分野において周知であり、例えば、「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」R.I.Freshney,2010,Wiley-Blackwellに開示されている。各種細胞の最適培地は、細胞専門の供給元から得ることができる(例えば、ATCC-LGC(MI,Italy);CDC(Atlanta,Ga.,USA))。活性化ILC2は、CD90及びICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2などの1つ以上のILC2のマーカーの発現と、Lin発現陰性によって同定し、定量化できる。
【0071】
本出願の特定の他の実施形態では、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減の方法は、治療有効量の、対象においてILC2によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む。ILC2によるIL-10の産生を増加可能な薬剤の例としては、IL-25、IL-33、IL-2、IL-4、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。全ての活性化ILC2は、IL-10の産生を増加させていない。ILC2の組織位置が、役割を果たすと思われる。例えば、肺中のILC2は、IL-33単独での処理後に存在する場合、非常に少ない量のIL-10を産出する。しかしながら、肺中のILC2がIL-33及びIL-2及び/又はIL-4によって励起される場合、高レベルのIL-10を産生する。特定の実施形態では、サイトカインの組み合わせを使用して、ILC2によるIL-10の産生の増加において相乗反応を得ることができる。例えば、IL-25とIL-33との組み合わせにより、それぞれ別々よりも、IL-10の産生が非常に高くなり得る。特定の他の実施形態では、サイトカインの組み合わせを使用して、ILC2によるTimp1の産生の増加において相乗反応を得ることができる。
【0072】
対象における活性化ILC2によるIL-10又はTimp1の産生の増加とは、対象における全活性化ILC2によるIL-10若しくはTimp1の産生の増加、又は特定の組織常在活性化ILC2によるIL-10若しくはTimp1の産生の増加を意味し得る。好ましい実施形態では、対象は、本発明の1つ以上の治療の結果として、活性化髄膜ILC2によるIL-10又はTimp1の産生が増加している。
【0073】
ILC2によるIL-10又はTimp1の産生を増加させることができると知られている薬剤に加えて、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象において小膠細胞活性化の低減のために有用な他の薬剤は、
(1)ILC2を、ILC2によるIL-10の産生に好適な条件下で、試験化合物と接触させることと、
(2)ILC2によって産生されたIL-10又はTimp1のレベルを測定することと、を含む、方法を用いて同定できる。
【0074】
ILC2によるIL-10の産生に好適な条件は、当業者に既知である。ILC2によって産生されるIL-10又はTimp1は、本開示を考慮して当該技術分野において既知の方法を用いて、例えば、IL-10又はTimp1に特異的な抗体によって同定し、定量化できる。
【0075】
特定の態様では、本発明は、小膠細胞活性化の低減を必要とする患者における、小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物に関する。
【0076】
一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の活性化ILC2と、医薬的に許容される担体と、を含む。
【0077】
別の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む。
【0078】
更に別の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の、対象においてILC2によるIL-10又はTimp1の産生を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む。Timp1の産生は、活性化ILC2によって直接的に、又は活性化ILC2によって産生及び/又は活性が増加する別の因子(例えば、IL-10)によって間接的に増加させることができる。
【0079】
医薬的に許容される担体は非毒性であり、活性成分の有効性を干渉すべきではない。医薬的に許容される担体としては、1種以上の、水、グリコール、糖、油、アミノ酸、アルコール、防腐剤、皮膚軟化剤、安定剤、着色剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。任意の好適な医薬的に許容される担体は、対象への投与のために、活性化ILC2、ILC2の数を増加させる薬剤、又はIL-10若しくはTimp1の産生を増加させる薬剤と共に使用され得る。例えば、好適な製剤として、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、殺菌性抗生物質、及び対象とするレシピエントの体液と製剤を等張にする溶質を含み得る水性及び非水性の滅菌注射剤、並びに、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁剤を挙げることができる。製剤は、一回用量又は複数回用量容器、例えば、封止されたアンプル及びバイアル製剤であってよく、使用直前に滅菌液体キャリア、例えば注射用水の添加のみを必要とする冷凍又はフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保管することができる。いくつかの例示的な成分は、SDS、マンニトール、又は別の糖、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0080】
上記に特に言及された成分に加えて、本開示の主題の製剤は、当該技術分野において従来の他の薬剤を、問題の処方の種類に関連して含み得ることを理解されたい。例えば、無菌の発熱物質を含まない水性及び非水性溶液を使用することができる。
【0081】
本開示の主題の治療レジメン及び組成物は、サイトカインを含むがこれらに限定されない追加の薬剤又は生体応答修飾剤と共に使用することができる。
【0082】
本開示の主題の組成物の投与は、静脈内投与、関節滑液嚢内投与、経皮投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、膣内投与、腫瘍内投与、経口投与、頬側投与、鼻腔投与、非経口投与、吸入、及び吹送が挙げられるが、これらに限定されない、当業者に既知の任意の方法であってよい。いくつかの実施形態では、本開示の主題の組成物の投与に好適な方法としては、静脈内注射が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、任意の他の方法で治療を必要とする部位に堆積され得る。本開示の主題の組成物を投与する特定の態様は、治療される細胞の分布及び豊富さ、組成物の追加の組織又は細胞標的化特性、及び投与部位からの組成物の代謝又は除去のための機構を含む、様々な因子に依存する。
【0083】
本発明の実施形態によると、単離されたILC2又はその医薬組成物の投与は、全身性又は局所的であり得る。特定の実施形態では、投与は非経口的ある。好ましい実施形態では、対象への単離ILC2又はその医薬組成物の投与は、注射、注入、静脈内(IV)投与、髄腔内投与、又は大腿内投与によるものである。また更に好ましい実施形態では、対象への単離ILC2又はその医薬組成物の投与は、静脈内、又は髄腔内投与によるものである。
【0084】
活性化ILC2の数又はILC2によるIL-10の産生を増加させるサイトカインなどの薬剤の投与は、筋肉内、皮下、又は静脈内であってよい。しかしながら、皮膚、皮内、又は鼻腔などの他の投与方法も同様に想定され得る。薬剤の筋肉内投与は、薬剤組成物の懸濁液を注入するための針を使用することによって達成することができる。代替的には、組成物を投与するための針なし注射装置の使用(例えば、Biojector(商標)の使用)又は薬剤組成物の凍結乾燥粉末の使用である。
【0085】
特定の実施形態では、ILC2を患者から採取し、任意選択的に、遺伝子改変され、ex vivo処理によって活性化され、その後患者に投与して戻して、小膠細胞の活性化を低減することができる。
【0086】
静脈内、皮膚又は皮下注射では、薬剤組成物は、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態であり得る。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射剤、リンゲル注射剤、乳酸リンゲル注射剤などの等張性ビヒクルを使用して好適な溶液を調製することが可能である。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、及び/又は他の添加剤を含めることができる。徐放性製剤もまた使用することができる。
【0087】
本開示の組成物の有効用量は、それを必要とする対象に投与される。本明細書で使用するとき、「有効量」とは、それを必要とする対象に投与されると、対象に所望の局所的又は全身的効果を提供する組成物の量を指す。いくつかの実施形態では、有効量は、対象における小膠細胞活性化の低減の有益な又は所望の臨床結果を達成するのに十分な量である。有効量は、1回の投与で一度に全て、又は何回かの投与で有効量を提供する分量で提供することができる。
【0088】
本開示の主題の組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の対象に対する所望の治療反応を達成するのに有効な量の活性化合物を投与するように変化させることができる。選択された投与量レベルは、治療組成物の活性、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療される状態の重篤度、並びに、各対象独自の因子、例えば体重、年齢、損傷及び/又は疾患の状態、並びに病歴、並びに疾患の発生又は疾患の始まりからの時間に依存し得る。しかしながら、本開示を考慮して、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで組成物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、当業者の技能の範囲内である。
【0089】
例えば、本明細書に提示される本開示の主題の開示を検討した後、当業者は、特定の製剤、組成物と共に使用される投与方法、及び状態の重篤度を考慮して、個々の患者に対して投薬量を調節することができる。用量の更なる計算は、患者の伸長及び体重、症状の重篤度及びステージ、並びに追加の有害な健康状態の存在を考慮し得る。このような調節又は変化、並びにそのような調節又は変化の実施タイミング及び方法の評価は、医学分野の当業者には周知である。
【0090】
本出願全体で引用した全ての引用参考文献(論文参考文献、交付済み特許、公開された特許出願、及び同時係属の特許出願を含む)の内容は、参照により本明細書に明白に組み込まれる。
【0091】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態も提供する。
【0092】
実施形態1は、小膠細胞活性化の低減又は抑制を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減又は抑制の方法であって、治療有効量の活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を対象に投与することを含む、方法である。
【0093】
実施形態1aは、血液脳関門(BBB)の透過性低減を必要とする対象における血液脳関門(BBB)の透過性低減の方法であって、治療有効量の活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を対象に投与することを含む、方法である。
【0094】
実施形態2は、ILC2が、ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、IL-7、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインと接触させることによって活性化される、実施形態1又は1aに記載の方法である。
【0095】
実施形態2aは、ILC2が、ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、IL-7からなる群から選択される2つのサイトカインと接触させることによって活性化される、実施形態2に記載の方法である。
【0096】
実施形態2bは、ILC2が、ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、IL-7からなる群から選択される3つのサイトカインと接触させることによって活性化される、実施形態2に記載の方法である。
【0097】
実施形態2cは、ILC2が、ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、IL-7であるサイトカインと接触させることによって活性化される、実施形態2に記載の方法である。
【0098】
実施形態2dは、ILC2が、ILC2をIL-33及びIL-25と接触させることによって活性化される、実施形態2に記載の方法である。
【0099】
実施形態2eは、ILC2が、ILC2を少なくとも1つのサイトカインと少なくとも30分間、好ましくは少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間接触させることによって活性化される、実施形態2~2dのいずれか1つに記載の方法である。
【0100】
実施形態3は、投与された活性化ILC2細胞が自家である、実施形態1~2dのいずれか1つに記載の方法である。
【0101】
実施形態3(a)は、投与された活性化ILC2細胞がアロジェネイックである、実施形態1~2dのいずれか1つに記載の方法である。
【0102】
実施形態3(b)は、投与された活性化ILC2細胞が同系である、実施形態1~2dのいずれか1つに記載の方法である。
【0103】
実施形態4は、ILC2が遺伝子改変されている、実施形態1~3(b)のいずれか1つに記載の方法である。
【0104】
実施形態4aは、細胞が、それ以外は同一の非改変細胞と比較して、IL-10産生の増加のために遺伝子改変されている、実施形態4に記載の方法である。
【0105】
実施形態4bは、細胞が、それ以外は同一の非改変細胞と比較して、活性化ILC2の数の増加のために遺伝子改変されている、実施形態4に記載の方法である。
【0106】
実施形態4cは、細胞が、それ以外は同一の非改変細胞と比較して、Timp1産生の増加のために遺伝子改変されている、実施形態4に記載の方法である。
【0107】
実施形態5は、治療有効量の活性化ILC2が静脈内又は髄腔内に投与される、実施形態1~4cのいずれか1つに記載の方法である。
【0108】
実施形態6は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減の方法であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0109】
実施形態6aは、血液脳関門(BBB)の透過性低減を必要とする対象における血液脳関門(BBB)の透過性低減の方法であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0110】
実施形態7は、IL-33、IL-25、IL-2、IL-7、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインを対象に投与することを含む、実施形態6又は6aに記載の方法である。
【0111】
実施形態7aは、IL-33、IL-25、IL-2、IL-7からなる群から選択される2つのサイトカインを対象に投与することを含む、実施形態7に記載の方法である。
【0112】
実施形態7bは、IL-33、IL-25、IL-2、IL-7からなる群から選択される3つのサイトカインを対象に投与することを含む、実施形態7に記載の方法である。
【0113】
実施形態7cは、IL-33、IL-25、IL-2、IL-7を対象に投与することを含む、実施形態7に記載の方法である。
【0114】
実施形態8は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減の方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0115】
実施形態8aは、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減の方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるTimp1の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0116】
実施形態8bは、血液脳関門(BBB)の透過性低減を必要とする対象における血液脳関門(BBB)の透過性低減の方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0117】
実施形態8cは、血液脳関門(BBB)の透過性低減を必要とする対象における血液脳関門(BBB)の透過性低減の方法であって、有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるTimp1の産生を増加可能な薬剤を対象に投与することを含む、方法である。
【0118】
実施形態9は、治療有効量のIL-33、IL-25、IL-2、IL-4、又はこれらの組み合わせを対象に投与することを含む、実施形態8~8cのいずれか1つに記載の方法である。
【0119】
実施形態10は、対象が、小膠細胞活性化に関連する障害の治療を必要としている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0120】
実施形態11は、対象が、神経変性疾患、炎症性障害、神経心理学的障害、慢性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、ウイルス又は細菌感染の治療を必要としている、実施形態10に記載の方法である。
【0121】
実施形態12は、対象が、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、老化、髄膜炎、及び脳卒中からなる群から選択される神経変性疾患の治療を必要としている、実施形態10に記載の方法である。
【0122】
実施形態13は、対象が、うつ病、不安、双極性うつ病、及び統合失調症からなる群から選択される神経心理学的障害の治療を必要としている、実施形態10に記載の方法である。
【0123】
実施形態14は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の単離された活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物である。
【0124】
実施形態14aは、組成物中でILC2の活性化、又はILC2の活性化状態での維持が可能な少なくとも1つの薬剤を更に含む、実施形態14に記載の医薬組成物である。
【0125】
実施形態14bは、少なくとも1つの薬剤が、IL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される、実施形態14aに記載の医薬組成物である。
【0126】
実施形態14cは、少なくとも1つの薬剤が、IL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される2つの薬剤を含む、実施形態14aに記載の医薬組成物である。
【0127】
実施形態14dは、少なくとも1つの薬剤が、IL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される3つの薬剤を含む、実施形態14aに記載の医薬組成物である。
【0128】
実施形態14eは、少なくとも1つの薬剤が、IL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7を含む、実施形態14aに記載の医薬組成物である。
【0129】
実施形態14fは、少なくとも1つの薬剤が、IL-33及びIL-25を含む、実施形態14aに記載の医薬組成物である。
【0130】
実施形態14gは、ILC2が髄膜ILC2である、実施形態14~14fのいずれか1つに記載の医薬組成物である。
【0131】
実施形態15は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物である。
【0132】
実施形態15aは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0133】
実施形態15bは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される2つの薬剤を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0134】
実施形態15cは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される3つの薬剤を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0135】
実施形態15dは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される4つの薬剤を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0136】
実施形態15eは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0137】
実施形態15fは、医薬組成物が、IL-33及びIL-25を含む、実施形態15に記載の医薬組成物である。
【0138】
実施形態15gは、ILC2が髄膜ILC2である、実施形態15~15fのいずれか1つに記載の医薬組成物である。
【0139】
実施形態16は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物である。
【0140】
実施形態16aは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0141】
実施形態16bは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される2つの薬剤を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0142】
実施形態16cは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される3つの薬剤を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0143】
実施形態16dは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7からなる群から選択される4つの薬剤を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0144】
実施形態16eは、医薬組成物が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、IL-2、及びIL-7を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0145】
実施形態16fは、医薬組成物が、IL-33及びIL-25を含む、実施形態16に記載の医薬組成物である。
【0146】
実施形態16gは、ILC2が髄膜ILC2である、実施形態16~16fのいずれか1つに記載の医薬組成物である。
【0147】
実施形態17は、治療有効量の単離された活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を医薬的に許容される担体と混合することを含む、実施形態14~14gのいずれか1つに記載の医薬組成物の調製方法である。
【0148】
実施形態18は、治療有効量の対象においてILC2の数を増加可能な薬剤を医薬的に許容される担体と混合することを含む、実施形態15~15gのいずれか1つに記載の医薬組成物の調製方法である。
【0149】
実施形態19は、治療有効量の対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を医薬的に許容される担体と混合することを含む、実施形態16~16gのいずれか1つに記載の医薬組成物の調製方法である。
【0150】
実施形態20は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤を同定する方法であって、
(1)自然リンパ系細胞(ILC2)を、ILC2の増殖に好適な条件下で、薬剤と接触させることと、
(2)ILC2の数を測定することと、を含み、
対照レベルと比較したILC2の数の増加が、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤であることを示す、方法である。
【0151】
実施形態21は、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤を同定する方法であって、
(1)自然リンパ系細胞(ILC2)を薬剤と接触させることと、
(2)ILC2によって生成されたIL-10のレベルを測定することと、を含み、
対照レベルと比較したILC2により産生されるIL-10の量の増加が、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤であることを示す、方法である。
【0152】
実施形態21aは、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤を同定する方法であって、
(1)自然リンパ系細胞(ILC2)を薬剤と接触させることと、
(2)ILC2によって生成されたTimp1のレベルを測定することと、を含み、
対照レベルと比較したILC2により産生されるTimp1の量の増加が、小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のために有用な薬剤であることを示す、方法である。
【0153】
実施形態21bは、BBB透過性の低減を必要とする対象におけるBBB透過性の低減のために有用な薬剤を同定する方法であって、
(1)自然リンパ系細胞(ILC2)を薬剤と接触させることと、
(2)ILC2によって生成されたIL-10のレベルを測定することと、を含み、
対照レベルと比較したILC2により産生されるIL-10の量の増加が、BBB透過性の低減を必要とする対象におけるBBB透過性の低減のために有用な薬剤であることを示す、方法である。
【0154】
実施形態21cは、BBB透過性の低減を必要とする対象におけるBBB透過性の低減のために有用な薬剤を同定する方法であって、
(1)自然リンパ系細胞(ILC2)を薬剤と接触させることと、
(2)ILC2によって生成されたTimp1のレベルを測定することと、を含み、
対照レベルと比較したILC2により産生されるTimp1の量の増加が、BBB透過性の低減を必要とする対象におけるBBB透過性の低減のために有用な薬剤であることを示す、方法である。
【0155】
実施形態22は、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち1つ以上を発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法、実施形態14~16のいずれか1つに記載の医薬組成物、又は実施形態17~21cのいずれか1つに記載の方法である。
【0156】
実施形態22aは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち2つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0157】
実施形態22bは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち3つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0158】
実施形態22cは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち4つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0159】
実施形態22dは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち5つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0160】
実施形態22eは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち6つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0161】
実施形態22fは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち7つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0162】
実施形態22gは、ILC2が、CD90、ICOS、IL7Ra(CD127)、CD161、ST2、幹細胞抗原1(Sca1)、IL2Ra(CD25)、及びCRTH2のうち8つを発現し、Linの発現に関して陰性である、実施形態22に記載の方法である。
【0163】
実施形態22hは、活性化ILC2がIL-10を産生する、実施形態22~22gのいずれか1つに記載の方法である。
【0164】
実施形態22iは、活性化ILC2が、IL-4、IL-5、IL-9、及びIL-13のうち少なくとも1つを更に産生する、実施形態22~22hのいずれか1つに記載の方法である。
【0165】
実施形態22jは、活性化ILC2が、IL-4、IL-5、IL-9、及びIL-13のうち2つを更に産生する、実施形態22iに記載の方法である。
【0166】
実施形態22kは、活性化ILC2が、IL-4、IL-5、IL-9、及びIL-13のうち3つを更に産生する、実施形態22jに記載の方法である。
【0167】
実施形態22lは、活性化ILC2が、IL-4、IL-5、IL-9、及びIL-13を更に産生する、実施形態22jに記載の方法である。
【0168】
実施形態22mは、活性化ILC2がTimp1を産生する、実施形態22~22lのいずれか1つに記載の方法である。
【0169】
実施形態22nは、活性化ILC2が髄膜ILC2である、実施形態1~22mのいずれか1つに記載の方法である。
【実施例0170】
以下の実施例は、本開示の主題の様々な実施形態を更に例示するために含まれる。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態において多くの変更を行い、本開示の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、同様又は類似の結果を依然として得ることができると理解するであろう。実施例は、いかなる方法によっても本発明を制限するものではない。これらは単に本発明を明確にするために役立つ。
【0171】
実施例1.ILC2は、髄腔内で豊富である
CD45+Lin-FCεr1a-DX5-CD90+IL7rα+細胞(
図1A)の転写因子標識を使用して、ILC1(Tbet+)、ILC2(Gata3Hi)及びILC3(RORγt+Gata3-/lo)サブセットを分離した。最初に、髄膜自然リンパ系細胞(mILC)をプロファイリングして、最も豊富な種類を決定した。未処理のマウスの脳を慎重に切開し、固定のために直ちに4%パラホルムアルデヒドに入れた。4℃で48時間(hr)の固定後、H
2O中30%スクロース中で脳を24時間インキュベートし、続いて-80℃で保存した。頭蓋冠を、ペトリ皿内の20mL蛍光活性化細胞選別(FACS)緩衝液(DMEM/F-12+2%FBS)中に置き、鉗子を使用して髄膜を慎重に剥離した。髄膜を70μmの細胞濾過器に入れ、注射器プランジャの裏側を回転運動(最低100回)させて穏やかに解離させた。次いで、3回フィルターを通して細胞を洗浄し、解離した組織から細胞を更に放出した。チューブを、4℃、1500RPMで7分間(min)遠心分離し、次いで注意深くデカントした。ペレットを200μLのFACS緩衝液に再懸濁し、細胞を氷上に置いた。細胞を、系統マーカーである、FCεr1α、DX5、CD45、CD90、IL7rαに対する抗体で細胞外標識し、固定し、透過処理し、その後、TrueNuclear(登録商標)標識キット(Biolegend)を製造元のプロトコルに従って使用して、TBET、GATA3、及びRoRγtについて核内標識した。転写因子FACSにより、ILC2(ILC2)がマウスの硬膜リンパ管において多数を占める集団であることを明らかとなった(
図1B)。
【0172】
ILC2がCNSに影響を及ぼし得る可能性のある解剖学的経路を探索するために、ILC及びLyve1を標識するCD90を用いて、完全な髄膜の免疫標識及び高解像度共焦点画像解析を行い、リンパ系対非リンパ系組織を表した(Louveau et al.,2015,Nature 523,337-341)。CD90+ILCは、主に静脈洞内で可視化されたが、Lyve1+リンパ系自体に限定されず(
図1C(i))、in situ Gata3免疫標識を加えると、ILC2が静脈洞に存在することが確認された(
図1C(ii))。脳脊髄液(CSF)及びCNS血流の両方に対する導管として、静脈洞が、髄膜ILCのCNS内の他の細胞との相互作用を可能にする、考えられる機構的リンクとしての分泌因子を示唆した。
【0173】
ILCは、ヒト髄膜においてこれまで特徴が確認されていなかった(更には同定もされていなかった)。新しい死後髄膜においてこれらが存在することが、この研究で調べられた。簡潔に述べると、受領時に死後18~24時間の矢状静脈洞、軟膜及び脈絡叢組織を切開し、慎重にPBSで洗浄し、解離させ、フローサイトメトリーによる分析のために標識した。CD45+Lin-CD11c-FcεR1-CD127+CRTH2+CD161+細胞の、全てのサンプルからの分離に成功した(
図1D)。新しい死後髄膜を用いた研究から得られた初期の結果は、ヒト髄膜も、マウス髄腔で見られるものと同様のILC2集団を保有することを示唆する。
【0174】
実施例2.IL-33及びIL-25は髄膜ILC2を活性化する
IL-25及びIL-33の相対的な機能的応答を調べるため、Rag2-/-マウスを、腹腔内(i.p.)注射によって各サイトカインで処理し、マウスには、0.033mg/kg、毎日、3日間、24時間毎に注射した。実施例1に記載されるように、脳及び髄膜を取り出した。細胞を単離し、系統マーカーである、FCεr1α、DX5、CD45、CD90、IL7rα、KLRG1、ST2、GATA3、KI-67に対する抗体で標識し、FACSで分析した。CD45+のmILC2割合、数、及びKI-67標識によって測定される増殖の増加は、いずれの因子の注射によって見られたが、IL-33で最も堅牢であった。
【0175】
実施例3.ILC2欠損マウスは小膠細胞活性を呈する
CNS内の主要な免疫系が存在する小膠細胞は、常時監視に携わっており、周囲の繊細な神経組織を保護するために容易に応答する。CNSの免疫調節におけるmILC2由来因子の役割を調べるため、小膠細胞をILC2欠損Rag2-/- γ□-/-マウスの脳から単離し、FACSを用いて対照Rag2-/-マウスと比較した。
【0176】
Iba-1を用いた免疫標識は、実際に、ILC欠損マウスの脳において小膠細胞密度が目に見えて差があることを示唆しており(
図3A)、単位面積当たりの小膠細胞の数が増加したことを示している(
図3B)。急性的に単離された脳細胞懸濁液のフローサイトメトリーによるその後の分析により、ILC欠損マウスの小膠細胞による側方散乱の上昇(細胞粒度の一般的な指標であるため、細胞内活性を意味する)(
図3C)、CD45(
図3D)及び他の表面活性化マーカー、例えば、FcRII/III及びMARCOの発現増加(
図3E)が明らかとなった。これらの観察結果は、実際に、ILC欠損に関連して小膠細胞のベースラインの状態が変化したことを示唆している。I型及びII型応答の両方に関連する活性化マーカーは同様に上昇し、M1又はM2のskewingではなく一般的な活性化を示唆した。
【0177】
mILC2の機能的役割を調べるため、対照及びILC2欠損マウスに、0.033mg/kg、毎日、3日間、24時間毎にrIL-33を注射し、ILC2を活性化した。次いで、髄膜及び脳細胞を単離し、10%FBS、1:100 P/S、1:100 L-グルタミン、1:100 NEAA、1:100ピルビン酸Na、1:1000 β-メルカプトエタノールを含むRPMI(全てGibco)の37℃の培養液に一緒に入れた。IL-33処理は、ILC2が十分なマウスと欠損マウスとの間の差を拡大し、Luminexビーズアッセイによって分析するとき、分泌プロファイルはILC2欠損マウスにおいていくつかのサイトカイン及びケモカインのレベルが増加したことを示した。
【0178】
ILC2欠損マウスにおけるこの「過活性化」小膠細胞状態は、ILCによる免疫抑制作用の損失によって説明することができ、これにより、小膠細胞の抑制解除を実行可能な方法で高めることができる。あるいは、しかしながら、漏れやすい血液脳関門及び/又は血液脳脊髄液関門(BBB、BCB)もまた、正常では末梢に限定される免疫賦活因子の実質レベルの増加につながり、小膠細胞の「超活性化」をもたらし得る。第1のシナリオは、ILCの直接的な免疫調節的作用と一致しており、第2のシナリオは、腸内ILCと同様に、髄膜ILCが関門機能の調節に関与する別の可能性と一致している。これらの可能性を包括的に調べるため、適応免疫及び自然免疫曝露の両方に対する応答の特徴確認を行った。CNSの直接的自己免疫発作を伴う実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を適応モデルとして選択し、皮膚炎症及び脳炎症の両方を誘発することが示された免疫賦活剤であるイミキモド(IMQ)の局所投与を選択して、ILC及び小膠細胞を含む脳の境界部における自然エフェクター間の相互作用を調べた。
【0179】
ILC欠損マウスにおけるEAE重篤度の増加は、T細胞の異常と一致して、髄膜内で停止することが見出された。簡単に言えば、Mog
35~55ペプチドで免疫化した野生型マウスから選別されたCD4+ T細胞を、Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスにi.v.で移入した。受動的EAE誘導により、群間のT細胞が同じ数であることと病原性が保証された。注目すべきことに、初回の実験は全例において早期終了を必要としたが、1例で、Rag2
-/-γc
-/-マウスは、最初の症状検出から24~36時間以内に完全麻痺及び/又は瀕死状態まで急激に進行し、一方Rag2
-/-マウスは、予想どおりの進行を呈した。したがって、CD4数を50%まで調節して疾病の経過を遅くさせ、このとき、ILC欠損マウスは依然として対照よりわずかに早く初期症状を示し、その後、疾患の重篤度が上昇したものの死亡率が低下した(
図4A)。重篤度と共に、EAEの発生率は、Rag2
-/-γc
-/-マウスにおいて顕著に増加した(
図4B)。より高い臨床スコアと同時に、ILC欠損マウスは、実質へのT細胞浸潤をより示した(
図4Ci~ii)。しかしながら興味深いことに、Rag2
-/-の髄膜は、Rag2
-/-γc
-/-の髄膜よりも有意に多くのT細胞を含んでおり(
図4Di~ii)、脳及び脊髄で観察されたことと逆であった。血清因子の定量により、Rag2
-/-マウスにおける炎症促進性サイトカインの増加に対する差又は傾向のいずれも示されず、循環中のT細胞が、リンパ節又は脾臓内に末梢性ILCが存在するときの病原性を低下させるという仮説に相反する。
【0180】
Rag2-/-及びRag2-/-γc-/-のCNS中のT細胞蓄積における実質と髄膜との間の逆相間により、ILCが、脳炎惹起性T細胞のBBB通過の停止に関与する可能性が示唆された。
【0181】
加えて、ILC欠損マウスは、局所IMQに対する、分離した皮膚対脳応答を示した。TLR7/8アゴニストであるIMQは、げっ歯類モデルにおいて乾癬皮膚炎症を誘導するために局所的に幅広く使用されており、活発な小膠細胞応答及び脳の免疫浸潤を促進することも示された。Rag2-/-マウスがIMQに対する中程度の乾癬性応答を維持しているが、Rag2-/-γc-/-が維持していないという知見と共に、これが、小膠細胞、ILC及び関門完全性を同時に調べるための唯一のモデルであることが示唆された。十分に立証された臨床的併存疾患である末梢炎症性疾患を伴う精神障害、例えば乾癬を伴う気分障害を考慮すると、末梢炎症モデルはCNS病状に関連性を有し得ることに留意されたい。
【0182】
野生型、Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスによるIMQに対する皮膚及び脳応答を比較した。予想したとおり、皮膚の臨床スコア(
図7A)及び組織構造(
図7B)は、野生型、Rag2
-/-及びRag2
-/-γc
-/-マウスにおいて、それぞれ、重篤、中程度、及び軽度から病状なしを示した(
図7B)。しかしながら驚くべきことに、同一群由来の脳でヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E)を行ったところ、異なるパターンでの微小出血が明らかとなり、すなわち、野生型及びRag2
-/-マウスの両方で同等に軽度であったが、意外にも、Rag2
-/-γc
-/-マウスにおいて重篤であった(
図7C)。解離した脳のフローサイトメトリー分析により、類似した単球浸潤パターンが示され(
図7D)、ILC欠損マウスの脳は、有意に多くの単球を示した(
図7E)。したがって、驚くべきことにT細胞ではなく、ILCは、BBB破壊の観察された表現型に極めて重要であるように見えた。
【0183】
実質の微小出血及び免疫浸潤は、巨視的レベルでの完全性の有効な尺度と考えられ得るが、細胞内粒子に対するBBB透過性の変化も評価した。IMQ処理を、通常はインタクトな血液脳関門及び血液CSF関門(BCB)によって脳から除外されるエバンスブルー染料の経心臓的注射によりモニターした。細胞浸潤の測定値と一致して、ILC欠損マウスの脳は、Rag2-/-対照と比較して、実質のエバンスブルー染料のレベルが増加したことを示した(
図7F)。
【0184】
実施例4.ILC2移入は小膠細胞の活性化を抑制する
小膠細胞に対するILC2特異的効果を調べるため、Rag2-/-γc-/-又はRag2-/-対照マウスへの、ILC2又はPBS(対照)の静脈内受動移入を行った。
【0185】
ILC2の単離
Rag2-/-マウスを、0.033mg/kgの組換えIL-33を毎日3日間腹腔内(i.p.)注射した。マウスを安楽死させ、脛骨及び大腿骨を無菌フード内で単離した。鉗子で骨から筋肉を取り外した後、滅菌PBS中で氷上に維持した。骨を、乳鉢及び乳棒を使用して、滅菌PBS中で1度に4つずつ穏やかに破砕した。放出された骨髄細胞と全ての骨の物質をピペットマンを使用して50mL容の円錐管に移し、70μμmの細胞濾過器を通して、大きな粒子を濾別した。次に、細胞を40μμmの細胞濾過器に通し、あらゆる細胞片を更に除去した。チューブを、4℃、1500RPMで10分間遠心分離し、次いでデカントした。ペレットを赤血球溶解緩衝液に再懸濁し、室温で2分間インキュベートした。氷冷PBSを加えて、細胞溶解を希釈し、停止させた。チューブを、4℃、1500RPMで10分間遠心分離し、次いでデカントした。ペレットを2%BSAに再懸濁し、生細胞数を数え、細胞濃度を1×108/mLに調整して細胞を氷上に置いた。EasyStep(商標)Mouse ILC2 Erichment Kitを製造元の説明書に従って使用して、ILC2細胞を濃縮した。
【0186】
ILC2の選別
濃縮した細胞を、以下の抗体カクテルを2μL/106細胞の濃度で使用して(1μL/106細胞を使用したLive/Dead、20μL/10^6細胞を使用した系統カクテルは除く)標識した:Zombie Aqua Live/Dead、系統カクテル、+FCεr1a、+CD49b、CD45、CD90.2、IL7rα、ST2。生存しており、単一の、CD45+系統-CD49b-FCεr1a-CD90.2+IL7rα+ST2+の事象を、ILC2培地内に選別した。
【0187】
ILC2の増殖
選別した細胞を、96ウェルのTCコーティングした丸底プレート内の50単位/mLの組換えIL-2、及び50ng/mLの組換えIL-7を加えた100μLのILC2培地に、1×106/mLの密度で入れた。これらのプレートで細胞を2日間増殖させ、次いで、48ウェルのTCコーティングした平底プレートに移して更に3日間置いた。5日目に、100ng/mLのrIL-33(最終濃度)を添加した。6日目に、細胞を回収し、無菌PBSで2回洗浄し、滅菌生理食塩水中に5×105/mLで再懸濁した。
【0188】
ILC2の受動移入
雌性Rag2-/-γc-/-マウスの尾静脈内に、100μLのILC2細胞懸濁的(0.5×106細胞)又は等量の生理食塩水(対照)を注射した。41日目に、CO2吸入によりマウスを安楽死させた。安楽死させたマウスを、可変速度ポンプ(Fisher Scientific、カタログ#13-876-1)を使用して速度4.5の「高速」で3分間、灌流緩衝液を経心的に直ちに灌流し、全ての血液を除去した。骨髄を上記のように単離した。実施例1に記載されるように、単一の髄膜細胞を単離した。次いで、FACSを用いて細胞を分析した。
【0189】
移入から5週間後、全ての動物は、髄膜(
図2)、肺、及び大腿骨骨髄におけるILC2の生着を示し、生着した細胞は、養子組織に対応する異なるマーカーシグネチャーを有していた。ILC2が髄膜生着したマウスの小膠細胞は、PBS対照に対して活性化マーカーの減少を示した(例えば、
図6A~6I参照)。小膠細胞の密度は、恐らくは活性化の低下の結果として、ILC2を移入したマウスの海馬において減少した。
【0190】
実施例5.IL-10はアラーミン活性化後にILC2によって産生される
末梢組織内のILC2は、アラーミンによって活性化されることが示されている(Vannella et al.,2016,Sci Transl Med.,8(337):337ra65)。IL-33は、これまでに髄膜ILC2を活性化することが示されており(Gadani et al.,J Exp Med.2017;214(2):285-296)、絶対数、Ki-67標識、サイトカイン標識(データ示さず)、及びIL-33処理マウスの静脈洞におけるGata3
+ ILCの高密度集団の全組織標識(
図1E)によって確認された。
【0191】
mILC2の全トランスクリプトームを調べるため、マウス(n=20/群、2つの独立した群)に、PBS、rIL-25又はrIL-33(両方とも0.033mg/kg)を注射した。次に、mILC2を選別し、RNAを抽出し、RNAseq分析を行った。階層的クラスター化によって、処理対PBS群で明らかな差異が示された。純度試験から予想されたように、階層的クラスター化は、標準的ILC2関連因子の存在を反映した(
図1F、1G
i~iii)。しかしながら、驚くべきことに、IL-10はこれらでさえも現れ、>11 log2倍上方制御された(
図1Gii)。髄膜ILC2によるIL-10産生は予想外であった。腸内では「ILC
REG」、肺では「ILC2
10」と称される組織特異性非標準的新規自然サブセットによるIL-10産生が報告されている(Seehus et al.,2017;Wang et al.,2017)。しかしながら、ILC
REGについて記載されるId3依存性とは対照的に、本明細書に記載される結果は、Id2顕性とId3の欠如を示した(
図1Gi)。同様に、ロバストなIl13転写物レベル(
図1F、1G
ii)は、Il13発現を欠くと報告されている肺特異性ILC2
10から分岐している。一般に、髄膜ILC2は、トランスクリプトーム及び表現型マーカーの両方によって、新規系統ではなく、標準的ILC2と同一であると明確にマッピングされる。
【0192】
転写データを確認するために、いくつかの方法を用いてIL-10タンパク質産生を調べた。最初に、髄膜ILC2をIL-33処理マウスから選別し、IL-2及びIL-7を含む培養液中で維持し、次いでIL-33で再刺激した。FACS分析は、これらの細胞がST2を発現しており、IL-5、IL-13、及びIL-10に対しても強い陽性であることを示し(
図1H)、培養物上清のLuminex分析により、IL-10放出が確認された(
図1I)。細胞培養物のアーチファクトの可能性を排除するため、次に、細胞をIL-33処理マウスから急性的に単離し、細胞内標識により、かなりの部分の髄膜ILC2がIL-10陽性として明らかにされた(
図1J)。最後に、IL-10抗体捕捉試薬を使用して、IL-33処理Rag2
-/-マウスの髄膜の急性的ex vivo調製物において二光子タイムラプス顕微鏡法を行った。CD90
+細胞は、生体組織における経時的な抗IL-10抗体の蛍光を蓄積し(
図1K)、放出後の直接IL-10捕捉と一致した。
【0193】
上記実験では、ILC2を、比較のため非髄膜組織からも急性的に単離した。驚くべきことに、頭蓋冠、脛骨、及び肺由来のILC2もまた、IL-10に対する陽性標識を示し(データは示さず)、ILCによるIL-10産生が、これまで示唆されていたように組織特異性ではない可能性があることを示唆している。これらの観察結果に基づいて、IL-10の応答能についてヒトILC2を試験した。これを行うため、CD45
+Lin
-CD11c
-FcεR1
-CD127
+CRTH2
+CD161
+細胞を健康ドナーの血液より選別し、マウスILC2と同じ条件で培養した。その後の上清の分析により、IL-33刺激後のIL-10放出が示され(
図1K及び1L)、ヒトILC2が実際にIL-10産生可能であることを示している。全体的に、これらの結果は、ILC2がIL-33刺激後にIL-10を生成するといういくつかの証拠を提供する。更に、これらのデータは、IL-10産生が、ほとんどのILC2に共通する、これまで認識されていない特性であり得ることを示唆する。
【0194】
実施例6.ILC2由来因子は小膠細胞LPS応答を抑制する
次に、ILC2によるIL-10産生が小膠細胞活性化を抑制するかどうかを判定するために、mILC2及び小膠細胞を一緒に共培養した。最初に、ILC2をIL-33処理マウスから選別し、小膠細胞を未処理マウスから選別した。次いで、小膠細胞を、単独、又はILC2と共に、又はILC2上清と共に培養し、続いてLPS刺激を行った。IL-33に結合させ、IL-33の受容体も発現する小膠細胞に依然として存在する直接効果を遮断するために、可溶性ST2を300ng/mLの濃度で全ての条件に含めた。
【0195】
Luminexにより測定したとき、IL-5、IL-13及びIL-10のタンパク質レベルは、LPS含有/非含有で小膠細胞のみを含むウェルと比較して、ILC2又はILC2上清のいずれかを含有するウェル中でより高かった。IL-10及びIL-13の両方のレベルは、上清単独と比較して、上清及びLPSで処理された小膠細胞において低減され、活性化された小膠細胞によるIL-10及びIL-13の活発な消費と受容体結合を示唆した。この解釈は、小膠細胞が受容体を発現していないIL-5レベルに差が見られなかったという観察によって強固になった。いくつかの他のサイトカイン及びケモカインについても分析し、一部はILC2又はILC2上清によるほぼ完全な抑制(例えばIL-6)、他は部分的抑制(TNF-a)又は抑制なし(CXCL10)を示し、小膠細胞に対する単純な毒性因子ではなく特異性を示唆した。IL-10媒介効果を特異的に決定するために、IL-10(300ng/mL)及びIL10ra(300ng/mL)中和抗体の両方を24時間添加して実験を繰り返した。IL-10の中和により、サイトカイン及びケモカインレベルの上昇が再出現することによって証明されるように、小膠細胞応答の抑制が無効化された。この結果は、ILC2由来IL-10が、観察された小膠細胞抑制に主に関与していたことを強く示唆した。
【0196】
実施例7.ヒトILC2細胞はIL-10を産生する
ヒトILC2細胞が、マウスILC2で見られるようにIL-10を産生し得ることを確認するために、ヒト細胞を用いて同様の実験を行った。ILC2(Lin-IL7ra+CRTH2+CD161+)を6人の別々の正常ヒト血液ドナーから選別し、IL-33刺激の有無でマウスILC2と類似の条件で培養し、Luminexビーズアッセイを用いてサイトカイン含量について上清を分析した。6人のうち5人のドナー由来のILC2は、IL-33刺激後にIL-10(及び陽性対照としてIL-13)のレベルが増加した。これは、ヒトILC2がIL-10産生可能であったことを示唆した。ILC2がIL-10を産生する能力において固有であることを調べるために、更なるサンプルを得たが、今回は、ILC1、2、及び3について選別した。細胞を、ILC1、2、又は3のサブタイプの補強に適切な因子(それぞれ、IL-12+IL-15、IL-33、及びIL-1b+IL-6+IL-23)を含有する培地中でインキュベートした。3つの細胞型全ての上清中のサイトカインレベルを、前述のように測定した。ILC2を含有するウェルは、ILC1又は3のいずれかを含有するウェルよりも有意にIL-10及びIL-13を示した。1人のドナー由来のILC3上清はIL-10を示し、ILC3もIL-10を産生する可能性を示唆している。これらの結果は、ヒトILC、特にILC2がIL-10を産生可能であるという更なる証拠を提供した。
【0197】
実施例8.ILC2分泌因子は小膠細胞炎症を抑制し、IL-10の中和が抑制を無効にする
IL-33処理マウス由来のILC2及び未処理マウス由来の小膠細胞を単離し、小膠細胞炎症因子の抑制に対するILC2の能力を試験した。小膠細胞を、単独で、直接ILC2と共に、又はILC2由来の上清と共に培養した後、TLR7/8アゴニストであるR848(IMQと同様に、細胞培養に十分に適している)を含む培地、又はアゴニストを含まない対照培地に変更した。ILC2上清由来のIL-33によるST2+小膠細胞に対する任意の考えられる直接効果を遮断するため、可溶性ST2を含めた。IL-5、IL-13、及びIL-10は全て、ILC2(拡張データ)又はILC2上清のいずれかを含有するウェルから測定されたが、小膠細胞のみを含有するウェルの上清では検出されず(IL-5、IL-13)、又はわずか(IL-10)であり(
図5A)、小膠細胞がこれらの因子の重要な供給源ではないことを示した。いくつかの他のサイトカイン及びケモカインも、特異性を示唆する不均一な抑制パターンで測定された(
図5B)。ILC2及び上清の両方が同様の効果を示したため、可溶性因子が直接細胞接触より恐らく優先されると結論付けた。炎症促進性サイトカインに加えて、小膠細胞は、細胞外マトリックス成分の酵素的分解によって、マトリックスメタロプロテアーゼ(Mmps)、特に、神経毒性において重要な役割があるMmp9、及びBBB25-27を産生する。次に、Mmpsは、メタロプロテアーゼ(Timp)ファミリーの組織阻害性メンバーによって逆制御される。Timp1メッセージは、RNAseqによると活性化ILC2中で高度に(6.7 Log2倍、調整済みp<0.02)上方制御され、IL-33活性化ILC2由来の上清のタンパク質分析によって確認された(
図5C)。予想されるように、小膠細胞は、R848負荷後、Mmp9の産生が強く増加したことを示し(
図5D)、これは、活性化ILC2由来の上清によって強力に抑制された(
図5E)。
【0198】
ILC2上清によるこれらの因子の抑制におけるIL-10の重要性を調べるために、IL-10及びIL-10rαに対する中和抗体を次にアッセイに含めた。抗体のみで処理されたウェルでIL-10シグナルがほぼ完全に消失したことから、抗体による遮断が有効であったことが示された(
図5F)。したがって、サイトカイン及びケモカイン(
図5G)レベルの上昇が再出現することによって証明されるように、IL-10の中和により抑制が無効化された。IL2、小膠細胞、及びMmp9の調節間の関係は、予想どおりに、IL-10及びTimp1に関してやや複雑であった。Mmp9の産生はIL-10によって直接的に負に調節されるが、自身がIL-1031によって誘導され得るTimp1によっても調節されることが示された。Timp1はまた、オートクリン並びにパラクリン様式で作用することも示された。したがって、IL-10とTimp1との組み合わせは、Timp1の非存在下でIL-10に対する優れたMmp9抑制を示すと予想される。この裏付けとして、rmIL-10は実際にMmp9を抑制したが、完全であったILC2上清よりも非確定低い程度であった(
図5H)。この可能性の更なる試験では、Il10-/-マウス由来のILC2と野生型マウス由来のILC2の上清の、非刺激及びR848刺激小膠細胞に対する影響を、総Timp1タンパク質分泌の点で比較し、IL-10の存在により、いずれかの条件においてTimp1レベルを増加させることが見出された(
図5I)。IL-10とTimp1との間の相乗効果は、Mmp9/Timp1比によって示唆され、IL-10及びIL-10raの遮断は、ILC2上清によって媒介される抑制を強く取り消すのに十分である(
図5J)。
【0199】
全体として、これらのデータは、髄膜ILC2が、炎症性サイトカイン及びケモカイン産生のみならずMmp9などのMmpsによるBBBの分解も抑制するように、複数の方法で機能する可能性が高いことを示唆している。IL-10は、Mmp9の抑制因子として直接的に、またTimp1を介して間接的に、二重の役割を果たすことが更に示唆されている。活性化髄膜ILC2で上方制御される、RNAseqデータによって強調される他の因子、例えば、アンフィレギュリン、アルギナーゼもまた、BBB保護及び神経炎症の抑制において役割を果たし、更なる調査を受けることができる。
【0200】
受動移入されたILC2は髄膜内に生着し、神経炎症のIL-10依存性抑制を示す
ILC2単独で小膠細胞の表現型に影響を与え、in vivoで神経炎症を抑制し得るかどうか調べるため、また、Rag2
-/-とRag2
-/-γc
-/-マウスとの間で観察された違いが、発生上の差異か、又は小膠細胞のIL-2受容体共通のγ鎖の欠損かのいずれかによるものである可能性を排除するため、成体Rag2
-/-γc
-/-マウスへのILC2のi.v.養子移入を行った。CD45+Lin-CD90+ST2+GATA3+細胞のロバストな髄膜生着が確認され(
図6A)、生着した髄膜ILC2の機能性を、ILC2を移入したRag2
-/-γc
-/-マウス由来の培養髄膜の上清が、IL-5の検出について陽性であり、対照ではなかったことから確立した(
図6B)。急性的に単離された脳のその後の検査では、側方散乱は有意に減少し(
図6C~D)、小膠細胞活性化マーカーの発現は、PBS処理したILC欠損対照と比較して著しく減弱した(
図6D)。これらのデータから、ILC2単独では、ベースラインの小膠細胞の表現型を調節するのに十分であることが示唆されたため、特に考えられるILC2ベースの治療用途への効果を考慮して、生着したILC2が神経炎症を抑制できるかどうかを試験することが求められた。
【0201】
これを調べるために、IMQ負荷前のILC2の養子移入も実施した。全脳サンプルを骨髄細胞について選別した場合、小膠細胞(CD11b+CD45Mid)の数は、群間で違いがなかった(データは示さず)が、ILC2が生着したマウスの脳は、ILC欠損対照の脳よりも有意に少ない単球を含有し(CD11b+CD45HiLy6cHi)、ILC2を補充することで、浸潤を鈍らせるのに十分であったことを示唆した(
図6E)。また、マウスあたり同等数の小膠細胞についても脳から選別し、培養液中に入れ、分泌因子について上清を分析したところ、ILC2が生着したマウスの脳由来の小膠細胞が、主にケモカインレベルの観点で抑制されたプロファイルを示したことが明らかになった(
図6F)。
【0202】
更に、IL-10の遮断が細胞浸潤及び小膠細胞炎症を阻害するILC2移入の能力に影響を及ぼすかどうかを判定するために、上記実験を繰り返したが、今回はIMQ処理の2日目及び3日目に、IL-10に対する中和抗体を注入した。in vitro実験と同様に、IL-10の遮断は、炎症促進因子の小膠細胞からの放出に対するILC2移入の抑制効果を無効にした(
図8)。最後に、マウスを野生型又はIl-10
-/- ILC2のいずれかと共に養子移入して、細胞特異的なILC2由来IL-10の重要性を調べた。ここでも、in vitroの結果によって示唆されるように、野生型では、ただしIl10
-/- ILC2ではなく、移入により、エバンスブルー染色(
図6G)及び単球による実質浸潤(
図6H)の両方が遮断された。これらの観察と同様に、小膠細胞の上清は、野生型ILC2を移入されたマウスの免疫因子の抑制を示したが、Il10
-/- ILC2を移入されたマウスから単離された小膠細胞は、抑制の証拠をほとんど示さず(
図6I)、ILC2由来IL-10の重要性を示唆した。
【0203】
要するに、これらの結果は、ILC2分泌因子が、繊細なCNS組織を保護する関門の強化、及び関連する小膠細胞炎症の抑制における恐らくいくつかの機構的役割のうちの1つを果たすことができることを示唆した。実際、このような活性は、IL-10もまた顕著な役割を果たす、腸などの末梢粘膜組織で示されるILC媒介関門調節と一致した。
【0204】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0205】
〔実施の態様〕
(1) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、治療有効量の活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)を前記対象に投与することを含む、方法。
(2) 前記活性化ILC2が、前記ILC2をIL-33、IL-25、IL-2、及びIL-7、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインと接触させることによって活性化される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記ILC2が遺伝子改変されており、好ましくは、前記ILC2が、それ以外は同一の非改変細胞と比較して、IL-10産生の増加のために遺伝子改変されている、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記治療有効量の活性化ILC2が、前記対象に静脈内又は髄腔内投与される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記ILC2が髄膜のILC2である、実施態様1に記載の方法。
【0206】
(6) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、治療有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤を前記対象に投与することを含む、方法。
(7) 前記薬剤が、前記対象において髄膜のILC2の数を増加させる、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記薬剤が、IL-33、IL-25、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、又はこれらの組み合わせである、実施態様6又は7に記載の方法。
(9) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤を前記対象に投与することを含む、方法。
(10) 前記薬剤が、前記対象において活性化された髄膜のILC2によるIL-10の産生を増加させる、実施態様9に記載の方法。
【0207】
(11) 前記薬剤が、IL-33、IL-25、IL-2、IL-4、又はこれらの組み合わせである、実施態様9又は10に記載の方法。
(12) 前記対象が、小膠細胞活性化又はBBBの透過性増加に関連する障害の治療を必要としている、実施態様1~11のいずれかに記載の方法。
(13) 前記対象が、神経変性疾患、炎症性障害、神経心理学的障害、慢性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、視神経炎、又はウイルス若しくは細菌感染の治療を必要としている、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記対象が、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、多発性硬化症、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、老化、髄膜炎、及び脳卒中からなる群から選択される神経変性疾患の治療を必要としている、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記対象が、うつ病、不安、双極性うつ病、及び統合失調症からなる群から選択される神経心理学的障害の治療を必要としている、実施態様13に記載の方法。
【0208】
(16) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための方法であって、有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるTimp1の産生を増加可能な薬剤を前記対象に投与することを含む、方法。
(17) 血液脳関門(BBB)の透過性低減を必要とする対象における血液脳関門(BBB)の透過性低減のための方法であって、治療有効量の、活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤、又は、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10若しくはTimp1の産生を増加可能な薬剤を前記対象に投与することを含む、方法。
(18) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の単離された活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)又は遺伝子改変された活性化ILC2と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
(19) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)の数を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
(20) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるIL-10の産生を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0209】
(21) 小膠細胞活性化の低減を必要とする対象における小膠細胞活性化の低減のための医薬組成物であって、治療有効量の、前記対象において活性化II型自然リンパ系細胞(ILC2)によるTimp1の産生を増加可能な薬剤と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。