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特開2025-26682混合原料の製造方法、溶融ガラスの製造方法、及びガラス物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025026682
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】混合原料の製造方法、溶融ガラスの製造方法、及びガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 3/02 20060101AFI20250214BHJP
   C03C 1/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C03B3/02
C03C1/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024216557
(22)【出願日】2024-12-11
(62)【分割の表示】P 2021553460の分割
【原出願日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019193025
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】前原 輝敬
(57)【要約】
【課題】溶融ガラスの製造工程において、炭酸ガスの発生量を低減できる、技術を提供する。
【解決手段】ガラス原料と水酸化ナトリウムの水溶液を準備し、前記水溶液に炭酸ガスを吸収させ、炭酸水素ナトリウムを得て、前記炭酸水素ナトリウムと前記ガラス原料を混合し、溶解炉に投入する予定の混合原料を得る、混合原料の製造方法であって、更に、予定する前記溶解炉への前記混合原料の投入前に、前記混合原料を加熱し、前記炭酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウムに変え、前記炭酸ガスを得る、混合原料の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料と水酸化ナトリウムの水溶液を準備し、
前記水溶液に炭酸ガスを吸収させ、前記水溶液中に炭酸水素ナトリウムを析出させ、
前記炭酸水素ナトリウムと前記ガラス原料を混合し、溶解炉に投入する予定の混合原料を得る、
混合原料の製造方法であって、
更に、予定する前記溶解炉への前記混合原料の投入前に、前記混合原料を加熱し、前記炭酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウムに変え、前記炭酸ガスを得る、
混合原料の製造方法。
【請求項2】
前記混合原料の加熱は、前記溶解炉の排気ガスの熱を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合原料の加熱は、100℃~900℃で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記溶解炉の排気ガスから、前記炭酸ガスを得る、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
更に、予定する前記溶解炉への前記混合原料の投入前に、前記混合原料を造粒し、ブリケットを得て、前記ブリケットを前記混合原料とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法で得た前記混合原料を、前記溶解炉に投入し、前記溶解炉の内部で溶融し、溶融ガラスを得る、溶融ガラスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法で得た前記混合原料を、常温に戻すことなく前記溶解炉に投入し、前記溶解炉の内部で溶融し、溶融ガラスを得る、溶融ガラスの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法で得た溶融ガラスを成形し、徐冷し、ガラス物品を得る、ガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合原料の製造方法、溶融ガラスの製造方法、及びガラス物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融ガラスの製造工程において、炭酸ガスが発生する。炭酸ガスは、温室効果ガスであり、地球温暖化の一因と考えられている。それゆえ、炭酸ガスの発生量の低減が求められている。
【0003】
溶融ガラスの製造工程における炭酸ガスの発生源は、主に、天然ガス等の燃料と、ガラス原料である炭酸塩とに大別される。燃料の燃焼によって炭酸ガスが発生する。また、炭酸塩の熱分解によって炭酸ガスが発生する。
【0004】
炭酸塩は、大気中常温で安定であり、且つ安価であるので、ガラス原料として広く利用されている。例えば、ガラスのナトリウム源として、一般的に、炭酸ナトリウム(NaCO)が利用されている。
【0005】
特許文献1及び2では、ガラスのナトリウム源として、水酸化ナトリウム(NaOH)が利用される。NaOHは、炭素を含まないので、炭酸ガスの発生源とはならない。NaOHは、通常、水溶液の形態で流通している。
【0006】
しかし、NaOHは、蒸気圧が高く、溶解炉の煉瓦に対する侵食性が高い(例えば、非特許文献1参照)。それゆえ、ガラスのナトリウム源として、一般的には、上記の通り、NaCOが利用されている。
【0007】
ところで、ナトリウム化合物として、NaCO及びNaOHの他に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)が存在する。NaHCOは、例えば、血液透析等に用いられている。
【0008】
特許文献3及び4には、NaHCOの製造方法が記載されている。具体的には、ナトリウムイオンを含む水溶液と炭酸ガスとを反応させ、NaHCOを析出させる方法が記載されている。
【0009】
NaHCOは、NaCOに比べて、Na原子に対するC原子のモル比が2倍であるので、熱分解による炭酸ガスの発生量が2倍である。それゆえ、NaHCOは、従来、ガラスのナトリウム源として、利用されていなかった。
【0010】
非特許文献2には、CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)に関する技術が開示されている。この技術は、炭酸ガスを炭酸カリウム(KCO)の水溶液に吸収させ、炭酸水素カリウム(KHCO)を生成し、KHCOを加熱し、炭酸ガスを取り出す。
【0011】
非特許文献2に記載の技術は、炭酸ガスを炭酸ガス以外のガスから分離する方法であって、炭酸ガスの発生量を低減する方法では無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許4211568号明細書
【特許文献2】日本国特開昭49-31717号公報
【特許文献3】国際公開第2006/021993号
【特許文献4】日本国特許4724996号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】R. G. C. Beerkens and O. S. "Verheijen, Reactions of alkali vapours with silica based refractory in glass furnaces, thermodynamics and mass transfer" Physics and Chemistry of Glasses, Volume 46, Number 6, December 2005, pp-583-594
【非特許文献2】C. Andeson et al., Developments in the CO2CRC UNO MK 3 Process: A Multi-component Solvent Process for Large Scale CO2 Capture, Energy Procedia, 37, 2013, 225-232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示の一態様は、溶融ガラスの製造工程において、炭酸ガスの発生量を低減できる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ガラス原料と水酸化ナトリウムの水溶液を準備し、前記水溶液に炭酸ガスを吸収させ、前記水溶液中に炭酸水素ナトリウムを析出させ、前記炭酸水素ナトリウムと前記ガラス原料を混合し、溶解炉に投入する予定の混合原料を得る、混合原料の製造方法である。
【0016】
本発明の一態様の製造方法は、更に、予定する前記溶解炉への前記混合原料の投入前に、前記混合原料を加熱し、前記炭酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウムに変え、前記炭酸ガスを得てもよい。
【0017】
本発明の一態様の製造方法は、前記混合原料の加熱は、前記溶解炉の排気ガスの熱を利用してもよい。
【0018】
本発明の一態様の製造方法は、前記混合原料の加熱は、好ましくは、100℃~900℃で行われる。
【0019】
本発明の一態様の製造方法は、更に、前記溶解炉の排気ガスから、前記炭酸ガスを得てもよい。
【0020】
本発明の一態様の製造方法は、更に、予定する前記溶解炉への前記混合原料の投入前に、前記混合原料を造粒し、ブリケットを得て、前記ブリケットを前記混合原料としてもよい。
【0021】
本発明は、前記製造方法で得た前記混合原料を、前記溶解炉に投入し、前記溶解炉の内部で溶融し、溶融ガラスを得る、溶融ガラスの製造方法である。
【0022】
本発明の一態様の製造方法は、前記製造方法で得た前記混合原料を、常温に戻すことなく前記溶解炉に投入し、前記溶解炉の内部で溶融し、溶融ガラスを得ることが好ましい。
【0023】
本発明は、前記製造方法で得た溶融ガラスを成形し、徐冷し、ガラス物品を得る、ガラス物品の製造方法である。
【0024】
本発明は、ガラス原料を収容する原料槽と、水酸化ナトリウムの水溶液を貯留する水溶液槽と、前記水溶液槽から移動した前記水溶液に炭酸ガスを吸収させ、炭酸水素ナトリウムを析出させる吸収槽と、前記原料槽から移動した前記ガラス原料と前記吸収槽から移動した前記炭酸水素ナトリウムとを混合し、混合原料を得るミキサーと、前記ミキサーから移動した前記混合原料を貯蔵する貯蔵槽と、前記貯蔵槽から移動した前記混合原料を溶融し、溶融ガラスを得る溶解炉と、を含む、溶融ガラスの製造装置である。
【0025】
本発明の一態様の製造装置は、前記吸収槽は、前記水溶液に炭酸ガスを吸収させ、炭酸ナトリウムを得る第1槽と、前記第1槽から移動した前記水溶液に炭酸ガスを更に吸収させ、前記水溶液中に前記炭酸水素ナトリウムを得る第2槽と、前記第2槽で余った炭酸ガスを前記第1槽に移動する第1ガス管とを含んでもよい。
【0026】
本発明の一態様の製造装置は、更に、前記貯蔵槽に熱を供給し、前記貯蔵槽の内部にて前記炭酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウムに変え、前記吸収槽で吸収される炭酸ガスを得る、熱供給機を含んでもよい。
【0027】
本発明の一態様の製造装置は、前記熱供給機は、前記溶解炉で燃焼した排気ガスを、前記排気ガスの熱と共に前記溶解炉から前記貯蔵槽へ移動する熱供給管を含んでもよい。
【0028】
本発明の一態様の製造装置は、前記熱供給機は、前記溶解炉とは別に熱風を発生し、前記貯蔵槽の内部に送風する熱風発生機を含んでもよい。
【0029】
本発明の一態様の製造装置は、更に、前記貯蔵槽の炭酸ガスを、前記貯蔵槽から前記吸収槽に移動する第1ガス管を有してもよい。
【0030】
本発明の一態様の製造装置は、更に、前記溶解炉の炭酸ガスを、前記溶解炉から前記吸収槽に移動する第2ガス管を有してもよい。
【0031】
本発明の一態様の製造装置は、更に、前記貯蔵槽と前記ミキサーの間に、前記混合原料を造粒し、ブリケットを得る成型機を有してもよい。
【0032】
本発明は、前記溶融ガラスの製造装置と、前記溶解炉で得られた前記溶融ガラスを成形する成形装置と、前記成形されたガラスを徐冷する徐冷装置と、前記徐冷されたガラスをガラス物品に加工する加工装置と、を有する、ガラス物品の製造装置である。
【発明の効果】
【0033】
本開示の一態様によれば、溶融ガラスの製造工程において、炭酸ガスの発生量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、一実施形態に係るガラス物品の製造装置を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係るガラス物品の製造方法を示すフローチャートである。
図3図3は、一実施形態に係る溶融ガラスの製造装置を示す図である。
図4図4は、図3の溶解炉の一例を示す立面断面図である。
図5A図5Aは、図3の熱供給管が無い場合の、図4の溶解炉の熱収支の一例を示す図である。
図5B図5Bは、図3の熱供給管が有る場合の、図4の溶解炉の熱収支の一例を示す図である。
図6図6は、混合原料の脱炭酸率と温度との関係の一例を示す図である。
図7図7は、第1変形例に係る溶解炉の熱収支を示す図である。
図8図8は、第2変形例に係る溶融ガラスの製造装置を示す図である。
図9図9は、第3変形例に係る溶融ガラスの製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0036】
(ガラス物品の製造装置)
図1に示すように、ガラス物品の製造装置1は、溶融ガラスの製造装置2と、成形装置3と、徐冷装置4と、加工装置5とを有する。
【0037】
溶融ガラスの製造装置2は、混合原料を溶解し、溶融ガラスを製造する。混合原料は複数種類のガラス原料を含む。ガラス原料は、ガラスの組成に応じて決定される。
【0038】
ガラスがソーダライムガラスである場合、ガラスの組成は、酸化物基準のモル%で、SiOの含有量が50%以上75%以下、Alの含有量が0%以上20%以下、LiOとNaOとKOとの合計の含有量が5%以上25%以下、MgOとCaOとSrOとBaOとの合計の含有量が0%以上20%以下である。
【0039】
ガラスがソーダライムガラスである場合、混合原料は例えば珪砂、ドロマイト(MgCOCaCO)、石灰石(CaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、ホウ酸及び清澄剤等を含む。清澄剤は、三酸化硫黄、塩化物又はフッ化物等である。混合原料の詳細は、後述する。
【0040】
溶融ガラスの製造装置2は、混合原料を溶解炉に投入し、溶解炉の内部にて混合原料を溶解し、溶融ガラスを得る。混合原料は、溶解炉に投入する前に造粒されてもよいし、造粒されなくてもよい。
【0041】
製造装置2は、混合原料とガラスカレットとを溶解炉に投入してもよい。ガラスカレットは、溶解炉に投入する前に混合原料に混ぜられてもよいし、混合原料とは別に溶解炉に投入されてもよい。製造装置2の詳細は後述する。
【0042】
成形装置3は、製造装置2で得られた溶融ガラスを所望の形状のガラスに成形する。例えば、板状のガラスを得る成形方法として、フロート法、フュージョン法、又はロールアウト法等が用いられる。
【0043】
徐冷装置4は、成形装置3で成形したガラスを徐冷する。徐冷装置4は、例えば、徐冷炉と、徐冷炉の内部においてガラスを所望の方向に搬送する搬送ローラとを有する。搬送ローラは、例えば水平方向に間隔をおいて複数配列される。ガラスは、徐冷炉の入口から出口まで搬送される間に、徐冷される。ガラスを徐冷すれば、残留歪みの少ないガラスが得られる。
【0044】
加工装置5は、徐冷装置4で徐冷したガラスをガラス物品に加工する。加工装置5は、例えば切断装置、研削装置、研磨装置、及びコーティング装置から選ばれる1つ以上であってよい。切断装置は、徐冷装置4で徐冷したガラスから、ガラス物品を切り出す。切断装置は、例えば、徐冷装置4で徐冷したガラスにスクライブ線を形成し、スクライブ線に沿ってガラスを割断する。
【0045】
なお、ガラス物品の製造装置1は、清澄装置をさらに有してもよい。清澄装置は、溶融ガラスの製造装置2で得られた溶融ガラスを成形装置3で成形する前に、溶融ガラス中に含まれる気泡を除去する。
【0046】
(ガラス物品の製造方法)
図2に示すように、ガラス物品の製造方法は、溶融ガラスの製造(S1)と、成形(S2)と、徐冷(S3)と、加工(S4)とを含む。溶融ガラスの製造装置2が溶融ガラスの製造(S1)を実施し、成形装置3が成形(S2)を実施し、徐冷装置4が徐冷(S3)を実施し、加工装置5が加工(S4)を実施する。なお、ガラス物品の製造方法は、清澄をさらに含んでもよい。清澄は、溶融ガラスの製造(S1)の後、成形(S2)の前に実施される。
【0047】
(溶融ガラスの製造装置)
図3に示すように、溶融ガラスの製造装置2は、原料槽61と、水溶液槽62と、吸収槽63と、脱水槽64と、秤量機65と、ミキサー66と、成型機67と、貯蔵槽68と、投入機69と、溶解炉70とを有する。
【0048】
原料槽61は、水溶液槽62で貯留する水溶液以外のガラス原料を収容する。原料槽61は、粉末状のガラス原料を収容する。原料槽61は、例えば、ケイ素源、アルカリ土類金属源等を収容する。
【0049】
粉末状のケイ素源として、シリカ、又は長石が準備される。シリカは、ケイ砂、石英、クリストバライト、及び非晶質シリカのいずれでもよい。2種類以上のケイ素源が準備されてもよい。
【0050】
粉末状のアルカリ土類金属源として、本実施形態では炭酸塩が準備される。アルカリ土類金属とは、Mg、Ca、Ba、及びSrを指す。その炭酸塩として、原料費の安価な、石灰石(CaCO)又はドロマイト(MgCO・CaCO)が好ましい。2種類以上の炭酸塩が準備されてもよい。
【0051】
なお、粉末状のアルカリ土類金属源として、本実施形態では炭酸塩が準備されるが、酸化物又は水酸化物が準備されてもよい。酸化物又は水酸化物を準備すれば、加熱時に炭酸ガスが発生しない。酸化物は、炭酸塩の加熱によって得られるので、高価な反面、炭素を含まないので、炭酸ガスの発生量を抑制できる。水酸化物も、酸化物と同様である。
【0052】
原料槽61は、ケイ素源、及びアルカリ土類金属源の他に、アルミニウム源を更に収容してもよい。アルミニウム源として、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミウム、又は長石等が準備される。2種以上のアルミニウム源が準備されてもよい。
【0053】
また、原料槽61は、ケイ素源、及びアルカリ土類金属源の他に、ホウ酸等のホウ素源、酸化ジルコニア等のジルコニウム源、又は清澄剤等を更に収容してもよい。
【0054】
粉末状のガラス原料は、所望の組成のガラスが得られるように、複数種類準備される。複数種類のガラス原料は、複数の原料槽61に別々に収容されてもよいし、1つの原料槽61にまとめて収容されてもよい。
【0055】
水溶液槽62は、水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液を貯留する。NaOH水溶液として、通常、NaOH濃度48質量%のものが流通している。NaOH濃度48質量%の水溶液は、凝固点が10℃、沸点が138℃である。
【0056】
ナトリウム源であるNaOHは、炭素を含まないので、炭酸ガスの発生源とはならない。但し、NaOHは、蒸気圧が高く、溶解炉70の煉瓦に対する侵食性が高い。そこで、溶解炉70への投入前に、吸収槽63にてNaOHをNaHCOに変化させる。
【0057】
吸収槽63は、水溶液槽62から移動した水溶液に炭酸ガスを吸収させ、NaHCOを析出させ、NaHCOを含むスラリーを得る。吸収槽63の水溶液が沸騰しないように、水溶液の沸点よりも低温の炭酸ガスが吸収槽63に供給される。
【0058】
先ず、炭酸ガスが水溶液に吸収されると、NaOHとCOとが反応し、下記式(1)の反応が生じ、NaCOが生じる。
2NaOH+CO→NaCO+HO・・・(1)
NaCOの溶解度は高いので、NaCOは水に溶解し、ほとんど析出しない。水溶液の溶質は、NaOHのみからNaOHとNaCOの両方に変化する。
【0059】
続いて、更に炭酸ガスが水溶液に吸収されると、NaCOとCOと水とが反応し、下記式(2)の反応が生じ、NaHCOが生じる。
NaCO+CO+HO→2NaHCO・・・(2)
NaHCOの溶解度はNaCOの溶解度よりも低いので、NaHCOが選択的に析出する。
【0060】
NaHCOは、加熱されると、NaCOとCOとHOとに分解するので、従来のナトリウム源であるNaCOと同程度に、溶解炉70の煉瓦に対する侵食性が低い。
【0061】
NaHCOが加熱されると、下記式(3)の反応が生じ、NaCOとCOとHOとが生じる。
2NaHCO→NaCO+CO+HO・・・(3)
上記式(3)の反応は、上記式(2)の反応とは逆の反応である。
【0062】
更に、NaCOがガラス原料と共に加熱されると、例えば、下記式(4)の反応が生じ、アルカリケイ酸塩とCOとが生じる。
NaCO+SiO→NaO・SiO+CO・・・(4)。
【0063】
上記式(3)及び(4)に示すように、NaHCOからアルカリケイ酸塩を得る過程では、炭酸ガスが発生する。但し、発生する炭酸ガスと、吸収槽63にて水溶液に吸収される炭酸ガスとの量は等しい。従って、溶融ガラスの製造工程全体では、ナトリウム源に由来する炭酸ガスの発生量はゼロである。
【0064】
上記の通り、本実施形態によれば、ナトリウム源としてNaOHを利用するので、溶融ガラスの製造工程において、炭酸ガスの発生量を低減できる。NaOHは、炭素を含まないので、炭酸ガスの発生源とはならない。
【0065】
例えば、ガラスのNaO含有率が14質量%、混合原料とガラスカレットの比率が3:1である場合、ナトリウム源としてNaCOの代わりにNaOHを使用すれば、ガラス1トン当たり、炭酸ガスの発生量が0.075トン程度減少すると見積もられる。
【0066】
また、本実施形態によれば、溶解炉70への投入前に、吸収槽63にてNaOHをNaHCOに変化させるので、溶解炉70の煉瓦の侵食を抑制できる。従って、溶解炉70のメンテナンスの頻度を低減できる。
【0067】
なお、本実施形態ではナトリウム源の全てがNaOH水溶液であるが、ナトリウム源の一部が粉末状の炭酸ナトリウム(NaCO)であってもよい。粉末状のNaCOは、原料槽61に収容される。ナトリウム源の少なくとも一部がNaOH水溶液である限り、ナトリウム源に由来する炭酸ガスの発生量を低減できる。
【0068】
吸収槽63は、図3に示すように、例えば、第1槽631と、第2槽632と、内部配管633とを含む。第1槽631は、NaOH水溶液に炭酸ガスを吸収させ、NaCOを得る。第1槽631では、NaOHとNaCOの混合水溶液が得られる。
【0069】
第2槽632は、第1槽631から移動したNaOHとNaCOの混合水溶液に炭酸ガスを更に吸収させ、NaHCOを析出する。第2槽632では、NaHCOを含むスラリーが得られる。スラリーは、水に溶けた成分として、NaCOとNaHCOを含む。
【0070】
第1槽631では主に式(1)の反応が生じ、第2槽632では主に式(2)の反応が生じる。式(2)の反応は、式(1)の反応後に生じるので、式(1)の反応よりも高い炭酸ガス濃度を要する。
【0071】
そこで、内部配管633は、第2槽632で余った炭酸ガスを第1槽631に移動する。第1槽631に供給するガスの炭酸ガス濃度は、第2槽632に供給するガスの炭酸ガス濃度よりも低い。言い換えると、第2槽632に供給するガスの炭酸ガス濃度は、第1槽631に供給するガスの炭酸ガス濃度よりも高い。本実施形態によれば、第1槽631と第2槽632とに、それぞれの要求に応じた炭酸ガス濃度のガスを供給するので、溶融ガラスの製造装置2の内部で炭酸ガスを効率良く使用できる。
【0072】
なお、第2槽632に供給するガスの炭酸ガス濃度は、本実施形態では第1槽631に供給するガスの炭酸ガス濃度よりも高いが、同じでもよいし、低くてもよい。第1槽631で主に式(1)の反応が生じ、第2槽632で主に式(2)の反応が生じればよい。
【0073】
また、第1槽631では、主に式(1)の反応が生じる限り、式(2)の反応も生じてもよい。また、吸収槽63は、本実施形態では第1槽631と第2槽632とを含むが、第1槽631と第2槽632の両方を兼ねる1つの槽を含んでもよい。第2槽632では析出が起こるので、どちらかというと低温の方がよい。
【0074】
脱水槽64は、吸収槽63から移動したスラリーを脱水する。スラリーは、析出した粉末状のNaHCOと、NaHCOの分散媒である液体とを含む。その液体には、析出していないNaCOと、NaHCOとを含む。
【0075】
脱水槽64は、スラリーから液体を分離する。分離方法は、例えば、遠心分離法、又は、ろ過分離法等である。スラリーから分離された液体は、析出していないNaCOとNaHCOとを含むので、ナトリウム回収管71を介して吸収槽63に戻される。液体を廃棄する場合に比べて、ナトリウム源であるNaOH水溶液の使用量を低減できる。
【0076】
ナトリウム回収管71は、脱水槽64でスラリーから分離された液体を、第1槽631に戻してもよいが、本実施形態では第2槽632に戻す。スラリーから分離された液体には、NaHCOが飽和している。NaHCO濃度の高い液体が第2槽632に戻されるので、第2槽632にて式(2)の反応が効率的に進む。
【0077】
脱水槽64には、析出したNaHCOと、僅かな液体とを含む泥状物が残る。泥状物に占めるNaHCOの割合は例えば85質量%~95質量%であり、泥状物に占める液体の割合は例えば5質量%~15質量%である。
【0078】
脱水槽64で得られる泥状物は、泥状物から液体を取り除く乾燥機を経て、秤量機65に移動してもよいが、本実施形態では乾燥機を経ずに秤量機65に移動する。析出したNaHCOは、液体と混じった状態で秤量機65に送られる。
【0079】
秤量機65は、原料槽61から移動したガラス原料と、脱水槽64から移動したNaHCOとを、予め定められた配合比で秤量する。配合比は、所望の組成のガラスが得られるように予め決定される。
【0080】
秤量機65が泥状物を秤量する場合、配合比は、泥状物に占める液体の含有率をも考慮して、決定される。更に、配合比は、液体に占めるNaの含有率をも考慮して決定されてもよい。
【0081】
脱水槽64と秤量機65との間に、泥状物を貯留する貯留槽があってもよい。
【0082】
ミキサー66は、秤量機65を介して原料槽61から移動したガラス原料と、秤量機65を介して吸収槽63から移動したNaHCOとを混合し、混合原料を得る。混合の際に、粉塵の飛散を防止すべく、水等が添加される。
【0083】
本実施形態によれば、脱水槽64で得られる泥状物は、乾燥機を経ずにミキサー66に移動する。それゆえ、泥状物の液体で、粉塵の飛散を防止できる。従って、脱水槽64にて新たに水等を散布せずに済むか、その散布量を低減できる。
【0084】
成型機67は、ミキサー66で得られた混合原料を造粒し、ブリケットを得る。ブリケットは、粉末状の混合原料を圧縮成型したものである。混合原料には、成型助剤が添加されてもよい。ブリケットの形状は、球体、円筒体、直方体、楕円体、又はアーモンド型等である。成型機67としては、公知のものが用いられ、例えば、打錠機、又はロール型圧縮造粒機等が用いられる。
【0085】
貯蔵槽68は、成型機67を介してミキサー66から移動した混合原料を貯蔵する。つまり、貯蔵槽68は、ブリケットを貯蔵する。なお、貯蔵槽68は、成型機67を介さずにミキサー66から移動した混合原料を貯蔵してもよい。つまり、貯蔵槽68は、粉末状の混合原料を貯蔵してもよい。
【0086】
投入機69は、貯蔵槽68から移動した混合原料を、溶解炉70に投入する。投入機69としては、公知のものが用いられる。
【0087】
溶解炉70は、貯蔵槽68から移動した混合原料を溶融し、溶融ガラスを得る。溶解炉70は、特に限定されないが、例えば、図4に示すように、燃焼炉701と、第1バーナー702と、第2バーナー703と、第1蓄熱室704と、第2蓄熱室705とを含む。
【0088】
燃焼炉701は、溶融ガラスMを収容する溶解槽706を含む。混合原料は、溶融ガラスMの液面に対して上方から投入される。
【0089】
第1バーナー702と第2バーナー703とは、燃焼炉701を挟んで配置され、燃焼炉701の内部に交互に火炎Fを形成する。火炎Fは、溶融ガラスMの液面の上方に形成される。火炎Fの輻射熱で、混合原料及び溶融ガラスMが加熱される。
【0090】
第1バーナー702は、燃料とガスとを混合し、燃焼し、火炎Fを形成する。燃料は、重油でもよいが、本実施形態では天然ガスである。ガスは、酸素ガスでもよいが、本実施形態では空気である。本明細書において、酸素ガスとは、酸素濃度が90体積%以上のガスを意味する。第2バーナー703も、第1バーナー702と同様に火炎Fを形成する。
【0091】
第1蓄熱室704と第2蓄熱室705とは、燃焼炉701を挟んで配置され、燃焼炉701の排気ガスの熱を回収し、蓄える。蓄えた熱は、空気等の燃焼用ガスの加熱に利用される。第1蓄熱室704は第2バーナー703に対向配置され、第2蓄熱室705は第1バーナー702に対向配置される。
【0092】
例えば、図4に示すように第1バーナー702が火炎Fを形成する際には、第1蓄熱室704が予め蓄えた熱を放出し、空気等の燃焼用ガスを加熱する。また、この際には、第2蓄熱室705が燃焼炉701の排気ガスの熱を回収し、蓄える。
【0093】
同様に、第2バーナー703が火炎Fを形成する際には、第2蓄熱室705が予め蓄えた熱を放出し、空気等の燃焼用ガスを加熱する。また、この際には、第1蓄熱室704が燃焼炉701の排気ガスの熱を回収し、蓄える。
【0094】
図5Aに、図3の熱供給管721が無い場合の、図4の溶解炉70の熱収支の一例を示す。図5Aの符号A、B、C、D、α及びβの意味は、下記の通りである。Aは、燃料の燃焼によって発生する熱量である。Bは、排気ガスが燃焼炉701から第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705に持ち出す熱量である。Cは、空気等の燃焼用ガスが、燃料に混合される前に、第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705にて加熱される熱量である。Dは、排気ガスが第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705から、製造装置2の外部に持ち出す熱量である。αは、混合原料が溶融する過程で消費される熱量と、溶融ガラスMが溶解炉70から成形装置3に持ち出す熱量との和である。α/Aが大きいほど、加熱効率が良い。βは、溶解炉70の炉壁等を通過し、溶解炉70から逃げる熱量である。AとCの和は、αとβとBの和に等しい。また、Bは、CとDの和に等しい。A、B、C、D、α及びβは、ガラス1トン当たりの熱量である。
【0095】
図5Bに、図3の熱供給管721が有る場合の、図4の溶解炉70の熱収支の一例を示す。図3の熱供給管721は、熱供給機72の一例である。熱供給機72は、貯蔵槽68の内部に熱を供給する。熱供給管721は、溶解炉70で燃焼した排気ガスを、排気ガスの熱と共に溶解炉70から貯蔵槽68へ移動する。例えば、熱供給管721は、第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705から排出される排気ガスを、排気ガスの熱と共に溶解炉70から貯蔵槽68へ移動する。混合原料は、貯蔵槽68にて加熱された後、常温に戻されることなく、溶解炉70に投入される。排気ガスの余熱を有効利用できる。
【0096】
図5Bの符号A、B、C、D、α及びβの意味は、図5Aの符号A、B、C、D、α及びβの意味と同じである。図5Bにおいて、Eは、貯蔵槽68にて加熱された混合原料が、貯蔵槽68から溶解炉70に持ち込む熱量である。Eも、A、B、C、D、α及びβと同様に、ガラス1トン当たりの熱量である。AとCとEの和は、αとβとBの和に等しい。また、Bは、CとDとEの和に等しい。
【0097】
本実施形態によれば、混合原料は、上記の通り、貯蔵槽68にて、排気ガスの余熱で加熱された後、常温に戻されることなく、溶解炉70に投入される。その結果、図5Bに示すように、Dが減り、Eが生じるので、Aが減る。
【0098】
Aの減少量は、Eよりも大きく、例えばEの1.5倍~2倍である。Aはその一部のみが混合原料に吸収されるのに対し、Eはその全てが混合原料に吸収されるからである。Aが大幅に減るので、燃料の消費量が減り、炭酸ガスの発生量が大幅に減る。
【0099】
例えば、20℃の混合原料の代わりに、500℃の混合原料を溶解炉70に投入すれば、Aが0.9GJ~1.2GJ減り、ガラス1トン当たり、炭酸ガスの発生量が0.045トン~0.06トン減ると見積もられる。この見積もりでは、燃焼熱1GJ当たり、0.05トンの炭酸ガスが発生すると仮定した。
【0100】
ところで、混合原料は、NaHCO等を含むので、加熱されると、図6に示すように炭酸ガスを発生する。図6において、横軸は温度であり、縦軸は脱炭酸率である。脱炭酸率とは、混合原料の温度を室温から溶融温度へ上昇する過程で、混合原料から脱離する炭酸ガスの全量に対する、混合原料から実際に脱離した炭酸ガスの割合である。
【0101】
混合原料の温度が室温から300℃まで上昇する間に、式(3)の反応が生じ、NaHCOがNaCOとCOとHOとに分解する。その後、混合原料の温度が400℃を超えると、式(4)の反応等が生じ、NaCO、CaCO、MgCO等の炭酸塩が分解し、炭酸ガスが生じる。
【0102】
熱供給機72は、貯蔵槽68に熱を供給する。貯蔵槽68の内部にて、混合原料は流動性を損なわない程度に加熱される。貯蔵槽68の内部にて、混合原料の加熱は、例えば100℃~900℃で行われ、好ましくは300℃~800℃で行われる。
【0103】
混合原料が予め造粒される場合、混合原料の温度が800℃以下であれば、混合原料の流動性が損なわれない。また、混合原料が予め造粒され、それをカレットと混ぜて使用する場合、混合原料の温度が500℃以下であれば、混合原料の流動性が損なわれない。混合原料が予め造粒されない場合、混合原料の温度が500℃以下であれば、混合原料の流動性が損なわれない。
【0104】
熱供給管721は、溶解炉70で燃焼した排気ガスを、排気ガスの熱と共に溶解炉70から貯蔵槽68へ移動する。例えば、第1蓄熱室704又は第2蓄熱室705の出口にて、排気ガスの温度は500℃程度である。貯蔵槽68の内部にて、混合原料は300℃以上に加熱される。
【0105】
混合原料は貯蔵槽68の内部にて300℃以上に加熱され、式(3)の反応が貯蔵槽68の内部にて進み、炭酸ガスが生じる。その後、混合原料は溶解炉70の内部にて1000℃以上に加熱され、式(4)の反応等が溶解炉70の内部にて進み、炭酸ガスが生じる。
【0106】
式(4)の反応で生じた炭酸ガスは、熱供給管721を通り、溶解炉70から貯蔵槽68に移動する。熱供給管721は、溶解炉70の炭酸ガスを、溶解炉70から貯蔵槽68に移動する機能も有する。
【0107】
貯蔵槽68内部にて、式(4)の反応で生じた炭酸ガスと、式(3)の反応で生じた炭酸ガスとが合流する。合流した炭酸ガスは、第1ガス管81を通り、貯蔵槽68から吸収槽63に移動する。吸収槽63は、NaHCOから脱離する炭酸ガスと等量の炭酸ガスを、NaOH水溶液に吸収する。
【0108】
第1ガス管81は、貯蔵槽68の炭酸ガスを、貯蔵槽68から吸収槽63に移動する。その過程で、炭酸ガスは、放熱又は希釈等によって冷却され、吸収槽63の水溶液の沸点よりも低い温度に冷却される。吸収槽63の入口にて炭酸ガスの温度は、例えば50℃~90℃である。
【0109】
混合原料を予め造粒しカレットと混ぜて使用する場合には、排気ガスの温度が貯蔵槽68の入口で500℃以上、出口で100~300℃の条件であれば、造粒された混合原料とカレットが500℃ぐらいになり、好ましい。
【0110】
排気ガスは、水蒸気を含む場合には100℃以上、SO等の酸性ガスを含む場合には酸露点以上で、吸収槽63に導入するのが好ましい。
【0111】
第1ガス管81の吸収槽63に近いところに、排気ガスの水分、酸性ガスを取り除く、例えばコンデンサーが配置されてもよい。これによって、排気ガスの温度を低下させ、COの濃度も高くできる。
【0112】
第1ガス管81は、貯蔵槽68の炭酸ガスを貯蔵槽68から吸収槽63に移動し、貯蔵槽68の炭酸ガスの熱の一部を吸収槽63に移動する。吸収槽63にて、水溶液を加熱するヒータの消費電力を低減できる。吸収槽63の水溶液の温度は、式(1)の反応、及び式(2)の反応を効率良く進めるべく、例えば30℃~90℃に調整される。
【0113】
(第1変形例)
上記実施形態では、溶解炉70が第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705を含む。第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705は、一般的に、燃焼用ガスが空気である場合に利用される。空気の大部分は窒素であり、窒素は燃焼に寄与しない。それゆえ、大量の空気が消費され、大量の排気ガスが生じる。大量の排気ガスの熱を回収すべく、第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705を利用する。なお、蓄熱室の数は、2つには限定されず、1つ、又は3つ以上でもよい。
【0114】
燃焼用ガスが酸素ガスである場合、第1蓄熱室704及び第2蓄熱室705が利用されてもよいが、一般的には利用されない。燃焼用ガスが酸素ガスである場合、排気ガスの量が少ないので、また、蓄熱室の建設費が高いので、蓄熱室は利用されないことが多い。なお、燃焼用ガスが空気である場合、上記の通り、一般的には蓄熱室が利用されるが、利用されなくてもよい。
【0115】
本変形例では、溶解炉70が蓄熱室を有しない。以下、本変形例と上記実施形態の相違点について主に説明する。なお、本変形例の製造装置2は、図3に示す製造装置2と同様であるので、図示を省略する。
【0116】
熱供給管721は、溶解炉70で燃焼した排気ガスを、排気ガスの熱と共に溶解炉70から貯蔵槽68へ移動する。本変形例によれば、溶解炉70が蓄熱室を有しないので、高温の排気ガスが燃焼炉701から貯蔵槽68に熱を持ち込む。混合原料は、貯蔵槽68の内部にて排気ガスの余熱で高温に加熱され、常温に戻されることなく、高温のまま溶解炉70に投入される。但し、排気ガスが高温過ぎる場合には、希釈により温度を下げればよい。
【0117】
図7に、本変形例に係る溶解炉70の熱収支を示す。図7の符号A、B、D、E、α及びβの意味は、図5Bの符号A、B、D、E、α及びβの意味と同じである。本変形例によれば、図5Bに示すCが存在しない。より高温の排気ガスを用いて、より高温に混合原料の予熱ができるので、Eが増える。AとEの和は、αとβとBの和に等しい。また、Bは、DとEの和に等しい。
【0118】
本変形例によれば、Eが増えるので、Aが更に減少する。燃料の消費量が更に減少し、炭酸ガスの発生量が更に減少する。例えば、20℃の混合原料の代わりに、800℃の混合原料を溶解炉70に投入すれば、Aが1.7GJ~2.0GJ減り、ガラス1トン当たり、炭酸ガスの発生量が0.085トン~0.1トン減ると見積もられる。この見積もりでは、燃焼熱1GJ当たり、0.05トンの炭酸ガスが発生すると仮定した。
【0119】
混合原料は、貯蔵槽68の内部にて高温に加熱される。その最高加熱温度は800℃程度である。そこで、混合原料は、貯蔵槽68に移動する前に、成型機67にて造粒される。造粒によって得られるブリケットは、粉末状の混合原料とは異なり、800℃程度に加熱されても、流動性を損なわない。加熱初期に生じるメルトがブリケットの内部に保持され、ブリケット同士の接着が抑制されるからである。混合原料だけではなく、ガラスカレットも溶解炉70に投入される場合、混合原料の流動性が損なわれないように、混合原料とは別にガラスカレットが溶解炉70に投入される。
【0120】
ところで、ブリケット同士の間には、粉末状の混合原料同士の間に比べ、大きな隙間が形成される。この隙間は、排気ガスの通り道として利用できる。従って、排気ガスの熱をブリケットが効率的に吸収できる。この効果は、溶解炉70が蓄熱室を有する場合にも得られる。このような直接熱交換ではなく、混合原料と排気ガスとを直接に接触させないで、間接的に排気ガスの熱を混合原料に伝熱する間接熱交換でもよい。間接熱交換の場合には、混合原料が粉体でも利用できる。
【0121】
(第2変形例)
上記実施形態及び上記第1変形例では、熱供給機72が熱供給管721を有する。熱供給管721は、溶解炉70で燃焼した排気ガスを、排気ガスの熱と共に溶解炉70から貯蔵槽68へ移動する。熱供給管721は、排気ガスの熱だけではなく、排気ガスの炭酸ガスをも、溶解炉70から貯蔵槽68に移動する。
【0122】
本変形例では、図8に示すように、熱供給機72が熱風発生機722を有する。熱風発生機722は、溶解炉70とは別に熱風を発生し、貯蔵槽68に送風する。以下、本変形例と上記実施形態等の相違点について主に説明する。
【0123】
本変形例では、熱供給管721の代わりに、熱風発生機722が用いられる。熱風発生機722は、例えば、電力によって発熱する発熱線と、発熱線に向けて空気を送るファンとを含む。空気は、排気ガスとは異なり、炭酸ガスをほとんど含まない。
【0124】
混合原料は、貯蔵槽68の内部にて、熱風の熱で熱分解し、炭酸ガスを発生する。発生した炭酸ガスは、第1ガス管81を通り、貯蔵槽68から吸収槽63に移動し、吸収槽63にてNaOH水溶液に吸収される。
【0125】
吸収槽63にて、式(1)の反応、及び式(2)の反応が生じ、炭酸ガスが吸収される。その吸収量以上の炭酸ガスが混合原料の熱分解で発生するように、熱風の温度が調整される。熱供給管721が無く、排気ガスの炭酸ガスが溶解炉70から貯蔵槽68に移動しないからである。
【0126】
図6に示すように、混合原料の温度が室温から300℃まで上昇する間に、式(3)の反応が生じる。式(3)の反応は、式(2)の反応とは逆の反応である。従って、式(2)の反応に必要な量の炭酸ガスは、300℃までの加熱で得られる。
【0127】
残りの式(1)の反応に必要な炭酸ガスの量は、式(2)の反応に必要な炭酸ガスの量と等しい。図6に示す例では、混合原料の温度が室温から800℃まで上昇する間に、吸収槽63に必要な量の炭酸ガスが得られる。
【0128】
混合原料は、上記第1変形例と同様に、貯蔵槽68の内部にて、800℃程度に加熱される。その後、混合原料は、常温に戻されることなく、高温のまま溶解炉70に投入される。従って、上記第1変形例と同様に、燃料の燃焼に起因する炭酸ガスの発生量を低減できる。
【0129】
なお、本変形例では、熱供給管721が無いので、排気ガスの熱のみならず、排気ガスの炭酸ガスも溶解炉70から貯蔵槽68に移動しない。この場合、溶解炉70は、燃焼炉701の代わりに電気炉を有してもよい。電気炉は電気を使用し、天然ガス等の燃料を使用しない。従って、燃料の燃焼に起因する炭酸ガスの発生を防止できる。
【0130】
但し、溶解炉70が燃焼炉701の代わりに電気炉を有する場合に、熱供給管721が有ってもよい。熱供給管721は、溶解炉70から貯蔵槽68に、排気ガスの熱を移動できる。混合原料は、排気ガスの熱で分解されてもよい。
【0131】
上記実施形態及び上記第1変形例では熱供給管721が単独で用いられ、本変形例では熱風発生機722が単独で用いられるが、熱供給管721と熱風発生機722とが組み合わせて用いられてもよい。混合原料は、溶解炉70の排気ガスの熱と、熱風発生機722の熱風の熱とで分解される。
【0132】
本変形例の熱風発生機722は、電力によって発熱する発熱線と、発熱線に向けて空気を送るファンとを含むが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、熱風発生機722は、燃料とガスとを噴射し、火炎を形成するバーナーを含んでもよい。炭素を含む燃料の燃焼によって炭酸ガスが発生するので、熱風の温度が低くて済む。熱風の温度は、混合原料の熱分解と、燃料の燃焼とで、必要な量の炭酸ガスを発生できるように調整される。水素、アンモニアを含む燃料を燃焼する場合には、炭素を含まないのでCOの増加を防ぐことができる。
【0133】
(第3変形例)
上記実施形態、上記第1変形例、及び上記第2変形例の製造装置2は、熱供給機72を有する。熱供給機72は、貯蔵槽68に熱を供給する。混合原料は、貯蔵槽68の内部にて加熱され、その後、常温に戻されることなく、高温のまま溶解炉70に投入される。燃料の消費量が減少し、燃料の燃焼に起因する炭酸ガスの発生量が減少する。
【0134】
本変形例の製造装置2は、図9に示すように、熱供給機72を有しない。混合原料は、貯蔵槽68の内部にて加熱されることなく、そのまま溶解炉70に投入される。溶解炉70の内部にて、式(3)の反応、及び式(4)の反応が生じる。以下、本変形例と上記実施形態等の相違点について主に説明する。
【0135】
本変形例では、貯蔵槽68の内部にて、混合原料の熱分解は進まず、炭酸ガスは発生ない。混合原料の熱分解は、溶解炉70の内部で進む。それゆえ、第2ガス管82は、貯蔵槽68の代わりに溶解炉70の炭酸ガスを、溶解炉70から吸収槽63に移動する。上記実施形態等と同様に、混合原料の熱分解に起因する炭酸ガスの発生量が減少する。
【0136】
第2ガス管82は、溶解炉70の炭酸ガスを、溶解炉70から吸収槽63に移動する。その過程で、炭酸ガスは、放熱や希釈等によって冷却され、吸収槽63の水溶液の沸点よりも低い温度に冷却される。吸収槽63の入口にて炭酸ガスの温度は、例えば50℃~90℃である。
【0137】
第2ガス管82は、貯蔵槽68の炭酸ガスを貯蔵槽68から吸収槽63に移動し、貯蔵槽68の炭酸ガスの熱の一部を吸収槽63に移動する。
【0138】
以上、本開示に係る混合原料の製造方法、溶融ガラスの製造方法、ガラス物品の製造方法、溶融ガラスの製造装置、及びガラス物品の製造装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0139】
本出願は、2019年10月23日に日本国特許庁に出願された特願2019-193025号に基づく優先権を主張するものであり、特願2019-193025号の全内容を本出願に援用する。
【符号の説明】
【0140】
1 ガラス物品の製造装置
2 溶融ガラスの製造装置
3 成形装置
4 徐冷装置
5 加工装置
61 原料槽
62 水溶液槽
63 吸収槽
66 ミキサー
68 貯蔵槽
69 投入機
70 溶解炉
M 溶融ガラス
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9