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  • 特開-熱分析装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027196
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】熱分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/18 20060101AFI20250219BHJP
   G01N 25/16 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N25/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131785
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢吾
【テーマコード(参考)】
2G040
2G061
【Fターム(参考)】
2G040AB07
2G040BA01
2G040CA01
2G040CA18
2G040CA22
2G040DA01
2G040DA16
2G040EA02
2G040EC09
2G040GA08
2G040HA16
2G061AA02
2G061AB01
2G061AB04
2G061AC03
2G061BA19
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA02
2G061EB06
(57)【要約】
【課題】高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定できる熱分析装置を提供する。
【解決手段】試料Sに荷重を印加するプローブ10と、プローブに力を発生させる力発生器5と、プローブの変位を検出することで試料の力学的特性を検出する変位検出器6a、6b、6cと、力発生器を動作させる力信号を発生する力信号発生器20と、試料に加わる荷重を検出する荷重検出器7と、試料を加熱するための加熱炉12a、12bと、を備えた熱分析装置1において、力信号発生器は、力信号のデジタル信号を発生するデジタル信号発生器21と、デジタル信号をアナログ信号に変換する複数のD/A変換器22a、22bと、複数のD/A変換器のそれぞれから出力されたアナログ信号をそれぞれ異なる増幅率で増幅する複数の増幅器23a、23bと、を有し、かつ力信号発生器は、複数の増幅器の少なくとも1つで増幅されたアナログ信号を力信号として出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延び、自身の一端側が試料に直接または間接的に接触し、前記試料に荷重を印加するプローブと、
前記プローブの他端側に設けられ、前記プローブの前記軸方向に力を発生させる力発生器と、
前記プローブの前記軸方向の変位を検出することで前記試料の力学的特性を検出する変位検出器と、
前記力発生器を動作させる力信号を発生する力信号発生器と、
前記試料に加わる荷重を検出する荷重検出器と、
前記試料を加熱するための加熱炉と、
を備えた熱分析装置において、
前記力信号発生器は、前記力信号のデジタル信号を発生するデジタル信号発生器と、前記デジタル信号をアナログ信号に変換する複数のD/A変換器と、複数の前記D/A変換器のそれぞれから出力された前記アナログ信号をそれぞれ異なる増幅率で増幅する複数の増幅器と、を有し、
かつ前記力信号発生器は、前記複数の増幅器の少なくとも1つで増幅された前記アナログ信号を前記力信号として出力することを特徴とする熱分析装置。
【請求項2】
前記複数の増幅器のそれぞれの前記増幅率の差が2倍以上であることを特徴とする請求項1記載の熱分析装置。
【請求項3】
前記デジタル信号発生器を複数備え、それぞれのデジタル信号発生器が異なるデジタル信号を発生し、
複数の前記デジタル信号発生器のそれぞれに対し、複数の前記D/A変換器及び前記増幅器を有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱分析装置。
【請求項4】
前記異なるデジタル信号は、時間によって振動する交流信号と、時間に対して一定となる直流信号であることを特徴とする請求項3記載の熱分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の熱的挙動の測定を行う熱分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の温度特性を評価する手法として、試料を加熱し、温度変化に伴う測定試料の熱的挙動(物理的変化)を測定する熱分析といわれる手法が行われている。熱分析は、JIS K 0129:2005 "熱分析通則"に定義されており、測定対象(測定試料)の温度をプログラム制御させた時の、測定試料の物理的性質を測定する手法が全て熱分析とされる。一般的に用いられる熱分析は、(1)温度(温度差)を検出する示差熱分析(DTA)、(2)熱流差を検出する示差走査熱量測定(DSC)、(3)質量(重量変化)を検出する熱重量測定(TG)、(4)力学的特性を検出する熱機械分析(TMA)、及び(5)動的粘弾性測定(DMA)の5つの方法がある。
【0003】
このうち、熱機械分析(TMA)、及び動的粘弾性測定(DMA)は、プローブにより試料に荷重を印加し、そのときの試料の形状変化をプローブの変位として検出する(例えば、特許文献1~2参照)。これにより、試料の弾性率や膨張率を温度または時間の関数として測定することができる。
例えば、動的粘弾性測定(DMA)装置は、試料に時間によって変化(振動)する応力または歪みを加え、それによって発生する試料の歪みまたは応力を測定し、試料の力学的特性(弾性率)を求める。
【0004】
ここで、動的粘弾性測定(DMA)装置を例とすると、プローブの荷重(力)は次のようにして生成される。まず、交流発生器から出力したデジタル信号である正弦波、矩形波や三角波などの交流信号がD/A変換器でアナログ信号に変換され、さらにこのアナログ信号が増幅器により振幅を調節され、力発生器のコイルに電流として入力される。
これにより、コイルと、その周辺に設けられたマグネットとの電磁的な共働により交流力が発生し、交流力がプローブを介して試料に印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-123722号公報
【特許文献2】特開平6-160269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、動的粘弾性測定装置や熱機械分析装置における、試料に印加可能な最大荷重と、試料に印加可能な最小荷重である荷重分解能との関係は、以下のようになる。
例えば、力発生器における最大荷重を±10Nとした場合、デジタル分解能が16bit(2の16乗)のD/A変換器を用いると、荷重分解能=20N(+/-10N)/16bit=20N/(216) =0.305mNとなる。
【0007】
そして、近年、炭素繊維複合材料などの軽量かつ高弾性率な材料の開発が進んでおり、このような高弾性率試料の動的粘弾性測定や熱機械分析などの熱分析では、試料に印加する荷重を高めるため、最大荷重の向上が求められる。
しかしながら、最大荷重を増加させると、上述のように荷重分解能も比例して増大し、荷重分解能に近い低荷重での測定における測定精度が低下するという問題がある。一方、D/A変換器のデジタル分解能を高くすれば、理論的には荷重分解能は低下するが、例えば24bitのD/A変換器はコストが高くなってしまう。
このように、1つの熱分析装置で高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定することは実際には困難である。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定することができる熱分析装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の熱分析装置は、軸方向に延び、自身の一端側が試料に直接または間接的に接触し、前記試料に荷重を印加するプローブと、前記プローブの他端側に設けられ、前記プローブの前記軸方向に力を発生させる力発生器と、前記プローブの前記軸方向の変位を検出することで前記試料の力学的特性を検出する変位検出器と、前記力発生器を動作させる力信号を発生する力信号発生器と、前記試料に加わる荷重を検出する荷重検出器と、前記試料を加熱するための加熱炉と、を備えた熱分析装置において、前記力信号発生器は、前記力信号のデジタル信号を発生するデジタル信号発生器と、前記デジタル信号をアナログ信号に変換する複数のD/A変換器と、複数の前記D/A変換器のそれぞれから出力された前記アナログ信号をそれぞれ異なる増幅率で増幅する複数の増幅器と、を有し、かつ前記力信号発生器は、前記複数の増幅器の少なくとも1つで増幅された前記アナログ信号を前記力信号として出力することを特徴とする。
【0010】
この熱分析装置によれば、複数の増幅器が、複数のD/A変換器のそれぞれから出力されたアナログ信号をそれぞれ異なる増幅率で増幅する。これにより、試料に印加可能な最大荷重を変化させることができ、D/A変換器のデジタル分解能を変えなくても、それぞれ異なる荷重分解能を設定することができる。
その結果、高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定することができる。
【0011】
本発明の熱分析装置において、前記複数の増幅器のそれぞれの前記増幅率の差が2倍以上であってもよい。
この熱分析装置によれば、複数の増幅器による増幅率の差が大きくなり、試料に印加可能な最大荷重を大きく変化させることができる。
【0012】
本発明の熱分析装置は、前記デジタル信号発生器を複数備え、それぞれのデジタル信号発生器が異なるデジタル信号を発生し、複数の前記デジタル信号発生器のそれぞれに対し、複数の前記D/A変換器及び前記増幅器を有してもよい。
この熱分析装置によれば、複数のデジタル信号発生器がそれぞれ異なるデジタル信号を発生するので、例えばデジタル信号発生器の1つが時間に対して一定の直流力を張力として試料に印加することができる。
【0013】
本発明の熱分析装置において、前記異なるデジタル信号は、時間によって振動する交流信号と、時間に対して一定となる直流信号であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定することができる熱分析装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱分析装置の構成を示す図である。
図2】増幅器の増幅率を変えた場合の荷重分解能を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る熱分析装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱分析装置(動的粘弾性測定(DMA)装置)1の構成を示す図である。
熱分析装置1は、軸方向に延びる棒状のプローブ10と、プローブ10の軸方向に力を発生させる力発生器5と、プローブ10の軸方向の変位を検出する変位検出器6a~6cと、力信号発生器20と、試料Sに加わる荷重を検出する荷重検出器7と、試料Sを加熱するための加熱炉12a、12bと、を備えている。
【0017】
試料Sの上下方向の両端は試料保持部材11により固定保持される。そして、試料保持部材11の一端(図1の上端)はプローブ10の一端側(図1の下端)に固定され、プローブ10は、プローブ支持体15により軸方向に移動可能に支持される。
これにより、プローブ10の一端側が試料保持部材11を介して試料Sに間接的に接触し、試料Sに荷重を印加することが可能になっている。
【0018】
一方、プローブの他端側(図1の上端)が力発生器5に固定される。図示しないが、力発生器5はコイルと、コイルを囲む永久磁石とを備え、コイルに電流が流れることにより、プローブ10の軸方向に変位して力を発生させる。
また、プローブ10のうち力発生器5に近い部位の外周には導体からなるコア(鉄心)6bが固定され、コア6bの周囲に差動トランス(1次コイルと2次コイル)6aが配置されている。さらに、差動トランス6aの電圧を検出器6cが検出する。差動トランス6aに対してコア6b(ひいてはプローブ10)の位置が変化すると、その変位に応じて差動トランス6aに電圧が生じるので、コア6b(ひいてはプローブ10)の軸方向の変位を検出することができる。
これら差動トランス6a、コア6b及び検出器6cが「変位検出器」を構成する。
【0019】
試料Sの周囲には、炉体12a及び炉体12aの周囲に配置されたヒータ12bからなる加熱炉が設けられ、加熱炉の温度は加熱炉制御器14で制御される。
【0020】
力信号発生器20は、力発生器5を動作させる力信号を発生する。力信号発生器20は、例えば各種電子部品やチップを回路基板に実装した電子回路である。
より詳しくは、力信号発生器20は、力信号のデジタル信号を発生する交流発生器(デジタル信号発生器)21と、デジタル信号をアナログ信号に変換する2つのD/A変換器22a、22bと、D/A変換器22a、22bから出力されたアナログ信号をそれぞれ増幅する2つの増幅器23a、23bと、増幅器23a、23bのアナログ信号(電圧)を電流に変換して力発生器5に出力する電圧電流変換器24と、を有している。
【0021】
そして、交流発生器21で時間によって振動する正弦波信号(交流信号)を発生し、この正弦波信号(交流信号)を2つのD/A変換器22a、22bに分岐して入力し、デジタル信号からアナログ信号(電圧)に変換する。さらに、変換されたアナログ信号はそれぞれ増幅器23a、23bにより振幅を調整された後、電圧電流変換器24を介して力発生器5に出力され、正弦波力(交流力)が発生する。
力発生器5で発生した正弦波力(交流力)は、プローブ10、試料保持部材11を介して試料Sに曲げ(たわみ)応力として付与される。一方、この応力によって試料Sに生じた曲げ(たわみ)歪は、試料保持部材11、プローブ10を通じてコア6bに伝えられ、差動トランス6aに対するコア6bの位置の変位として検出される。
【0022】
また、増幅器23a、23bの出力は電圧電流変換器24を介して荷重検出器7に送られ、交流発生器21に基づいて発生した正弦波力(交流力)が検出される。
差動トランス6bとコア6aとによる変位検出信号は、変位検出器6cに送られ、変位信号に変換される。
荷重検出器7の出力である荷重信号と、変位検出器8の出力である変位信号とは、演算器9に送られ、貯蔵弾性率や損失弾性などの試料の物理量(力学的特性)が算出される。
【0023】
次に、本発明の特徴部分について説明する。
本発明の熱分析装置1において、力信号発生器20は、2つのD/A変換器22a、22bと、D/A変換器22a、22bから出力されたアナログ信号をそれぞれ増幅する2つの増幅器23a、23bと、を備えている。
本発明においては、複数の増幅器23a、23bが、複数のD/A変換器22a、22bのそれぞれから出力されたアナログ信号をそれぞれ異なる増幅率で増幅する。これにより、試料Sに印加可能な最大荷重を変化させることができ、D/A変換器22a、22bのデジタル分解能を変えなくても、それぞれ異なる荷重分解能を設定することができる。
その結果、高弾性率材料から低弾性率材料まで精度よく測定することができる。
【0024】
なお、増幅器は、例えばOPアンプ(オペアンプ)と2つの抵抗を組み合わせ、抵抗値を変えることで任意の増幅率に設定することができる。つまり、増幅率を変えるには抵抗を交換するか、可変抵抗を使用するが、増幅率の精度が要求される場合、可変でない抵抗を使用するとよい。
【0025】
例えば、力発生器5の能力等から、試料Sに印加可能な最大荷重が±10Nであると仮定する。この最大荷重は、力発生器5のコイルに流れる電流に比例し、ひいては、電圧電流変換器24で電流変換する前の増幅器23a、23bから増幅されたアナログ信号(電圧)に比例する。
そこで、各増幅器23a、23bの増幅率を変えることで、力発生器5に出力される信号(電流)を変え、最大荷重を変えることができる。荷重分解能=最大荷重/(D/A変換器のデジタル分解能)であるから、D/A変換器のデジタル分解能を変えずに荷重分解能を変えることができる。
【0026】
なお、力信号発生器20は、複数の増幅器23a、23bの少なくとも1つで増幅されたアナログ信号を力信号として出力する。この際、例えば増幅器23aのみから出力したい場合、ユーザが選択ボタンや制御画面上でその旨を選択すると、増幅器23aのみ電源がONして動作し、他の増幅器23bは電源OFFの状態にしてもよい。
増幅器23a、23bを切り替える方法は限定されないが、例えばまず増幅器23bで出力を行い、増幅器23bの最大値の荷重を超えた場合に増幅器23aを使用する制御が挙げられる。また、他の手法として、まず増幅器23bを使用し増幅器23bが最大まで行った際に同じ値を増幅器23aに出力するとともに増幅器23bの出力を0にする。そして再び増幅器23bが最大になると増幅器23aに出力するサイクルを繰り返す方法も挙げられる。
【0027】
最大荷重を変える具体例として、図2に示すように、D/A変換器22a、22b(本例では、各D/A変換器は同一である)の出力が1.0Vであり、増幅器の出力が1.0V(つまり、増幅率=1)の場合に、最大荷重が±10Nであるとする。
従って、増幅器の出力を0.1V(つまり、増幅率=0.1)に変えると、最大荷重が±1.0Nに変化する。
【0028】
D/A変換器22a、22bのデジタル分解能が16bitの場合、増幅率=1の増幅器23aから出力される最大荷重が±10Nであるから、荷重分解能=20N(+/-10N)/16bit=20N/(216) =0.305mNとなる。
一方、増幅率=0.1の増幅器23bから出力される最大荷重が±1.0Nであるから、荷重分解能=2N(+/-1N)/16bit=20N/(216) =0.0305mNとなる。
これより、最大荷重が±10Nと高い高荷重モードと、最大荷重が±1Nと低いが荷重分解能に優れた低荷重モードと、を1つの熱分析装置で実現することができる。
【0029】
次に、図3を参照し、本発明の第2の実施形態に係る熱分析装置(動的粘弾性測定(DMA)装置)1Bについて説明する。図3は、熱分析装置1Bの構成を示す図である。
熱分析装置1Bは、以下に述べる構成を除いては、第1の実施形態に係る熱分析装置1と同一であるので、同一の構成部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
熱分析装置1Bにおいて、力信号発生器30は、熱分析装置1と同様に交流発生器21、2つのD/A変換器22a、22b、及び2つの増幅器23a、23bを備えている。
さらに、力信号発生器30は、力信号のデジタル信号を発生する直流力発生器(デジタル信号発生器)31と、直流力発生器31のデジタル信号をアナログ信号に変換する2つのD/A変換器32c、32dと、D/A変換器32c、32dから出力されたアナログ信号をそれぞれ増幅する2つの増幅器33c、33dと、各増幅器23a、23b、33c、33dのアナログ信号(電圧)を電流に変換して力発生器5に出力する電圧電流変換器34と、を有している。
【0031】
ここで、フィルム等の柔らかい試料を動的粘弾性測定装置で測定する場合、フィルム状試料の弛緩を防止して試料形状を維持する目的で、時間に対して一定の直流力を張力として試料に印加する。直流力発生器31は、この張力を発生させる。
このようにして、第1の実施形態と同様、交流発生器21の出力に基づいて2つの増幅器23a、23bにより、最大荷重が高い高荷重モードと、最大荷重が低いが荷重分解能に優れた低荷重モードと、を1つの熱分析装置で実現できる。
【0032】
同時に、直流力発生器31の出力に基づいて2つの増幅器33c、33dにより、高荷重モード及び低荷重モードのそれぞれで試料に張力を付与させることができ、高荷重モードから低荷重モードまでの荷重変化に応じて試料形状を維持した測定が行える。
なお、高荷重モード及び低荷重モードのそれぞれで試料に張力を付与させる観点からは、高荷重モードではより高い張力(直流力)が必要なので、2つの増幅器33c、33dの増幅率の差も、増幅器23a、23bの増幅率の差と同一とするのが好ましい。
例えば、図2では、高荷重モード及び低荷重モードのそれぞれの増幅器23a、23bの増幅率の差が10倍であったが、高荷重モード及び低荷重モードのそれぞれに対応した増幅器33c、33dの増幅率の差も10倍にするとよい。
【0033】
また、例えば高荷重モードの場合、電圧電流変換器34は、増幅器23aから出力される正弦波信号(交流信号である電圧)と、増幅器33cから出力される直流信号(電圧)とを合成し、電流に変換して出力する。
この場合、例えばユーザが選択ボタンや制御画面上で高荷重モードを選択すると、増幅器23a、33cのみが動作するよう、各増幅器の電源をONOFFすればよい。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、第1の実施形態における交流発生器21を、直流力発生器に置き換えることで、本発明を熱機械分析(TMA)装置に適用できる。
また、D/A変換器及びそれに対応する増幅器の個数は2個以上であってもよい。
プローブの一端側が試料に直接接触して試料に荷重を印加するようにしてもよい。
前記複数の増幅器のそれぞれの前記増幅率の差が10倍程度あることが良いが、少なくとも2倍以上あると好ましい。
【0035】
各D/A変換器は同一であってもよく、異なっていてもよい。各D/A変換器のデジタル分解能も同一であってもよく、異なっていてもよい。
交流発生器や直流力発生器などのデジタル信号発生器は、交流や直流等の特定の種類のデジタル信号を出力したい複数のD/A変換器に対して1個設けることが好ましい。例えば、複数のD/A変換器に対してそれぞれ別個に交流発生器を設けるとコストアップになると共に、各D/A変換器に対する交流の位相等が一致しないおそれがある。
交流信号としては、正弦波、矩形波や三角波などが挙げられる。
「複数の増幅器の少なくとも1つ」とは、複数の増幅器のうち1つでもよく、2つでもよく、すべての増幅器でもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,1B 熱分析装置
5 力発生器
6a、6b、6c 変位検出器
7 荷重検出器
10 プローブ
12a、12b 加熱炉
20,30 力信号発生器
21,31 デジタル信号発生器
22a、22b、32c、32d D/A変換器
23a、23b、33c、33d 増幅器
S 試料
図1
図2
図3