(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027238
(43)【公開日】2025-02-27
(54)【発明の名称】エラストマー複合粒子及びその製造方法並びにエラストマー球状粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/42 20060101AFI20250219BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250219BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20250219BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20250219BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20250219BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20250219BHJP
C08J 3/05 20060101ALI20250219BHJP
C08J 3/16 20060101ALI20250219BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
C08G77/42
C08K3/36
C08L67/00
C08L83/04
C08F2/18
C08F290/06
C08J3/05 CEZ
C08J3/16 CFD
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131875
(22)【出願日】2023-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000226666
【氏名又は名称】日信化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】三石 紘史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J011
4J127
4J200
4J246
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AA52
4F070AA60
4F070AB01
4F070AB08
4F070AC23
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4F070CB02
4F070CB12
4F070DA31
4F070DA33
4F070DB05
4J002CF091
4J002CF191
4J002CP032
4J002DJ016
4J002FD206
4J002GQ00
4J002HA06
4J002HA09
4J011JA06
4J011JA07
4J011JA08
4J011PA88
4J011PA90
4J127AA04
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4J127BB111
4J127BB221
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4J127BC161
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4J127BF171
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4J200AA06
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4J200EA11
4J246AA03
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4J246FD06
4J246GB08
4J246GB24
4J246GB32
4J246HA53
(57)【要約】
【課題】光などの外部刺激により高い分解性を有する(共)重合体を構成単位としたエラストマー球状粒子を含むエラストマー複合粒子及びエラストマー球状粒子及びエラストマー複合粒子の製造方法の提供。
【解決手段】
体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子の表面に、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを有するエラストマー複合粒子。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子の表面に、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを有するエラストマー複合粒子。
【請求項2】
前記共重合体が、一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有する、ポリエステル-ポリエーテル共重合体である、請求項1に記載のエラストマー複合粒子。
【請求項3】
前記共重合体が、下記一般式(1)又は(2)で示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体である、請求項2に記載のエラストマー複合粒子。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に下記一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、kはそれぞれ独立に1≦k≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、nはそれぞれ独立に1≦n≦100の数である。
一般式(2)中、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
4はそれぞれ独立に下記一般式(4a)又は(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、pはそれぞれ独立に1≦p≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、qはそれぞれ独立に1≦q≦100の数である。)
【化2】
(一般式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)及び(4b)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~8の2価炭化水素基を示し、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。)
【請求項4】
前記共重合体が、下記一般式(5)で示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体である、請求項2に記載のエラストマー複合粒子。
【化3】
(一般式(5)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に下記一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、rはそれぞれ独立に1≦r≦100の数である。)
【化4】
(一般式(3a)、(3b)及び(3c)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~8の2価炭化水素基を示し、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
下記工程i)~iii)を有するエラストマー球状粒子の製造方法。
i)
下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を撹拌・懸濁し、懸濁組成物を調製する工程
(A)重合性基を有し、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体
(B)前記(A)成分が不溶もしくは難溶である水相成分、又は油相成分
(C)懸濁剤
(D)重合開始剤
ii)
前記工程i)により得られた懸濁組成物中の(A)成分を、ラジカル重合することでエラストマー球状粒子の分散液を得る工程
iii)
前記工程ii)により得られたエラストマー球状粒子の分散液から、連続相である(B)を洗浄・乾燥除去することで、エラストマー球状粒子を得る工程
【請求項6】
下記工程iv)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のエラストマー複合粒子の製造方法。
iv)
下記(E)、(F)、(G)及び(H)成分を含む液相に、下記(I)成分を添加し、(I)成分を加水分解・重合反応する工程
(E)体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子である、請求項5に記載の方法により製造されたエラストマー球状粒子
(F)アルカリ性物質
(G)カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上
(H)水
(I)トリアルコキシシラン、又はテトラアルコキシシラン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー複合粒子及びその製造方法並びにエラストマー球状粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製品に使用される原料ゴムとして、
[1]ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴムに代表される、繰り返し単位が共役ジエン単位のみからなる重合体、
[2]スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴムに代表される、繰り返し単位が共役ジエン単位と芳香族ビニル単位とを必須とする重合体、
[3]アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴムに代表される、繰り返し単位が共役ジエン単位とα,β-不飽和ニトリル単位とを必須とする重合体、
[4]アクリルゴムに代表される、繰り返し単位がアクリレート単位を必須とする重合体、
[5]エチレン-プロピレンゴムに代表される、繰り返し単位がエチレン、炭素数3~12のα-オレフィン、及び必要に応じて非共役ポリエンからなる重合体、
[6]シリコーンゴムに代表される、繰り返し単位がジメチルシロキサン単位からなる重合体、
等が挙げられ、多用されている。
【0003】
これら原料ゴムを材料として得られるエラストマー(ゴム)球状粒子、特に有機骨格からなるものは、耐衝撃性や熱衝撃性、密着性などの各種特性を向上させるため、電子機器を含む電子材料用途を中心に用いられている。
【0004】
一方、シリコーンゴム球状粒子・粉末については、従来、広範囲の産業分野においてその用途の提案がなされている。
例えば、合成樹脂材料(特許文献1、2)、合成ゴム材料(特許文献3)、化粧料(特許文献4~7)などへの添加配合が示されている。
【0005】
シリコーンゴム球状粒子は、例えば、エポキシ樹脂等の有機樹脂への低応力化剤として、その“柔軟性”を利用した配合・使用がなされている。即ち、電子部品とエポキシ樹脂等の有機樹脂の熱膨張率の差異により、樹脂に対して応力が掛かることでクラック・割れが発生する場合があるため、シリコーンゴム球状粒子の添加によりその防止が可能となる。
【0006】
具体的には、線状オルガノポリシロキサンブロックを含むポリマー硬化物の球状粒子を含有したエポキシ樹脂(特許文献8)や、シリコーンゴム球状粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した球状粒子を含有したエポキシ樹脂(特許文献9)等が提案されている。
【0007】
また、(メタ)アクリル酸エステルと片末端にラジカル重合性官能基含有有機基を有するジオルガノポリシロキサンを、乳化系中において共重合することでシリコーン含有ゴム球状粒子を調製する方法(特許文献10)も示されている。
なお、この有機ゴム球状粒子は、熱可塑性樹脂に滑り性を付与する目的で使用されている。
【0008】
更に、脂肪族不飽和結合を有する有機化合物と、ケイ素原子結合水素原子を有する含ケイ素有機化合物からなる液状組成物を、ヒドロシリル化反応により架橋してなる有機架橋ゴム球状粒子(特許文献11)は、各種樹脂、塗料、ゴムなどの成分に対する分散性、取扱い作業性に優れるものとして提案されている。
【0009】
また、シリコーンゴム球状粒子は、化粧料に柔らかい感触やなめらかさ等の使用感を付与する目的や、光を散乱させ自然な仕上がりを演出する目的、毛穴やシワなどを見えにくくする目的等において、ファンデーション及び化粧下地などのメークアップ化粧料、クリーム及び乳液等の基礎化粧料、サンスクリーン化粧料等、幅広い化粧料・化粧品材料に用いられている。
【0010】
例えば、ポリメチルシルセスキオキサン粒子・粉末を含有する化粧料(特許文献12)、球状シリコーンゴム粒子・粉末を有するメーキャップ化粧料(特許文献13)、シリコーンゴム球状粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆したシリコーン複合粒子・粉体を含有する化粧料(特許文献14)が提案されている。これらのシリコーンゴム球状粒子や、シリコーンゴム球状粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆した複合粒子は、上述の通り、化粧料に柔らかな感触やなめらかさ等の使用感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭63-12489号公報
【特許文献2】特公平6-55805号公報
【特許文献3】特開平2-102263号公報
【特許文献4】特開平8-12546号公報
【特許文献5】特開平8-12545号公報
【特許文献6】特公平4-17162号公報
【特許文献7】特公平4-66446号公報
【特許文献8】特開昭58-219218号公報
【特許文献9】特開平8-85753号公報
【特許文献10】特開平10-182987号公報
【特許文献11】特開2001-40214号公報
【特許文献12】特開昭63-297313号公報
【特許文献13】特開平8-12524号公報
【特許文献14】特開平9-20631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、各種樹脂や化粧料等に配合される上記これらのシリコーンゴム球状粒子は、土壌、陸水、海水・海洋などの自然環境下に放出・流出された際、粒子の構造内に分解性を有する・あるいは付与する骨格・単位を有していないため、分解されず環境中において残存し続けることが予測される。また、これら粒子は粒子径が小さいことから、回収等は大変困難であり、海洋等に流出することは自体は現状避けることができない。
【0013】
これに加え、海洋中に流出したプラスチックや、ミリオーダーからマイクロオーダーまで分解・微細化されたマイクロプラスチックは、環境中に存在する有害物質や病原菌等を吸着する特性があり、これらを海洋生物などが誤って体内に取り込むことで、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されるため、このマイクロプラスチックに対する規制の動きが出始めている。
【0014】
このような背景から、使用後において環境中で分解し、粒子(固形物)として残存することのないシリコーン球状粒子、又はエラストマー球状粒子が求められつつある。このエラストマー球状粒子が環境中で分解するためには、粒子を形成する架橋構造が環境中で切断・分解される必要があるが、シリコーンゴム球状粒子の場合、構造上、分解性を有していない。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、土壌、陸水、海洋・海水を含む自然環境下において、光、熱、酸・塩基などの外部刺激や微生物や菌類などの働きにより、高い分解性を有する(共)重合体を構成単位としたエラストマー球状粒子を含むエラストマー複合粒子を提供することを目的とする。
また、本発明は高い分解性を有する(共)重合体を構成単位としたエラストマー球状粒子及びエラストマー複合粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、特定のポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子をコア粒子とするエラストマー複合粒子が、上述する課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
従って本発明は、下記エラストマー複合粒子、エラストマー球状粒子の製造方法及びエラストマー複合粒子の製造方法を提供するものである。
[1].
体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子の表面に、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを有するエラストマー複合粒子。
[2].
共重合体が、一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有する、ポリエステル-ポリエーテル共重合体である、[1]に記載のエラストマー複合粒子。
[3].
共重合体が、下記一般式(1)又は(2)で示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体である、[2]に記載のエラストマー複合粒子。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に下記一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、kはそれぞれ独立に1≦k≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、nはそれぞれ独立に1≦n≦100の数である。
一般式(2)中、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
4はそれぞれ独立に下記一般式(4a)又は(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、pはそれぞれ独立に1≦p≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、qはそれぞれ独立に1≦q≦100の数である。)
【化2】
(一般式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)及び(4b)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~8の2価炭化水素基を示し、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。)
[4].
共重合体が、下記一般式(5)で示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体である、[2]に記載のエラストマー複合粒子。
【化3】
(一般式(5)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に下記一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、rはそれぞれ独立に1≦r≦100の数である。)
【化4】
(一般式(3a)、(3b)及び(3c)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~8の2価炭化水素基を示し、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。)
[5].
下記工程i)~iii)を有するエラストマー球状粒子の製造方法。
i)
下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を撹拌・懸濁し、懸濁組成物を調製する工程
(A)重合性基を有し、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体
(B)前記(A)成分が不溶もしくは難溶である水相成分、又は油相成分
(C)懸濁剤
(D)重合開始剤
ii)
前記工程i)により得られた懸濁組成物中の(A)成分を、ラジカル重合することでエラストマー球状粒子の分散液を得る工程
iii)
前記工程ii)により得られたエラストマー球状粒子の分散液から、連続相である(B)を洗浄・乾燥除去することで、エラストマー球状粒子を得る工程
[6].
下記工程iv)を有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載のエラストマー複合粒子の製造方法。
iv)
下記(E)、(F)、(G)及び(H)成分を含む液相に、下記(I)成分を添加し、(I)成分を加水分解・重合反応する工程
(E)体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体に由来する構成単位を含む架橋粒子である、[5]に記載の方法により製造されたエラストマー球状粒子
(F)アルカリ性物質
(G)カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上
(H)水
(I)トリアルコキシシラン、又はテトラアルコキシシラン
【発明の効果】
【0018】
本発明のエラストマー複合粒子は、粒子中に分解性を有する単位骨格のポリエステル構造を有しており、水分存在下において粒子の架橋構造が切断されるため、分解性を有する。特に、粒子中のポリエステル構造として、微生物認識骨格であるポリ-ε-カプロラクトン構造を有する粒子は、エラストマー球状粒子やエラストマー複合粒子の環境分解性、生分解性が期待できる。
従って、本発明のエラストマー複合粒子は、(生)分解性を有する粒子であり、環境負荷低減材料としての利用が期待できる。
また、本発明のエラストマー複合粒子は、凝集性が低く分散性の高い粒子であるため、各種樹脂配合時の応力緩和効果が高まることが期待される。さらに化粧品用途においては、本発明のエラストマー複合粒子を配合することで、柔らかな感触、なめらかさ等の使用感、及び伸展性の付与効果が高くなることが期待される。
本発明のエラストマー複合粒子は表面に付着させるシリカ微粒子の被覆(付着)量の調整により親水性粒子とすることも可能であり、水性の化粧料に乳化剤等の分散剤を使用することなく配合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】製造例1で得られたエラストマー球状粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図2】製造例3で得られたエラストマー球状粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例3で得られたエラストマー複合粒子(シリカ被覆エラストマー球状粒子)の電子顕微鏡写真(倍率x1,000)である。
【
図4】実施例3で得られたエラストマー複合粒子(シリカ被覆エラストマー球状粒子)の電子顕微鏡写真(倍率x7,500)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
[エラストマー複合粒子]
本発明のエラストマー複合粒子は、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子の表面に、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを有するものであり、好ましくは、エラストマー球状粒子の粒子表面に、球状微粒子のポリオルガノシルセスキオキサン又は球状微粒子のシリカが付着したものである。
【0022】
本発明のエラストマー複合粒子の形状は、球状であることが好ましい。
本発明における「球状」とは、粒子形状が真球のみを指すものではなく、アスペクト比(最長軸の長さ/最短軸の長さ)の値が平均して、通常1~4、好ましくは1~2、より好ましくは1.0~1.6、さらに好ましくは1.0~1.4の範囲にある、変形した楕円体も含む。後述する製造方法に示す通り、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体を、懸濁剤を用いて懸濁分散させて架橋する方法の場合、得られる粒子の形状は球状となる。エラストマー複合粒子の形状は、例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察することで確認でき、そのアスペクト比は、顕微鏡写真から任意に50個の粒子の最長軸及び最短軸の長さをそれぞれ計測し、平均値として算出した値である。
【0023】
本発明において、エラストマー複合粒子の体積平均粒径は0.5~200μmの範囲であり、より好ましくは1.0~50μmの範囲である。体積平均粒径が上記上限値よりも大きい場合、粒子としてのさらさら感、なめらかさ等が低下し、ざらつき感が出る場合があり、光拡散性は低下する。また、体積平均粒径が上記下限値よりも小さい場合、粒子の流動性が低下し、凝集性が高くなるため、なめらかさや光拡散性を十分に付与することができなくなり、好ましくない。
本発明のエラストマー複合粒子の体積平均粒径は、下記より測定した値を示すものである。体積平均粒径の測定に先立ち、エラストマー複合粒子の顕微鏡写真から任意に50個の粒子の粒径を測定し、その平均値が1μm以上か未満かで判定する。各種界面活性剤を用い、エラストマー複合粒子を水に再分散させた分散液を調製し、先の判定結果が1μm以上の場合、体積平均粒径は電気抵抗法で測定された値で示し、判定結果が1μm未満の場合、体積平均粒径はレーザー回折/散乱法で測定された値で示すものとする。
【0024】
エラストマー複合粒子の成分であるゴム(エラストマー)は、タックやべたつきが生じていないことが好ましい。エラストマー複合粒子の成分であるゴム(エラストマー)のゴム硬度が、JIS K6253に規定されているタイプAデュロメータによる測定において、5~90の範囲にあることが好ましく、より好ましくは10~80の範囲である。また、日本ゴム協会基準規格(SRIS)に規定されているアスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度の測定において、エラストマー複合粒子の成分であるゴム(エラストマー)のゴム硬度が5~90の範囲にあることが好ましく、より好ましくは20~85の範囲、さらに好ましくは40~85の範囲である。
各測定によるゴム硬度の値が5よりも小さい場合、粒子の凝集性が高くなり、分散性が低下するおそれがある。また、90よりも大きい場合、柔らかな感触が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0025】
-ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体の架橋粒子であるエラストマー球状粒子
本発明のエラストマー複合粒子中のエラストマー球状粒子は、さらには、一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有する、ポリエステル-ポリエーテル共重合体の重合体からなる粒子、すなわち、一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有する、ポリエステル-ポリエーテル共重合体の架橋粒子であることが好ましい。
なお、本発明のエラストマー複合粒子中のエラストマー球状粒子のアスペクト比についても、前記と同様の方法で定義され、エラストマー球状粒子のアスペクト比(最長軸の長さ/最短軸の長さ)の値は平均して、通常1~4、好ましくは1~2、より好ましくは1.0~1.6、さらに好ましくは1.0~1.4の範囲である。
また、本発明のエラストマー複合粒子中のエラストマー球状粒子の体積平均粒径についても、前記と同様の方法で定義され、エラストマー球状粒子の体積平均粒径は0.5~200μmの範囲であり、より好ましくは1.0~50μmの範囲である。
【0026】
一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体は、下記一般式(1)または(2)で示される共重合体が好ましい。
【化5】
(一般式(1)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に下記一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、kはそれぞれ独立に1≦k≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、nはそれぞれ独立に1≦n≦100の数である。
一般式(2)中、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
4はそれぞれ独立に下記一般式(4a)又は(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、pはそれぞれ独立に1≦p≦10の数であり、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、qはそれぞれ独立に1≦q≦100の数である。)
【化6】
(一般式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)及び(4b)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数1~8の2価炭化水素基を示し、R
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を示す。)
【0027】
R1としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基である。
【0028】
R3としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基である。
【0029】
R2は、一般式(3a)、(3b)、又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、R4は一般式(4a)又は(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示す。
一般式(3b)、(3c)、(4a)、及び(4b)中、R5としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基である。
一般式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)、及び(4b)中、R6としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
これら一般式(3a)、(3b)、(3c)、(4a)、及び(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基は、重合性モノマーから誘導される残基であり、重合性モノマーとしては具体的には、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩化物等が挙げられる。
【0030】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸の炭素数2~8のヒドロキシアルキルエステル、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等のカルボキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリル酸エステル、イソシアネートプロピル(メタ)アクリル酸エステル、イソシアネートブチル(メタ)アクリル酸エステル、イソシアネートヘキシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸塩化物としては、例えば、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル、臭化メタクリロイル等が挙げられる。
【0031】
一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体のポリエステル構造(単位)は、分解能がある、あるいは高いとされる脂肪族ポリエステルが好ましい。
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリ-β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等が挙げられ、特に分解性および取扱い時の簡便性の観点から、ポリ-ε-カプロラクトン構造であるものが好ましい。
【0032】
一般式(1)中のkはそれぞれ独立に、1≦k≦10の数であり、好ましくは1≦k≦6の数である。
一般式(2)中のpはそれぞれ独立に、1≦p≦10の数であり、好ましくは1≦p≦6の数である。
【0033】
一般式(1)中のnは、それぞれ独立に1≦n≦100の数であり、好ましくは1≦n≦50の数であり、さらに好ましくは2≦n≦20の数である。
一般式(2)中のqは、それぞれ独立に1≦q≦100の数であり、好ましくは1≦q≦50の数であり、さらに好ましくは2≦q≦20の数である。
n及びqの値が上記上限値よりも大きい場合、エステル構造(単位)による重合体の分子内/分子間相互作用により結晶性が高くなるため、共重合体としての流動性が低過ぎると、後述する懸濁組成物の調製工程において取扱い性に影響するおそれがある。
【0034】
一般式(1)、(2)中のlは、1≦l≦1,000の数であり、好ましくは2≦l≦100の数である。
一般式(1)、(2)中のmは、1≦m≦1,000の数であり、好ましくは10≦m≦500の数である。
lの値が上記上限値よりも大きい場合、エチレンオキシド構造(単位)による重合体の分子内/分子間相互作用により結晶性が高くなるため、共重合体としての流動性が低下するおそれがある。この場合、上記同様、後述する懸濁組成物の調製工程において取り扱い性に影響するおそれがあり、好ましくない。
【0035】
一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体は、原料の取扱いおよび製造の簡便性などの観点から、下記一般式(5)又は(6)で示される共重合体がより好ましい。
【化7】
(一般式(5)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
2はそれぞれ独立に一般式(3a)、(3b)又は(3c)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、rはそれぞれ独立に1≦r≦100の数である。)
(一般式(6)中、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10の2価炭化水素基を示し、R
4はそれぞれ独立に一般式(4a)又は(4b)で示されるラジカル重合性官能基含有有機基を示し、lは1≦l≦1,000の数であり、mは1≦m≦1,000の数であり、sはそれぞれ独立に1≦s≦100の数である。)
【0036】
ポリエステル-ポリエーテル共重合体の製造方法
本発明のエラストマー複合粒子を構成するポリエステル-ポリエーテル共重合体の製造方法としては、例えば、水酸基を有するポリエーテル、カルボキシ変性ポリエーテル、及びアミノ変性ポリエーテル等の活性水素を含有する各種ポリエーテルを出発物質とし、環状-ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトンなどを開環重合させることで、ポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテル、ポリ-γ-ブチロラクトン変性ポリエーテルを得たのち、ラジカル重合可能な不飽和基を有する重合性モノマーを、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、アミド結合等を介して導入する製造方法が挙げられる。
なお、製造時における反応性の観点から、各種ポリエーテルの末端構造は、反応性官能基が第一級炭素原子に結合した構造であることが好ましい。
【0037】
上記の製造方法において、反応条件としては、例えば下記が挙げられるが、この反応条件に限定されるものではない。
ポリエーテル又はカルボキシ変性ポリエーテル等の活性水素を含有するポリエーテル1.0当量に、環状-ε-カプロラクトンを、例えば3.0~4.0当量(官能基当量比)加え、従来公知の開環重合触媒の存在下で120℃、4~6時間反応させることにより、ポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテルが得られる。
次に、得られたポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテルの水酸基1.0モルに、アクリル酸クロライド等の(メタ)アクリル酸塩化物又はイソシアネートエチル(メタ)アクリル酸エステル等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステルを、例えば1.0~1.25モル(官能基当量比)加え、必要に応じて反応触媒を添加し、40~100℃下で4時間以上反応させる。
反応後、粗生成物にアルコールなどを用いてクエンチした後、ろ過、水洗、及び/又は吸着処理にて副生成物を除去し、最後に溶媒留去することで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトンポリエーテル(ポリエステル-ポリエーテル共重合体)を得ることができる。
【0038】
水酸基を有するポリエーテルを出発物質とした場合、ポリエステル-ポリエーテル共重合体としては、例えば、式(7a)及び(7b)(対称構造のため、片側構造のみを記載)に示したものが挙げられる。
【化8】
【0039】
式(7a)および(7b)中、R5は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
l、mおよびrは、1≦l≦1,000、1≦m≦1,000、1≦r≦30、好ましくは、2≦l≦100、10≦m≦500、2≦r≦10である。
【0040】
カルボキシ変性ポリエーテルを出発物質とした場合、ポリエステル-ポリエーテル共重合体としては、例えば、式(8a)及び(8b)(対称構造のため、片末端を記載)に示したものが挙げられる。
【化9】
【0041】
式(8a)および(8b)中、R5は炭素数1~8の2価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
また、l、m、sおよびtは、1≦l≦1,000、1≦m≦1,000、1≦s≦30、0≦t≦10、好ましくは、2≦l≦100、10≦m≦500、2≦s≦10、1≦t≦10である。
【0042】
環状-ε-カプロラクトンを開環重合させる際に用いる触媒としては、従来公知のものを使用すればよく、これに限定されるものではない。
具体的には、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン等の有機チタン系化合物;ジ-n-ブチルスズラウレート、ジイソブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセテート等の有機錫化合物;マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの酢酸塩;酸化アンチモン;ハロゲン化第一スズ;過塩素酸等が挙げられる。
【0043】
上記開環重合触媒の添加量としては、ε-カプロラクトンモノマー(環状-ε-カプロラクトン)に対し、1~10,000ppmの範囲であればよく、好ましくは10~1,000ppmである。
【0044】
ポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテルにラジカル重合可能な不飽和基を有する重合性モノマーを導入する方法としては、重合性モノマーの反応基質(反応性官能基)、及び形成骨格に応じた各種触媒を用いてもよく、触媒としては従来公知のものを使用すればよい。
【0045】
重合性モノマーとポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテルとの反応がエステル化反応である場合のエステル化反応に用いる(エステル化)触媒としては、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、及び亜鉛のアルコラート、カルボキシラート、又はキレート化合物並びに三フッ化ホウ素及び三フッ化ホウ素エーテラート等のルイス酸触媒;塩酸、硫酸、臭化水素、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の酸触媒;ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリメチルトリアザシクロノナン(TACN)、トリエチルアミン(TEA)、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等のアミン系触媒等が挙げられるが、なかでもエステル化反応により得られる生成物の安定性や、経済的な観点から、アミン系触媒が好ましい。
【0046】
なお、アミン系触媒を用いる場合、反応効率を向上させるため、脱水縮合剤を添加してもよい。脱水縮合剤としては従来公知のものが使用でき、例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
重合性モノマーとポリ-ε-カプロラクトン変性ポリエーテルとの反応がウレタン化反応である場合のウレタン化反応に用いる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、ピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)等のアミン類;ジ-n-ブチルスズラウレート、ジイソブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウリン酸エステル(DBTL)、ジオクチルスズジネオデカノエートなどの有機スズ化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(オクチルオキシ)チタン、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ドデシルベンセンスルホン酸チタン化合物、リン酸エステルチタン錯体、チタントリエタノールアミネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタン化合物;n-プロピルジルコネート、n-ブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、オクチル酸ジルコニウム化合物等の有機ジルコニウム化合物;トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)などの有機鉄化合物などが挙げられる。
【0048】
これらラジカル重合可能な不飽和基を有する重合性モノマーを導入する際の触媒添加量としては、重合性モノマーに対し、1~10,000ppmの範囲であればよく、好ましくは10~1,000ppmがよい。
【0049】
上記反応時において、反応中の(メタ)アクリレート基の重合反応を抑制する目的として、重合禁止剤や酸化防止剤を使用することができる。
重合禁止剤又は酸化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、p-ベンゾキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、2,5-ジヒドロキシ-p-ベンゾキノン、メキノールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
ポリエステル-ポリエーテル共重合体の製造方法として、カルボキシ変性ポリエーテルを出発物質とした場合、下記式(9)に示されるポリ-ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリレートとエステル化反応する方法も挙げられる。
ポリ-ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、プラクセルFA2D、プラクセルFA10L、プラクセルFN2D、プラクセルFM4((株)ダイセル製)などが挙げられる。
【化10】
一般式(9)中、R
7は、水素原子又は炭素数1~3の1価炭化水素基であり、好ましくは、水素原子又はメチル基である。vは、1≦v≦50であり、好ましくは、1≦v≦30である。
【0051】
上記ポリエステル-ポリエーテル共重合体の製造方法としては、例えば下記が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。
カルボキシ変性ポリエーテルのカルボキシ基1.0モルに対し、ポリ-ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリレート(式(9))を1.0~1.25モル(官能基当量比)、さらにエステル化触媒を0.1~5.0モル添加・混合し、15~150℃下において10~30分間撹拌する。そこに、脱水縮合剤を任意で1.0~1.25モル添加し、15~150℃で4~20時間反応させる。
反応後、粗生成物をろ過、水洗、及び/又は吸着処理にて副生成物を除去し、最後に溶媒留去することで、アクリル変性ポリエステル(ポリ-ε-カプロラクトン)-ポリエーテル共重合体を得ることができる。
【0052】
得られた一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体は、液状であることが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した重量平均分子量(Mw.)の値が、100~100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500~50,000である。
重量平均分子量が上記下限値より小さい場合、得られたエラストマー球状/複合粒子におけるエラストマーの架橋密度が高く、分解性が悪くなるおそれがあるため好ましくなく、上記上限値よりも大きい場合、共重合体の粘度が高く、エラストマー球状粒子の調製が困難になる場合がある。
【0053】
ろ過工程においては、反応粗生成物の粘度調整を目的として、疎水性有機溶媒を用いて希釈操作を行ってもよい。
使用する疎水性有機溶媒としては特に限定されないが、ポリエステル-ポリエーテル共重合体への溶解性や親和性の観点から、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、などが好ましい。
【0054】
吸着処理工程は、水洗にて除去しきれない塩酸塩の除去や、脱水、脱色、脱臭を目的として行うものである。
使用する吸着材としては、従来公知のものであればよく、複数種を組み合わせて使用してもよい。吸着材として好ましくは、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等の乾燥剤、活性炭、シリカゲル、キョーワードシリーズ(協和化学工業(株)製)などが挙げられる。
上記方法で製造されたポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体を用いて、例えば、後記の工程i)~iii)を有する方法によりエラストマー球状粒子を製造することができる。
【0055】
-ポリオルガノシルセスキオキサン
本発明において、エラストマー球状粒子の表面に有するポリオルガノシルセスキオキサンは、R7SiO3/2で示される単位が三次元網目状に架橋したレジン状固形物である。
【0056】
上記式中のR7は、非置換もしくは置換の炭素数1~20の1価炭化水素基である。R7としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子、及び/又はアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
後述する本発明の製造方法により、エラストマー球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させるためには、上記R7の50モル%以上がメチル基、ビニル基、又はフェニル基であることが好ましく、R7の80モル%以上がメチル基、ビニル基、又はフェニル基であることがより好ましく、R7の90モル%以上がメチル基、ビニル基、又はフェニル基であることがさらに好ましい。
【0057】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、得られるエラストマー複合粒子の非凝集性、分散性などの特性、さらさら感、なめらかさ等の使用感、又は柔らかい感触を損なわない範囲で、R7SiO3/2単位のほかに、R7
2SiO2/2単位、R7
3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。
このようなポリオルガノシルセスキオキサンにおいて、R7SiO3/2単位の含有率は、全シロキサン単位中、好ましくは70~100モル%、より好ましくは80~100モル%である。
【0058】
-シリカ
本発明において、エラストマー球状粒子の表面に有するシリカは、R8SiO4/2で示される単位が三次元網目状に架橋した無機固形物である。
【0059】
上記式中のR8は、非置換もしくは置換の炭素数1~6の1価炭化水素基である。R8としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。
【0060】
シリカは、テトラアルコキシシランの加水分解・重縮合反応によって得られ、主にSiO2単位で構成される。
また、シリカは、SiO2単位からなる構造のみではなく、原料であるテトラアルコキシシランに由来するアルコキシ基、縮合反応していないシラノール基を含有していてもよい。
【0061】
本発明において、ポリオルガノシルセスキオキサン、又はシリカの形状は、球状であることが好ましい。
このポリオルガノシルセスキオキサン及びシリカの粒径は、それぞれ好ましくは10~500nmであり、より好ましくは20~200nmである。
ポリオルガノシルセスキオキサン及びシリカの粒径が10nmより小さい場合、得られるエラストマー複合粒子の光散乱性が低下するおそれがある。また、ポリオルガノシルセスキオキサン及びシリカの粒径が500nmより大きい場合、得られるエラストマー複合粒子は柔らかな感触が乏しくなり、また光散乱性が低下するおそれがある。
ポリオルガノシロキサン又はシリカは、エラストマー球状粒子の粒子表面の一部に付着していてもよく、粒子表面全体に渡って付着、すなわち粒子表面全部を被覆していてもよいが、エラストマー球状粒子の表面全体にわたり、およそ隙間なく被覆されていることが好ましい。
なお、ポリオルガノシルセスキオキサン及びシリカの粒径、形状及びエラストマー球状粒子表面での付着密度は、得られたエラストマー複合粒子の粒子表面を電子顕微鏡にて観察することにより、確認できる。ポリオルガノシルセスキオキサン及びシリカの粒径とは、それぞれ得られたエラストマー複合粒子の粒子表面の電子顕微鏡写真から、任意に50個の粒子の粒径を測定し、平均値として算出した値である。
【0062】
本発明のエラストマー複合粒子において、エラストマー球状粒子表面に付着するポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカの量は、エラストマー球状粒子100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカがそれぞれ0.5~200質量部となる量が好ましく、より好ましくは1.0~50質量部となる量である。
ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカの量が上記下限値未満の場合、凝集性が高く、分散性が悪くなり、光散乱性の低下やさらさら感が乏しくなるおそれがある。また、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカの量が上記上限値超の場合、エラストマー複合粒子の柔らかな感触が乏しくなるおそれがある。
【0063】
[エラストマー球状粒子・エラストマー複合粒子の製造方法]
本発明のエラストマー球状粒子の製造方法は、下記工程i)~iii)を有する。
i)
下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を撹拌・懸濁し、懸濁組成物を調製する工程
(A)重合性基を有し、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体
(B)前記(A)成分に不溶もしくは難溶である水相成分、又は油相成分
(C)懸濁剤
(D)重合開始剤
ii)
前記工程i)により得られた懸濁組成物中の(A)成分を、ラジカル重合することでエラストマー球状粒子の分散液を得る工程
iii)
前記工程ii)により得られたエラストマー球状粒子の分散液から、連続相である(B)を洗浄・乾燥除去することで、エラストマー球状粒子を得る工程
【0064】
本発明のエラストマー複合粒子は、例えば、下記工程iv)を有する方法により製造することができる。
iv)
下記(E)、(F)、(G)及び(H)成分を含む液相に、下記(I)成分を添加し、(I)成分を加水分解・重合反応する工程
(E)体積平均粒径が0.5~200μmであり、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体架橋粒子である、前記工程i)~ii)又はi)~iii)工程により製造されたエラストマー球状粒子
(F)アルカリ性物質
(G)カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上
(H)水
(I)トリアルコキシシラン、又はテトラアルコキシシラン
すなわち、本発明のエラストマー複合粒子の製造方法は、エラストマー球状粒子の製造工程i)~iii)及びエラストマー球状粒子を複合化する工程iv)の2段階に大別できる。以下各工程について説明する。
工程iv)で得られたエラストマー複合粒子の水分散液は、用途に応じてそのまま水分散液として使用してもよく、さらに水分を除去する脱水工程・粉末化工程をおこなってエラストマー複合粒子粉末としても所望の用途に用いてもよい。
【0065】
-エラストマー球状粒子の製造工程
本発明のエラストマー複合粒子を構成するエラストマー球状粒子は、上記ポリエステル-ポリエーテル共重合体のラジカル重合反応により得られる重合体(架橋粒子)であり、下記工程i)~iii)を有する製造方法により製造されるものである。
【0066】
工程i)
工程i)では、下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を撹拌・懸濁し、懸濁組成物を調製する。
工程i)にて使用する各成分は、以下の通りである。
【0067】
(A)成分は、重合性基を有し、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体であり、好ましくはラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体である。
本発明のエラストマー複合粒子の構成単位は、ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体に由来するものであり、好ましくは、前記一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体を用いることができる。
(A)成分の具体例としては、例えば、前記一般式(1)又は(2)にて示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体が挙げられ、より好ましくは、前記一般式(5)又は(6)で示されるポリエステル-ポリエーテル共重合体が挙げられる。
【0068】
工程i)で調製する懸濁組成物中の(A)成分の含有量は、組成物100質量部に対して1.0~80質量部が好ましい。(A)成分の量が上記下限値より少ない場合、生産効率が低下するおそれがあり、上記上限値より多い場合、懸濁不良となり、エラストマー球状粒子の分散液を得ることが困難となる場合があるため、好ましくない。
【0069】
(B)成分は、懸濁組成物中において連続相となる成分であり、(A)成分が不溶もしくは難溶である水相成分、又は油相成分である。
【0070】
(B)成分が水相成分である場合、水相成分に含まれる水は、具体的には、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水などが挙げられる。
【0071】
水相成分において、連続相としての機能を損なわない範囲において、任意に添加剤を配合してもよい。具体的には、例えば、防腐剤、塩類、pH調整剤、キレート剤、ビタミン類、アミノ酸類、保湿剤、酸化防止剤などが挙げられるが、これに限定されるものではない。(A)成分が不溶もしくは難溶である組成とするため、水相成分のうち水の含有量は、好ましくは90~100質量%である。
【0072】
(B)成分が油相成分である場合、油相成分としては、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、液体油脂等が挙げられ、これらは1種単独、又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0073】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、などが挙げられる。
【0074】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、オゾケライト、スクワレン、セレシン、パラフィン、イソパラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレンワックス、プリスタン、ポリイソブチレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、などが挙げられる。
【0075】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、などが挙げられる。
【0076】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、などが挙げられる。
【0077】
液状油脂としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、などが挙げられる。
【0078】
(B)成分は、25℃における動粘度が100,000mm2/s以下が好ましく、より好ましくは10,000mm2/s以下である。動粘度が上記上限値よりも大きい場合、工程i)にて懸濁が困難となり、粒度分布の狭い懸濁組成物、及びエラストマー球状粒子を得ることが難しくなる場合がある。
【0079】
(C)成分の懸濁剤は、例えば、従来公知の天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物などの水溶性高分子化合物又は増粘剤として使用される高分子化合物が挙げられる。なお、これらは1種単独、又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0080】
天然高分子化合物としては、例えば、キサンタンガム、セルロース、タマリンドガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、HMペクチン、カラギーナン、グアーガム、アマシードガム、アラビアガム、プルラン、アガロース、アガロペクチン、アルギン酸、カラヤガム、スクシノグリカン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。
【0081】
半合成高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化キサンタンガム、LMペクチン(酸処理/アルカリ処理)、カチオン化グアーガム、アルギン酸塩、可溶性デンプン、セルロースナノファイバーなどが挙げられる。
【0082】
合成高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンーポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0083】
(C)成分としては、少量で上記(A)成分を懸濁することができ、微細なエラストマー球状粒子を得ることができる点から、キサンタンガム、タマリンドガム、ガラギーナン、グアーガム、アラビアガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化キサンタンガム、カチオン化グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0084】
(C)成分の添加量は、懸濁組成物100質量部に対して0.01~25質量部が好ましく、0.05~15質量部がより好ましい。この添加量が上記下限値より少ない場合、乳化不良や微細なエラストマー球状粒子が得られない場合があり、好ましくない。また、添加量が上記上限値より多い場合、組成物の大幅な粘度増加により、微細なエラストマー球状粒子が得られず、粒子の分散性が十分でないなどの場合があり、好ましくない。
【0085】
(D)成分の重合開始剤としては、従来公知のラジカル重合開始剤を用いればよい。重合開始剤の存在下で加熱、光照射、UV照射などの外部刺激を与えラジカルを発生させることにより、反応・硬化(架橋)できる。
【0086】
(D)重合開始剤は、具体的には、過酸化物、アゾ系開始剤、光開始剤、又は酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤などを使用することができる。
【0087】
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、過酸化水素などが挙げられる。
また、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウムなどの過塩素酸塩を用いてもよい。
【0088】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス-(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’-アゾビス-イソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,2-アゾビス-(2-アミノジプロパン)二塩酸塩、などが挙げられる。
【0089】
光開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキサイド、などが挙げられる。
また、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、などのベンゾインアルキルエーテル類も使用できる。
【0090】
レドックス系開始剤としては、例えば、硫酸第一鉄/ピロリン酸ナトリウム/ブドウ糖/ハイドロパーオキサイドを組み合わせたものや、硫酸第一鉄/エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩/ロンガリット/ハイドロパーオキサイドを組み合わせたもの、などが挙げられる。
また、このレドックス系開始剤は、アゾ系開始剤や光開始剤と併用してもよい。
【0091】
重合開始剤としては、懸濁組成物の(ラジカル)重合反応時における安定性、取り扱いの簡便性などの点から、加熱法、又は光照射法にて用いる、過酸化物、アゾ系開始剤、及び光開始剤が好ましい。
【0092】
重合開始剤の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.01~5.0質量部の範囲で配合されるのが好ましい。
重合開始剤の添加量が上記下限値より少ない場合、硬化(架橋)不良となるおそれがあり、上記上限値より多い場合、反応残渣等の混入(コンタミネーション)により、匂いやブリード等が生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0093】
その他の添加剤
本発明のエラストマー複合粒子の製造方法において、工程i)の懸濁組成物を調製する際、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分以外にも、必要に応じて各種・種々の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、重合禁止剤、などが挙げられ、各々1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせ、本発明の効果を損なわない範囲で適量用いることができる。
【0094】
工程i)における各成分を添加、混合する順番は特に限定されないが、例えば、(A)成分と(D)成分を事前に混合してから(B)成分及び(C)成分を加え、懸濁組成物を調製してもよいし、(A)成分、(B)成分、(C)成分にて懸濁組成物を調製したのち、(D)成分を添加してもよい。
また、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分から懸濁組成物を調製した後、工程ii)に付す前に所望の濃度となるよう(B)成分を更に添加し、希釈してもよい。
【0095】
また、(A)成分のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体が曇点を有する(加温により、ある温度を境に(A)成分の溶解度が急速に低下し、相分離する)など温度依存性がある場合、工程i)の懸濁組成物の調製は、(A)成分の温度特性に応じた温度で、例えば、加温・加熱下で撹拌・懸濁を行ってよい。
加温・加熱時の温度条件としては、例えば、100℃以下、好ましくは30~90℃、さらに好ましくは40~70℃の範囲である。連続相が水相成分の場合、加温・加熱時の温度が上記上限値より高いと、水分の蒸発や突沸のおそれがあるため、好ましくない。
【0096】
工程i)の懸濁組成物を調製においては、従来公知の乳化分散機を用いればよい。一般的な乳化分散機としては、例えば、ホモミキサー等の高速回転せん断型撹拌機、ホモディスパー等の高速遠心放射型撹拌機、ホモミキサーとホモディスパーを組み合わせたコンビミックス乳化撹拌機、ホモミキサー又はホモディスパーとアンカーミキサーを組み合わせた混合・乳化撹拌機(アヂホモミキサー)、ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機、コロイドミル、超音波乳化機、プロペラ撹拌機、などが挙げられる。
【0097】
工程ii)
工程ii)は、工程i)にて調製した懸濁組成物中の(A)成分を、(ラジカル)重合により反応・硬化(架橋)させることで、エラストマー球状粒子の分散液を得る工程である。
【0098】
工程ii)において、重合反応の条件は、(D)重合開始剤の種類により適宜決定できる。
例えば、過酸化物、又はアゾ系開始剤を使用する場合、30~80℃の温度下で10~24時間反応させる加熱法が挙げられ、レドックス系開始剤を使用する場合、30~70℃の温度下で2~24時間反応させるレドックス法が挙げられる。光開始剤を使用する場合、光照射下で反応させる光照射法が挙げられ、光又はUV照射時に使用する光源、及び波長範囲については、従来公知のものを使用すればよい。
【0099】
工程iii)
工程iii)は、工程ii)にて得られたエラストマー球状粒子の分散液から、連続相である(B)成分を洗浄・乾燥除去することにより、エラストマー球状粒子を得る工程である。
【0100】
(B)成分の連続相(分散媒)が水相成分である場合、工程iii)の具体的な方法としては、例えば、加熱脱水、(加圧)ろ過、遠心分離、デカンテーション、などの方法により分散液を濃縮したのち、必要に応じて純水等を添加して水洗操作を行う。最後に、常圧ないし減圧下で加熱乾燥する方法、加熱気流中に分散液を噴霧し、加熱乾燥する方法(スプレードライ)、流動熱媒体を使用して加熱乾燥する方法、又は分散液を凝固させてから減圧し、分散媒を除去する凍結乾燥法、などが挙げられ、これによりエラストマー球状粒子が得られる。なお、分散媒を洗浄・乾燥除去して得られたエラストマー球状粒子が凝集している場合、乳鉢やボールミル、ジェットミル等で解砕してもよい。
【0101】
(B)成分の連続相(分散媒)が油相成分である場合、工程iii)の具体的な方法としては、例えば、エラストマー球状粒子の分散液に疎水性有機溶剤を添加し、一定時間撹拌を行ったのちに加圧ろ過を行うことで、(B)成分の洗浄・除去、及び溶剤置換を行う。この洗浄操作を複数回繰り返すことで、(B)成分の十分な除去、ならびに溶剤置換を行うことができる。この際、使用する疎水性有機溶剤としては、トルエン、ヘキサンなどが挙げられる。最後に、常圧ないし減圧下で加熱乾燥する方法、加熱気流中に分散液を噴霧し、加熱乾燥する方法(スプレードライ)、流動熱媒体を使用して加熱乾燥する方法、又は分散液を凝固させてから減圧し、分散媒を除去する凍結乾燥法などを施すことで、エラストマー球状粒子が得られる。
上記工程i)~iii)を有する方法により製造されるエラストマー球状粒子は、体積平均粒径が0.5~200μmの範囲であり、より好ましくは1.0~50μmの範囲の微細な粒子となる。したがって、本発明のエラストマー球状粒子の製造方法により得られるエラストマー球状粒子は、本発明のエラストマー複合粒子の製造に特に好適に用いることができる。
【0102】
-エラストマー複合粒子(レジン又はシリカ被覆エラストマー球状粒子)の製造工程
工程iv)
工程iv)は下記(E)、(F)、(G)及び(H)成分を含む液相に、下記(I)成分を添加し、(I)成分を加水分解・重合反応する工程である。
【0103】
(E)成分のエラストマー球状粒子は、上記記載の工程i)~ii)又はi)~iii)で得られたエラストマー球状粒子を使用する。
また、工程i)で使用する(B)成分が水相成分の場合、上記工程iii)を経ず、工程i)及びii)によりエラストマー球状粒子の水分散液を、(E)成分及び(H)成分の混合物として、本工程iv)に供してもよい。
【0104】
(E)エラストマー球状粒子の量は、(E)~(H)を含む液相中の(H)水100質量部に対し1.0~150質量部が好ましく、3.0~70質量部の範囲がより好ましい。(E)成分の量が上記下限値未満の場合、目的とするエラストマー複合粒子の生産効率が低下するおそれがあり、また上記上限値より多い場合、エラストマー球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを被覆させることが困難となり、粒子の凝集や融着を生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0105】
(F)アルカリ性物質は、トリアルコキシシラン、又はテトラアルコキシシランの加水分解・重縮合反応の触媒として作用するものである。アルカリ性物質は、1種単独、又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0106】
アルカリ性物質は、特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどのアミン類等を使用することができる。なお、これらアルカリ性物質は、1種単独、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0107】
アルカリ性物質としては、揮発させることで得られるエラストマー複合粒子の粉体から容易に除去できる点から、アンモニアが最も好ましい。アンモニアとしては、市販されている各種濃度のアンモニア水溶液を用いればよい。
【0108】
(F)アルカリ性物質の添加量は、(E)~(H)成分を含む液相の25℃におけるpHが、9.0~13.0となる量が好ましく、10.0~12.0の範囲となる量がより好ましい。pHが9.0~13.0となる量を添加すると、トリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランの加水分解・重縮合反応の進行や、エラストマー球状粒子表面へのレジン又はシリカの被覆が十分なものとなる。
【0109】
(G)カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物は、加水分解したトリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランの縮合反応を促進し、レジン又はシリカを生成させる作用がある。また、生成したレジン又はシリカをエラストマー球状粒子の表面に吸着させる作用がある。カチオン性界面活性剤及びカチオン性水溶性高分子化合物は、1種単独、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0110】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、トリポリオキシエチレンアルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩、などが挙げられる。
【0111】
カチオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの重合体、ビニルイミダゾリンの重合体、メチルビニルイミダゾリウムクロライドの重合体、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、エピクロルヒドリン/ジメチルアミン重合体、エチレンイミンの重合体、エチレンイミンの重合体の4級化物、アリルアミン塩酸塩の重合体、ポリリジン、カチオンデンプン、カチオン化セルロース、キトサン、及びこれらに非イオン性基やアニオン性基を持つモノマーとの共重合物等、これらの誘導体などが挙げられる。
【0112】
(G)成分としては、カチオン性界面活性剤のアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、なかでもラウリルトリメチルアンモニウム塩、及びセチルトリメチルアンモニウム塩がより好ましい。
【0113】
カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物の添加量は、(E)~(H)を含む液相中の水100質量部に対し0.01~2.0質量部が好ましく、0.1~1.0質量部の範囲がより好ましい。(G)成分の添加量が上記下限値より少ない場合、エラストマー球状粒子の表面に被覆されないレジン又はシリカが生成するおそれがあり、添加量が上記上限値より多い場合もまた、エラストマー球状粒子の表面に被覆されないレジン又はシリカが生成するおそれがある。
【0114】
(H)水は、特には限定されず、例えば、精製水、イオン交換水、純水などを用いればよく、(B)成分が水相成分であり、上記工程iii)を経ず、工程ii)で得られたエラストマー球状粒子の水分散液を工程iv)に供する場合、該水分散液中の水、及び必要に応じて添加した水を含むものとする。
【0115】
(I)トリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシランは、特には限定されず、従来公知のものを用いればよく、反応性の点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランがより好ましい。テトラアルコキシシランは、アルコキシ基の一部、又は全部が加水分解したものを使用してもよく、一部が縮合したものを使用してもよい。
【0116】
トリアルコキシシランの添加量は、(E)エラストマー球状粒子100質量部に対して、ポリオルガノシルセスキオキサンの量が1.0~50質量部となる量が好ましく、より好ましくは2~25質量部である。
また、テトラアルコキシシランの添加量は、(E)エラストマー球状粒子100質量部に対して、シリカの量が0.5~200質量部となる量が好ましく、より好ましくは1.0~50質量部の範囲である。
【0117】
加水分解・重縮合反応
(E)~(H)を含む液相に、(I)トリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランを添加し、これらを加水分解・重縮合反応させる。
具体的には、(E)エラストマー球状粒子が(H)水に分散しており、(F)アルカリ性物質、(G)カチオン性界面活性剤、及びカチオン性水溶性高分子化合物から選ばれる1種以上、を溶解させた水分散液に、(I)トリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランを添加し、加水分解・重縮合させる。加水分解・重縮合により、トリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランの縮合物として、ポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカがエラストマー球状粒子の表面に付着し、それによりエラストマー球状粒子の表面がポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカで被覆されることになる。
【0118】
トリアルコキシシラン、及びテトラアルコキシシランの添加は、プロペラ翼、平板翼、などの通常の撹拌機を用いて撹拌下で行うことが好ましい。これらは一度に添加してもよいが、時間を掛けて添加することが好ましい。滴下時間としては、1分~6時間の範囲が好ましく、より好ましくは10分~3時間である。
【0119】
また、このときの液相の温度は、0~60℃とすることが好ましく、より好ましくは0~40℃の範囲である。温度が上記範囲内であれば、液相中のエラストマー球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサン又はシリカを上手く付着・被覆させることができる。
撹拌は、トリアルコキシシラン又はテトラアルコキシシランの添加後、これらの加水分解・重縮合反応が完結するまで継続する。加水分解・重縮合反応を完結させるため、反応は室温下で行っても、40~100℃程度の加温・加熱下で行ってもよく、また、アルカリ性物質を適宜追加してもよい。
【0120】
脱水工程・粉末化工程
工程iv)の加水分解・重縮合反応ののち、任意で得られた本発明のエラストマー複合粒子の水分散液から水分を除去する。水分の除去は、反応後の水分散液を、常圧又は減圧下で加熱することにより行うことができる。
具体的には、例えば、常圧ないし減圧下で加熱乾燥する方法、加熱気流中に分散液を噴霧し、加熱乾燥する方法(スプレードライ)、流動熱媒体を使用して加熱乾燥する方法、又は分散液を凝固させてから減圧し、分散媒を除去する凍結乾燥法などが挙げられ、これによりエラストマー複合粒子が得られる。
なお、この操作の前処理工程として、加熱脱水、ろ過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で分散液を濃縮してもよく、必要に応じて、水分散液を水やアルコールで洗浄してもよい。
【0121】
反応後の水分散液から水分を除去することで得られたエラストマー複合粒子の粉体が凝集している場合、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機で解砕すればよい。
【実施例0122】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記の例において、特に明記のない場合は、濃度及び含有率を示す「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を指す。また、動粘度は25℃において測定した値を示すものである。また、下記の例において、エラストマー球状粒子及びエラストマー複合粒子の体積平均粒径及びアスペクト比は前記した方法で測定した値を示すものである。
ゴム硬化物(エラストマー)の硬度は、日本ゴム協会基準規格(SRIS)の規格に準じて測定した値である。
【0123】
ポリエステル構造及びポリエーテル構造を有する共重合体(一分子中に少なくとも2個のラジカル重合可能な不飽和基を有するポリエステル-ポリエーテル共重合体)の分子量は、下記条件で測定したGPCによるポリスチレンを標準物質とした、重量平均分子量(Mw.)である。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.60mL/min.
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H、
TSKgel SuperHM-N、
TSKgel SuperH2500(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0124】
[生分解性の測定・評価方法]
生分解性は、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals, No.301F, July 17, 1992,“Ready Biodegradability: MANOMETRIC RESPIROMETRY TEST”に準じた、微生物(分解)源に活性汚泥を使用する方法により測定し、生分解度により評価した。活性汚泥は、都市下水処理場の活性汚泥を使用し、懸濁物質濃度は2,400mg/Lであった。基準(コントロール)物質には、安息香酸ナトリウムを用いた。
生分解度の測定方法としては、インキュベーター内閉鎖系での酸素消費量(生物化学的酸素消費量(BOD))を、BOD測定器を用いて測定し、下記式に基づいて生分解度を算出する。
生分解度(%)=BOD-B/TOD×100
BOD:試験懸濁液又は操作コントロールの生物化学的酸素消費量(測定値:mg)
B:植物源ブランクの平均生物化学的酸素消費量(測定値:mg)
TOD:被験物質又は安息香酸ナトリウムが完全に酸化された場合に必要とされる理論的酸素消費量(計算値:mg)
【0125】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体1の合成-合成例1]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた2Lのセパラブルフラスコに、末端一級化EO(エチレンオキシド)/PO(プロピレンオキシド)ポリエーテル(分子量:約2,000、OH基当量:0.09-0.10mol/100g)500g、ε-カプロラクトン(分子量:114.1)183.6g、及び脱水トルエン350gを仕込み、窒素フロー下で90℃に加熱した。目的温度に到達後、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン(分子量340.0)0.68gを添加し、120℃で4~6時間熟成した。
次に、上記操作により得られたポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を、室温付近まで冷却した後、トリエチルアミン(分子量101.2)60.7g、脱水トルエン100g、及び重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(分子量220.4)0.22gを加え、一定時間撹拌し均一溶解させてから、滴下ロートを用いてアクリル酸クロライド(分子量90.5)49.7gを滴下し、発熱を確認してから60℃で4時間熟成した。
得られた粗生成物を、加圧ろ過し、分液ロートを用いて塩化ナトリウム水溶液での水洗・洗浄操作、遠心分離などを行った後、硫酸マグネシウム、シリカゲル、活性炭等を添加し、振とうによる粉体処理を行うことで、不純物を吸着・除去した。加圧ろ過により上記の各種粉体を除いた後、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.22gを再添加してから、60~70℃、50mmHg以下の条件で溶媒留去することで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体1(下記式(11)、重量平均分子量:2,880)を得た。
【化11】
【0126】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体2の合成-合成例2]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた1Lのセパラブルフラスコに、合成例1と同じ末端一級化EO/POポリエーテル300g、ε-カプロラクトン110.2g、及び脱水トルエン200gを仕込み、窒素フロー下で90℃に加熱した。目的温度に到達後、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン0.41gを添加し、120℃で4~6時間熟成した。
次に、上記操作により得られたポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を室温付近まで冷却した後、脱水トルエン100g、触媒としてジオクチルスズジネオデカノエート(分子量:687.7)0.96g、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.12gを加え、一定時間撹拌し均一溶解させてから、滴下ロートを用いて2-イソシアナトエチルアクリラート(分子量:141.1)44.4gを滴下し、発熱を確認してから60℃で4時間熟成した。
得られた粗生成物を40℃以下まで冷却した後、エタノール0.8gを添加し、未反応(残存)イソシアネート基と反応させクエンチ処理を施した。次に、硫酸マグネシウム、シリカゲル、活性炭等を添加し、振とうによる粉体処理を行うことで、不純物を吸着・除去した。加圧ろ過により上記の各種粉体を除いたのち、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.12gを再添加してから、60~70℃、50mmHg以下の条件で溶媒留去することで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体2(下記式(12)、重量平均分子量:3,120)を得た。
【化12】
【0127】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体3の合成-合成例3]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた1Lのセパラブルフラスコに、末端一級化EO/POポリエーテル(分子量:約2,600、OH基当量:0.09~0.10mol/100g)300g、ε-カプロラクトン115.2g、及び脱水トルエン200gを仕込み、窒素フロー下で90℃に加熱した。目的温度に到達後、触媒にテトラ-n-ブトキシチタン0.42gを添加し、120℃で4~6時間熟成した。
次に、上記操作により得られたポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を室温付近まで冷却した後、脱水トルエン70g、触媒としてトリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)(別名:鉄(III)アセチルアセトナート、分子量:353.2)0.18g、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.13gを加え、一定時間撹拌し均一溶解させてから、滴下ロートを用いて2-イソシアナトエチルアクリラート46.4gを滴下し、発熱を確認してから60℃で4時間熟成した。
得られた粗生成物は、上記合成例2に記載の方法と同様に、後処理・精製工程を経ることで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体3を得た。アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体3は式(12)の構造を有し、式(12)において、l≒18~21、m≒34~38、r≒3~4で、重量平均分子量:4,870であった。
【0128】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体4の合成-合成例4]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた1Lのセパラブルフラスコに、合成例3と同じ末端一級化EO/POポリエーテル300g、ε-カプロラクトン115.2g、及び脱水トルエン200gを仕込み、窒素フロー下で90℃に加熱した。目的温度に到達後、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン0.42gを添加し、120℃で4~6時間熟成した。
次に、上記操作により得られたポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を、室温付近まで冷却した後、脱水トルエン70g、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトナート(分子量:487.7)2.77g、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.13gを加え、一定時間撹拌し均一溶解させてから、滴下ロートを用いて2-イソシアナトエチルアクリラート46.4gを滴下し、発熱を確認してから60℃で4時間熟成した。
得られた粗生成物は、上記合成例2に記載の方法と同様に、後処理・精製工程を経ることで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体4を得た。アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体4は式(12)の構造を有し、式(12)において、l≒18~21、m≒34~38、r≒3~4で、重量平均分子量:4,990であった。
【0129】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体5の合成-合成例5]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた1Lのセパラブルフラスコに、末端一級化EO/POポリエーテル(分子量:約3,200、OH基当量:0.062mol/100g)300g、ε-カプロラクトン106.3g、及び脱水トルエン200gを仕込み、窒素フロー下で90℃に加熱した。目的温度に到達後、触媒としてテトラ-n-ブトキシチタン0.41gを添加し、120℃で4~6時間熟成した。
次に、上記操作により得られたポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を室温付近まで冷却した後、脱水トルエン70g、触媒としてジオクチルスズジネオデカノエート1.01g、及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.13gを加え、一定時間撹拌し均一溶解させてから、滴下ロートを用いて2-イソシアナトエチルアクリラート28.4gを滴下し、発熱を確認してから60℃で4時間熟成した。
得られた粗生成物は、上記合成例2に記載の方法と同様に、後処理・精製工程を経ることで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体5(式(13)、重量平均分子量:7,940)を得た。
【化13】
【0130】
[アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/シリコーン共重合体の合成-合成例6]
撹拌装置、温度計、冷却管、及び滴下ロートを備えた1Lのセパラブルフラスコに、カルボキシ変性シリコーン(分子量:約1,200、COOH基当量:0.19mol/100g)300g、ポリ-ε-カプロラクトンモノアクリレート(OH基当量:0.29mol/100g、分子量:344.0)202.8g、脱水トルエン200g、及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(分子量:122.2)6.85gを仕込み、氷浴下で撹拌・混合させた。
十分に冷却されたところで、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(分子量:206.3)168.9gを脱水トルエン173.6gに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて添加し、室温下で20時間反応・熟成させた。熟成後、トルエン200g、0.5mol/L塩酸300gを加えて洗浄(DMAPを除去)し、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、10%塩化ナトリウム水溶液の順で水洗操作を施した。
上記操作を行った後、硫酸マグネシウム、シリカゲル、活性炭、キョーワード700(協和化学工業(株)製)を添加、振とうすることで、不純物を吸着・除去した。加圧ろ過により上記の各種粉体を除いたのち、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.09gを添加し、60~70℃、10mmHg以下の条件で溶媒留去することで、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/シリコーン共重合体(下記式(14)、重量平均分子量:2,130)を得た。
【化14】
【0131】
[エラストマー球状粒子の製造-製造例1]
1L容器のアヂホモミキサーに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH-4,000、信越化学工業(株)製)の2.6%水溶液250gを仕込み、ホモミキサー及びアンカーミキサーを運転させながら、55~60℃の加温下で撹拌・混合した。
同時に、前記記載の合成例4のアクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体4を100gと、ジメチル2,2’-アゾビス-(2-メチルプロピオネート)(分子量:230.3)1.0gをデスカップに仕込み、ディスパーミキサーで事前混合させ、60~65℃に予め加温した。
次いで、加温したヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液を仕込んである1Lのアヂホモミキサーに、事前混合していたアクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体を添加し、55~60℃の加温下、ホモミキサー回転数4,500rpmにて10分間以上撹拌し、懸濁させたところ、O/W型の懸濁組成物を得た。
その後、得られた懸濁組成物を、パドル型撹拌翼を用い回転数200rpmにて70℃で8時間撹拌・熟成し、純水50gを添加してから、更に同回転数にて80℃で6時間熟成させることで、エラストマー球状粒子の分散液を得た。
【0132】
得られた分散液中のエラストマー球状粒子の形状を光学顕微鏡にて観察したところ、球状であり、体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した結果、5μmであった。
【0133】
得られたエラストマー球状粒子の分散液を、メッシュろ過(#100)にて凝集物の有無を確認し、凝集物が認められた場合はこれを除去した後、加圧ろ過による固液分離により、連続相である純水を除去した。上記洗浄・分離操作を純水にて3回繰り返し、水分を除去した。なお、加圧ろ過工程にて固液分離が上手く行われなった場合、遠心分離を用いて実施してもよい。
最後に、上記得られたエラストマー球状粒子の濃縮物を、8時間以上の静置・乾燥することで、目的物のエラストマー球状粒子の白色~淡黄色粉末を得た。
【0134】
得られたエラストマー球状粒子の粉末を、電子顕微鏡(走査型顕微鏡S-4700、日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて観察した結果、粒径5μm程度の球状粒子であることが確認された。また、得られたエラストマー球状粒子のアスペクト比は1.0であった。
また、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いて、得られたエラストマー球状粒子を水に再分散させた分散液を、電気抵抗法により測定・評価した結果、体積平均粒径5μmであることを確認した。
【0135】
エラストマー球状粒子を構成するエラストマー(ゴム)の硬度を、以下のように測定した。
合成したアクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体4を30g、及び2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)(分子量:248.4)0.24gを撹拌・混合し、厚み10mmとなるようアルミニウム製シャーレに流し込んだ。70℃の空気恒温槽にて1~2時間静置後、べたつき(タック)の無い平状ゴムを得た。得られた平状ゴムのゴム硬度を測定した結果、AskerC硬度計で72、AskerA硬度計で55をそれぞれ示した。
【0136】
[エラストマー球状粒子の製造-製造例2]
製造例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースの2.6%水溶液250gを、3.8%水溶液173gとした以外は同様に、エラストマー球状粒子を製造した。結果、体積平均粒径2μmのエラストマー球状粒子を得た。
【0137】
[エラストマー球状粒子の製造-製造例3]
製造例1のヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH-4,000、信越化学工業(株)製)を同じく(商品名:メトローズ60SH-50、信越化学工業(株)製)とした以外は同様に、エラストマー球状粒子を製造した。結果、体積平均粒径11μmのエラストマー球状粒子を得た。
【0138】
[エラストマー球状粒子の製造-製造例4]
製造例1のヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ60SH-4,000、信越化学工業(株)製)の2.6%水溶液250gを、キサンタンガムの5.2%水溶液250gとした以外は同様に、エラストマー球状粒子を製造した。結果、体積平均粒径20μmのエラストマー球状粒子を得た。
【0139】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例1]
パドル型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量500mlのガラスフラスコに、製造例1にて得られた固形分濃度20%のエラストマー球状粒子の分散液100g、純水184.9g、及び30%ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液0.2gを仕込んだ。前記水分散液を5~10℃に温調した後、5.0%アンモニア水0.75gを添加し水分散液を5~10℃に保持しながら、テトラメトキシシラン11.2g(エラストマー球状粒子100部に対し、加水分解・重縮合反応後のシリカが22.0部となる量)を15~30分掛けて滴下し、この間の液温を5~10℃に保持して、1時間撹拌を行った。
次いで、55~60℃まで加熱し、温度を保持したまま1時間撹拌・熟成を行い、テトラメトキシシランの加水分解・縮合反応を完結させた。
【0140】
エラストマー球状粒子の分散液中でテトラメトキシシランを加水分解・縮合反応させた分散液を、加圧ろ過器を用いて水分約30%に脱水した。次いで、この脱水物を錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量1Lのガラスフラスコに移し、水500gを添加して30分間撹拌を行ってから、加圧ろ過により脱水した。この洗浄・脱水操作を3回繰り返した脱水物を、熱風流動乾燥機中105℃の条件で乾燥し、乾燥物をジェットミルにて解砕することで、流動性のある粒子を得た。
【0141】
得られた粒子を電子顕微鏡にて観察したところ、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のシリカが付着・被覆されており、シリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)が得られていることを確認した。また、実施例1で得られたシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)のアスペクト比は1.0であった。
【0142】
得られたシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を、界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を用いて水に分散させ、電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した結果、粒度分布は上記エラストマー球状粒子の水分散液と同等に、体積平均粒径は約5μmであることを確認した。
【0143】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例2]
製造例1のエラストマー球状粒子の代わりに、製造例2のエラストマー球状粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、エラストマー複合粒子を製造した。結果、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のシリカが付着・被覆されている、体積平均粒径約2μmのシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を得た。
【0144】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例3]
製造例1のエラストマー球状粒子の代わりに、製造例3のエラストマー球状粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、エラストマー複合粒子を製造した。結果、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のシリカが付着・被覆されている、体積平均粒径約11μmのシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を得た。
【0145】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例4]
製造例1のエラストマー球状粒子の代わりに、製造例4のエラストマー球状粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、エラストマー複合粒子を製造した。結果、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のシリカが付着・被覆されている、体積平均粒径約20μmのシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を得た。
【0146】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例5]
パドル型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量500mlのガラスフラスコに、製造例3にて得られた固形分濃度20%のエラストマー球状粒子の分散液100g、純水184.9g、及び30%ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液0.2gを仕込んだ。前記水分散液を5~10℃に温調した後、5.0%アンモニア水0.84gを添加し水分散液を5~10℃に保持しながら、メチルトリメトキシシラン12.5g(エラストマー球状粒子100部に対し、加水分解・重縮合反応後のシランが22.0部となる量)を15~20分掛けて滴下し、この間の液温を5~10℃に保持して、1時間撹拌を行った。その後の操作については実施例1と同様とし、流動性のある粒子を得た。
【0147】
得られた粒子を電子顕微鏡にて観察したところ、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のポリオルガノシルセスキオキサンが付着・被覆されており、レジン(ポリオルガノシルセスキオキサン)被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)が得られていることを確認した。また、実施例5で得られたレジン(ポリオルガノシルセスキオキサン)被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)のアスペクト比は1.0であった。
【0148】
得られたレジン(ポリオルガノシルセスキオキサン)被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を、界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を用いて水に分散させ、電気抵抗法粒度分布測定装置(マルチサイザー3、ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した結果、粒度分布は上記エラストマー球状粒子の水分散液と同等に、体積平均粒径は約11μmであることを確認した。
【0149】
[エラストマー複合粒子の製造-実施例6]
テトラメトキシシランの添加量を、11.2g(エラストマー球状粒子100部に対し、加水分解・重縮合反応後のシリカが22.0部となる量)から5.6g(エラストマー球状粒子100部に対し、加水分解・重縮合反応後のシリカが11.0部となる量)とした以外は実施例1と同様に、エラストマー複合粒子を製造した。結果、エラストマー球状粒子の粒子表面全体に渡って、球状のシリカが付着・被覆されている、体積平均粒径約5μmのシリカ被覆エラストマー球状粒子(エラストマー複合粒子)を得た。
【0150】
各実施例で得られたエラストマー球状粒子の表面に付着・被覆されている球状のシリカ又はレジン(ポリオルガノシルセスキオキサン)の粒径は、下記表に示す通りであった。
【表1】
【0151】
[生分解性評価]
前記評価方法に即し、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体1の生分解性評価を、培養温度22±1℃で60日間測定した結果、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体1の生分解度は28日後で平均62%、60日後で平均73%を示し、判定基準の28日後の生分解度60%を満たしたことから、“易生分解性物質”と判断された。
従って、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体1の架橋粒子であるエラストマー球状粒子、及び複合粒子は、これを使用したのち陸水などを経てそのまま海洋へと流出した場合、粒子として環境中に残存し続けることなく、最終的には分解するものと推測される。
【0152】
アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体2~4の生分解性評価を、培養温度22±1℃で60日間測定した結果、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体2~4の生分解度は28日後で平均40%、60日後で平均65%を示し、判定基準の60日後の生分解度60%を満たしたことから、“本質的生分解性物質”と判断された。
従って、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/ポリエーテル共重合体2~4の架橋粒子であるエラストマー球状粒子、及び複合粒子は、これを使用したのち陸水などを経てそのまま海洋へと流出した場合、粒子として環境中に残存し続けることなく、最終的には分解するものと推測される。
【0153】
アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/シリコーン共重合体の生分解性評価を、培養温度22±1℃で28日間測定した結果、アクリル変性ポリ-ε-カプロラクトン/シリコーン共重合体の生分解度は28日後で平均26%に留まり、その後生分解度の上昇はみられなかった。
判定基準の28日後の生分解度60%を満たしていないことから、“(易)生分解性物質ではない”と判断された。
【0154】
本発明におけるエラストマー複合粒子(レジン又はシリカ被覆エラストマー球状粒子)は、その特徴的な構造組成により、特に化粧料等にて有用であることが期待される。
また、粉体・粒子骨格内に分解性を有するポリエステル構造(特にはポリ-ε-カプロラクトン)、及びポリエーテル構造を有していることから、高い生分解性の発現・付与が期待できる。