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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027509
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20250220BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250220BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/28
C08K3/08
C08K3/22
C08K3/013
C08K3/38
C08K7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132287
(22)【出願日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD151
4J002DA077
4J002DA078
4J002DE067
4J002DE068
4J002DE077
4J002DE078
4J002DE097
4J002DE098
4J002DE107
4J002DE108
4J002DE117
4J002DE118
4J002DE137
4J002DE138
4J002DE147
4J002DE148
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DK006
4J002FA016
4J002FA087
4J002FA088
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD018
4J002GC00
4J002GG01
4J002GM04
4J002GM05
4J002GN00
4J002GQ01
4J002GQ02
4J002GR00
4J002HA07
4J002HA08
(57)【要約】
【課題】機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ表面粗さが小さいシート等の成形物を形成でき、放熱材料として好適に使用できる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む組成物を提供すること。
【解決手段】テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、窒化物である第1フィラーと、金属又はその酸化物である第2フィラーと、金属又はその酸化物である第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーの平均粒子径D3が、D1>D2>D3の関係を満たし、かつ、前記D3に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径の比が2以下である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、窒化物である第1フィラーと、金属又はその酸化物である第2フィラーと、金属又はその酸化物である第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーの平均粒子径D3が、D1>D2>D3の関係を満たし、かつ、前記D3に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径の比が2以下である、組成物。
【請求項2】
前記平均粒子径D3に対する前記平均粒子径D2が2超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性であり、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が、0.1~6μmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素の一次粒子の凝集体であって、かかる凝集体の前記平均粒子径D1が25~75μmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2フィラーが酸化アルミニウムであり、前記平均粒子径D2が10~40μmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第3フィラーが酸化アルミニウムであり、前記平均粒子径D3が10μm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2フィラー及び前記第3フィラーが、いずれも球状である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子、前記第1フィラー、前記第2フィラー及び前記第3フィラーの総量に対して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が10~30体積%であり、前記第1フィラーの含有量が5~30体積%であり、前記第2フィラーの含有量が50~80体積%であり、前記第3フィラーの含有量が5~30体積%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
さらに液状分散媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を含有する、放熱材料。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を押出すか、又は基材の表面に配置して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと、前記第1フィラーと、前記第2フィラーと、前記第3フィラーとを含む成形物を得る、成形物の製造方法。
【請求項13】
テトラフルオロエチレン系ポリマーと、窒化物である第1フィラーと、金属又はその酸化物である第2フィラーと、金属又はその酸化物である第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーD3の平均粒子径が、D1>D2>D3の関係を満たす、成形物。
【請求項14】
厚さが100μm以上である、請求項13に記載の成形物。
【請求項15】
表面粗さRzが、25μm以下である、請求項13又は14に記載の成形物。
【請求項16】
熱伝導率が5W/m・K以上である、請求項13又は14に記載の成形物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーと、所定の複数のフィラーとを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューターチップ(CPU)、ビデオグラフィックスアレイ、サーバー、ゲーム機、スマートフォン、LEDボード等の電子部品や、電気自動車及び送電システムのインバーターやコンバーター等で使用されるパワー半導体を含む半導体モジュール等から発生する大量の熱を放散するために、放熱材料として熱界面材料(Thermal Interface Material;以下、「TIM」とも記す。)が用いられる。TIMは、典型的には、過剰な熱を電子部品から熱拡散部に伝達し、次いで熱を放熱板に伝達する役割を有する。
従来、TIMとして、非常に薄い層に広がり、隣接する表面間の緊密な接触を提供できる観点から、パラフィンワックス等の相変化材料、グリース状材料、エラストマーテープが用いられるが、耐熱性(熱安定性)に劣り、性能が低下しやすいという問題がある。
樹脂材料の熱伝導性を向上させてTIMに適用可能な放熱材料を得るべく、樹脂に各種の熱伝導性フィラーを配合する検討がなされている。特許文献1には、樹脂バインダーと、粒径の異なる2種の無機粒子とを含有し、各々の無機粒子が、全体厚みの一方の表面から厚み方向の所定領域に所定量存在する放熱シートが提案されている。特許文献2には、樹脂に、所定粒径の鱗片状窒化ホウ素及び3種類の粒径の異なる熱伝導性フィラーを所定量配合した熱伝導性樹脂組成物が提案されている。特許文献3には、体積頻度粒度分布において15~25μmの領域に極大ピークを示し、かつ体積頻度の累積値95%となる粒径が40~55μmである無機フィラーの所定量と、バインダー樹脂とを含む絶縁樹脂シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/065146号
【特許文献2】特開2022-026651号公報
【特許文献3】特開2023-033211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、かかる熱伝導性材料や放熱材料の樹脂成分としてのテトラフルオロエチレン系ポリマーは、機械的特性、耐熱性、電気特性(線膨張係数、誘電率、誘電正接等)に優れる反面、表面張力が低く他の成分との親和性が低いため、熱伝導性成分の凝集を誘引し、成形物の熱伝導性を低下させやすいばかりか、成形物の表面を粗くしやすい。
【0005】
本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、窒化物フィラーと、所定の金属又はその酸化物である複数のフィラーとを含有し、各フィラーの平均粒子径及びテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径の比が所定の関係を満たす組成物は分散性に優れており、その成形物は機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ、さらに表面粗さを小さくできることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、かかる組成物、及び該組成物を含有する放熱材料の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
〔1〕 テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と、窒化物である第1フィラーと、金属又はその酸化物である第2フィラーと、金属又はその酸化物である第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーの平均粒子径D3が、D1>D2>D3の関係を満たし、かつ、前記D3に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径の比が2以下である、組成物。
〔2〕 前記平均粒子径D3に対する前記平均粒子径D2が2超である、〔1〕の組成物。
〔3〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性であり、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、〔1〕又は〔2〕の組成物。
〔4〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径が、0.1~6μmである、〔1〕~〔3〕のいずれかの組成物。
〔5〕 前記第1フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素の一次粒子の凝集体であって、かかる凝集体の前記平均粒子径D1が25~75μmである、〔1〕~〔4〕のいずれかの組成物。
〔6〕 前記第2フィラーが酸化アルミニウムであり、前記平均粒子径D2が10~40μmである、〔1〕~〔5〕のいずれかの組成物。
〔7〕 前記第3フィラーが酸化アルミニウムであり、前記平均粒子径D3が10μm未満である、〔1〕~〔6〕のいずれかの組成物。
〔8〕 前記第2フィラー及び前記第3フィラーが、いずれも球状である、〔1〕~〔7〕のいずれかの組成物。
〔9〕 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子、前記第1フィラー、前記第2フィラー及び前記第3フィラーの総量に対して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が10~30体積%であり、前記第1フィラーの含有量が5~30体積%であり、前記第2フィラーの含有量が50~80体積%であり、前記第3フィラーの含有量が5~30体積%である、〔1〕~〔8〕のいずれかの組成物。
〔10〕 さらに液状分散媒を含む、〔1〕~〔9〕のいずれかの組成物。
〔11〕 〔1〕~〔10〕のいずれかの組成物を含有する、放熱材料。
〔12〕 〔1〕~〔10〕のいずれかの組成物を押出すか、又は基材の表面に配置して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーと、前記第1フィラーと、前記第2フィラーと、前記第3フィラーとを含む成形物を得る、成形物の製造方法。
〔13〕 テトラフルオロエチレン系ポリマーと、窒化物である第1フィラーと、金属又はその酸化物である第2フィラーと、金属又はその酸化物である第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーD3の平均粒子径が、D1>D2>D3の関係を満たす、成形物。
〔14〕 厚さが100μm以上である、〔13〕の成形物。
〔15〕 表面粗さRzが、25μm以下である、〔13〕又は〔14〕の成形物。
〔16〕 熱伝導率が5W/m・K以上である、〔13〕~〔14〕のいずれかの成形物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーと所定のフィラーとを含み、分散性に優れた組成物が提供される。かかる組成物からは、機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ表面粗さが小さいシート等の成形物を形成でき、放熱材料として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子又はフィラーの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子又はフィラーの集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子又はフィラーのD50は、粒子又はフィラーを水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0009】
本発明の組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)と、窒化物である第1フィラー(以下、「第1フィラー」とも記す。)と、金属又はその酸化物である第2フィラー(以下、「第2フィラー」とも記す。)と、金属又はその酸化物である第3フィラー(以下、「第3フィラー」とも記す。)とを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーの平均粒子径D3が、D1>D2>D3の関係を満たし、かつ、前記D3に対する前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の平均粒子径の比が2以下である。
【0010】
本組成物は分散性に優れており、Fポリマーと、それぞれのフィラーとの物性を高度に具備し、機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ、さらに表面粗さが小さいシート等の成形物を形成しやすい。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0011】
Fポリマーは他の材料との親和性が低い。そのため、無機フィラーが微粒子状であると、組成物中でかかるフィラー同士の凝集が起こりやすく、その物性を発揮し難いばかりか、それから得られる成形物の機械的特性等も低下させやすい。
本組成物では、平均粒子径が段階的に異なる3種の無機フィラーを併用する。すなわち、窒化物であり熱伝導性が高い第1フィラーと、第1フィラーよりも平均粒子径が小さい、金属又はその酸化物である、平均粒子径が異なる2種のフィラー(第2フィラー及び第3フィラー)を併用することで、3者の相互作用を促し、緻密な熱伝導性パスを形成させつつ、前記異なる2種のフィラーにより凝集を抑制していると考えられる。また、最も平均粒子径の小さい第3フィラーに対して、所定の平均粒子径を有するF粒子を用いることで、第1フィラー乃至第3フィラーの過度な表面露出による成形物の表面粗さの増大が抑制され、さらに第1フィラー乃至第3フィラー間へのFポリマーの密なパッキングが促される。そして、組成物における、それぞれのフィラーとFポリマーとの相互作用が促され、組成物の均一な分散性が向上していると考えられる。
かかる組成物から形成されるシート等の成形物においては、第1フィラーがパッキングした隙間に、第2フィラー及び第3フィラーが効率的に緻密に充填され、高度なフィラーのパスが形成されやすくなり、それが成形物の耐熱性、線膨張係数、電気特性、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性を向上させていると考えられる。さらに、Fポリマーと第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラー間の接触界面が大きくなり、成形物の曲げ強度等の機械的物性も向上できたと考えられる。
かかる傾向は、本組成物中のFポリマー、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの平均粒子径において、平均粒子径D3に対する平均粒子径D2を2超とすると、一層顕著となる。
【0012】
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。Fポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。Fポリマーは、熱溶融性であっても非熱溶融性であってもよいが、Fポリマーの少なくとも1種は、熱溶融性であるのが好ましい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がさらに好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。この場合、本組成物が加工性に優れやすく、また、本組成物から形成される成形物が耐熱性に優れやすい。
【0013】
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
【0014】
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0015】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、Fポリマーが、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーと相互作用しやすく、本組成物が分散性に優れやすい。また、本組成物から、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、熱伝導性に優れたシート等の成形物を得やすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)、ホルミル基、ハロゲノホルミル基、ウレタン基(-NHC(O)O-)、カルバモイル基(-C(O)-NH)、ウレイド基(-NH-C(O)-NH)、オキサモイル基(-NH-C(O)-C(O)-NH)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、50~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0016】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0017】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
【0018】
本発明において、F粒子の平均粒子径(D50)は0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましい。F粒子のD50は25μm以下であるのが好ましく、10μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましい。F粒子のD50は、0.1~6μmがより好ましい。この場合、本組成物が分散性と加工性に優れやすい。また、本組成物から、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、熱伝導性に優れたシート等の成形物を得やすい。F粒子は、非中空状の粒子であってもペレット状であってもよい。
F粒子の比表面積は、1~25m/gが好ましく、3~15m/gがより好ましい。
【0019】
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、溶融温度が100~320℃である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすい。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
【0020】
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、F粒子は、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と混合して用いてもよい。F粒子として、溶融温度が100~325℃である熱溶融性Fポリマーの粒子が好ましく、溶融温度が180~320℃であり、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子がより好ましく、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子として、非熱溶融性PTFEの粒子が好ましい。この場合、熱溶融性Fポリマーの粒子による凝集抑制作用と、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのフィブリル化による保持作用とがバランスし、本組成物の分散性が向上しやすい。また、それから得られる成形物において、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの電気特性が高度に発現されやすい。
【0021】
本組成物が含む第1フィラーとしては、窒化ホウ素フィラー、窒化アルミニウムフィラー、窒化ケイ素フィラーが挙げられる。
窒化ホウ素フィラーの具体例としては、「HP-40MF」シリーズ、「HP-40J」シリーズ(いずれもJFEミネラル社製)、「UHP」シリーズ(昭和電工社製)、「デンカボロンナイトライド」シリーズの「GP」、「HGP」グレード(デンカ社製)が挙げられる。窒化アルミニウムフィラーの具体例としては、「高純度窒化アルミニウム」シリーズ(トクヤマ社)、「トーヤルテックフィラーTFZ」シリーズ(東洋アルミ社製)が挙げられる。窒化ケイ素フィラーの具体例としては、「デンカ窒化珪素」シリーズ(デンカ社製)、「UBE窒化珪素」シリーズ(UBE社製)が挙げられる。
第1フィラーは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、第1フィラーが、窒化ホウ素フィラーであるのがより好ましい。
【0022】
第1フィラーの形状は非球状であるのが好ましく、鱗片状又は柱状であるのがより好ましい。この場合、本組成物及び本組成物から形成されるシート等の成形物中で、第1フィラーがカードハウス構造をとりやすくなり、熱伝導パスを形成しやすいと考えられる。その結果、本組成物が分散性に優れ、また、成形物が熱伝導性(熱伝導率)と低線膨張性に優れやすい。
第1フィラーのD50は、20μm以上が好ましく、25μm以上がさらに好ましい。第1フィラーのD50は、100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましい。
第1フィラーのアスペクト比は、1超であるのが好ましく、2以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。アスペクト比は、10000以下が好ましい。
第1フィラーの真密度は、1~7g/cmが好ましい。
第1フィラーの嵩密度は、0.1~6.0g/cmが好ましい。
第1フィラーの耐圧強度は、30~200MPaが好ましい。なお、耐圧強度は、ASTM D 3102-78で測定される耐圧強度である。
【0023】
第1フィラーの表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、N-2-(アミノメチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0024】
中でも、第1フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素の一次粒子が凝集した塊状である凝集体であって、かかる凝集体の平均粒子径D1が25~75μmであることが好ましく、30~60μmであるのがより好ましい。ここで、窒化ホウ素の一次粒子の長径と厚みの比は、平均で5~10であるのが好ましい。また、かかる凝集体が、窒素分圧5kPa以上、焼成温度1800~2200℃での炭化ホウ素の焼成を経た焼結体であるのがより好ましい。
【0025】
本組成物が含む第2フィラー及び第3フィラーを構成する、金属又はその酸化物としては、銀、銅等の金属;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物が挙げられる。
第2フィラー及び第3フィラーはそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第2フィラー及び第3フィラーの種類は、異なっていても同種であってもよく、同種である好ましく、いずれも酸化アルミニウムであるのがより好ましい。この場合、本組成物から電気特性、低線膨張性及び熱伝導性に優れた成形物を得やすい。
【0026】
第2フィラー及び第3フィラーの形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよいが、本組成物から得られるシート等の成形物、及び後述する、本組成物を含有するTIM等の放熱材料の熱伝導性を一層向上させる観点から、第2フィラー及び第3フィラーが、いずれも球状であるのが好ましい。
ここで「球状」とは楕円状であってもよいが、略真球状であるのが好ましい。略真球状とは、走査型電子顕微鏡(SEM)によってフィラーを観察した際に、長径に対する短径の比が0.7以上である粒子の占める割合が95%以上であることを意味する。
この場合、本組成物が分散性と加工性に優れやすい。また、本組成物から形成されるシート等の成形物中で、平均粒子径の異なる第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーが効率的に配置され、各フィラーの凝集を抑制しつつかつ緻密に充填されて熱伝導パスを形成しやすく、機械的特性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ、表面粗さが小さくなった、シート等の成形物を得やすい。
【0027】
第2フィラーの平均粒子径D2は、10~40μmであるのが好ましい。D2は、14μm以上がより好ましく、18μm以上がさらに好ましい。D2は、36μm以下がより好ましく、32μm以下がさらに好ましい。
第3フィラーの平均粒子径D3は、10μm未満であるのが好ましい。D3は、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。D3は、0.1μm以上が好ましい。
第3フィラーは金属又はその酸化物の一次粒子の凝集体であってもよい。第3フィラーが凝集体である場合は、かかる凝集体の平均粒子径が10μm未満であることが好ましく、凝集体が、焼成を経た焼結体であるのがより好ましい。
【0028】
第2フィラー及び第3フィラーの真密度は、1~7g/cmが好ましい。
第2フィラー及び第3フィラーの嵩密度は、0.1~6g/cmが好ましい。
第2フィラー及び第3フィラーの耐圧強度は、30~200MPaが好ましい。なお、耐圧強度は、ASTM D 3102-78で測定される耐圧強度である。
【0029】
第2フィラー及び第3フィラーは、シート等の成形物中において、第1フィラーがパッキングされた隙間へより緻密に充填されてフィラーのパスを形成し、かつ第2フィラー及び第3フィラー自体の物性を高度に発現させて、成形物の熱伝導性等をいっそう良好なものとする観点から、表面処理されていないフィラーであることが好ましい。なお「表面処理」は、シランカップリング剤等の有機系表面処理剤、無機酸等の無機系表面処理剤、又は物理的操作による表面処理を包含する。
【0030】
本組成物においては、第1フィラーの平均粒子径D1、第2フィラーの平均粒子径D2及び第3フィラーの平均粒子径D3が、D1>D2>D3の関係を満たし、かつ、D3に対するF粒子の平均粒子径(D50)の比が2以下である。
本組成物においては、第1フィラーの形状が、非球状(鱗片、柱状)であり、かつ、第2フィラー及び第3フィラーの形状が、球状であるのが好ましい。
すなわち、第1フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素の一次粒子の凝集体であって、かかる凝集体の平均粒子径D1が25~75μmであるのが好ましい。
また、第2フィラーが球状の酸化アルミニウムであり、その平均粒子径D2が10~40μmであるのが好ましい。かかるD2は、14μm以上がより好ましく、18μm以上がさらに好ましい。D2は、36μm以下がより好ましく、32μm以下がさらに好ましい。
さらに、第3フィラーが球状の酸化アルミニウムであり、その平均粒子径D3が10μm未満であるのが好ましい。かかるD3は、8μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。D3は、0.1μm以上が好ましい。
さらにまた、D3に対するD2は、2超であるのが好ましく、5以上であるのがより好ましい。
そして、D3に対するF粒子の平均粒子径(D50)の比が2以下であり、1.5以下であるのが好ましい。D3に対するF粒子の平均粒子径(D50)の比は、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
【0031】
このような本組成物から形成されるシート等の成形物中では、上述した想定機構がより発現し、平均粒子径の異なる第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーが効率的に配置され、各フィラーの凝集を抑制しつつかつ緻密に充填されて熱伝導パスを形成しやすく、機械的特性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ、表面粗さが小さくなった、シート等の成形物を得やすい。
【0032】
本組成物において、F粒子、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの総量に対して、F粒子の含有量が10~30体積%であり、第1フィラーの含有量が5~30体積%であり、第2フィラーの含有量が50~80体積%であり、第3フィラーの含有量が5~30体積%であるのが好ましい。
体積濃度がかかる範囲である場合、本組成物が分散性に優れやすい。また、本組成物から線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に電気絶縁性を維持しつつ熱伝導性に優れ、表面粗さが小さいシート等の成形物を得やすい。
【0033】
本組成物が含む、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの、各々単体での熱伝導率は、20W/m・K以上であるのが好ましく、30W/m・K以上であるのがより好ましい。第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの、各々単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高い方が好ましいが、一般的には3000W/m・K以下であるのが好ましく、2500W/m・K以下がより好ましい。
【0034】
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにFポリマーとは異なる他の樹脂を含んでもよい。かかる他の樹脂は、本組成物に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本組成物が後述する液状分散媒を含む場合、液状分散媒に溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、Fポリマー以外のフッ素樹脂、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、Fポリマー以外のテトラフルオロエチレン系ポリマー、芳香族ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本組成物中で、液状分散媒に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
【0035】
本組成物が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの総体積に対する、他の樹脂の体積濃度は、0.1体積%以上が好ましく、1体積%以上がより好ましい。上記体積濃度は、15体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。
【0036】
本組成物は粉状であってもよく、さらに液状分散媒を含んで液状であってもよい。
液状分散媒としては、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。液状分散媒は1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種の液状分散媒を用いる場合、2種の液状分散媒は、互いに相溶するのが好ましい。
【0037】
液状分散媒は、水、炭化水素、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる化合物が好ましい。
炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、メチルシクロヘキサン等の脂環式骨格炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
【0038】
本組成物が液状分散媒を含む場合、液状分散媒の含有量は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましい。液状分散媒の含有量は、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましい。
本組成物が液状分散媒を含む場合、本組成物における固形分濃度は、50体積%以上が好ましい。固形分濃度は、90体積%以下が好ましい。なお、固形分とは本組成物から形成される成形物において固形分を形成する物質の総量(総質量又は総体積)を意味する。具体的には、Fポリマー(F粒子)、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーは固形分であり、本組成物が他の樹脂を含む場合には、他の樹脂も固形分であり、これらの成分の総体積濃度が本組成物における固形分濃度となる。
【0039】
本組成物、特に液状分散媒を含む本組成物は、Fポリマー(F粒子)、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの分散安定性を向上する観点から、さらにノニオン性界面活性剤を含むのが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
本組成物がノニオン性界面活性剤を含有する場合、本組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量は、1~15体積%が好ましい。
【0040】
本組成物は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0041】
本組成物が液状分散媒を含み液状である場合、その粘度は、10mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。本組成物の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましい。
本組成物が液状分散媒を含み液状である場合、そのチキソ比は、1.0~3.0が好ましい。
【0042】
本組成物は、Fポリマー(F粒子)と第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーと、必要に応じて他の樹脂、液状分散媒、界面活性剤、添加剤等を混合することで得られる。
本組成物は、Fポリマー(F粒子)と第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーを一括で混合して得てもよいし、別々に順次混合してもよいし、これらのマスターバッチを予め作成し、それと残りの成分を混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
本組成物を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0043】
液状分散媒を含む本組成物の製造方法として、F粒子を含む液状分散媒に第1フィラー、第2フィラー、及び第3フィラーを順次投入して混合してもよく、F粒子、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーの分散性を向上できる観点から好ましい。より具体的には、F粒子と液状分散媒の一部とを予め混練し、次いで第1フィラー、第2フィラー、及び第3フィラーを順次投入してさらに混練し、得られた混練物を残余の液状分散媒に添加して本組成物を得る製造方法が挙げられる。混練と添加に際して使用する液状分散媒は、同種の液状分散媒であってもよく、異種の液状分散媒であってもよい。他の樹脂、界面活性剤、添加剤は、混練に際して混合してもよく、添加に際して混合してもよい。
【0044】
本組成物からは、熱伝導率が5W/m・K以上である成形物を得やすい。かかる成形物の熱伝導率は10~100W/m・Kが好ましい。
本組成物から得られる成形物の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。成形物の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。
【0045】
本組成物を押出等の成形方法に供すれば、Fポリマーと第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとを含む、シート等の成形物を得られる。
本組成物が液状分散媒を含み液状である場合、本組成物をシート状に押出するのが好ましい。押出して得たシートは、さらにプレス成形、カレンダー成形等をして流延してもよい。シートは、さらに加熱して、液状分散媒を除去し、Fポリマーを焼成するのが好ましい。
本組成物が粉状である場合、本組成物を溶融押出成形するのが好ましい。押出成形は単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等を用いて行うことができる。
また、本組成物を射出成形して成形物を得てもよい。
成形物の形成に際しては、本組成物を直接、溶融押出成形又は射出成形してもよく、本組成物を溶融混練してペレットとし、ペレットを溶融押出成形又は射出成形してシート等の成形物を得てもよい。
【0046】
本組成物から得られるシートの厚さは、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。シートの厚さは、1000μm以下が好ましい。
シートの熱伝導率、誘電率及び誘電正接の好適な範囲は、それぞれ、上述した成形物の熱伝導率、誘電率及び誘電正接の範囲と同様である。なお、シートにおける熱伝導率とは、シートの面内方向における熱伝導率を意味する。
シートの線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。シートの線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
【0047】
かかるシートを基材に積層すれば積層体を形成できる。積層体の製造方法としては、前記押出機として共押出機を用い、基材の原料とともに本組成物を押出成形する方法、前記基材上に本組成物を押出成形する方法、シートと前記基材とを熱圧着する方法等が挙げられる。
基材としては、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等の金属基板;ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の好適には耐熱性樹脂のフィルム;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板;ガラス基板が挙げられる。
【0048】
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
シートと基材との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。
【0049】
本組成物を基材の表面に配置し、Fポリマーと第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとを含むポリマー層を形成することで、基材で構成される基材層とポリマー層とを有する積層体が得られる。ポリマー層は、液状分散媒を含む本組成物を基材の表面に配置し、加熱して分散媒を除去し、さらに加熱してFポリマーを焼成して形成するのが好ましい。かかる積層体から基材を分離すれば、Fポリマーと第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとを含むシートを得られる。
基材としては、上述のシートと積層できる基材と同様のものが挙げられ、その好適態様も同様である。
【0050】
本組成物の配置の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
液状分散媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において液状分散媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子、第1フィラー、第2フィラー及び第3フィラーのパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
【0051】
Fポリマーの焼成に際する加熱は、Fポリマーの焼成温度以上の温度にて行うのが好ましく、360~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0052】
ポリマー層は、本組成物の配置、加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材の表面に本組成物を配置し加熱してポリマー層を形成し、さらに前記ポリマー層の表面に本組成物を配置し加熱して2層目のポリマー層を形成してもよい。また、基材の表面に本組成物を配置し加熱して液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本組成物を配置し加熱してポリマー層を形成してもよい。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ配置してもよく、基材の両面に配置してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にポリマー層を有する積層体が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にポリマー層を有する積層体が得られる。
【0053】
積層体の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にポリマー層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にポリマー層を有する多層フィルムが挙げられる。
ポリマー層の厚さ、熱伝導率、誘電率、誘電正接、線膨張係数、ポリマー層と基材層との剥離強度の好適範囲は、上述の本組成物から得られるシートにおける、厚さ、熱伝導率、誘電率、誘電正接、線膨張係数、シートと基材との剥離強度の好適範囲と同様である。
【0054】
本組成物は、絶縁性、耐熱性、対腐食性、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、熱伝導性を付与するための材料として有用である。
本組成物は、具体的には、プリント配線板、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイル、車載エンジン、熱交換器、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、アンプル、医療用ワイヤー、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電極のバインダー、電極のセパレーター、電極(正極、負極)に使用できる。
また、本組成物は部品を接着する接着剤としても有用である。具体的には、本組成物は、セラミックス部品の接着、金属部品の接着、半導体素子やモジュール部品の基板におけるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。
【0055】
本発明はまた、本組成物を含有する放熱材料である。かかる放熱材料の具体例としては、熱界面材料(TIM)が挙げられる。本組成物を含有するTIMは、Fポリマーと第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとの物性を高度に具備し、機械的特性、耐熱性に優れ、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、特に熱伝導性に優れる。また、その表面粗さ(Rz)が小さく、接着性に優れる。
本組成物は、コンピューターチップ(CPU)、ビデオグラフィックスアレイ、サーバー、ゲーム機、スマートフォン、LEDボード等の電子部品や、電気自動車、送電システムのインバーターやコンバーター等で使用されるパワー半導体を含む半導体モジュール等から発生する大量の熱を放散するためのTIM用途に、特に好適に使用できる。
【0056】
本発明はまた、Fポリマーと第1フィラーと第2フィラーと第3フィラーとを含み、前記第1フィラーの平均粒子径D1、前記第2フィラーの平均粒子径D2及び前記第3フィラーD3の平均粒子径が、D1>D2>D3の関係を満たす、成形物(以下、「本成形物」とも記す。)である。本成形物におけるFポリマー、第1フィラー、第2フィラー、その他の任意構成成分の詳細については、本組成物の説明にて上述したのと同様である。
本成形物の表面粗さRzは、10μm以下であるのが好ましく、1μm以下がより好ましい。表面粗さRzは、0.01μm以上が好ましい。
本成形物は、本組成物から上述した方法で、好適にはシートとして形成されるのが好ましい。シートの厚さ、熱伝導率、誘電率、誘電正接、線膨張係数、表面粗さRzの好適な範囲は、それぞれ、上述したのと同様である。
かかるシートは、TIMとして好適に用いることができる。
【0057】
本組成物から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線、平角線、FFC(Flexible flat cable)等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、発電用被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、燃料電池用キャリアフィルム、半導体製造工程用テープ基材フィルム(ダイシングテープ、ピックアップテープ等)、半導体モールディング用離型フィルム、液晶アンテナ、反射板、伝送路、COF(Chip on film)用ベースフィルム、半導体製造工程用静電チャック、ディスプレイ製造工程用静電チャック、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
【0058】
本組成物から形成されるシート等の成形物、及び積層体は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
本組成物から形成されるシートをTIMとして使用するに際しては、シートを対象とする基板に直接貼合してもよく、シリコーン系粘着層等の粘着層を介して対象とする基板に貼合してもよい。
【0059】
以上、本組成物、本組成物を含有する放熱材料、及び本成形物について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本組成物は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の構成と置換されていてもよい。
【実施例0060】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2μm)
F粒子2:TFE単位及びPPVE単位を、この順に98.0モル%、2.0モル%含む、官能基を有さないテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2μm)
[窒化物フィラー]
窒化ホウ素1:商品名「HP-40MF100」(JFEミネラル社製、D50:36μm、凝集構造)
[金属又はその酸化物であるフィラー]
アルミナ1:商品名「DAM-20」(デンカ社製、D50:25μm、球状)
アルミナ2:商品名「CB-P02」(昭和電工社製、D50:2μm、球状)
【0061】
2.組成物の製造例
[例1]
水、F粒子1、窒化ホウ素1、アルミナ1、及びアルミナ2を順次投入し、自転公転ミキサーを用いて2000rpmで1分混練して組成物1を得た。組成物1はスラリー状であり、組成物1の固形分中、F粒子1は15体積%、窒化ホウ素1は15体積%、アルミナ1は60体積%、アルミナ2は10体積%であった。
[例2~4]
F粒子の種類、窒化ホウ素1、アルミナ1及びアルミナ2の体積比率を表1に示すとおり変更した以外は、例1と同様にして、組成物2~4を得た。
【0062】
3.シートの製造
厚さが0.2μmの銅箔の表面に、アプリケーターを用いて組成物1を塗工してウェット膜を形成した。次いで、このウェット膜が形成されたガラス基板を120℃で3分乾燥炉に通して乾燥させてドライ膜を形成した。
さらに、ドライ膜を有する銅箔基板を3cm×3cmにカットし、340℃、10MPaで3分間熱プレスを実施し、積層体を得た。
得られた積層体の剥離強度を、後述の方法で測定した。
また、得られた積層体を、塩化第二鉄水溶液に2時間浸すことで銅箔を除去して、厚さ150μmのシート1を得た。
シート1と同様にして、組成物2~4から、シート2~4を製造した。
【0063】
4.評価
4-1.剥離強度
それぞれの積層体より、長さ150mm、幅10mmの大きさの試験片を作製した。該試験片の長さ方向の一端から50mmの位置までシート層と銅箔との間を剥離し、次いで引張試験機を用いて、引張り速度50mm/分でシート層と銅箔が90°になるように剥離させた際の最大荷重(N/cm)を測定して剥離強度とし、下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[剥離強度の評価基準]
○:剥離強度が10N/cm超である
△:剥離強度が5~10N/cmの範囲内である
×:剥離強度が5N/cm未満である
【0064】
4-2.シートの表面粗さ
JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される内容に準じて、十点平均粗さ(Rz)を測定した。
【0065】
4-3.シートの熱伝導率
それぞれのシートから、10mm×10mm角の試験片を切り出し、その面内方向における熱伝導率(W/m・K)をキセノンフラッシュアナライザー(ネッチ社製、LFA467 HyperFlash)を用いて、25℃で測定した。熱伝導率の算出に必要な密度は、マイクロメーターによって計測された体積で質量を割ることで得た値を用いた。
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記結果から明らかなように、本発明の規定を満足する例の組成物から形成したシートは熱伝導性に優れており、表面粗さRzが小さく、接着性、電気絶縁性、折曲性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本組成物、及び本組成物から形成したシートは表面粗さが小さく、Fポリマー及び含有する各フィラーの物性を高度に発現して熱伝導性、耐熱性、電気絶縁性に優れており、放熱材料として有効に使用できる。