(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027679
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20250220BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20250220BHJP
C08G 8/04 20060101ALI20250220BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/26 511
G03F7/11 502
C08G8/04
H01L21/30 573
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132687
(22)【出願日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 直貴
(72)【発明者】
【氏名】石綿 健汰
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 俊治
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4J033
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196CA05
2H196CA20
2H225AE02N
2H225AE04N
2H225AF18N
2H225AF24P
2H225AF44N
2H225AF44P
2H225AH17
2H225AJ13
2H225AJ54
2H225AJ59
2H225AM10N
2H225AM22N
2H225AM61N
2H225AM79N
2H225AM80N
2H225AM86N
2H225AM91N
2H225AM94N
2H225AM99N
2H225AN11N
2H225AN28N
2H225AN29N
2H225AN39N
2H225AN51N
2H225AN62P
2H225BA26P
2H225BA29N
2H225BA32N
2H225CB10
2H225CC03
2H225CC15
4J033CA02
4J033CA18
4J033CA22
4J033CA28
4J033CA29
4J033CB25
4J033CC06
4J033HA02
4J033HB10
5F146NA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラズマ照射で優れたドライエッチング耐性を示し、優れた膜厚均一性を示すレジスト下層膜形成方法を提供する。
【解決手段】(i)(A)重合体と(B)有機溶剤とを含む組成物をコーティングし、熱処理する工程と、(ii)プラズマ照射し、レジスト下層膜を形成する工程を含み、(A)重合体を式(1)の構成単位を含み、重量平均分子量が2,500~20,000のものとするレジスト下層膜形成方法。
(Ar
1、Ar
2はベンゼン環またはナフタレン環、Xは特定の式で表される構造、Yは有機基、kは0または1。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にレジスト下層膜を形成する方法であって、
(i)前記基板上に、(A)重合体と(B)有機溶剤とを含むレジスト下層膜形成用組成物をコーティングし、100℃以上800℃以下の温度で10秒から7,200秒間の熱処理をして硬化させることで下層膜前駆膜を形成する工程と、
(ii)前記下層膜前駆膜を形成した基板をプラズマ照射し、レジスト下層膜を形成する工程、
を含むレジスト下層膜形成方法であり、
前記(A)重合体を、下記一般式(1)で示される構成単位を含み、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000のものとすることを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【化1】
(式中、Ar
1およびAr
2は独立して置換または非置換のベンゼン環または置換または非置換のナフタレン環であり、Xは下記一般式(1A)で示される構造であり、Yは炭素数6~50の2価の有機基であり、kは0または1である。)
【化2】
(式中、n
1は0又は1であり、n
2は1又は2であり、R
2は水素原子、炭素数1~10の有機基、又は下記一般式(1B)で示される構造のいずれかである。R
3は水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(1C)で示される基であり、n
3は0、1、又は2であり、*はメチレン基との結合部であり、**はフルオレンの4級炭素との結合部である。)
【化3】
(式中、*は酸素原子への結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化4】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、Yが下記式(Y-1)で示される構造のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【化5】
(上記構造の水素原子が、水酸基または炭素数1~10の1価の有機基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(1A)中、R2が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項4】
前記一般式(1A)中、R2が水素原子または前記一般式(1B)で示される構造であり、前記R2を構成する構造のうち、水素原子の割合をa、前記一般式(1B)で示される構造の割合をbとした場合、a+b=1、0.1≦b≦0.9の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Ar1およびAr2が非置換のベンゼン環であり、前記一般式(1A)中、n1が0であり、n2が1または2であり、n3が0であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項6】
前記一般式(1)中、kが0であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項7】
前記(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、7000から15,000であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項8】
前記レジスト下層膜形成用組成物を、さらに(C)架橋剤、(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものとすることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項9】
前記(B)有機溶剤を、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤である(B-1)高沸点溶剤1種以上との混合物とすることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項10】
前記(ii)工程において、前記プラズマ照射を、N2、NF3、H2、フルオロカーボン、希ガス、またはこれらいずれかの混合の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項11】
前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項12】
前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%未満の雰囲気で行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法。
【請求項13】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法により、段差を有する被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜の上層にレジスト上層膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にまでパターンを転写する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
前記被加工基板の段差のアスペクト比を3以上とすることを特徴とする請求項14に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングに用いることが可能なレジスト下層膜形成方法、該レジスト下層膜を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にフォトレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂と変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なるレジスト中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングによりレジスト中間膜にパターンを転写し、更にレジスト中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有レジスト中間膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有レジスト中間膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングによるパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。上述のようなレジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のものなど、すでに多くのものが公知となっている。
【0008】
一方、近年においては、DRAMメモリの微細化が加速しており、さらなるドライエッチング耐性の改善と、優れた埋め込み特性及び平坦化特性を有するレジスト下層膜の必要性が高まってきている。埋め込み特性及び平坦化特性に優れた塗布型有機下層膜材料としては、例えば特許文献2に記載のものなどが報告されているが、先端世代での適用を見据えた場合、ドライエッチング耐性に懸念があり、従来の塗布型有機下層膜材料の適用限界が近づいている。
【0009】
上記課題に対して特許文献3では、レジスト下層膜をプラズマ照射や電子線照射の追加処理をすることにより、基板加工時のエッチング耐性が向上することを報告している。上記追加処理を行うことで、炭化水素含有膜の化学結合が乖離ならびに再結合してダイアモンドライクカーボン構造を有する硬化膜として再構築することで、硬度や密度の上昇に寄与すると考えられている。しかしながら、上記実施例で用いられているレジスト下層膜は、上記追加処理による膜厚変化が100nm以上と大きく、追加処理後の膜厚均一性も不十分であることが予想される。段差を有する被加工基板の充填膜に用いる場合、プラズマ照射および電子線照射による膜収縮の影響で平坦性が劣化する可能性や、プラズマ照射および電子線照射の過程で膜中の固形成分が飛散しすぎることで充填膜中にボイドが発生する可能性が考えられる。このため、プラズマ照射前後の膜厚変化が小さいレジスト下層膜形成方法が必要と考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-205685号公報
【特許文献2】特許6714493号公報
【特許文献3】特開2020-183506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、プラズマ照射することで従来の有機下層膜材料に対して極めて優れたドライエッチング耐性を示し、かつ優れた膜厚均一性を示すレジスト下層膜形成方法、及び該レジスト下層膜を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、
基板上にレジスト下層膜を形成する方法であって、
(i)前記基板上に、(A)重合体と(B)有機溶剤とを含むレジスト下層膜形成用組成物をコーティングし、100℃以上800℃以下の温度で10秒から7,200秒間の熱処理をして硬化させることで下層膜前駆膜を形成する工程と、
(ii)前記下層膜前駆膜を形成した基板をプラズマ照射し、レジスト下層膜を形成する工程、
を含むレジスト下層膜形成方法であり、
前記(A)重合体を、下記一般式(1)で示される構成単位を含み、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000のものとするレジスト下層膜形成方法を提供する。
【化1】
(式中、Ar
1およびAr
2は独立して置換または非置換のベンゼン環または置換または非置換のナフタレン環であり、Xは下記一般式(1A)で示される構造であり、Yは炭素数6~50の2価の有機基であり、kは0または1である。)
【化2】
(式中、n
1は0又は1であり、n
2は1又は2であり、R
2は水素原子、炭素数1~10の有機基、又は下記一般式(1B)で示される構造のいずれかである。R
3は水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(1C)で示される基であり、n
3は0、1、又は2であり、*はメチレン基との結合部であり、**はフルオレンの4級炭素との結合部である。)
【化3】
(式中、*は酸素原子への結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化4】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0013】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、高炭素密度なフルオレン骨格を含む構造が、メチレン基を介して繰り返し結合しているため、プラズマ照射による膜の改質が起こりやすく、ドライエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を提供することができる。また、酸素原子を含む架橋基構造およびメチレン基を含むことで、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上し、プラズマ照射による膜中の固形成分の飛散を緩和できるため、プラズマ照射前後の膜厚変化が小さく、膜厚均一性とドライエッチング耐性を高度に両立したレジスト下層膜を形成できる。
【0014】
また、前記一般式(1)中、Yが下記式(Y-1)で示される構造のいずれかであることが好ましい。
【化5】
(上記構造の水素原子が、水酸基または炭素数1~10の1価の有機基で置換されていてもよい。)
【0015】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射による膜の改質が起こりやすく、ドライエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を提供することができる。
【0016】
また、前記一般式(1A)中、R2が水素原子であることが好ましい。
【0017】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射後の基板密着性に優れたレジスト下層膜を提供できる。さらに、膜の高密度化にも寄与するため好ましい。
【0018】
また、前記一般式(1A)中、R2が水素原子または前記一般式(1B)で示される構造であり、前記R2を構成する構造のうち、水素原子の割合をa、前記一般式(1B)で示される構造の割合をbとした場合、a+b=1、0.1≦b≦0.9の関係を満たすことが好ましい。
【0019】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射後の基板密着性に優れたレジスト下層膜を提供できる。また、流動性に優れた重合体となるため、平坦化特性に優れたレジスト下層膜形成方法を提供できる。
【0020】
また、前記一般式(1)中、Ar1およびAr2が非置換のベンゼン環であり、前記一般式(1A)中、n1が0であり、n2が1または2であり、n3が0であることが好ましい。
【0021】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射による膜の改質が起こりやすく、ドライエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を提供することができる。また、流動性に優れた重合体となるため、平坦化特性に優れたレジスト下層膜形成方法を提供できる。
【0022】
前記一般式(1)中、kが0であることが好ましい。
【0023】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、溶剤溶解性に優れた重合体となるため、レジスト下層膜形成用組成物の保存安定性が向上し、実用性に優れたレジスト下層膜形成方法を提供できる。
【0024】
前記(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、7000から15,000であることが好ましい。
【0025】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上し、プラズマ照射による膜中の固形成分の飛散を緩和できるため、膜厚均一性とドライエッチング耐性を高度に両立したレジスト下層膜を形成できる。
【0026】
また、前記レジスト下層膜形成用組成物を、さらに(C)架橋剤、(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものとすることが好ましい。
【0027】
上記添加剤を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いることで、塗布性、膜厚均一性、ドライエッチング耐性、埋め込み/平坦化特性など、レジスト下層膜を形成するために用いた場合に要求される諸物性を適切な範囲で調整することが可能となる。
【0028】
また、前記(B)有機溶剤を、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤である(B-1)高沸点溶剤1種以上との混合物とすることが好ましい。
【0029】
このような(B)成分を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いることで、平坦化特性に優れたレジスト下層膜を形成できる。
【0030】
また、前記(ii)工程において、前記プラズマ照射を、N2、NF3、H2、フルオロカーボン、希ガス、またはこれらいずれかの混合の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0031】
レジスト下層膜の硬化方法がプラズマ照射であることにより、加熱のみの硬化方法に対して優れたドライエッチング耐性を示すレジスト下層膜を提供することができる。
【0032】
また、前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で行うことが好ましい。
【0033】
このような方法により、レジスト下層膜中の樹脂の反応点を活性化させ、プラズマ照射による硬化反応を促進させることができる。
【0034】
また、前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%未満の雰囲気で行うことが好ましい。
【0035】
このような方法により、被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、レジスト下層膜中の重合体の反応点を活性化させ、プラズマ照射による硬化反応を促進させることができ有用である。
【0036】
また本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)上記のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0037】
上記パターン形成方法により、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0038】
また本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)上記のレジスト下層膜形成方法により、段差を有する被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜の上層にレジスト上層膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にまでパターンを転写する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0039】
上記パターン形成方法により、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0040】
このとき、前記被加工基板の段差のアスペクト比を3以上とすることが好ましい。
【0041】
本発明のパターン形成方法は、高度な埋め込み/平坦化特性を有するレジスト下層膜を形成することができるため、特にこのような構造体又は段差を有する基板の微細加工に有用である。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜形成方法、及びパターン形成方法は、段差、凹凸のある被加工基板の埋め込み/平坦化を含む、多層レジストプロセスに特に好適に用いられ、半導体装置製造用の微細パターニングにおいて極めて有用である。特に、半導体装置製造工程における多層レジスト法を用いた微細パターニングプロセスにおいて、微細化の進むDRAMメモリに代表される高アスペクト比の微細パターン構造の密集部など、埋め込み/平坦化が困難な部分を有する被加工基板上であっても、ボイドや剥がれ等の不良を生じることなく埋め込むことが可能であり、平坦特性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。また、従来のレジスト下層膜形成方法に対して優れたエッチング耐性と膜厚均一性を示し、特にプラズマ照射をすることで、その効果を発揮することができる。このため、被加工体に微細なパターンをより一層高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明のパターン形成方法の一例(3層レジストプロセス)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
上述のように、多層レジスト法を用いた微細パターニングプロセスにおいて、より高精度でレジストパターンを被加工基板に転写できるレジスト下層膜形成方法および該レジスト下層膜を用いたパターン形成方法の開発が求められていた。
【0045】
特許文献3では、プラズマ照射をすることで、レジスト下層膜の基板加工時におけるドライエッチング耐性が向上することが報告されている。プラズマ照射によりレジスト下層膜の炭素結合が乖離ならびに再結合してダイアモンドライクカーボン構造を有する硬化膜として再構築することで、硬度や密度の上昇に寄与すると考察されている。
【0046】
一方で、特許文献3の実施例で使用されているレジスト下層膜形成用組成物は、分子量が1,100以下のオリゴマーを用いているためか、追加処理前のレジスト下層膜の硬化性が不十分であり、炭素結合の乖離ならびに再結合の進行だけでなく、膜中の固形成分の飛散も積極的に起こっているのではないかと考える。上記実施例では、プラズマ照射処理による膜厚変化が100nm以上と大きく、プラズマ照射後のレジスト下層膜の膜厚均一性も不十分であることが予想される。段差を有する被加工基板の充填膜に用いる場合、プラズマ照射および電子線照射による膜収縮の影響で平坦性が劣化する可能性や、プラズマ照射および電子線照射の過程で膜中の固形成分が飛散しすぎることで充填膜中にボイドが発生する可能性が考えられる。このため、プラズマ照射前後の膜厚変化が小さいレジスト下層膜形成方法が必要と考える。
【0047】
本発明者らは、ドライエッチング耐性と膜厚均一性を高度に両立できるレジスト下層膜形成方法を模索し、鋭意検討を重ねてきた。その結果、一般式(1)で示される構成単位を含む(A)重合体と(B)有機溶剤を含み、前記(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000であることを特徴とするレジスト下層膜形成用組成物をコーティングし、100℃以上800℃以下の温度で10秒から7,200秒間の熱処理をして硬化させることで下層膜前駆膜を形成する工程と、前記下層膜前駆膜を形成した基板をプラズマ照射し、レジスト下層膜(硬化膜)を形成する工程、を含むことを特徴とするレジスト下層膜形成方法であれば、従来のプラズマ照射によるレジスト下層膜形成方法に対して、プラズマ照射前後の膜厚変化が小さく、優れたドライエッチング耐性と膜厚均一性を示すレジスト下層膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0048】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<レジスト下層膜形成方法>
本発明は、基板上にレジスト下層膜を形成する方法であって、(i)前記基板上に、(A)重合体と(B)有機溶剤とを含むレジスト下層膜形成用組成物をコーティングし、100℃以上800℃以下の温度で10秒から7,200秒間の熱処理をして硬化させることで下層膜前駆膜を形成する工程と、(ii)前記下層膜前駆膜を形成した基板をプラズマ照射し、レジスト下層膜を形成する工程、を含むレジスト下層膜形成方法であり、前記(A)重合体を、下記一般式(1)で示される構成単位を含み、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000のものとするレジスト下層膜形成方法である。
【化6】
(式中、Ar
1およびAr
2は独立して置換または非置換のベンゼン環または置換または非置換のナフタレン環であり、Xは下記一般式(1A)で示される構造であり、Yは炭素数6~50の2価の有機基であり、kは0または1である。)
【化7】
(式中、n
1は0又は1であり、n
2は1又は2であり、R
2は水素原子、炭素数1~10の有機基、又は下記一般式(1B)で示される構造のいずれかである。R
3は水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(1C)で示される基であり、n
3は0、1、又は2であり、*はメチレン基との結合部であり、**はフルオレンの4級炭素との結合部である。)
【化8】
(式中、*は酸素原子への結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化9】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0050】
上記(i)工程におけるレジスト下層膜形成用組成物のコーティング方法は、特に限定されない。レジスト下層膜形成用組成物の詳細については、後述する。
【0051】
上記(i)工程において、塗膜の熱処理(ベーク)温度は、100℃以上800℃以下の温度とし、150℃以上600℃以下の温度がより好ましく、150℃以上400以下の温度が更に好ましく、200℃以上350以下がさらに好ましい。ベーク時間は10秒から7,200秒間の範囲とし、30秒から600秒間の範囲が更に好ましい。
【0052】
ベーク温度及び時間を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した平坦化・埋込特性、またドライエッチング耐性や耐熱特性などの硬化特性を得ることができる。150℃以上400℃以下の温度範囲内で熱処理(ベーク)を行うことで、下層膜前駆膜中の炭素結合の乖離と再結合が起こる活性点が膜中に多く含まれる状態となり、プラズマ照射による膜改質が促進されやすくなるため、ドライエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。ベーク温度100℃以上では、膜中の残留溶剤を低減でき、プラズマ照射による膜厚均一性の劣化を抑制できる。ベーク温度800℃以下とすれば、ベース樹脂の熱分解を抑制でき、昇華物量の少ないレジスト下層膜を提供できる。加熱処理を複数に分けて行う(ステップベーク)ことも可能である。
【0053】
また、上記(i)工程において、熱処理を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で行うことができる。
【0054】
このような方法により、レジスト下層膜前駆膜中の樹脂の反応点を活性化させ、プラズマ照射による硬化反応を促進させることができる。
【0055】
或いは、上記(i)工程において、熱処理を酸素濃度1%未満の雰囲気で行うこともできる。
【0056】
ベークの際の雰囲気としては、空気中などの含酸素雰囲気(酸素濃度1%~21%)、窒素中などの非酸素雰囲気のいずれをも、必要に応じて選択可能である。例えば、被加工基板が空気酸化を受け易い場合には、酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理して硬化膜を形成することにより、基板ダメージを抑制可能である。
【0057】
プラズマ照射は、公知の方法を用いることができる。例えば、特許第5746670号明細書、”Improvement of the wiggling profile of spin-on carbon hard mask by H2 plasma treatment”(J.Vac.Sci.Technol. B26 (1),Jan/Feb 2008年、p67-71)に記載の方法が挙げられる。
【0058】
RF放電パワーは、100~10,000Wが好ましく、500~5,000Wがより好適である。
【0059】
ガス雰囲気としては、例えば、N2、NF3、H2、Heなどの希ガス、フルオロカーボンが挙げられ;より好適には、He、Ar、N2、Ne、NF3、H2、CF4、CHF3、CH2F2、CH3F、C4F6、C4F8などが挙げられる。これらのガスは2種以上を混合して用いても良い。O2を含まないガス雰囲気を用いても本発明の効果を期待できることが、本発明の有利な点である。
【0060】
プラズマ照射の時間は、例えば、10~240秒間から選択できる。圧力は適宜選択できる。
【0061】
上記(ii)工程において、前記プラズマ照射をN2、NF3、H2、フルオロカーボン、Heなどの希ガス、またはこれらいずれかの混合物の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0062】
生産性の観点から、特に好ましいガス雰囲気としてHe、Ar、N2、H2などが挙げられる。
【0063】
プラズマ照射後に、レジスト下層膜に加熱処理を行ってもよい。プラズマ照射後に加熱する場合、加熱条件として、加熱温度は80~800℃(好ましくは100~700℃、より好ましくは200~600℃)、加熱時間は30~180秒間(好ましくは30~120秒間)の範囲から適宜、選択することができる。理論に拘束されないが、プラズマ照射後に高温の加熱を行うことで、ダングリングボンドを結合させ、硬化膜(レジスト下層膜)の高密度化に寄与することができる、と考えられる。
【0064】
プラズマ照射後に加熱する際の雰囲気としては、空気中などの含酸素雰囲気(酸素濃度1%~21%)、窒素中などの非酸素雰囲気のいずれをも、必要に応じて選択可能である。例えば、被加工基板が空気酸化を受け易い場合には、酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理して硬化膜を形成することにより、基板ダメージを抑制可能である。
【0065】
照射装置としては、プラズマ照射できる装置であれば特に限定されないが、例えば東京エレクトロン社製Telius SP、Tactras Vigusが使用可能である。本発明の効果をより顕著に奏することができるように、装置を選択すること、および条件を設定することが可能である。
【0066】
以下に詳細に説明するレジスト下層膜形成用組成物を用いた本発明のパターン形成方法では、アスペクト比3以上または高さ30nmの構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。本発明で用いるレジスト下層膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板にアスペクト比3以上または高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦なレジスト下層膜(硬化膜)を形成することができる。上記被加工体基板の有する構造体はアスペクト比3以上が好ましく、アスペクト比5以上がより好ましい。上記被加工体基板の有する構造体又は段差の高さは30nm以上が好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがより好ましい。上記アスペクト比および上記高さのパターンを有する段差基板を加工する方法において、本発明のレジスト下層膜形成方法でレジスト下層膜を形成して埋込/平坦化を行うことにより、その後成膜されるレジスト中間膜、レジスト上層膜の膜厚を均一にすることが可能となるため、フォトリソグラフィー時の露光深度マージン(DOF)確保が容易となり、非常に好ましい。
【0067】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成方法では、(A)重合体と(B)有機溶剤を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い、(A)重合体は下記一般式(1)の構成単位を含み、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000のものであることを特徴とする。
【化10】
(式中、Ar
1およびAr
2は独立して置換または非置換のベンゼン環または置換または非置換のナフタレン環であり、Xは下記一般式(1A)で示される構造であり、Yは炭素数6~50の2価の有機基であり、kは0または1である。)
【化11】
(式中、n
1は0又は1であり、n
2は1又は2であり、R
2は水素原子、炭素数1~10の有機基、又は下記一般式(1B)で示される構造のいずれかである。R
3は水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(1C)で示される基であり、n
3は0、1、又は2であり、*はメチレン基との結合部であり、**はフルオレンの4級炭素との結合部である。)
【化12】
(式中、*は酸素原子への結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化13】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0068】
[(A)重合体(樹脂)]
(A)重合体が、上記一般式(1)で示される構成単位を含む樹脂であれば、高炭素密度なフルオレン骨格を含む構造が、メチレン基を介して繰り返し結合しているため、プラズマ照射により、炭素結合の乖離と再結合が促進されやすく、ダイアモンドライクカーボン構造を有するレジスト下層膜を形成できる。また、酸素原子を含む架橋基構造およびメチレン基を含むことで、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上し、プラズマ照射による膜中の固形成分の飛散を緩和できるため、膜厚均一性とドライエッチング耐性を高度に両立したレジスト下層膜を形成できる。
【0069】
上記一般式(1B)中、RAで表される炭素数1~10の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基、デカンジイル基等のアルカンジイル基、ベンゼンジイル基、メチルベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基等のアレーンジイル基等が挙げられる。
【0070】
上記一般式(1B)中、RBで表される炭素数1~10の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0071】
上記アルカンジイル基、アレーンジイル基、アルキル基、アリール基等が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0072】
特に好ましい例としては、下記式(1D)で示される構造を挙げることができる。このような構造を持つとき、熱流動性が良好となり、埋め込み/平坦化特性に優れたレジスト下層膜材料を提供することができる。また、耐熱特性および成膜性が良好となり、加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制し、塗布欠陥の発生を抑制することができる。
【化14】
(上記式中、*は酸素原子への結合部位を表す。)
【0073】
上記式(1)中、Yが下記式(Y-1)で示される構造のいずれかであることが好ましい。なお、下記構造中、式(1)中のメチレン基との結合手の位置は特に限定されない。
【化15】
(上記構造の水素原子が、水酸基または炭素数1~10の1価の有機基で置換されていてもよい。)
【0074】
上記構造を含む重合体を用いることで、レジスト下層膜中の炭素密度が向上するため、プラズマ照射により、炭素結合の乖離と再結合が促進されやすく、ダイアモンドライクカーボン構造を有するレジスト下層膜を形成できる。
【0075】
上記構造の水素原子は、水酸基または炭素数1~10の1価の有機基で置換されていてもよく、炭素数1~10の1価の有機基としては、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(Y-2)で示される基が挙げられる。
【化16】
(式中、*は上記式(Y-1)構造との結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基であり、sは0または1である。)
【0076】
ドライエッチング耐性の観点から、上記式(Y-1)で示される構造の水素原子は、非置換であることがより好ましい。
【0077】
上記式(Y-1)で示される構造のより好ましい例として、具体的に下記構造を挙げることができる。
【化17】
【0078】
上記式(1C)中、R4は水素原子またはエテニル基、エチニル基を含む炭素数1~10の炭化水素基が好ましく、ベンゼン環上の水素原子は非置換であることが好ましい。
【0079】
上記R4が水素原子であれば、重合体の硬化性をより向上させることができ、プラズマ照射後の膜厚均一性をより向上させることができる。上記R4がエテニル基、エチニル基を含む炭素数1~10の炭化水素基であれば、重合体の流動性をより向上させることができ、プラズマ照射後の平坦化特性をより向上させることができる。
【0080】
上記式(1)中、Ar1およびAr2が非置換のベンゼン環または非置換のナフタレン環であり、n2が1であり、n3が0であることが好ましい。
【0081】
また、上記式(1)中、Ar1およびAr2が非置換のベンゼン環であり、上記式(1A)中、n1が0であり、n2が1または2であり、n3が0であることがより好ましい。
【0082】
このような重合体を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いたレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射により、炭素結合の乖離と再結合が促進されやすく、ダイアモンドライクカーボン構造を有するレジスト下層膜を形成できる。
【0083】
また、酸素原子を含む架橋基構造を含むことで、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上し、プラズマ照射前後において膜厚均一性に優れたレジスト下層膜を形成できる。一方で、酸素原子を含む架橋基構造が少ない方が、膜中に残る酸素原子が少なくなるのでエッチング耐性の観点から好ましい。このため、n2は1がより好ましく、n3は0がより好ましい。
【0084】
上記式(1A)中、kが0であることが好ましい。
【0085】
このようなレジスト下層膜形成方法であれば、溶剤溶解性に優れた重合体となるため、レジスト下層膜形成用組成物の保存安定性が向上し、実用性に優れたレジスト下層膜形成方法を提供できる。
【0086】
好ましい構造の例として、具体的には下記の構造(1-A1)を例示できるがこれらに限定されない。
【0087】
【化18】
(上記式中、R
2は上記式(1A)と同様である。)
【0088】
上記式(1A)中、n1は0がより好ましい。
【0089】
このような重合体を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いたレジスト下層膜形成方法であれば、高炭素密度なフルオレン骨格を含む構造が、メチレン基を介して繰り返し結合しているため、プラズマ照射により、炭素結合の乖離と再結合が促進されやすく、ダイアモンドライクカーボン構造を有するレジスト下層膜を形成できる。また、流動性に優れた重合体となるため、平坦化特性に優れたレジスト下層膜形成方法を提供できる。
【0090】
上記式(1A)中、R2が水素原子または一般式(1B)で示される構造であることが、硬化性の観点からより好ましい。
【0091】
上記架橋基構造を含むことで、レジスト下層膜の硬化性と耐熱性が向上し、プラズマ照射前後において膜厚均一性に優れたレジスト下層膜を形成できる。
【0092】
上記式(1A)中、R2が水素原子または一般式(1B)で示される構造であり、前記R2を構成する構造のうち、水素原子の割合をa、前記一般式(1B)で示される構造の割合をbとした場合、a+b=1、0.1≦b≦0.9の関係を満たす重合体を用いることが好ましい。
【0093】
水素原子と上記一般式(1B)の割合を上記の様な範囲に制御することで、流動性と基板密着性を高度に発揮することが可能であり、埋め込み/平坦化特性の上昇したレジスト下層膜材料を提供することができる。bの範囲が≦0.9であれば、水酸基の含有量が十分であり基板との密着性が良好になる。また、緻密な膜を形成するには水酸基同士の架橋反応が好ましく、耐熱特性の観点からも水酸基を一定の割合以上に含んでいることが好ましい。一方、bの範囲が0.1≦であれば、樹脂の熱流動性が十分となり、埋め込み/平坦化特性が良好になる。
【0094】
上記式(1A)中、R2が水素原子であることがさらに好ましい。
【0095】
このような重合体を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いたレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射により、炭素結合の乖離と再結合が促進されやすく、ダイアモンドライクカーボン構造を有するレジスト下層膜を形成できる。また、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上するため、プラズマ照射前後における膜厚変化が小さく、プラズマ照射後の膜厚均一性に優れたレジスト下層膜を形成できる。
【0096】
前記重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、2,500から20,000であり、5,000から18,000であることが好ましく、7,000から15,000であることがさらに好ましい。2,500以上である場合、昇華物量を抑えることができ、膜厚均一性の劣化を抑えることができる。20,000以下である場合、樹脂の溶剤溶解性を維持して、経時での析出を防ぐことができるので、保存安定性の観点から好ましい。また、流動性が優れているため、優れた埋め込み性、及び優れた平坦性を実現できる。そして、前記重合体の有機溶剤への溶解性を損なわずに、ベーク時のアウトガスを抑制できる。
【0097】
前記(A)重合体の分散度(Mw/Mn)は、1.2~12の範囲内が好ましく用いられるが、モノマー成分、オリゴマー成分または分子量(Mw)1,100以下の低分子量体をカットして分子量分布を狭くした方が架橋効率が高くなり、またベーク中およびプラズマ照射中の揮発成分を抑えることにより膜厚均一性に優れたレジスト下層膜を形成できる。ベーク中の揮発成分を抑えることによりベークカップ周辺の汚染を防ぐこともできる。なお、Mnは数平均分子量を表す。
【0098】
前記(A)重合体は、上記式(1)の構成単位を含んでいればよく、その他共重合可能なモノマー(A-2)を共重合させることができ、具体的には、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、3-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシ-ナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネンなどが挙げられ、これらのものを加えた3元以上の共重合体であっても構わない。
【0099】
上記(A)重合体が、その他モノマー(A-2)由来の構成単位を含む場合、上記式(1)の構成単位と、その他モノマー(A-2)由来の構成単位の割合は、上記式(1)の構成単位をc、その他モノマー(A-2)由来の構成単位をdとした場合、c+d=1、0.5≦c≦0.9、0.1≦d≦0.5の関係を満たすことを好ましい。
【0100】
その他モノマー(A-2)由来の構成単位を含むことで、レジスト下層膜の塗布性、膜厚均一性、埋め込み特性、平坦化特性およびドライエッチング耐性を適宜調整することが可能であるが、プラズマ照射後のドライエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成するには、上記式(1)の構成単位を多く含む重合体であることが好ましく、その他モノマーモノマー(A-2)由来の構成単位を含まない重合体であることがより好ましい。
【0101】
なお、レジスト下層膜形成用組成物中における(A)重合体の配合比率は特に限定されないが、例えば、組成物全量100質量部に対して1~50質量部、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~10質量部とすることができる。
【0102】
前記(A)重合体は、上記式(1)の構成単位を有する樹脂を含んでいればよく、更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、上記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。また、ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーとしては、フェノール性水酸基を持つ化合物が好ましい。
【0103】
このような材料としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジメチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004-205685号公報に記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005-250434号公報に記載のアセナフチレン共重合体、特開2006-227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006-293298号公報に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006-285095号公報に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010-122656号公報に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008-158002号公報に記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0104】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、(A)重合体(上記一般式(1)で示される構造単位を有する樹脂)100質量部に対して5~100質量部が好ましく、より好ましくは5~50質量部である。
【0105】
プラズマ照射後のドライエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成するには、上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量が少ない方が好ましく、上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーを含まない方がより好ましい。
【0106】
[(B)有機溶剤]
上記レジスト下層膜形成用組成物において使用可能な有機溶剤としては、上記(A)重合体を溶解できれば特に制限はなく、後述する架橋剤、界面活性剤、酸発生剤、可塑剤も溶解できるものが好ましい。
【0107】
具体的には、例えば、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている溶剤を添加することができる。さらに具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びγ―ブチロラクトン、またはこれらのうち1種以上を含む混合物が好ましく用いられる。
【0108】
有機溶剤の配合量は、レジスト下層膜の設定膜厚に応じて調整することが望ましいが、通常、上記(A)重合体100質量部に対して、100~50,000質量部の範囲である。
【0109】
[(B-1)高沸点溶剤]
また、上記レジスト下層膜形成用組成物においては、(B)有機溶剤を、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点180度以上の有機溶剤(以下、「(B-1)高沸点溶剤」と称する)1種以上との混合物として用いてもよい。
【0110】
沸点が180度未満の有機溶剤として具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノンを例示できる。
【0111】
(B-1)高沸点溶剤としては、本発明で用いるレジスト下層膜形成用組成物の各成分を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、モノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、及びアジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独又は混合して用いてもよい。
【0112】
(B-1)高沸点溶剤は、上記レジスト下層膜形成用組成物を熱処理する温度等に合わせて、例えば上記のものから適宜選択すればよい。(B-1)高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、200℃~300℃であることが更に好ましい。このような沸点であれば、沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速くなりすぎる恐れがないため、成膜時に十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば、沸点が高すぎてベーク後も揮発することなく膜中に残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0113】
また、(B-1)高沸点溶剤を使用する場合の配合量は、(A)重合体の質量部100に対して、1~200質量部とすることが好ましく、1~100質量部がより好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性を付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性等の膜物性の劣化につながったりする恐れがなく、好ましい。
【0114】
[(C)架橋剤]
また、上記レジスト下層膜形成用組成物には、硬化性を高め、ドライエッチング耐性を向上させるために、架橋剤(C)を添加することもできる。
【0115】
(C)架橋剤としては、具体的には下記一般式(C-1)で示される構造を有する化合物が特に好ましい。
【化19】
(上記一般式(C-1)中、W
1及びW
2は、それぞれ、置換基を有してもよいベンゼン環またはナフタレン環であり、R
2は、水素原子または炭素数1~20の1価の有機基を表し、Xは下記一般式(2)で示される基の何れかである。)
【化20】
(式中、*は結合部位を表す。)
【0116】
上記(C)架橋剤を含むことで、レジスト下層膜形成用組成物のドライエッチング耐性を劣化させることなく、レジスト下層膜の架橋密度と硬度をさらに向上させることができる。
【0117】
上記(C)架橋剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.25であることが好ましい。
【0118】
前記架橋剤の分子量分散度が上記のようなものであれば、レジスト下層膜形成用組成物の熱流動性が良好なものとなるため、レジスト下層膜材料に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となるレジスト下層膜を形成することができる。
【0119】
その他(C)架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、フェノール系架橋剤(例えば多核フェノール類のメチロールまたはアルコキシメチル型架橋剤)を例示できる。
【0120】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス-4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0121】
多核フェノール系架橋剤としては、具体的には下記一般式(C-2)で示される化合物を例示することができる。
【化21】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。R
3は水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【0122】
上記一般式(C-2)中のQは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qが炭素数1~20のq価の炭化水素基である場合、Qは炭素数1~20の炭化水素からq個の水素を除いたq価の炭化水素基である。この場合の炭素数1~20の炭化水素としてより具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンを例示できる。
【0123】
上記一般式(C-2)中のR3は水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0124】
上記一般式(C-2)で示される化合物を(C)架橋剤として有することで、膜の緻密性を向上させることが可能である。これにより、レジスト下層膜形成用組成物の耐熱特性をさらに向上させることが可能となる。
【0125】
上記一般式(C-2)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できるがこれらに限定されない。下記式中、R3は上記と同様である。q=3かつR3がメチル基を満たす場合が硬化性、膜厚均一性向上、および昇華物低減の観点から好ましく、特にトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。
【0126】
【0127】
【0128】
上記(C)架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(C)架橋剤の含有量は、上記(A)重合体の質量部100に対して5質量部~100質量部が好ましく、10質量部~50質量部がより好ましい。添加量が5質量部以上であれば、(A)重合体との架橋反応が促進され、硬化性に優れた緻密な膜が形成されるため、耐熱特性、ドライエッチング耐性、及び膜厚均一性が良好なレジスト下層膜を形成できる。一方、添加量が100質量部以下であれば、(A)重合体と(C)架橋剤の架橋反応の鈍化に伴う昇華物発生を抑制でき、昇華物発生と膜厚均一性の劣化を低減できる。
【0129】
[(D)界面活性剤]
上記レジスト下層膜形成用組成物には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、上記(A)重合体の質量部100に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。
【0130】
[(E)酸発生剤]
上記レジスト下層膜形成用組成物は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0131】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、上記(A)重合体の質量部100に対して、好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0132】
[(F)可塑剤]
また、上記レジスト下層膜形成用組成物には、熱流動性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、上記(A)重合体の質量部100に対して、好ましくは5~500質量部、より好ましくは10~200質量部である。
【0133】
また、上記レジスト下層膜形成用組成物には、上記の他に、熱流動性を更に向上させるための添加剤(流動性促進剤)を加えてもよい。上記添加剤としては、熱流動性の向上に寄与し、埋め込み特性および平坦化特性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)又は(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0134】
【化24】
(式中、R
6は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Yは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0135】
【化25】
(式中、R
6aは炭素数1~4のアルキル基である。Y
aは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0136】
<パターン形成方法>
また、本発明では、上記レジスト下層膜形成用組成物を用いた2層レジストプロセスによるパターン形成方法として、本発明のレジスト下層膜形成方法によって被加工基板上にレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで該レジスト下層膜にパターンを転写し、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして該被加工基板を加工して該被加工基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0137】
上記2層レジストプロセスのレジスト上層膜は、感光性有機金属酸化物膜であることが好ましい。前記感光性有機金属酸化物膜は、酸素系ガスによるエッチング耐性を示すため、上記2層レジストプロセスにおいて、レジスト上層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のドライエッチングを、酸素系ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0138】
また、本発明では、上記のレジスト下層膜形成用組成物を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)本発明のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(I-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0139】
図1を用いて3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例について説明する。まず、
図1(A)のように、支持基板1とその上に形成された被加工層2とを含む被加工基板1Aの被加工層2上に、本発明のレジスト下層膜形成方法によってレジスト下層膜3を形成し、レジスト下層膜3上にレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜4(例えば、ケイ素含有レジスト中間膜)を形成し、前記レジスト中間膜4上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜5を形成する。続けて、
図1(B)のように、パターン露光により、レジスト上層膜5中に露光部分6を形成する。次に、露光部分6を現像液で現像して、
図1(C)のように、前記レジスト上層膜5にレジスト上層膜パターン5aを形成する。次に、パターン5aが形成されたレジスト上層膜5をマスクにしてドライエッチングにより、
図1(D)のように前記レジスト中間膜4にレジスト中間膜パターン4aを転写する。次に、前記パターン4aが転写されたレジスト中間膜4をマスクにしてドライエッチングにより、
図1(E)のように、レジスト下層膜3にレジスト下層膜パターン3aを転写する。そして、前記パターン3aが形成されたレジスト下層膜3をマスクにして前記被加工基板1Aの被加工層2を加工して、
図1(F)のように、前記被加工基板1にパターン2aを形成する。
【0140】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜は、酸素系ガスによるエッチング耐性を示すため、上記3層レジストプロセスにおいて、ケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして行うレジスト下層膜のドライエッチングを、酸素系ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0141】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシロキサンベースの中間膜も好ましく用いられる。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm又は157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0142】
加えて、本発明では、このようなレジスト下層膜形成用組成物を用いた4層レジストプロセスによるパターン形成方法として、本発明のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上に、ケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜上に、有機反射防止膜(BARC)又は密着膜を形成し、該BARC又は密着膜上にフォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、該レジスト上層膜にパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで該BARC又は密着膜、及び該ケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで該レジスト下層膜にパターンを転写し、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして該被加工基板を加工して該被加工基板にパターンを形成する工程を有することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0143】
また、ケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成してもよく、この場合には、少なくとも、被加工体上に本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして無機ハードマスクをエッチングし、該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、該パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成することで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0144】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスクを形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、レジスト下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いるレジスト下層膜形成用組成物は、高い耐熱性を有しており300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0145】
上記のように、無機ハードマスクの上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)又は密着膜をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0146】
上記パターン形成方法において、レジスト上層膜はポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。また、フォトレジスト組成物がSn、In、Ga、Ge、Al、Ce、La、Cs、Zr、Hf、Ti、Bi、Sb、Znなどの金属原子を含んでいてもよい。上記フォトレジスト組成物によりレジスト上層膜を形成する場合、スピンコート法でもCVDまたはALDによる蒸着処理により形成する方法でもよい。
【0147】
スピンコート法によりフォトレジスト組成物を形成する場合、レジスト塗布後にプリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、10~500nm、特に20~400nmが好ましい。
【0148】
CVDまたはALDによる蒸着処理によりフォトレジスト組成物を形成する場合、前記レジスト組成物はEUV感光性の金属酸化膜であり、前記金属はSn、Zr、Hf、Ti、Bi、Sbなどから選択され、中でもEUV感光性に優れるSnが好ましい。金属酸化物含有膜は、有機スズ酸化物(例えば、ハロアルキルSn、アルコキシアルキルSn、または、アミドアルキルSn)などの感光性有機金属酸化物膜であってよい。適切な前駆体のいくつかの具体例は、塩化トリメチルスズ、二塩化ジメチルスズ、三塩化メチルスズ、トリス(ジメチルアミノ)メチルスズ(IV)、および、(ジメチルアミノ)トリメチルスズ(IV)を含む。
【0149】
金属酸化膜は、例えば、Lam Vector(登録商標)ツールを用いて、PECVDまたはPEALDによって蒸着されてよく、ALD実施例ではSn酸化物前駆体をO前駆体/プラズマから分離する。蒸着温度は、50℃~600℃の範囲が好ましい。蒸着圧力は、100~6000mTorrの間が好ましい。金属酸化物含有膜の前駆体液の流量(例えば、有機スズ酸化物前駆体)は、0.01~10cmmであってよく、ガス流量(CO2、CO、Ar、N2)は、100~10000sccmであってよい。プラズマ電力は、高周波プラズマ(例えば、13.56MHz、27.1MHz、または、それより高い周波数)を用いて、300mmウェハステーションあたり200~1000Wであってよい。蒸着厚さは、100~2000Åが好ましい。
【0150】
露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0151】
上記レジスト上層膜のパターン形成方法として、波長が5nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることが好ましい。
【0152】
また、前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることが好ましい。
【0153】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスクのエッチングは、フロン系のガスを用いて上層レジストパターンをマスクにして行う。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスクパターンを形成する。
【0154】
次いで、得られたケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスクパターンをマスクにして、レジスト下層膜のエッチング加工を行う。レジスト下層膜のエッチング加工は酸素系ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0155】
次の被加工体のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工体がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。
【0156】
本発明のレジスト下層膜形成方法によって得られるレジスト下層膜は、これら被加工体エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
【0157】
なお、被加工体(被加工基板)としては、特に限定されるものではなく、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板(支持基板)上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0158】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)本発明のレジスト下層膜形成方法により、段差を有する被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜の上層にレジスト上層膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にまでパターンを転写する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0159】
レジスト下層膜と上層のレジスト層の間には、有機下層膜、ケイ素含有膜、無機ハードマスク、有機反射防止膜(BARC)又は密着膜などが積層されていてもよい。
【0160】
段差を有する被加工基板をレジスト下層膜で充填し、レジスト下層膜の上層で形成した微細パターン(例えば、SADPやSAQPなどのマルチパターニング技術で形成したパターン)をレジスト下層膜直上のハードマスクに転写し、ハードマスクパターンをレジスト下層膜に転写し、レジスト下層膜パターンを被加工基板に転写する工程を含むことが好ましい。
【0161】
有機下層膜、ケイ素含有膜、無機ハードマスク、有機反射防止膜(BARC)、密着膜、及び被加工基板の材質、膜厚および形成方法などは、前記と同様である。
【0162】
本発明のレジスト下層膜形成方法は、段差を有する被加工基板の埋め込み特性、平坦化特性に優れるとともに、被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れるため、上記のようなパターン形成方法に有効である。
【実施例0163】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0164】
重合体(A1)から(A11)および比較例用化合物(R1)から(R5)の合成には、下記に示す化合物:(G1)~(G10)を用いた。
【0165】
【0166】
合成例 (A)重合体の合成
【0167】
[合成例1]重合体(A1)の合成
【化27】
窒素雰囲気下、化合物(G1)100.0g、92%ホルムアルデヒド14.7g、パラトルエンスルホン酸5.0gおよびエチレングリコール200gを加え、内温140℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え、ヘキサン1200gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A1):Mw=5,610、Mw/Mn=3.60
【0168】
[合成例2]重合体(A2)の合成
【化28】
窒素雰囲気下、化合物(G2)180g、37%ホルマリン溶液75g、シュウ酸5gを加え、内温100℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF320gを加え、ヘキサン1350gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A2):Mw=11,200、Mw/Mn=4.35
【0169】
[合成例3]重合体(A3)の合成
【化29】
窒素雰囲気下、化合物(G2)100.0g、化合物(G3)48.3gおよび1,2-ジクロロエタン450gを混合し、内温60℃で均一分散させた後、メタンスルホン酸82.4gを1時間かけ滴下し、内温70℃で24時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1000gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF450gを加え、ヘキサン1800gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A3):Mw=9,800、Mw/Mn=3.50
【0170】
[合成例4]重合体(A4)の合成
【化30】
窒素雰囲気下、化合物(G2)180.0g、化合物(G4)58.0g、37%ホルマリン溶液75.0g、シュウ酸5.0gおよび2-メトキシ-1-プロパノール500gを加え、内温100℃で24時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1000gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF480gを加え、ヘキサン2400gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A4)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A4):Mw=9,350、Mw/Mn=3.76
【0171】
[合成例5]重合体(A5)の合成
【化31】
窒素雰囲気下、合成例2で得られた化合物(A2)50.0g、炭酸カリウム38.1g、ジメチルホルムアミド200gを加え、50℃で均一な分散液とした後、アリルブロミド23.4gをゆっくりと滴下し、内温50℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、反応液にメチルイソブチルケトン400mlと純水300gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100gおよび純水100gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固することで重合体(A5)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A5):Mw=12,200、Mw/Mn=4.38
【0172】
[合成例6]重合体(A6)の合成
【化32】
窒素雰囲気下、合成例2で得られた化合物(A2)50.0g、炭酸カリウム41.9g 、ジメチルホルムアミド200gを加え、50℃で均一な分散液とした後、3-ブロモ-1-プロピン29.5gをゆっくりと滴下し、内温50℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、反応液にメチルイソブチルケトン400mlと純水300gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100gおよび純水100gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固することで重合体(A6)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=12,800、Mw/Mn=4.43
【0173】
[合成例7]重合体(A7)の合成
【化33】
窒素雰囲気下、化合物(G5)100.0g、37%ホルマリン溶液24.3g、2-メトキシ-1-プロパノール300gを加え、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸の2-メトキシ-1-プロパノール溶液25.0gをゆっくり加え、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え、メタノール1500gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A7)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A7):Mw=5,340、Mw/Mn=2.40
【0174】
[合成例8]重合体(A8)の合成
【化34】
窒素雰囲気下、化合物(G6)90.1g、37%ホルマリン溶液25.2g、2-メトキシ-1-プロパノール270gを加え、内温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸の2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン600gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF320gを加え、メタノール1350gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A8)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A8):Mw=3,520、Mw/Mn=2.60
【0175】
[合成例9]重合体(A9)の合成
【化35】
窒素雰囲気下、化合物(G6)100.0g、化合物(G7)24.5gおよび1,2-ジクロロエタン450gを混合し、内温60℃で均一分散させた後、メタンスルホン酸64.1gを1時間かけ滴下し、内温70℃で24時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン1000gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF450gを加え、メタノール1300gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A9)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A9):Mw=5,300、Mw/Mn=3.30
【0176】
[合成例10]重合体(A10)の合成
【化36】
窒素雰囲気下、化合物(G6)50.0g、化合物(G8)17.8g、パラトルエンスルホン酸3.0g、2-メトキシ-1-プロパノール205gを加え、内温100℃で均一溶液とした後、37%ホルマリン水溶液17.1gをゆっくりと滴下し、内温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン500gを加え、有機層を純水100gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF210gを加え、ヘキサン1260gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで重合体(A10)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A10):Mw=6,400、Mw/Mn=3.70
【0177】
[合成例11]重合体(A11)の合成
【化37】
窒素雰囲気下、合成例8で得られた化合物(A8)50.0g、炭酸カリウム29.9g、ジメチルホルムアミド200gを加え、50℃で均一な分散液とした後、3-ブロモ-1-プロピン18.0gをゆっくりと滴下し、内温50℃で8時間攪拌した。室温まで冷却し、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水200gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100gおよび純水100gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固することで重合体(A11)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A11):Mw=4,400、Mw/Mn=4.10
【0178】
[合成例12]比較例用化合物(R1)の合成
【化38】
窒素雰囲気下、1,5-ジヒドロキシナフタレン160.2g、37%ホルムアルデヒド溶液64.9g、2-メトキシ-1-プロパノール300gを加え、内温100℃で均一化した。その後、あらかじめ混合し均一化した、20%パラトルエンスルホン酸の2-メトキシ-1-プロパノール溶液18.0gをゆっくり加え、内温80℃で8時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しメチルイソブチルケトン1000mlを加え、純水200mlで6回洗浄を行い、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、ヘキサン2000gに晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン500gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで重合体(R1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R1):Mw=4,000、Mw/Mn=3.02
【0179】
[合成例13]比較例用化合物(R2)の合成
【化39】
窒素雰囲気下、化合物(G6)42.8g、炭酸カリウム15.7g、DMF150gを加え、内温50℃で均一分散液とした。3-ブロモ-1-プロピン28.2gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100gおよび純水100gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固することで化合物(R2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R2):Mw=560、Mw/Mn=1.01
【0180】
[合成例14]比較例用化合物(R3)の合成
【化40】
窒素雰囲気下、化合物(G9)41.2g、塩化メチレン160gを混合した。メタンスルホン酸19.2gをゆっくり滴下し、8時間加熱還流下で反応を行った。室温まで冷却後、トルエン250gを加え、有機層を純水100gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(R3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R3):Mw=1850、Mw/Mn=1.26
【0181】
[合成例15]比較例用化合物(R4)の合成
【化41】
窒素雰囲気下、化合物(G2)230.0g、化合物(G10)20.0gおよびジクロロメタン1040gを加え、内温35℃で均一溶液とした後、ジクロロメタン20.0gに溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸9.0gと3-メルカプトプロピオン酸0.6gを加え、4時間加熱還流下で反応を行った。室温まで冷却後、有機層を純水300gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(R4)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R4):Mw=680、Mw/Mn=1.26
【0182】
[合成例16]比較例用化合物(R5)の合成
【化42】
窒素雰囲気下、合成例15で得られた比較例用化合物(R4)20.0g、炭酸カリウム32.0g、アセトン62.0gを加え、56℃で均一溶液とした後、3-ブロモ-1-プロピン28.0gを反応器にゆっくりと加えて、56℃で3時間攪拌した。室温まで冷却し、過剰な炭酸カリウムおよび塩をろ過により取り除き、アセトンで沈殿物を洗浄した。有機層を純水300gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、化合物(R5)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R5):Mw=1,040、Mw/Mn=1.38
【0183】
[合成例(C)架橋剤の合成]
【0184】
[合成例17]化合物(C1)の合成
【化43】
窒素雰囲気下、内温-20℃まで冷却したビス(4-ブロモフェニル)エーテル219.0gとt-ブチルメチルエーテル750gの混合液に、n-ブチルリチウム2.67Mヘキサン溶液500mLを加え、内温-20℃で20分間撹拌した。9-フルオレノン229.0gを加え、徐々に室温に昇温し、室温下で4時間撹拌した。純水500gを加えて反応を停止後、分離した水層を除去した。さらに有機層を純水300gで5回洗浄を行った後、有機層を減圧濃縮を行い、ヘキサン1000gを加え、結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン500gで2回洗浄を行い回収後、減圧乾燥して化合物(C1)を得た。
(C1):Mw=540、Mw/Mn=1.02
【0185】
[レジスト下層膜形成用組成物(UDL-1)]
レジスト下層膜形成用の重合体(A1)を、界面活性剤FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.5質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に表2に示す割合で溶解させ、0.02μmのメンブレンフィルターで濾過することによってレジスト下層膜形成用組成物(UDL-1)を調製した。
【0186】
[レジスト下層膜形成用組成物(UDL-2~15)、比較例用レジスト下層膜形成用組成物(比較例UDL-1~5)の調製]
各成分の種類及び含有量を表2に示す通りとした以外は、UDL-1と同様に操作し、各薬液を調製した。なお、表2中、「-」は該当する成分を使用しなかったことを示す。架橋剤には上記合成例17で合成した化合物(C1)と、下記式(C2)を使用、酸発生剤(TAG)には下記式(E1)を使用、高沸点溶剤には下記式(B1)を使用、ブレンド用ポリマーには下記式(BP1)を使用した。
【0187】
[架橋剤]
レジスト下層膜形成用組成物に用いた架橋剤を以下に示す。
【化44】
【0188】
[酸発生剤]
レジスト下層膜形成用組成物に用いた熱酸発生剤(E1)を以下に示す。
【化45】
【0189】
[高沸点溶剤]
レジスト下層膜形成用組成物に用いた高沸点溶剤(B1)を表1に示す。
【0190】
【0191】
[ブレンド用ポリマー]
レジスト下層膜形成用組成物に用いたブレンド用ポリマー(BP1)を以下に示す。
【化46】
(BP1):Mw=9,300、Mw/Mn=3.30
【0192】
【0193】
[実施例1:膜厚評価]
上記で調製したレジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15、比較例UDL-1~5)をシリコン基板上に塗布し、250℃で60秒間焼成した後、基板中心部から外周部までの膜厚を測定して平均膜厚(a[nm])を算出した。
【0194】
また、上記とは別に250℃で60秒間加熱した基板を作製し、下記記載のプラズマ処理条件をそれぞれ行い、レジスト下層膜を形成し、基板中心部から外周部までの膜厚を測定して平均膜厚(b[nm])を算出した。
【0195】
プラズマ照射によるレジスト下層膜の膜厚変化と、プラズマ照射後の膜厚均一性を評価した。膜厚均一性は、300mmウェハの基板中心部から外周部までの膜厚を225ポイント測定し、そのうちの最大膜厚と最小膜厚の膜厚差が平均膜厚(b)に対して3%未満の場合を「極めて良好」、3%以上5%未満の場合を「良好」、5%以上の場合を「不良」とした。
【0196】
追加処理条件(プラズマ処理)
250℃で60秒間加熱した各基板を、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いた下記条件でプラズマ処理を行った。
プラズマ処理条件
チャンバー圧力:100mT
RFパワー(上部):100W
RFパワー(下部):3500W
H2ガス流量:200sccm
時間:20sec
【0197】
結果を表3に示す。
【0198】
【表3】
※膜厚均一性 A…極めて良好 B…良好 C…不良
【0199】
表3に示されるように、本発明のレジスト下層膜形成方法(実施例1-1~1-15)では、プラズマ照射後の膜厚均一性が良好な結果が得られた。本発明に用いるレジスト下層膜形成用組成物中に含まれる重合体は、高炭素密度なフルオレン骨格を含む構造が、メチレン基を介して繰り返し結合しているため、プラズマ照射により炭素結合の乖離と再結合が促進されやすい特徴を持つが、酸素原子を含む架橋基構造およびメチレン基を含む高分子量体であるため、レジスト下層膜の硬化性、緻密性、耐熱性が向上し、プラズマ照射による膜中の固形成分の飛散を緩和でき、プラズマ照射前後の膜厚変化が小さく、良好な膜厚均一性を示すレジスト下層膜を形成できたと推察する。特に、上記式(1)中のkが0である重合体を含むレジスト下層膜形成用組成物を用いた実施例1-1、1-2、1-5、1-6、1-7、1-8および1-11の膜厚均一性が良好であった。上記式(1)中のkが1である場合には、重合体の流動性を向上させることができるため平坦化特性の向上には効果的だが、硬化性の観点ではkが0である方が好ましいと推察される。
【0200】
一方で、比較例1-1は実施例に比べてプラズマ照射前後の膜厚変化が大きかった。また、比較例1-2~1-5では、プラズマ照射前後の膜厚差が大きく、プラズマ照射後のレジスト下層膜の膜厚均一性は不十分な結果であった。これらの比較例では、メチレン基を含まないオリゴマーまたは化合物を用いているため、追加処理前のレジスト下層膜の硬化性が不十分であり、炭素結合の乖離ならびに再結合の進行だけでなく、膜中の固形成分の飛散も積極的に起こっているのではないかと考える。このため、プラズマ照射前後の膜厚変化が大きく、プラズマ照射後の膜厚均一性が不十分であったと推察する。
【0201】
[実施例2:エッチング耐性評価]
上記で調製したレジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15、比較例UDL-1~5)をシリコン基板上に塗布し、250℃で60秒間焼成した後、基板中心部から外周部までの膜厚を測定して平均膜厚(c[nm])を算出した。次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いた下記条件でCF4ガスを用いたエッチングを行い、膜厚dを測定した。CF4ガスを用いて指定時間の間にエッチングされる膜厚(膜厚c-膜厚d)から1分間にエッチングされる膜厚をエッチング速度A(nm/min)として算出した。結果を表4に示す。
【0202】
また、上記とは別に250℃で60秒間加熱した基板を作製し、下記記載のプラズマ処理条件をそれぞれ行い、レジスト下層膜を形成し、膜厚eを測定した。次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いた下記条件でCF4ガスを用いたエッチングを行い、膜厚fを測定した。CF4ガスを用いて指定時間の間にエッチングされる膜厚(膜厚e-膜厚f)から1分間にエッチングされる膜厚をエッチング速度B(nm/min)として算出した。エッチング速度の数字が小さいほど、CF4ガスに対するエッチング耐性が優れることを意味する。
【0203】
追加処理を行った膜と250℃焼成膜のエッチング耐性を比較し、追加処理によるエッチング耐性の改善効果(エッチング速度A(nm/min)-エッチング速度B(nm/min))を算出した。
【0204】
エッチング条件は下記に示すとおりである。
CF4ガスでのドライエッチング条件
チャンバー圧力:100mT
RFパワー(上部):500W
RFパワー(下部):400W
CF4ガス流量:300sccm
時間:30sec
【0205】
追加処理条件(プラズマ照射)は、実施例1と同様の条件を用いた。
【0206】
【0207】
表4に示されるように、本発明のレジスト下層膜形成方法(実施例1-1~1-15)では、プラズマ照射により、CF4ガスに対するドライエッチング耐性が大きく改善する結果が得られた。本発明に用いるレジスト下層膜形成用組成物中に含まれる重合体は、高炭素密度なフルオレン骨格を繰り返し単位中に含む高分子量体であるため、プラズマ照射によりレジスト下層膜の炭素結合が乖離ならびに再結合してダイアモンドライクカーボン構造を有する硬化膜として再構築されやすく、優れたドライエッチング耐性を示したと考える。特に、上記式(1)中のkが0かつAr1およびAr2がベンゼンである重合体を用いた実施例2-2、2-5、2-6、2-8および2-11のドライエッチング耐性が良好であり、さらに、上記式(1A)中のn1が0であり、R2が水素原子の重合体を用いた実施例2-2が極めて良好な結果を示した。実施例2-2で用いた重合体(A2)は、繰り返し単位中に含まれるフルオレン骨格の割合が大きいため、プラズマ照射によりレジスト下層膜の炭素結合の乖離ならびに再結合が促進されやく、さらに繰り返し単位中に含まれる架橋基(水酸基とメチレン)の割合も大きいため、プラズマ照射によりレジスト下層膜の緻密性が更に向上し、良好なドライエッチング耐性を示したと推察する。
【0208】
比較例2-1は、重合体の繰り返し単位中にフルオレン骨格を含まないため、プラズマ照射によるレジスト下層膜の改質が不十分であったと推察する。比較例2-2は、フルオレン骨格を含むが、重合体ではなく化合物であるため、プラズマ照射前のレジスト下層膜の硬化性が不十分であり、プラズマ照射による炭素結合の乖離ならびに再結合と同時に、レジスト下層膜中の固形成分が飛散し、プラズマ照射による膜改質が十分に進行しなかったと推察する。比較例2-3は、フルオレン骨格を含む重合体であるが、メチレン基を含まない構造であり、かつ分子量が小さいため、プラズマ照射前のレジスト下層膜の硬化性が不十分であり、プラズマ照射による炭素結合の乖離ならびに再結合と同時に、レジスト下層膜中の固形成分が飛散し、プラズマ照射による膜改質が十分に進行しなかったと推察する。比較例2-4および比較例2-5は、フルオレン骨格を含むが、メチレン基を含まない構造であり、かつオリゴマーであるため、プラズマ照射前のレジスト下層膜の硬化性が不十分であり、プラズマ照射による炭素結合の乖離ならびに再結合と同時に、レジスト下層膜中の固形成分が飛散し、プラズマ照射による膜改質が十分に進行しなかったと推察する。
【0209】
上記結果より、プラズマ照射によるレジスト下層膜の改質と膜厚均一性を高度に両立するためには、フルオレン骨格とメチレン基の構造が重要であり、フルオレン骨格を含む構造がメチレン基を介して連結した重合体であることが好ましいと言える。
【0210】
[実施例3:平坦性評価]
上記レジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15及び、比較例UDL-1~5)をそれぞれ、密集ライン&スペースパターン(ライン線幅40nm、ライン深さ120nm、隣り合う二つのラインの中心間の距離80nm)を有するSiO2ウエハー基板上に塗布し、250℃で60秒間焼成して膜厚100nmのレジスト下層膜を形成した。その後、上記ドライエッチング耐性評価と同様のプラズマ照射処理を行った。
【0211】
使用した基板は
図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ライン&スペースパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。
図2(I)に示されるように、レジスト下層膜8によってパターンが充填される。次いで、プラズマ照射処理を行い、得られた各ウエハー基板の断面形状を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)を用いて観察し、
図3(T)、(U)に示すように、下地基板9におけるラインパターン密集部分と非ラインパターン形成部分のレジスト下層膜(充填膜)10の段差Delta 10を評価した。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。結果を表5に示す。
【0212】
【0213】
表5に示されるように、本発明のレジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15)は、プラズマ照射後においても、平坦化特性に優れたレジスト下層膜を提供できることが確認できた。一方で、実施例1でプラズマ照射前後の膜厚変化が大きいことが確認された比較例UDL-1~5を用いた比較例3-1~3-5は、平坦化特性が不十分であることが確認された。
【0214】
[実施例4:パターン形成方法]
上記レジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15及び、比較例UDL-1~5)をそれぞれ、トレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、大気中、250℃で60秒焼成し、膜厚100nmの下層膜前駆膜を形成した。その後、上記ドライエッチング耐性評価と同様のプラズマ照射処理を行った。
【0215】
また、比較例4-6として、UDL-1をSiO2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、大気中、250℃で60秒焼成し、膜厚100nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜は、プラズマ照射を行わなかった。
【0216】
上記方法で調製したレジスト下層膜の上にケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚20nmのレジスト中間層膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0217】
ケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)としてはArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)で示されるポリマー、及び架橋触媒(CAT1)を、FC-4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表6に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)を調製した。
【0218】
【0219】
用いたArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)、架橋触媒(CAT1)の構造式を以下に示す。
【0220】
【0221】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、界面活性剤FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表7の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0222】
【0223】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)に用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【0224】
【0225】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表8の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0226】
【0227】
液浸保護膜材料(TC-1)に用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【0228】
【0229】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.78、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、40nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターン(レジストパターン)を得た。
【0230】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにしてケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)をエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたSOG-1パターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにしてSiO2膜にエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0231】
レジストパターンのケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)への転写条件。
チャンバー圧力:50mT
RFパワー(上部):500W
RFパワー(下部):300W
CF4ガス流量:150sccm
CHF3ガス流量:50sccm
時間:15sec
【0232】
ケイ素原子含有レジスト中間層材料(SOG-1)パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力:10mT
RFパワー(上部):1,000W
RFパワー(下部):300W
CO2ガス流量:320sccm
N2ガス流量:80sccm
時間:55sec
【0233】
レジスト下層膜パターンのSiO2膜への転写条件。
チャンバー圧力:100mT
RFパワー(上部):500W
RFパワー(下部):300W
CF4ガス流量:150sccm
CHF3ガス流量:30sccm
O2ガス流量:10sccm
時間:130sec
【0234】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表9に示す。
【0235】
【0236】
表9に示されるように、本発明のレジスト下層膜形成用組成物(UDL-1~15)を使用した実施例4-1~4-15では、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に被加工基板まで良好に転写されており、本発明のレジスト下層膜形成方法は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、上記エッチング耐性評価で、本発明のレジスト下層膜形成方法に対してエッチング耐性の不足が確認された比較例UDL-2~5を使用した比較例4-2~4-5は、基板転写エッチング後のパターン形状がヨレていることが観察された。また、極めてエッチング耐性が不足していた比較例UDL-1を使用した比較例4-1およびプラズマ照射を行わなかった比較例4-6は、パターンが残っておらず、レジスト下層膜のエッチング耐性不足で被加工基板にパターンが転写されていないことが観察された。
【0237】
以上のことから、本発明のレジスト下層膜形成方法であれば、プラズマ照射により、基板加工時に優れたドライエッチング耐性を示すレジスト下層膜を優れた膜厚均一性で形成できるため、次世代の微細加工プロセスに極めて有用である。またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0238】
本明細書は、以下の発明を包含する。
【0239】
[1]:基板上にレジスト下層膜を形成する方法であって、(i)前記基板上に、(A)重合体と(B)有機溶剤とを含むレジスト下層膜形成用組成物をコーティングし、100℃以上800℃以下の温度で10秒から7,200秒間の熱処理をして硬化させることで下層膜前駆膜を形成する工程と、(ii)前記下層膜前駆膜を形成した基板をプラズマ照射し、レジスト下層膜を形成する工程、を含むレジスト下層膜形成方法であり、前記(A)重合体を、下記一般式(1)で示される構成単位を含み、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が2,500~20,000のものとすることを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【化50】
(式中、Ar
1およびAr
2は独立して置換または非置換のベンゼン環または置換または非置換のナフタレン環であり、Xは下記一般式(1A)で示される構造であり、Yは炭素数6~50の2価の有機基であり、kは0または1である。)
【化51】
(式中、n
1は0又は1であり、n
2は1又は2であり、R
2は水素原子、炭素数1~10の有機基、又は下記一般式(1B)で示される構造のいずれかである。R
3は水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または下記一般式(1C)で示される基であり、n
3は0、1、又は2であり、*はメチレン基との結合部であり、**はフルオレンの4級炭素との結合部である。)
【化52】
(式中、*は酸素原子への結合部位を表し、R
Aは炭素数1~10の2価の有機基、R
Bは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化53】
(式中、R
4は水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、式中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0240】
[2]:前記一般式(1)中、Yが下記式(Y-1)で示される構造のいずれかであることを特徴とする上記[1]に記載のレジスト下層膜形成方法。
【化54】
(上記構造の水素原子が、水酸基または炭素数1~10の1価の有機基で置換されていてもよい。)
【0241】
[3]:前記一般式(1A)中、R2が水素原子であることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載のレジスト下層膜形成方法。
【0242】
[4]:前記一般式(1A)中、R2が水素原子または前記一般式(1B)で示される構造であり、前記R2を構成する構造のうち、水素原子の割合をa、前記一般式(1B)で示される構造の割合をbとした場合、a+b=1、0.1≦b≦0.9の関係を満たすことを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0243】
[5]:前記一般式(1)中、Ar1およびAr2が非置換のベンゼン環であり、前記一般式(1A)中、n1が0であり、n2が1または2であり、n3が0であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0244】
[6]:前記一般式(1)中、kが0であることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0245】
[7]:前記(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、7000から15,000であることを特徴とする上記[1]~[6]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0246】
[8]:前記レジスト下層膜形成用組成物を、さらに(C)架橋剤、(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものとすることを特徴とする上記[1]~[7]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0247】
[9]:前記(B)有機溶剤を、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤である(B-1)高沸点溶剤1種以上との混合物とすることを特徴とする上記[1]~[8]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0248】
[10]:前記(ii)工程において、前記プラズマ照射を、N2、NF3、H2、フルオロカーボン、希ガス、またはこれらいずれかの混合の雰囲気下で行うことを特徴とする上記[1]~[9]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0249】
[11]:前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で行うことを特徴とする上記[1]~[10]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0250】
[12]:前記(i)工程において、前記熱処理を酸素濃度1%未満の雰囲気で行うことを特徴とする上記[1]~[10]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法。
【0251】
[13]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(I-1)上記[1]~[12]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法により、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、(I-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、(I-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、(I-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、(I-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、(I-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び(I-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0252】
[14]:被加工基板にパターンを形成する方法であって、(II-1)上記[1]~[12]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成方法により、段差を有する被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程、(II-2)前記レジスト下層膜の上層にレジスト上層膜を形成する工程、(II-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、(II-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にまでパターンを転写する工程、(II-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程を有することを特徴とするパターン形成方法。
【0253】
[15]:前記被加工基板の段差のアスペクト比を3以上とすることを特徴とする上記[13]又は[14]に記載のパターン形成方法。
【0254】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス-4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。