(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027783
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】投写用光学系および投写型表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20250220BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20250220BHJP
G03B 21/28 20060101ALI20250220BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20250220BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20250220BHJP
G02B 15/20 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
G02B13/00
G03B21/00 E
G03B21/00 F
G03B21/28
G02B13/16
G02B13/18
G02B15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132916
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川名 正直
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087KA07
2H087LA01
2H087LA27
2H087MA12
2H087MA18
2H087PA15
2H087PA20
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA41
2H087RA45
2H087SA43
2H087SA46
2H087SA48
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB01
2H087SB15
2H087SB23
2H087SB25
2H087SB26
2H087SB34
2H087SB42
2H087SB44
2K203FA03
2K203FA05
2K203FA23
2K203FA24
2K203FA25
2K203FA32
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GC03
2K203GC05
2K203HA02
2K203HA67
2K203HA68
2K203HA73
2K203HA82
2K203MA32
(57)【要約】
【課題】小型に構成され、良好な光学性能を有する投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供する。
【解決手段】投写用光学系は、縮小側の画像を拡大側に投写し、パワーを有する反射面を含まず、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなる。第1光学系と第2光学系との間に中間像が形成され、第1光学系は光路を折り曲げる光路偏向面を含む。縮小側の最大有効像円の半径をImax、第1光学系の最も拡大側のレンズ面から光路偏向面までの光軸上の距離をDdefとした場合、投写用光学系は、0.2<Imax/Ddef<0.7を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の画像を拡大側に投写する投写用光学系であって、
パワーを有する反射面を含まず、
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、
前記第1光学系と前記第2光学系との間に中間像が形成され、
前記第1光学系は光路を折り曲げる光路偏向面を含み、
縮小側の最大有効像円の半径をImax、
前記第1光学系の最も拡大側のレンズ面から前記光路偏向面までの光軸上の距離をDdefとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDdefを広角端における値とした場合、
0.2<Imax/Ddef<0.7 (1)
で表される条件式(1)を満足する投写用光学系。
【請求項2】
前記第1光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、負のパワーを有する前群と、前記光路偏向面を含む光路偏向部材と、正のパワーを有する後群とからなる請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項3】
前記前群は1枚以上の正レンズを含む請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項4】
前記第1光学系の最も拡大側の光学有効面の最外周は、前記光学有効面と光軸との交点より光軸方向において縮小側に位置する請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項5】
前記前群が含む全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνnave、
前記前群が含む全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνpaveとした場合、
10<νnave-νpave<40 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項3に記載の投写用光学系。
【請求項6】
前記前群が含む全ての負レンズのd線に対する屈折率の平均値をNnave、
前記前群が含む全ての正レンズのd線に対する屈折率の平均値をNpaveとした場合、
0.15<Npave-Nnave<0.45 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項3に記載の投写用光学系。
【請求項7】
前記後群の少なくとも一部は合焦の際に移動する請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項8】
前記第2光学系は、変倍の際に光軸に沿って移動する2つ以上の移動群を含む請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項9】
前記第2光学系の前記移動群のうち、最も拡大側の前記移動群は正のパワーを有する請求項8に記載の投写用光学系。
【請求項10】
前記前群の最も縮小側の面から前記後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.5<Imax/Dfr<0.9 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項11】
前記光路偏向面はプリズムの面である請求項2に記載の投写用光学系。
【請求項12】
前記プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、
前記プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.9<Imax/(Dpr/Npr)<1.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項11に記載の投写用光学系。
【請求項13】
前記第1光学系の最も拡大側のレンズ面の最大有効半径をERf、
前記投写用光学系の全てのレンズ面の最大有効半径の最大値をERmaxとした場合、
0<ERf/ERmax<0.7 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項14】
前記第1光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH1、
前記第2光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH2とした場合、
0<AH1/AH2<0.7 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項15】
前記中間像より縮小側に開口絞りを含み、
前記開口絞りの実像が前記第1光学系の内部に存在し、
光軸方向における前記実像の位置を第1の位置とし、
縮小側の最大有効像円内の任意の点から発して拡大側へ向かい前記開口絞りの中心を通過した光線が前記中間像より拡大側で光軸と交差する位置のうち、前記第1の位置から最も離れた位置を第2の位置とした場合、
前記光路偏向面と光軸との交点は、光軸方向において前記第1の位置から前記第2の位置までの範囲内に位置する請求項1に記載の投写用光学系。
【請求項16】
1から10までの自然数をkとし、
縮小側の最大有効像円上において光軸からの高さが最大有効像円の半径のk割の高さの点を点PHkとし、
前記点PHkから発して拡大側へ向かい前記開口絞りの中心を通過した光線が前記中間像より拡大側で光軸と交差する位置を位置Pkとし、
前記位置Pkのうち、前記第1の位置からの光軸上の空気換算距離が最長となる位置を第3の位置とし、
前記第1の位置から前記第3の位置までの空気換算距離をDifPとし、
DifPの符号は、前記第1の位置を基準として縮小側の距離を正、拡大側の距離を負とし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDifPを広角端における値とした場合、
-3<DifP/Imax<-0.2 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項15に記載の投写用光学系。
【請求項17】
前記第1光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群と、前記光路偏向面を含む光路偏向部材と、後群とからなり、
前記前群の最も縮小側の面から前記後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.4<|DifP/Dfr|<0.7 (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項16に記載の投写用光学系。
【請求項18】
前記光路偏向面はプリズムの面である請求項16に記載の投写用光学系。
【請求項19】
前記プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、
前記プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.7<|DifP/(Dpr/Npr)|<1.8 (10)
で表される条件式(10)を満足する請求項18に記載の投写用光学系。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の投写用光学系を備えた投写型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、投写用光学系、および投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置に適用可能な光学系として下記の特許文献1に記載の光学系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型に構成され、良好な光学性能を有する投写用光学系が要望されている。これらの要求レベルは、年々、高まっている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小型に構成され、良好な光学性能を有する投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、縮小側の画像を拡大側に投写する投写用光学系であって、パワーを有する反射面を含まず、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、第1光学系と第2光学系との間に中間像が形成され、第1光学系は光路を折り曲げる光路偏向面を含み、
0.2<Imax/Ddef<0.7 (1)
で表される条件式(1)を満足する。本開示では、以下のように条件式の記号を定めている。縮小側の最大有効像円の半径をImaxとしている。第1光学系の最も拡大側のレンズ面から光路偏向面までの光軸上の距離をDdefとしている。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合はDdefを広角端における値とする。
【0007】
本開示の第2の態様は、第1の態様の投写用光学系において、第1光学系が、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、負のパワーを有する前群と、光路偏向面を含む光路偏向部材と、正のパワーを有する後群とからなる。
【0008】
本開示の第3の態様は、第2の態様の投写用光学系において、前群が1枚以上の正レンズを含む。
【0009】
本開示の第4の態様は、第2の態様の投写用光学系において、第1光学系の最も拡大側の光学有効面の最外周が、光学有効面と光軸との交点より光軸方向において縮小側に位置する。
【0010】
本開示の第5の態様は、第3の態様の投写用光学系において、前群が含む全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνnave、前群が含む全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνpaveとした場合、
10<νnave-νpave<40 (2)
で表される条件式(2)を満足する。
【0011】
本開示の第6の態様は、第3の態様の投写用光学系において、前群が含む全ての負レンズのd線に対する屈折率の平均値をNnave、前群が含む全ての正レンズのd線に対する屈折率の平均値をNpaveとした場合、
0.15<Npave-Nnave<0.45 (3)
で表される条件式(3)を満足する。
【0012】
本開示の第7の態様は、第2の態様の投写用光学系において、後群の少なくとも一部が合焦の際に移動する。
【0013】
本開示の第8の態様は、第1の態様の投写用光学系において、第2光学系が、変倍の際に光軸に沿って移動する2つ以上の移動群を含む。
【0014】
本開示の第9の態様は、第8の態様の投写用光学系において、第2光学系の移動群のうち、最も拡大側の移動群は正のパワーを有する。
【0015】
本開示の第10の態様は、第2の態様の投写用光学系において、前群の最も縮小側の面から後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.5<Imax/Dfr<0.9 (4)
で表される条件式(4)を満足する。
【0016】
本開示の第11の態様は、第2の態様の投写用光学系において、光路偏向面がプリズムの面である。
【0017】
本開示の第12の態様は、第11の態様の投写用光学系において、プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.9<Imax/(Dpr/Npr)<1.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する。
【0018】
本開示の第13の態様は、第1の態様の投写用光学系において、第1光学系の最も拡大側のレンズ面の最大有効半径をERf、投写用光学系の全てのレンズ面の最大有効半径の最大値をERmaxとした場合、
0<ERf/ERmax<0.7 (6)
で表される条件式(6)を満足する。
【0019】
本開示の第14の態様は、第1の態様の投写用光学系において、第1光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH1、第2光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH2とした場合、
0<AH1/AH2<0.7 (7)
で表される条件式(7)を満足する。
【0020】
本開示の第15の態様は、第1の態様の投写用光学系において、中間像より縮小側に開口絞りを含み、開口絞りの実像が第1光学系の内部に存在し、光軸方向における開口絞りの実像の位置を第1の位置とし、縮小側の最大有効像円内の任意の点から発して拡大側へ向かい開口絞りの中心を通過した光線が中間像より拡大側で光軸と交差する位置のうち、第1の位置から最も離れた位置を第2の位置とした場合、光路偏向面と光軸との交点は、光軸方向において第1の位置から第2の位置までの範囲内に位置する。
【0021】
本開示の第16の態様は、第15の態様の投写用光学系において、1から10までの自然数をkとし、縮小側の最大有効像円上において光軸からの高さが最大有効像円の半径のk割の高さの点を点PHkとし、点PHkから発して拡大側へ向かい開口絞りの中心を通過した光線が中間像より拡大側で光軸と交差する位置を位置Pkとし、位置Pkのうち、第1の位置からの光軸上の空気換算距離が最長となる位置を第3の位置とし、第1の位置から第3の位置までの空気換算距離をDifPとし、DifPの符号は、第1の位置を基準として縮小側の距離を正、拡大側の距離を負とし、投写用光学系が変倍光学系の場合はDifPを広角端における値とした場合、
-3<DifP/Imax<-0.2 (8)
で表される条件式(8)を満足する。
【0022】
本開示の第17の態様は、第16の態様の投写用光学系において、第1光学系が、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群と、光路偏向面を含む光路偏向部材と、後群とからなり、前群の最も縮小側の面から後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.4<|DifP/Dfr|<0.7 (9)
で表される条件式(9)を満足する。
【0023】
本開示の第18の態様は、第16の態様の投写用光学系において、光路偏向面がプリズムの面である。
【0024】
本開示の第19の態様は、第18の態様の投写用光学系において、プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.7<|DifP/(Dpr/Npr)|<1.8 (10)
で表される条件式(10)を満足する。
【0025】
本開示の第20の態様は、第1から第19のいずれか1つの態様の投写用光学系を備える投写型表示装置である。
【0026】
なお、本明細書の「~からなり」および「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的にパワー(屈折力)を有さないレンズ、並びに、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0027】
本明細書の「正のパワーを有する~群」および「~群は正のパワーを有する」は、群全体として正のパワーを有することを意味する。同様に「負のパワーを有する~群」および「~群は負のパワーを有する」は、群全体として負のパワーを有することを意味する。本明細書の「前群」、「後群」、「合焦群」、および「レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0028】
複合非球面レンズ(レンズ(例えば球面レンズ)と、そのレンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関するパワーの符号および面形状は、特に断りが無い限り、近軸領域のものを用いる。条件式で用いている「光軸上の距離」は、特に断りが無い限り、幾何学的距離である。条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、d線を基準とした場合の値である。
【0029】
本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、小型に構成され、良好な光学性能を有する投写用光学系、およびこの投写用光学系を備えた投写型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例1の投写用光学系に対応し、一実施形態に係る投写用光学系の構成および光束を示す断面図である。
【
図3】
図1の投写用光学系の光路を展開した構成および光束を示す断面図である。
【
図5】
図1の投写用光学系において、縮小側の最大有効像円内の点から発して拡大側へ向かい開口絞りの中心を通過した光線を示す図である。
【
図7】
図1の投写用光学系において、縮小側の点PHkから発して拡大側へ向かい開口絞りの中心を通過した光線を示す図である。
【
図10】実施例2の投写用光学系の構成および光束を示す断面図である。
【
図11】
図10の投写用光学系の光路を展開した構成および光束を示す断面図である。
【
図12】実施例2の投写用光学系の各収差図である。
【
図13】実施例3の投写用光学系の構成および光束を示す断面図である。
【
図14】
図13の投写用光学系の光路を展開した構成および光束を示す断面図である。
【
図15】実施例3の投写用光学系の各収差図である。
【
図16】実施例4の投写用光学系の構成および光束を示す断面図である。
【
図17】
図16の投写用光学系の光路を展開した構成および光束を示す断面図である。
【
図18】実施例4の投写用光学系の各収差図である。
【
図19】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図20】別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図21】さらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図22】またさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0033】
図1に、本開示の一実施形態に係る投写用光学系の構成および光束の断面図を示す。
図1では、光束として、軸上光束B0、および最大画角の光束B1、B2を示す。
図1に示す例は後述の実施例1の投写用光学系に対応している。
図1では、図の左上が拡大側であり、図の右下が縮小側である。
【0034】
図1では、投写用光学系が投写型表示装置に搭載されることを想定して、投写用光学系の縮小側に光学部材PP、およびライトバルブの表示面Simを配置した例を示す。ライトバルブは光学像を出力する表示素子であり、この光学像は表示面Simに画像として表示される。ライトバルブとしては、例えば、液晶表示素子、又はDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス:登録商標)等の画像表示素子を用いることができる。光学部材PPは、フィルタ、カバーガラス、および色合成プリズム等を想定した部材である。光学部材PPはパワーを有しない部材である。光学部材PPの材料、長さ、および部品数を適宜変更することは可能であり、また、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0035】
投写用光学系は、例えば、投写型表示装置に搭載されて、縮小側の表示素子の表示面Simに表示される画像を拡大側の投写面に拡大して投写する。投写型表示装置においては、表示面Simで画像情報を与えられた光束が光学部材PPを介して投写用光学系に入射され、投写用光学系により投写面であるスクリーン(不図示)に投写される。すなわち、表示面Simとスクリーンとは光学的に共役な位置にある。表示面Simが縮小側共役面に対応し、スクリーンが拡大側共役面に対応する。なお、本明細書において「スクリーン」は、投写用光学系が形成する投写像が投写される対象物を意味する。スクリーンとしては、専用のスクリーンの他、部屋の壁面、床面、天井、および建物の外壁等でもよい。
【0036】
本明細書の説明において、「拡大側」は光路上でのスクリーン側を意味し、「縮小側」は光路上での表示面Sim側を意味する。本明細書では、「拡大側」および「縮小側」は、光路に沿って決められるものである。また、構成要素の配置に関する「隣接」は、光路上における並び順として隣り合っていることを意味する。以下では、説明が冗長になるのを避けるため、「拡大側から縮小側へ光路に沿って順に」を「拡大側から縮小側へ順に」と記すことがある。
【0037】
本開示の投写用光学系は、パワーを有する反射面を含まないように構成される。投写用光学系では、表示面Simの画像の中心位置を投写用光学系の光軸Zから光軸Zに垂直な方向にシフトさせた構成を採ることがある。凹面ミラー等のパワーを有する反射面を含む投写用光学系では、イメージサークルのうち光軸Zの近傍は投写型表示装置によって光束が遮蔽されて利用できない領域があるため、このシフト量が固定されているものが多い。これに対して、本開示のようにパワーを有する反射面を含まない投写用光学系では、上記のような遮蔽の問題が無く、イメージサークル内でシフト量を可変にできるため、自由度の高い構成とすることができる。
【0038】
本開示の投写用光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成される。投写用光学系の焦点距離を短くして広角化をする場合、投写用光学系に必要なバックフォーカスを確保しつつ要求される光学性能を実現しようとすると、拡大側のレンズが巨大になりやすい。内部に中間像MIが形成されるリレー光学系にすることによって、中間像MIより拡大側の光学系のバックフォーカスを短くすることが可能になり、また、拡大側のレンズ径を小さくすることができるので、小型化に有利となる。
【0039】
第1光学系G1は、光路を折り曲げる光路偏向面を含むように構成される。光路を折り曲げることによって光学系をコンパクトに構成することができるため、小型化に有利となる。
【0040】
一例として、
図1の投写用光学系は以下のように構成されている。第1光学系G1は、拡大側から縮小側へ順に、前群G1Fと、プリズムPrと、後群G1Rとからなる。前群G1Fは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1a~L1dからなる。後群G1Rは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1e~L1nからなる。第2光学系G2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL2aと、平面ミラーMrと、レンズL2b~L2hと、開口絞りStと、レンズL2i~L2mとからなる。なお、
図1に示す開口絞りStは、大きさ又は形状を示すのではなく、光軸方向の位置を示す。開口絞りStのこの図示方法は他の図面においても同様である。また、
図1では中間像MIを概念的に点線で示しており、
図1の中間像MIの形状は正確ではない。
【0041】
図2に、
図1の投写用光学系のプリズムPrとその近傍のレンズの拡大図を示す。なお、
図2では、光束は軸上光束B0のみを示す。プリズムPrは、内部に反射面Prsを含む。反射面Prsは、本開示の光路を折り曲げる光路偏向面の一例である。プリズムPrは、本開示の光路偏向部材の一例である。光路偏向面をプリズムPrの面とすることによって、組立の際の性能確保に有利となる。なお、反射膜が形成されたプリズムの面を光路偏向面としてもよく、全反射を用いることによってプリズムの面を光路偏向面としてもよい。
【0042】
第1光学系G1の最も拡大側の光学有効面の最外周は、この光学有効面と光軸Zとの交点より光軸方向において縮小側に位置することが好ましい。このようにした場合は、歪曲収差の補正に有利となる。
【0043】
図1の投写用光学系において、第1光学系G1の最も拡大側の光学有効面は、レンズL1aの拡大側の面上にある。一例として、
図2に、第1光学系G1の最も拡大側の光学有効面の最外周上の点2と、この光学有効面と光軸Zとの交点4とを示す。
図2に示すように、光軸方向において点2は交点4より縮小側に位置している。
【0044】
なお、「光学有効面」は、通常、鏡面加工された面である。本明細書において、レンズの「光学有効面」は、結像用の光線が通過する有効径内の面を含み、この有効径内の面形状と同形状で径方向外側に延長された面である。同形状とは、同じ設計データに基づき形成された形状を有する面である。「同じ設計データ」とは、球面形状の場合は曲率半径が同じであることを意味し、非球面形状の場合は非球面式および非球面係数が同じであることを意味し、自由曲面形状の場合は自由曲面式および自由曲面係数が同じであることを意味する。
【0045】
前群G1Fのパワーは負であり、後群G1Rのパワーは正であることが好ましい。第1光学系G1が、拡大側から縮小側へ順に、負のパワーを有する前群G1Fと、光路偏向部材と、正のパワーを有する後群G1Rとからなるように構成することによって、広い画角を確保しながら小型化を図ることに有利となる。
【0046】
前群G1Fは1枚以上の正レンズを含むことが好ましい。このようにした場合は、色収差および像面湾曲の補正に有利となる。
【0047】
後群G1Rの少なくとも一部は合焦の際に光軸Zに沿って移動することが好ましい。この構成によって、合焦機能を有する投写用光学系を構成することができる。また、このようにした場合は、合焦の際に前群G1Fは固定されており、前群G1Fに合焦機構を配置しない構成にすることができるため、最も拡大側のレンズの小型化に有利となる。以下では、合焦の際に移動する群を合焦群と称する。合焦群が光軸Zに沿って移動することによって合焦が行われる。
【0048】
図1の例では、合焦群はレンズL1g~L1lからなる。
図1および
図3のレンズL1g~L1lに対して付けられた括弧と両矢印は、レンズL1g~L1lが合焦群であることを示す。
図3は、
図1の投写用光学系の光路を展開した断面図である。なお、
図3では、反射面Prs、平面ミラーMr、および最大画角の光束B2の図示を省略している。
【0049】
第2光学系G2は、変倍の際に光軸Zに沿って移動する2つ以上の移動群を含むことが好ましい。この構成によって、変倍機能を有する投写用光学系を構成することができる。また、比較的径が小さな第2光学系G2に移動群を配置することによって、変倍機構の負荷を軽減することができる。さらに、折り曲げ光路を含まない屈折光学系の範囲内で変倍光学系を構成できるため、機械的な精度を確保することが容易となる。
【0050】
第2光学系G2の移動群のうち、最も拡大側の移動群は正のパワーを有することが好ましい。このようにした場合は、最も拡大側の移動群より縮小側の移動群の小径化に有利となる。また、中間像MIより縮小側、かつ最も拡大側の移動群より拡大側に長い空気間隔を確保することが容易となる。この長い空気間隔に光路を折り曲げる部材を配置すれば、投写用光学系全体で2回以上光路を折り曲げることができるため、小型化により有利となる。
図1の第2光学系G2では、この長い空気間隔に配置された平面ミラーMrによって光路が90度折り曲げられている。
【0051】
第2光学系G2は、最も縮小側に、1枚の正レンズからなり、変倍の際に表示面Simに対して固定されている固定群を含むことが好ましい。このようにした場合は、縮小側のテレセントリック性の確保が容易になる。
【0052】
一例として、
図1の第2光学系G2は、
図3に示すように、拡大側から縮小側へ順に、第2Aレンズ群G2Aと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eとの5つのレンズ群を含む。
図3の各レンズ群は以下のように構成されている。第2Aレンズ群G2Aは、レンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2Bは、レンズL2b~L2eからなる。第2Cレンズ群G2Cは、レンズL2f~L2hと、開口絞りStと、レンズL2iとからなる。第2Dレンズ群G2Dは、レンズL2j~L2lからなる。第2Eレンズ群G2Eは、レンズL2mからなる。変倍の際、第2Aレンズ群G2Aと第2Eレンズ群G2Eとは、表示面Simに対して固定され、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dとは隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。
図3では、変倍の際に移動するレンズ群の下に、括弧、および広角端から望遠端へ変倍する際の各レンズ群の概略的な移動方向を示す矢印を記入している。
【0053】
次に、本開示の投写用光学系の条件式に関する好ましい構成および可能な構成について述べる。以下の条件式に関する説明では、冗長な説明を避けるため、定義が同じものには同じ記号を用いて記号の重複説明を省略する。また、以下では、冗長な説明を避けるため「本開示の投写用光学系」を単に「投写用光学系」ともいう。
【0054】
投写用光学系は、下記条件式(1)を満足することが好ましい。ここでは、縮小側の最大有効像円の半径をImaxとしている。第1光学系G1の最も拡大側のレンズ面から光路偏向面までの光軸上の距離をDdefとしている。Imaxは、縮小側の最大像高である。一例として、
図1に上記の半径Imaxおよび距離Ddefを示す。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合はDdefを広角端における値とする。条件式(1)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。条件式(1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、良好な光学性能および諸元の維持に有利となる。
0.2<Imax/Ddef<0.7 (1)
【0055】
より良好な特性を得るためには、条件式(1)の下限値は、0.25にすることがより好ましく、0.3にすることがさらに好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(1)の上限値は、0.6にすることがより好ましく、0.5にすることがさらに好ましい。
【0056】
投写用光学系は、下記条件式(2)を満足することが好ましい。ここでは、前群G1Fが含む全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνnaveとしている。前群G1Fが含む全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνpaveとしている。条件式(2)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、色収差の補正に有利となる。条件式(2)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、色収差の2次スペクトルの補正に有利となる。
10<νnave-νpave<40 (2)
【0057】
より良好な特性を得るためには、条件式(2)の下限値は、12にすることがより好ましく、15にすることがさらに好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(2)の上限値は、36にすることがより好ましく、32にすることがさらに好ましい。
【0058】
投写用光学系は、下記条件式(3)を満足することが好ましい。ここでは、前群G1Fが含む全ての負レンズのd線に対する屈折率の平均値をNnaveとしている。前群G1Fが含む全ての正レンズのd線に対する屈折率の平均値をNpaveとしている。条件式(3)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、像面湾曲の補正に有利となる。条件式(3)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、球面収差の補正に有利となる。
0.15<Npave-Nnave<0.45 (3)
【0059】
より良好な特性を得るためには、条件式(3)の下限値は、0.18にすることがより好ましく、0.2にすることがさらに好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(3)の上限値は、0.36にすることがより好ましく、0.3にすることがさらに好ましい。
【0060】
投写用光学系は、下記条件式(4)を満足することが好ましい。ここでは、前群G1Fの最も縮小側の面から後群G1Rの最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとしている。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とする。条件式(4)は、縮小側の最大像高と光路偏向部材を配置するスペースとの比を規定する式である。条件式(4)によって、光路偏向部材における光束径を抑制することができる。条件式(4)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。条件式(4)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、光路を折り曲げられた光束を通すスペースを確保できる。
0.5<Imax/Dfr<0.9 (4)
【0061】
より良好な特性を得るためには、条件式(4)の下限値は、0.6にすることがより好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(4)の上限値は、0.8にすることがより好ましい。
【0062】
投写用光学系は、下記条件式(5)を満足することが好ましい。ここでは、プリズムPrの光軸Zに沿った厚さをDprとしている。プリズムPrのd線に対する屈折率をNprとしている。一例として、
図3に上記の厚さDprを示す。条件式(5)は、縮小側の最大像高と空気換算したプリズムPrの厚さとの比を規定する式である。条件式(5)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。条件式(5)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、光路を折り曲げられた光束を通すスペースを確保できる。
0.9<Imax/(Dpr/Npr)<1.3 (5)
【0063】
より良好な特性を得るためには、条件式(5)の下限値は、1にすることがより好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(5)の上限値は、1.2にすることがより好ましい。
【0064】
投写用光学系は、下記条件式(6)を満足することが好ましい。ここでは、第1光学系G1の最も拡大側のレンズ面の最大有効半径をERfとしている。投写用光学系の全てのレンズ面の最大有効半径の最大値をERmaxとしている。条件式(6)の下限値については、ERf>0かつERmax>0のため、ERf/ERmax>0となる。条件式(6)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる、又は、軸外収差の補正に有利となる。
0<ERf/ERmax<0.7 (6)
【0065】
より良好な特性を得るためには、条件式(6)の上限値は、0.6にすることがより好ましい。
【0066】
図4を参照しながら、最大有効半径について説明する。
図4は説明用の図である。
図4では、左側が拡大側、右側が縮小側である。
図4には、レンズLxを通る軸上光束Xaおよび軸外光束Xbを示す。
図4の例では、軸外光束Xbの上側光線である光線Xb1が、最も外側を通る光線である。ここでいう「外側」とは、光軸Zを中心にした径方向外側、すなわち、光軸Zから離れる側である。本明細書においては、この最も外側を通る光線とレンズ面との交点の位置Pxから光軸Zまでの距離が、そのレンズ面の最大有効半径ERである。なお、
図4の例では軸外光束Xbの上側光線が最も外側を通る光線であるが、いずれの光線が最も外側を通る光線になるかは光学系により異なる。
【0067】
条件式(6)を満足している
図3の例では、投写用光学系の中間部のレンズの径に比べて、最も拡大側のレンズの径が小さい。通常、投写用光学系では最も拡大側のレンズの径が大きくなることが多いが、
図3の例では、最も拡大側のレンズの小径化が好適に実現されている。
【0068】
投写用光学系は、下記条件式(7)を満足することが好ましい。ここでは、第1光学系G1の全てのレンズ面における軸上マージナル光線B0mの光軸Zからの高さの最大値をAH1としている。第2光学系G2の全てのレンズ面における軸上マージナル光線B0mの光軸Zからの高さの最大値をAH2としている。一例として、
図1の投写用光学系では、レンズL1fの拡大側の面における軸上マージナル光線B0mの光軸Zからの高さがAH1となり、レンズL2cの縮小側の面における軸上マージナル光線B0mの光軸Zからの高さがAH2となる。
図2に上記の最大値AH1を示し、
図3に上記の最大値AH2を示す。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合は、AH1およびAH2は全変倍域での最大値とする。条件式(7)の下限値については、AH1>0かつAH2>0のため、AH1/AH2>0となる。条件式(7)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、光路偏向面付近での光束幅の拡大を抑えることができるため、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。
0<AH1/AH2<0.7 (7)
【0069】
次に、光路偏向面を配置する好ましい位置について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5では理解を容易にするために直線状の光路になるように光路を展開した図を示している。
図6にはプリズムPr部分の拡大図を示す。投写用光学系が、中間像MIより縮小側に開口絞りStを含み、開口絞りStの実像が第1光学系G1の内部に存在する場合、光路偏向面の位置は以下のようにすることが好ましい。ここでは、光軸方向における開口絞りStの実像の位置を位置Pistとする。縮小側の最大有効像円内の任意の点から発して拡大側へ向かい開口絞りStの中心を通過した光線が中間像MIより拡大側で光軸Zと交差する位置のうち、位置Pistから最も離れた位置を位置Pchとする。光路偏向面と光軸Zとの交点は、光軸方向において位置Pistから位置Pchまでの範囲内に位置することが好ましい。このようにした場合は、瞳の実像近傍に光路偏向面を配置することができる。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合は、広角端において、光路偏向面と光軸Zとの交点が上記範囲内に位置することが好ましい。
【0070】
一例として、
図5および
図6に
図1の投写用光学系における位置Pistを二点鎖線で示し、位置Pchを短破線で示し、光路偏向面と光軸Zとの交点の位置Pdefを長破線で示す。なお、
図5および
図6には、光軸方向におけるこれらの位置を示している。
図5および
図6には、縮小側の最大有効像円内の多数の点から発して拡大側へ向かい開口絞りStの中心を通過した多数の光線Rysも示している。
図1の投写用光学系では、上記3つの位置は全て光路偏向部材であるプリズムPr内に位置している。
【0071】
上記の位置Pistに関連して、投写用光学系は、下記条件式(8)を満足することが好ましい。条件式(8)について、
図7および
図8を参照して説明する。
図7では理解を容易にするために直線状の光路になるように光路を展開した図を示している。
図8にはプリズムPr部分の拡大図を示す。ここでは、1から10までの自然数をkとする。すなわち、k=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である。そして、縮小側の最大有効像円上において光軸Zからの高さが、最大有効像円の半径Imaxのk割の高さの点を点PHkとする。点PHkから発して拡大側へ向かい開口絞りStの中心を通過した光線が中間像MIより拡大側で光軸Zと交差する位置を位置Pkとする。位置Pkのうち、位置Pistからの空気換算距離が最長となる位置を位置Pmaxとする。そして、位置Pistから位置Pmaxまでの光軸上の空気換算距離をDifPとする。DifPの符号は、位置Pistを基準として縮小側の距離を正、拡大側の距離を負とする。なお、投写用光学系が変倍光学系の場合はDifPを広角端における値とする。条件式(8)は、いわば、瞳収差と最大像高との比を規定する式である。条件式(8)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、光学系の全長が長大化することを抑制できる。条件式(8)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。
-3<DifP/Imax<-0.2 (8)
【0072】
より良好な特性を得るためには、条件式(8)の下限値は、-2.5にすることがより好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(8)の上限値は、-0.5にすることがより好ましい。
【0073】
一例として、
図7および
図8に
図1の投写用光学系における位置Pistを二点鎖線で示し、位置Pmaxを破線で示す。なお、
図7および
図8には、光軸方向におけるこれらの位置を示している。
図7および
図8には、縮小側の最大有効像円上において光軸Zからの高さが最大有効像円の半径Imaxのk割の高さの点である点PHkから発して拡大側へ向かい開口絞りStの中心を通過した10本の光線Ry1、・・・、Ry10も示している。なお、
図7では、図の煩雑化を避けるため、点PHkのうち、点PH1と点PH10にのみ符号を付している。
図1の投写用光学系では、位置Pistおよび位置Pmaxは光路偏向部材であるプリズムPr内に位置している。
【0074】
また、上記のDifPに関連して、投写用光学系は、下記条件式(9)を満足することが好ましい。条件式(9)は、いわば、瞳収差と光路偏向部材を配置するスペースとの比を規定する式である。条件式(9)によって、光路偏向部材における光束径を抑制することができる。条件式(9)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。条件式(9)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、光路を折り曲げられた光束を通すスペースを確保できる。
0.4<|DifP/Dfr|<0.7 (9)
【0075】
より良好な特性を得るためには、条件式(9)の下限値は、0.45にすることがより好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(9)の上限値は、0.6にすることがより好ましい。
【0076】
投写用光学系は、下記条件式(10)を満足することが好ましい。条件式(10)は、いわば、瞳収差と空気換算したプリズムPrの厚さとの比を規定する式である。条件式(10)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最も拡大側のレンズの大型化を抑制できる。条件式(10)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、光路を折り曲げられた光束を通すスペースを確保できる。
0.7<|DifP/(Dpr/Npr)|<1.8 (10)
【0077】
より良好な特性を得るためには、条件式(10)の下限値は、0.75にすることがより好ましい。より良好な特性を得るためには、条件式(10)の上限値は、1.2にすることがより好ましい。
【0078】
なお、
図1に示した例は一例であり、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。例えば、各光学系に含まれるレンズの枚数およびレンズの形状は
図1の例と異なっていてもよい。
図1の例では、パワーを持つ光学素子は全て屈折型素子であるが、本開示の投写用光学系は回折光学素子を含んでもよい。
【0079】
光路偏向面は反射ミラーの面であってもよい。このようにした場合は、軽量化に有利となる。反射ミラーは、金属ミラーでもよく、誘電体多層膜ミラーでもよい。また、投写用光学系が含む光路偏向面の数は任意に設定可能である。光路偏向面が光路を折り曲げる角度は、90度であれば、製造上有利であるが、90度以外でもよい。なお、上記の「90度」は、本開示の技術が属する技術分野で実用上許容される誤差を含む。誤差は例えば-1度以上かつ+1度以下となる範囲とすることができる。
【0080】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。
【0081】
一例として、本開示の好ましい一態様は、縮小側の画像を拡大側に投写する投写用光学系であって、パワーを有する反射面を含まず、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成され、第1光学系G1は光路を折り曲げる光路偏向面を含み、上記条件式(1)を満足する。
【0082】
次に、本開示の投写用光学系の実施例について図面を参照して説明する。なお、各実施例の断面図に付された参照符号は、参照符号の桁数の増大に伴う説明および図面の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。従って、異なる実施例の図面において共通の参照符号が付されていても、必ずしも共通の構成ではない。
【0083】
[実施例1]
実施例1の投写用光学系の構成と光束の断面図は
図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1の投写用光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成される。第1光学系G1は、内部にプリズムPrを含む。プリズムPrは反射面Prsを有し、反射面Prsは光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。第2光学系G2は、5つのレンズ群を含み、そのうち3つのレンズ群は、変倍の際、隣り合うレンズ群との間隔を変化させて移動する。第2光学系G2は、光路を90度折り曲げる平面ミラーMrを含む。
【0084】
実施例1の投写用光学系について、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元と可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて示している。表1Aには第1光学系G1を示し、表1Bには第2光学系G2を示す。
【0085】
基本レンズデータの表は以下のように記載されている。Snの列には、最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示す。ただし、反射面Prsに対応する面の面番号の欄には「Prs」を記入し、平面ミラーMrに対応する面の面番号の欄には「Mr」を記入している。また、開口絞りStに対応する面の面番号の欄には面番号および「(St)」を記入している。Rの列には、各面の曲率半径を示す。Dの列には、各面とその縮小側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。Ndの列には、各構成要素のd線に対する屈折率を示す。νdの列には、各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。ERの列には、各面の最大有効半径を示す。AHの列には、各面の軸上マージナル光線B0mの光軸Zからの高さを示す。AHの列に示す値は、全変倍域での最大値である。
【0086】
基本レンズデータの表では、拡大側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を負としている。基本レンズデータの表では、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0087】
表2に、変倍比Zr、焦点距離の絶対値|f|、空気換算距離でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の[°]は単位が度であることを示す。表2では、「Wide」および「Tele」と付した列にそれぞれ、広角端状態および望遠端状態の各値を示す。
【0088】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸曲率半径の値を記載している。表3において、Snの行には非球面の面番号を示し、KAおよびAm(m=3、4、5、6、・・・、20)の行には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h2/{1+(1-KA×C2×h2)1/2}+ΣAm×hm
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸Zに垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸Zからレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0089】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
図9に、投写距離が1.55m(メートル)の状態における実施例1の投写用光学系の各収差図を示す。投写距離は、投写面から最も拡大側のレンズ面までの光軸上の距離である。
図9では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図では「FNo.=」の後にFナンバーの値を示す。その他の収差図では「ω=」の後に最大半画角の値を示す。
【0095】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても基本的に同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0096】
[実施例2]
実施例2の投写用光学系の構成と光束の断面図を
図10に示す。実施例2の投写用光学系の光路を展開した断面図を
図11に示す。実施例2の投写用光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成される。
【0097】
第1光学系G1は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群G1Fと、プリズムPrと、後群G1Rとからなる。前群G1Fは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1a~L1dからなる。後群G1Rは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1e~L1nからなる。プリズムPrの内部の反射面Prsは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。合焦群はレンズL1g~L1lからなる。
【0098】
第2光学系G2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第2Aレンズ群G2Aと、平面ミラーMrと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eとからなる。第2Aレンズ群G2Aは、レンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2Bは、レンズL2b~L2eからなる。第2Cレンズ群G2Cは、レンズL2f~L2hと、開口絞りStと、レンズL2i~L2jとからなる。第2Dレンズ群G2Dは、レンズL2k~L2mからなる。第2Eレンズ群G2Eは、レンズL2nからなる。変倍の際、第2Aレンズ群G2Aと第2Eレンズ群G2Eとは、表示面Simに対して固定され、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dとは隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。平面ミラーMrは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。
【0099】
実施例2の投写用光学系について、基本レンズデータを表4Aおよび表4Bに、諸元および可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、各収差図を
図12に示す。各収差図は、投写距離が1.55m(メートル)の状態におけるものである。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
[実施例3]
実施例3の投写用光学系の構成と光束の断面図を
図13に示す。実施例3の投写用光学系の光路を展開した断面図を
図14に示す。実施例3の投写用光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成される。
【0105】
第1光学系G1は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群G1Fと、プリズムPrと、後群G1Rとからなる。前群G1Fは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1a~L1dからなる。後群G1Rは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1e~L1nからなる。プリズムPrの内部の反射面Prsは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。合焦群はレンズL1g~L1lからなる。
【0106】
第2光学系G2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第2Aレンズ群G2Aと、平面ミラーMrと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eと、第2Fレンズ群G2Fとからなる。第2Aレンズ群G2Aは、レンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2Bは、レンズL2b~L2eからなる。第2Cレンズ群G2Cは、レンズL2f~L2gからなる。第2Dレンズ群G2Dは、レンズL2hと、開口絞りStと、レンズL2i~L2jとからなる。第2Eレンズ群G2Eは、レンズL2k~L2mからなる。第2Fレンズ群G2Fは、レンズL2nからなる。変倍の際、第2Aレンズ群G2Aと第2Fレンズ群G2Fとは、表示面Simに対して固定され、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eとは隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。平面ミラーMrは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。
【0107】
実施例3の投写用光学系について、基本レンズデータを表7Aおよび表7Bに、諸元および可変面間隔を表8に、非球面係数を表9に、各収差図を
図15に示す。各収差図は、投写距離が1.55m(メートル)の状態におけるものである。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
[実施例4]
実施例4の投写用光学系の構成と光束の断面図を
図16に示す。実施例4の投写用光学系の光路を展開した断面図を
図17に示す。実施例4の投写用光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系G1と、第2光学系G2とからなり、第1光学系G1と第2光学系G2との間に中間像MIが形成される。
【0113】
第1光学系G1は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群G1Fと、プリズムPrと、後群G1Rとからなる。前群G1Fは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1a~L1eからなる。後群G1Rは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、レンズL1f~L1oからなる。プリズムPrの内部の反射面Prsは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。合焦群はレンズL1h~L1mからなる。
【0114】
第2光学系G2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第2Aレンズ群G2Aと、平面ミラーMrと、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dと、第2Eレンズ群G2Eとからなる。第2Aレンズ群G2Aは、レンズL2aからなる。第2Bレンズ群G2Bは、レンズL2b~L2eからなる。第2Cレンズ群G2Cは、レンズL2f~L2gと、開口絞りStと、レンズL2h~L2iとからなる。第2Dレンズ群G2Dは、レンズL2j~L2lからなる。第2Eレンズ群G2Eは、レンズL2mからなる。変倍の際、第2Aレンズ群G2Aと第2Eレンズ群G2Eとは、表示面Simに対して固定され、第2Bレンズ群G2Bと、第2Cレンズ群G2Cと、第2Dレンズ群G2Dとは隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。平面ミラーMrは、光路を90度折り曲げる光路偏向面として機能する。
【0115】
実施例4の投写用光学系について、基本レンズデータを表10Aおよび表10Bに、諸元および可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を
図18に示す。各収差図は、投写距離が1.55m(メートル)の状態におけるものである。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
表13に実施例1~4の投写用光学系について、条件式(1)~(10)の対応値、並びに、ImaxおよびDifPの値を示す。表13に示す実施例の対応値を条件式の上限又は下限として用いて、条件式の好ましい範囲を設定してもよい。
【0121】
【0122】
実施例1~4の投写用光学系は、広角端における全画角が100度以上あり、広い画角を有している。実施例1~4の投写用光学系は、広角端におけるFナンバーが2.3以下であり、小さなFナンバーを有している。また、実施例1~4の投写用光学系は、小型に構成されながらも、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0123】
一般に、投写用光学系は、広い画角の投写像を求められることが多く、最近ではスクリーン近傍から大きな画面を投写可能であることも求められることも多い。これらのことから、投写用光学系の最も拡大側のレンズは大型化する傾向にあった。これに対して、本開示の投写用光学系によれば、最も拡大側のレンズの小型化を実現することが可能である。また、本開示の投写用光学系によれば、光路偏向面を含むため、コンパクトに構成しつつ、高い設置自由度を有することができる。
【0124】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。
図19は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図19に示す投写型表示装置100は、本開示の実施形態に係る投写用光学系10と、光源15と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての透過型表示素子11a~11cとを有する。また、投写型表示装置100は、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a~16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a~18cとを有する。なお、
図19では、投写用光学系10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、
図19ではその図示を省略している。
【0125】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a~16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a~11cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、投写用光学系10に入射する。投写用光学系10は、透過型表示素子11a~11cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン105上に投写する。
【0126】
図20は、本開示の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図20に示す投写型表示装置200は、本開示の実施形態に係る投写用光学系210と、光源215と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしてのDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)素子21a~21cとを有する。また、投写型表示装置200は、色分解および色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a~24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、
図20では投写用光学系210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、
図20ではその図示を省略している。
【0127】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a~24cにより3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a~21cに入射して変調され、再びTIRプリズム24a~24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、投写用光学系210に入射する。投写用光学系210は、DMD素子21a~21cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン205上に投写する。
【0128】
図21は、本開示のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図21に示す投写型表示装置300は、本開示の実施形態に係る投写用光学系310と、光源315と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての反射型表示素子31a~31cとを有する。また、投写型表示装置300は、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a~35cとを有する。なお、
図21では、投写用光学系310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、
図21ではその図示を省略している。
【0129】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a~35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a~31cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、投写用光学系310に入射する。投写用光学系310は、反射型表示素子31a~31cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン305上に投写する。
【0130】
図22は、本開示のまたさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図22に示す投写型表示装置600は、本開示の実施形態に係る投写用光学系66と、光源61と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしてのDMD素子64とを有する。また、投写型表示装置600は、カラーホイール62と、導光光学系63と、TIRプリズム65とを有する。なお、
図22では、投写用光学系66は概略的に図示している。
【0131】
カラーホイール62は、円周上に緑色、青色、および赤色の3色のフィルタが設けられており、カラーホイール62が回転すると光路上に各色のフィルタが順次挿入される。光源61からの白色光は、回転するカラーホイール62に入射することにより3つの色光光束(Green光、Blue光、Red光)に時分割される。時分割後の各色光光束は導光光学系63およびTIRプリズム65を経由した後、DMD素子64に入射して変調され、再びTIRプリズム65を経由して、投写用光学系66に入射する。投写用光学系66は、DMD素子64により変調された変調光に基づく光学像をスクリーン67上に投写する。
【0132】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術について説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0133】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、およびライトバルブは、種々の態様の変更が可能である。ライトバルブは、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0134】
以上の実施形態および実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
縮小側の画像を拡大側に投写する投写用光学系であって、
パワーを有する反射面を含まず、
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなり、
前記第1光学系と前記第2光学系との間に中間像が形成され、
前記第1光学系は光路を折り曲げる光路偏向面を含み、
縮小側の最大有効像円の半径をImax、
前記第1光学系の最も拡大側のレンズ面から前記光路偏向面までの光軸上の距離をDdefとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDdefを広角端における値とした場合、
0.2<Imax/Ddef<0.7 (1)
で表される条件式(1)を満足する投写用光学系。
[付記2]
前記第1光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、負のパワーを有する前群と、前記光路偏向面を含む光路偏向部材と、正のパワーを有する後群とからなる付記1に記載の投写用光学系。
[付記3]
前記前群は1枚以上の正レンズを含む付記2に記載の投写用光学系。
[付記4]
前記第1光学系の最も拡大側の光学有効面の最外周は、前記光学有効面と光軸との交点より光軸方向において縮小側に位置する付記2又は付記3に記載の投写用光学系。
[付記5]
前記前群が含む全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνnave、
前記前群が含む全ての正レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνpaveとした場合、
10<νnave-νpave<40 (2)
で表される条件式(2)を満足する付記2から付記4のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記6]
前記前群が含む全ての負レンズのd線に対する屈折率の平均値をNnave、
前記前群が含む全ての正レンズのd線に対する屈折率の平均値をNpaveとした場合、
0.15<Npave-Nnave<0.45 (3)
で表される条件式(3)を満足する付記2から付記5のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記7]
前記後群の少なくとも一部は合焦の際に移動する付記2から付記6のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記8]
前記第2光学系は、変倍の際に光軸に沿って移動する2つ以上の移動群を含む付記1から付記7のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記9]
前記第2光学系の前記移動群のうち、最も拡大側の前記移動群は正のパワーを有する付記8に記載の投写用光学系。
[付記10]
前記前群の最も縮小側の面から前記後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.5<Imax/Dfr<0.9 (4)
で表される条件式(4)を満足する付記2から付記7のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記11]
前記光路偏向面はプリズムの面である付記1から付記10のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記12]
前記プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、
前記プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.9<Imax/(Dpr/Npr)<1.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する付記11に記載の投写用光学系。
[付記13]
前記第1光学系の最も拡大側のレンズ面の最大有効半径をERf、
前記投写用光学系の全てのレンズ面の最大有効半径の最大値をERmaxとした場合、
0<ERf/ERmax<0.7 (6)
で表される条件式(6)を満足する付記1から付記12のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記14]
前記第1光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH1、
前記第2光学系の全てのレンズ面における軸上マージナル光線の光軸からの高さの最大値をAH2とした場合、
0<AH1/AH2<0.7 (7)
で表される条件式(7)を満足する付記1から付記13のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記15]
前記中間像より縮小側に開口絞りを含み、
前記開口絞りの実像が前記第1光学系の内部に存在し、
光軸方向における前記実像の位置を第1の位置とし、
縮小側の最大有効像円内の任意の点から発して拡大側へ向かい前記開口絞りの中心を通過した光線が前記中間像より拡大側で光軸と交差する位置のうち、前記第1の位置から最も離れた位置を第2の位置とした場合、
前記光路偏向面と光軸との交点は、光軸方向において前記第1の位置から前記第2の位置までの範囲内に位置する付記1から付記14のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記16]
1から10までの自然数をkとし、
縮小側の最大有効像円上において光軸からの高さが最大有効像円の半径のk割の高さの点を点PHkとし、
前記点PHkから発して拡大側へ向かい前記開口絞りの中心を通過した光線が前記中間像より拡大側で光軸と交差する位置を位置Pkとし、
前記位置Pkのうち、前記第1の位置からの光軸上の空気換算距離が最長となる位置を第3の位置とし、
前記第1の位置から前記第3の位置までの空気換算距離をDifPとし、
DifPの符号は、前記第1の位置を基準として縮小側の距離を正、拡大側の距離を負とし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDifPを広角端における値とした場合、
-3<DifP/Imax<-0.2 (8)
で表される条件式(8)を満足する付記15に記載の投写用光学系。
[付記17]
前記第1光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前群と、前記光路偏向面を含む光路偏向部材と、後群とからなり、
前記前群の最も縮小側の面から前記後群の最も拡大側の面までの光軸上の空気換算距離をDfrとし、
前記投写用光学系が変倍光学系の場合はDfrを広角端における値とした場合、
0.4<|DifP/Dfr|<0.7 (9)
で表される条件式(9)を満足する付記16に記載の投写用光学系。
[付記18]
前記光路偏向面はプリズムの面である付記12から付記16のいずれか1つに記載の投写用光学系。
[付記19]
前記プリズムの光軸に沿った厚さをDpr、
前記プリズムのd線に対する屈折率をNprとした場合、
0.7<|DifP/(Dpr/Npr)|<1.8 (10)
で表される条件式(10)を満足する付記18に記載の投写用光学系。
[付記20]
付記1から19のいずれか1項に記載の投写用光学系を備えた投写型表示装置。
【符号の説明】
【0135】
2 点
4 交点
10 投写用光学系
11a~11c 透過型表示素子
12 ダイクロイックミラー
13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
15 光源
16a~16c コンデンサレンズ
18a~18c 全反射ミラー
21a~21c DMD素子
24a~24c TIRプリズム
25 偏光分離プリズム
31a~31c 反射型表示素子
32 ダイクロイックミラー
33 ダイクロイックミラー
34 クロスダイクロイックプリズム
35a~35c 偏光分離プリズム
38 全反射ミラー
61 光源
62 カラーホイール
63 導光光学系
64 DMD素子
65 TIRプリズム
66 投写用光学系
67 スクリーン
100 投写型表示装置
105 スクリーン
200 投写型表示装置
205 スクリーン
210 投写用光学系
215 光源
300 投写型表示装置
305 スクリーン
310 投写用光学系
315 光源
600 投写型表示装置
AH1 最大値
AH2 最大値
B0 軸上光束
B0m 軸上マージナル光線
B1 最大画角の光束
B2 最大画角の光束
Ddef 距離
Dpr 厚さ
ER 最大有効半径
G1 第1光学系
G1F 前群
G1R 後群
G2 第2光学系
G2A 第2Aレンズ群
G2B 第2Bレンズ群
G2C 第2Cレンズ群
G2D 第2Dレンズ群
G2E 第2Eレンズ群
G2F 第2Fレンズ群
Imax 半径
L1a~L2n レンズ
Lx レンズ
MI 中間像
Mr 平面ミラー
PH1 点
PH10 点
PP 光学部材
Pch 位置
Pdef 位置
Pist 位置
Pmax 位置
Pr プリズム
Prs 反射面
Px 位置
Ry1 光線
Ry10 光線
Rys 光線
Sim 表示面
St 開口絞り
Xa 軸上光束
Xb 軸外光束
Xb1 光線
Z 光軸