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特開2025-27882セルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物、および、その成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027882
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】セルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物、および、その成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20250220BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20250220BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20250220BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C08L1/00
C08K5/11
C08L71/02
C08G65/332
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133105
(22)【出願日】2023-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 祥晴
(72)【発明者】
【氏名】山下 将享
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002AB021
4J002EH096
4J002EH156
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD026
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD170
4J002FD310
4J002FD330
4J002FD340
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J005AA00
4J005BD02
(57)【要約】
【課題】セルロース系樹脂との相溶性に優れたセルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物、および、その成形体を提供する。
【解決手段】炭素原子数4~14の二塩基酸の群から選ばれる1種以上と、下記一般式(1)で表されるアルコールの群から選ばれる1種以上とを反応原料とする、二塩基酸のジエステルであるセルロース系樹脂用可塑剤である。反応原料のアルコール中に、n=4のアルコールを、1質量%以上、100質量%以下で含む。
一般式(1)中、nは1~40の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数4~14の二塩基酸の群から選ばれる1種以上と、下記一般式(1)で表されるアルコールの群から選ばれる1種以上とを反応原料とする、二塩基酸のジエステルであるセルロース系樹脂用可塑剤であって、
前記反応原料のアルコール中に、n=4のアルコールを、1質量%以上、100質量%以下で含むことを特徴とするセルロース系樹脂用可塑剤。
一般式(1)中、nは1~40の整数を表す。
【請求項2】
前記炭素原子数4~14の二塩基酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸からなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載のセルロース系樹脂用可塑剤。
【請求項3】
請求項1または2記載のセルロース系樹脂用可塑剤およびセルロース系樹脂を含有することを特徴とするセルロース系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載のセルロース系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称す)、および、その成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、種々のものが提供され、各種用途に使用されている。合成樹脂は、特に、家電製品や自動車の各種部品、筐体等に使用されたり、また、事務機器、電子電気機器の筐体などの部品にも使用されたりしている。
【0003】
近年では、カーボンニュートラルの点から、植物由来の樹脂が注目されている。特に、セルロースエステル等のセルロース系樹脂が注目されている。
【0004】
これらセルロース系樹脂は、強靭で光沢性や透明性、耐油性、耐候性が良いという特徴を有するが、単独で加熱すると溶融と同時に着色や分解が生じるため、良好な成形品を得ることができないという問題があった。そのため、加工性、すなわち流動性を改善するために、加工時には可塑剤が使用されてきた。
【0005】
このようなセルロース系樹脂用の可塑剤として、特許文献1には、グリセリンエステル系可塑剤であるトリアセチンが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ジエチレングリコールモノメチルエーテルとアジピン酸とのエステルや、トリエチレングリコールモノメチルエーテルとアジピン酸とのエステル等のエステルオリゴマーが提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/135778号
【特許文献2】特開2016-30797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の可塑剤は、セルロース系樹脂との相溶性に問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、セルロース系樹脂との相溶性に優れたセルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物、および、その成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、特定の二塩基酸および特定のアルコールを用いたセルロース系樹脂用可塑剤が、上記課題を解決することができるものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、炭素原子数4~14の二塩基酸の群から選ばれる1種以上と、下記一般式(1)で表されるアルコールの群から選ばれる1種以上とを反応原料とする、二塩基酸のジエステルであるセルロース系樹脂用可塑剤であって、前記反応原料のアルコール中に、n=4のアルコールを、1質量%以上、100質量%以下で含むことを特徴とするものである。
【0012】
一般式(1)中、nは1~40の整数を表す。
【0013】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤においては、前記炭素原子数4~14の二塩基酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤およびセルロース系樹脂を含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の成形体は、本発明のセルロース系樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セルロース系樹脂との相溶性に優れたセルロース系樹脂用可塑剤、それを含むセルロース系樹脂組成物、および、その成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[セルロース系樹脂用可塑剤]
まず、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤について説明する。
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、炭素原子数4~14の二塩基酸の群から選ばれる1種以上と、下記一般式(1)で表されるアルコールの群から選ばれる1種以上と、を反応原料とする二塩基酸のジエステルであって、反応原料のアルコール中に、n=4のアルコールを、1質量%以上、100質量%以下で含むものである。
【0019】
一般式(1)中、nは1~40の整数を表す。
【0020】
ここで、「反応原料」とは、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤である二塩基酸のジエステルを構成する原料という意味であり、二塩基酸のジエステルを構成しない溶媒や触媒を含まないという意味である。
【0021】
炭素原子数4~14の二塩基酸としては、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の観点から、好ましくは炭素原子数4~14のジカルボン酸であり、より好ましくは炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸であり、さらにより好ましくは炭素原子数4~14のアルキレンジカルボン酸であり、さらにより好ましくは炭素原子数6~12のアルキレンジカルボン酸である。
【0022】
炭素原子数4~14の二塩基酸としては、具体的には例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の観点から、これらの中でも、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸がより好ましく、アジピン酸およびセバシン酸がさらに好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
【0023】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤の反応原料である炭素原子数4~14の二塩基酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記一般式(1)で表されるアルコールにおいて、一般式(1)中のnは、1~40の整数である。一般式(1)中のnは、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の観点から、好ましくは2~15の整数であり、より好ましくは3~13の整数であり、さらにより好ましくは3~7の整数であり、特に好ましくは3~5の整数である。
【0025】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、反応原料である一般式(1)で表されるアルコール中に、n=4のアルコールを、1質量%以上、100質量%以下で含む。すなわち、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、反応原料のアルコール中に、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルを1質量%以上、100質量%以下で含むものである。
【0026】
n=4のアルコールであるテトラエチレングリコールモノメチルエーテルの含まれる割合は、反応原料のアルコール全量を100質量%としたときに、1質量%以上、100質量%以下である。その下限は、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらにより好ましくは15質量%以上であり、さらにより好ましくは20質量%以上であり、さらにより好ましくは30質量%以上であり、さらにより好ましくは35質量%以上であり、さらにより好ましくは40質量%以上であり、さらにより好ましくは45質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。その上限は、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0027】
一般式(1)で表されるアルコールとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタエチレングリコールモノメチルエーテル、ノナエチレングリコールモノメチルエーテル、デカエチレングリコールモノメチルエーテル、ウンデカエチレングリコールモノメチルエーテル、ドデカエチレングリコールモノメチルエーテル、トリデカエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラデカエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタデカエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサデカエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタデカエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタデカエチレングリコールモノメチルエーテル、ノナデカエチレングリコールモノメチルエーテル、イコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘンイコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ドコサエチレングリコールモノメチルエーテル、トリコサエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタコサエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタコサエチレングリコールモノメチルエーテル、ノナコサエチレングリコールモノメチルエーテル、トリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘントリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ドトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、トリトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、オクタトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ノナトリアコンタエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラコンタエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。これらのうち、n=4のアルコールであるテトラエチレングリコールモノメチルエーテル以外の反応原料として、好ましいアルコールとしては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられ、より好ましいアルコールとしては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0028】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤の反応原料である一般式(1)で表されるアルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤の数平均分子量は、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の点から、450~2000が好ましく、480~1500がより好ましく、520~1000がさらにより好ましい。数平均分子量の測定方法は、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)による測定方法が挙げられる。その測定方法を、以下に示す。
【0030】
<GPCによる数平均分子量の測定方法>
テトラヒドロフラン(THF)10mLに試料50mgを溶解したサンプルを作製し、セミミクロGPCカラム(昭和電工株式会社製 SHODEX KF-402.5)を用いて、示差屈折率計検出器にてピークを分割解析し、ポリスチレン換算にて平均分子量を算出する。
【0031】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤においては、その製造方法は特に制限を受けず、公知のエステル化合物の製造方法を用いることができる。すなわち、炭素原子数4~14の二塩基酸の群から選ばれる1種以上と、上記一般式(1)で表されるアルコールの群から選ばれる1種以上を、エステル化反応させればよい。エステル化反応には触媒を用いてもよい。反応時には、加圧または減圧を行ってもよく、エステル化反応時の反応温度は、好ましくは150~250℃、より好ましくは180~230℃である。
【0032】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤の製造に用いることができるエステル化触媒の例を挙げると、硫酸、リン酸、塩化亜鉛、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸等の酸性触媒;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン(テトライソプロピルチタネート)等のアルコキシチタン化合物;ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレート等のチタンアシレート化合物;チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンエチルラクテート、チタンオクチレングリコレート等のチタンキレート化合物;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセテート等のスズ化合物;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸金属塩;酸化アンチモン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられる。これらは、単独でまたは組み合わせて用いられる。
【0033】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、好ましくは、セルロースエステル等のセルロース系樹脂に配合され、セルロース系樹脂組成物として使用される。
【0034】
[セルロース系樹脂組成物]
次に、本発明のセルロース系樹脂組成物について説明する。
本発明のセルロース系樹脂組成物は、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤およびセルロース系樹脂を含有するものである。
【0035】
本発明のセルロース系樹脂用可塑剤のセルロース系樹脂への配合量は、セルロース系樹脂との相溶性、耐揮発性およびセルロース系樹脂の加工性(流動性)改善の点から、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、1~70質量部がより好ましく、5~50質量部がさらにより好ましい。
【0036】
本発明のセルロース系樹脂組成物における、セルロース系樹脂としては、セルロースエステルが好ましく、セルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテートなどが挙げられる。また、セルロース系樹脂は、長鎖脂肪酸でエステル化されていてもよい。セルロース系樹脂としては、相溶性および加工性(流動性)改善の点から、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一つがアセチル基で置換されたセルロースが好ましい。セルロース系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
セルロース系樹脂は、市販品を使用してもよい。セルロースエステルの市販品としては、例えば、「L-20」(商品名:株式会社ダイセル製、平均アセチル置換度2.41、平均重合度145)、「L-30」(商品名、同社製、平均アセチル置換度2.41、平均重合度160)、「L-50」(商品名、同社製、平均アセチル置換度2.41、平均重合度180)、「L-70」(商品名、同社製、平均アセチル置換度2.41、平均重合度190)などのセルロースジアセテート、あるいは「LT-35」(商品名:株式会社ダイセル製、平均アセチル置換度2.87、平均重合度270)などのセルローストリアセテートなどが挙げられる。セルロースエステルの市販品をさらに挙げると、イーストマンケミカル社製のEastmanTMCA、EastmanTMCAP、EastmanTMCABが挙げられる。これら市販品は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明のセルロース系樹脂組成物には、セルロース系樹脂用可塑剤以外にも、衝撃強度を向上させる目的で、例えば、ゴム系添加剤などの衝撃性向上剤を用いることができる。
【0039】
かかるゴム系添加剤としては、例えば、メタブレンS-2001(商品名:三菱レイヨン株式会社製)、メタブレンSRA-200(同上)等のシリコーンアクリル系ゴム、メタブレンW-450A(同上)、メタブレンW-300A(同上)等のアクリル系ゴム、メタブレンC-223A(同上)、メタブレンC-323A(同上)、メタブレンC-303A(同上)、メタブレンC-215A(同上)等のスチレンブタジエン系ゴムなどが挙げられる。
【0040】
本発明のセルロース系樹脂組成物には、さらに、上記以外にも各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0041】
かかる添加剤としては、例えば、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤以外の可塑剤、難燃剤、難燃助剤、相溶化剤、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、アミン系、イオウ系など)、紫外線吸収剤、整泡剤、脱泡剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤、熱安定剤、粘着付与剤、触媒、フィラー(無機系、有機系)、シランカップリング剤、ワックス、加工助剤、抗菌剤、防カビ剤等の公知のものが使用できる。また、必要に応じて、ブレンド用樹脂として、公知の可塑性樹脂、硬化性樹脂等を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜、選択して使用することができる。なお、上記添加剤は一例であって、本発明の効果を損なわない限り、その種類および使用量を特に限定するものではない。
【0042】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤、セルロース系樹脂、および、必要に応じて他の成分を、例えば、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合することで、セルロース系樹脂組成物の混合粉として得ることができる。
【0043】
また、本発明のセルロース系樹脂組成物は、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤、セルロース系樹脂、および、必要に応じて他の成分を、例えば、コニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することで、ペレット状のセルロース系樹脂組成物として得ることもできる。
【0044】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、例えば、電気・電子機器(家電製品、オフィス・オートメーション(OA)機器、メディア関連機器、光学用機器、通信機器等)の部品(内装・外装部品)、自動車や旅客機、船舶などの各種乗り物の部品(内装部品・外装部品)、内装材、外装材、事務機器や電子・電気機器などの筐体など、広範囲の用途に利用でき、特に、複写機、複合機、プリンター、パーソナルコンピュータ、テレビ等の電気・電子機器用の内装材や外装材(特に筐体)として有用である。
【0045】
[成形体]
次に、本発明の成形体について説明する。
本発明の成形体は、本発明のセルロース系樹脂組成物からなるものであり、本発明のセルロース系樹脂組成物から得られる。本発明の成形体は、具体的には、配合粉状やペレット状の本発明のセルロース系樹脂組成物を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形して得ることができる。
【0046】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形、星形、多角形形状等が挙げられる。
【0047】
本発明のセルロース系樹脂組成物およびその成形体は、電気・電子・通信、農林水産、鉱業、建設、食品、繊維、衣類、医療、石炭、石油、ゴム、皮革、自動車、精密機器、木材、建材、土木、家具、印刷、楽器等の幅広い産業分野に使用できる。
【0048】
より具体的には、本発明のセルロース系樹脂組成物およびその成形体は、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、複写機、ファクシミリ、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、カード、ホルダー、文具等の事務、OA機器、洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、コタツ等の家電機器、TV、VTR、ビデオカメラ、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレー等のAV機器、コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、LED封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品および通信機器、自動車用内外装材、製版用フィルム、粘着フィルム、ボトル、食品用容器、食品包装用フィルム、製薬・医薬用ラップフィルム、製品包装フィルム、農業用フィルム、農業用シート、温室用フィルム等の用途に用いられる。
【0049】
また、本発明のセルロース系樹脂組成物およびその成形体は、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、デッキ材、壁材、柱材、敷板、塀の材料、骨組および繰形、窓およびドア形材、こけら板、羽目、テラス、バルコニー、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機、建物、住宅および建築用材料や土木材料、衣料、カーテン、シーツ、不織布、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、間仕切りカーテン、シート、バケツ、ホース、粉体輸送ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー、ラケット、テント、楽器等の生活用品、スポーツ用品等の各種用途にも、使用することができる。
【実施例0050】
以下、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
まず、下記の製造例に従い、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤を製造した。
【0052】
<セルロース系樹脂用可塑剤の製造>
〔製造例1〕
表1記載の二塩基酸およびアルコールを反応原料として、セルロース系樹脂用可塑剤を製造した。反応原料のアルコール中の、それぞれのアルコールの含有量を、質量%で示す。製造は、テトライソプロピルチタネートを触媒として、200~230℃で、常圧下・減圧下にてエステル化反応を行うことにより実施し、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤-1を得た。
【0053】
〔製造例2~8〕
製造例1と同様にして、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤-2~8を得た。
【0054】
〔比較製造例1~4〕
表1記載の二塩基酸およびアルコールを反応原料として、比較可塑剤を製造した。反応原料のアルコール中の、それぞれのアルコールの含有量を、質量%で示す。製造は、テトライソプロピルチタネートを触媒として、200~230℃で、常圧下・減圧下にてエステル化反応を行うことにより実施し、比較可塑剤-1~4を得た。
【0055】
〔実施例1~10、比較例1~5〕
セルロースエステル(製品名L-50、株式会社ダイセル製)をメチレンクロライド92質量部とメチルアルコール8質量部とからなる混合溶剤に対し、攪拌しながら溶解し、濃度7質量%の溶液とした。これに、表1に示すセルロース系樹脂用可塑剤-1~8を、それぞれ表2,3に示す添加量(質量%)で混合し、その溶液をシャーレ上に流延して約80μmの厚さに製膜して、各実施例の試験用フィルムを作製した。得られた試験用フィルムを用いて、下記試験を行った。結果を表2,3に示す。
【0056】
また、比較用の可塑剤として、比較可塑剤-1~5を使用した。比較可塑剤-1~4は上記比較製造例で得られたものであり、比較可塑剤-5についてはトリアセチンを使用した。実施例と同様にして、各比較例の試験用フィルムを作製し、下記試験を行った。結果を表3に示す。
【0057】
<相溶性試験>
上記で得られた試験用フィルムについて、ISO13468(D65)に準拠して、Haze値を測定した。Haze値が小さいほど透明性が良く、セルロース系樹脂との相溶性に優れる。評価には、下記の判断基準を用いた。
【0058】
(評価基準)
◎:Haze値が、0.5以下である。
〇:Haze値が、0.5を超えて、1.0以下である。
△:Haze値が、1.0を超えて、2.0以下である。
×:Haze値が、2.0を超える。
【0059】
<耐揮発性試験>
示差熱-熱重量同時測定装置(TG-DTA、株式会社リガク製、型式:TG8120)を用いて、耐揮発性について評価した。上記で得られた試験用フィルムをアルミパン(内径5mm)に入るよう数mgにカットして、基準物質をアルミナとし、N条件下(200mL/min)、昇温速度10.0℃/minで、210℃で20分保持した際の質量減少(揮発減量)を測定し、耐揮発性を評価した。質量減少(揮発減量)が小さいほど、耐揮発性が良好である。評価には、下記の判断基準を用いた。
【0060】
(評価基準)
◎:揮発減量が、3.0%未満である。
〇:揮発減量が、3.0%以上、5.0%未満である。
△:揮発減量が、5.0%以上、7.0%未満である。
×:揮発減量が、7.0%以上である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
*1:セルロースエステル(製品名L-50、株式会社ダイセル製)
【0065】
表1~3に示す結果から、本発明のセルロース系樹脂用可塑剤は、セルロース系樹脂との相溶性および耐揮発性に優れることが明らかである。また、本発明のセルロース系樹脂組成物は、相溶性および耐揮発性に優れ、これらの特性に優れた成形体を提供できることが明らかである。