(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025027983
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、及び反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20250220BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20250220BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108954
(22)【出願日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023132457
(32)【優先日】2023-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲月 判臣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】生越 大河
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬佑
(72)【発明者】
【氏名】三村 祥平
(72)【発明者】
【氏名】金子 英雄
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB16
2H195BB22
2H195BC05
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA15
2H195CA22
(57)【要約】
【解決手段】基板と、基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有し、吸収膜が、酸素(O)を含むガスでドライエッチングされる材料からなり、EUV光を露光光とするEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクの素材となる反射型マスクブランクの吸収膜上に、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜を設ける。
【効果】酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでパターニングされる吸収膜から、微細なパターンを良好に形成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有し、EUV光を露光光とするEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクの素材となる反射型マスクブランクであって、
上記吸収膜が、酸素(O)を含むガスでドライエッチングされる材料からなり、
上記吸収膜上に、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜を有する
ことを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
上記ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜が、ニオブ(Nb)単体、又はニオブ(Nb)と酸素(O)とを含有するニオブ(Nb)化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
上記吸収膜が、クロム(Cr)を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
上記吸収膜が、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクの上記吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングすることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項6】
レジストパターンをエッチングマスクとして、上記エッチングマスク膜をパターニングしてエッチングマスク膜のパターンを形成し、該エッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、上記吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングすることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記吸収膜のパターンを形成した後、上記エッチングマスク膜のパターンを硫酸過水(SPM)で除去することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIなどの半導体デバイスの製造などに使用される反射型マスクの素材である反射型マスクブランク、及び反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体装置)の製造工程では、転写用マスクに露光光を照射し、マスクに形成されている回路パターンを、縮小投影光学系を介して半導体基板(半導体ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ技術が繰り返し用いられる。従来、露光光の波長は、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いた193nmが主流となっており、露光プロセスや加工プロセスを複数回組み合わせるマルチパターニングというプロセスを採用することにより、最終的には露光波長より小さい寸法のパターンを形成してきた。
【0003】
しかし、継続的なデバイスパターンの微細化により、更なる微細パターンの形成が必要とされてきていることから、露光光としてArFエキシマレーザ光より更に波長の短い極端紫外(Extreme Ultraviolet、以下「EUV」と称す。)光を用いたEUVリソグラフィ技術が用いられるようになってきた。EUV光とは、波長が0.2~100nm程度、より具体的には、波長が13.5nm付近の光である。EUV光は、物質に対する透過性が極めて低く、従来の透過型の投影光学系やマスクが使えないことから、反射型の光学素子が用いられる。そのため、パターン転写用のマスクも反射型マスクが用いられている。
【0004】
反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜の上にEUV光を吸収する吸収膜のパターンが形成されたものである。一方、吸収膜をパターニングする前の状態のもの(レジスト膜が形成された状態のものを含む。)が、反射型マスクブランクと呼ばれ、これが反射型マスクの素材として用いられる。反射型マスクブランクは、一般的には、低熱膨張の基板と、基板の2つの主表面のうち一方の面に形成されたEUV光を反射する多層反射膜と、その上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜とを含む基本構造を有している。
【0005】
多層反射膜としては、通常、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層とを交互に積層することで、EUV光に対する必要な反射率を得る多層反射膜が用いられる。一方、吸収膜としては、EUV光に対して消衰係数の値が比較的大きいタンタル(Ta)などが用いられる(特開2002-246299号公報(特許文献1))。
【0006】
更に、多層反射膜を、反射型マスクの洗浄の際などに保護するための保護膜(キャッピング膜)として、特開2002-122981号公報(特許文献2)に開示されているような、ルテニウム(Ru)膜が、多層反射膜の上に形成される。また、吸収膜にパターン形成する際のエッチングマスクとして、クロム(Cr)を含むハードマスク膜が吸収膜の上に形成される場合もある。一方、基板の他方の主表面には、導電膜が形成される。導電膜としては、静電チャッキングのために、金属窒化膜が提案されており、主にクロム(Cr)、タンタル(Ta)を含有する膜が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-246299号公報
【特許文献2】特開2002-122981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸収膜には、一般的に、タンタル(Ta)系の膜が用いられているが、反射型マスクを用いた露光時のシャドーイング効果を低減して、ウェハへのパターン転写時の精度を上げるために、吸収膜の膜厚に相当するパターン高さを低くすること、即ち、吸収膜の薄膜化が求められており、タンタル(Ta)系の吸収膜より薄膜化できるクロム(Cr)系の吸収膜が着目されている。
【0009】
クロム(Cr)系の膜などの吸収膜は、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでパターニングされるが、吸収膜上に、レジスト膜を形成し、レジスト膜からレジストパターンを形成して、レジストパターンをエッチングマスクとしてドライエッチングすると、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでは、レジストパターンもエッチングされてしまうため、レジストパターン(レジスト膜)を厚くする必要がある。しかし、厚いレジスト膜から微細なレジストパターンを形成しようとすると、アスペクト比が高くなり、レジストパターンが倒れてしまい、微細なレジストパターンを形成することができず、微細な吸収膜のパターンを形成することができない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでパターニングされる吸収膜から、微細な吸収膜のパターンを良好に形成することができる反射型マスクブランク、及び反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸素(O)を含むガス、特に、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いてドライエッチングされる材料からなる吸収膜の上に、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、以下の反射型マスクブランク、及び反射型マスクの製造方法を提供する。
1.基板と、該基板の一の主表面上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有し、EUV光を露光光とするEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクの素材となる反射型マスクブランクであって、
上記吸収膜が、酸素(O)を含むガスでドライエッチングされる材料からなり、
上記吸収膜上に、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜を有する
ことを特徴とする反射型マスクブランク。
2.上記ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜が、ニオブ(Nb)単体、又はニオブ(Nb)と酸素(O)とを含有するニオブ(Nb)化合物からなることを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
3.上記吸収膜が、クロム(Cr)を含有することを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
4.上記吸収膜が、ルテニウム(Ru)を含有することを特徴とする1に記載の反射型マスクブランク。
5.1~4のいずれかに記載の反射型マスクブランクの上記吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングすることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
6.レジストパターンをエッチングマスクとして、上記エッチングマスク膜をパターニングしてエッチングマスク膜のパターンを形成し、該エッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、上記吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングすることを特徴とする5に記載の製造方法。
7.上記吸収膜のパターンを形成した後、上記エッチングマスク膜のパターンを硫酸過水(SPM)で除去することを特徴とする6に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでパターニングされる吸収膜から、微細なパターンを良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の反射型マスクの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の反射型マスクブランクは、基板と、基板の一の主表面(表面)上に形成された露光光を反射する多層反射膜と、多層反射膜上に形成された露光光を吸収する吸収膜とを有する。また、本発明の反射型マスクブランクは、吸収膜上に、エッチングマスク膜を有する。
【0016】
本発明の反射型マスクブランクは、EUV光を露光光とするEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクの素材として好適である。EUV光を露光光とするEUVリソグラフィに用いられるEUV光の波長は13~14nmであり、通常、波長が13.5nm程度の光である。EUV光を露光光とする反射型マスクブランク及び反射型マスクは、各々、EUVマスクブランク及びEUVマスクとも呼ばれる。
【0017】
図1は、本発明の反射型マスクブランクの一例を示す断面図である。この反射型マスクブランク11は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている吸収膜3と、吸収膜3に接して形成されているエッチングマスク膜4とを備える。
【0018】
基板は、EUV光露光用として、低熱膨張特性を有するものであることが好ましく、例えば、熱膨張係数が、±2×10-8/℃以内、好ましくは±5×10-9/℃以内の範囲内の材料で形成されているものが好ましい。このような材料としては、チタニアドープ石英ガラス(SiO2-TiO2系ガラス)などが挙げられる。また、基板は、表面が十分に平坦化されているものを用いることが好ましく、基板の主表面の表面粗さは、RMS値で好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以下である。このような表面粗さは、基板の研磨などにより得ることができる。基板のサイズは、基板の主表面のサイズが152mm角、基板の厚さが6.35mmであることが好ましい。このサイズの基板は、いわゆる6025基板と呼ばれる基板(主表面のサイズが6インチ角、厚さが0.25インチの基板)である。
【0019】
多層反射膜は、反射型マスクにおいて、露光光を反射する膜である。多層反射膜は、基板の一の主表面に接して設けることが好ましいが、基板の一の主表面との間に、下地膜などの他の膜を設けてもよい。多層反射膜は露光光に対する屈折率が相対的に高い高屈折率層と、露光光に対する屈折率が相対的に低い低屈折率層を交互に積層した周期積層構造を有する。
【0020】
高屈折率層は、ケイ素(Si)を含有する材料で形成されていることが好ましい。高屈折率層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる1種以上の添加元素を含有していてもよく、添加元素を含有している層と、添加元素を含有していない層との多層で構成してもよい。高屈折率層の厚さは、好ましくは3.5nm以上、より好ましくは4nm以上であり、また、好ましくは4.9nm以下、より好ましくは4.4nm以下である。
【0021】
低屈折率層は、モリブデン(Mo)を含有する材料で形成されていることが好ましい。また、低屈折率層は、ルテニウム(Ru)を含有する材料で形成することもできる。低屈折率層は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選ばれる1種以上の添加元素を含有していてもよく、添加元素を含有している層と、添加元素を含有していない層との多層で構成してもよい。低屈折率層の厚さは、好ましくは2.1nm以上、より好ましくは2.6nm以上であり、また、好ましくは3.5nm以下、より好ましくは3nm以下である。
【0022】
周期積層構造は、高屈折率層と低屈折率層とが含まれていればよく、1周期に高屈折率層が1層以上と、低屈折率層が1層以上とが含まれていればよい。1周期に含まれる層の数は、2層以上であり、1周期は、例えば、1層の高屈折率層と、1層の低屈折率層とで構成することができる。また、1周期には、互いに組成が異なる(例えば、組成比が異なる、添加元素の有無により組成が異なるなど)高屈折率層が2層以上含まれていてもよく、互いに組成が異なる(例えば、組成比が異なる、添加元素の有無により組成が異なるなど)低屈折率層が2層以上含まれていてもよい。この場合、1周期に含まれる層の数は、3層以上であり、4層以上又は5層以上であってもよいが、好ましくは8層以下である。周期積層構造の周期の数は、好ましくは30周期以上であり、また、好ましくは50周期以下、より好ましくは40周期以下である。低屈折率層が、ルテニウム(Ru)を含有する材料で形成されている場合、周期積層構造の基板から最も離間する層(最上層)は、高屈折率層であることが好ましい。また、吸収膜が多層反射膜と接し、吸収膜が、後述するクロム(Cr)を含む吸収膜である場合、周期積層構造の基板から最も離間する層(最上層)が、ケイ素(Si)層であると、吸収膜のドライエッチングにおける、エッチング選択比が高くなるため好ましい。
【0023】
周期積層構造を有する多層反射膜の厚さは、露光波長や露光光の入射角に応じて調整されるが、好ましくは200nm以上、より好ましくは270nm以上であり、また、好ましくは400nm以下、より好ましくは290nm以下である。
【0024】
多層反射膜の形成方法としては、ターゲットに電力を供給し、供給した電力で雰囲気ガスをプラズマ化(イオン化)して、スパッタリングを行うスパッタ法や、イオンビームをターゲットに照射するイオンビームスパッタ法が挙げられる。スパッタ法としては、ターゲットに直流電圧を印加するDCスパッタ法、ターゲットに高周波電圧を印加するRFスパッタ法がある。スパッタ法とはスパッタガスをチャンバーに導入した状態でターゲットに電圧を印加し、ガスをイオン化し、ガスイオンによるスパッタリング現象を利用した成膜方法で、特にマグネトロンスパッタ法は生産性において有利である。ターゲットに印加する電力はDCでもRFでもよく、また、DCには、ターゲットのチャージアップを防ぐために、ターゲットに印加する負バイアスを短時間反転するパルススパッタリングも含まれる。
【0025】
多層反射膜は、例えば、複数のターゲットを装着できるスパッタ装置を用いてスパッタ法により形成することができる。具体的には、ターゲットとして、モリブデン(Mo)を含有する層を形成するためのモリブデン(Mo)ターゲット、ルテニウム(Ru)を含有する層を形成するためのルテニウム(Ru)ターゲット、ケイ素(Si)を含有する層を形成するためのケイ素(Si)ターゲットなどから適宜選択して用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いて形成することができる。
【0026】
また、スパッタリングを、反応性ガスを用いた反応性スパッタリングとする場合は、例えば、窒素(N)を含有する膜を形成するときには、窒素(N2)ガスなどの窒素含有ガス、酸素(O)を含有する膜を形成するときには、酸素(O2)ガスなどの酸素含有ガス、窒素(N)と酸素(O)を含有する膜を形成するときには、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガスなどの酸化窒素ガス、炭素(C)と酸素(O)を含有する膜を形成するときには、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガスなどの酸化炭素ガス、水素(H)を含有する膜を形成するときには、水素(H2)ガスなどの水素含有ガス、炭素(C)と水素(H)を含有する膜を形成するときには、メタン(CH4)ガスなどの炭化水素ガスを、希ガスと共に用いればよい。
【0027】
更に、ホウ素(B)を含有する層を形成するときには、ホウ素(B)を添加したモリブデン(Mo)ターゲット(ホウ化モリブデン(MoB)ターゲット)、ホウ素(B)を添加したケイ素(Si)ターゲット(ホウ化ケイ素(SiB)ターゲット)などを用いることができる。
【0028】
本発明の反射型マスクブランクは、多層反射膜と吸収膜との間に、多層反射膜を保護する保護膜を有していてもよい。保護膜は、キャッピング膜とも呼ばれる。保護膜は、多層反射膜を保護するための膜である。保護膜は、通常、多層反射膜に接して設けられる。また、保護膜は、吸収膜に接して、又は吸収膜と接する他の膜(例えば、後述するエッチング阻止膜など)と接して設けることができる。
【0029】
保護膜は、ルテニウム(Ru)を含有する材料で形成される。ルテニウム(Ru)を含有する材料としては、ルテニウム(Ru)単体、ルテニウム(Ru)と、ルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属とを含有する合金などが挙げられる。ルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属としては、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)などが挙げられる。ルテニウム(Ru)を含有する材料としては、特に、ルテニウム(Ru)単体、ルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とを含有する合金が好ましい。また、保護膜に接して、後述するクロム(Cr)を含む材料からなる吸収膜を形成する場合、保護膜が、ルテニウム(Ru)とニオブ(Nb)とを含有する膜であると、吸収膜のドライエッチングにおける、エッチング選択比が高くなるため好ましい。保護膜中のルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属の含有率は、膜全体の平均で、好ましくは30原子%以下、より好ましくは20原子%以下である。保護膜中のルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属の含有率の下限は、特に限定されるものではないが、膜全体の平均で、好ましくは5原子%以上、より好ましくは10原子%以上である。
【0030】
保護膜は、単層構造であっても、組成の異なる複数の層を組み合わせた多層構造であってもよく、また、単層及び複数の層を構成する各々の層は、厚さ方向に組成が連続的に変化する傾斜組成構造を有していてもよい。特に、保護膜の多層反射膜に近接する側(多層構造の場合は、多層反射膜に近接する層)及び多層反射膜から最も離間する側(多層構造の場合は、多層反射膜から最も離間する層)の一方又は双方がルテニウム(Ru)からなるようにすることができる。
【0031】
また、保護膜が、多層構造である場合又は傾斜組成構造を有している場合には、保護膜の厚さ方向の一部又は全部において、多層反射膜側から多層反射膜から離間する側に向かって、ルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属の含有率が増加していることが好ましい。特に、ルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属としてニオブ(Nb)を含有する場合、ニオブ(Nb)の含有が、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングに対する耐性の向上の点においても効果的であることから、保護膜の厚さ方向の一部又は全部において、多層反射膜側から多層反射膜から離間する側に向かって、ニオブ(Nb)の含有率が増加していることが好ましい。
【0032】
なお、本発明において、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングとして具体的には、塩素(Cl2)ガスと酸素(O2)ガスとを含むガスを用いたドライエッチングが挙げられる。塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスには、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスが含まれていてもよい。
【0033】
保護膜の厚さは、好ましくは2nm以上、より好ましくは3nm以上であり、また、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下である。
【0034】
保護膜は、ターゲットとして、ルテニウム(Ru)ターゲット、ルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属のターゲット、具体的には、ニオブ(Nb)ターゲット、レニウム(Re)ターゲット、ジルコニウム(Zr)ターゲット、チタン(Ti)ターゲット、クロム(Cr)ターゲット、ケイ素(Si)ターゲット、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)及びケイ素(Si)から選ばれる2種以上が混合されたターゲット、ルテニウム(Ru)に、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)及びケイ素(Si)から選ばれる1種以上のルテニウム(Ru)とは異なる金属又は半金属が混合されたターゲットなどから適宜選択して用い、スパッタリングガスとして、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いて、スパッタリングすることにより形成することができる。スパッタリングは、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
【0035】
吸収膜は、反射型マスクにおいて、露光光を吸収し、反射率を低下させる膜である。反射型マスクにおいては、吸収膜が形成されている部分と、吸収膜が形成されていない部分との反射率の差によって、転写パターンを形成する。吸収膜は、単層でも多層でもよく、表面に反射防止層などを形成してもよい。
【0036】
吸収膜は、酸素(O)を含むガスでドライエッチングされる材料からなる。吸収膜は、EUV光を吸収し、パターン加工が可能な材料の膜であり、クロム(Cr)を含有する材料や、ルテニウム(Ru)を含有する材料などで形成されていることが好ましい。
【0037】
なお、本発明において、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングとしては、酸素(O2)ガスを含むガスを用いたドライエッチングが挙げられる。特に、酸素(O2)ガスを含み、希ガス以外のガスを含まないガスを用いたドライエッチング、ハロゲンを含むガスと、酸素(O)を含むガス(具体的には、酸素(O2)ガス)を用いたドライエッチングが好ましい。ハロゲンとしては、塩素(Cl)、フッ素(F)が挙げられ、塩素(Cl)を含むガスとしては、塩素(Cl2)ガス、塩化水素(HCl)ガスなど、フッ素(F)を含むガスとしては、四フッ化炭素(CF4)ガス、六フッ化硫黄(SF6)ガスなどが挙げられる。酸素(O)を含むガスには、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスが含まれていてもよい。
【0038】
クロム(Cr)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などを含有していてもよい。クロム(Cr)を含有する材料として具体的には、Cr単体や、CrO、CrN、CrON、CrC、CrCO、CrCN、CrCONなどのクロム(Cr)化合物が挙げられる。更に、クロム(Cr)を含有する材料は、酸素(O)を含むガスでドライエッチングできる材料であれば、他の元素を含んでいてもよい。なお、金属又は半金属の化合物の化学式による表記は、化合物の構成元素を示すものであり、それらの組成比を意味するものではない。(以下、同じ。)
【0039】
ルテニウム(Ru)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などを含有していてもよい。ルテニウム(Ru)を含有する材料として具体的には、Ru単体や、RuO、RuN、RuON、RuC、RuCO、RuCN、RuCON、RuB、RuOB、RuNB、RuONB、RuCB、RuCOB、RuCNB、RuCONBなどのルテニウム(Ru)化合物が挙げられる。更に、ルテニウム(Ru)を含有する材料は、酸素(O)を含むガスでドライエッチングできる材料であれば、他の元素を含んでいてもよい。
【0040】
吸収膜の保護膜に対するエッチング選択比は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。吸収膜のシート抵抗は、好ましくは1×106Ω/□以下、より好ましくは1×105Ω/□以下である。吸収膜の表面粗さSqは、好ましくは0.8nm以下、より好ましくは0.6nm以下である。
【0041】
吸収膜(吸収膜を構成する各層)は、スパッタリングにより形成することができ、スパッタリングは、マグネトロンスパッタ法が好ましい。具体的にはクロム(Cr)を含有する材料で形成する場合は、クロム(Cr)ターゲットや、クロム(Cr)化合物ターゲット(クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などとを含有するターゲット)から、ルテニウム(Ru)を含有する材料で形成する場合は、ルテニウム(Ru)ターゲットや、ルテニウム(Ru)化合物ターゲット(ルテニウム(Ru)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などとを含有するターゲット)から、組成に応じて、ターゲットを適宜選択して用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いたスパッタリング、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガス、具体的には、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガス、酸化窒素(N2O、NO、NO2)ガス、酸化炭素(CO、CO2)ガスなどの反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより形成することができる。
【0042】
吸収膜上の基板から離間する側には、吸収膜のハードマスクとして、吸収膜とはエッチング特性が異なるエッチングマスク膜が設けられる。本発明において、エッチングマスク膜は、ニオブ(Nb)を含有する。ニオブ(Nb)は、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングの際に、酸化ニオブ(NbO)を形成する。酸化ニオブ(NbO)は、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有する。
【0043】
エッチングマスク膜は、吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いてドライエッチングする際のハードマスクとして機能する膜である。そのため、エッチングマスク膜は、吸収膜に含まれる金属又は半金属の元素、具体的には、クロム(Cr)やルテニウム(Ru)を含有していないことが好ましい。エッチングマスク膜は、吸収膜に接して設けられていることが好ましい。エッチングマスク膜は、単層であっても多層であってもよい。
【0044】
エッチングマスク膜は、ニオブ(Nb)単体からなるものが好ましいが、ニオブ(Nb)と酸素(O)とを含有するニオブ(Nb)化合物、例えば、酸化ニオブ(NbO)からなるものであってもよい。酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物は、ニオブ(Nb)と酸素(O)とが主成分であることが好ましく、ニオブ(Nb)と酸素(O)との合計の含有率が、膜全体の平均で、好ましくは70原子%以上、より好ましくは80原子%以上、更に好ましくは91原子%以上、特に好ましくは100原子%である。また、ニオブ(Nb)の含有率が、膜全体の平均で、好ましくは20原子%以上、より好ましくは28原子%以上、更に好ましくは29原子%以上である。
【0045】
酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物は、塩素(Cl)を含むガス又はフッ素(F)を含むガスを用いたドライエッチングでエッチングされる元素や化合物を更に含有していてもよく、例えば、ケイ素(Si)、窒素(N)、炭素(C)などの元素や、その化合物を含有していてもよい。ニオブ(Nb)及び酸素(O)以外の元素の合計の含有率は、膜全体の平均で、好ましくは30原子%以下、より好ましくは20原子%以下である。この場合、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)の合計の含有率が、膜全体の平均で、72原子%以下であることが好ましい。
【0046】
ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜は、単層でも複数層でもよい。複数層としては、例えば、酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物からなる層と、ニオブ(Nb)からなる層との組み合わせや、組成比の異なる酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物層の組み合わせなどの、組成や組成比が異なるニオブ(Nb)を含む層の組み合わせが挙げられる。また、それぞれの層は、単一組成層であっても、傾斜組成を有する傾斜組成層であってもよい。エッチングマスク膜が、酸素(O)を含有する場合は、表面側(基板から離間する側)の酸素(O)濃度を高くする、又は表面側を、酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物からなる層とし、基板側を、ニオブ(Nb)からなる層若しくはニオブ(Nb)を含有し、酸素(O)を含有しない層とすることが好ましい。
【0047】
なお、本発明において、塩素(Cl)を含むガスを用いたドライエッチングとして具体的には、塩素(Cl2)ガス、塩化水素(HCl)ガスなどを含むガスを用いたドライエッチングが挙げられる。また、フッ素(F)を含むガスを用いたドライエッチングとして具体的には、四フッ化炭素(CF4)ガスや、六フッ化硫黄(SF6)ガスを含むガスを用いたドライエッチングが挙げられる。塩素(Cl)を含むガスには、酸素(O)を含むガスが含まれていないことが好ましい。また、塩素(Cl)を含むガス及びフッ素(F)を含むガスには、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスが含まれていてもよい。
【0048】
エッチングマスク膜は、吸収膜のパターンを形成した後には、例えばパターン検査などの検査で用いる光の波長における反射率を低減するための反射率低減層として反射型マスク上に残しても、取り除いて反射型マスク上には残存させないようにしてもよい。
【0049】
エッチングマスク膜の厚さは、特に制限されるものではないが、薄すぎる場合は、ハードマスクとして機能しないおそれがあり、また、厚すぎる場合は、加工特性が悪化するおそれがあることから、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、また、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0050】
エッチングマスク膜は、スパッタリングにより形成することができる。エッチングマスク膜は、ターゲットとして、ニオブ(Nb)ターゲットと、必要に応じてニオブ(Nb)化合物ターゲット(ニオブ(Nb)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などとを含有するターゲット)とを用い、スパッタガスとして、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガスなどの希ガスを用いたスパッタリング、また、希ガスと共に、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガス、具体的には、酸素(O2)ガス、窒素(N2)ガス、酸化窒素(N2O、NO、NO2)ガス、酸化炭素(CO、CO2)ガスなどの反応性ガスを用いた反応性スパッタリングにより形成することができる。スパッタリングは、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
【0051】
エッチングマスク膜が酸素(O)を含む場合、ニオブ(Nb)は、自然酸化されやすいので、ニオブ(Nb)単体の膜を形成して、大気中などの酸素(O)を含有する雰囲気に曝して酸化させることで、酸素(O)を含有するニオブ(Nb)化合物とすることができる。ニオブ(Nb)単体の膜を酸化させる場合、膜を熱処理してもよい。
【0052】
なお、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜(第1のエッチングマスク膜)のエッチングにおけるハードマスクとして機能する別のエッチングマスク膜(第2のエッチングマスク膜)を、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜の上に、好ましくはニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜に接して設けてもよい。第2のエッチングマスク膜としては、クロム(Cr)を含有するエッチングマスク膜が挙げられる。
【0053】
本発明の反射型マスクブランクは、保護膜と吸収膜との間に、エッチング阻止膜を有していてもよい。エッチング阻止膜は、酸素(O)を含むガス、特に、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングにおいて、保護膜を保護し、保護膜へのエッチングを阻止する膜である。したがって、エッチング阻止膜は、酸素(O)を含むガス、特に、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングに対するエッチングストッパとして機能する。エッチング阻止膜は、ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)を含有することが好ましい。ニオブ(Nb)又はタンタル(Ta)を含有するエッチング阻止膜は、酸素(O)を含むガス、特に、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングでエッチングされないので、保護膜へのダメージを防止することができる。
【0054】
基板の一の主表面と反対側の面である他の主表面(裏面)上には、好ましくは他の主表面に接して、反射型マスクを露光装置(例えば、EUVスキャナー)に静電チャックするために用いる導電性の膜(導電膜)を設けてもよい。
【0055】
導電膜は、シート抵抗が100Ω/□以下であることが好ましく、材質に特に制限はない。導電膜の材料としては、例えば、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含有する材料が挙げられる。また、タンタル(Ta)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)などを含有していてもよく、クロム(Cr)を含有する材料は、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)などを含有していてもよい。タンタル(Ta)を含有する材料としては、Ta単体、TaO、TaN、TaON、TaC、TaCN、TaCO、TaCON、TaB、TaOB、TaNB、TaONB、TaCB、TaCNB、TaCOB、TaCONBなどのタンタル(Ta)化合物が挙げられる。クロム(Cr)を含有する材料として具体的には、Cr単体、CrO、CrN、CrON、CrC、CrCN、CrCO、CrCONなどのクロム(Cr)化合物が挙げられる。
【0056】
導電膜の厚さは、静電チャック用として機能すればよく、特に制限されるものではないが、通常20~300nm程度である。導電膜の厚さは、反射型マスクとして形成した後、即ち、吸収膜のパターンを形成した後に、一の主表面(表面)側に形成された膜及び膜のパターンと、膜応力がバランスするような厚さとすることが好ましい。導電膜は、多層反射膜を形成する前に形成しても、基板の多層反射膜側の全ての膜を形成した後に形成してもよく、また、基板の多層反射膜側の一部の膜を形成した後、導電膜を形成し、その後、基板の多層反射膜側の残部の膜を形成してもよい。導電膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により形成することができる。
【0057】
本発明の反射型マスクブランクは、基板から最も離間する側に、レジスト膜が形成されたものであってもよい。レジスト膜は、電子線(EB)レジストが好ましい。
【0058】
反射型マスクブランクからは、例えば、基板と、基板の一の主表面上に形成された多層反射膜と、多層反射膜に接して形成された吸収膜のパターン(吸収膜パターン)とを有する反射型マスクを製造することができる。反射型マスクにおいては、吸収膜が形成されている部分と、吸収膜が形成されていない部分との反射率の差によって、転写パターンが形成される。
【0059】
図2は本発明の反射型マスクの一例を示す断面図である。この反射型マスク10は、基板1と、基板1上に、基板1に接して形成されている多層反射膜2と、多層反射膜2に接して形成されている吸収膜のパターン31とを備える。
【0060】
本発明の反射型マスクは、
反射型マスクブランクを準備する工程と、
必要に応じて、エッチングマスク膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
エッチングマスク膜の上のレジスト膜からレジストパターンを形成する工程と、
レジストパターンをエッチングマスクとして、エッチングマスク膜をエッチングして、エッチングマスク膜のパターンを形成する工程と、
エッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、吸収膜をエッチングして、吸収膜のパターンを形成する工程と、
レジストパターンを除去する工程と、
エッチングマスク膜のパターンを除去する工程
とを含む方法で製造することができる。
【0061】
ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜は、塩素(Cl)を含むガス又はフッ素(F)を含むガスを用いたドライエッチングによりエッチングすることができる。
【0062】
吸収膜は、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングされるが、吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いてドライエッチングする際、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜は、酸素(O)を含むガスでエッチングされないので、エッチングマスク膜のパターンは、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングにおいて、ハードマスクとして機能する。
【0063】
ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜(第1のエッチングマスク膜)のエッチングにおけるハードマスクとして機能する別のエッチングマスク膜(第2のエッチングマスク膜)を設けた場合、レジストパターンをエッチングマスクとして第2のエッチングマスク膜をエッチングして、第2のエッチングマスク膜のパターンを形成し、第2のエッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、第1のエッチングマスク膜をエッチングして、第1のエッチングマスク膜のパターンを形成することができる。
【0064】
第2のエッチングマスク膜が、クロム(Cr)を含有するエッチングマスク膜である場合、第2のエッチングマスク膜のパターンは、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングにより形成することができる。この場合、吸収膜が、クロム(Cr)を含有する材料で形成されていれば、吸収膜の塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによるパターニングと同時に、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングにより、第2のエッチングマスク膜のパターンを除去することができる。
【0065】
クロム(Cr)を含有する材料で形成された吸収膜は、塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりエッチングすることができる。また、ルテニウム(Ru)を含有する材料で形成された吸収膜は、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチング、具体的には、酸素(O2)ガスを含み、希ガス以外のガスを含まないガスを用いたドライエッチング、又は塩素(Cl)と酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりエッチングすることができる。
【0066】
レジストパターンをエッチングマスクとして、エッチングマスク膜をエッチングして、エッチングマスク膜のパターンを形成し、エッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、吸収膜のパターンを形成することにより、レジストパターンを吸収膜に直接形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、吸収膜を、酸素(O)を含むガスを用いたドライエッチングによりパターニングして、吸収膜のパターンを形成する場合と比べて、レジストパターン(レジスト膜)を薄くすることができ、微細なパターンを良好に形成することができる。
【0067】
レジストパターンや、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜のパターンは、硫酸過水(SPM)により除去することができる。
【0068】
また、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜のパターンは、塩素(Cl)を含むガス又はフッ素(F)を含むガスを用いたドライエッチングで除去することもできるが、ニオブ(Nb)は、酸素(O)を含むガスに曝されると、酸化されて、酸化ニオブ(NbO)が形成される。酸化ニオブ(NbO)は、塩素(Cl)を含むガス又はフッ素(F)を含むガスを用いたドライエッチングで除去され難いため、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜のパターンは、硫酸過水(SPM)により除去することが好ましい。その場合、ニオブ(Nb)を含有するエッチングマスク膜のパターンは、レジストパターンの除去と連続して除去することができる。
【0069】
吸収膜のパターンや、露出した保護膜は、硫酸過水(SPM)と接触する処理、例えば、硫酸過水(SPM)による洗浄に供することができる。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0071】
[実施例1]
精密研磨された、チタニアがドープされたSiO2からなる低熱膨張率の基板の一方の主表面の上に、厚さ3nmのモリブデン(Mo)層と、厚さ4nmのケイ素(Si)層とを1ペア(周期)として、モリブデン(Mo)層とケイ素(Si)層とを交互に40ペア(周期)積層した、最上層がケイ素(Si)層である多層反射膜をスパッタリングで形成した。次に、多層反射膜の上に、保護膜として、厚さ3nmのルテニウム(Ru)膜をスパッタリングで形成した。この多層反射膜と保護膜は、波長13.5nmのEUV光を6°の入射角で入射させたときの反射率が64%である。
【0072】
次に、保護膜の上に、吸収膜として、厚さ45nmの窒化クロム(CrN)膜(Cr:N=4:1(原子比))を形成した。窒化クロム(CrN)膜は、クロム(Cr)ターゲットに1000Wの電力を印加し、アルゴン(Ar)ガスを流量20SCCM、窒素(N2)ガスを10SCCMで流しながら、スパッタリングで形成した。
【0073】
次に、吸収膜の上に、エッチングマスク膜として、厚さ2nmの酸化ニオブ(NbO)膜(Nb:O=2:5(原子比))を形成した。酸化ニオブ(NbO)膜は、まず、ニオブ(Nb)ターゲットに750Wの電力を印加し、アルゴン(Ar)ガスを流量12SCCMで流しながら、スパッタリングでニオブ(Nb)膜を形成し、その後、大気中、150℃で10分間、熱処理することによりニオブ(Nb)膜を酸化して形成した。
【0074】
また、基板の他方の主表面の上に、導電膜として、厚さ70nmの窒化タンタル(TaN)膜をスパッタリングで形成して、反射型マスクブランクを得た。
【0075】
得られた反射型マスクブランクから反射型マスクを製造した。まず、エッチングマスク膜の上に、電子線(EB)レジストを塗布して、厚さ90nmのレジスト膜を形成し、レジスト膜に電子線(EB)でパターンを描画し、現像して、線幅が50nmのラインアンドスペース(L/S)パターンを有するレジストパターンを形成した。
【0076】
次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、六フッ化硫黄(SF6)ガスを含むガスを用いたドライエッチングによりエッチングマスク膜をパターニングしてエッチングマスク膜のパターンを形成した。ドライエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式とし、SF6流量:18SCCM、He流量:130SCCM、圧力:5mTorr(0.67Pa)、ICP電力:325W、RIE電圧:190Vの条件で実施した。
【0077】
次に、エッチングマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素(Cl2)ガスと酸素(O2)ガスとを含むガスを用いたドライエッチングにより吸収膜をパターニングして吸収膜のパターンを形成した。ドライエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式とし、Cl2流量:185SCCM、O2流量:55SCCM、He流量:9.25SCCM、圧力:6mTorr(0.8Pa)、ICP電力:400W、RIE電圧:700Vの条件で実施した。
【0078】
次に、硫酸過水(SPM)で、残存しているレジストパターンと、エッチングマスク膜のパターンを除去して、反射型マスクを得た。得られた反射型マスクには、線幅が50nmの微細な吸収膜のパターンが良好に形成されていた。
【0079】
[比較例1]
エッチングマスク膜を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、反射型マスクブランクを得た。次に、吸収膜に直接、実施例1と同様にして、レジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをエッチングマスクとした以外は、実施例1と同様にして、塩素(Cl2)ガスと酸素(O2)ガスとを含むガスを用いたドライエッチングにより吸収膜をパターニングして吸収膜のパターンを形成しようとしたが、吸収膜のパターンが形成される前に、レジストパターンが消失してしまい、吸収膜のパターンを形成することができなかった。