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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028028
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】変調装置、復調装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20250220BHJP
   H04J 3/00 20060101ALI20250220BHJP
   H04H 20/28 20080101ALI20250220BHJP
   H04H 20/10 20080101ALI20250220BHJP
【FI】
H04L27/26 110
H04L27/26 310
H04L27/26 410
H04J3/00 M
H04H20/28
H04H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135442
(22)【出願日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2023132373
(32)【優先日】2023-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】平林 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
【テーマコード(参考)】
5K028
【Fターム(参考)】
5K028AA01
5K028NN01
(57)【要約】
【課題】放送本線に対して信号品質を劣化させることなく、送信局識別コードの検出、書き込み、及び中継局での差し替えを容易に行うことを可能とする。
【解決手段】変調装置1は、送信局を識別する送信局識別コードを伝送するためのサブフレームである送信局識別コード用サブフレームを生成する送信局識別コード用サブフレーム生成部17と、送信局識別コード用サブフレームと、伝送制御情報を有するTMCC信号と、映像・音声・字幕データを伝送するためのサブフレームである階層データ用サブフレームと、を時分割により1つのフレームに多重した時分割多重フレームを生成する時分割多重フレーム構成部19と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局を識別する送信局識別コードを伝送するためのサブフレームである送信局識別コード用サブフレームを生成する送信局識別コード用サブフレーム生成部と、
前記送信局識別コード用サブフレームと、伝送制御情報を有するTMCC信号と、映像・音声・字幕データを伝送するためのサブフレームである階層データ用サブフレームと、を時分割により1つのフレームに多重したOFDM信号を生成する時分割多重フレーム構成部と、
を備える、変調装置。
【請求項2】
前記送信局識別コード用サブフレーム生成部は、前記送信局識別コードに基づき第1のM系列信号をシフトさせた信号によりI軸を変調し、前記送信局識別コードに基づき第2のM系列信号をシフトさせた信号によりQ軸を変調したQPSK変調信号を生成する、請求項1に記載の変調装置。
【請求項3】
時分割多重フレーム構成部は、複数フレームに1回だけ前記送信局識別コード用サブフレームを時分割多重し、
前記TMCC信号は、前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むか否かを示す送信局識別コードフラグを有する、請求項1又は2に記載の変調装置。
【請求項4】
請求項1に記載の変調装置により生成されたOFDM信号を復調する復調装置であって、
前記送信局識別コード用サブフレームを復調した信号と、あらかじめ生成したM系列信号との相関係数を算出し、該相関係数のピーク位置によって前記送信局識別コードを検出する送信局識別コード復調部を備える、復調装置。
【請求項5】
前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むか否かを示す送信局識別コードフラグを有するTMCC信号を復調するTMCC復調部を備え、
前記送信局識別コード復調部は、前記送信局識別コードフラグに基づいて、前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むタイミングで前記送信局識別コードを復調する、請求項4に記載の復調装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1に記載の変調装置として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、請求項4に記載の復調装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調装置、復調装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送方式として、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式が知られている。さらに、地上デジタル放送の高品質化及び高機能化を目的として、ISDB-T方式の特長を継承した次世代の地上放送高度化方式の検討が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1には、高度化方式の今後の課題として、「現行の地上デジタル放送方式から地上放送高度化方式への移行後に送信周波数変更を行う際には、受信機が送信局を特定できる機能が望まれることから、その機能を実現するための情報を放送波に重畳する技術の検討が望まれる」と記載されている。
【0004】
具体的には、基幹局及び各中継局に固有の番号である送信局識別コードを割り当て、これを放送波に重畳することで、例えばSFN(Single Frequency Network)からMFN(Multi Frequency Network)への切り替えにおいて、受信機が自身の受信波の主局を判別することができ、チャンネル変更に伴う再チャンネルスキャンをスムーズに動作させることが可能となる。
【0005】
また、送信信号に対して、送信局毎に異なる送信局を識別するID(送信局ID)を重畳する手法は、米国の地上放送方式であるATSC(Advanced Television System Committee)3.0で実用化されている(例えば、非許文献2参照)。これは、階層分割多重(LDM:Layered Division Multiplexing)という手法を用いて、制御信号領域を含む上位レイヤーに対して、送信局IDを含む下位レイヤーを重畳するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-181709号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】総務省、「情報通信審議会 情報通信技術分科会 放送システム委員会 報告(案)」、[online]、2023年6月29日、[2023年8月10日検索]、インターネット<URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000890352.pdf>
【非特許文献2】Sung-Ik Park et al., “ATSC 3.0 Transmitter Identification Signals and Applications,” IEEE Trans. Broadcast., vol.63, no.1, pp.240-249, Mar.2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ATSC3.0における送信局IDの重畳は、映像、音声などの放送本線には影響がないことを利点としているが、送信局IDを中継局で「書き換える」ことを前提としていない。これは、ATSC3.0のネットワーク設計上、光回線などによって配信される何も重畳されていない信号に対して、送信局毎に送信局IDを重畳するシステム設計となっているからである。
【0009】
一方、我が国の地上放送は、全国に約2200局の基幹局、中継局を設置し、その多くは放送波を直接受信して信号処理後に再送信する「放送波中継」と呼ばれる、米国にはない独自の手法が用いられている。中継局まで専用の回線を用意する必要がないため設備コスト面で大きな利点があり、多用されている。そのため、すでに上位の送信局を識別するコード(ATSC3.0と区別するため、本明細書では「送信局ID」ではなく「送信局識別コード」と称する。)がすでに重畳された放送波に対して、放送波中継を行う中継局ではその送信局識別コードを書き換える必要がある。前述のATSC3.0で採用されている送信局IDの重畳手法は、送信局IDを示す信号が時間軸上又は周波数軸上で独立しているわけではなく、もし下位レイヤーの送信局IDを差し替えるとなると、上位レイヤーの制御信号も合わせて差し替えなければならない。そのため、制御信号を一旦復調する必要があり、「送信局IDの書き換え」の点で回路規模や処理遅延が増大し、また万が一制御信号の復調や差し替えに失敗した場合に波及する影響が甚大である。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、放送本線に対して信号品質を劣化させることなく、送信局識別コードの検出、書き込み、及び中継局での差し替えを容易に行うことを可能とさせる変調装置、復調装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0012】
(1)送信局を識別する送信局識別コードを伝送するためのサブフレームである送信局識別コード用サブフレームを生成する送信局識別コード用サブフレーム生成部と、前記送信局識別コード用サブフレームと、伝送制御情報を有するTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号と、映像・音声・字幕データを伝送するためのサブフレームである階層データ用サブフレームと、を時分割により1つのフレームに多重したOFDM信号を生成する時分割多重フレーム構成部と、を備える、変調装置。
【0013】
(2)前記送信局識別コード用サブフレーム生成部は、前記送信局識別コードに基づき第1のM系列信号をシフトさせた信号によりI軸を変調し、前記送信局識別コードに基づき第2のM系列信号をシフトさせた信号によりQ軸を変調したQPSK変調信号を生成する、(1)に記載の変調装置。
【0014】
(3)時分割多重フレーム構成部は、複数フレームに1回だけ前記送信局識別コード用サブフレームを時分割多重し、前記TMCC信号は、前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むか否かを示す送信局識別コードフラグを有する、(1)又は(2)に記載の変調装置。
【0015】
(4)(1)に記載の変調装置により生成されたOFDM信号を復調する復調装置であって、前記送信局識別コード用サブフレームを復調した信号と、あらかじめ生成したM系列信号との相関係数を算出し、該相関係数のピーク位置によって前記送信局識別コードを検出する送信局識別コード復調部を備える、復調装置。
【0016】
(5)前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むか否かを示す送信局識別コードフラグを有するTMCC信号を復調するTMCC復調部を備え、前記送信局識別コード復調部は、前記送信局識別コードフラグに基づいて、前記時分割多重フレームが前記送信局識別コード用サブフレームを含むタイミングで前記送信局識別コードを復調する、(4)に記載の復調装置。
【0017】
(6)一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、(1)から(3)のいずれかに記載の変調装置として機能させる。
【0018】
(7)一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、(4)又は(5)に記載の復調装置として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放送本線に対して信号品質を劣化させることなく、送信局識別コードの検出、書き込み、及び中継局での差し替えを容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る変調装置の構成例を示す図である。
図2】一実施形態に係る変調装置における送信局識別コード用サブフレーム生成部の構成例を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る変調装置におけるPRBS(Pseudo-Random Binary Sequence)生成部の構成例を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る変調装置により生成される時分割多重フレームの概略を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る復調装置の構成例を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態に係る復調装置における送信局識別コード復調部の構成例を示すブロック図である。
図7】伝送シミュレーションの系統図である。
図8】第1の実施形態に係る復調装置の伝送シミュレーションによって得られた相関係数の一例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る復調装置の構成例を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態に係る復調装置の伝送シミュレーションによって得られた相関係数の一例を示す図である。
図11】第3の実施形態に係る復調装置の構成例を示すブロック図である。
図12】第3の実施形態に係る復調装置における送信局識別コード復調部の構成例を示すブロック図である。
図13】第3の実施形態に係る復調装置における遅延プロファイル生成部の構成例を示すブロック図である。
図14】第3の実施形態に係る復調装置の伝送シミュレーションによって得られた遅延プロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
<一実施形態に係る変調装置>
図1は、一実施形態に係る変調装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、変調装置1は、BICM(Bit-Interleaved Coded Modulation)処理部11(11a,11b,11c)と、レベル調整部12(12a,12b,12c)と、シンボル処理部13と、パイロット生成部14と、TMCC生成部15と、フレーム同期信号生成部16と、送信局識別コード用サブフレーム生成部17と、送信処理部18と、時分割多重フレーム構成部19と、を備える。シンボル処理部13は、階層合成部131と、帯域分割部132と、時間IL(Interleave)部133と、周波数IL部134と、帯域合成部135と、を備える。送信処理部18は、OFDM変調部181と、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部182と、GI(Guard Interval)付加部183と、を備える。変調装置1は、送信局(送信装置)に搭載される。
【0023】
変調装置1は、複数の階層のデータを各BICM処理部11に入力する。本実施形態では、複数の階層をA階層、B階層、及びC階層の3つとし、A階層のデータをBICM処理部11aに入力し、B階層のデータをBICM処理部11bに入力し、C階層のデータをBICM処理部11cに入力する。また、変調装置1は、パイロット配置情報をパイロット生成部14に入力し、伝送制御情報をTMCC生成部15に入力する。伝送制御情報は、複数の階層の各々の伝送パラメータ(変調方式、セグメント数、符号化率など)を含む。
【0024】
BICM処理部11a,11b,11cは、それぞれ対応する階層のデータに対して、FEC(Forward Error Correction)ブロック変換処理、エネルギー拡散処理、BCH符号化処理、LDPC(Low Density Parity Check)符号化処理、ビットインターリーブ処理、及びキャリア変調処理を施し、キャリアシンボルを生成し、レベル調整部12a,12b,12cに出力する。
【0025】
レベル調整部12a,12b,12cは、階層毎にキャリアシンボルのレベル調整を行い、階層合成部131に出力する。
【0026】
階層合成部131は、各階層のキャリアシンボルを合成する。そして、階層合成部131は、合成されたキャリアシンボルを帯域分割部132に出力する。
【0027】
帯域分割部132は、合成されたキャリアシンボルに対して帯域分割処理を施すことにより各帯域に分割する。そして、帯域分割部132は、帯域分割されたキャリアシンボルを時間IL部133に出力する。例えば、帯域分割部132は、C階層データの一部を、必要に応じて、調整帯域に分割する。
【0028】
時間IL部133は、帯域分割されたキャリアシンボルに対して時間方向(すなわち、各キャリアにおいてシンボルの並び順方向)にインターリーブ処理を施し、時間インターリーブ信号を生成する。そして、時間IL部133は、時間インターリーブ信号を周波数IL部134に出力する。
【0029】
周波数IL部134は、時間IL部133から入力した時間インターリーブ信号に対して周波数方向にインターリーブ処理を施し、周波数インターリーブ信号を生成する。そして、周波数IL部134は、周波数インターリーブ信号を帯域合成部135に出力する。
【0030】
帯域合成部135は、各帯域の周波数インターリーブ信号を合成し、データセグメントを生成する。そして、帯域合成部135は、生成したデータセグメントをOFDM変調部181に出力する。
【0031】
パイロット生成部14は、パイロット配置情報に基づいてパイロット信号を生成し、OFDM変調部181に出力する。パイロット信号は、復調装置にとって既知の信号である。
【0032】
TMCC生成部15は、伝送制御情報に基づいて、伝送制御情報を有するTMCC信号を生成し、時分割多重フレーム構成部19に出力する。TMCC信号は、送信局識別コードを伝送するサブフレームの出現に連動した少なくとも1ビットの送信局識別コードフラグを有する。送信局識別コードフラグの詳細については後述する。
【0033】
フレーム同期信号生成部16は、フレーム同期信号を生成し、時分割多重フレーム構成部19に出力する。フレーム同期信号は、時分割多重フレームの先頭で伝送される同期用の信号である。
【0034】
送信局識別コード用サブフレーム生成部17は、送信局(送信装置)を識別する送信局識別コードを伝送するためのサブフレームである送信局識別コード用サブフレームを生成する。従来の変調装置は、送信局識別コードを伝送する機能を有していない。本実施形態では送信局識別コードを12ビットの数値として説明するが、送信局識別コードのビット数はこれに限られるものではない。
【0035】
図2に、送信局識別コード用サブフレーム生成部17の構成例を示す。図2に示す送信局識別コード用サブフレーム生成部17は、第1PRBS生成部171と、第2PRBS生成部172と、信号系列シフト部173と、キャリア変調部174と、パイロット生成部175と、OFDM変調部176と、IFFT部177と、GI付加部178と、を備える。
【0036】
第1PRBS生成部171は、実部の信号を構成するPRBS(疑似ランダム2値信号系列)信号を生成する。第2PRBS生成部172は、虚部の信号を構成するPRBS信号を生成する。PRBS信号は、擬似乱数生成アルゴリズムであるM系列(Maximum Length Sequence)を用いて生成することができる。M系列は、pビットのシフトレジスタにより生成され、周期が2-1の系列である。
【0037】
図3(a)に第1PRBS生成部171の回路例を示し、図3(b)に第2PRBS生成部172の回路例を示す。図3(a)(b)は、2種類の異なる13次生成多項式により生成されるM系列をW1i,W2iとし、生成多項式を式(1)(2)とした場合の、式(1)(2)に基づくPRBS生成回路を示している。回路のシフトレジスタの初期値は全て1とする。W1iの0を1に、1を-1に割り当てた第1のM系列信号をaとし、W2iの0を1に、1を-1に割り当てた第2のM系列信号をbとする。nは信号のインデックスを表し、後述するOFDMサブキャリア番号と等価である。送信局識別コード用サブフレーム生成部17は、式(1)(2)により生成されるM系列のシフト量によって、12ビットの送信局識別コードを伝送する。
【0038】
【数1】
【0039】
また、別の例では12次の生成多項式により生成されるM系列を用いてもよい。図3(c)に生成多項式を式(3)とした場合の第1PRBS生成部171の回路例を示し、図3(d)に生成多項式を式(4)とした場合の第2PRBS生成部172の回路例を示す。
【0040】
【数2】
【0041】
信号系列シフト部173は、送信局識別コード(12ビットの数値)に基づき、第1のM系列信号aをシフトさせたcm,nと、第2のM系列信号bをシフトさせたdm,nと、を生成する。送信局識別コードをm(0≦m<4096)とすると、シフト後のM系列信号cm,n,dm,nは、式(5)(6)と表される。ここで、NはOFDMシンボルあたりのサブキャリア数(N>4096)を表す。
【0042】
【数3】
【0043】
M系列は、1周期に1度だけ自己相関のピークが存在する。そのため、シフト前の信号系列との相関係数Φ(k)は式(7)で表され、0≦k<Nではk=mでのみピークが立つことを利用して信号検出を行うことができる。M系列信号b,dについても同様である。
【0044】
【数4】
【0045】
キャリア変調部174は、cm,nによりMSB(0ビット目、I軸、実軸)を変調し、dm,nによりLSB(1ビット目、Q軸、虚軸)を変調したQPSK変調信号sm,nを生成する。すなわち、キャリア変調部174は、I軸の信号点を系列信号cm,n、Q軸の信号点を系列信号dm,nとするQPSK変調信号sm,nを生成する。ここで、送信局識別コードを伝送するサブフレームのサブキャリア番号をnとする。QPSK変調信号sm,nは、式(8)で表される。
【0046】
【数5】
【0047】
パイロット生成部175は、所定のパイロット信号を生成し、OFDM変調部176に出力する。
【0048】
OFDM変調部176は、キャリア変調部174でQPSK変調されたサブキャリアに、所定の周波数間隔でパイロット信号を挿入したOFDMシンボル(送信局識別コード用サブフレームを構成するOFDMシンボルに相当)を生成する。そして、OFDM変調部176は、周波数領域信号であるOFDMシンボルをIFFT部177に出力する。
【0049】
IFFT部177は、OFDM変調部176から入力したOFDMシンボルに対してIFFT処理を施し、有効シンボル信号を生成し、GI付加部178に出力する。
【0050】
GI付加部178は、IFFT部177から入力した有効シンボル信号の先頭に、有効シンボル信号の末尾の一部分をコピーした信号であるGIを付加し、送信局識別コード用サブフレームを生成する。ガードインターバル長は最も長いものとしてよい。そして、GI付加部178は、送信局識別コード用サブフレームを時分割多重フレーム構成部19に出力する。
【0051】
送信局識別コードに対しては、周波数インターリーブ処理及び時間インターリーブ処理を行わない。パイロット信号の配置パターンは、例えば(Dx,Dy)=(3,1)である。ここで、Dxはキャリア方向のパイロット信号の間隔であり、Dyはシンボル方向のパイロット信号の間隔である。また、FFTサイズは、例えば8k(8192)である。
【0052】
なお、ATSC3.0では、1つのGold系列に基づく符号化、及びBPSK変調を行っている。通常、プリファードペアによる相関は、ビット単位で変調された信号に対して行われるため、QPSK変調信号(2ビット変調)では厳密には、送信波形との相関の波形がきれいにならないため、誤検出の懸念がある。そこで、送信局識別コード用サブフレーム生成部17は、2ビット変調であるQPSKの実部及び虚部をそれぞれ別々の1ビット変調とし、互いに無相関であるM系列信号を2種類生成して変調を行うこととした。
【0053】
再び図1を参照する。OFDM変調部181は、帯域合成部135から入力したデータセグメントに、パイロット生成部14から入力したパイロット信号を挿入したOFDMシンボル(階層データ用サブフレームを構成するOFDMシンボルに相当)を構成する。そして、OFDM変調部181は、周波数領域信号であるOFDMシンボルをIFFT部182に出力する。
【0054】
IFFT部182は、OFDM変調部181から入力したOFDMシンボルに対してIFFT処理を施し、有効シンボル信号を生成し、GI付加部183に出力する。
【0055】
GI付加部183は、IFFT部182から入力した有効シンボル信号の先頭に、有効シンボル信号の末尾の一部分をコピーした信号であるGIを付加し、階層データ用サブフレームを生成する。GIは、マルチパス遅延波の遅延時間がGI長を超えないように設定される。そして、GI付加部183は、階層データ用サブフレームを時分割多重フレーム構成部19に出力する。
【0056】
時分割多重フレーム構成部19は、GI付加部183が出力する階層データ用サブフレーム(映像・音声・字幕データを伝送するためのサブフレームである階層データ用サブフレーム)と、フレーム同期信号生成部16が出力するフレーム同期信号と、TMCC生成部15が出力するTMCC信号と、送信局識別コード用サブフレーム生成部17が出力する送信局識別コード用サブフレームと、を時分割により1つのフレームに多重した時分割多重フレーム(OFDM信号)を生成し、変調装置1の外部に出力する。
【0057】
このように、本発明に係る変調装置1は、送信局識別コード用サブフレームを時分割で多重する。送信局識別コード用サブフレームは、時間軸上で独立したOFDMシンボルであるため、送信局識別コードの書き込み、及び中継局での差し替えを容易に行うことが可能となり、TMCC信号、階層データなど他の伝送データに対して信号品質を劣化させることもない。なぜならば、中継局で受信されるOFDM信号は時間軸波形であり、送信局識別コードの書き込みや差し替え処理は時間領域で行うため、FFT(First Fourier Transform)処理により周波数軸波形に変換する必要がないからである。
【0058】
一方、時間領域に送信局識別コード用サブフレームを割り込ませるため、放送本線の伝送容量がわずかに低下する。そのため、全てのOFDMフレームに対して送信局識別コード用サブフレームを設けるのではなく、送信局識別コード用サブフレームを一定周期で挿入し、その時だけTMCC信号に記述される送信局識別コード伝送フラグをオンとしてもよい。送信局識別コードは、一度決めたら変更されない情報であり、受信装置が常時受信する必要はない。例えば、1分間電源を入れ放送波を受信していれば取得できる程度の挿入頻度でよい。例えば256フレームに1回など、十分に長い周期で挿入すれば、放送本線の伝送容量に与える影響は無視できるほど小さくなる。
【0059】
したがって、時分割多重フレーム構成部19は、複数フレームに1回だけ送信局識別コード用サブフレームを時分割多重するようにしてもよい。そして、TMCC信号は、時分割多重フレームが送信局識別コード用サブフレームを含むか否かを示す送信局識別コードフラグを有していてもよい。本実施形態では、時分割多重フレームが送信局識別コード用サブフレームを含む場合には送信局識別コードフラグがオンとなり、時分割多重フレームが送信局識別コード用サブフレームを含まない場合に送信局識別コードフラグがオフとなる。
【0060】
図4に、時分割多重フレーム構成部19が生成する時分割多重フレームの概略を示す。縦軸は周波数を示し、横軸は時間を示す。図4(a)は送信局識別コード用サブフレームを時分割多重しない場合の時分割多重フレームF1を示す。この場合、TMCC生成部15は、TMCC信号の送信局識別コード伝送フラグをオフにする。時分割多重フレームF1は、フレーム同期信号Aと、TMCC信号Bと、階層データ用サブフレームCと、を時分割多重したフレームである。
【0061】
図4(b)は送信局識別コード用サブフレームを時分割多重した場合の時分割多重フレームF2を示す。この場合、TMCC生成部15は、TMCC信号の送信局識別コード伝送フラグをオンにする。時分割多重フレームF2は、フレーム同期信号Aと、TMCC信号Bと、階層データ用サブフレームCと、送信局識別コード用サブフレームDと、を時分割多重したフレームである。
【0062】
<第1の実施形態に係る復調装置>
次に、第1の実施形態に係る復調装置について説明する。
【0063】
図5は、第1の実施形態に係る復調装置2の構成例を示すブロック図である。図5に示す復調装置2は、受信処理部21と、パイロット抽出部22と、チャネル推定部23と、等化部24と、周波数・時間DIL(Deinterleave)部25と、LLR算出部26と、誤り訂正復号部27と、TMCC復調部28と、送信局識別コード復調部29と、フレーム同期信号復調部30と、を備える。復調装置2は、受信装置又は測定装置に搭載される。復調装置2は、変調装置1により生成されたOFDM信号を復調する。
【0064】
受信処理部21は、変調装置1から受信したOFDM信号に対して復調処理を行い、受信信号(OFDMフレーム)を出力する。受信処理部21は、GI除去部211と、FFT部212と、フレーム同期部213と、を有する。
【0065】
GI除去部211は、受信したOFDM信号からGIを除去し、FFT部212に出力する。
【0066】
FFT部212は、GI除去部211から入力したOFDM信号に対して、FFT処理を行って周波数領域の複素ベースバンド信号を生成し、フレーム同期部213に出力する。
【0067】
フレーム同期部213は、OFDMフレームの同期を取る。
【0068】
パイロット抽出部22は、フレーム同期部213から入力した受信信号からパイロット信号を抽出し、チャネル推定部23に出力する。
【0069】
チャネル推定部23は、パイロット抽出部22から入力したパイロット信号と、予め設定されたパイロット信号とに基づいて、変調装置1と復調装置2との間(送受信アンテナ間)の伝搬路のチャネル応答を推定する。そして、チャネル推定部23は、キャリア毎のチャネル応答を等化部24に出力する。
【0070】
等化部24は、チャネル推定部23から入力したチャネル応答に基づいて、フレーム同期部213から入力した複素ベースバンド信号の等化処理を実行し、伝搬路歪を補正する。そして、等化部24は、等化処理した複素ベースバンド信号(等化信号)を周波数・時間DIL部25に出力する。
【0071】
伝送モデルは、送信信号x、受信信号y、雑音w、及びチャネル応答hを用いて式(9)で表される。
【0072】
【数6】
【0073】
時刻tの送信信号は、QPSK変調信号sm,n、及びn番目サブキャリアの周波数fを用いて式(10)で表される。
【0074】
【数7】
【0075】
等化部24は、チャネル推定部23から入力したチャネル応答を用いて、式(11)で表される複素除算により等化処理を行い、等化信号を算出する。
【0076】
【数8】
【0077】
周波数・時間DIL部25は、等化部24から入力した等化信号に対して、周波数方向及び時間方向にデインターリーブ処理を行い、デインターリーブ信号を生成する。周波数方向のデインターリーブ処理とは、変調装置1の周波数IL部134により周波数方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。時間方向のデインターリーブ処理とは、変調装置1の時間IL部133により時間方向に並べ替えられたデータを、元の順序に戻す処理である。そして、周波数・時間DIL部25は、生成したデインターリーブ信号をLLR算出部26に出力する。
【0078】
LLR算出部26は、時間・周波数DIL部25から入力したデインターリーブ信号の信号点座標と、所定の信号点座標とを比較し、両座標のユークリッド距離を元に、ビット毎にLLR(対数尤度比)を算出する。そして、LLR算出部26は、算出したLLRを誤り訂正復号部27に出力する。
【0079】
誤り訂正復号部27は、LLR算出部26から入力したLLRを用いて誤り訂正復号(例えば、LDPC復号)を行い、変調装置1から送信された信号を復号して階層データを生成する。
【0080】
TMCC復調部28は、フレーム同期部213から入力した受信信号からTMCC信号を抽出し、抽出されたTMCC信号を復調する。そして、TMCC復調部28は、TMCC信号の送信局識別コード伝送フラグを送信局識別コード復調部29に出力する。
【0081】
フレーム同期信号復調部30は、フレーム同期部213から入力した受信信号からフレーム同期信号を抽出し、抽出されたフレーム同期信号を復調する。
【0082】
送信局識別コード復調部29は、送信局識別コード用サブフレームを復調した信号と、送信局識別コード復調部29内であらかじめ生成したM系列信号との相関係数を算出し、該相関係数のピーク位置によって送信局識別コードを検出する。TMCC信号が送信局識別コードフラグを有する場合には、送信局識別コード復調部29は送信局識別コードフラグに基づいて、時分割多重フレームが送信局識別コード用サブフレームを含むタイミングで送信局識別コードを復調する。すなわち、送信局識別コード復調部29は送信局識別コードフラグがオンの時のみ動作する。
【0083】
図6に、送信局識別コード復調部29の構成例を示す。図6に示す送信局識別コード復調部29は、第1PRBS生成回路291と、第2PRBS生成回路292と、送信信号生成部293と、相関係数算出部294と、送信局識別コード検出部295と、を備える。
【0084】
変調装置1の送信局識別コード用サブフレーム生成部17と同様に、第1PRBS生成回路291は実部の信号を構成するM系列信号aを生成し、第2PRBS生成回路292は虚部の信号を構成するM系列信号bを生成する。
【0085】
送信信号生成部293は、相関を取るために必要となる、送信局識別コードm=0の送信信号(M系列信号c0,n,d0,n)を生成し、相関係数算出部294に出力する。
【0086】
相関係数算出部294は、送信信号生成部293から入力した送信信号と、等化部24から入力した送信局識別コード用サブフレームの等化信号との相関係数を、式(12)により算出する。ただし、第2項W’は雑音成分であり、送信信号との相関は無視できるほど小さい。
【0087】
【数9】
【0088】
送信局識別コード検出部295は、相関係数のピーク値の位置により、送信局識別コードを検出する。
【0089】
一例として、送信局識別コード=511として、本発明による変調装置1及び復調装置2の処理を検証するための伝送シミュレーションを実施した。
【0090】
図7に、伝送シミュレーションの系統図を示す。図8に、伝送シミュレーションによって得られた、相関係数算出部294の出力である相関係数を示す。この例では、送信局識別コードを511とした。また、信号電力対雑音電力比(C/N)は、地上放送の固定受信を想定して20dBとした。相関係数は複素数であるため、その絶対値|Φ(k)|を縦軸とした。k=511の時のみ相関係数がピーク値となる。すなわち図8から、送信局識別コードを511と検出できることが分かる。
【0091】
<第2の実施形態に係る復調装置>
次に、第2の実施形態に係る復調装置について説明する。
【0092】
図9は、第2の実施形態に係る復調装置2aの構成例を示すブロック図である。図9に示す復調装置2aは、受信処理部21と、パイロット抽出部22と、チャネル推定部23と、等化部24と、周波数・時間DIL部25と、LLR算出部26と、誤り訂正復号部27と、TMCC復調部28と、送信局識別コード復調部29aと、フレーム同期信号復調部30と、遅延プロファイル生成部31aと、FFT窓設定部32aと、を備える。復調装置2aは、復調装置2と比較して、遅延プロファイル生成部31aと、FFT窓設定部32aを更に備える点が相違する。また、送信局識別コード復調部29aの入力が等化処理前の受信信号である点が相違する。
【0093】
遅延プロファイル生成部31aは、パイロット抽出部22により抽出されたパイロット信号を入力し、遅延プロファイルを生成する。そして、遅延プロファイル生成部31aは、遅延プロファイルに基づいて、主波に対するSFN波の遅延量τを推定し、FFT窓設定部32aに出力する。
【0094】
FFT窓設定部32aは、遅延プロファイル生成部31aで推定された遅延量τを入力し、FFT窓位置を制御する。受信信号の位相調整をFFT窓位置によって制御することにより、複数の送信局識別コードを有する信号が混在した、いわゆるSFN(Single Frequency Network)環境においても、それぞれの送信局を特定することが可能となる。このことは、チャンネル再編時に生じうるリスクが潜在するかどうかを判別するために有効である。
【0095】
送信局識別コード復調部29aの処理は、復調装置2の送信局識別コード復調部29と同一である。ただし、相関係数算出部294には等化信号ではなく、等化処理前の受信信号が入力される。
【0096】
一例として、送信局識別コードが異なる2局のSFN環境を想定する。2局の送信局をそれぞれA局、B局とし、各送信局識別コードをl,mとする。また、チャネル応答をh1,n,h2,nとし,遅延量をτとして、伝送モデルは式(9)を修正して式(13)と表される。
【0097】
【数10】
【0098】
仮に送信局識別コードが同じ値(m=l)であれば、放送本線と同様に同一の信号波形を送信することとなり、従来のSFNと同様である。式(13)は式(14)となる。
【0099】
【数11】
【0100】
復調装置2の送信局識別コード復調部29では、パイロット信号を用いてチャネル応答を推定することで送信信号を推定する。一方、式(13)の右辺第1項は送信局毎に異なる信号波形となるため、式(13)の両辺をチャネル応答h^で除算しても、等化処理とならない。そこで、送信局識別コード復調部29aは、等化処理前の式(13)を式(12)に代入し、式(15)に示すようにm=0の送信信号との相関により送信局識別コードの検出を行う。
【0101】
【数12】
【0102】
式(15)の右辺第1項はA局、右辺第2項はB局、右辺第3項は雑音をそれぞれ表す。ここで、右辺第3項は式(9)と同様に、雑音と送信信号との相関であるため無視できるほど小さい。また、右辺第2項はサブキャリア番号nによって一定に変動する位相回転の係数がかかる。Nが十分大きい条件においては、加算により右辺第2項もまた実部、虚部ともに無視できるほど小さくなる。ゆえに、式(15)は式(16)と表され、式(12)と同様に送信局識別コードmの検出が可能である。
【0103】
【数13】
【0104】
一方、A局とB局の遅延量τは、遅延プロファイルを元に推定が可能である。その結果得られた遅延量τを用いて、式(13)の両辺に逆位相回転項exp(j2πfnτ)を乗算する。FFT窓設定部32aの処理は、この演算に相当する。式(13)は式(17)と表される。
【0105】
【数14】
【0106】
式(15)と同様に、m=0の送信信号との相関係数を求めると、式(18)となる。
【0107】
【数15】
【0108】
式(18)の右辺第1項及び右辺第3項は前述同様に無視できるほど小さい値となるため、式(18)は式(19)と表され、B局もまた、送信局識別コードを検出可能である。
【0109】
【数16】
【0110】
図10に、伝送シミュレーションによって得られた、相関係数算出部294の出力である相関係数を示す。この例では、A局の送信局識別コードを511とし、B局の送信局識別コードを1000とした。また、遅延量を10μsとし、A局とB局の受信電力比を1dBとした。相関係数は複素数であるため、その絶対値|Φ(k)|を縦軸とした。図10から、A局、B局ともに送信局識別コードを検出できていることが分かる。
【0111】
<第3の実施形態に係る復調装置>
図11に、第3の実施形態に係る復調装置のブロック構成を示す。図11に示す復調装置2bは、受信処理部21と、パイロット抽出部22と、チャネル推定部23と、等化部24と、周波数・時間DIL部25と、LLR算出部26と、誤り訂正復号部27と、TMCC復調部28と、送信局識別コード復調部29bと、フレーム同期信号復調部30と、遅延プロファイル生成部31bと、FFT窓設定部32bと、を備える。復調装置2bは、復調装置2と比較して、遅延プロファイル生成部31bと、FFT窓設定部32bを更に備える点が相違する。また、送信局識別コード復調部29bの入力が等化処理前の受信信号である点が相違する。
【0112】
復調装置2bの復調装置2aとの違いは、送信局毎の遅延プロファイルを出力している点である。復調装置2aでは、検出したパイロット信号から遅延プロファイルを生成し、送信局間の遅延を推定していたが、マルチパスと区別できないため、複数のマルチパスが存在する環境では正確な遅延量を推定することが困難となる。そこで復調装置2bは、遅延量を推定するのではなく、FFT窓位置を少しずつずらしながら送信局識別コードの相関を取り、そのピークをプロットすることで送信局毎の遅延プロファイルを出力する。
【0113】
図12に、送信局識別コード復調部29bの構成例を示す。図6に示した送信局識別コード復調部29との違いは、相関係数(図8に相当)を遅延プロファイル生成部31bにも出力している点である。復調装置2aではFFT窓位置を主波に固定した場合の相関係数を求めていたが、復調装置2bではFFT窓位置を少しずつずらしながら、この処理を繰り返す。
【0114】
図13に、遅延プロファイル生成部31bの構成例を示す。遅延プロファイル生成部31bは、FFT窓位置制御部311と、相関ピーク検出部312と、遅延量対相関ピークプロット部313と、を備える。
【0115】
FFT窓位置制御部311は、FFT窓位置を制御し、FFT窓位置のずらした量を主波に対する遅延量として、遅延量対相関ピークプロット部313及びFFT窓設定部32bに出力する。
【0116】
相関ピーク検出部312は、FFT窓位置が変わる毎に、送信局識別コード復調部29bから入力した相関係数(図8に相当)の絶対値のピーク(以下、「相関ピーク」と称する。)を検出し、遅延量対相関ピークプロット部313に出力する。
【0117】
遅延量対相関ピークプロット部313は、遅延量に対する各送信局の相関ピークをプロットし、送信局毎の遅延プロファイルとして外部に出力する。
【0118】
図14に、伝送シミュレーションによって得られた、遅延プロファイル生成部31bの出力である遅延プロファイルを示す。横軸は遅延量であり、縦軸は相関ピークである。この例では、A局とB局の遅延差を2μs、A局とB局の受信電力比を1dBとした。図14から、正しい遅延プロファイルが得られていることを確認できる。
【0119】
<プログラム>
上述した変調装置1及び復調装置2,2a,2bとして機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0120】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マイクなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0121】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0122】
例えば、送信装置1として機能させるためのプログラムは、送信局識別コード用サブフレームを生成するステップと、送信局識別コード用サブフレームと、TMCC信号と、階層データ用サブフレームと、を時分割により1つのフレームに多重した時分割多重フレームを生成するステップと、をコンピュータに実行させる。例えば、復調装置2として機能させるためのプログラムは、送信局識別コード用サブフレームを復調した信号と、あらかじめ生成したM系列信号との相関係数を算出し、該相関係数のピーク位置によって送信局識別コードを検出するステップをコンピュータに実行させる。
【0123】
また、上述した変調装置1は、1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよい。この半導体チップは、変調装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。復調装置2,2a,2bについても同様である。
【0124】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 変調装置
2,2a,2b 復調装置
11a,11b,11c BICM処理部
12a,12b,12c レベル調整部
13 シンボル処理部
14 パイロット生成部
15 TMCC生成部
16 フレーム同期信号生成部
17 送信局識別コード用サブフレーム生成部
18 送信処理部
19 時分割多重フレーム構成部
21 受信処理部
22 パイロット抽出部
23 チャネル推定部
24 等化部
25 時間DIL部
25 周波数DIL部
26 LLR算出部
27 誤り訂正復号部
28 TMCC復調部
29,29a,29b 送信局識別コード復調部
30 フレーム同期信号復調部
31a,31b 遅延プロファイル生成部
32a,32b FFT窓設定部
131 階層合成部
132 帯域分割部
133 時間IL部
134 周波数IL部
135 帯域合成部
171 第1PRBS生成部
172 第2PRBS生成部
173 信号系列シフト部
174 キャリア変調部
175 パイロット生成部
176,181 OFDM変調部
177,182 IFFT部
178,183 GI付加部
211 GI除去部
212 FFT部
213 フレーム同期部
291 第1PRBS生成回路
292 第2PRBS生成回路
293 送信信号生成部
294 相関係数算出部
295 送信局識別コード検出部
311 FFT窓位置制御部
312 相関ピーク検出部
313 遅延量対相関ピークプロット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14