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特開2025-28109ホログラフィック光学素子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028109
(43)【公開日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ホログラフィック光学素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/04 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
G03H1/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024212366
(22)【出願日】2024-12-05
(62)【分割の表示】P 2022557185の分割
【原出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0117902
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】デ・ハン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ユン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジュ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・ムン
(57)【要約】
【課題】位相差層を用いて所望しない干渉パターンを除去するホログラフィック光学素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ホログラフィック光学素子およびその製造方法に関し、具体的には、フォトポリマー樹脂層に干渉パターンを記録する過程で発生する所望しない干渉パターンが形成されないように位相差層を用いるホログラフィック光学素子およびその製造方法に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、
第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含む、ホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1平行レーザ光が照射されて前記フォトポリマー樹脂層に入射する入射角は、42゜超過90゜未満である、請求項1に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1平行レーザ光は、線偏光であり、
前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光である、請求項1または2に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものである、請求項1~3の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項5】
前記フォトポリマー樹脂層の前記他面にプリズムがさらに備えられる、請求項1~4の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、
前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満である、請求項1~5の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記位相差層は、円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものである、請求項1~6の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層から前記位相差層を除去するステップをさらに含む、請求項1~7の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記干渉パターンが記録された前記フォトポリマー樹脂層を可視光線領域乃至紫外線領域の波長を有する光を照射して漂白(bleaching)するステップをさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
【請求項10】
フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層と、
前記フォトポリマー樹脂層の一面に備えられた位相差層とを含み、
前記フォトポリマー樹脂層は、光の干渉現象による干渉パターンが記録されたものであり、
前記位相差層が備えられていない面である前記フォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、ホログラフィック光学素子。
【請求項11】
前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものである、請求項10に記載のホログラフィック光学素子。
【請求項12】
前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、
前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満である、請求項10または11に記載のホログラフィック光学素子。
【請求項13】
前記干渉パターンは、前記フォトポリマー樹脂層の前記他面に照射された1平行レーザ光と前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射された第2平行レーザ光との干渉現象によるものである、請求項10~12の何れか一項に記載のホログラフィック光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年9月14日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0117902号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。本発明は、ホログラフィック光学素子およびその製造方法に関し、具体的には、フォトポリマー樹脂層に干渉パターンを記録する過程で発生する所望しない干渉パターンが形成されないように位相差層を用いるホログラフィック光学素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ホログラムは、干渉性(coherent)光源を用いて映像情報を含む物体波(object wave)と基準波(reference wave)の干渉パターンを感光材料に記録し、干渉パターンが記録された感光材料への記録時に用いた基準波を照射することにより、感光材料に記録された映像情報を再生する技術をいう。干渉パターンが記録された感光材料は、反射や屈折の代わりに回折を利用して映像情報を再生するので、このような感光材料は回折光学素子(diffraction optical elements、DOEs)の1種類に分類されたりする。
【0003】
図1は、従来技術によるホログラフィック光学素子の干渉パターン記録の概略図である。ホログラフィック光学素子に第1平行レーザ光L1である参照光および第2平行レーザ光L2である物体光を照射して、前記参照光および物体光の干渉現象によって実現される干渉パターンPを記録することが一般的である。ただし、前記参照光および物体光の干渉現象を強化させるために、光を線偏光に変化させて干渉現象を強化させることが好ましい。
【0004】
具体的には、参照光および物体光それぞれすべてをP波(水平線偏光)に変化させるか、参照光および物体光それぞれすべてをS波(垂直線偏光)に変化させることにより、相互間の干渉現象によって発生する補強干渉はさらに強く実現され、相殺干渉はパターンをさらに弱く実現して干渉パターンを明確に実現する。
【0005】
ただし、前記参照光または物体光が屈折率の大きいフォトポリマー樹脂層から屈折率の小さい空気層に向かう場合、全反射が起こる問題が発生し、上述のように、全反射した光と他の光によって再度干渉現象が発生して所望しない干渉パターンが発生するので、ホログラフィック光学素子の回折効率が低下すると同時に、再生光を照射して回折される場合、記録しない角度で再生される問題点がある。
【0006】
図2は、従来技術によるホログラフィック光学素子の所望しない干渉パターンP’が記録される過程を示す概略図である。図2を参照すれば、ホログラフィック光学素子にS波に偏光された第1平行レーザ光L1である参照光を、屈折率が1.5のプリズム13を介して照射して通過させ、前記参照光が屈折率1.5のフォトポリマー樹脂層11に入射する。同時に、S波に偏光された第2平行レーザ光L2である物体光を照射して前記参照光と物体光の干渉パターンPを記録するが、前記S波に偏光された第1平行レーザ光L1である参照光が、屈折率が1.5のフォトポリマー樹脂層11から屈折率が1の空気層に進行する場合、前記フォトポリマー樹脂層11と空気との境界面で全反射が発生し、前記全反射した参照光は前記物体光と干渉現象を再度発生させて所望しない干渉パターンP’を形成した。
【0007】
上述のように、前記所望しない干渉パターンP’は、ホログラフィック光学素子の回折効率を低下させると同時に、再生光を照射する場合、記録しない角度で再生される問題点があり、このような問題を解決するための技術開発が急がれるのが現状であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が達成しようとする技術的課題は、位相差層を用いて所望しない干渉パターンを除去するホログラフィック光学素子およびその製造方法を提供することである。
【0009】
ただし、本発明が解決しようとする課題は、上記の言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様は、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の前記一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含む、ホログラフィック光学素子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光が照射されてフォトポリマー樹脂層に入射する入射角は、42゜超過90゜未満であってもよい。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光は、線偏光であり、前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光であってもよい。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであってもよい。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー樹脂層の他面にプリズムがさらに備えられてもよい。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であってもよい。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものであってもよい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンが記録されたフォトポリマー樹脂層から前記位相差層を除去するステップをさらに含むものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンが記録されたフォトポリマー樹脂層を可視光線乃至紫外線領域の波長を有する光を照射して漂白(bleaching)するステップをさらに含むものであってもよい。
【0019】
本発明の一実施態様は、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層と、前記フォトポリマー樹脂層の一面に備えられた位相差層とを含み、前記フォトポリマー樹脂層は、光の干渉現象による干渉パターンが記録されたものであり、前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、ホログラフィック光学素子を提供する。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであってもよい。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であり、前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であってもよい。
【0022】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンは、フォトポリマー樹脂層の他面に照射された前記第1平行レーザ光と前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射された前記第2平行レーザ光との干渉現象によるものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施態様であるホログラフィック光学素子の製造方法は、単純な方法で所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0024】
本発明の一実施態様であるホログラフィック光学素子は、所望しない干渉パターンを最小化し、記録された干渉パターンを明確にすると同時に、回折効率を向上させることができる。
【0025】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来技術によるホログラフィック光学素子の干渉パターン記録の概略図である。
図2】従来技術によるホログラフィック光学素子の所望しない干渉パターンが記録される過程を示す概略図である。
図3】本発明の一実施態様に係るホログラフィック光学素子の干渉パターン記録の概略図である。
図4】本発明の一実施態様に係るホログラフィック光学素子の所望しない干渉パターンを除去する過程を示す概略図である。
図5】参考例1および参考例2それぞれの400nm~1600nmの波長を有する光に対する光透過度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0028】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0029】
本願明細書全体において、単位「重量部」は、各成分間の重量の比率を意味することができる。
【0030】
本願明細書全体において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを通称する意味で使われる。
【0031】
本願明細書全体において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびB、またはAまたはB」を意味する。
【0032】
本願明細書全体において、用語「単量体単位(monomer unit)」は、重合体内で単量体が反応した形態を意味することができ、具体的には、その単量体が重合反応を経てその重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味することができる。
【0033】
本願明細書全体において、「干渉パターン」は、2以上の光間の干渉現象によって形成されたパターンを意味する。
【0034】
本願明細書全体において、「入射角」は、光が入射する平面の仮想の垂直線と、前記入射する面に光が入射する瞬間の光が進行する方向への仮想の直線とのなす角度すなわち、入射平面の法線と、前記入射平面に入射する瞬間の光が進行する方向への仮想の直線とのなす角度を意味する。
【0035】
本願明細書全体において、「照射角」は、光が照射されて進行する方向への仮想の直線と、照射される面に仮想の垂直線とのなす角度を意味する。
【0036】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0037】
本発明の一実施態様は、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップと、第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップと、を含む、ホログラフィック光学素子の製造方法を提供する。
【0038】
本発明の一実施態様であるホログラフィック光学素子の製造方法は、単純な方法で所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えるステップを含む。上述のように、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層の一面に位相差層を備えることにより、干渉パターンを記録する過程で発生する所望しない干渉パターンの発生を最小化し、回折効率を向上させることができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー樹脂層は、フォトポリマー樹脂を含む。上述のように、前記フォトポリマー樹脂層がフォトポリマー樹脂を含むことにより、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象によって発生する干渉パターンを効果的に記録することができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー樹脂は、光反応性単量体;および光開始剤を含むフォトポリマー組成物の重合体を含むことができる。上述のように、光反応性単量体および光開始剤を含むフォトポリマー組成物を用いることにより、フォトポリマー樹脂の基本的な物性を実現すると同時に、光を照射することにより、フォトポリマー樹脂層にパターンを形成することができる。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。上述のように、前記フォトポリマー組成物の光重合過程で単量体が重合されて、ポリマー(重合体)が相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、その他の部分では屈折率が相対的に低くなって屈折率変調が生じ、このような屈折率変調によって回折格子、すなわち干渉パターンが生成される。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記光反応性単量体は、(メタ)アクリレート系α,β-不飽和カルボン酸誘導体であってもよい。より具体的には、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸などや、またはビニル基(vinyl)またはチオール基(thiol)を含む化合物が挙げられる。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記光反応性単量体は、屈折率が1.5以上の多官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられ、このような屈折率が1.5以上の多官能(メタ)アクリレート単量体は、Halogen原子(bromine、iodineなど)、硫黄(S)、リン(P)、または芳香族環(aromatic ring)を含むことができる。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記屈折率が1.5以上の多官能(メタ)アクリレート単量体は、bisphenol A modified diacrylate系、fluorene acrylate系、bisphenol fluorene epoxy acrylate系(HR6100、HR6060、HR6042など-Miwon社)、Halogenated epoxy acrylate系(HR1139、HR3362など-Miwon社)などが挙げられる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記光反応性単量体は、単官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、分子の内部にエーテル結合およびフルオレン官能基を含むことができ、このような単官能(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレート、またはビフェニルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記光反応性単量体としては、50g/mol以上1000g/mol以下、または200g/mol以上600g/mol以下の分子量を有することができる。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー組成物は、光開始剤を含む。上述のように、光または化学放射線によって活性化される化合物である光開始剤を含むことにより、前記光反応性単量体など光反応性官能基を含む化合物の重合を開始する。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記光開始剤としては、光ラジカル重合開始剤および光陽イオン重合開始剤が挙げられる。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記光ラジカル重合開始剤は、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン、アルミネート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体などが挙げられる。具体的には、前記光ラジカル重合開始剤としては、1,3-di(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone、3,3’,4,4’-tetrakis(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone、3-phenyl-5-isoxazolone、2-mercapto benzimidazole、bis(2,4,5-triphenyl)imidazole、2,2-dimethoxy-1,2-diphenylethane-1-one(製品名:Irgacure651/製造会社:BASF)、1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone(製品名:Irgacure184/製造会社:BASF)、2-benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1(製品名:Irgacure369/製造会社:BASF)、およびbis(η5-2,4-cyclopentadiene-1-yl)-bis(2,6-difluoro-3-(1H-pyrrole-1-yl)-phenyl)titanium(製品名:Irgacure784/製造会社:BASF)などが挙げられる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記光陽イオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩(diazonium salt)、スルホニウム塩(sulfonium salt)、またはヨードニウム(iodonium salt)が挙げられ、例えば、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル-4-ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸-p-ニトロベンジルエステル、シラノール-アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)などが挙げられる。また、ベンゾイントシレート、2,5-ジニトロベンジルトシレート、N-トシルフタル酸イミドなども挙げられる。前記光陽イオン重合開始剤のさらなる具体例としては、Cyracure UVI-6970、Cyracure UVI-6974およびCyracure UVI-6990(製造会社:Dow Chemical Co.in USA)や、Irgacure264およびIrgacure250(製造会社:BASF)、またはCIT-1682(製造会社:Nippon Soda)などの市販製品が挙げられる。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー組成物は、一分子(類型I)または二分子(類型II)の開始剤を使用してもよい。前記自由ラジカル光重合のための一分子(類型I)の開始剤は、3級アミンと組み合わされた芳香族ケトン化合物、例えば、ベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラー(Michler’s)ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノン、または前記類型の混合物である。前記二分子(類型II)の開始剤としては、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、アルファ-アミノアルキルフェノン、アルファ-、アルファ-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、およびアルファ-ヒドロキシアルキルフェノンなどが挙げられる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー組成物は、前記光反応性単量体10重量%以上70重量%以下;および光開始剤0.1重量%以上15重量%以下;を含むことができ、または前記光反応性単量体20重量%以上~60重量%以下;および光開始剤0.1重量%以上10重量%以下;を含むことができる。後述のように、前記フォトポリマー組成物が有機溶媒をさらに含む場合、上述した成分の含有量は、これら成分の総和(有機溶媒を除いた成分の総和)を基準とする。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー組成物は、光感応染料をさらに含むことができる。前記光感応染料は、前記光開始剤を増感させる増感色素の役割を果たす。具体的には、前記光感応染料は、フォトポリマー組成物に照射された光によって刺激されてモノマーおよび架橋モノマーの重合を開始する開始剤の役割も併せて果たすことができる。前記フォトポリマー組成物は、光感応染料0.01重量%以上30重量%以下または0.05重量%以上20重量%以下で含むことができる。
【0055】
本発明の一実施態様によれば、前記光感応染料は、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(basic yellow)、ピナシアノールクロライド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(QuinaldineRed)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダローレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アズールA(Azure A)、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー組成物は、有機溶媒をさらに含むことができる。前記有機溶媒の非制限的な例を挙げると、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、有機溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、またはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶媒は、前記フォトポリマー組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか、各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記フォトポリマー組成物に含まれる。前記フォトポリマー組成物中の有機溶媒の含有量が小さすぎると、前記フォトポリマー組成物の流れ性が低下して、最終的に製造されるフィルムに縞模様が生じるなどの不良が発生しうる。また、前記有機溶媒の過剰添加時、固形分含有量が低くなって、コーティングおよび成膜が十分になされず、フィルムの物性や表面特性が低下し、乾燥および硬化過程で不良が発生しうる。これにより、前記フォトポリマー組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~70重量%または2重量%~50重量%となるように有機溶媒を含むことができる。
【0059】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー組成物は、その他の添加剤、触媒などをさらに含むことができる。前記フォトポリマー組成物は、光反応性単量体の重合を促進するために、通常知られた触媒を含むことができる。前記触媒の例としては、スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルビス[(1-オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジメチルスズジカルボキシレート、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、または3級アミン、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド(1,2-a)ピリミジンなどが挙げられる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、ホログラフィック光学素子の製造方法は、位相差層を用いる。上述のように位相差層を用いることにより、前記第1平行レーザ光および/または前記第2平行レーザ光の位相を変化させることができる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、単層構造であるか、または2以上の層が積層された多層構造を有することができる。前記位相差層が多層構造を有する場合、各層は、粘着剤または接着剤を介在して付着しているか、または直接コーティングによって互いに積層されていてもよい。上述のように、前記位相差層は、単層構造であるか、または2以上の層が積層された多層構造を有することにより、前記第1平行レーザ光および/または前記第2平行レーザ光の位相を効果的に変化させることができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、液晶フィルムであるか、または高分子フィルムであってもよい。具体的には、延伸により光学異方性を付与できる光透過性の高分子フィルムを適切な方式で延伸したフィルムを用いるか、液晶化合物を配向させて形成した液晶フィルムを用いて前記各フィルムを形成することができる。また、光学異方性を有する限り、無延伸の高分子フィルムも使用可能である。上述のように、前記位相差層は、液晶フィルムおよび/または高分子フィルムを用いることにより、前記第1平行レーザ光および/または前記第2平行レーザ光の位相を効果的に変化させることができる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録するステップを含む。上述のように、第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録することにより、前記フォトポリマー樹脂層に所望しない干渉パターンの発生を除去することができる。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー樹脂層の一側に第1平行レーザ光を所定の入射角で入射させ、前記フォトポリマー樹脂層の他側に第2平行レーザ光を入射させて干渉パターンを記録することができる。上述のように、前記フォトポリマー樹脂層に第1平行レーザ光および第2平行レーザ光を入射させることにより、前記フォトポリマー樹脂層内に干渉パターンを効率的に向上させることができる。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記ホログラフィック光学素子は、フォトポリマー樹脂層の一側に所定の入射角で入射した第1平行レーザ光、および前記フォトポリマー樹脂層の他側に入射した第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンが記録される。本明細書において、第1平行レーザ光と第2平行レーザ光の干渉現象によって形成されたパターンを干渉パターンと定義する。具体的には、前記フォトポリマー樹脂層の一側に第1平行レーザ光を入射させた後、前記一側と角度を形成した他側に第2平行レーザ光を入射させると、前記フォトポリマー樹脂層内で前記平行レーザ光相互間に干渉現象が起こる。以後、前記フォトポリマー樹脂層内に形成された前記干渉現象で重畳する部分(補強干渉が起こる部分)は、フォトポリマー樹脂層内の成分が追加重合反応が起こって屈折率が変化する。また、前記重畳しない部分(相殺干渉が起こる部分)は、追加重合反応が弱く起こって屈折率が弱く変化して、前記干渉現象による補強干渉部分と相殺干渉部分が繰り返された干渉パターンが記録される。したがって、前記フォトポリマー樹脂層に光を入射させる場合、前記フォトポリマー樹脂層に記録された前記屈折率の異なるパターンによって光が一定に屈折される。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光および第2平行レーザ光の波長は特に限定されず、製造されるホログラフィック光学素子の用途を考慮して適宜選択可能である。具体的には、前記平行レーザ光は、いずれか1つの波長の単一レーザ、あるいは2以上の互いに異なる波長のレーザを用いることができる。より具体的には、フルカラー(full color)ホログラム実現のためには、赤色(R)、緑色(G)、青色領域(B)に相当する3つの波長のレーザを組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記第1および/または第2平行レーザ光は、連続波(CW:continuous wave)レーザであってもよい。連続波レーザは、パルスレーザ(pulse laser)に比べて安定的な出力を有するので、感光材料の露光領域に光学特性が均一な干渉パターンを記録することができる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記第1および/または第2平行レーザ光は、単一縦モード(single longitudinal mode)のレーザであってもよい。多重モードのレーザを用いる場合、位相差層を通過した光と回折した光の干渉性(coherency)が低下しうるからである。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、前記平行レーザ光は、平行レーザ光が照射されるフォトポリマー樹脂層の全領域で同一の強度(intensity)を有するように調節可能である。上述のように、前記フォトポリマー樹脂層に実現される光特性が調節可能である。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光および第2平行レーザ光は、フォトポリマー樹脂層に照射される時、所定の照射角を有するように照射される。具体的には、前記第1平行レーザ光および第2平行レーザ光は、フォトポリマー樹脂層に所定の照射角で照射され、以後、フォトポリマー樹脂層に所定の入射角で入射する。前記第1平行レーザ光および第2平行レーザ光の照射角度は特に限定されず、フォトポリマー樹脂層に記録しようとするホログラムおよび製造しようとするホログラフィック光学素子の特性を考慮して決定可能である。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光が照射されてフォトポリマー樹脂層に入射する入射角は、42゜超過90゜未満であってもよい。具体的には、前記第1平行レーザ光の照射角は、43゜以上90゜未満、44゜以上90゜未満、45゜未満、90゜未満、46゜以上90゜未満、47゜以上90゜未満、48゜以上90゜未満、49゜以上90゜未満、50゜以上90゜未満、55゜以上90゜未満、60゜以上90゜未満、65゜以上90゜未満、70゜以上90゜未満、75゜以上90゜未満、または80゜以上90゜未満であってもよい。より具体的には、前記第1平行レーザ光の入射角は、フォトポリマー層と空気層との境界面で全反射が起こる入射角であってもよい。上述した範囲で前記第1平行レーザ光の入射角を調節することにより、前記フォトポリマー層と空気層との境界面で全反射して発生する所望しない干渉パターンが前記位相差層によって相殺干渉が起こる光に変換されるので、所望しない干渉パターンの発生を防止することができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光および第2平行レーザ光は、前記感光シートの感光層の内部で干渉が起こるように照射される。ホログラフィック光学素子の製造分野において、感光材料にホログラムを記録するためには、干渉性である物体光と基準光が用いられなければならず、前記物体光と基準光がフォトポリマー樹脂の内部で干渉してフォトポリマー樹脂に干渉パターンが記録されるように前記物体光と基準光がフォトポリマー樹脂に照射されなければならない。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記2つの平行レーザ光は、それぞれが照射されるフォトポリマー樹脂層の線状領域が同一であるか、または反対となる各一面上で互いに一致するように照射される。
【0074】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー樹脂層のいずれか一面に第1平行レーザ光を照射し、前記面の反対面に第2平行レーザ光を照射する場合、異なる反対の一面上であるが、第1平行レーザ光が照射される領域と第2平行レーザ光が照射される領域は、各一面で互いに対応する位置を有する。それによって、フォトポリマー樹脂層に含まれたフォトポリマー樹脂の内部で第1平行レーザ光および第2平行レーザ光が進行するそれぞれの光路が互いに重畳し、干渉が起こり得る。
【0075】
本発明の一実施態様によれば、フォトポリマー樹脂層の同一の一面に第1平行レーザ光と第2平行レーザ光を照射する場合には、第1平行レーザ光と第2平行レーザ光は、同一の一面で同一の領域を照射する。それによって、フォトポリマー樹脂層に含まれたフォトポリマー樹脂の内部で第1平行レーザ光および第2平行レーザ光が進行するそれぞれの光路が互いに重畳し、干渉が起こり得る。
【0076】
本発明の一実施態様によれば、前記第1平行レーザ光は、線偏光であってもよい。具体的には、前記第1平行レーザ光は、S波またはP波であってもよい。上述のように、前記第1平行レーザ光をS波またはP波として選択することにより、前記干渉パターンを明確に実現することができる。
【0077】
本発明の一実施態様によれば、前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光であってもよい。具体的には、前記第2平行レーザ光は、前記第1平行レーザ光がS波の場合、前記第2平行レーザ光が位相差層を通過した時、S波に変化することが好ましい。また、前記第2平行レーザ光は、前記第1平行レーザ光がP波の場合、前記第2平行レーザ光が位相差層を通過した時、P波に変化することが好ましい。上述のように、前記第2平行レーザ光は、円偏光または楕円偏光で、位相差層を通過した時に変化する光を調節することにより、フォトポリマー樹脂層に発生する所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0078】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであってもよい。本明細書において、用語「λ/n波長位相遅延特性」は、少なくとも一部の波長範囲内で、入射光をその入射光の波長のn倍だけ位相遅延させることができる特性を意味する。λ/n波長位相遅延特性は、入射した線偏光を楕円偏光または円偏光に変換させ、逆に、入射した楕円偏光または円偏光を線偏光に変換させる特性である。上述のように、前記位相差層がλ/4波長位相遅延特性を有するものとして調節することにより、フォトポリマー樹脂層に発生する所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記フォトポリマー樹脂層の他面にプリズムがさらに備えられてもよい。具体的には、前記フォトポリマー樹脂層の他面にプリズムがさらに備えられることにより、前記第1平行レーザ光が前記プリズムを通過して前記フォトポリマー樹脂層に照射され、これにより全反射が発生しないことを防止することができる。結局、前記フォトポリマー樹脂層の他面にプリズムがさらに備えられることにより、特定の波長で照射されたレーザが所定の角度または所定の波長で作動可能なホログラフィック光学素子を製造することができる。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であってもよい。具体的には、前記位相差層の光透過度は、91%以上99%以下、92%以上98%以下、93%以上97%以下、または94%以上96%以下であってもよい。上述した範囲で前記位相差層の光透過度を調節することにより、照射された平行レーザ光の光効率を向上させることができる。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であってもよい。上述した範囲で前記位相差層のヘイズを調節することにより、前記位相差層を通過する平行レーザ光が散乱するのを防止することができる。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものであってもよい。上述のように、前記位相差層が円偏光または楕円偏光を線偏光に変換するものとして選択することにより、フォトポリマー樹脂層に発生する所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0083】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンが記録されたフォトポリマー樹脂層から前記位相差層を除去するステップをさらに含むものであってもよい。上述のように、前記位相差層を除去するステップをさらに含むことにより、前記ホログラフィック光学素子を小型化することができる。
【0084】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンが記録されたフォトポリマー樹脂層を可視光線乃至紫外線領域の波長を有する光を照射して漂白するステップをさらに含むものであってもよい。上述のように、前記パターンが記録されたフォトポリマー樹脂層を漂白するステップを含むことにより、フォトポリマー樹脂層に含まれたフォトポリマー樹脂内に反応しない光反応性単量体の反応を完了させることができる。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、前記漂白するステップの照射される光の波長は、可視光線領域または紫外線領域であってもよい。上述のように、前記漂白するステップの照射される光の波長を調節することにより、前記フォトポリマー樹脂内に反応しない光反応性単量体の反応を効果的に完了させることができる。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、前記漂白するステップの後、前記フォトポリマー樹脂層を追加硬化するステップを含むことができる。前記硬化は、熱硬化または光硬化であってもよい。上述のように、前記フォトポリマー樹脂を追加硬化することにより、前記フォトポリマー樹脂層に記録された干渉パターンをさらに固定させて高温耐久性を向上させることができる。
【0087】
本発明の一実施態様は、フォトポリマー樹脂を含むフォトポリマー樹脂層と、前記フォトポリマー樹脂層の一面に備えられた位相差層とを含み、前記フォトポリマー樹脂層は、光の干渉現象による干渉パターンが記録されたものであり、前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である、ホログラフィック光学素子を提供する。
【0088】
本発明の一実施態様であるホログラフィック光学素子は、所望しない干渉パターンを最小化し、記録された干渉パターンを明確にすると同時に、回折効率を向上させることができる。
【0089】
本明細書全体において、前記ホログラフィック光学素子の製造方法と重複する内容は説明を省略する。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が0%超過70%以下であるか、または90%超過100%以下である。本明細書全体において、「光透過度」は、特定の物体に光を照射した場合、照射された光の光量に対する、前記照射された光が前記物体を透過して出た光の光量の比率を意味するものであってもよい。具体的には、前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が70%超過90%以下に相当しないものであってもよい。より具体的には、前記ホログラフィック光学素子は、前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面と垂直に照射された400nm~1600nmの波長を有する光に対する透過度が90%超過100%以下のものを含み、それ以外は0%超過70%以下のものであってもよい。上述した範囲で前記ホログラフィック光学素子の特定の波長での光透過度を確認することにより、所望しない干渉パターンの有無を確認することができ、前記ホログラフィック光学素子の回折効率を向上させることができる。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記光透過度を確認するために照射される光の波長は、400nm以上1600nm以下であってもよい。具体的には、前記光透過度を確認するために照射される光の波長は、450nm以上1550nm以下、500nm以上1500nm以下、550nm以上1450nm以下、600nm以上1400nm以下、650nm以上1350nm以下、700nm以上1300nm以下、750nm以上1250nm以下、800nm以上1200nm以下、850nm以上1150nm以下、900nm以上1100nm以下、または950nm以上1050nm以下であってもよい。上述した範囲で前記光透過度を確認するために照射される光の波長を調節することにより、前記所望しない干渉パターンの有無確認の正確性を向上させることができる。
【0092】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層は、λ/4波長位相遅延特性を有するものであってもよい。上述のように、前記位相差層がλ/4波長位相遅延特性を有するものとして調節することにより、フォトポリマー樹脂層に発生する所望しない干渉パターンを除去することができる。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層の光透過度は、90%超過100%以下であってもよい。具体的には、前記位相差層の光透過度は、91%以上99%以下、92%以上98%以下、93%以上97%以下、または94%以上96%以下であってもよい。上述した範囲で前記位相差層の光透過度を調節することにより、照射された平行レーザ光の光効率を向上させることができる。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、前記位相差層のヘイズは、0%超過1%未満であってもよい。上述した範囲で前記位相差層のヘイズを調節することにより、前記位相差層を通過する平行レーザ光が散乱するのを防止することができる。
【0095】
本発明の一実施態様によれば、前記干渉パターンは、第1平行レーザ光を前記位相差層が備えられていない面であるフォトポリマー樹脂層の他面に照射し、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンであってもよい。上述のように、干渉パターンを形成することにより、実現しようとする干渉パターンを形成することができる。
【実施例0096】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0097】
図3は、本発明の一実施態様にホログラフィック光学素子の干渉パターンP記録の概略図である。ホログラフィック光学素子に第1平行レーザ光L1および第2平行レーザ光L2を照射して、前記第1平行レーザ光L1および第2平行レーザ光L2の干渉現象によって実現される干渉パターンPを記録することが一般的である。
【0098】
具体的には、前記第1平行レーザ光L1および第2平行レーザ光L2の干渉現象を強化させるために、光を線偏光に変化させて干渉現象を強化させることが好ましい。より具体的には、第1平行レーザ光L1をS波(垂直線偏光)に変化させ、円偏光または楕円偏光である第2平行レーザ光L2が位相差層を通過してS波(垂直線偏光)に変化させることにより、相互間の干渉現象によって発生する補強干渉はさらに強く実現され、相殺干渉はパターンをさらに弱く実現して干渉パターンを明確に実現する。
【0099】
他方、第1平行レーザ光L1をP波(水平線偏光)に変化させ、円偏光または楕円偏光である第2平行レーザ光L2が位相差層を通過してP波(水平線偏光)に変化させることにより、相互間の干渉現象によって発生する補強干渉はさらに強く実現され、相殺干渉はパターンをさらに弱く実現して干渉パターンを明確に実現する。
【0100】
図4は、本発明の一実施態様に係るホログラフィック光学素子の所望しない干渉パターンを除去する過程を示す概略図である。具体的には、図4は、本発明の一実施態様に係るホログラフィック光学素子の所望しない干渉パターンを最小化する過程を示す概略図である。前記図4を参照すれば、上述のように、前記第1平行レーザ光L1がS波(垂直線偏光)に変化する場合、前記位相差層と空気との境界面で全反射が発生して、前記第1平行レーザ光L1がS波からP波に変化する。これと同時に、前記第1平行レーザ光L1であるP波が前記位相差層を通過して変化した第2平行レーザ光L2であるS波と相殺干渉を起こして干渉パターンを形成しないので、所望しない干渉パターンを形成しなくなる。
【0101】
同じく、上述のように、前記第1平行レーザ光L1がP波(水平線偏光)に変化する場合、前記位相差層と空気との境界面で全反射が発生して、前記第1平行レーザ光L1がP波からS波に変化する。これと同時に、前記第1平行レーザ光L1であるS波が前記位相差層を通過して変化した第2平行レーザ光L2であるP波と相殺干渉を起こして干渉パターンを形成せず、所望しない干渉パターンを形成しなくなる。
【0102】
<参考例1>
【0103】
フォトポリマー樹脂層のみが備えられたホログラフィック光学素子の一面に400nm~1600nmの波長を有する光を垂直に照射し、光透過度を測定して、下記図5に示した。
【0104】
<参考例2>
【0105】
フォトポリマー樹脂層のみが備えられたホログラフィック光学素子の一面に位相差層を備えず、第2平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の一面に照射し、第1平行レーザ光を前記フォトポリマー樹脂層の他面に照射して、前記第1平行レーザ光および前記第2平行レーザ光の干渉現象による干渉パターンを前記フォトポリマー樹脂層に記録した。以後、前記ホログラフィック光学素子の一面に400nm~1600nmの波長を有する光を垂直に照射し、光透過度を測定して、下記図5に示した。
【0106】
図5は、参考例1および参考例2それぞれの400nm~1600nmの波長を有する光に対する光透過度を示すグラフである。前記図5を参照すれば、前記参考例1は、干渉パターンが存在しないので、400nm~1600nmの波長を有する光の全領域に対して90%を超えるピークが現れたことを確認した。これに対し、参考例2は、位相差層が備えられていない状態で干渉パターンが記録されて所望しない干渉パターンが記録されて、0%超過70%以下、または90%超過100%以下でピークが現れたことを確認した。具体的には、参考例2は、光透過度が70%超過90%以下に相当する領域でピークが発生したことから、所望しない干渉パターンが記録されたことを確認した。
【0107】
したがって、本発明は、干渉パターンを記録する過程で前記位相差層を用いることにより、所望しない干渉パターンを除去することができ、回折効率を向上させることができる。
【0108】
以上、本発明は、たとえ限定された実施例によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正および変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0109】
101:フォトポリマー樹脂層
103:プリズム
105:位相差層
L1:第1平行レーザ光
L2:第2平行レーザ光
P:干渉パターン
P’:所望しない干渉パターン
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】