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特開2025-28672ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置
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  • 特開-ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025028672
(43)【公開日】2025-03-03
(54)【発明の名称】ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/34 20060101AFI20250221BHJP
   F27B 7/32 20060101ALI20250221BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20250221BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
F27B7/34
F27B7/32
C22B23/00 101
C22B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133624
(22)【出願日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大志
【テーマコード(参考)】
4K001
4K061
【Fターム(参考)】
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA16
4K001GA07
4K061AA08
4K061BA04
4K061DA01
4K061DA05
(57)【要約】
【課題】ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物について、操業を止めることなく除去できるロータリーキルンの操業方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射して加熱する加熱工程を有するロータリーキルンの操業方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射して加熱する加熱工程を有するロータリーキルンの操業方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、マイクロ波の照射領域が、前記ロータリーキルン内の上方に位置する前記固着物の前記ロータリーキルンと接する部分を含むように、マイクロ波を照射する請求項1に記載のロータリーキルンの操業方法。
【請求項3】
前記ロータリーキルンの長手方向の両端部間にスクープフィーダを有しており、前記スクープフィーダを介して前記ロータリーキルン内の原料に添加材を投入する添加材投入工程をさらに有する請求項1または請求項2に記載のロータリーキルンの操業方法。
【請求項4】
前記ロータリーキルンに供給する原料がニッケル酸化鉱である請求項1または請求項2に記載のロータリーキルンの操業方法。
【請求項5】
ロータリーキルンと、
前記ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、を有する熱処理装置。
【請求項6】
前記マイクロ波照射装置は、マイクロ波を発振する発振機と、前記発振機で発振したマイクロ波を前記ロータリーキルン内に導波する導波路と、前記導波路の前記ロータリーキルン内に配置された端部の位置を変更する位置変更装置と、を有する請求項5に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記マイクロ波照射装置は、前記ロータリーキルンの外周に沿って配置された架線と、前記架線と接することで前記架線を介して電力を取得する集電装置と、を有する請求項5または請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記ロータリーキルンの長手方向の両端部間に配置されたスクープフィーダを有する請求項5または請求項6に記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルンの操業方法、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フェロニッケル製錬において、原料のニッケル酸化鉱を乾燥するとともに部分還元を行うロータリーキルンの操業方法であって、前記ロータリーキルンの途中にスクープフィーダを設け、該スクープフィーダを介して、水分が2~5重量%の石炭を該ロータリーキルン内に投入することを特徴とするロータリーキルンの操業方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-141719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーキルンは略円筒形状を有しており、通常、一方の端部側から原料である被処理物を投入し、他方の端部側からバーナー等の加熱手段で加熱される。ロータリーキルンは他方の端部側が低くなるように配置され、中心軸を軸として回転することで、投入された被処理物は他方の端部側へと徐々に移動しながら加熱される。そして、他方の端部側に設けられた排出口から、熱処理を終え、得られた生成物が排出されることになる。
【0005】
ところで、ロータリーキルンを操業していると、供給された原料等が、他方の端部側に設けられた加熱手段近くの高温部で一部溶融し、炉壁に付着して盛り上がり、リングとも呼ばれる固着物を形成する場合がある。上記固着物は、例えばロータリーキルン内の炉壁表面に環状に形成されるが、固着物が成長するとロータリーキルンが閉塞状態に近づく場合もある。ロータリーキルンが固着物により閉塞状態に近づくと、原料の移動が阻害されることになるので、操業を続けることができなくなる。
【0006】
炉壁に付着した固着物の除去には、該固着物を棒等でつついたり、ロータリーキルン全体に衝撃を与えたりして物理的に落としたり、加熱手段を止めた後に小型バーナーを炉内に持ち込んで、固着物を溶かすなどの作業が必要であった。
【0007】
そこで上記従来技術が有する問題に鑑み、本発明の一側面では、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物について、操業を止めることなく除去できるロータリーキルンの操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射して加熱する加熱工程を有するロータリーキルンの操業方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物について、操業を止めることなく除去できるロータリーキルンの操業方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱処理装置の模式図である。
図2図2は、図1のA-A´線での断面図である。
図3図3は、図2のB-B´線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いながら説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[ロータリーキルンの操業方法]
本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射して加熱する加熱工程を有することができる。
【0012】
本実施形態のロータリーキルンの操業方法によれば、ロータリーキルン内の炉壁表面にリング等とも呼ばれる固着物が形成された場合でも、マイクロ波により該固着物を選択的に加熱できる。このため、ロータリーキルンの操業を止めることなく、該固着物を炉壁から剥離し、除去できる。
【0013】
本実施形態のロータリーキルンの操業方法を好適に適用できる熱処理装置の構成を説明した後、本実施形態のロータリーキルンの操業方法について説明する。
(1)熱処理装置
本実施形態のロータリーキルンの操業方法を好適に実施できるロータリーキルンを含む熱処理装置の構成例について、図1図3を用いて説明する。図1は熱処理装置10の斜視図であり、図2図1のA-A´線での断面図であり、図3図2のB-B´線での断面図である。いずれも装置の構成を説明するための模式図であり、サイズ等を正確に示すものではない。また、図2図3では後述する架線1053の記載を省略している。
(1-1)ロータリーキルンについて
図1に示した熱処理装置10は、ロータリーキルン100を有している。ロータリーキルン100の炉体となる胴体部101は、略円筒形状を有しており、該胴体部101は、図中のX軸と平行な中心軸CAを回転軸として回転可能に構成されている。ロータリーキルン100は、長手方向の一方の端部である導入端102から、長手方向の他方の端部である排出端103に向かって下方に傾斜して設けられている。このため、導入端102側から導入した原料である被処理物は、回転する胴体部101の内部を排出端103側へと移動する。すなわち、図1中のX軸方向が原料の搬送方向になる。後述するように、排出端103側にはバーナー104が設けられており、バーナー104で焚かれた化石燃料の燃焼熱が、原料である被処理物の移動方向とは逆に、すなわち排出端103の側から導入端102の側へと移動することで、被処理物を向流加熱する。
【0014】
ロータリーキルン100は、長手方向の一方の端部である導入端102に、投入口1021を有しており、該投入口1021から胴体部101の内部に原料である被処理物を投入できる。
【0015】
ロータリーキルン100の長手方向の他方の端部である排出端103には、排出口1031である排出用のシュートが設けられており、胴体部101の内部で熱処理を終えた被処理物を排出できるように構成できる。熱処理を終えた被処理物は必要に応じて他の処理を行う電気炉等の装置へと搬送できる。また、排出端103には、バーナー104が設けられており、重油等の化石燃料を燃焼させ、ロータリーキルン100の胴体部101の内部に投入した被処理物等を加熱できる。
(1-2)マイクロ波照射装置について
マイクロ波照射装置105は、原料等の固着物31が形成された場合に、該固着物31に対してマイクロ波を照射できるように構成できる。
【0016】
図3に示すように、マイクロ波照射装置105は、マイクロ波を発振する発振機1051と、発振機1051で発振したマイクロ波をロータリーキルン内に導波する導波路23とを有することができる。
【0017】
発振機1051は、マイクロ波を発振できる装置であればよく、例えばジャイロトロンや、マグネトロン、クライストロン、進行波管等を用いることができる。本明細書において、マイクロ波とは周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波を意味するが、発振機1051が発振するマイクロ波の周波数は、電波法等の法規に沿って、加熱に用いることができ、かつ用いる原料や、添加材等に応じて選択した周波数とすることができる。発振機1051の出力は特に限定されず、原料や添加材の種類や、加熱する温度等に応じて選択でき、例えば1kW以上の出力であることが好ましい。
【0018】
発振機1051は、図1等に示すようにロータリーキルン100の胴体部101の回転を阻害しないように設けることが好ましく、例えば図1に示すように胴体部101の外表面に設けることができる。なお、発振機1051や、導波路23については、ロータリーキルン100の熱により破損しないようにその表面に断熱材等を設けておくことが好ましい。
【0019】
図3に示すように、導波路23は、一方の端部が発振機1051と接続され、他方の端部23Aは、ロータリーキルン100内に配置される。導波路23は、マイクロ波を導波できればよく、その構成は特に限定されないが、例えば管状の導波管や、電線とすることができる。導波路が導波管の場合、導波管内部に原料や添加材が入らないように、ロータリーキルン100内に配置された端部23Aには、マイクロ波透過板を配置することが好ましい。マイクロ波透過板の材料は特に限定されないが、例えば石英、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0020】
そして、導波路23のロータリーキルン100内に配置された端部23Aからは、該導波路23を通過したマイクロ波を照射できる。このため、導波路23のロータリーキルン100内に配置された端部23Aは、ロータリーキルン100内に形成された固着物に対して、マイクロ波を照射できる位置に配置されることが好ましい。
【0021】
導波路23からマイクロ波を照射する方向は、ロータリーキルン100内に形成された固着物の少なくとも一部に照射できるように選択されていればよく、限定されない。
【0022】
固着物は、主にロータリーキルン100の加熱手段であるバーナー104近くの高温部で原料等の一部が溶融し、炉壁に付着(固着)することで形成される。このため、導波路23の端部23Aは、例えば図3に示すように排出端103側へ向けておくことができる。
【0023】
ただし、固着物が発生する位置は常に一定であるとは限らず、ロータリーキルン100の運転条件等により変化する場合がある。そこで、マイクロ波照射装置105は、ロータリーキルン100内に配置された導波路23の端部23Aの位置を変更する位置変更装置24を有することが好ましい。マイクロ波照射装置105が位置変更装置24を有することで、より適切に固着物を加熱し、除去できる。
【0024】
位置変更装置24の構成は特に限定されない。位置変更装置としては、例えば、ロータリージョイントなどを用いることが出来る。また、位置変更装置24は、例えばロータリーキルン100の胴体部101の外表面から端部23Aを支持する棒状体を有し、該棒状体の位置を変化させることで端部23Aの位置を変化させるように構成してもよい。この場合、導波路23は変形可能に構成されていることが好ましく、導波路23として、例えば蛇腹構造を有する導波管や、電線を用いることができる。
【0025】
なお、ロータリーキルン100内に形成された固着物の位置は、例えばロータリーキルン100内に配置されたカメラ等の撮像装置により観察して検知できる。また、固着物の位置は、ロータリーキルン100の外壁に設置した熱電対や放射温度計等の温度測定装置により測定した温度や温度分布から検知することもできる。
【0026】
ロータリーキルン100の内壁に固着物31が形成されると、ロータリーキルン100の外壁において、該固着物31部分について温度分布が変化する。このため、上述のようにロータリーキルン100の外壁の温度や、温度分布を測定することで、固着物31の位置を特定できる。
【0027】
そこで、本実施形態の熱処理装置10は、固着物の位置を検知するため、ロータリーキルン100内に設置された撮像装置、およびロータリーキルン100の外壁の温度、もしくは温度分布を測定する温度測定装置から選択された1種類以上を有することもできる。
【0028】
そして、位置変更装置24は、位置を検知した固着物31に対してマイクロ波を照射できるように、導波路23の端部23Aの位置を変更、調整できる。
【0029】
また、マイクロ波照射装置105の発振機1051に電力を供給するため、マイクロ波照射装置105は、架線1053と、集電装置1052とを有することもできる。架線1053は、ロータリーキルン100の外周に沿って配置でき、図示しない電力供給源と接続しておくことができる。集電装置1052は、架線1053と接することで架線1053を介して電力を取得できる。集電装置1052の構成は特に限定されないが、例えば架線1053と接する導電性の摺動部と、該摺動部の位置を変位させ、架線1053に押し当てる伸縮部とを有することができ、電車等で用いられるパンタグラフと同様の構成にできる。
【0030】
図1図3において、マイクロ波照射装置105を一方のスクープフィーダ130の近傍に1台配置した例を示しているが、本実施形態の熱処理装置10は加熱の程度等に応じて複数台のマイクロ波照射装置を有することもできる。
(1-3)スクープフィーダについて
熱処理装置10は、ロータリーキルン100の途中、すなわち導入端102と、排出端103との間に、スクープフィーダを有することもできる。スクープフィーダが設けられた位置における中心軸CAと垂直な面での断面、すなわちA-A´線での断面図である図2を用いながら説明する。
【0031】
図2に示すように、ロータリーキルン100は、回転する胴体部101と、胴体部101を覆う外殻部110とを有することができる。なお、外殻部110は、胴体部101の表面全体を覆うように設ける必要は無く、例えば図1に示すように、スクープフィーダを設ける箇所等、必要な箇所にのみ設けることもできる。
【0032】
胴体部101内には、投入口1021から投入された原料である被処理物21が導入され、胴体部101の回転に伴って排出端103側へと移動できる。
【0033】
胴体部101と外殻部110との間に空間部120が形成されており、外殻部110に設けられた添加材供給口111を介して、空間部120に添加材を供給できる。添加材供給口111には、必要に応じて各種添加材を供給する添加材供給手段221を接続しておくことができる。
【0034】
添加材供給手段221により添加する添加材は特に限定されないが、例えば還元剤や、融着防止剤から選択された1種類以上が挙げられる。
【0035】
添加材供給手段221の構成は特に限定されず、添加材供給口111側に設けられた開口部の開度を添加材の供給量にあわせて調整可能に構成し、該開口部を介して自由落下する添加材の供給量を調整できるようにしてもよい。また、例えばスクリューコンベア等の搬送手段を有し、該搬送手段による添加材の搬送速度を調整可能とし、該搬送速度により添加材の供給量を調整できるように構成してもよい。
【0036】
スクープフィーダ130は、例えば先端部131と、直線部132との間が屈曲したL字形状の管で形成できる。
【0037】
スクープフィーダ130は、胴体部101と共に、例えば図2中、矢印で示すように、時計回り(右回り)に回転できる。係る回転の際に、先端部131で空間部120に供給された添加材22を掬い上げ、掬い上げた添加材22を直線部132内に通過させて胴体部101内にフィードできる。
【0038】
ロータリーキルン100において、スクープフィーダを設ける箇所は特に限定されず、ロータリーキルン100の胴体部101内部の温度分布や、添加する添加材の種類等に応じて任意の場所に設けることができる。
【0039】
スクープフィーダを設ける箇所は特に限定されない。例えば排出端103からスクープフィーダを設けた外殻部110の導入端102側の端部までの距離L110は、ロータリーキルン100の胴体部101長手方向の長さL101の5%以上95%以下が好ましく、10%以上90%以下がより好ましい。
(2)ロータリーキルンの運転条件について
ロータリーキルンの運転条件は特に限定されず、原料である被処理物の種類や実施する処理等に応じて任意に選択できる。
【0040】
既述のように、熱処理装置10は還元処理等を行うこともできる。
【0041】
ロータリーキルン100の回転数、すなわちロータリーキルン100を構成する胴体部101の回転数についても特に限定されないが、例えば0.5rpm以上1.5rpm以下程度であることが好ましい。
【0042】
ロータリーキルン100の回転数を0.5rpm以上とすることで、ロータリーキルン100内の撹拌力を十分に高め、途中で投入した添加材等を露出させながら反応を十分に進行させることができる。また、ロータリーキルン100の回転数を0.5rpm以上とすることで、高温となるキルン本体が軟化した場合の自重変形を小さくすることができる。
【0043】
また、ロータリーキルンの回転数を1.5rpm以下とすることで、ロータリーキルン100内に導入された原料である被処理物等がロータリーキルン100内に十分な時間留まることができ、所望の熱処置時間を確保できる。
(3)各工程について
(3-1)加熱工程
加熱工程では、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射して加熱できる。
【0044】
加熱工程では、既述のマイクロ波照射装置105を用いて、導波路23の端部23Aからマイクロ波を照射できる。
【0045】
固着物31のうち、マイクロ波を照射する位置、領域は特に限定されない。ただし、より効率的に固着物31を加熱し、除去できるように、加熱工程では、マイクロ波の照射領域が、ロータリーキルン内の上方に位置する固着物31のロータリーキルンと接する部分311Aを含むように、マイクロ波を照射することが好ましい。
【0046】
マイクロ波の照射領域が、ロータリーキルン内の上方に位置する固着物31である上方固着物311のうち、ロータリーキルンと接する部分311Aを含むように、マイクロ波を照射することで、該固着物の炉壁に近い部分の温度を上げて粘度を下げられる。ロータリーキルン内の上方に位置する固着物31の、炉壁との接着部の粘度が下がることで、該固着物について、自重により落下させ、容易に除去できる。このため、該固着物が大きく成長して閉塞に至るトラブルをより確実に回避できる。
【0047】
なお、ロータリーキルン100は回転していることから、ロータリーキルン内の上方に位置する固着物31は経時的に変化する。このため、ロータリーキルン内の上方に位置する固着物のロータリーキルンと接する部分とは、マイクロ波照射時において、ロータリーキルン内の上方に位置している固着物の、ロータリーキルンと接する部分を意味する。
【0048】
図1図3では、マイクロ波照射装置105を一方のスクープフィーダ130の近傍に1台配置した例を示しているが、もう一方のスクープフィーダ130の近傍等にも同様にして配置してもよい。
【0049】
用いるマイクロ波の周波数は既述のように特に限定されず、電波法等の法規に沿って、加熱に用いることができ、かつ用いる原料や添加材等に応じて選択できる。
【0050】
本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、加熱工程以外の任意の工程を有することもできる。以下、任意の工程について説明する。
(3-2)添加材投入工程
既述のように、熱処理装置10は、ロータリーキルン100の長手方向の両端部間にスクープフィーダ130を有することができる。そして、本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、該スクープフィーダを介してロータリーキルン内、具体的には熱処理を行っている胴体部内の原料に添加材を投入する添加材投入工程を有することもできる。
【0051】
添加材投入工程は、添加する添加材の種類等に応じて任意のタイミングで実施できる。
(添加材について)
添加材投入工程で添加する添加材の種類は特に限定されず、既述のように還元剤や、融着防止剤から選択された1種類以上が挙げられる。添加材は特に還元剤を含むことが好ましい。
【0052】
還元剤としては、石炭や、木質ペレット、廃プラスチック等の炭素含有材料が挙げられる。
【0053】
また、融着防止剤は、ロータリーキルン100の内壁に原料である被処理物が付着して固着物を形成し、リング状に成長することを抑制できる材料であればよく、例えば高融点のセラミックス材料を好適に用いることができる。高融点のセラミックス材料を融着防止剤として用いることで、例えば溶融状態の被処理物をコートし、被処理物が炉の内壁に付着し、固着物が成長することを抑制できる。
【0054】
融着防止剤は、被処理物の成分に悪影響を与えないように、被処理物に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムから選択された1種類以上を含むことが好ましい。
(原料について)
本実施形態のロータリーキルンの操業方法に供する原料である被処理物は特に限定されず、例えば各種金属成分を含む鉱石や、セラミックス原料を挙げることができる。
【0055】
特に、被処理物としては、各種鉱石を挙げることができる。特に、精錬を行うことが求められる金属の鉱石は一般的に水分を多く含み、酸化されている。そして、本実施形態のロータリーキルンの操業方法によれば、各種還元剤を用い、乾燥と還元とを効率的に行うことができるため、被処理物としては、金属の鉱石を含むことが好ましい。なお、被還元物は金属の鉱石から構成されてもよい。
【0056】
金属の鉱石が含む金属は特に限定されないが、例えば非鉄金属を含む金属であることが好ましく、ニッケル、亜鉛等から選択された1種類以上の金属を含む鉱石であることがより好ましい。
【0057】
フェロニッケル精錬において、原料のニッケル酸化鉱に付着した水分の一部をドライヤーで除去した鉱石(乾燥鉱石)に対して、さらに乾燥処理と、還元処理とを施す場合がある。このため、本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、原料である被処理物としてニッケル酸化鉱を好適に用いることができる。
【0058】
ニッケル酸化鉱(酸化ニッケル鉱石)としては、特に限定されないが、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。このガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱換算でNi品位が2.1質量%以上2.5質量%以下、Fe品位が11質量%以上23質量%以下、MgO品位が20質量%以上28質量%以下、SiO品位が29質量%以上39質量%以下、CaO品位が0.5質量%未満、灼熱減量が10質量%以上15質量%以下、の例が挙げられる。
【0059】
なお、被処理物は事前に予備乾燥を行い、一部の付着水分を低減、除去しておくこともできる。
(3-3)固着物検知工程、照射位置調整工程
本実施形態のロータリーキルンの操業方法は、ロータリーキルン内の炉壁表面である内壁に固着物が形成されたこと、もしくは固着物の位置を検知する固着物検知工程を有することもできる。
【0060】
固着物の生成や、固着物の位置は、ロータリーキルン内部をカメラ等の撮像装置により観察することで、もしくはロータリーキルンの外壁の温度分布の変化を測定することで検知できる。
【0061】
固着物検知工程を実施する場合、加熱工程を開始する前、もしくは加熱工程を開始した後、検知した固着物31の位置に応じて、導波路23の端部23Aの位置を変更、調整する、照射位置調整工程を実施することもできる。
[熱処理装置]
本実施形態の熱処理装置は、ロータリーキルンと、マイクロ波照射装置と、を有することができる。
【0062】
マイクロ波照射装置は、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物に対してマイクロ波を照射できる。
【0063】
本実施形態の熱処理装置によれば、既述のロータリーキルンの操業方法を実施できる。このため、既に説明した事項については説明を省略する。
【0064】
また、本実施形態の熱処理装置は、スクープフィーダを有することもでき、スクープフィーダは、ロータリーキルンの長手方向の両端部間に配置できる。
【0065】
ロータリーキルン、マイクロ波照射装置、スクープフィーダの好適な構成例については既に説明したので説明を省略する。
【0066】
以上に説明した本実施形態の熱処理装置によれば、マイクロ波照射装置により、固着物に対してマイクロ波を照射し、加熱できる。このため、ロータリーキルン内の炉壁表面に形成された固着物について、操業を止めることなく除去できる。
【符号の説明】
【0067】
10 熱処理装置
100 ロータリーキルン
101 胴体部
102 導入端
1021 投入口
103 排出端
1031 排出口
104 バーナー
105 マイクロ波照射装置
1051 発振機
1052 集電装置
1053 架線
110 外殻部
111 添加材供給口
120 空間部
130 スクープフィーダ
131 先端部
132 直線部
21 被処理物
22 添加材
221 添加材供給手段
23 導波路
23A 端部
24 位置変更装置
CA 中心軸
L110 距離
L101 長さ
31 固着物
311A 部分
311 上方固着物
図1
図2
図3