(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029355
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】おから乾燥粉末を使用した肉質改良剤組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 13/72 20230101AFI20250227BHJP
A23L 11/00 20250101ALI20250227BHJP
【FI】
A23L13/72
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133930
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】溝口 久美子
【テーマコード(参考)】
4B020
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB24
4B020LG07
4B020LK01
4B020LK05
4B020LK10
4B020LK12
4B020LK20
4B020LP08
4B020LP15
4B020LP20
4B042AC03
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK11
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP04
4B042AP05
4B042AP07
4B042AP17
4B042AP19
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】畜肉、魚肉等の食肉類に加熱調理等の加工を施しても、柔らか且つジューシーな食感を有し、歩留りが向上した食肉加工食品を得ることができる肉質改良剤組成物を提供する。
【解決手段】タンブリング処理及び/又はインジェクション処理により食肉類の肉質を改良するための肉質改良剤組成物であって、おから乾燥粉末を肉質改良の有効成分として含有する、前記肉質改良剤組成物により上記課題を達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンブリング処理及び/又はインジェクション処理により食肉類の肉質を改良するための肉質改良剤組成物であって、おから乾燥粉末を肉質改良の有効成分として含有する、前記肉質改良剤組成物。
【請求項2】
前記おから乾燥粉末のメジアン径が200μm以下である、請求項1に記載の肉質改良剤組成物。
【請求項3】
更に澱粉分解物を含有する、請求項1に記載の肉質改良剤組成物。
【請求項4】
おから乾燥粉末の量が、食肉類100質量部に対して0.1質量部以上である、請求項1~3のいずれかに記載の肉質改良剤組成物の、タンブリング処理及び/又はインジェクション処理による食肉類の肉質改良における使用。
【請求項5】
下記工程1と、下記工程2-1及び/又は下記工程2-2とを含み、食肉類100質量部に対するおから乾燥粉末の量が0.1質量部以上である、食肉類の肉質改良方法。
工程1:おから乾燥粉末を含有する肉質改良剤組成物を準備し、前記肉質改良剤組成物を含む、液状の肉質改良用調味組成物を提供する工程
工程2-1:工程1で得られる液状の前記肉質改良用調味組成物を用いて食肉塊をタンブリングする工程
工程2-2:工程1で得られる液状の前記肉質改良用調味組成物を食肉塊にインジェクションする工程
【請求項6】
前記おから乾燥粉末のメジアン径が200μm以下である、請求項5に記載の肉質改良方法。
【請求項7】
前記肉質改良剤組成物が更に澱粉分解物を含有する、請求項5に記載の肉質改良方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載の肉質改良方法により改良された食肉塊を加工する工程を含む、食肉加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肉質改良剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉又は獣肉、および魚、貝等の魚介肉等を含む食肉類には、調理して食する際に肉汁や水分が保持された柔らかくジューシーな食感、弾力的な肉質感のある食感が求められる。しかしながら、食肉類を油ちょう、オーブン加熱、フライパン加熱あるいは電子レンジ加熱等により加熱調理すると、食肉類の内部から水分や脂肪分が飛散や漏出等により失われるため、加熱した食肉類の食感は硬く弾力のないパサついたものになりがちである。また、加熱により肉を構成するタンパク質が変性して収縮、凝固を起こすために、硬く弾力のないパサついた食感はより際立つものとなりやすい。
食肉類のフライ食品の揚げ種の食感を改良する一般的な方法としては、蛋白分解酵素(特許文献1)や重合リン酸塩(特許文献2)を食肉類に作用させる方法が知られており、広く利用されている。前者では蛋白分解酵素による肉蛋白質の部分的な分解により食肉類が軟化され、後者では肉蛋白質中のカルシウムの封鎖作用により軟化させると共にpH上昇により保水力が増強され、その結果、揚げ種として用いた食肉類が柔らかくジューシーな食感になる。特許文献3では、膨張剤と食物繊維及び/又はグルコン酸塩とを含有する畜肉用品質改良剤が開示されており、ソフトでジューシーな食感を有する豚カツや鶏唐揚等の揚げ物が得られ、且つ歩留が向上することが記載されている。特許文献4では、植物ステロールを0.5重量%以上含有する揚げ物用組成物が開示されており、揚げ種のジューシー感が良好になったことが記載されている。何れも食肉類の食感を改良するための優れた技術ではあるが、おから乾燥粉末に関する記載はない。
一方、おから粉末をフライ製品に適用する試みがなされている。特許文献5では、おから粉末、糖類、食用油脂、乳化剤を含有した水中油型の乳化油脂組成物をバッター組成物に添加することを特徴とするフライ用バッター液の品質改良法が開示されており、フライ製品の食感改良を可能とするフライ用バッター液の品質改良法を提供することが記載されている。特許文献6では、天ぷらの製造に用いるバッターを調製するためのバッターミックスであって、前記バッターミックスの質量を基準として、おから粉末を1~6質量%、及び食用油脂を1~5質量%含有し、前記おから粉末の前記食用油脂に対する含有量の比(おから粉末/食用油脂)が、0.4~2.5であり、且つ粘度V12rpmが、750~1600mPa・sとなるように調製したバッターについて、チキソ係数T(ただし、T=V30rpm/V6rpm)が、0.5~1であることを特徴とするバッターミックスが開示されており、容易に追いダネを行うことができ、追いダネにより適度な花チリが付いた良好な外観を有し、且つサクサクとした口溶けの良い良好な食感が長時間維持される天ぷらを安定して製造することができることが記載されている。何れも揚げ物の衣を改良する優れた技術ではあるが、食肉類の肉質改良に関する記載はない。
何れも揚げ種のジューシー感を得るためには有効な手段ではあるが、市場の要求は高く、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-252911号公報
【特許文献2】WO96/27300
【特許文献3】特開2001-148号公報
【特許文献4】特開2003-235484号公報
【特許文献5】特開平7-274881
【特許文献6】特開2016-158596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、畜肉、魚肉等の食肉類に加熱調理等の加工を施しても、柔らか且つジューシーな食感を有し、歩留りが向上した食肉加工食品を得ることができる食肉類の肉質改良剤組成物及びそれを用いた肉質改良用調味組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕タンブリング処理及び/又はインジェクション処理により食肉類の肉質を改良するための肉質改良剤組成物であって、おから乾燥粉末を肉質改良の有効成分(肉質改良剤)として含有する、前記肉質改良剤組成物。
〔2〕前記おから乾燥粉末のメジアン径が200μm以下である、〔1〕に記載の肉質改良剤組成物。
〔3〕更に澱粉分解物を含有する、〔1〕又は〔2〕に記載の肉質改良剤組成物。
〔4〕おから乾燥粉末の量が、食肉類100質量部に対して0.1質量部以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の肉質改良剤組成物の、食肉類の肉質改良における使用。
〔5〕下記工程1と、下記工程2-1及び/又は下記工程2-2とを含み、食肉類100質量部に対するおから乾燥粉末の量が0.1質量部以上である、食肉類の肉質改良方法。
工程1:おから乾燥粉末を含有する肉質改良剤組成物を準備し、前記肉質改良剤組成物を含む、液状の肉質改良用調味組成物を提供する工程
工程2-1:工程1で得られる液状の前記肉質改良用調味組成物を用いて食肉塊をタンブリングする工程
工程2-2:工程1で得られる液状の前記肉質改良用調味組成物を食肉塊にインジェクションする工程
〔6〕前記おから乾燥粉末のメジアン径が200μm以下である、〔5〕に記載の肉質改良方法。
〔7〕前記肉質改良剤組成物が更に澱粉分解物を含有する、〔5〕又は〔6〕に記載の肉質改良方法。
〔8〕〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の肉質改良方法により改良された食肉塊を加工する工程を含む、食肉加工食品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の肉質改良剤組成物により畜肉又は獣肉、および魚介肉等の食肉類を処理することにより、蛋白分解酵素や重合リン酸塩等の特殊な原料を使用しなくとも、加熱調理等の加工を施しても肉質がパサついて硬くなることなく、柔らか且つジューシーな食感および歩留りが向上した食肉加工食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)肉質改良剤組成物
本発明において、肉質改良剤組成物とは、おから乾燥粉末を肉質改良の有効成分(肉質改良剤)として含む、食肉類の肉質を改良するための組成物である。
(1-a)食肉類
本発明の肉質改良剤組成物を適用する食肉類は特に制限されるものではなく、一般に食される食肉類であれば何れも好適に適用することができる。そのような食肉類としては、牛、豚、馬、羊、山羊、兎、猪、鹿等の哺乳類;鶏、ウズラ、アヒル、ガチョウ、鴨、七面鳥、ダチョウ等の鳥類;マグロ、サケ、タラ、タイ、カジキ、イワシ、サバ、アジ、サンマ、ウナギ、コイ、フナ等の魚類;クジラ、イルカ、アザラシ、セイウチ等の海獣類;ワニ、カメ、ヘビ等の爬虫類;カエル、サンショウウオ等の両生類;タコ、イカ等の軟体動物類;ホタテ、アサリ、ハマグリ等の貝類;イセエビ、クルマエビ等の甲殻類等が挙げられる。これら食肉類は、単独であってもよく、二種以上を混合したものであってもよいが、好ましくは哺乳類及び鳥類であり、より好ましくは鳥類であり、さらに好ましくは鶏である。
食肉類の部位についても特に制限はなく、牛肉であればサーロイン、ヒレ、ロース、バラ、リブロース、ランプ等、豚肉であればロース、ヒレ、バラ、モモ等、鶏肉であればムネ、モモ、手羽、ササミ等が挙げられる。食肉類の形状についても特に制限はなく、ブロック状、切り身状、賽の目状、スティック状、スライス状、等の形態の食肉塊が挙げられる。
【0008】
(1-b)タンブリング処理及びインジェクション処理
本発明の肉質改良剤組成物は、タンブリング処理及び/又はインジェクション処理により食肉類の肉質を改良するために用いられる組成物である。
より具体的には、インジェクション処理とは、食肉類に、本発明の肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を機械的に注入する処理を意味する。タンブリング処理とは、食肉類に、本発明の肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を機械的に浸透させる処理を意味する。本発明の肉質改良剤組成物は、上述のタンブリング処理もしくはインジェクション処理、又はタンブリング処理及びインジェクション処理を両方とも用いた処理により、食肉類の肉質を改良する方法に用いるものである。
食肉類の処理方法としては、例えば、漬け込み(食肉類に肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を加えて静置して漬け込む処理)や、まぶし(調味済の肉類表面に肉質改良剤組成物(粉末等の固体状組成物)をまぶして付着させる処理)という方法があるが、これらの方法では、肉塊内部に肉質改良剤組成物が取り込まれず、肉質の改良効果は得られない。本発明の肉質改良剤組成物が食肉内に取り込まれて効果的に保水効果を発揮し肉質を改良する観点から、インジェクション及び/又はタンブリングであることが必要である。
なお、肉質改良剤組成物による食肉類のタンブリング処理時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10秒間~24時間であり、より好ましくは1分間~2時間であり、更に好ましくは2分間~1時間である。処理時間が長いほど肉質改良効果を得ることができるが、製造効率の観点から1時間以下にすることが望ましい。インジェクションは、液体状の肉質改良用調味組成物を食肉塊に局在させ、かつ、定量的に注入することができれば、いかなる手段でもよく、例えば、シリンジ等の注射器や、食肉加工分野においてピックル液や調味液等の液状物を食肉に注入するのに汎用されている、インジェクターを用いて行うことができる。インジェクターの針の太さ等の形状は、ゲル状物の性質や食肉含有原料に応じて適宜選択できる。
【0009】
(1-c)肉質改良剤組成物及びおから乾燥粉末
本発明の肉質改良剤組成物は、おから乾燥粉末を肉質改良の有効成分(肉質改良剤)として含む。本発明の肉質改良剤組成物に含まれるおから乾燥粉末は、一般社団法人日本乾燥おから協会の食品用乾燥おからの表示基準・品質規格基準に基づく。豆乳と分離した後の「生おから」を乾燥し必要に応じて粉砕したものが好ましい。
本発明の肉質改良剤組成物は、おから乾燥粉末からなっていてもよく、賦形剤などの常用成分及び後述する澱粉分解物を適宜配合することもできる。肉質改良剤組成物の剤型は取り扱い易い形態であればよく、例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、など任意である。本発明の肉質改良剤組成物はそのまま使用しても良く、さらに使用の目的あるいは使用の態様に応じて他の成分と混合してもよい。
【0010】
肉質改良剤組成物の使用量は、用いる食肉類の種類、肉質、大きさ、形状、採用する肉質改良方法等を考慮して適宜設定することができる。効果的に肉質を改良する観点から、肉質改良剤組成物の使用量は、肉質改良剤組成物に含有されるおから乾燥粉末として、食肉類100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、よりさらに好ましくは1.0質量部以上である。この範囲のおから乾燥粉末を使用することにより、食肉類の肉質を良好に改良することができる。おから乾燥粉末の使用量が増えることにより、食肉類の肉質がより良好となるが、作業性の観点から5.0質量部以下であることが好ましい。
【0011】
おから乾燥粉末のメジアン径は、小さいほど肉質が柔らかくジューシーで歩留りも高くなることが観察された。これは、おから乾燥粉末を水性液体原料と混合して懸濁液とすることによりおから乾燥粉末が水性液体原料を吸収して膨潤し、この際におから乾燥粉末のメジアン径に依存したおから乾燥粉末膨潤物の大きさになるため、おから乾燥粉末のメジアン径が小さいほどおから乾燥粉末膨潤物が食肉類に入り込みやすくなると推測される。メジアン径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、50μm以下がよりさらに好ましい。また、おから乾燥粉末の製造の観点から20μm以上であることが好ましい。
本発明における粒度分布及び粒径は湿式で測定した体積基準であり、「メジアン径」と記載した場合は粒子径積算分布曲線において粒子の小さい方から積算した積算50%における粒径(50%粒子径)を表す。体積基準の粒子径の測定は、公知のレーザー回折・散乱法で測定することができ、その様な装置として、具体的には例えば粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、MT3000)等を使用することができる。
【0012】
(1-d)おから乾燥粉末の製造方法
本発明におけるおから乾燥粉末は、大豆又は脱脂大豆を原料として、豆乳、大豆ホエー等の水溶性たん白質等を抽出した残渣である「生おから」を乾燥、粉砕して得られる粉末である。本発明においては、大豆を原料として豆乳を抽出した残渣を乾燥、粉砕したおから粉末が好ましい。また、市販の乾燥おからやおからパウダーをさらに粉砕して粒度を調整して使用してもよい。 乾燥させたおからを粉砕する方法は特に限定せず、例えば衝撃式粉砕、気流式粉砕、乾式微粉砕機、磨砕粉砕、剪断粉砕、切断粉砕、圧縮粉砕、凍結粉砕等を挙げることができる。
メジアン経の調節は、気流粉砕を例にすると粉砕機内部(粉砕室)の高速回転ローターの回転速度や単位時間当たりの原料供給量を制御することにより行うことができる。
また、生おからを乾燥させる方法は特に限定されない。例えば自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、赤外線乾燥等を挙げることが出来る。好ましくは加熱乾燥法により水分含量が12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下になるように乾燥する。
【0013】
(1-e)澱粉分解物
本発明の肉質改良剤組成物は、おから乾燥粉末に加えて、澱粉分解物を含んでいてもよい。澱粉分解物を使用すると、更にその肉質改良効果を得ることができるためである。より好ましくは、食肉類100質量部に対して、澱粉分解物を0.1質量部以上使用する。さらに好ましくは、食肉類100質量部に対して、澱粉分解物を0.5質量部以上使用する。呈味への影響の観点から澱粉分解物は5.0質量部以下であることが好ましい。
澱粉分解物とは、澱粉を酸、酵素等で加水分解する際に生じる澱粉の加水分解物の総称であり、デキストリン(DE値:10以下)、マルトデキストリン(DE値:10~20程度)、水飴(DE値:20以上)等に分類される(環状または難消化性の澱粉分解物を含む)。また、澱粉分解物を還元して得られる糖アルコール(デキストリンアルコール、マルトデキストリンアルコール、還元水飴)についても、本発明においては澱粉分解物に包含されるものである。環状の澱粉分解物としては、シクロデキストリンが知られており、より具体的にはα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが挙げられる。難消化性の澱粉分解物としては難消化性デキストリン、還元難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン等が知られている。一般に、糖アルコール並びに環状または難消化性の澱粉分解物はデキストリンやマルトデキストリン、水飴よりも呈味(特に甘味)が低く、肉質改良を行った際に食肉類への澱粉分解物由来の呈味を低減することができるため、求める食肉加工食品の呈味に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明において、澱粉分解物のDE値は特に制限されるものではないが、好ましくはDE値が30以下の澱粉分解物であり、より好ましくはDE値が20以下、さらにより好ましくはDE値が10以下の澱粉分解物である。ここで、DE値とは、ブドウ糖の還元力を100とした場合の相対的な還元力を示す指標であり、澱粉の加水分解にあっては、分解がどの程度まで進んでいるかを示す目安である。なお、本発明におけるDE値は、ウィルシュターシューデル法により測定した値である。また、糖アルコール等の澱粉分解物の還元物におけるDE値は、便宜的に還元処理に供する原料の澱粉分解物(還元されていない澱粉分解物)のDE値とする。
澱粉分解物の原料である澱粉の由来は特に限定されず、例えば、タピオカ由来、馬鈴薯由来、トウモロコシ由来、小麦由来、米由来、甘藷由来、又は豆由来などであってもよい。また、通常の固体、粉末状などいずれの形態であってもよいが、おから乾燥粉末と均一に混合して用いるためには粉末状の澱粉分解物が好ましい。
澱粉分解物はおから乾燥粉末と混合せず、別途添加してもよい。
【0014】
(2)肉質改良用調味組成物
本発明の肉質改良剤組成物は肉質改良用調味組成物に加えてもよく、肉質改良用調味組成物を用いて食肉類のタンブリング処理及び/又はインジェクション処理を行うことができる。
本発明の肉質改良用調味組成物は、少なくとも肉質改良剤組成物を含み、タンブリング処理及び/又はインジェクション処理を行うために用いる液状、好ましくは懸濁液状、の組成物である。肉質改良用調味組成物中において、本発明の肉質改良剤組成物中のおから乾燥粉末由来のおからは懸濁状である。
本発明の効果を損なわない範囲において、肉質改良用調味組成物には本発明の肉質改良剤組成物の他に以下の成分等を含んでいてもよい。食塩等の無機塩類;ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、トレハロース、ステビア、三温糖、黒糖、グルコース等の糖類;白胡椒、黒胡椒、ガーリック、ナツメグ、ローズマリー、セージ、オレガノ、オールスパイス等の香辛料及びそれらの粉末;アマニ、ピーナッツ、アーモンド、ギンナン、クコ、ゴマ、クルミ等の種実類及びその粉末;ケール、ホウレンソウ、キャベツ、ハクサイ等の野菜類の乾燥粉末;グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等のうま味調味料;卵黄、卵白、全卵を粉末化したものやその他の卵に由来する成分である粉状卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の粉乳成分;大豆蛋白、小麦蛋白、えんどう豆蛋白等のタンパク質類;アスコルビン酸、チアミン、パントテン酸、ナイアシン、葉酸等のビタミン類;酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸;ポリデキストロース、大麦βグルカン等の水溶性食物繊維;トコフェロール、没食子酸プロピル、クロロゲン酸、亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、カテキン等の酸化防止剤;β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料;コンソメ、ブイヨン、かつお出汁、イーストエクストラクト等のエキス;ヨーグルト、チーズ、醤油等の発酵調味料及びそれらの乾燥粉末;アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、トランスグルタミナーゼ等の酵素;寒天、ゼラチン、イヌリン、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、カードラン、セルロース誘導体等の増粘多糖類;乳糖、マンニトール等の賦形剤;クエン酸鉄アンモニウム、無水リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、無水硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の固結防止剤;香料;酒類;オリゴ糖;安定剤;保存料等が挙げられ、これらの一種又は二種以上のものを適宜選択して用いられる。なお、種実類等のその他成分は、任意に乾熱処理、湿熱処理、酵素処理等の処理が施されていてもよい。
好ましくは、無機塩類、糖類、香辛料、うま味調味料、ビタミン類、有機酸、酸化防止剤、着色料、及び発酵調味料からなる群より選択される一種又は二種以上のものが挙げられる。
肉質改良用調味組成物中の肉質改良剤組成物の他に含まれる水性液体成分以外の成分の合計質量は、肉質改良剤組成物の効果を損なわない量であればよく、例えば50質量%以下であり、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
肉質改良用調味組成物は液状組成物、好ましくは懸濁液状組成物であり、少なくとも一種類の水性液体成分を含むことが好ましい。水性液体成分としては、ミネラルウォーター、清涼飲料水等の飲料水;牛乳、山羊乳、馬乳等の乳類及びそれらを発酵させた発酵乳飲料;鶏、うずら、ダチョウ等の家禽類由来の全卵液、卵黄液、卵白液等の卵液;オレンジジュース、グレープフルーツジュース、パイナップルジュース等の果汁及びそれらの濃縮還元果汁等が挙げられる。
【0016】
(3)肉質改良方法
本発明の肉質改良方法は、本発明のおから乾燥粉末を含有する肉質改良剤組成物を含む肉質改良用調味組成物により食肉類を処理する工程を含む。
「肉質改良用調味組成物により食肉類を処理する」とは、インジェクション(食肉類に肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を機械的に注入する処理)、タンブリング(食肉類に肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を機械的に浸透させる処理)、等の方法から選択される一又は二以上の方法を採用した処理である。漬け込み(食肉類に肉質改良剤組成物を含む調味液等の肉質改良用調味組成物を加えて静置して漬け込む処理)、まぶし(調味済の肉類表面に肉質改良剤組成物をまぶして付着させる処理)では、肉塊内部に肉質改良剤組成物が取り込まれず、肉質の改良効果は得られない。インジェクション及び/又はタンブリング処理とすることにより、本発明の肉質改良剤組成物が食肉内に取り込まれて効果的に保水効果を発揮し肉質を改良することができる。
【0017】
なお、肉質改良用調味組成物による食肉類のタンブリング処理時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10秒間~24時間であり、より好ましくは1分間~2時間であり、更に好ましくは2分間~1時間である。処理時間が長いほど肉質改良効果を得ることができるが、製造効率の観点から1時間以下にすることが望ましい。インジェクションは、液体状の肉質改良用調味組成物を食肉塊に局在させ、かつ、定量的に注入することができれば、いかなる手段でもよく、例えば、シリンジ等の注射器や、食肉加工分野においてピックル液や調味液等の液状物を食肉に注入するのに汎用されている、インジェクターを用いて行うことができる。インジェクターの針の太さ等の形状は、ゲル状物の性質や食肉含有原料に応じて適宜選択できる。
【0018】
(4)食肉加工食品の製造方法
本発明において、食肉加工食品とは食肉類を加工した食品をいう。好ましくは、加熱調理等により加工した食品をいう。
本発明の食肉加工食品の製造方法は、上述の肉質改良用調味組成物により食肉類を処理する工程と肉質改良用調味組成物により改質された食肉類を加工する工程を含む。
本発明の食肉加工食品の製造方法で得られる食肉加工食品は特に限定されるものではなく、鶏から揚げ、竜田揚げ、フライドチキン、トンカツ、ビーフカツ、マグロフライ、鮭フライ、エビフライ、ホタテフライ、フリッター等の揚げ肉類及びノンフライ揚げ肉類;ステーキ、ローストビーフ、ローストポーク、焼き鳥、焼魚等の焼き肉類;カレー、シチュー、ポトフ等の煮込み肉類;ボーンレスハム、ベーコン、ソーセージ、スモークサーモン等の塩蔵及び/又は燻製肉類、かまぼこ、ちくわ等の練肉類;ビーフジャーキー、アジ開き等の干肉類等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果が良好に得られる観点から、揚げ肉類、焼き肉類、煮込み肉類であり、より好ましくは揚げ肉類及び焼き肉類である。
本発明の食肉加工食品の製造方法において、肉質改良用調味組成物により食肉類を処理する工程における処理方法は、「肉質改良方法」に記載した通りである。
本発明の食肉加工食品の製造方法は、さらに肉質改良用調味組成物により処理された食肉類を加工する工程を含む。加工方法としては例えば加熱調理が挙げられる。加熱調理する方法は特に制限されるものではなく、フライ(油ちょう)加熱、フライパン加熱、オーブン加熱、直火加熱、燻製加熱、スチーム加熱、スチームコンベクション加熱、過熱水蒸気加熱、煮込み加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。加熱温度は特に制限されるものではなく、製造する食肉加工食品に応じて適宜調節することができる。例えば、フライ加熱であれば160~220℃、フライパン加熱であれば170~240℃、オーブン加熱であれば70~300℃、燻製加熱であれば30~100℃、スチーム加熱であれば50~100℃、スチームコンベクション加熱であれば120~300℃、過熱水蒸気加熱であれば100~350℃、煮込み加熱であれば50~100℃である。
【0019】
(5)食肉加工食品
上述の方法により得られた食肉加工食品は、急速冷凍した後冷凍保存し、解凍してから或いは解凍することなく再加熱してもよい。例えば、鶏から揚げであれば、肉質改良用調味組成物を適用した鶏モモ肉に衣材を付着させ、熱した油浴中でフライ加熱し、粗熱を取った後に-40℃で急速凍結して冷凍鶏から揚げとし、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫で10日間保存し、解凍することなく熱した油浴中で再フライ加熱ないしは電子レンジ加熱して鶏から揚げを得ることができる。
【0020】
また、本発明において、肉質改良用調味組成物で処理した後、加熱することなく冷凍加工食肉又は冷蔵加工食肉とすることもできる。例えば、鶏から揚げであれば、肉質改良用調味組成物により処理した鶏モモ肉に衣材を付着させ、容器に収容した後、-40℃で急速凍結して冷凍未油ちょう鶏から揚げとすることができる。家庭用又は業務用冷凍冷蔵庫の冷凍庫等で保存した後、解凍あるいは未解凍の状態で熱した油浴中でフライ加熱することにより鶏から揚げを得ることができる。
【実施例0021】
<製造例1 マリネート液の製造>
1.3質量部の食塩、1.0質量部のおろし生姜、0.5質量部のグルタミン酸ナトリウム、0.3質量部のブラックペッパー粉末及び12.9質量部の飲料水をミキサーに投入し、均質になるまで混合して、16.0質量部のマリネート液を製造した。
【0022】
<製造例2 マリネート液を用いた鶏から揚げ(揚げ肉類)の製造>
(1)330gの鶏モモ肉塊を約33gの鶏モモ肉片10個に切り分けた。
(2)前記鶏モモ肉片100質量部に対し製造例1に従って得たマリネート液全量(16.0質量部)を合わせ、30分間タンブリング処理して調味済鶏モモ肉片を得た。なお、タンブリング後、タンブラー内に残存するマリネート液はほぼ存在しなかった。
(3)下味を付けた調味済鶏モモ肉片をバッター液(バッターミックス粉(パリから醤油、株式会社ニップン製)50gに水50g加えて撹拌し、調製したもの)に投入し、鶏モモ肉片にバッター液を付着させて未油ちょう鶏から揚げを得た。
(4)得られた未油ちょう鶏から揚げを175℃に予熱した油浴に投入して4分間油ちょうし、金属製の油切りバットに重ならないように並べ、油切りして鶏から揚げを得た。
【0023】
<製造例3:メジアン径の異なるおから乾燥粉末の製造>
生おからを設定温度95℃の加熱乾燥機によって加熱し、水分含量9質量%になるまで乾燥した後、気流粉砕機を用いて粉砕し、メジアン径42、60、87μmのおから乾燥粉末を得た。これらに加えて、市販品(国産おから粗挽きパウダー(粗粉末)NICHIGA社、メジアン径200μm)のおから乾燥粉末を用意し、すべてのおから乾燥粉末は恒温恒湿機で水分含量9質量%に調整した。
【0024】
<評価例1 鶏から揚げ(揚げ肉類)の肉質についての官能評価>
製造例2で得られた鶏から揚げを10名の熟練パネラーにより、下記評価表の基準に従って揚げ種である鶏肉の肉質について官能評価を行い、平均点を評価点とした。
【0025】
【0026】
【0027】
<評価例2 鶏から揚げの歩留り評価>
歩留りは、フライ前食材(調味済鶏モモ肉+バッター+おから乾燥粉末)の重量に対するフライ直後のから揚げの重量の割合を算出し、%で表した。
【0028】
<試験例1 おから乾燥粉末の配合量検討>
表1記載の質量部のメジアン径60μmのおから乾燥粉末(本発明の肉質改良剤組成物)をさらに添加した以外は製造例1に従ってマリネート液(本発明における肉質改良用調味組成物)を調製した。このマリネート液を用いた以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造し、評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した。なお、鶏から揚げの製造に当たり、おから乾燥粉末を添加したマリネート液の全量を使用した(1質量部のおから乾燥粉末を添加した場合であれば、マリネート液17質量部(マリネート液原料16質量部+おから乾燥粉末1質量部)を鶏モモ肉片100質量部に対して合わせた)。
その結果、実施例1~6では、おから乾燥粉末を添加すると、その添加量の増加に伴って揚げ種である鶏肉の柔らかさとジューシー感が良好になり、歩留りが増加した。これは、おから乾燥粉末によって油ちょうによる揚げ種中の肉汁や水分、脂肪分等の飛散や漏出が抑制され、揚げ種中に肉汁や水分、脂肪分等が保持されているためであると考えられた。なお、おから乾燥粉末3.0g以上の添加では効果が横ばいになる傾向が確認されたため、その上限を確かめなかった(実施例5~6)。
【0029】
【0030】
<試験例2 処理方法の検討>
表2記載の質量部のメジアン径60μmのおから乾燥粉末をさらに添加した以外は製造例1に従ってマリネート液を調製した。このマリネート液を用いた以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(実施例3)、メジアン径60μmのおから乾燥粉末を添加した以外は製造例1に従って得たマリネート液を鶏モモ肉片100質量部に対しインジェクションで注入した後、製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(実施例7)、メジアン径60μmのおから乾燥粉末を添加した以外は製造例1に従って得たマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせた後、タンブリング処理せずに30分間静置する浸漬処理に変更した以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(比較例1)、鶏モモ肉片100質量部に対し製造例1に従って得たマリネート液を合わせた後、メジアン径60μmのおから乾燥粉末を均一にまぶし、タンブリングはせずに製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(比較例2)、それぞれについて評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した結果を表2に示す。なお、おから乾燥粉末の添加量は、食肉100質量部に対して外配合で添加した。また、鶏から揚げの製造に当たり、おから乾燥粉末を添加したマリネート液の全量を使用した(1質量部のおから乾燥粉末を添加した場合であれば、マリネート液17質量部(マリネート液原料16質量部+おから乾燥粉末1質量部)を鶏モモ肉片100質量部に対して合わせた)。
おから乾燥粉末を添加してインジェクション処理した実施例7は、柔らかさやジューシー感、歩留りのいずれも向上し、同量のおから乾燥粉末を添加してタンブリング処理した実施例3と同等の肉質改良効果が確認された。一方で、比較例1の浸透処理や、比較例2のまぶしでは肉質及び歩留りに改良効果は確認されなかった。
これらの結果から、処理方法はマリネート液におから乾燥粉末を添加し、タンブリング又はインジェクション処理するのが好ましいことがわかった。
【0031】
【0032】
<試験例3 浸漬処理の効果確認>
製造例1に従って得たマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせた後、製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例1)、製造例1に従って得たマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせた後、タンブリング処理せずに30分間静置する浸漬処理に変更した以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例2)、表3記載の質量部の生おからをさらに添加した以外は製造例1に従って調製したマリネート液を用いた以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例3)、表3記載の質量部の生おからをさらに添加した以外は製造例1に従って調製したマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせた後、タンブリング処理に代えて30分間静置する浸漬処理に変更した以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例4)、それぞれについて評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した結果を表3に示す。なお、生おからの添加量は、食肉100質量部に対して外配合で添加した。
おからを添加しない場合のタンブリング処理と浸漬処理を比較した参考例1,2では、浸漬に比べてタンブリングはわずかに柔らかさやジューシー感が向上したが大きな差はなく、どちらの処理方法でも歩留りは向上しなかった。
参考例3、4の生おからを添加したものでも、おからを添加していないときと傾向は変わらず、タンブリング処理と浸漬処理に差は見られず、柔らかさやジューシー感に効果がなく、歩留りの増加も確認できなかった。
【0033】
【0034】
<試験例4 まぶし処理の効果確認>
製造例1に従って得たマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせ、タンブリング処理した後に、表4記載の質量部の生おからを均一にまぶした以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例5)、製造例1に従って得たマリネート液と鶏モモ肉片100質量部を合わせた後、タンブリング処理せずに30分間静置する浸漬処理後、生おからを均一にまぶした以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造したもの(参考例6)、生おからをメジアン径60μmのおから乾燥粉末に変更した以外は参考例5と同様に鶏から揚げを製造したもの(参考例7)、生おからをメジアン径60μmのおから乾燥粉末に変更した以外は参考例6と同様に鶏から揚げを製造したもの(参考例8)、それぞれについて評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した結果を表4に示す。なお、おから乾燥粉末又は生おからの添加量は、食肉100質量部に対して外配合で添加した。
タンブリング処理後に生おから又はおから乾燥粉末をまぶした参考例5及び参考例7はいずれも、参考例1よりはわずかに柔らかさやジューシー感に効果があり、歩留りもわずかに増加したが、実施例3ほどの大きな効果は確認されなかった。浸漬処理後に生おから又はおから乾燥粉末をまぶした参考例6及び参考例8はいずれも、柔らかさやジューシー感に効果が見られず、歩留りの増加も確認できなかった。これらの結果から、おから乾燥粉末又は生おからのまぶし処理では、肉質改良効果は得られないことが確認された。
【0035】
【0036】
<試験例5 澱粉分解物添加の検討>
表5記載の質量部のメジアン径60μmのおから乾燥粉末と澱粉分解物(デキストリン、三和澱粉社製、DE6~8)または、澱粉分解物(デキストリン、三和澱粉社製、DE22~26)をさらに添加した以外は製造例1に従ってマリネート液を調製した。このマリネート液を用いた以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造し、評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した。なお、鶏から揚げの製造に当たり、おから乾燥粉末と澱粉分解物を添加したマリネート液の全量を使用した(1質量部のおから乾燥粉末と1質量部の澱粉分解物を添加した場合であれば、マリネート液18質量部(マリネート液原料16質量部+おから乾燥粉末1質量部+澱粉分解物1質量部)を鶏モモ肉片100質量部に対して合わせた)。
実施例3と比較して、マリネート液にDE6~8のデキストリンを0.1質量部添加した実施例8では柔らかさ、ジューシー感、歩留りのいずれも向上し、DE6~8のデキストリンを1.0質量部添加した実施例9では更に柔らかさ、ジューシー感、歩留りのいずれも向上した。DE6~8のデキストリンの添加量1.0質量部以上では、その効果が横ばいになる傾向が確認されたため、その上限を確かめなかった(実施例9~10)。また、DE22~26のデキストリンを1.0質量部添加した実施例11では、実施例9と同等程度の柔らかさ、ジューシー感、歩留りの向上が確認できた。おから乾燥粉末を添加せず、DE6~8のデキストリンを1.0質量部添加した比較例3では、肉質の柔らかさ、ジューシー感、歩留りのいずれにも改良効果は見られなかった。この結果から、おから乾燥粉末に加えてデキストリンを0.1質量部以上添加すると、相乗的に肉質改善への効果を得ることができることが確認された。
【0037】
【0038】
<試験例6 おから乾燥粉末のメジアン径による歩留りの影響>
製造例3で得た表6記載のメジアン径のおから乾燥粉末をさらに添加した以外は製造例1に従ってマリネート液を調製した。このマリネート液を用いた以外は製造例2に従って鶏から揚げを製造し、評価例1に従って肉質を評価し、評価例2に従ってから揚げの歩留りを算出した。なお、鶏から揚げの製造に当たり、おから乾燥粉末を添加したマリネート液の全量を使用した(1質量部のおから乾燥粉末を添加した場合であれば、マリネート液17質量部(マリネート液原料16質量部+おから乾燥粉末1質量部)を鶏モモ肉片100質量部に対して合わせた)。
おから乾燥粉末のメジアン径が小さいほど肉の柔らかさとジューシー感の評価が高く、歩留りもメジアン径が小さいほど高い傾向であった(実施例3、12~14)。
おから乾燥粉末のメジアン径200μmでは、歩留りの増加はわずかであったが、おから乾燥粉末を添加しないものよりは肉質への改良効果があり、加えて衣の食感が良くなった(実施例13)。
【0039】
【0040】
<製造例4:マリネート液を用いたチキンステーキ(焼き肉類)の製造>
(1)鶏むね肉を縦15cm、横3cm、厚さ2cmの略直方体になるようにトリミングした。
(2)鶏むね肉100質量部と製造例1に従って製造したマリネート液全量をタンブラーに投入し、30分間タンブリング処理を行った。
(3)180℃に予熱した鉄板にタンブリングした鶏むね肉をのせ、鶏むね肉の内部まで火が通るように焼成し、チキンステーキを得た。
【0041】
<評価例3 チキンステーキの歩留り評価>
歩留りは、焼成前食材(調味済鶏ムネ肉+おから乾燥粉末)の重量に対する焼成直後のチキンステーキの重量の割合を算出し、%で表した。
【0042】
<試験例7 チキンステーキ(焼き肉類)の肉質に与えるおから乾燥粉末の影響>
表7記載の質量部のメジアン径60μmのおから乾燥粉末をさらに添加した以外は製造例1に従ってマリネート液を調製した。このマリネート液を用いた以外は製造例4に従ってチキンステーキを製造し、評価例1に従って肉質評価し、評価例3に従って歩留りを算出した。なお、チキンステーキの製造に当たり、おから乾燥粉末を添加したマリネート液の全量を使用した(1質量部のおから乾燥粉末を添加した場合であれば、マリネート液17質量部(マリネート液原料16質量部+おから乾燥粉末1質量部)を鶏ムネ肉片100質量部に対して合わせた)。
製造例4に従って得られたチキンステーキ(比較例2)の肉の柔らかさ、ジューシー感を3点とした。
実施例15~20では、おから乾燥粉末を添加すると、その添加量の増加に伴ってチキンステーキの柔らかさとジューシー感が良好になり、歩留りが増加した。
この結果から、肉100質量部に対して、おから乾燥粉末0.1質量部以上の添加で、チキンステーキの柔らかさとジューシー感及び歩留りが向上することが確認できた。
【0043】