(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029608
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】アンモニアガスの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20250227BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20250227BHJP
B63H 21/32 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B63H21/38 C
B63H21/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024193752
(22)【出願日】2024-11-05
(62)【分割の表示】P 2023134197の分割
【原出願日】2023-08-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発 助成事業 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 望
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴明
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA10
3G091AB05
3G091AB15
3G091CA17
(57)【要約】
【課題】貨物から揮発し又は機関の燃料の供給ラインに残留したアンモニアガスを清水に溶解させたアンモニア水を船外へ排出せず船内で有効的に処理でき、追加のアンモニア水供給タンクが不要であるアンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供すること。
【解決手段】エンジン3の燃料供給ラインに残留したアンモニアガスは、除害装置6においてアンモニア水とされる。選択式還元触媒ユニット17には、エンジン3の排ガスと、尿素水タンク8からの尿素水と、除害装置6で生成されたアンモニア水とが導入され、排ガスの脱硝処理が行われ、アンモニア水の無害化処理が行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記選択式還元触媒ユニット内には、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒が配置されており、
前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とする除害装置を備え、
前記除害装置で生成されたアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項2】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、空気供給源に繋がり前記尿素水及び/又は前記アンモニア水を拡散させる空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路とを有する3流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項3】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとからなり、
前記第1ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置され、
前記第2ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項4】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとからなり、
前記第1ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置され、
前記第2ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニットの前に前記排ガスが経る排気レシーバ内に配置され、この排気レシーバを経て、前記空気及び前記アンモニア水を前記選択式還元触媒ユニット内に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項5】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路に、前記選択式還元触媒ユニットに至る前に合流しており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水又は前記アンモニア水の何れかが供給され、
前記ノズルは、空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路及び前記アンモニア水の供給路が合流して繋がり前記尿素水又は前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項6】
前記アンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、
前記尿素水の既知の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給される尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項7】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路には、前記船舶の燃料供給装置から供給される液化アンモニアが合流されており、前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されてアンモニア水となって、前記選択式還元触媒ユニットに供給され、
前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されたアンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、算出されたモル当量に応じて、前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項8】
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を備え、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項9】
前記選択式還元触媒ユニット内には、アンモニアスリップ触媒が配置されており、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項10】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記選択式還元触媒ユニット内に、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒を設け、
除害装置により、前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とし、
前記除害装置により生成したアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項11】
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測し、計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量を算出し、
既知の前記尿素水の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給する尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節し、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項12】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路に、前記船舶の燃料供給装置から供給される液化アンモニアを合流させ、前記アンモニア水と前記液化アンモニアとを混合してアンモニア水とし、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、
前記アンモニア水と前記液化アンモニアとを混合させたアンモニア水の密度を計測し、
計測した前記アンモニア水の密度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量を算出し、算出したモル当量に応じて、前記アンモニア水の流量を調節し、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項13】
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を設け、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項14】
前記選択式還元触媒ユニット内に、アンモニアスリップ触媒を設け、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のアンモニアガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物又はエンジン燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置及び処理方法に関し、詳しくは、貨物から揮発し又は機関の燃料の供給ラインに残留したアンモニアガスを清水に溶解させたアンモニア水を船外へ排出せず船内で有効的に処理でき、追加のアンモニア水供給タンクが不要であるアンモニアガスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、エンジンから排出される排ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を浄化するための排ガス浄化装置として、尿素SCR(選択式還元)システムが知られている。
【0003】
尿素SCRシステムは、排ガス中に噴射した尿素水が排ガスの熱により加水分解されることで生成されるアンモニアガスを還元剤とし、SCR触媒の存在下でNOxをアンモニアガスと化学反応させ、窒素及び水に還元するものである。
【0004】
船舶のNOx排出規制の強化により、船舶への尿素SCRシステムの導入がされている。
【0005】
一方、近年の地球温暖化問題に伴い、船舶推進用エンジンの燃料として、液化アンモニアの利用が想定されている。液化アンモニアを燃料として利用した場合には、燃料の供給ライン内のパージや、異常時に燃焼範囲以内に収めるため、燃料供給系内を空にする必要がある。また、液化アンモニアを貯留するタンクにおいては、液化アンモニアは揮発性を有するので、自然入熱等によりボイルオフガスと呼ばれるアンモニアガスが発生する。アンモニアガスが生じるままにしておくとタンク内の圧力が上昇し設計圧力以上になってしまう。
【0006】
しかも、アンモニアガスは、可燃性及び毒性を有するので、アンモニアガスをそのまま保管することは、人体に影響を与える虞がある。そのため、アンモニアガスの毒性を除害装置によって除去する必要がある。除害装置としては、アンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とする装置が用いられている。
【0007】
また、アンモニア水は、現行の環境規制では、船外に排出することはできないため、船内で回収されるアンモニア水は、船内で処理する必要がある。
さらに、船舶は限られたスペースに種々の装置等を設置する必要があるため、少ないスペースで処理できる方法が望ましい。
【0008】
特許文献2においては、選択式還元触媒装置に燃料である液化アンモニアを供給して脱硝処理を行っている。
【0009】
特許文献3においては、燃料供給系内の残留アンモニアを回収し、回収したアンモニア水の船内処理として、回収したアンモニア水を所定の高濃度(例えば、数十%)にして、選択式還元触媒装置(SCR)に供給する。アンモニア成分は、エンジン排ガスの脱硝処理で消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-045769号公報
【特許文献2】特表2022-528443号公報
【特許文献3】特開2022-179983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献2では、燃料供給系内の残留アンモニアを回収していないので、残留アンモニアの回収における課題が提示されることはない。
【0012】
燃料供給系内の残留アンモニアを回収している特許文献3では、回収したアンモニア水によって、エンジン排ガスの脱硝処理を行っている。しかし、回収したアンモニア水では、脱硝処理には濃度が不十分となる虞があり、追加のアンモニア水の供給タンクを設けているので、その分のスペースが必要となっている。
【0013】
本発明の課題は、貨物から揮発し又は機関の燃料の供給ラインに残留したアンモニアガスを清水に溶解させたアンモニア水を船外へ排出せず船内で有効的に処理でき、追加のアンモニア水供給タンクが不要であるアンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供することにある。
【0014】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記選択式還元触媒ユニット内には、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒が配置されており、
前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とする除害装置を備え、
前記除害装置で生成されたアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
2.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、空気供給源に繋がり前記尿素水及び/又は前記アンモニア水を拡散させる空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路とを有する3流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする前記1に記載のアンモニアガスの処理装置。
3.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとからなり、
前記第1ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置され、
前記第2ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする前記1に記載のアンモニアガスの処理装置。
4.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路とは独立して、前記選択式還元触媒ユニットに至っており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水及び前記アンモニア水を同時に供給することができ、
前記ノズルは、第1ノズルと、第2ノズルとからなり、
前記第1ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路に繋がり前記尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置され、
前記第2ノズルは、前記空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記アンモニア水の供給路に繋がり前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニットの前に前記排ガスが経る排気レシーバ内に配置され、この排気レシーバを経て、前記空気及び前記アンモニア水を前記選択式還元触媒ユニット内に供給する
ことを特徴とする前記1に記載のアンモニアガスの処理装置。
5.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路は、前記尿素水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路に、前記選択式還元触媒ユニットに至る前に合流しており、
前記選択式還元触媒ユニットへは、ノズルを通して前記尿素水又は前記アンモニア水の何れかが供給され、
前記ノズルは、空気供給源に繋がり空気を供給する流路と、前記尿素水の供給路及び前記アンモニア水の供給路が合流して繋がり前記尿素水又は前記アンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルであって、前記選択式還元触媒ユニット内の上流側に配置されている
ことを特徴とする前記1に記載のアンモニアガスの処理装置。
6.
前記アンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、
前記尿素水の既知の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給される尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記1~4の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
7.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路には、前記船舶の燃料供給装置から供給される液化アンモニアが合流されており、前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されてアンモニア水となって、前記選択式還元触媒ユニットに供給され、
前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されたアンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、算出されたモル当量に応じて、前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
8.
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を備え、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
9.
前記選択式還元触媒ユニット内には、アンモニアスリップ触媒が配置されており、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする前記1~5の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
10.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記選択式還元触媒ユニット内に、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒を設け、
除害装置により、前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とし、
前記除害装置により生成したアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
11.
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測し、計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量を算出し、
既知の前記尿素水の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給する尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節し、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記10に記載のアンモニアガスの処理方法。
12.
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路に、前記船舶の燃料供給装置から供給される液化アンモニアを合流させ、前記アンモニア水と前記液化アンモニアとを混合してアンモニア水とし、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、
前記アンモニア水と前記液化アンモニアとを混合させたアンモニア水の密度を計測し、
計測した前記アンモニア水の密度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量を算出し、算出したモル当量に応じて、前記アンモニア水の流量を調節し、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記10に記載のアンモニアガスの処理方法。
13.
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を設け、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする前記10に記載のアンモニアガスの処理方法。
14.
前記選択式還元触媒ユニット内に、アンモニアスリップ触媒を設け、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする前記10に記載のアンモニアガスの処理方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貨物から揮発し又は機関の燃料の供給ラインに残留したアンモニアガスを清水に溶解させたアンモニア水を船外へ排出せず船内で有効的に処理でき、追加のアンモニア水供給タンクが不要であるアンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のアンモニアガスの処理装置が適用される船舶の燃料供給装置の構成を示すブロック図
【
図2】本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
【
図3】本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
【
図4】本発明のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第1の構造を示す概略断面図
【
図5】本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
【
図6】本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
【
図7】本発明のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第2の構造を示す概略断面図
【
図8】本発明のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第3の構造を示す概略断面図
【
図9】本発明のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第4の構造を示す概略断面図
【
図10】本発明のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第5の構造を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
本発明は、貨物又は船舶の機関の燃料として、液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置、及び、このアンモニアガスの処理装置において実行されるアンモニアガスの処理方法である。
【0019】
〔船舶の燃料供給装置の構成〕
図1は、本発明のアンモニアガスの処理装置が適用される船舶の燃料供給装置の構成を示すブロック図である。
図1においては、液体の流路を実線で示し、気体の流路を点線で示している。
【0020】
船舶の燃料供給装置は、
図1に示すように、選択式還元触媒(SCR)ユニット17を備えている。選択式還元触媒ユニット17内には、選択式還元触媒(SCR)が設置されており、選択接触還元法(SCR:Selective Catalytic Reduction)により、エンジン排ガス中のNO
Xとアンモニアガスとを反応させる脱硝処理が行われる。
【0021】
選択式還元触媒ユニット17は、船舶の機関であるエンジン3の排気ダクトに接続されており、エンジン排ガスが導入される。また、選択式還元触媒ユニット17には、尿素水タンク8に貯蔵された還元剤である尿素水が供給される。
なお、エンジン3の排気ダクトには、図示しないが、エンジン排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器(アンモニアガス濃度計)を設けてもよく、さらに、エンジン排ガスのガス流量を計測する機器(ガス流量計)を設けてもよい。
【0022】
尿素水タンク8に貯蔵された尿素水は、尿素水の供給路となる尿素水輸送管15を経て、尿素水ポンプ15aにより、選択式還元触媒ユニット17に供給される。尿素水は、高温の選択式還元触媒ユニット17内において、加水分解されて、アンモニアガスを発生させる。このアンモニアガスにより、エンジン排ガスの脱硝処理が行われる。脱硝処理された排ガスは、大気中に排気される。
【0023】
一方、この燃料供給装置においては、液化アンモニアタンク1から、燃料の供給ライン(燃料供給装置2及び燃料配管4)を経て、エンジン3に液化アンモニア燃料が供給される。エンジン3は、液化アンモニア燃料を燃焼させることによって駆動する。
【0024】
そして、この燃料供給装置においては、燃料の供給ラインから導入される液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス(残留ガス)、及び、燃料供給装置2内に残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、または、図示しない貨物用アンモニアタンクから導入されるアンモニアガス(ボイルオフガス)を、除害装置6によって除害処理する。
【0025】
燃料の供給ラインは、燃料供給装置2と燃料配管4とからなり、燃料供給装置2が有する圧縮機やポンプ、熱交換器等により、燃料配管4を経て、エンジン3に液化アンモニア燃料を供給する経路である。なお、燃料供給装置2は、不要であれば設けなくともよい。また、燃料配管4は、燃料供給装置2からエンジン3にアンモニアガスを供給する供給配管と、エンジン3から燃料供給装置2に余剰のアンモニアガスを戻す戻り配管とからなっていてもよい。燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側及び燃料配管4のエンジン3側には、図示はしないが、燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側と燃料配管4のエンジン3側との間の区間を閉鎖できる開閉弁が設けられていてもよい。
【0026】
液化アンモニアタンク1は、エンジン3等に使用される燃料であるアンモニアを備蓄する。アンモニアは、液化アンモニアタンク1の中においては液化アンモニアとして保管される。液化アンモニアの液体状態を維持するため、液化アンモニアタンク1は、内部を高圧、または低温に保持される。長期航海等により大量の液化アンモニアを船舶に搭載する場合、液化アンモニアタンク1としては、肉厚が薄く、かつ、加工しやすいフルレフ式(大気圧式)やセミレフ式(半加圧式)が主として用いられる。液化アンモニアタンク1内には、吸出しポンプ1aがあり、この吸出しポンプ1aにより、備蓄している液化アンモニアを燃料供給装置2への配管に送り出す。
【0027】
図示しない貨物用アンモニアタンクは、エンジン3等に使用される燃料ではなく、貨物としての液化アンモニアを備蓄する。液化アンモニアタンク1と同様に、貨物用アンモニアタンクの中において、液化アンモニアの液体状態を維持するため、貨物用アンモニアタンクは内部を高圧、または低温に保持される。大量の液化アンモニアを船舶に搭載する場合、貨物用アンモニアタンクとしては、肉厚が薄く、かつ、加工しやすいフルレフ式(大気圧式)やセミレフ式(半加圧式)が主として用いられる。
【0028】
エンジン3には、液化アンモニアタンク1から燃料供給装置2により、液化アンモニア燃料が供給される。また、エンジン3には、図示しない重油タンクから、パイロット燃料が供給されてもよい。パイロット燃料は、アンモニア燃料の燃焼開始時に、アンモニア燃料とともに燃焼され、燃焼室内を昇温して、アンモニア燃料を良好に燃焼させるものである。パイロット燃料は、燃焼室内が昇温してアンモニア燃料のみでの燃焼が可能な状態となったときには、供給を中止してよい。また、エンジン3が、始動時からアンモニア燃料のみでの燃焼が可能なものである場合には、パイロット燃料は不要である。
さらに、エンジン3は、液化アンモニア燃料と重油などの化石燃料との二元燃料エンジンとしてもよい。二元燃料エンジンでは、液化アンモニア燃料をメインに重油などの化石燃料を着火源として供給して運転するモードと、化石燃料のみで運転する化石燃料モードとを、選択的に切り替えることができる。
【0029】
燃料配管4には、パージガス供給弁50を経て、窒素ガス供給装置51から、窒素ガスが供給される。この窒素ガスは、燃料配管4を経て、燃料供給装置2にも供給される。この窒素ガスは、エンジン3の起動時、停止時及び緊急停止時に、燃料配管4内及び燃料供給装置2内に残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスをパージする不活性ガスである。
【0030】
燃料配管4からは、エンジン3の起動時、停止時又は緊急停止時に、気液分離器4a及びパージガス排出弁5を経て、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスが除害装置6に導入される。また、燃料供給装置2からも、エンジン3の起動時、停止時又は緊急停止時及びメンテナンス時などに、開閉弁2aを経て、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスが除害装置6に導入される。なお、燃料供給装置2内には、ポンプなどとともに、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスの排出口に気液分離器が設けられている。
なお、燃料配管4及び燃料供給装置2から除害装置6に導入されるガスは、アンモニアガス及びパージガスである例えば窒素などとの混合気体である。本実施形態における処理は、混合気体中のアンモニア成分に対して行うことになる。
アンモニアガスが除害装置6に導入されるとき、燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側と燃料配管4のエンジン3側との間の区間は、開閉弁によって閉鎖される。また、貨物用アンモニアタンクからも、アンモニアガス(ボイルオフガス)が除害装置6に導入される。なお、パージのための窒素ガスは、除害装置6を経て、大気中に放出される。
【0031】
除害装置6には、例えば、船内の造水器によって生成され、清水タンク22に貯蔵された清水が、給水ポンプ22aにより、導入される。ここで、清水とは、不純物及び添加剤を極力含まない、例えば、蒸留水、イオン交換水、濾過水などである。
【0032】
除害装置6は、水封タンクやスクラバ槽を有して構成されている。除害装置6に導入されたアンモニアガス及び窒素との混合気体は、水封タンクやスクラバ槽に導入される。
【0033】
水封タンクやスクラバ槽では、導入されたアンモニアガス及び窒素との混合気体を、清水中に通し、または、清水を上方から噴霧して、アンモニア成分を清水に溶解させて、アンモニア水が生成される。パージのための窒素ガスは、除害装置6から大気中に放出される。
【0034】
除害装置6としては、水封タンクやスクラバ槽を用いることが好ましい。
【0035】
水封タンクを用いる場合には、アンモニアガスは、水封タンクの下部から導入され、水封タンクに貯留された清水に吸収され、アンモニア水となる。
また、スクラバ槽を用いる場合には、アンモニアガスは、スクラバ槽の下部から導入され、スクラバ槽の上部から噴霧される清水と接触することにより、清水に吸収され、アンモニア水となる。
【0036】
さらに好ましくは、水封タンク及びスクラバ槽を併設し、水封タンクで生成されたアンモニア水から再び揮発したアンモニアガス、及び、水封タンクで吸収しきれなかったアンモニアガスを、スクラバ槽の下部に導入する。スクラバ槽では、スクラバ槽内に溜まったアンモニア水を再びスクラバ槽の上部から噴霧させ、循環させることにより、スクラバ槽内のアンモニア水から再び揮発したアンモニアガス、及び、吸収しきれなかったアンモニアガスをさらに吸収することが好ましい。水封タンク及びスクラバ槽を併設することにより、アンモニアガスを確実に吸収することができ、アンモニアガスの船外放出を確実に防止することができる。
【0037】
なお、除害装置6として水封タンクのみを用いる場合であっても、アンモニア水から揮発したアンモニアガス、及び、清水が吸収しきれなかったアンモニアガスを、再び水封タンクの下部に導入するような、循環機構を備えることで、アンモニアガスを確実に吸収することができ、アンモニアガスの船外放出を確実に防止することができる。
また、除害装置6としてスクラバ槽のみを用いる場合であっても、アンモニア水から揮発したアンモニアガス、及び、清水が吸収しきれなかったアンモニアガスをさらに吸収するため、スクラバ槽内に溜まったアンモニア水を再びスクラバ槽の上部から噴霧させるような、循環機構を備えることで、アンモニアガスを確実に吸収することができ、アンモニアガスの船外放出を確実に防止することができる。
【0038】
除害装置6からの排水(アンモニア水)は、重力によって、アンモニア水タンク7に送られ、アンモニア水タンク7によって一次保管される。なお、アンモニア水タンク7は、密閉式の加圧タンクとして、収容したアンモニア水からアンモニアガスが揮発しないようにすることが好ましい。アンモニア水タンク7が密閉式の加圧タンクではない場合には、収容したアンモニア水から揮発するアンモニアガスは、除害装置6(水封タンク及び/又はスクラバ槽)に戻すことが好ましい。
【0039】
アンモニア水タンク7に一次保管されたアンモニア水は、選択式還元触媒ユニット17で脱硝処理を行うことによって無害化処理される。アンモニア水タンク7に保管されたアンモニア水は、アンモニア水の供給路となるアンモニア水輸送管18を経て、アンモニア水ポンプ18aにより、選択式還元触媒ユニット17に供給可能である。アンモニア水は、高温の選択式還元触媒ユニット17内において、アンモニアガスを発生させ、このアンモニアガスがエンジン排ガス中のNOXと反応することにより、無害化される。または、選択式還元触媒ユニット17内で発生したアンモニアガスは、選択式還元触媒ユニット17内に設置されたアンモニアスリップ触媒(ASC)によって無害化される。
なお、選択式還元触媒ユニット17における脱硝処理は、液化アンモニア燃料をメインとする運転モードと、化石燃料モードとの何れにおいても行われる。
【0040】
アンモニア水タンク7から選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給経路、及び、尿素水タンク8から選択式還元触媒ユニット17への尿素水の供給経路については、後述する各実施形態において説明する。
また、選択式還元触媒ユニット17の構造、選択式還元触媒ユニット17に尿素水及びアンモニア水を供給するノズルの構造についても、後述する。
【0041】
〔第1の実施形態〕
図2は、本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置において実行される。
【0042】
本実施形態のアンモニアガスの処理装置では、尿素水タンク8に保管された尿素水は、LIT8a(以下、「液面計8a」という。)によって液面位置を計測され、尿素水ポンプ15aによって、尿素水タンク8から、尿素水輸送管15に送出される。
【0043】
尿素水タンク8から送出された尿素水は、尿素水輸送管15に設けられた第1開閉弁16、尿素水流量調整弁19及びFT20(以下、「尿素水流量計20」という。)を経て、選択式還元触媒ユニット17に供給可能である。尿素水流量調整弁19は、尿素水流量計20の計測結果に応じて操作される。
【0044】
尿素水輸送管15は、尿素水ポンプ15aと尿素水流量調整弁19との間で分岐しており、分岐管は、尿素水循環弁21を介して、尿素水タンク8に戻る。尿素水循環弁21は、背圧弁(レギュレータ)である。尿素水循環弁21は、尿素水輸送管15内の圧力が所定の圧力を上回ったときに開き、尿素水輸送管15内の圧力を所定の圧力以下に制限する。なお、尿素水循環弁21は、減圧弁としてもよい。
【0045】
尿素水輸送管15は、選択式還元触媒ユニット17に至る前に、アンモニア水の供給路となるアンモニア水輸送管18に合流される。尿素水輸送管15とアンモニア水輸送管18とが合流した後の配管は、尿素水又はアンモニア水輸送管28となる。
【0046】
アンモニア水タンク7に保管されたアンモニア水は、LIT7a(以下、「液面計7a」という。)によって液面位置を計測され、アンモニア水ポンプ18aによって、アンモニア水タンク7からアンモニア水輸送管18に送出される。
【0047】
アンモニア水タンク7から送出されたアンモニア水は、アンモニア水輸送管18に設けられた第2開閉弁9、アンモニア水の密度を計測する計器であるFD10(以下、「流量・密度計10」という。)、FT11(以下、「アンモニア水流量計11」という。)及び第3開閉弁12を経て、選択式還元触媒ユニット17に供給される。流量・密度計10は、コリオリ式流量計であって、アンモニア水の流量及び密度を計測することができる。
【0048】
アンモニア水輸送管18は、流量・密度計10とアンモニア水流量計11との間で分岐しており、分岐管は、アンモニア水循環弁14を介して、アンモニア水タンク7に戻る。アンモニア水循環弁14は、背圧弁(レギュレータ)である。アンモニア水循環弁14は、アンモニア水輸送管18内の圧力が所定の圧力を上回ったときに開き、アンモニア水輸送管18内の圧力を所定の圧力以下に制限する。なお、アンモニア水循環弁14は、減圧弁としてもよい。
【0049】
アンモニア水輸送管18は、選択式還元触媒ユニット17に至る前に、尿素水輸送管15に合流される。尿素水輸送管15とアンモニア水輸送管18とが合流した後の配管は、尿素水又はアンモニア水輸送管28となる。
【0050】
尿素水又はアンモニア水輸送管28には、空気供給源25から、尿素水又はアンモニア水とともに選択式還元触媒ユニット17内に供給される空気が供給される。尿素水又はアンモニア水輸送管28内の圧力は、PT24(以下、「圧力計24」という。)によって計測される。選択式還元触媒ユニット17内の温度は、TT26(以下、「温度計26」という。)によって計測される。
なお、アンモニア水循環弁14及び尿素水循環弁21は、圧力計24の計測結果に応じて操作される流量調整弁としてもよい。また、尿素水及びアンモニア水の流量調整は、エンジン3の負荷に応じて、インバーターを用いてポンプの回転数を調整することによって行ってもよい。
【0051】
選択式還元触媒ユニット17内には、空気及び尿素水、又は、空気及びアンモニア水は、ノズル13を通して供給される。選択式還元触媒ユニット17の構造及びノズル13の形状については後述する。
【0052】
なお、除害装置6、アンモニア水タンク7及び尿素水タンク8は、船舶の機関室外に設置され、選択式還元触媒ユニット17は、船舶の機関室内に設置される。
【0053】
本実施形態においては、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、選択式還元触媒ユニット17に尿素水を供給して脱硝処理を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、選択式還元触媒ユニット17にアンモニア水を供給してアンモニア水の無害化処理を行う。アンモニア水の無害化処理においては、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の全量が脱硝処理される必要はない。
【0054】
選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給にあたっては、流量・密度計10により計測されるアンモニア水の密度からアンモニア水の濃度を算出し、この濃度に応じてアンモニア水ポンプ18aの出力を調整する。これにより、選択式還元触媒ユニット17に供給されるアンモニア水の濃度管理が可能で、選択式還元触媒ユニット17において、供給したアンモニア水の全量が無害化処理されるようにすることができる。
【0055】
このアンモニアガスの処理装置における尿素水及び/又はアンモニア水の供給は、例えば以下のように行われる。
【0056】
(1)3次規制(Tier 3)海域における供給
本実施形態のアンモニアガスの処理装置においては、3次規制(Tier 3)の海域においては、エンジン3が起動しており、温度計26により計測される選択式還元触媒ユニット17内の温度が十分に高ければ、選択式還元触媒ユニット17に還元剤を供給して、脱硝処理を行う。
還元剤としては、除害装置6により生成されたアンモニア水が貯蔵されていれば、このアンモニア水を供給し、このアンモニア水では不足する場合に、尿素水を供給することが好ましい。アンモニア水の処理を優先して行うことで、尿素水の消費量を削減することができる。また、尿素水タンクの容量を小さくすることも可能となる。
【0057】
アンモニア水の供給量の調整は、アンモニア水輸送管18内のアンモニア水の密度を流量・密度計10により計測してアンモニア水濃度に換算し、このアンモニア水濃度に応じて、第3開閉弁12を操作することにより行う。
なお、供給されるアンモニア水の濃度及び流量と、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の処理量と関係は、予め把握されている。
【0058】
アンモニア水タンク7におけるアンモニア水の水位が低レベル(L)以上となっていれば、アンモニア水ポンプ18aを起動させ、第2開閉弁9及び第3開閉弁12を開け、アンモニア水を供給させる。
【0059】
選択式還元触媒ユニット17に供給するアンモニア水の供給量は、アンモニア水のモル当量から換算した、選択式還元触媒ユニット17での脱硝処理に必要十分な供給量となるように、アンモニア水の流量を調整する。
なお、液化アンモニア燃料をメインとする運転モードにおいては、エンジン排ガス中のリークアンモニア(漏洩アンモニア)が選択式還元触媒ユニット17に入るので、アンモニア水の供給量は、リークアンモニア分を差し引いた量とする。
この場合には、エンジン排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器(アンモニアガス濃度計)を備えることが好ましい。すなわち、エンジン3の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と、機器により計測されたリークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出する。負荷情報とは、エンジン3の出力と排ガス流量との関係であり、予め求めておく。この負荷情報に基づいて、エンジン3の出力から排ガス流量を算出する。なお、負荷情報は、運転モードが液化アンモニア燃料をメインとする運転モードか化石燃料モードか、航行海域が3次規制(Tier 3)か2次規制(Tier 2)か、によって変わるので、それぞれの場合について求めておく。
または、さらにエンジン3の排ガス流量を計測する計器(ガス流量計)を設け、機器により計測された排ガス流量と、リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出してもよい。
尿素水及びアンモニア水を同時供給する場合には、アンモニア水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量から、リークアンモニア量を差し引き、このアンモニア量がアンモニア水により供給されるように、アンモニア水の流量を調節する。そして、選択式還元触媒ユニット17における排ガスの脱硝処理に必要十分なアンモニア量に対する不足分を、尿素水により供給するアンモニアで補う。なお、尿素水によるアンモニアの供給とは、尿素水が選択式還元触媒ユニット17内で排ガスの熱により加水分解されてアンモニアを生成することをいう。
すなわち、尿素水及びアンモニア水を同時供給する場合には、尿素水及びアンモニア水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量と、リークアンモニア量との合算量が、選択式還元触媒ユニット17で処理されるアンモニア量となるように、アンモニア水の流量を調節して、無害化処理として、排ガスの脱硝処理を行う。
尿素水のみを供給する場合には、尿素水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量から、リークアンモニア量を差し引き、このアンモニア量が尿素水により供給されるように、尿素水の流量を調節する。この流量調節により、選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量を、排ガスの脱硝処理に必要十分なアンモニア量にする。
すなわち、尿素水のみを供給する場合には、尿素水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量と、リークアンモニア量との合算量が、選択式還元触媒ユニット17で処理されるアンモニア量となるように、尿素水の流量を調節して、排ガスの脱硝処理を行う。
なお、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の量を計測して、この計測結果に応じて、アンモニア水の流量を調整するようにしてもよい。
【0060】
アンモニア水タンク7におけるアンモニア水の水位が最低レベル(LL)未満となったならば、アンモニア水ポンプ18aを停止させ、アンモニア水の供給を停止させる。
【0061】
この実施形態において、尿素水を供給する場合には、アンモニア水ポンプ18aを停止させ、尿素水ポンプ15aを起動させ、第1開閉弁16を開け、尿素水の供給を開始させ、供給する尿素水の供給量が、尿素水のモル当量から換算した、選択式還元触媒ユニット17での脱硝処理に必要十分な供給量になるように、尿素水の流量を調整する。
【0062】
尿素水の濃度は既知であるので、この濃度により、供給する尿素水のモル当量を算出することができる。つまり、尿素水輸送管15内の尿素水のモル当量に応じて、尿素水流量計20により尿素水輸送管15内の尿素水の流量を計測しつつ、尿素水流量調整弁19を調整することにより、供給する尿素水の供給量を調整することができる。
なお、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の量を計測して、この計測結果に応じて、尿素水流量調整弁19を調整するようにしてもよい。
【0063】
(2)2次規制(Tier 2)海域における供給
2次規制(Tier 2)の海域においては、アンモニア水のみを供給して、無害化処理又は脱硝処理を行う。すなわち、2次規制(Tier 2)の海域においては、尿素水ポンプ15aは停止されており、尿素水の供給は停止している。
【0064】
アンモニア水タンク7におけるアンモニア水の水位が低レベル(L)以上となっていれば、アンモニア水ポンプ18aを起動させ、第2開閉弁9及び第3開閉弁12を開け、アンモニア水を供給させる。
【0065】
選択式還元触媒ユニット17に供給するアンモニア水の供給量は、アンモニア水のモル当量から換算した、選択式還元触媒ユニット17での脱硝処理に必要な供給量以下となるように、アンモニア水の流量を調整する。
なお、液化アンモニア燃料をメインとする運転モードにおいては、エンジン排ガス中のリークアンモニア(漏洩アンモニア)が選択式還元触媒ユニット17に入るので、アンモニア水の供給量は、リークアンモニア分を差し引いた量とする。
この場合には、エンジン排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器(アンモニアガス濃度計)を備えることが好ましい。すなわち、エンジン3の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と、機器により計測されたリークアンをモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出する。または、さらにエンジン3の排ガス流量を計測する計器(ガス流量計)を設け、機器により計測された排ガス流量と、リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出してもよい。
2次規制(Tier 2)海域では、アンモニア水のみを供給するので、アンモニア水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量から、リークアンモニア量を差し引き、このアンモニア量がアンモニア水により供給されるように、アンモニア水の流量を調節する。この流量調節により、選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量を、選択式還元触媒ユニット17の脱硝処理能力以内のアンモニア量にする。
すなわち、アンモニア水により選択式還元触媒ユニット17内に供給されるアンモニア量と、リークアンモニア量との合算量が、選択式還元触媒ユニット17で処理されるアンモニア量となるように、アンモニア水の流量を調節して、無害化処理として、排ガスの脱硝処理を行う。
【0066】
また、後述するアンモニアスリップ触媒(ASC)17cを併用する場合には、選択式還元触媒ユニット17に供給されるアンモニア水の供給量が、アンモニア水のモル当量から換算した、アンモニアスリップ触媒(ASC)17cの処理能力以下の供給量となるように、アンモニア水の流量を調整する。
【0067】
アンモニア水の供給量の調整は、上述したように、流量・密度計10により計測されるアンモニア水輸送管18内のアンモニア水の密度をアンモニア水濃度に換算し、流量・密度計10によりアンモニア水輸送管18内を流れるアンモニア水流量を計測しつつ、アンモニア水濃度に応じて、第3開閉弁12を操作することにより行う。なお、供給されるアンモニア水の濃度及び流量と、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の処理量と関係は、予め把握されている。
【0068】
アンモニア水タンク7におけるアンモニア水の水位が最低レベル(LL)未満となったならば、アンモニア水ポンプ18aを停止させ、アンモニア水の供給を停止させる。
【0069】
〔第2の実施形態〕
図3は、本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置において実行される。
【0070】
本実施形態は、
図3に示すように、第1の実施形態(
図2)において、除害装置6から送られたアンモニア水に、追加の液化アンモニアを混合させる混合器29及びアンモニア水の密度を計測する計器であるFD10b(以下、「第2の流量・密度計10b」という。)を設けたものである。第2の流量・密度計10bは、コリオリ式流量計であって、追加の液化アンモニアが混合された後のアンモニア水の流量及び密度を計測することができる。
【0071】
このアンモニアガスの処理装置では、アンモニア水輸送管18の第3開閉弁12の下流位置において、燃料供給装置2から供給された液化アンモニアが、アンモニア水に合流する。液化アンモニアは、燃料供給装置2から、液化アンモニア背圧弁(レギュレータ)31及び液化アンモニア流量計32を経て、アンモニア水輸送管18に供給される。
【0072】
混合器29は、液化アンモニアが合流したアンモニア水が送られ、これら液化アンモニア及びアンモニア水を混合させて、アンモニア水とする。混合器29には、アンモニア水輸送管18を外側から冷却する冷却水が供給され、冷却することによって混合が良好に行われるようにしている。混合器29を経たアンモニア水が送られるアンモニア水輸送管18は、第2の流量・密度計10b及び逆止弁30を経て、尿素水輸送管15に合流する。尿素水輸送管15とアンモニア水輸送管18とが合流した後の配管は、尿素水又はアンモニア水輸送管28となる。
【0073】
尿素水輸送管15に設けられた尿素水流量計20の下流には、逆止弁33を設けている。
【0074】
本実施形態においては、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、選択式還元触媒ユニット17に尿素水、又は、アンモニア水を供給して脱硝処理を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、選択式還元触媒ユニット17にアンモニア水を供給してアンモニア水の無害化処理を行う。アンモニア水の無害化処理においては、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の全量が脱硝処理される必要はない。
【0075】
脱硝処理において、アンモニア水の濃度及び/又は流量が不足するときには、燃料供給装置2からの液化アンモニア送出圧力を上げて、液化アンモニア背圧弁31及び液化アンモニア流量計32を経て、液化アンモニアをアンモニア水に合流させる。液化アンモニアの供給量は、液化アンモニア流量計32により液化アンモニアの流量を計測し、流量・密度計10及び第2の流量・密度計10bにより、混合器29の上流及び下流のアンモニア水の流量及び密度を計測しつつ、燃料供給装置2からの液化アンモニア送出圧力を調整し、液化アンモニア背圧弁31の通過流量を調節することによって調整する。液化アンモニアが混合されることにより、選択式還元触媒ユニット17に供給されるアンモニア水が、脱硝処理を行うに必要十分な濃度となる。
この場合には、尿素水の消費量を削減することができる。
【0076】
このアンモニアガスの処理装置における尿素水及び/又はアンモニア水の供給は、例えば以下のように行われる。
【0077】
(1)3次規制(Tier 3)海域における供給
本実施形態のアンモニアガスの処理装置において、3次規制(Tier 3)の海域における還元剤の供給は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
ただし、本実施形態では、除害装置6により生成されたアンモニア水の濃度が不十分であるときには、混合器29により、追加の液化アンモニアを混合させる。
本実施形態では、還元剤としては、除害装置6により生成されたアンモニア水が貯蔵されていれば、このアンモニア水を供給し、このアンモニア水では不足する場合に、液化アンモニアを追加するか、または、尿素水を供給することが好ましい。アンモニア水の処理を優先して行うことで、尿素水の消費量を削減することができる。また、尿素水タンクの容量を小さくすることも可能となる。
【0078】
追加の液化アンモニアが混合されたアンモニア水の密度は、第2の流量・密度計10bにより計測する。
すなわち、アンモニア水の供給量の調整は、流量・密度計10により計測されるアンモニア水輸送管18内のアンモニア水の密度から追加すべき液化アンモニアの量を算出し、追加した後のアンモニア水輸送管18内のアンモニア水の密度を第2の流量・密度計10bにより計測してアンモニア水濃度に換算し、このアンモニア水濃度に応じて、第3開閉弁12を操作することにより行う。
【0079】
本実施形態において、3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水を供給する場合には、尿素水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
【0080】
(2)2次規制(Tier 2)海域における供給
本実施形態において、2次規制(Tier 2)の海域においては、アンモニア水のみを供給し、アンモニア水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
この場合には、液化アンモニアの追加は行わないので、選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様に、流量・密度計10により計測されるアンモニア水の密度からアンモニア水の濃度を算出し、この濃度に応じてアンモニア水ポンプ18aの出力を調整することにより行うことができる。
【0081】
〔ノズル及び選択式還元触媒ユニットの構造(1)〕
図4は、第1の実施形態(
図2)及び第2の実施形態(
図3)のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第1の構造を示す概略断面図である。
【0082】
選択式還元触媒ユニット17には、
図4に示すように、エンジン3の燃焼室3aから、排気レシーバ27を経て、エンジン3の排ガスが導入される。排気レシーバ27を経た排ガスは、過給機52のタービンを回転させて、大気中に排気される。過給機52のタービンによって圧縮された吸気は、燃焼室3aに供給される。選択式還元触媒ユニット17内には、上流側(導入側)と下流側(排気側)の2段の選択式還元触媒(SCR)17a、17bが配置されている。選択式還元触媒を多段にすることにより、各触媒の役割を分けることが容易になり、また、選択式還元触媒ユニット17を大型化することなく、十分な反応面積が確保できる。なお、選択式還元触媒は、多段にしなくともよい。
【0083】
選択式還元触媒ユニット17内に、空気とともに、尿素水又はアンモニア水を供給するノズル13は、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、尿素水又はアンモニア水輸送管28に繋がり尿素水又はアンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
【0084】
このノズル13は、空気を供給する流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給するとともに、尿素水又はアンモニア水を噴霧する流路を経て、尿素水又はアンモニア水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
【0085】
このノズル13においては、アンモニア水も尿素水も、選択式還元触媒ユニット17の中心軸上から噴霧できるので、均一に拡散させることができる。また、このノズル13は、選択式還元触媒ユニット17内での配置が1本(1ポート)で済むので、構造が簡素である。
【0086】
〔第3の実施形態〕
図5は、本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置において実行される。
【0087】
本実施形態は、
図5に示すように、第1の実施形態(
図2)において、尿素水輸送管15とアンモニア水輸送管18とを合流させず、それぞれを独立してノズル13に接続することとしたものである。
【0088】
このアンモニアガスの処理装置では、尿素水流量調整弁19は、尿素水流量計20及び流量・密度計10の計測結果に応じて操作される。供給される尿素水のモル当量とアンモニア水のモル当量との合計を、尿素水のみを供給する場合のモル当量に等しくするためである。尿素水のみを供給する場合のモル当量は、選択式還元触媒ユニット17における脱硝処理に必要十分なモル当量である。
【0089】
本実施形態においては、圧力計24は、尿素水輸送管15内の圧力を計測する。アンモニア水輸送管18内の圧力は、PT23(以下、「アンモニア水圧力計23」という。)によって計測される。
【0090】
空気供給源25は、尿素水とともに選択式還元触媒ユニット17内に供給される空気を尿素水輸送管15に供給し、アンモニア水とともに選択式還元触媒ユニット17内に供給される空気をアンモニア水輸送管18に供給する。
なお、空気供給源25は、尿素水輸送管15及びアンモニア水輸送管18ではなく、1本の配管によって直接ノズル13に空気を供給するようにしてもよい。後述する第4の実施形態(
図6)においても同様である。
【0091】
本実施形態においては、尿素水とアンモニア水とを同時に供給して同時噴霧することが可能である。本実施形態においては、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、選択式還元触媒ユニット17に尿素水及び/又はアンモニア水を供給して脱硝処理を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、選択式還元触媒ユニット17にアンモニア水を供給してアンモニア水の無害化処理を行う。アンモニア水の無害化処理においては、エンジン排ガス中の窒素酸化物(NOx)の全量が脱硝処理される必要はない。
【0092】
選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給にあたっては、流量・密度計10により計測されるアンモニア水の密度からアンモニア水の濃度を算出し、この濃度に応じてアンモニア水ポンプ18aの出力を調整することにより、選択式還元触媒ユニット17に供給されるアンモニア水の濃度管理が可能で、選択式還元触媒ユニット17において、供給したアンモニア水の全量が無害化処理されるようにすることができる。
【0093】
このアンモニアガスの処理装置における尿素水及び/又はアンモニア水の供給は、例えば以下のように行われる。
【0094】
(1)3次規制(Tier 3)海域における供給
本実施形態のアンモニアガスの処理装置においては、3次規制(Tier 3)海域において、尿素水及びアンモニア水を同時供給して、脱硝処理を行うことができる。
本実施形態では、還元剤としては、除害装置6により生成されたアンモニア水が貯蔵されていれば、このアンモニア水を供給し、このアンモニア水では不足する場合に、尿素水を同時供給することが好ましい。アンモニア水の処理を優先して行うことで、尿素水の消費量を削減することができる。また、尿素水タンクの容量を小さくすることも可能となる。
【0095】
本実施形態では、尿素水ポンプ15a及びアンモニア水ポンプ18aを起動させ、尿素水及びアンモニア水を同時供給させる。選択式還元触媒ユニット17に供給される尿素水及びアンモニア水の合計の供給量は、尿素水及びアンモニア水の合計のモル当量から換算した、選択式還元触媒ユニット17での脱硝処理に必要十分な供給量となるように、尿素水及びアンモニア水の流量を調整する。
選択式還元触媒ユニット17での脱硝処理に必要十分な尿素水及びアンモニア水の合計のモル当量は、尿素水のみを選択式還元触媒ユニット17に供給する場合に供給すべき尿素水のモル当量に等しい。
【0096】
なお、供給される尿素水及びアンモニア水の合計の供給量は、尿素水及びアンモニア水の何れかの供給量が0(供給なし)であってもよい。尿素水及びアンモニア水を同時噴霧しない場合には、尿素水及びアンモニア水の何れかの供給量を0(供給なし)にする。
【0097】
アンモニア水の供給量を0(供給なし)にするときには、アンモニア水ポンプ18aを停止させ、尿素水のみを供給し、この場合には、尿素水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
尿素水の供給量を0(供給なし)にするときには、尿素水ポンプ15aを停止させ、アンモニア水のみを供給し、この場合には、アンモニア水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
【0098】
(2)2次規制(Tier 2)海域における供給
本実施形態において、2次規制(Tier 2)の海域においては、アンモニア水のみを供給し、アンモニア水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
【0099】
〔第4の実施形態〕
図6は、本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置において実行される。
【0100】
本実施形態は、
図6に示すように、第3の実施形態(
図5)において、除害装置6から送られたアンモニア水に、第2の実施形態(
図3)と同様に、追加の液化アンモニアを混合させる混合器29及び第2の流量・密度計10bを設けたものである。第2の流量・密度計10bは、コリオリ式流量計であって、追加の液化アンモニアが混合された後のアンモニア水の流量及び密度を計測することができる。
【0101】
このアンモニアガスの処理装置では、アンモニア水輸送管18の第3開閉弁12の下流位置に、燃料供給装置2から、液化アンモニアが供給されてアンモニア水に合流する。液化アンモニアは、燃料供給装置2から、液化アンモニア背圧弁(レギュレータ)31及び液化アンモニア流量計32を経て、アンモニア水輸送管18に供給される。
【0102】
混合器29は、液化アンモニアが合流したアンモニア水が送られ、これら液化アンモニア及びアンモニア水を混合させて、アンモニア水とする。混合器29には、アンモニア水輸送管18を外側から冷却する冷却水が供給される。混合器29を経たアンモニア水は、逆止弁30を経て、ノズル13に送られる。
尿素水輸送管15に設けられた尿素水流量計20の下流には、逆止弁33を設けている。
【0103】
本実施形態においては、尿素水とアンモニア水との同時噴霧が可能である。本実施形態においては、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、選択式還元触媒ユニット17に尿素水及び/又はアンモニア水を供給して脱硝処理を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、選択式還元触媒ユニット17にアンモニア水を供給してアンモニア水の無害化処理又は脱硝処理を行う。
【0104】
脱硝処理において、アンモニア水の濃度及び/又は流量が不足するときには、燃料供給装置2からの液化アンモニア送出圧力を上げて、液化アンモニア背圧弁31及び液化アンモニア流量計32を経て、液化アンモニアをアンモニア水に合流させる。液化アンモニアの供給量は、液化アンモニア流量計32により液化アンモニアの流量を計測し、流量・密度計10によりアンモニア水の流量及び密度を計測しつつ、燃料供給装置2からの液化アンモニア送出圧力を調整し、液化アンモニア背圧弁31の通過流量を調節することによって調整する。液化アンモニアが混合されることにより、選択式還元触媒ユニット17に供給されるアンモニア水が、脱硝処理を行うに必要十分な濃度となる。
この場合には、尿素水の消費量を削減することができる。
【0105】
このアンモニアガスの処理装置における尿素水及び/又はアンモニア水の供給は、例えば以下のように行われる。
【0106】
(1)3次規制(Tier 3)海域における供給
本実施形態において、3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水及びアンモニア水を同時供給する場合には、尿素水及びアンモニア水の供給量の調整は、第3の実施形態(
図5)と同様である。
ただし、選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給量の調整は、流量・密度計10ではなく、第2の流量・密度計10bにより計測されるアンモニア水の密度からアンモニア水の濃度を算出し、この濃度に応じてアンモニア水ポンプ18aの出力を調整することにより行う。液化アンモニアが追加される場合があるからである。
【0107】
本実施形態では、還元剤としては、除害装置6により生成されたアンモニア水が貯蔵されていれば、このアンモニア水を供給し、このアンモニア水では不足する場合に、液化アンモニアの追加及び/又は尿素水の同時供給をすることが好ましい。アンモニア水の処理を優先して行うことで、尿素水の消費量を削減することができる。また、尿素水タンクの容量を小さくすることも可能となる。
【0108】
本実施形態において、3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水のみを供給する場合には、尿素水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様である。
本実施形態において、3次規制(Tier 3)の海域において、アンモニア水のみを供給する場合には、アンモニア水の供給量の調整は、第2の実施形態(
図3)と同様である。液化アンモニアが追加される場合があるからである。
【0109】
(2)2次規制(Tier 2)海域における供給
本実施形態において、2次規制(Tier 2)の海域においては、アンモニア水のみを供給し、アンモニア水の供給量の調整は、第2の実施形態(
図3)と同様である。
この場合には、液化アンモニアの追加は行わないので、選択式還元触媒ユニット17へのアンモニア水の供給量の調整は、第1の実施形態(
図2)と同様に、流量・密度計10により計測されるアンモニア水の密度からアンモニア水の濃度を算出し、この濃度に応じてアンモニア水ポンプ18aの出力を調整することにより行うことができる。
【0110】
〔ノズル及び選択式還元触媒ユニットの構造(2)〕
図7は、第3の実施形態(
図5)及び第4の実施形態(
図6)のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第2の構造を示す概略断面図である。
【0111】
ノズル13としては、
図7に示すように、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、アンモニア水輸送管18に繋がりアンモニア水を供給する流路と、尿素水輸送管15に繋がり尿素水を供給する流路との3つの流路を有する3流体ノズルとすることができる。この構造例では、空気を供給する流路は、アンモニア水の拡散と、尿素水の拡散とに共用される。
【0112】
このノズル13は、空気用の流路を経て、拡散用の空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、アンモニア水用の流路を経て、アンモニア水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧し、尿素水用の流路を経て、尿素水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
【0113】
このノズル13においては、アンモニア水も尿素水も、選択式還元触媒ユニット17の中心軸上から噴霧できるので、均一に拡散させることができる。また、このノズル13は、選択式還元触媒ユニット17内での配置が1本(1ポート)で済むので、構造が簡素である。
【0114】
このノズル13では、尿素水とアンモニア水とをそれぞれ専用の流路を経て噴霧するので、アンモニア水を噴霧すべき量と、尿素水を噴霧すべき量とに大きな差があっても、対応することができる。
【0115】
このノズル13を用いた選択式還元触媒ユニット17では、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水及び/又はアンモニア水の噴霧を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、アンモニア水の噴霧を行う。
3次規制(Tier 3)の海域でアンモニア水の噴霧を行う場合には、脱硝処理に必要十分な量のアンモニア成分を確保するため、アンモニア水の濃度管理を行う必要がある。
【0116】
このノズル13においては、尿素水用の流路を大流量の流路とし、アンモニア水用の流路を小流量の流路とすることができる。空気の流量は、尿素水を噴霧するモードか、アンモニア水を噴霧するモードかを示す信号によって、流量計付き調節弁により、調節する。
このノズル13を用いることにより、2次規制(Tier 2)の海域において、アンモニア水を処理するだけの小流量モードを実行することができる。この場合には、尿素水とアンモニア水との同時噴霧はしない。
【0117】
以上説明したノズル13の構造例では、アンモニア水の拡散と尿素水の拡散とで、空気を供給する流路を共用していたが、これに限定されず、アンモニア水を拡散させる空気を供給する流路と、尿素水を拡散させる空気を供給する流路とを、各々に設けてもよい。
【0118】
すなわち、ノズル13としては、尿素水輸送管15に繋がり尿素水を噴霧する流路と、アンモニア水輸送管18に繋がりアンモニア水を噴霧する流路と、空気供給源25に繋がり尿素水を拡散させる空気を供給する開口部を有する流路と、空気供給源25に繋がりアンモニア水を拡散させる空気を供給する開口部を有する流路との4つの流路を有する3流体ノズルとすることもできる。
【0119】
このノズル13は、アンモニア水拡散用空気の流路及びアンモニア水用の流路を経て、アンモニア水拡散用空気及びアンモニア水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、尿素水拡散用空気の流路及び尿素水用の流路を経て、尿素水拡散用空気及び尿素水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
【0120】
このノズル13を用いることにより、アンモニア水拡散用空気及びアンモニア水の供給量と、尿素水拡散用空気及び尿素水の供給量とを、エンジン3の負荷に応じて変更することができる。
【0121】
〔ノズル及び選択式還元触媒ユニットの構造(3)〕
図8は、第3の実施形態(
図5)及び第4の実施形態(
図6)のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第3の構造を示す概略断面図である。
【0122】
ノズルとしては、
図8に示すように、第1ノズル13aと第2ノズル13bとからなるものとすることができる。
第1ノズル13aは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、尿素水輸送管15に繋がり尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
第2ノズル13bは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、アンモニア水輸送管18に繋がりアンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
【0123】
第1ノズル13aは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、尿素水用の流路を経て、尿素水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
第2ノズル13bは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、アンモニア水用の流路を経て、アンモニア水を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
【0124】
第1ノズル13a及び第2ノズル13bは、いずれも選択式還元触媒ユニット17の中心軸付近に配置されるが、中心軸をZ軸として、X軸方向及びZ軸方向を同じとしてY軸方向のみを異ならせて配置してもよいし、Y軸方向及びZ軸方向を同じとしてX軸方向のみを異ならせて配置してもよい。
【0125】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bを用いた場合には、尿素水とアンモニア水とをそれぞれ専用の第1ノズル13a及び第2ノズル13bから噴霧するので、尿素水及びアンモニア水を同時に噴霧することができ、アンモニア水を噴霧すべき量と、尿素水を噴霧すべき量とに大きな差があっても、対応することができる。
尿素水の噴霧量と、アンモニア水の噴霧量とは、エンジン3の運転状態に応じて調整することができる。
【0126】
このノズル13を用いた選択式還元触媒ユニット17では、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水及び/又はアンモニア水の噴霧を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、アンモニア水の噴霧を行う。
3次規制(Tier 3)の海域でアンモニア水の噴霧を行う場合には、脱硝処理に必要十分な量のアンモニア成分を確保するため、アンモニア水の濃度管理を行う必要がある。
【0127】
〔ノズル及び選択式還元触媒ユニットの構造(4)〕
図9は、第3の実施形態(
図5)及び第4の実施形態(
図6)のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第4の構造を示す概略断面図である。
【0128】
ノズルとしては、
図9に示すように、第1ノズル13aと、第2ノズル13bと、からなるものとし、第2ノズル13bを排気レシーバ27内に配置してもよい。
【0129】
第1ノズル13aは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、尿素水輸送管15に繋がり尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
第2ノズル13bは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、アンモニア水輸送管18に繋がりアンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
【0130】
第1ノズル13aは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、尿素水用の流路を経て、尿素水を、選択式還元触媒ユニット17内の、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
第2ノズル13bは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、アンモニア水用の流路を経て、アンモニア水を、排気レシーバ27内に噴霧する。
【0131】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bにおいては、アンモニア水も尿素水も、選択式還元触媒ユニット17の中心軸上から噴霧できるので、均一に拡散させることができる。
【0132】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bを用いた場合には、尿素水とアンモニア水とをそれぞれ専用の第1ノズル13a及び第2ノズル13bから噴霧するので、尿素水及びアンモニア水を同時に噴霧することができ、尿素水を噴霧すべき量と、アンモニア水を噴霧すべき量とに大きな差があっても、対応することができる。
尿素水の噴霧量と、アンモニア水の噴霧量とは、エンジン3の運転状態に応じて調整することができる。
【0133】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bを用いた場合には、排気レシーバ27の出口温度が、選択式還元触媒ユニット17の入口温度よりも高いので、アンモニア水が低濃度であって噴霧量が多くなっても、排ガスの温度低下を抑制することができる。
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bは、アンモニア水の噴霧量が、尿素水の噴霧量の1/10以下程度の場合に適している。
【0134】
このノズル13を用いた選択式還元触媒ユニット17では、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水及び/又はアンモニア水の噴霧を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、アンモニア水の噴霧を行う。
3次規制(Tier 3)の海域でアンモニア水の噴霧を行う場合には、脱硝処理に必要十分な量のアンモニア成分を確保するため、アンモニア水の濃度管理を行う必要がある。
【0135】
なお、尿素水を噴霧する第1ノズル13aも、第2ノズル13bと同様に、排気レシーバ27に配置してもよい。
【0136】
〔ノズル及び選択式還元触媒ユニットの構造(5)〕
図10は、第3の実施形態(
図5)及び第4の実施形態(
図6)のアンモニアガスの処理装置に適用されるノズル及び選択式還元触媒ユニットの第5の構造を示す概略断面図である。
【0137】
ノズルとしては、
図10に示すように、第1ノズル13aと、第2ノズル13bとからなるものとし、第2ノズル13bを、下流側の選択式還元触媒17bに代えて設置したアンモニアスリップ触媒(ASC)17cの上流側に配置してもよい。
【0138】
第1ノズル13aは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、尿素水輸送管15に繋がり尿素水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
第2ノズル13bは、空気供給源25に繋がり空気を供給する流路と、アンモニア水輸送管18に繋がりアンモニア水を噴霧する流路との2つの流路を有する2流体ノズルである。
【0139】
第1ノズル13aは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、尿素水用の流路を経て、尿素水を、選択式還元触媒ユニット17内の、上流側の選択式還元触媒17aの上流から噴霧する。
第2ノズル13bは、空気用の流路を経て、空気を、上流側の選択式還元触媒17aの上流から供給し、アンモニア水用の流路を経て、アンモニア水を、選択式還元触媒ユニット17内の、上流側の選択式還元触媒17aの下流、下流側の選択式還元触媒17bに代えて設置したアンモニアスリップ触媒(ASC)17cの上流から噴霧する。
【0140】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bにおいては、アンモニア水も尿素水も、選択式還元触媒ユニット17の中心軸上から噴霧できるので、均一に拡散させることができる。
【0141】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bを用いた場合には、尿素水とアンモニア水とをそれぞれ専用の第1ノズル13a及び第2ノズル13bから噴霧するので、尿素水及びアンモニア水を同時に噴霧することができ、アンモニア水を噴霧すべき量と、尿素水を噴霧すべき量とに大きな差があっても、対応することができる。
尿素水の噴霧量と、アンモニア水の噴霧量とは、エンジン3の運転状態に応じて調整することができる。
【0142】
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bを用いた場合には、窒素酸化物還元処理は、上流側の選択式還元触媒17aのみで完結され、下流側のアンモニアスリップ触媒は、アンモニア水の処理に特化している。
これら第1ノズル13a及び第2ノズル13bは、アンモニア水の噴霧量が、尿素水の噴霧量の1/10以下程度の場合に適している。
【0143】
なお、このノズルにおいて、第2ノズル13bも、選択式還元触媒ユニット17内の、上流側の選択式還元触媒17aの上流からアンモニア水を噴霧するようにしてもよい。この場合には、選択式還元触媒17aでの脱硝処理において過剰となったアンモニアガスがあった場合に、このアンモニアガスが下流側のアンモニアスリップ触媒によって無害化処理される。
【0144】
このノズル13を用いた選択式還元触媒ユニット17では、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域において、尿素水及びアンモニア水の噴霧を行い、2次規制(Tier 2)の海域において、アンモニア水の噴霧を行う。
このノズル13を用いた選択式還元触媒ユニット17では、アンモニア水は脱硝処理に関与しないので、濃度管理を行う必要はないが、アンモニア成分の量がアンモニアスリップ触媒(ASC)17cの処理能力以下であることを確認するための濃度管理を行ってもよい。
【0145】
以上のように、このアンモニアガスの処理装置及び処理方法においては、船舶用ディーゼルエンジンの排出ガス規制の3次規制(Tier 3)の海域においては、尿素水により、選択式還元触媒ユニット17における脱硝処理を確実に行い、規制を満足することができると共に、船舶で発生するアンモニアガスの船内処理ができるものである。アンモニア水は無害化処理で消費され、追加のアンモニア水供給タンクが不要であるので、アンモニア水タンクの容量を削減することができる。
また、除害装置で生成されたアンモニア水を脱硝処理に利用する態様においては、脱硝処理が必ずしも求められない2次規制(Tier 2)の海域においてアンモニア水により脱硝処理を行うことで、全ての海域において窒素酸化物が削減されたクリーンな排ガスとするクリーンな船舶を提供することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 液化アンモニアタンク
1a 吸出しポンプ
2 燃料供給装置
2a アンモニア排出弁
3 エンジン
3a 燃焼室
4 燃料配管
4a 気液分離器
5 パージガス排出弁
6 除害装置
7 アンモニア水タンク
7a 液面計
8 尿素水タンク
9 第2開閉弁
10 流量・密度計(コリオリ式流量計)
10b 第2の流量・密度計(コリオリ式流量計)
11 アンモニア水流量計
12 第3開閉弁
13 ノズル
13a 第1ノズル
13b 第2ノズル
14 アンモニア水循環弁(背圧弁)
15 尿素水輸送管
15a 尿素水ポンプ
16 第1開閉弁
17 選択式還元触媒ユニット
17a 選択式還元触媒(SCR)
17b 選択式還元触媒(SCR)
17c アンモニアスリップ触媒(ASC)
18 アンモニア水輸送管
18a アンモニア水ポンプ
19 尿素水流量調整弁
20 尿素水流量計
21 尿素水循環弁(背圧弁)
22 清水タンク
22a 給水ポンプ
23 アンモニア水圧力計
24 圧力計
25 空気供給源
26 温度計
27 排気レシーバ
28 尿素水又はアンモニア水輸送管
29 混合器
30 逆止弁
31 液化アンモニア背圧弁
32 液化アンモニア流量計
33 逆止弁
50 パージガス供給弁
51 窒素ガス供給装置
52 過給機
【手続補正書】
【提出日】2024-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記選択式還元触媒ユニット内には、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒が配置されており、
前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とする除害装置を備え、
前記除害装置で生成されたアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項2】
前記アンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、
前記尿素水の既知の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給される尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項3】
前記アンモニア水の前記選択式還元触媒ユニットへの供給路には、前記船舶の燃料供給装置から供給される液化アンモニアが合流されており、前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されてアンモニア水となって、前記選択式還元触媒ユニットに供給され、
前記アンモニア水と前記液化アンモニアとが混合されたアンモニア水の密度を計測する計器を備え、
前記アンモニア水の密度を計測する計器により計測された前記アンモニア水の密度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給されるアンモニア水のモル当量を算出し、算出されたモル当量に応じて、前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項4】
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を備え、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項5】
前記選択式還元触媒ユニット内には、アンモニアスリップ触媒が配置されており、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項6】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載し、選択式還元触媒ユニットを備えた船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記選択式還元触媒ユニット内に、前記船舶の機関の排ガスが導入され、還元剤である尿素水が供給可能であり、前記排ガスの脱硝処理を行う選択式還元触媒を設け、
除害装置により、前記船舶の機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス、又は、前記貨物から揮発したアンモニアガスを清水に溶解させてアンモニア水とし、
前記除害装置により生成したアンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに供給し、前記アンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項7】
前記尿素水及び前記アンモニア水を、前記選択式還元触媒ユニットに同時供給し、
前記アンモニア水の密度を計測し、計測された前記アンモニア水の密度をアンモニア水の濃度に換算し、この濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量を算出し、
既知の前記尿素水の濃度から、前記選択式還元触媒ユニットに供給する尿素水のモル当量を算出し、
前記選択式還元触媒ユニットに供給するアンモニア水のモル当量及び尿素水のモル当量を合算し、合算されたモル当量に応じて、前記尿素水及び前記アンモニア水の流量を調節し、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項8】
前記排ガス中のリークアンモニア濃度を計測する計器を設け、
前記機関の排ガス流量を計測し、計測された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、または、前記機関の出力から負荷情報により算出された排ガス流量と前記リークアンモニア濃度とから、リークアンモニア量を算出し、
前記尿素水及び/又は前記アンモニア水により前記選択式還元触媒ユニット内に供給されるアンモニア量と、前記リークアンモニア量との合算量が、前記選択式還元触媒ユニットで処理されるアンモニア量となるように、前記尿素水又は前記アンモニア水の流量を調節して、前記無害化処理として、前記排ガスの脱硝処理を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項9】
前記選択式還元触媒ユニット内に、アンモニアスリップ触媒を設け、
前記アンモニアスリップ触媒により、前記選択式還元触媒ユニットに供給したアンモニア水の無害化処理を行う
ことを特徴とする請求項6~8の何れかに記載のアンモニアガスの処理方法。