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特開2025-30301合わせガラスの切断方法、及び合わせガラスの切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030301
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】合わせガラスの切断方法、及び合わせガラスの切断装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20250228BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
C03B33/02
C03C27/12 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135471
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 公裕
【テーマコード(参考)】
4G015
4G061
【Fターム(参考)】
4G015FA01
4G015FB01
4G015FC00
4G061AA14
4G061BA02
4G061CB05
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA51
4G061DA61
(57)【要約】
【課題】研磨材の代わりに気泡を利用することで、合わせガラスを切断することができ、且つ合わせガラスを切断する際にコンタミネーションを抑制することができる、技術を提供する。
【解決手段】合わせガラスの切断方法は、第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有する合わせガラスをウォータージェットで切断することを有する。前記ウォータージェットは、加圧した水をノズルから噴射することで発生する噴流であり、前記噴流は、前記加圧した水と気泡を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有する合わせガラスをウォータージェットで切断することを有する、合わせガラスの切断方法であって、
前記ウォータージェットは、加圧した水をノズルから噴射することで発生する噴流であり、
前記噴流は、前記加圧した水と気泡を含む、合わせガラスの切断方法。
【請求項2】
前記合わせガラスは、車外側から車内側に第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有し、車内側から見たときに透過領域と遮光領域とを有し、前記遮光領域の一部に金属層を有し、
前記切断することは、前記合わせガラスを、前記金属層を含む第1切断片と、前記金属層を含まない第2切断片とに切断することを有する、請求項1に記載の合わせガラスの切断方法。
【請求項3】
前記金属層は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に設けられる、請求項2に記載の合わせガラスの切断方法。
【請求項4】
前記ノズルは、前記加圧した水と気体を混合する混合室と、前記混合室に前記加圧した水を供給する第1流路と、前記混合室に気体を供給する第2流路と、前記混合室で混合した前記加圧した水と前記気泡を前記合わせガラスに向けて噴射する第3流路と、を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラスの切断方法。
【請求項5】
前記第2流路は、前記第2流路と前記混合室との圧力差を利用して、前記気体である空気を前記混合室に供給する、請求項4に記載の合わせガラスの切断方法。
【請求項6】
第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有する合わせガラスをウォータージェットで切断する、合わせガラスの切断装置であって、
前記ウォータージェットを噴射するノズルと、
前記ノズルに対して加圧した水を供給する供給部と、
を備え、
前記ウォータージェットは、前記加圧した水を前記ノズルから噴射することで発生する噴流であり、
前記噴流は、前記加圧した水と気泡を含む、合わせガラスの切断装置。
【請求項7】
前記ノズルは、前記加圧した水と気体を混合する混合室と、前記混合室に前記加圧した水を供給する第1流路と、前記混合室に気体を供給する第2流路と、前記混合室で混合した前記加圧した水と前記気泡を前記合わせガラスに向けて噴射する第3流路と、を有する、請求項6に記載の合わせガラスの切断装置。
【請求項8】
前記第2流路は、前記第2流路と前記混合室との圧力差を利用して、前記気体である空気を前記混合室に供給する、請求項7に記載の合わせガラスの切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、合わせガラスの切断方法、及び合わせガラスの切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合わせガラスの加工方法が記載されている。合わせガラスは、2枚のガラス板と、2枚のガラス板を接着する中間膜と、を有する。特許文献1では、アブレシブジェット加工装置を用いて合わせガラスを切断する。アブレシブジェット加工は、加圧した水に研磨材を添加して対象物を加工する技術である。特許文献1には、研磨材として、例えばガーネット砥粒が好適であることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、合わせガラスを構成するガラス板と中間膜を分離する分離装置が記載されている。分離装置は、処理液を収容する液槽と、液槽の内部において回転させられるバレル容器と、処理液の温度を調整する温度調整装置と、を備える。合わせガラスは、予めガラス板を破砕した上で、バレル容器の内部に投入され、処理液に浸漬される。バレル容器を回転させることで、ガラス板と中間膜にせん断応力を加えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-178614号公報
【特許文献2】国際公開第2007/111385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、アブレシブジェット加工によって、合わせガラスを切断することが検討されている。アブレシブジェット加工では、研磨材を使用する。研磨材は、切断片を汚染してしまう。汚染された切断片を再利用するには、合わせガラスのリサイクル方法において、洗浄工程を新たに設ける必要があるため、製造コストが増大する。
【0006】
本開示の一態様は、合わせガラスを切断することができ、且つ合わせガラスを切断する際にコンタミネーションを抑制することができる、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る合わせガラスの切断方法は、第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有する合わせガラスをウォータージェットで切断することを有する。前記ウォータージェットは、加圧した水をノズルから噴射することで発生する噴流であり、前記噴流は、前記加圧した水と気泡を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る合わせガラスの切断装置は、第1ガラス板と中間膜と第2ガラス板とをこの順番で有する合わせガラスをウォータージェットで切断する、合わせガラスの切断装置であって、前記ウォータージェットを噴射するノズルと、前記ノズルに対して加圧した水を供給する供給部と、を備え、前記ウォータージェットは、前記加圧した水を前記ノズルから噴射することで発生する噴流であり、前記噴流は、前記加圧した水と気泡を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、研磨材の代わりに気泡を利用することで、合わせガラスを切断することができ、且つ合わせガラスを切断する際にコンタミネーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る合わせガラスのリサイクル方法を示すフローチャートである。
図2図2は、車内側から見た合わせガラスの一例を示す図である。
図3図3は、車内側から見た合わせガラスの切断予定線の一例を示す図である。
図4図4は、合わせガラスの一例を示す断面図である。
図5図5は、図1のステップS102の一例を示す断面図である。
図6図6は、図1のステップS103の一例を示す断面図である。
図7図7は、切断装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
[合わせガラス]
まず、図2図4を参照して、車両用窓ガラスである合わせガラス10の一例について説明する。図4に示すように、合わせガラス10は、例えば、車外側から車内側に向けて、第1ガラス板11と中間膜12と第2ガラス板13とをこの順番で有する。中間膜12は、第1ガラス板11と第2ガラス板13とを接着する。なお、合わせガラス10を構成するガラス板の枚数は3枚以上であってもよい。その場合、合わせガラス10を構成する中間膜の枚数は2枚以上である。
【0013】
第1ガラス板11は、無機ガラスである。無機ガラスとしては、例えばソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等が挙げられる。第2ガラス板13も、同様に、無機ガラスである。無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。
【0014】
第1ガラス板11は、図示しないが、車外側に向けて凸に形成される。第2ガラス板13も、同様に、車外側に向けて凸に形成される。ガラス板の曲げ成形としては、重力成形、又はプレス成形等が用いられる。曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を物理強化してもよい。曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を化学強化してもよい。
【0015】
中間膜12は、一般的な樹脂、例えばポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等の熱可塑性樹脂により形成される。中間膜12は、加熱されると、接着性を発現する。中間膜12は、単層構造、複数の層構造のいずれでもよい。
【0016】
合わせガラス10は、車内側から見たときに、可視光を透過する透過領域A1と、可視光を遮る遮光領域A2と、を有してもよい。遮光領域A2は、例えば図2及び図3にドットパターンで示す領域であり、合わせガラス10の外周に沿って形成される。遮光領域A2は、第1遮光層14と第2遮光層16の少なくとも1つによって形成される。
【0017】
第1遮光層14は、図4に示すように、例えば第1ガラス板11の車内側の表面11aに設けられる。第1遮光層14は、後述する第1金属層15を車外側から隠す。第1金属層15は、第1遮光層14の車内側の面に形成される。第1遮光層14は、第1ガラス板11の車内側の表面11aにセラミックカラーペーストを塗布し、焼成することで形成する。セラミックカラーペーストは、例えば、ガラス粉末と黒色顔料を含む。セラミックカラーペーストの焼成は、第1ガラス板11の曲げ成形のための熱処理と同時に行われてよい。
【0018】
第2遮光層16は、例えば第2ガラス板13の車内側の表面13aに設けられる。第2遮光層16は、後述する第2金属層17を車外側から隠す。第2金属層17は、第2遮光層16の車内側の面に形成される。第2遮光層16は、第2ガラス板13の車内側の表面13aにセラミックカラーペーストを塗布し、焼成することで形成する。セラミックカラーペーストの焼成は、第2ガラス板13の曲げ成形のための熱処理と同時に行われてよい。
【0019】
図2及び図3に示すように、合わせガラス10は、車内側から見たときに、遮光領域A2の一部に、第1金属層15と第2金属層17の少なくとも1つを有してもよい。第1金属層15と第2金属層17は、例えば電熱線又はアンテナ線である。電熱線は、合わせガラス10の表面に付いた曇り(例えば水滴)又は氷を除去すべく、合わせガラス10を加熱する。アンテナ線は、電波を受信又は発信する。第1金属層15と第2金属層17は、画像を表示する液晶パネルの一部であってもよい。
【0020】
合わせガラス10は、第1遮光層14と第2遮光層16の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。また、合わせガラス10は、第1金属層15と第2金属層17の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。例えば、合わせガラス10は、第1遮光層14と第1金属層15と第2遮光層16を有し、第2金属層17を有しなくてもよい。この場合、第2遮光層16は、第1金属層15を車内側から隠す。
【0021】
合わせガラス10は、第1ガラス板11、中間膜12及び第2ガラス板13をこの順で重ねて積層体を作製し、積層体をオートクレーブ等で加圧、加熱することにより作製される。積層体を作製する前に、第1ガラス板11及び第2ガラス板13は、熱処理され、曲げ成形される。なお、積層体は、第2ガラス板13、中間膜12及び第1ガラス板11をこの順で重ねたものであってもよい。
【0022】
合わせガラス10の厚さは、好ましくは2.8mm~10mmであり、より好ましくは3.0mm~8.0mmである。第1ガラス板11の厚さは、好ましくは1.1mm~3.6mmであり、より好ましくは1.8mm~3.0mmである。第2ガラス板13の厚さは、好ましくは0.5mm~2.7mmであり、より好ましくは0.5mm~2.3mmである。中間膜12の厚さは、好ましくは0.5mm~3.0mmであり、より好ましくは0.5mm~2.8mmである。
【0023】
本実施形態により切断される合わせガラスは、図2~4で例示した車両用窓ガラス(自動車用フロントガラス)に限られない。合わせガラスは、リアガラス、サイドガラス、ルーフガラス等の自動車用窓ガラス、又は電車等で利用される車両用窓ガラス等であってよい。
【0024】
[合わせガラスのリサイクル方法]
図1に示すように、合わせガラス10のリサイクル方法は、例えば、ステップS101~S103を有する。ステップS101は、合わせガラス10をウォータージェットで切断することを含む。ウォータージェットは、一般的な切断工具に比べて、中間膜12の切断面が荒れるのを抑制でき、さらに粉塵の発生を抑制できる。また、ウォータージェットが合わせガラスに衝突する際の幅(図7の左右方向の距離)は、例えば0.5mm以下と小さいため、ウォータージェットは、一般的な切断工具に比べて、合わせガラスを精度良く切断できる。
【0025】
ステップS101は、図3に示すように、合わせガラス10を第1切断片21と第2切断片22とに切断することを含む。第1切断片21は、第1金属層15と第2金属層17の少なくとも1つを含む。一方、第2切断片22は、第1金属層15と第2金属層17のどちらも含まない。第1切断片21を除去した上で、第2切断片22をガラス原料と樹脂原料の少なくとも1つとして再利用する際に、これらの原料に対する金属の混入を防止できる。
【0026】
第1切断片21は、第1ガラス板11と第2ガラス板13の間に設けられる金属層、例えば第1金属層15を含んでもよい。第1金属層15は、第2金属層17とは異なり、合わせガラス10の表面に露出してないので、研削、エッチング又はブラスト等で除去不能である。それゆえ、第1金属層15を除去するには、合わせガラス10を第1切断片21と第2切断片22とに切断することが好ましい。
【0027】
第2切断片22は、第1金属層15と第2金属層17を含まなければよく、第1遮光層14と第2遮光層16の少なくとも1つを含んでもよい。第1遮光層14と第2遮光層16は、鉛(Pb)を含まなければ、ガラス原料に混入しても問題ない。なお、第1遮光層14と第2遮光層16が鉛を含む場合、第2切断片22は、第1遮光層14と第2遮光層16のどちらも含まないことが好ましい。
【0028】
合わせガラス10を切断する前に、例えば、作業員は、第1金属層15と第2金属層17の位置を目視で確認し、その位置を合わせガラス10の表面にマーカーで書き込む。切断装置100(図7参照)は、合わせガラス10の表面に書き込まれたマークをカメラ(不図示)等で撮像し、画像を処理することで、合わせガラス10の切断予定線の位置を決める。その後、切断装置100は、予め決めた切断予定線に沿って合わせガラス10を切断する。
【0029】
なお、第2切断片22が第1遮光層14と第2遮光層16のどちらも含まないように、切断装置100が合わせガラス10を切断してもよい。この場合、作業員は、第1金属層15と第2金属層17の位置を確認しなくて済む。切断装置100は、合わせガラス10をカメラ等で撮像し、画像を処理することで、透過領域A1と遮光領域A2の境界線を検出し、その検出結果を基に切断予定線の位置を決める。
【0030】
ステップS102は、図5に示すように、第2切断片22における第1ガラス板11と第2ガラス板13を破砕することを含む。第2切断片22は、第1ガラス板11の一部であるガラス片と、中間膜12の一部である樹脂片と、第2ガラス板13の一部であるガラス片と、をこの順番で有する。
【0031】
ステップS102は、樹脂片の両側に付着しているガラス片を破砕する。このとき、樹脂片は、ガラス片とは異なり、破砕されない。樹脂片は、柔らかく、衝撃を吸収するからである。破砕後の第2切断片22は、樹脂片の両側に、樹脂片よりも小さなガラス片が多数付着した構成になる。図5に示すガラス片の厚さ方向に延びる複数の実線は、ガラスの亀裂が進展した状態を表す。
【0032】
ステップS102においてガラス片を破砕する破砕装置は、一般的なものであればよく、特に限定されない。破砕装置は、本実施形態では第2切断片22を再資源化すべく第2切断片22におけるガラス片を破砕するが、第1切断片21を再資源化すべく第1切断片21におけるガラス片を破砕してもよい。
【0033】
ステップS103は、図6に示すように、破砕した第1ガラス板11由来のガラス片と中間膜12由来の樹脂片とを分離すると共に、破砕した第2ガラス板13由来のガラス片と中間膜12由来の樹脂片とを分離することを含む。分離した樹脂片とガラス片とは、大きさの違いを利用して、分別回収することが可能である。樹脂片は、ガラス片よりも大きい。
【0034】
ガラス片の再資源化だけではなく、樹脂片の再資源化も可能である。樹脂片の面積が大きいほど、樹脂片のリサイクル効率が良い。樹脂片の面積は、40000mm以上(縦200mm以上、横200mm以上)であることが好ましい。樹脂片の面積は、ハンドリング性の観点から、1000000mm以下であることが好ましい。一方、破砕したガラス片の面積は、2500mm以下(縦50mm以下、横50mm以下)であることが好ましい。ガラス片は、樹脂片と分離した後で、さらに破砕されてもよい。
【0035】
ステップS103は、破砕後の第2切断片22を処理液に浸漬することで、第2切断片22を構成するガラス片と樹脂片を分離することを含む。ガラス片を予め破砕しておけば、処理液がガラス片と樹脂片の界面に浸み込みやすい。処理液は、水を含むことが好ましい。水は、ガラス片と樹脂片の水素結合を切断することができる。処理液の温度は、40℃~80℃であることが好ましい。処理液の温度が40℃以上であれば、水素結合を切断する効果が得られやすい。処理液の温度が80℃以下であれば、処理液中の水分が蒸発するのを防止できる。
【0036】
処理液は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤は、樹脂片の一部と樹脂片の他の一部が接着するのを抑制する。これにより、樹脂片が折り畳まれるのを抑制でき、折り畳まれた樹脂片の内側にガラス片が巻き込まれるのを抑制できる。したがって、ガラス片と樹脂片の分離を進めることができる。
【0037】
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば特許文献2に記載のものが挙げられる。界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類に応じて適宜設定されるが、0.03質量%~2質量%であることが好ましい。処理液のpHは、環境負荷の観点から、6.5~8.5であることが好ましい。
【0038】
なお、合わせガラスのリサイクル方法は、ステップS101~S103以外のステップを有してもよい。本実施形態では第1切断片21を除去した上で、第2切断片22をガラス原料と樹脂原料の少なくとも1つとして再利用するが、第1切断片21から金属層を取り除くことが可能であれば、第1切断片21をガラス原料と樹脂原料の少なくとも1つとして再利用することも可能である。
【0039】
また、合わせガラスのリサイクル方法は、第1切断片21から金属層の少なくとも一部を回収するステップを有してもよい。第1金属層15と第2金属層17は、例えば銀(Ag)、タングステン(W)、銅(Cu)又はこれらの合金を含む。金属層の少なくとも一部を回収することで、これらの金属を再資源化できる。
【0040】
[合わせガラスの切断装置及び切断方法]
次に、図7を参照して、切断装置100の一例について説明する。切断装置100は、例えば上記ステップS101で使用される。切断装置100は、合わせガラス10をウォータージェット101で切断する。ウォータージェット101は、加圧した水をノズル110から噴射することで発生する噴流である。切断装置100は、ノズル110と、ノズル110に対して加圧した水を供給する供給部120と、を備える。
【0041】
供給部120は、例えば水を加圧するポンプを含む。供給部120がノズル110に供給する水の圧力は、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは350MPa以上である。上記水の圧力は、高いほど好ましいが、水の流路を構成する部品の耐久性の観点から、好ましくは1000MPa以下であり、より好ましくは500MPa以下である。供給部120がノズル110に供給する水の流量は、好ましくは1.0L/分~10.0L/分であり、より好ましくは3.0L/分~5.0L/分である。
【0042】
ノズル110は、ウォータージェット101を噴射する。噴射方向は、本実施形態では下方向であるが、特に限定されない。ノズル110と合わせガラス10の配置が逆である場合、噴射方向は上方向である。噴射方向は、斜め下方向又は斜め上方向であってもよい。
【0043】
合わせガラス10は、ウォータージェット101の流れ方向に沿って、第1ガラス板11と中間膜12と第2ガラス板13とをこの順番で有する。なお、第1ガラス板11と第2ガラス板13の配置は逆でもよい。つまり、合わせガラス10は、ウォータージェット101の流れ方向に沿って、第2ガラス板13と中間膜12と第1ガラス板11とをこの順番で有してもよい。
【0044】
合わせガラス10は、加圧した水のみで安定して切断することは困難である。例えば、第1ガラス板11又は第2ガラス板13を切断できないことがある。あるいは、中間膜12を切断できないことがある。特許文献1に記載のごとく、加圧した水に研磨材を添加すれば、合わせガラス10を安定して切断することが可能であるが、切断片を研磨材が汚染してしまう。研磨材は、ステップS103で回収される破砕後のガラス片と同程度以下の大きさである。それゆえ、ガラス片と研磨材とは、分別回収することが難しい。したがって、研磨材が切断片を汚染してしまうと、切断片をガラス原料として再利用し難くなる。なお、切断片は、第1切断片21と第2切断片22のいずれでもよい。
【0045】
本実施形態のノズル110は、加圧した水に気泡を含めて噴射する。ノズル110は、アブレシブジェット加工用のものを流用してもよい。ノズル110は、研磨材の代わりに、気体を、加圧した水に混合する。本実施形態のウォータージェット101は、加圧した水と気泡を含む噴流である。加圧した水に気泡を含めることで、加圧した水に部分的な断水状態を断続的に生じさせ、水圧の粗密状態を作出する。これにより、合わせガラス10に対して衝撃を断続的に加えることができ、第1ガラス板11と第2ガラス板13を効率的に砕くことができる。このとき、合わせガラス10の切断位置においてガラスのひび割れが生じるが、切断片をガラス原料と樹脂原料の少なくとも1つとして再利用する観点からは問題はない。
【0046】
ウォータージェット101は、まず、ノズル110に近い方の第1ガラス板11を砕き、生じたガラス屑を衝撃で吹き飛ばすことで、中間膜12に至る流れを確保する。その後、ウォータージェット101は、中間膜12を切り裂き、続いて、ノズル110から遠い方の第2ガラス板13を砕く。このようにして、合わせガラス10を切断することができる。
【0047】
ノズル110は、研磨材の代わりに気泡を利用することで、合わせガラス10を切断することができ、且つ合わせガラス10を切断する際にコンタミネーションを抑制することができる。気泡は、研磨材とは異なり、切断片を汚染することがない。よって、切断片をガラス原料として再利用することが可能になる。また、切断片を再利用するに当たり、洗浄工程を新たに設ける必要がないため、製造コストを低減できる。
【0048】
ノズル110は、加圧した水に気泡を含めて噴射することで、合わせガラス10の切断音の騒音レベルを低下でき、また、距離Dの許容範囲を広くできる。距離Dは、ノズル110と合わせガラス10の距離である。距離Dの許容範囲は、合わせガラス10を安定して切断できる距離Dの範囲である。距離Dが遠過ぎると、合わせガラス10に衝突する際のウォータージェット101の直径が大きくなり過ぎ、切断精度の低下や、圧力低下による未切断が発生してしまう。
【0049】
距離Dの許容範囲が広ければ、合わせガラス10の表面が曲面であり、その表面の高さが変化することで距離Dが変化する場合であっても、ノズル110又は合わせガラス10をノズル110の噴射方向に移動しなくて済む。距離Dは、10mm~200mmの範囲に収めることが好ましく、10mm~150mmの範囲に収めることがより好ましい。
【0050】
切断装置100は、ノズル110の噴射方向と交差する方向に、ノズル110と合わせガラス10を相対的に移動することで、合わせガラス10を切断する。合わせガラス10の切断速度は、合わせガラス10を構成する各部材の厚さと材質に応じて適宜設定されるが、好ましくは15m/分以下であり、より好ましくは12m/分以下である。合わせガラス10の切断速度は、切断効率の観点から、好ましくは1m/分以上であり、より好ましくは4m/分以上である。
【0051】
ノズル110は、加圧した水と気体を混合する混合室111と、混合室111に加圧した水を供給する第1流路112と、混合室111に気体を供給する第2流路113と、混合室111で混合した加圧した水と気泡を合わせガラス10に向けて噴射する第3流路114と、を有する。混合室111において多数の気泡を水に分散できる。
【0052】
第1流路112と第3流路114とは、混合室111を挟んで、同一直線上に設けられることが好ましい。これにより、加圧した水が混合室111を介して第1流路112から第3流路114に流れ込みやすい。一方、第2流路113は、本実施形態では第1流路112と第3流路114に対して垂直に設けられるが、斜めに設けられてもよい。
【0053】
第2流路113は、第2流路113と混合室111との圧力差を利用して、気体である空気を混合室111に供給することが好ましい。空気は、研磨材に比べて流動性が高い。それゆえ、第2流路113と混合室111との圧力差によって空気の安定供給が可能である。また、第2流路113と混合室111との圧力差を利用すれば、切断装置100の構造を簡略化できる。なお、第2流路113は、空気の代わりに窒素等の不活性ガスを混合室111に供給することも可能である。
【実施例0054】
以下、実験データについて説明する。例1~例4では、表1に示す条件を除き、同じ条件で図7に示すノズル110から合わせガラス10にウォータージェット101を噴射した。ノズル110としては、株式会社スギノマシンのABH-5201を使用した。合わせガラス10のサイズは、縦300mm、横300mm、厚さ4.8mmであった。第1ガラス板11はソーダライムガラス板(厚さ2.0mm)であり、中間膜12はPVB膜(厚さ0.8mm)であり、第2ガラス板13はソーダライムガラス板(厚さ2.0mm)であった。例1~例3では第2流路113から混合室111に空気を流量4L/min(計算値)で供給したのに対し、例4では第2流路113から混合室111に空気を供給しなかった。例1~例3が実施例であり、例4が比較例である。例1~例4の加工条件と加工結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、例1~例3では、第2流路113から混合室111に空気を供給したので、合わせガラス10を切断できた。一方、例4では、第2流路113から混合室111に空気を供給しなかったので、合わせガラス10を切断できなかった。
【0057】
以上、本開示に係る合わせガラスの切断方法、及び合わせガラスの切断装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除及び組合せが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0058】
10 合わせガラス
11 第1ガラス板
12 中間膜
13 第2ガラス板
14 第1遮光層
15 第1金属層
16 第2遮光層
17 第2金属層
21 第1切断片
22 第2切断片
100 切断装置
101 ウォータージェット
110 ノズル
111 混合室
112 第1流路
113 第2流路
114 第3流路
120 供給部
A1 透過領域
A2 遮光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7