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特開2025-3095光電変換素子、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003095
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】光電変換素子、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、化合物
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/60 20230101AFI20241226BHJP
   H10K 30/30 20230101ALI20241226BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241226BHJP
   H10F 39/18 20250101ALI20241226BHJP
   H10K 39/32 20230101ALI20241226BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20241226BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20241226BHJP
   C07D 421/14 20060101ALI20241226BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
H10K85/60
H01L27/146 E
H10K39/32
C07D405/14 CSP
C07D409/14
C07D421/14
C07D403/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103579
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寛記
(72)【発明者】
【氏名】米久田 康智
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
3K107EE68
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB01
4C063BB03
4C063BB06
4C063CC29
4C063CC75
4C063CC92
4C063CC99
4C063DD04
4C063EE10
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA01
4M118BA07
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118EA14
4M118FA06
4M118FA08
4M118GA08
4M118GD15
4M118HA26
5F149AA03
5F149AB11
5F149BA03
5F149BA05
5F149BA09
5F149BB03
5F149CB06
5F149CB15
5F149DA30
5F149FA04
5F149GA02
5F149LA02
5F149XA01
5F149XA43
(57)【要約】
【課題】 緑赤色光を受光した際の応答速度が優れ、かつ、応答速度の電界強度依存性が小さい光電変換素子、並びに、上記光電変換素子に関する、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、及び化合物の提供。
【解決手段】 導電性膜、光電変換膜及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、上記光電変換膜が、式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
前記光電変換膜が、式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
【化1】
式(1)中、
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい5員芳香族環又は置換基を有してもよい6員芳香族環を表し、Y、Y及びYの少なくとも1つが、式(D)で表される基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、式(A-1)で表される基を表す。
式(D)中、
及びZは、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
X1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
置換基群X:ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基、及び、置換基を有していてもよい芳香環基。
式(A-1)中、
は、2以上の炭素原子を含み、置換基を有してもよい環を表す。
は、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
W2は、水素原子又は置換基を表す。RW3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。RW5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
*は、結合位置を表す。
【請求項2】
前記式(1)中、Y、Y及びYの少なくとも1つが、置換基を有してもよい含酸素5員芳香族複素環である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、式(2)~式(6)のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】
式(2)~式(6)中、
、R、A及びAは、式(1)中のR、R、A及びAと同義である。
~Xは、それぞれ独立に、-N(RX1)-、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、前記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
~Z14は、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
但し、前記式(2)で表される化合物は条件(XA)を満たし、前記式(3)で表される化合物及び前記式(4)で表される化合物は条件(XB)を満たし、前記式(5)で表される化合物及び前記式(6)で表される化合物は条件(XC)を満たす。
条件(XA):X~Xの少なくとも1つが-N(RX1)-を表す。
条件(XB):X及びXの少なくとも一方が-N(RX1)-を表す。
条件(XC):Xが-N(RX1)-を表す。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、前記式(2)で表される化合物、又は前記式(3)で表される化合物であり、
前記式(2)及び前記式(3)中、Xは、-N(RX1)-を表し、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、前記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
X1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は前記置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
及びAが、それぞれ独立に、式(C-1)又は式(C-2)で表される基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化3】
式(C-1)中、
c1及びXc2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
は、置換基を有してもよい芳香環を表す。
式(C-2)中、
c3~Xc5は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
c1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
W2は、水素原子又は置換基を表す。RW3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。RW5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
*は結合位置を表す。
【請求項7】
前記光電変換膜が、更にn型有機半導体を含み、
前記光電変換膜が、前記式(1)で表される化合物と、前記n型有機半導体とが混合された状態で形成するバルクヘテロ構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記n型有機半導体が、フラーレン及びその誘導体からなる群から選択されるフラーレン類を含む、請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記光電変換膜が、更にp型有機半導体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記光電変換膜が、更に色素を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記導電性膜と前記透明導電性膜の間に、前記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、光センサ。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子を製造する工程を有する、撮像素子の製造方法。
【請求項15】
式(1)で表される化合物。
【化4】
式(1)中、
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい5員芳香族環又は置換基を有してもよい6員芳香族環を表し、Y、Y及びYの少なくとも1つが、式(D)で表される基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、式(A-1)で表される基を表す。
式(D)中、
及びZは、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
X1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
置換基群X:ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基、及び、置換基を有していてもよい芳香環基。
式(A-1)中、
は、2以上の炭素原子を含み、置換基を有してもよい環を表す。
は、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
W2は、水素原子又は置換基を表す。RW3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。RW5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
*は、結合位置を表す。
【請求項16】
前記式(1)中、Y、Y及びYの少なくとも1つが、置換基を有してもよい含酸素5員芳香族複素環である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記式(1)で表される化合物が、式(2)~式(6)のいずれかで表される化合物である、請求項15に記載の化合物。
【化5】
式(2)~式(6)中、
、R、A及びAは、式(1)中のR、R、A及びAと同義である。
~Xは、それぞれ独立に、-N(RX1)-、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、前記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
~Z14は、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
但し、前記式(2)で表される化合物は条件(XA)を満たし、前記式(3)で表される化合物及び前記式(4)で表される化合物は条件(XB)を満たし、前記式(5)で表される化合物及び前記式(6)で表される化合物は条件(XC)を満たす。
条件(XA):X~Xの少なくとも1つが-N(RX1)-を表す。
条件(XB):X及びXの少なくとも一方が-N(RX1)-を表す。
条件(XC):Xが-N(RX1)-を表す。
【請求項18】
前記式(1)で表される化合物が、前記式(2)で表される化合物、又は前記式(3)で表される化合物であり、
前記式(2)及び前記式(3)中、Xは、-N(RX1)-を表し、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、前記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
X1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は前記置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す、請求項15~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
及びAが、それぞれ独立に、式(C-1)又は式(C-2)で表される基である、請求項15~18のいずれか1項に記載の化合物。
【化6】
式(C-1)中、
c1及びXc2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
は、置換基を有してもよい芳香環を表す。
式(C-2)中、
c3~Xc5は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
c1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
W2は、水素原子又は置換基を表す。RW3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。RW5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
*は結合位置を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換膜を有する素子(例えば、撮像素子)の開発が進んでいる。
例えば、特許文献1には、色素により増感された半導体微粒子を用いた、安価で変換効率の良い光電気変換素子及びそれを用いた太陽電池として、「更に置換していてもよい一般式(1)で示される色素を担持せしめた有機色素増感半導体微粒子薄膜の光電変換素子、及びこれを用いた太陽電池」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-282165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像素子及び光センサ等の性能向上の要求に伴い、優れた諸特性を示す光電変換素子が求められている。光電変換素子に求められる特性としては、例えば、緑赤色光を受光した際の応答速度が優れることが挙げられる。また、電界強度を変化させた際にも光電変換素子の応答速度が低下しにくい、つまり、応答速度の電界強度依存性が小さいことも求められる。
このような要求の下、本発明者らが、特許文献1に開示されている一般式(1)で示される色素を含む光電変換素子を作製して検討したところ、緑赤色光を受光した際の応答速度及び応答速度の電界強度依存性に改善の必要があることを知見した。なお、上記緑赤色光とは、波長500~700nmの光を意味する。
【0005】
そこで、本発明は、緑赤色光を受光した際の応答速度が優れ、かつ、応答速度の電界強度依存性が小さい光電変換素子の提供を課題とする。
また、本発明は、上記光電変換素子に関する、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、及び化合物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕 導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
上記光電変換膜が、後述する式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
〔2〕 上記式(1)中、Y、Y及びYの少なくとも1つが、置換基を有してもよい含酸素5員芳香族複素環である、〔1〕に記載の光電変換素子。
〔3〕 上記式(1)で表される化合物が、後述する式(2)~後述する式(6)のいずれかで表される化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の光電変換素子。
〔4〕 上記式(1)で表される化合物が、上記式(2)で表される化合物、又は上記式(3)で表される化合物であり、
上記式(2)及び上記式(3)中、Xは、-N(RX1)-を表し、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す、〔3〕に記載の光電変換素子。
〔5〕 RX1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は上記置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔6〕 A及びAが、それぞれ独立に、後述する式(C-1)又は後述する式(C-2)で表される基である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔7〕 上記光電変換膜が、更にn型有機半導体を含み、
上記光電変換膜が、上記式(1)で表される化合物と、上記n型有機半導体とが混合された状態で形成するバルクヘテロ構造を有する、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔8〕 上記n型有機半導体が、フラーレン及びその誘導体からなる群から選択されるフラーレン類を含む、〔7〕に記載の光電変換素子。
〔9〕 上記光電変換膜が、更にp型有機半導体を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔10〕 上記光電変換膜が、更に色素を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔11〕 上記導電性膜と上記透明導電性膜の間に、上記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の光電変換素子。
〔12〕 〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
〔13〕 〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の光電変換素子を有する、光センサ。
〔14〕 〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の光電変換素子を製造する工程を有する、撮像素子の製造方法。
〔15〕 後述する式(1)で表される化合物。
〔16〕 上記式(1)中、Y、Y及びYの少なくとも1つが、置換基を有してもよい含酸素5員芳香族複素環である、〔15〕に記載の化合物。
〔17〕 上記式(1)で表される化合物が、後述する式(2)~後述する式(6)のいずれかで表される化合物である、〔15〕又は〔16〕に記載の化合物。
〔18〕 上記式(1)で表される化合物が、上記式(2)で表される化合物、又は上記式(3)で表される化合物であり、
上記式(2)及び上記式(3)中、Xは、-N(RX1)-を表し、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す、〔17〕に記載の化合物。
〔19〕 RX1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は上記置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す、〔15〕~〔18〕のいずれか1つに記載の化合物。
〔20〕 A及びAが、それぞれ独立に、後述する式(C-1)又は後述する式(C-2)で表される基である、〔15〕~〔19〕のいずれか1つに記載の化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、緑赤色光を受光した際の応答速度が優れ、かつ、応答速度の電界強度依存性が小さい光電変換素子を提供できる。
また、本発明によれば、上記光電変換素子に関する、撮像素子、撮像素子の製造方法、光センサ、及び化合物も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
図2】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0011】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、水素原子は、軽水素原子(通常の水素原子)及び重水素原子(例えば、二重水素原子等)であってもよい。
【0012】
本明細書において、幾何異性体(シス-トランス異性体)を有し得る化合物に関して、上記化合物を表す一般式又は構造式が、便宜上、シス体及びトランス体のいずれか一方の形態でのみ記載される場合がある。このような場合であっても、特段の記載がない限り、上記化合物の形態がシス体及びトランス体のいずれか一方に限定されることはなく、上記化合物は、シス体及びトランス体のいずれの形態であってもよい。
【0013】
本明細書において表記される2価の基(例えば、-CO-O-等)の結合方向は、特段の断りがない限り、制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-CO-O-である場合、上記化合物は「X-O-CO-Z」及び「X-CO-O-Z」のいずれであってもよい。
【0014】
化学式中に明示される「*」の記号は、特段の断りがない限り、結合位置を表す。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基及び連結基等(以下、「置換基等」ともいう。)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。この点は、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、「置換基」は、特段の断りがない限り、後述する置換基Wで例示される基が挙げられる。
【0015】
(置換基W)
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wは、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等)、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基及びトリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基及びビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(ヘテロアリール基、又は脂肪族ヘテロ環基)、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、第1級、第2級又は第3級のアミノ基(アニリノ基を含む)、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、チオール基、アシルアミノ基、カルバモイル基、ウレイド基、及びボロン酸基が挙げられる。
また、上述の各基は、可能な場合、更に置換基(例えば、上述の各基のうちの1以上の基等)を有していてもよい。例えば、置換基を有していてもよいアルキル基も、置換基Wの一形態として含まれる。
また、置換基Wが炭素原子を有する場合、置換基Wが有する炭素数は、例えば、1~20である。
置換基Wが有する水素原子以外の原子の数は、例えば、1~30である。
なお、後述する特定化合物は、置換基として、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、リン酸基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、ヒドロキシ基、チオール基、アシルアミノ基、カルバモイル基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH))及び/又は第1級アミノ基を有さないことも好ましい。
【0016】
本明細書において、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。
また、本明細書において、特段の断りがない限り、アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基及びシクロペンチル基が挙げられる。
また、アルキル基は、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基及びトリシクロアルキル基のいずれであってもよく、これらの環構造を部分構造として有していてもよい。
置換基を有していてもよいアルキル基において、アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、置換基Wで例示される基が挙げられる。なかでも、アリール基(好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数5~18、より好ましくは炭素数5~6)又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子又は塩素原子)が好ましい。
【0017】
本明細書において、特段の断りがない限り、アルコキシ基におけるアルキル基部分は、上記アルキル基が好ましい。アルキルチオ基におけるアルキル基部分は、上記アルキル基が好ましい。
置換基を有していてもよいアルコキシ基において、アルコキシ基が有していてもよい置換基は、置換基を有していてもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキルチオ基において、アルキルチオ基が有していてもよい置換基は、置換基を有していてもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。
【0018】
本明細書において、特段の断りがない限り、アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。上記アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましい。置換基を有していてもよいアルケニル基において、アルケニル基が有していてもよい置換基は、置換基を有していてもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。
本明細書において、特段の断りがない限り、アルキニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。上記アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましい。置換基を有していてもよいアルキニル基において、アルキニル基が有してもよい置換基は、置換基を有していてもよいアルキル基における置換基と同様の例が挙げられる。
【0019】
本明細書において、芳香環又は芳香環基を構成する芳香環は、特段の断りがない限り、単環及び多環(例えば、2~6環等)のいずれであってもよい。単環の芳香環は、環構造として、1環の芳香環構造のみを有する芳香環である。多環(例えば、2~6環等)の芳香環は、環構造として複数(例えば、2~6等)の芳香環構造が縮環している芳香環である。
上記芳香環の環員数は、5~15が好ましい。
上記芳香環は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環であってもよい。
上記芳香環が芳香族複素環の場合、環員原子として有するヘテロ原子の数は、例えば、1~10である。上記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子及びホウ素原子が挙げられる。
上記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、フェナントレン環及びフルオレン環が挙げられる。
上記芳香族複素環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環(例えば、1,2,3-トリアジン環、1,2,4-トリアジン環及び1,3,5-トリアジン環等)、テトラジン環(例えば、1,2,4,5-テトラジン環等)、キノキサリン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトピロール環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトイミダゾール環、ナフトオキサゾール環、ピロロイミダゾール環(例えば、5H-ピロロ[1,2-a]イミダゾール環等)、イミダゾオキサゾール環(例えば、イミダゾ[2,1-b]オキサゾール環等)、チエノチアゾール環(例えば、チエノ[2,3-d]チアゾール環等)、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾジチオフェン環(例えば、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン環等)、チエノチオフェン環(例えば、チエノ[3,2-b]チオフェン環等)、チアゾロチアゾール環(例えば、チアゾロ[5,4-d]チアゾール環等)、ナフトジチオフェン環(例えば、ナフト[2,3-b:6,7-b’]ジチオフェン環、ナフト[2,1-b:6,5-b’]ジチオフェン環、ナフト[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン環及び1,8-ジチアジシクロペンタ[b,g]ナフタレン環等)、ベンゾチエノベンゾチオフェン環、ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]チオフェン環及び3,4,7,8-テトラチアジシクロペンタ[a,e]ペンタレン環が挙げられる。
【0020】
本明細書において、芳香環基という場合、例えば、上記芳香環から水素原子を1つ以上(例えば、1~5等)除いてなる基が挙げられる。
本明細書でアリール基という場合、例えば、上記芳香環のうちの芳香族炭化水素環に該当する環から水素原子を1つ取り除いてなる基が挙げられる。
本明細書でヘテロアリール基という場合、例えば、上記芳香環のうちの芳香族複素環に該当する環から水素原子を1つ除いてなる基が挙げられる。
本明細書でアリーレン基という場合、例えば、上記芳香環のうちの芳香族炭化水素環に該当する環から水素原子を2つ除いてなる基が挙げられる。
本明細書でヘテロアリーレン基という場合、例えば、上記芳香環のうちの芳香族複素環に該当する環から水素原子を2つ除いてなる基が挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香環、置換基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリーレン基及び置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基において、これらが有してもよい置換基の種類は、例えば、置換基Wで例示される基が挙げられる。置換基を有していてもよいこれらの基が置換基を有する場合の置換基の数は1以上(例えば、1~4等)であればよい。
【0021】
本明細書において、非芳香族環とは、芳香族に該当しない環構造を表し、例えば、脂肪族炭化水素環及び脂肪族ヘテロ環が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロアルカン、シクロアルケン、及びシクロアルキンが挙げられる。
本明細書で脂肪族ヘテロ環基という場合、例えば、上記脂肪族ヘテロ環から水素原子を1つ取り除いてなる基が挙げられる。
本明細書でヘテロ環オキシ基という場合、例えば、上記脂肪族ヘテロ環上の水素原子を酸素原子(-O-)で置換してなる基が挙げられる。
本明細書において、脂肪族ヘテロ環基、及びヘテロ環オキシ基の環員数は、5~20が好ましく、5~12がより好ましく、6~8が更に好ましい。
上記脂肪族ヘテロ環基、及びヘテロ環オキシ基が有するヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子が好ましい。
上記脂肪族ヘテロ環基、及びヘテロ環オキシ基を構成する脂肪族ヘテロ環としては、例えば、ピロリジン環、オキソラン環(テトラヒドロフラン環)、チオラン環、ピペリジン環、テトラヒドロピラン環、チアン環(ペンタメチレンスルフィド環)、ピペラジン環、モルホリン環、キヌクリジン環、アゼチジン環、オキセタン環、アジリジン環、ジオキサン環及びγ-ブチロラクトン環が挙げられる。
【0022】
本明細書でシリル基という場合、例えば、-Si(RSiで表される基が挙げられる。RSiは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香環基を表す。
Siの炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
【0023】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、光電変換膜が、式(1)(以下、「特定化合物」ともいう)で表される化合物を含む。
【0024】
上記構成を有する光電変換素子が本発明の課題を解決できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下の通り推測する。
なお、下記推測により、効果が得られる機序が制限されるものではない。換言すれば、下記以外の機序により効果が得られる場合でも、本発明の範囲に含まれる。
特定化合物は、ドナー部(D)とアクセプター部(A)とを有する所謂ADA型の色素化合物である。ADA型の色素化合物は、その共役構造に起因して凝集性が高い傾向がある。特定化合物は、式(1)で表されるような特定の原子を含む特定のドナー構造を有することで、光電変換膜中における特定化合物同士の過度な凝集が抑制されており、効率的な電荷分離を達成できる。結果として、特定化合物を含む光電変換素子は、応答速度に優れ、応答速度の電界強度依存性も小さいと考えられる。
以下、応答速度がより優れること、及び、応答速度の電界強度依存性がより小さいことの少なくとも一方を達成していることを、「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0025】
図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、「下部電極」ともいう。)11と、電子ブロッキング膜16Aと、特定化合物を含む光電変換膜12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、「上部電極」ともいう。)15とがこの順に積層された構成を有する。
図2に別の光電変換素子の構成例を示す。図2に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング膜16Aと、光電変換膜12と、正孔ブロッキング膜16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、図1及び図2中の電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、及び正孔ブロッキング膜16Bの積層順は、用途及び特性に応じて、適宜変更してもよい。
【0026】
光電変換素子10a(又は10b)では、上部電極15を介して光電変換膜12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(又は10b)を使用する場合、電圧を印加できる。この場合、下部電極11と上部電極15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10-5~1×10V/cmの電圧を印加することが好ましい。性能及び消費電力の点で、印加される電圧としては、1×10-4~1×10V/cmがより好ましく、1×10-3~5×10V/cmが更に好ましい。
なお、電圧印加方法については、図1及び図2において、電子ブロッキング膜16A側が陰極となり、光電変換膜12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(又は10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧を印加できる。
後段で詳述するように、光電変換素子10a(又は10b)は撮像素子用途に好適に適用できる。
以下に、本発明の光電変換素子を構成する各層の形態について詳述する。
【0027】
〔光電変換膜〕
光電変換素子は、光電変換膜を有する。
【0028】
<特定化合物>
光電変換膜は、式(1)で表される化合物(特定化合物)を含む。
【0029】
【化1】
【0030】
式(1)中、
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい5員芳香族環又は置換基を有してもよい6員芳香族環を表し、Y、Y及びYの少なくとも1つが、式(D)で表される基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、式(A-1)で表される基を表す。
【0031】
式(D)中、
及びZは、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
X1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
置換基群X:ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基、及び、置換基を有していてもよい芳香環基。
【0032】
式(A-1)中、
は、2以上の炭素原子を含み、置換基を有してもよい環を表す。
は、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
W2は、水素原子又は置換基を表す。RW3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。RW5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
【0033】
、Y及びYで表される、置換基を有してもよい5員芳香族環は、5員芳香族炭化水素環及び5員芳香族複素環のいずれであってもよい。
また、Y、Y及びYで表される、置換基を有してもよい6員芳香族環は、6員芳香族炭化水素環及び6員芳香族複素環のいずれであってもよい。
5員芳香族環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、及びトリアゾール環が挙げられる。
6員芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、及びピリミジン環が挙げられる。
置換基を有してもよい5員芳香族環、及び置換基を有してもよい6員芳香族環が有してもよい置換基としては、例えば、置換基Wで例示される各基が挙げられる。
置換基が炭素原子を有する場合、炭素原子数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0034】
上述した通り、Y、Y及びYの少なくとも1つは、式(D)で表される基を表す。
式(D)中、Z及びZは、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。Z及びZは、それぞれ独立に、-CRZ1=を表すことが好ましい。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
Z1で表される置換基としては、例えば、置換基Wで例示される各基が挙げられる。
Z1で表される置換基の炭素数は、0~20が好ましく、0~10がより好ましい。
Z1としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基(ヘテロアリール基、又は脂肪族ヘテロ環基)、シリル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環オキシ基、又はアシル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又はシリル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
Z1で表される各基の定義及び好適態様は、上述した通りである。
【0035】
式(D)中、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。
置換基群X:ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基、及び、置換基を有していてもよい芳香環基。
【0036】
X1で表される置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基における脂肪族炭化水素基としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、及び環状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましい。
上記直鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3~20が好ましく、3~7がより好ましく、3~5が更に好ましい。
上記環状の脂肪族炭化水素基は、単環及び多環のいずれであってもよいが、単環が好ましい。
上記環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3~20が好ましく、3~8がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0037】
X1で表される脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、置換基Wで例示される各基が挙げられる。
上記置換基としては、なかでも、ハロゲン原子が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
【0038】
上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基における芳香環基は、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基のいずれであってもよく、芳香族炭化水素基が好ましい。
上記芳香環基は、単環及び多環のいずれであってもよい。
上記芳香環基の環員数は、5~15が好ましく、5~10がより好ましく、5~6が更に好ましい。
上記芳香環基の炭素数(置換基中の炭素原子を含めた炭素数)は、1~30が好ましく、3~20がより好ましく、4~10が更に好ましい。
上記芳香族複素環基が有するヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子が好ましい。
上記芳香環基の具体例は、上述した通りであり、フェニル基、チオフェン環基、フラン環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、又はピリジン環基が好ましく、フェニル基又はチオフェン環基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
上記芳香環基が置換基を有する場合、その数は特に制限されないが、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。
【0039】
X1で表される置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基における脂肪族ヘテロ環基の環員数は、5~20が好ましく、5~12がより好ましく、5~8が更に好ましい。脂肪族ヘテロ環基の炭素数は、1~20が好ましい。
脂肪族ヘテロ環基が有するヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子が好ましい。
【0040】
上記アラルキル基は、アルキル基中の1つの水素原子をアリール基で置換してなる基をいう。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状、又は分岐鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
また、アリール基としては、単環及び多環のいずれであってもよい。アリール基の環員数は、5~15が好ましく、5~10がより好ましく、5~6が更に好ましい。
アラルキル基としては、なかでも、ベンジル基が好ましい。
【0041】
上記置換基群X中、ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基における脂肪族炭化水素基の定義、及び好適態様は、RX1で表される脂肪族炭化水素基と同義であり、その好適態様も同様である。
上記置換基群X中、ハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
【0042】
上記置換基群X中、シリル基としては、-Si(RSiで表される基が挙げられる。RSiは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香環基を表す。
Siで表される、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基における、脂肪族炭化水素基は、RX1で表される脂肪族炭化水素基と同義であり、その好適態様も同様である。
Siで表される、置換基を有していてもよい芳香環基における、芳香環基は、RX1で表される芳香環基と同義であり、その好適態様も同様である。
Siで表される脂肪族炭化水素基及び芳香環基が有していてもよい置換基としては、置換基Wで例示される各基が挙げられる。
【0043】
上記置換基群X中、置換基を有していてもよい芳香環基における芳香環基は、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基における芳香環基と同義であり、その好適態様も同様である。芳香環基が有していてもよい置換基としては、置換基Wで例示される各基が挙げられる。
【0044】
なかでも、RX1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は上記置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表すことが好ましい。
【0045】
、Y及びYの少なくとも1つが置換基を有してもよい含酸素5員芳香族複素環であることが好ましい。含酸素5員芳香族複素環とは、酸素原子を環員原子として含む5員環の芳香族複素環を意味する。
含酸素5員芳香環としては、例えば、フラン環及びオキサゾール環が挙げられる。
【0046】
式(1)で表される化合物としては、例えば、式(2)~式(6)のいずれかで表される化合物が挙げられる。但し、式(2)で表される化合物は条件(XA)を満たし、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物は条件(XB)を満たし、式(5)で表される化合物及び式(6)で表される化合物は条件(XC)を満たす。
条件(XA)~条件(XC)については、後段で詳述する。
【0047】
【化2】
【0048】
式(2)~式(6)中、
、R、A及びAは、式(1)中のR、R、A及びAと同義である。R、R、A及びAの定義及び好ましい態様については後述する。
~Xは、それぞれ独立に、-N(RX1)-、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。式中に複数のRX1が存在する場合、複数のRX1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
~Z14は、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表し、式中に複数のRZ1が存在する場合、複数のRZ1はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
【0049】
上述した通り、式(2)で表される化合物は条件(XA)を満たし、式(3)で表される化合物及び式(4)で表される化合物は条件(XB)を満たし、式(5)で表される化合物及び式(6)で表される化合物は条件(XC)を満たす。
条件(XA):X~Xの少なくとも1つが-N(RX1)-を表す。
条件(XB):X及びXの少なくとも一方が-N(RX1)-を表す。
条件(XC):Xが-N(RX1)-を表す。
【0050】
式(2)中、Xは、-N(RX1)-、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、-N(RX1)-であることがより好ましい。X及びXは、それぞれ独立に、-N(RX1)-、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子であることがより好ましく、酸素原子であることが更に好ましい。
式(3)及び式(4)中、Xは、-N(RX1)-、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、-N(RX1)-であることがより好ましい。Xは、-N(RX1)-、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子であることがより好ましく、酸素原子であることが更に好ましい。
【0051】
X1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表す。
置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、及びアラルキル基は、上記式(D)で表される基中のRX1で表される各基と同義であり、その好適態様も同様である。
【0052】
式(2)~(6)中、Z~Z14は、それぞれ独立に、-CRZ1=又は窒素原子を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表す。式(2)~(6)中、Z~Z14のいずれも、それぞれ独立に-CRZ1=を表すことが好ましい。
Z1としては、水素原子が好ましい。
Z1で表される置換基としては、例えば、置換基Wとして例示される基が挙げられる。
Z1で表される置換基の炭素数は、0~20が好ましく、0~10がより好ましい。
Z1で表される置換基としては、なかでも、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香環基、シリル基、アルコキシ基、又はアシル基が好ましい。
【0053】
ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香環基、及びシリル基は、上記置換基群X中の各基と同義であり、その好適態様も同様である。
【0054】
上記アルコキシ基におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アシル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~5が更に好ましい。
上記アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基及びベンゾイル基が挙げられ、アセチル基又はプロピオニル基が好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物は、式(2)~(5)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、式(2)~(4)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、式(2)又は式(3)で表される化合物であることが更に好ましい。
なかでも、式(2)又は式(3)中、Xは、-N(RX1)-を表し、RX1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、上記置換基群Xから選択される基を有していてもよい芳香環基、置換基を有していてもよい脂肪族ヘテロ環基、アラルキル基、又は水素原子を表し、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表すことが好ましい。
【0056】
式(1)~式(6)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
上記置換基としては、上述した置換基Wで例示される置換基が挙げられる。
本発明の効果がより優れる点で、R及びRは、水素原子が好ましい。
【0057】
式(1)~式(6)中、A及びAは、それぞれ独立に、式(A-1)で表される基を表す。
以下、式(A-1)で表される基について詳述する。
【0058】
【化3】
【0059】
式(A-1)中、Cは、2以上の炭素原子を含み、置換基を有してもよい環を表す。上記Cが含む2つの炭素原子は、式(A-1)中に明示される2つの炭素原子である。
上記環の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましく、3~10が更に好ましい。上記環の炭素数は、式中に明示される2つの炭素原子を含む数である。
上記環は、芳香環及び非芳香族環のいずれであってもよい。
上記環は、単環及び多環のいずれであってもよく、5員環、6員環、又は5員環及び6員環の少なくとも1つを含む縮環が好ましい。上記5員環及び6員環の少なくとも1つを含む縮環の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、8~10が更に好ましい。
【0060】
上記環は、ヘテロ原子を有してもよい。上記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、窒素原子、又は酸素原子が好ましい。
上記環のヘテロ原子の数は、0~10が好ましく、0~5がより好ましい。
上記Cで表される環を構成する炭素原子のうち、式(A-1)中で*が付されている結合位置の炭素原子及びWと結合している炭素原子以外の炭素原子は、カルボニル炭素(>C=O)又はチオカルボニル炭素(>C=S)で置換されていてもよい。
【0061】
上記Cで表される環としては、酸性核(例えば、メロシアニン色素で酸性核等)として用いられる環が好ましく、例えば以下の核が挙げられる。
(a)1,3-ジカルボニル核:例えば、1,3-インダンジオン核、1,3-シクロヘキサンジオン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、及び1,3-ジオキサン-4,6-ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば、1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、及び1-(2-ベンゾチアゾリル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば、3-フェニル-2-イソオキサゾリン-5-オン及び3-メチル-2-イソオキサゾリン-5-オン等。
(d)オキシインドール核:例えば、1-アルキル-2,3-ジヒドロ-2-オキシインドール等。
(e)2,4,6-トリオキソヘキサヒドロピリミジン核:例えば、バルビツール酸、2-チオバルビツール酸、及びその誘導体等。上記誘導体としては、例えば、1-メチル、1-エチル等の1-アルキル体、1,3-ジメチル、1,3-ジエチル、及び1,3-ジブチル等の1,3-ジアルキル体、1,3-ジフェニル、1,3-ジ(p-クロロフェニル)、及び1,3-ジ(p-エトキシカルボニルフェニル)等の1,3-ジアリール体、1-エチル-3-フェニル等の1-アルキル-1-アリール体、並びに、1,3-ジ(2-ピリジル)等の1,3-ジヘテロアリール体が挙げられる。
(f)2-チオ-2,4-チアゾリジンジオン核:例えば、ローダニン及びその誘導体等。上記誘導体としては、例えば、3-メチルローダニン、3-エチルローダニン、及び3-アリルローダニン等の3-アルキルローダニン、3-フェニルローダニン等の3-アリールローダニン、並びに、3-(2-ピリジル)ローダニン等の3-ヘテロアリールローダニン等が挙げられる。
(g)2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン核(2-チオ-2,4-(3H,5H)-オキサゾールジオン核):例えば、3-エチル-2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば、3(2H)-チアナフテノン-1,1-ジオキサイド等。
(i)2-チオ-2,5-チアゾリジンジオン核:例えば、3-エチル-2-チオ-2,5-チアゾリジンジオン等。
(j)2,4-チアゾリジンジオン核:例えば、2,4-チアゾリジンジオン、3-エチル-2,4-チアゾリジンジオン、及び3-フェニル-2,4-チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン-4-オン核:例えば、4-チアゾリノン及び2-エチル-4-チアゾリノン等。
(l)2,4-イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば、2,4-イミダゾリジンジオン及び3-エチル-2,4-イミダゾリジンジオン等。
(m)2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン(2-チオヒダントイン)核:例えば、2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン及び3-エチル-2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン-5-オン核:例えば、2-プロピルメルカプト-2-イミダゾリン-5-オン等。
(o)3,5-ピラゾリジンジオン核:例えば、1,2-ジフェニル-3,5-ピラゾリジンジオン及び1,2-ジメチル-3,5-ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェン-3(2H)-オン核:例えば、ベンゾチオフェン-3(2H)-オン、オキソベンゾチオフェン-3(2H)-オン、及びジオキソベンゾチオフェン-3(2H)-オン等。
(q)インダノン核:例えば、1-インダノン、3-フェニル-1-インダノン、3-メチル-1-インダノン、3,3-ジフェニル-1-インダノン、及び3,3-ジメチル-1-インダノン等。
(r)ベンゾフラン-3-(2H)-オン核:例えば、ベンゾフラン-3-(2H)-オン等。
(s)2,2-ジヒドロフェナレン-1,3-ジオン核等。
【0062】
式(A-1)中、Wは、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。
は、本発明の効果がより優れる点で、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
W2は、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、例えば、上記置換基Wで例示される置換基が挙げられる。
W3及びRW4は、それぞれ独立に、シアノ基、-SOW5、-COORW6又は-CORW7を表す。
W5~RW7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香環基、又は、置換基を有してもよい脂肪族ヘテロ環基を表す。
脂肪族炭化水素基の定義は上述した通りであり、炭素数は1~3の脂肪族炭化水素基が好ましい。
芳香環基の定義は上述した通りであり、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
脂肪族ヘテロ環基の定義は上述した通りであり、上記脂肪族ヘテロ環基が有するヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子が好ましい。
W5~RW7で表される各基が有してもよい置換基としては、上記置換基Wで例示される置換基が挙げられる。
【0063】
上記式(A-1)で表される基は、本発明の効果がより優れる点で、式(A-2)で表される基であることが好ましい。
【0064】
【化4】
【0065】
式(A-2)中、Cは、3以上の炭素原子を含み、置換基を有してもよい環を表す。
上記Cが含む3つの炭素原子は、式(A-2)中に明示される3つの炭素原子である。
上記環の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましく、3~10が更に好ましい。上記環の炭素数は、式中に明示される3つの炭素原子を含む数である。
上記環は、芳香環及び非芳香族環のいずれであってもよい。
上記環は、単環及び多環のいずれであってもよく、5員環、6員環又は5員環及び6員環の少なくとも1つを含む縮環が好ましい。上記5員環及び6員環の少なくとも1つを含む縮環の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、8~10が更に好ましい。
上記環は、ヘテロ原子を有してもよい。上記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、窒素原子、又は酸素原子が好ましい。
上記環が有するヘテロ原子の数は、0~10が好ましく、0~5がより好ましい。
上記Cで表される環を構成する炭素原子のうち、式(A-2)中で*が付されている結合位置の炭素原子、及び、W又はWと結合している炭素原子以外の炭素原子は、カルボニル炭素(>C=O)又はチオカルボニル炭素(>C=S)で置換されていてもよい。
で表される環としては、上記酸性核として用いられる環が好ましい。
上記環が有してもよい置換基の好適態様は、上述の環Cが有してもよい置換基と同様である。
【0066】
式(A-2)中、W及びWは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。発明の効果がより優れる点で、W及びWは、酸素原子が好ましい。
W2、RW3及びRW4は、式(A-1)中のRW2、RW3及びRW4と同義であり、好適態様についても同様である。
【0067】
式(A-2)で表される基は、本発明の効果がより優れる点で、式(C-1)又は式(C-2)で表される基であることがより好ましい。
【0068】
【化5】
【0069】
式(C-1)中、Xc1及びXc2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。本発明の効果がより優れる点で、Xc1及びXc2の少なくとも一方が酸素原子であることが好ましく、Xc1及びXc2が酸素原子であることがより好ましい。
W2、RW3及びRW4は、式(A-1)中のRW2、RW3及びRW4と同義であり、好適態様についても同様である。
【0070】
式(C-1)中、Cは、置換基を有してもよい芳香環を表す。
上記芳香環は、単環及び多環のいずれであってもよい。
上記芳香環の環員数は、4~30が好ましく、5~12がより好ましく、5~8が更に好ましい。上記芳香環の環員数は式中に明示される2つの炭素原子を含む数である。
また、芳香環は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環のいずれであってもよく、芳香族炭化水素環が好ましい。
上記Cで表される芳香環としては、上述した通りであり、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ピラジン環、ピリミジン環、又はピリダジン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、又はチオフェン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
上記芳香環が有してもよい置換基としては、例えば、上記置換基Wで例示される基が挙げられ、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。
上記芳香環が有してもよい置換基の数は、特に制限されないが、0~8が好ましく、0~4がより好ましい。
【0071】
式(C-2)中、Xc3~Xc5は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、=NRW2又は=CRW3W4を表す。本発明の効果がより優れる点で、Xc3及びXc4が酸素原子であることが好ましく、Xc3~Xc5が酸素原子であることがより好ましい。
W2、RW3及びRW4は、式(A-1)中のRW2、RW3及びRW4と同義であり、好適態様についても同様である。
【0072】
式(C-2)中、Rc1及びRc2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
上記置換基としては、例えば、上記置換基Wで例示される基が挙げられ、アルキル基又はアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
上記アリール基は、単環及び多環のいずれであってもよく、フェニル基が好ましい。上記アリール基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、上記置換基Wで例示される基が挙げられる。
【0073】
及びAとしては、式(A-1)で表される基が好ましく、式(A-2)で表される基がより好ましく、式(C-1)で表される基又は式(C-2)で表される基が更に好ましく、式(C-2)で表される基が特に好ましい。
また、A及びAは、互いに同一であっても異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0074】
以下、特定化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0075】
【化6】
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
上記例示した特定化合物中のAは、以下のいずれかの基を表す。
【0079】
【化9】
【0080】
【化10】
【0081】
【化11】
【0082】
【化12】
【0083】
【化13】
【0084】
特定化合物の分子量は、300~1000が好ましく、400~900がより好ましく、400~800が更に好ましい。
上記分子量である場合、特定化合物の昇華温度が低くなり、製造適性に優れると推測される。
【0085】
特定化合物は、p型有機半導体として使用する際の安定性とn型有機半導体とのエネルギー準位のマッチングの点で、単膜でのイオン化ポテンシャルが-5.0~-6.0eVであることが好ましい。
【0086】
特定化合物の極大吸収波長は、波長400~800nmの範囲が好ましく、450~650nmの範囲がより好ましい。
上記極大吸収波長は、特定化合物の吸収スペクトルを吸光度が0.5~1.0になる程度の濃度に調整して溶液状態(溶媒:クロロホルム)で測定した値である。ただし、特定化合物がクロロホルムに溶解しない場合、特定化合物を蒸着し、膜状態にした特定化合物を用いて測定した値を特定化合物の極大吸収波長とする。
【0087】
特定化合物は、撮像素子、光センサ、又は光電池に用いる光電変換膜の材料として特に有用である。特定化合物は、光電変換膜内で色素として機能する場合が多い。また、特定化合物は、着色材料、液晶材料、有機半導体材料、電荷輸送材料、医薬材料、及び蛍光診断薬材料としても使用できる。
【0088】
特定化合物は、必要に応じて精製されてもよい。
特定化合物の精製方法としては、例えば、昇華精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた精製、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた精製、リスラリー洗浄、再沈殿精製、及び、活性炭等の吸着剤を用いた精製及び再結晶精製が挙げられる。
【0089】
光電変換膜中の特定化合物の含有量(=特定化合物の単層換算での膜厚/光電変換膜の膜厚×100)は特に限定されないが、15~75体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましく、20~50体積%が更に好ましい。
特定化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0090】
<n型有機半導体>
光電変換膜は、上記特定化合物以外に、更にn型有機半導体を含むことが好ましい。
n型有機半導体は、上記特定化合物とは異なる化合物である。
n型有機半導体は、アクセプター性有機半導体材料(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。つまり、n型有機半導体は、2つの有機化合物を接触させて用いた場合に電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。つまり、アクセプター性有機半導体としては、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
n型有機半導体としては、例えば、フラーレン及びその誘導体からなる群から選択されるフラーレン類;縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体及びフルオランテン誘導体等);窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される少なくとも1つを有する5~7員環のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール及びチアゾール等);ポリアリーレン化合物;フルオレン化合物;シクロペンタジエン化合物;シリル化合物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体;アントラキノジメタン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;バソクプロイン、バソフェナントロリン及びこれらの誘導体;トリアゾール化合物;ジスチリルアリーレン誘導体;含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体;シロール化合物;3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物;3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体;特開2006-100767号公報の段落[0056]~[0057]に記載の化合物;が挙げられる。
【0091】
n型有機半導体(化合物)としては、フラーレン及びその誘導体からなる群から選択されるフラーレン類が好ましい。
フラーレンとしては、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、及びミックスドフラーレンが挙げられる。
フラーレン誘導体は、例えば、上記フラーレンに置換基が付加した化合物が挙げられる。上記置換基としては、アルキル基、アリール基又は複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007-123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0092】
n型有機半導体は、有機色素であってもよい。
有機色素としては、例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、ロダシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素及び金属錯体色素が挙げられる。
【0093】
n型有機半導体の分子量は、200~1,200が好ましく、200~900がより好ましい。
【0094】
n型有機半導体の極大吸収波長は、波長400nm以下、又は、波長400nm超600nm以下の範囲が好ましい。
【0095】
光電変換膜は、式(1)で表される化合物と、n型有機半導体とが混合された状態で形成するバルクヘテロ構造を有することが好ましい。バルクヘテロ構造は、光電変換膜内で、特定化合物とn型有機半導体とが混合及び分散している層である。バルクヘテロ構造を有する光電変換膜は、湿式法及び乾式法のいずれ方法でも形成できる。なお、バルクへテロ構造については、特開2005-303266号公報の段落[0013]~[0014]において詳細に説明されている。
【0096】
特定化合物とn型有機半導体との電子親和力の差は、0.1eV以上であることが好ましい。
【0097】
n型有機半導体は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
光電変換膜がn型有機半導体を含む場合、光電変換膜中のn型有機半導体の含有量(n型有機半導体の単層換算での膜厚/光電変換膜の膜厚×100)は、15~75体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましく、20~50体積%が更に好ましい。
【0098】
n型有機半導体がフラーレン類を含む場合、n型有機半導体の合計含有量に対するフラーレン類の含有量(フラーレン類の単層換算での膜厚/単層換算した各n型有機半導体の膜厚の合計×100)は、50~100体積%が好ましく、80~100体積%がより好ましい。フラーレン類は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
【0099】
光電変換素子の応答速度の点で、特定化合物とn型有機半導体との合計含有量に対する特定化合物の含有量(特定化合物の単層換算での膜厚/(特定化合物の単層換算での膜厚+n型有機半導体の単層換算での膜厚)×100)は、20~80体積%が好ましく、40~80体積%がより好ましい。
光電変換膜がn型有機半導体及びp型有機半導体を含む場合、特定化合物の含有量(特定化合物の単層換算での膜厚/(特定化合物の単層換算での膜厚+n型有機半導体の単層換算での膜厚+p型有機半導体の単層換算での膜厚)×100)は、15~75体積%が好ましく、30~75体積%がより好ましい。
なお、光電変換膜は、実質的に、特定化合物とn型有機半導体と所望に応じて含まれるp型有機半導体とから構成されることが好ましい。実質的とは、光電変換膜の全質量に対して、特定化合物、n型有機半導体及びp型有機半導体の合計含有量が、90~100体積%であり、95~100体積%が好ましく、99~100体積%がより好ましい。
【0100】
<p型有機半導体>
光電変換膜は、上記特定化合物以外に、更にp型有機半導体を含むことが好ましい。
p型有機半導体は、上記特定化合物とは異なる化合物である。
p型有機半導体とは、ドナー性有機半導体材料(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。つまり、p型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。
p型有機半導体は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
【0101】
p型有機半導体としては、例えば、トリアリールアミン化合物(例えば、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’-ビス[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)、特開2011-228614号公報の段落[0128]~[0148]に記載の化合物、特開2011-176259号公報の段落[0052]~[0063]に記載の化合物、特開2011-225544号公報の段落[0119]~[0158]に記載の化合物、特開2015-153910号公報の段落[0044]~[0051]に記載の化合物及び特開2012-094660号公報の段落[0086]~[0090]に記載の化合物等)、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物(例えば、チエノチオフェン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジチエノチオフェン誘導体、[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)誘導体、チエノ[3,2-f:4,5-f´]ビス[1]ベンゾチオフェン(TBBT)誘導体、特開2018-014474号公報の段落[0031]~[0036]に記載の化合物、WO2016/194630号の段落[0043]~[0045]に記載の化合物、WO2017/159684号の段落[0025]~[0037]、[0099]~[0109]に記載の化合物、特開2017-076766号公報の段落[0029]~[0034]に記載の化合物、WO2018/207722号の段落[0015]~[0025]に記載の化合物、特開2019-054228号公報の段落[0045]~[0053]に記載の化合物、WO2019/058995号の段落[0045]~[0055]に記載の化合物、WO2019/081416号の段落[0063]~[0089]に記載の化合物、特開2019-080052号公報の段落[0033]~[0036]に記載の化合物、WO2019/054125号の段落[0044]~[0054]に記載の化合物、WO2019/093188号の段落[0041]~[0046]に記載の化合物、特開2019-050398号公報の段落[0034]~[0037]に記載の化合物、特開2018-206878号公報の段落[0033]~[0036]に記載の化合物、特開2018-190755号公報の段落[0038]に記載の化合物、特開2018-026559号公報の段落[0019]~[0021]に記載の化合物、特開2018-170487号公報の段落[0031]~[0056]に記載の化合物、特開2018-078270号公報の段落[0036]~[0041]に記載の化合物、特開2018-166200号公報の段落[0055]~[0082]に記載の化合物、特開2018-113425号公報の段落[0041]~[0050]に記載の化合物、特開2018-085430号公報の段落[0044]~[0048]に記載の化合物、特開2018-056546号公報の段落[0041]~[0045]に記載の化合物、特開2018-046267号公報の段落[0042]~[0049]に記載の化合物、特開2018-014474号公報の段落[0031]~[0036]に記載の化合物、WO2018/016465号の段落[0036]~[0046]に記載の化合物、特開2020-010024号公報の段落[0045]~[0048]に記載の化合物、等)、シアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体及びフルオランテン誘導体等)、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、トリアゾール化合物、オキサジアゾール化合物、イミダゾール化合物、ポリアリールアルカン化合物、ピラゾロン化合物、アミノ置換カルコン化合物、オキサゾール化合物、フルオレノン化合物、シラザン化合物、並びに、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体が挙げられる。
p型有機半導体としては、上述した化合物のほか、特開2021-163968号公報、特開2022-027575号公報、特開2022-123944号公報、特開2022-122839号公報、特開2022-120323号公報、特開2022-120273号公報、特開2022-115832号公報、特開2022-108268号公報、特開2022-100258号公報、特開2022-181226号公報、及び、特開2023-005703号公報に記載の化合物も使用でき、これらの化合物は本明細書に組み込まれる。
p型有機半導体としては、例えば、n型有機半導体よりもイオン化ポテンシャルが小さい化合物も挙げられ、この条件を満たせば、n型有機半導体として例示した有機色素を使用し得る。
以下に、p型有機半導体化合物として使用し得る化合物を例示する。
【0102】
【化14】
【0103】
【化15】
【0104】
【化16】
【0105】
【化17】
【0106】
特定化合物とp型有機半導体とのイオン化ポテンシャルの差は、0.1eV以上であることが好ましい。
【0107】
p型有機半導体材料は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
光電変換膜がp型有機半導体を含む場合、光電変換膜中のp型有機半導体の含有量(p型有機半導体の単層換算での膜厚/光電変換膜の膜厚×100)は、15~75体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましく、25~50体積%が更に好ましい。
【0108】
特定化合物を含む光電変換膜は非発光性膜であり、有機電界発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)とは異なる特徴を有する。非発光性膜とは発光量子効率が1%以下の膜を意味し、発光量子効率は0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。下限は、0%以上の場合が多い。
【0109】
<色素>
光電変換膜は、上記特定化合物以外に、更に色素を含んでいてもよい。
色素は、上記特定化合物とは異なる化合物である。
色素としては、有機色素が好ましい。
有機色素としては、例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、ロダシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素及び金属錯体色素、WO2020/013246号、WO2022/168856号、特開2023-010305号公報、及び、特開2023-010299号公報に記載のイミダゾキノキサリン色素、ドナーに2つの酸性核が結合したアクセプター-ドナー-アクセプター型の色素、並びに、アクセプターに2つのドナーが結合したドナー-アクセプター-ドナー型の色素等が挙げられる。
有機色素としては、なかでも、後述する好ましい範囲に極大吸収波長を持つ等の点で、シアニン色素、イミダゾキノキサリン色素、又は、アクセプター-ドナー-アクセプター型の色素が好ましい。
【0110】
色素の極大吸収波長は、可視光領域が好ましく、波長400~650nmがより好ましく、波長450~650nmが更に好ましい。
【0111】
色素は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
光電変換膜中における、特定化合物と色素との合計の含有量に対する、色素の含有量(=(色素の単層換算での膜厚/(特定化合物の単層換算での膜厚+色素の単層換算での膜厚)×100))は、15~75体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましく、20~50体積%が更に好ましい。
【0112】
<成膜方法>
上記光電変換膜の成膜方法としては、例えば、乾式成膜法が挙げられる。
乾式成膜法としては、例えば、蒸着法(特に真空蒸着法)、スパッタ法、イオンプレーティング法及びMBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の物理気相成長法、並びに、プラズマ重合等のCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられ、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法により光電変換膜を成膜する場合、真空度及び蒸着温度等の製造条件は、常法に従って設定できる。
【0113】
光電変換膜の膜厚は、10~1000nmが好ましく、50~800nmがより好ましく、50~500nmが更に好ましい。
【0114】
〔電極〕
光電変換素子は、電極を有することが好ましい。
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対して透明であることが好ましい。上部電極15を構成する材料としては、例えば、アンチモン又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO:Antimony Tin Oxide、FTO:Fluorine doped Tin Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)及び酸化亜鉛インジウム(IZO:Indium Zinc Oxide)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム及びニッケル等の金属薄膜;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;並びにポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロール等の有機導電性材料、カーボンナノチューブ及びグラフェン等のナノ炭素材料等が挙げられ、高導電性及び透明性の点で、導電性金属酸化物が好ましい。
【0115】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激に抵抗値が増加する場合が多い。本実施形態にかかる光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子においては、シート抵抗は、100~10000Ω/□であってもよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。
また、上部電極(透明導電性膜)15は膜厚が薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増加する。光透過率の増加は、光電変換膜での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大及び透過率の増加を考慮すると、上部電極15の厚さは、5~100nmが好ましく、5~20nmがより好ましい。
【0116】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明性を持たせず光を反射させる場合とがある。下部電極11を構成する材料としては、例えば、アンチモン又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン及びアルミ等の金属;これらの金属の酸化物又は窒化物等の導電性化合物(例えば、窒化チタン(TiN)等);これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロール等の有機導電性材料;カーボンナノチューブ及びグランフェン等の炭素材料が挙げられる。
【0117】
電極を形成する方法としては、電極材料に応じて適宜選択できる。具体的には、印刷方式及びコーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタ法及びイオンプレーティング法等の物理的方式;並びにCVD及びプラズマCVD法等の化学的方式が挙げられる。
電極の材料がITOである場合、電子ビーム法、スパッタ法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル-ゲル法等)及び酸化インジウムスズの分散物の塗布等の方法が挙げられる。
【0118】
〔電荷ブロッキング膜:電子ブロッキング膜、正孔ブロッキング膜〕
光電変換素子は、導電性膜と透明導電性膜の間に、光電変換膜の他に1種以上の中間層を有することが好ましい。
上記中間層としては、例えば、電荷ブロッキング膜が挙げられる。光電変換素子がこの膜を有する場合、得られる光電変換素子の特性(量子効率及び応答速度等)がより優れる。電荷ブロッキング膜としては、例えば、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜とが挙げられる。
【0119】
〔電子ブロッキング膜〕
電子ブロッキング膜は、ドナー性有機半導体材料(化合物)であり、上記p型有機半導体を使用できる。
また、電子ブロッキング膜として、高分子材料も使用できる。
高分子材料としては、例えば、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン及びジアセチレン等の重合体、並びに、その誘導体が挙げられる。
【0120】
なお、電子ブロッキング膜は、複数膜で構成してもよい。
電子ブロッキング膜は、無機材料で構成されていてもよい。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、無機材料を電子ブロッキング膜に用いた場合に、光電変換膜に電圧が多くかかるようになり、量子効率が高くなる。電子ブロッキング膜となりうる無機材料としては、例えば、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀及び酸化イリジウムが挙げられる。
【0121】
〔正孔ブロッキング膜〕
正孔ブロッキング膜は、アクセプター性有機半導体材料(化合物)であり、上記n型有機半導体を利用できる。
なお、正孔ブロッキング膜は、複数膜で構成してもよい。
【0122】
電荷ブロッキング膜の製造方法としては、例えば、乾式成膜法及び湿式成膜法が挙げられる。乾式成膜法としては、例えば、蒸着法及びスパッタ法が挙げられる。蒸着法は、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)法及び化学蒸着(CVD)法のいずれでもよく、真空蒸着法等の物理蒸着法が好ましい。湿式成膜法としては、例えば、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法及びグラビアコート法が挙げられ、高精度パターニングの点で、インクジェット法が好ましい。
【0123】
電荷ブロッキング膜(電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜)の膜厚は、それぞれ、3~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、5~30nmが更に好ましい。
【0124】
〔基板〕
光電変換素子は、更に基板を有してもよい。
基板としては、例えば、半導体基板、ガラス基板及びプラスチック基板が挙げられる。
なお、基板の位置は、通常、基板上に導電性膜、光電変換膜及び透明導電性膜をこの順で積層する。
【0125】
〔封止層〕
光電変換素子は、更に封止層を有してもよい。
光電変換材料は水分子等の劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまう場合がある。そこで、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物、金属窒化物若しくは金属窒化酸化物等のセラミックス又はダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond-like Carbon)等の封止層で光電変換膜全体を被覆して封止して、上記劣化を防止できる。
なお、封止層としては、例えば、特開2011-082508号公報の段落[0210]~[0215]の記載が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0126】
[光電変換素子の製造方法]
光電変換素子の製造方法としては、公知の製造方法が挙げられる。
具体的には、例えば、基板上に導電膜を形成する工程と、光電変換膜を形成する工程と、透明導電性膜を形成する工程とを含む、光電変換素子の製造方法が挙げられる。
光電変換素子の製造方法は、上記以外の他の工程(例えば、電荷ブロッキング膜を形成する工程及び封止層を形成する工程)を有していてもよい。
各層を形成する方法は、上述した通りである。
【0127】
[撮像素子]
光電変換素子の用途として、例えば、撮像素子が挙げられる。
撮像素子とは、画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、通常、複数の光電変換素子が同一平面上でマトリクス状に配置されており、それぞれの光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、1つ以上の光電変換素子及び1つ以上のトランジスタから構成される。
撮像素子の製造方法は特に制限されないが、上述した光電変換素子を製造する工程を含む方法が挙げられる。
【0128】
[光センサ]
光電変換素子の他の用途として、例えば、光電池及び光センサが挙げられ、本発明の光電変換素子は光センサとして用いることが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いてもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサ又は平面上に配した2次元センサとして用いてもよい。
【0129】
[化合物]
本発明は、化合物の発明も含む。本発明の化合物とは、上記特定化合物(式(1)で表される化合物)である。
【実施例0130】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0131】
[光電変換膜に用いられる化合物]
以下、光電変換膜に用いた各材料を示す。
【0132】
〔化合物(1-1)の合成〕
化合物(1-1)は、以下のスキームに従って合成した。
【0133】
【化18】
【0134】
<化合物(1-1-2)の合成>
ガラス製反応容器に、化合物(1-1-1)15.0mmol、2-ホルミルフラン-5-ボロン酸32.0mmol、炭酸カリウム45mmol、N,N-ジメチルホルムアミド80mL、及び水16mLをとり、容器内を窒素置換した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)4.5mmolを反応容器に更に加え、80℃で5時間反応させた。
反応終了後の溶液を放冷後、水を加え、固体をろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(1-1-2)を4.8mmol得た(収率32%)。
【0135】
<化合物(1-1)の合成>
ガラス製反応容器に、化合物(1-1-2)2.0mmol、1,3-ジメチルバルビツール酸5.0mmol、トルエン60mL、及びピペリジン0.4mmolをとり、窒素雰囲気下、100℃で2時間反応させた。
析出した固体を濾過し、得られた固体をテトラヒドロフラン(THF)、ジメチルアセトアミド、及びTHFで順次洗浄後、昇華精製することにより、化合物(1-1)を0.90mmol(収率45%)得た。
化合物(1-1)の構造はLDI-MS(レーザー脱離イオン化質量分析法)にて確認した。化合物(1-1)のLDI-MSの測定結果を以下に示す。
LDI-MS(化合物(1-1)):545(M
【0136】
化合物(1-1)以外の光電変換膜に用いられる各実施例及び比較例の化合物は化合物(1-1)の合成方法に準じて合成した。
【0137】
〔特定化合物〕
以下、光電変換膜に用いた特定化合物及び比較例の比較化合物を示す。
なお、化合物(1-1)~(1-9)、(2-1)、(3-1)~(3-2)、(4-1)及び(5-1)は特定化合物であり、化合物(C-1)は比較化合物である。
【0138】
【化19】
【0139】
〔n型有機半導体〕
・フラーレン(C60
【0140】
〔p型有機半導体〕
【0141】
【化20】
【0142】
[評価]
光電変換素子の緑赤色光(波長530nm)を受光した際の量子効率、応答速度、及び応答速度の電界強度依存性、並びに、製造適性について、以下の方法で評価した。
【0143】
〔光電変換素子の作製〕
上記に示す各種成分を用いて、図2の形態の光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、正孔ブロッキング膜16B及び上部電極15からなる。
具体的には、ガラス基板上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、下部電極11(厚み:30nm)を形成し、更に下部電極11上に化合物(EB-1)を真空加熱蒸着法により成膜して、電子ブロッキング膜16A(厚み:30nm)を形成した。
続いて、ガラス基板が室温の状態で、電子ブロッキング膜16A上に表1に示す各特定化合物又は各比較化合物と、n型有機半導体(フラーレン(C60))とp型有機半導体(D-1)とをそれぞれ単層換算で80nmとなるように真空蒸着法により共蒸着して成膜した。これによって、240nmのバルクヘテロ構造を有する光電変換膜12を形成した。この際、光電変換膜12の成膜速度は1.0Å/秒とした。
更に光電変換膜12上に化合物(EB-2)を蒸着して正孔ブロッキング膜16B(厚み:10nm)を形成した。正孔ブロッキング膜16B上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、上部電極15(透明導電性膜)(厚み:10nm)を形成した。上部電極15上に、真空蒸着法により封止層としてSiO膜を形成した後、その上にALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により酸化アルミニウム(Al)層を形成し、得られた積層体をグローブボックス中にて150℃で30分間加熱して、光電変換素子を得た。
【0144】
【化21】
【0145】
〔暗電流〕
得られた各光電変換素子について、以下の方法で暗電流を測定した。
各光電変換素子の下部電極及び上部電極に、2.5×10V/cmの電界強度となるように電圧を印加して、暗所での電流値(暗電流)を測定した。その結果、いずれの光電変換素子においても、暗電流は50nA/cm以下であり、十分に低い暗電流を示すことを確認した。
【0146】
〔量子効率〕
各光電変換素子について、以下の方法で緑赤色光を受光した際の量子効率を測定した。
各光電変換素子に2.0×10V/cmの電界強度となるように電圧を印加した後、上部電極(透明導電性膜)側から光を照射して波長530nmの量子効率(光電変換効率)を評価し、式(S1)に従って量子効率(相対比)を算出した。得られた値から、下記評価基準に従って量子効率を評価した。量子効率は、C以上の評価が好ましい。
式(S1):量子効率(相対比) = (各光電変換素子の光電変換効率)/(実施例1-7の光電変換素子の光電変換効率)
【0147】
A:量子効率(相対比)が1.4以上
B:量子効率(相対比)が1.2以上、1.4未満
C:量子効率(相対比)が1.0以上、1.2未満
D:量子効率(相対比)が1.0未満
【0148】
〔応答速度〕
各光電変換素子について、以下の方法で緑赤色光を受光した際の応答速度を評価した。
光電変換素子に2.0×10V/cmの強度となるように電圧を印加した。その後、LED(light emitting diode)を瞬間的に点灯させて上部電極(透明導電性膜)側から光を照射し、そのときの波長530nmにおける光電流をオシロスコープで測定して0%信号強度から97%信号強度に上昇するまでの立ち上がり時間を計測し、式(S2)に従って相対応答速度を算出した。得られた値から、下記評価基準に従って、応答速度を評価した。応答速度は、C以上の評価が好ましい。
式(S2):相対応答速度 = (各光電変換素子の立ち上がり時間)/実施例1-7の光電変換素子の立ち上がり時間)
【0149】
A:相対応答速度が0.5未満
B:相対応答速度が0.5以上、1.0未満
C:相対応答速度が1.0以上、2.0未満
D:相対応答速度が2.0以上
【0150】
〔応答速度の電界強度依存性〕
各光電変換素子について、以下の方法で緑赤色光を受光した際の応答速度の電界強度依存性を評価した。
上記〔応答速度〕の評価において、各光電変換素子に印加する電圧を、7.5×10V/cmに変更した以外は、同様の手順で、7.5×10V/cmにおける立ち上がり時間を測定した。
式(S3)に従って応答速度の電界強度依存性を算出し、下記評価基準に従って応答速度の電界強度依存性を評価した。なお、式(S3)において、分子分母は同一の実施例又は比較例の光電変換素子について測定した値である。応答速度の電界強度依存性は、C以上の評価が好ましい。
式(S3):応答速度の電界強度依存性 = (各光電変換素子の印加電圧7.5×10V/cmにおける立ち上がり時間)/(各光電変換素子の印加電圧2.0×10V/cmにおけるの立ち上がり時間)
【0151】
A:応答速度の電界強度依存性が3.0未満
B:応答速度の電界強度依存性が3.0以上、4.0未満
C:応答速度の電界強度依存性が4.0以上、5.0未満
D:応答速度の電界強度依存性が5.0以上
【0152】
[結果]
以下、表1に評価結果を示す。
表中、「式(2)~(4)」欄は、式(1)で表される化合物(特定化合物)が、式(2)~式(4)のいずれかで表される化合物である場合「A」とし、上記以外の場合「B」とした。
「式(2)/式(3) X,X=O,S」欄は、特定化合物が、式(2)又は式(3)で表される化合物であり、式(2)及び式(3)中、Xは、上述した-N(RX1)-を表し、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す場合「A」とし、上記以外の場合「B」とした。
「RX1」欄は、特定化合物において、RX1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す場合「A」とし、上記以外の場合「B」とした。
「C-1/C-2」欄は、特定化合物において、A及びAが、式(C-1)又は式(C-2)で表される基である場合「A」とし、上記以外の場合「B」とした。
【0153】
【表1】
【0154】
表1に示す結果より、本発明の光電変換素子は、緑赤色光を受光した際の応答速度が優れ、かつ、応答速度の電界強度依存性が小さいことが確認された。また、本発明の光電変換素子は、緑赤色光を受光した際の量子効率にも優れることが確認された。
また、実施例1~4の対比等から、RX1が、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~5の分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、炭素数3~6の環状の脂肪族炭化水素基、又は置換基群Xから選択される基を有していてもよいフェニル基を表す場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例7とその他の実施例の対比から、特定化合物において、式(A-2)で表される基が、式(C-1)又は式(C-2)で表される基である場合、緑赤色光を受光した際の、応答速度、応答速度の電界強度依存性、及び量子効率がより優れることが確認された。
実施例8~10の対比等から、特定化合物が、式(2)又は式(3)で表される化合物であり、式(2)及び式(3)中、Xは、上述した-N(RX1)-を表し、X及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す場合、緑赤色光を受光した際の、応答速度、応答速度の電界強度依存性、及び量子効率の少なくとも1つの効果がより優れることが確認された。
実施例11~14の対比等から、特定化合物が、式(2)~式(4)のいずれかで表される化合物である場合、緑赤色光を受光した際の、応答速度、応答速度の電界強度依存性、及び量子効率がより優れることが確認された。
【符号の説明】
【0155】
10a,10b 光電変換素子
11 導電性膜(下部電極)
12 光電変換膜
15 透明導電性膜(上部電極)
16A 電子ブロッキング膜
16B 正孔ブロッキング膜
図1
図2