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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031929
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】椎間板再生用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20250228BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/734 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P19/04
A61P43/00 107
A61P43/00 121
A61K31/734
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024229131
(22)【出願日】2024-12-25
(62)【分割の表示】P 2022578547の分割
【原出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021013667
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021167913
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日 令和3年(2021年)年9月8日 (2)集会名: 令和3年度AMED再生・細胞医療・遺伝子治療研究開発交流会 開催形式: ハイブリッド開催(大手町プレイスカンファレンスセンター/Web開催) (3)公開者 須藤英毅 (4)公開された発明の内容 須藤英毅が、令和3年度AMED再生・細胞医療・遺伝子治療研究開発交流会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高純度同種間葉系幹細胞(REC)と硬化性ゲルを用いた腰部脊柱管狭窄症に対する細胞治療」について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼開催日 令和2年(2020年)年2月1日 ▲2▼集会名、開催場所 第138回北海道整形災害外科学会 北海道大学学術交流会館 ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政が、第138回北海道整形災害外科学会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「ウサギ髄核摘出モデルにおける高純度硬化性ゲルと自家骨髄濃縮液による組織修復効果」について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日 令和3年(2021年)年10月15日 (2)集会名: 第36回日本整形外科学会基礎学術集会 開催形式: ハイブリッド開催(三重県営サンアリーナ/Web開催) (3)公開者 須藤英毅、筌場大介、陶山隆史、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、渡部正利喜、伊佐次三津子、松崎有未 (4)公開された発明の内容 須藤英毅、筌場大介、陶山隆史、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、渡部正利喜、伊佐次三津子及び松崎有未が、第36回日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「超高純度同種間葉系幹細胞と硬化性ゲルを用いた変性椎間板に対する細胞治療法の開発」について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日 令和4年(2022年)1月24日 (2)ウェブサイトのアドレス https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(22)00029-9/fulltext (3)公開者 筌場大介、山田勝久、陶山隆史、ダーレン アール レブル(Darren R.Lebl)、辻本武尊、野々山貴行、杉野弘和、岩崎倫政、渡部正利喜、松崎有未、須藤英毅 (4)公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、陶山隆史、ダーレン アール レブル、辻本武尊、野々山貴行、杉野弘和、岩崎倫政、渡部正利喜、松崎有未及び須藤英毅が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたEBioMedicine2022;76:103845にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「超精製された幹細胞とin situで形成する生体吸収性ゲルとの組み合わせは、椎間板の再生を促進する」(Combination of ultra-purified stem cells with an in situ-forming bioresorbable gel enhances intervertebral disc regeneration)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼開催日 令和2年(2020年)2月9日 ▲2▼集会名、開催場所 Orthopedic Research Society 2020 Annual meeting Phoenix Convention Center,Phoenix,AZ,USA(ORS 2020米国整形外科学会議、米国アリゾナ州フェニックス、フェニックスコンベンションセンター) ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政が、ORS 2020米国整形外科学会議にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「Effects of the bioresorbable ultra-purified alginate gel combined with bone marrow derived mesenchymal stem cells or bone marrow aspirate concentrates on intervertebral disc regeneration in rabbits.」(骨髄由来間葉系幹細胞又は骨髄穿刺液濃縮物と組み合わせた生体吸収性超精製アルギン酸ゲルがウサギ椎間板再生に及ぼす影響)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和2年(2020年)9月3日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.congre.co.jp/jssr2020/data/program/jssr2020_abstract.pdf ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、浦 勝郎、辻本武尊、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、浦 勝郎、辻本武尊及び岩崎倫政が、上記アドレスのウェブサイトで公開された第49回日本脊椎脊髄病学会学術集会抄録集にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「ウサギ髄核摘出モデルにおける高純度硬化性ゲルと自家骨髄濃縮液による組織修復効果」について公開した(演題番号:1-P37-5)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼開催日 令和2年(2020年)年9月7日~23日 ▲2▼集会名、開催場所 第49回日本脊椎脊髄病学会学術集会 兵庫県神戸市、神戸コンベンションセンター 発表形式:オンライン(Web掲載) 学術集会ホームページ: http://www.congre.co.jp/jssr2020/ ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、浦 勝郎、辻本武尊、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、浦 勝郎、辻本武尊、岩崎倫政が、第138回北海道整形災害外科学会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「ウサギ髄核摘出モデルにおける高純度硬化性ゲルと自家骨髄濃縮液による組織修復効果」について公開した(演題番号:1-P37-5)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼発行日 令和2年(2020年)年9月14日 ▲2▼刊行物 第35回日本整形外科学会基礎学術集会抄録集,S1721頁 ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政が、第35回日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「骨髄由来間葉系幹細胞とバイオマテリアルによる椎間板細胞治療」について公開した(演題番号:1-8-26)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼開催日 令和2年(2020年)年10月15日 ▲2▼集会名 第35回日本整形外科学会基礎学術集会 開催形式: オンライン学術集会(Live-Web開催) 学術集会ホームページ:https://site2.convention.co.jp/joakiso2020/ ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝、岩崎倫政が、第35回日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「骨髄由来間葉系幹細胞とバイオマテリアルによる椎間板細胞治療」について公開した(演題番号:1-8-26)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼発行日 令和2年(2020年)年9月14日 ▲2▼刊行物 第35回日本整形外科学会基礎学術集会抄録集,S1949頁 ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、岩崎倫政が、第35回日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「自家骨髄濃縮液とバイオマテリアルによる椎間板治療」について公開した(演題番号:Po-62)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼開催日 令和2年(2020年)年10月15日 ▲2▼集会名: 第35回日本整形外科学会基礎学術集会 開催形式: オンライン学術集会(Live-Web開催) 学術集会ホームページ: https://site2.convention.co.jp/joakiso2020/ ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝久、岩崎倫政▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝久、岩崎倫政が、第35回日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「自家骨髄濃縮液とバイオマテリアルによる椎間板治療」について公開した(演題番号:Po-62)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和3年(2021年)1月21日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://journals.lww.com/jbjsjournal/Fulltext/9900/Bone_Marrow_Aspirate_Concentrate_Combined_with_in.120.aspx ▲3▼公開者 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、浦 勝郎、野々山貴行、岩崎倫政、須藤英毅 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、浦 勝郎、野々山貴行、岩崎倫政及び須藤英毅が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたJ Bone Joint Surg Am.2021;00:1-11にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「In situで形成した生体吸収性ゲルと組み合わせた骨髄穿刺液濃縮物はウサギの椎間板再生を促進する」 (Bone Marrow Aspirate Concentrate Combined with in Situ Forming Bioresorbable Gel Enhances Intervertebral Disc Regeneration in Rabbits)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ウェブサイトの掲載日 令和2年(2020年)3月4日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス https://www.ors.org/wp-content/uploads/2020/02/ORS_2020_Program_Book_FINAL.web20920.pdf ▲3▼公開者 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝久、岩崎倫政 ▲4▼公開された発明の内容 筌場大介、須藤英毅、辻本武尊、浦 勝郎、山田勝久及び岩崎倫政が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたEBioMedicine 53(2020)102698にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「変性した椎間板の切除後の再生治療戦略としての超精製アルギン酸ゲルと組み合わせた骨髄間葉系幹細胞」 (Bone marrow mesenchymal stem cells combined with ultra-purified alginate gel as a regenerative therapeutic strategy after discectomy for degenerated intervertebral discs)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日 令和3年(2021年)2月4日 (2)ウェブサイトのアドレス https://www.ors.org/Transactions/67/1192.pdf (3)公開者 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅 (4)公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政及び須藤英毅が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたORS 2021 Annual meeting(Orthopaedic Research Society)にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高度に精製されたヒト間葉系幹細胞とアルギン酸ゲルは、前臨床の大型動物モデルで椎間板の再生を促進する」(Highly-Purified Human Mesenchymal Stem Cells and Alginate Gel promote Intervertebral Disc Regeneration in a Preclinical Large Animal Model)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日 令和3年(2021年)2月12日~8月16日 (2)集会名:ORS 2021 Annual meeting(Orthopaedic Research Society) 開催形式:オンライン学術集会 学術集会ホームページ:https://www.ors.org/2021annualmeeting/ (3)公開者 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅 (4)公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政及び須藤英毅が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたORS 2021 Annual meeting(Orthopaedic Research Society)にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高度に精製されたヒト間葉系幹細胞とアルギン酸ゲルは、前臨床の大型動物モデルで椎間板の再生を促進する」(Highly-Purified Human Mesenchymal Stem Cells and Alginate Gel promote Intervertebral Disc Regeneration in a Preclinical Large Animal Model)について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)発行日 令和3年(2021年)5月15日 (2)刊行物第140回北海道整形災害外科学会 (3)公開者 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅、陶山隆史、松崎有美、渡部正利喜 (4)公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅、陶山隆史、松崎有美及び渡部正利喜が、第140回北海道整形災害外科学会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高純度同種間葉系幹細胞と硬化性ゲルを用いた変性椎間板に対する細胞治療法の開発」について公開した(演題番号:1-I-4-1)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)開催日 令和3年(2021年)6月5日 (2)集会名:第140回北海道整形災害外科学会 開催形式:オンライン学術集会(Live-Web開催) 学術集会ホームページ:http://plaza.umin.ac.jp/~hokuseisai140/ (3)公開者 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅、陶山隆史、松崎有美、渡部正利喜 (4)公開された発明の内容 筌場大介、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、須藤英毅、陶山隆史、松崎有美及び渡部正利喜が、第140回北海道整形災害外科学会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高純度同種間葉系幹細胞と硬化性ゲルを用いた変性椎間板に対する細胞治療法の開発」について公開した(演題番号:1-I-4-1)。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日 令和3年(2021年)9月3日 (2)ウェブサイトのアドレス https://site.convention.co.jp/joakiso2021/ (3)公開者 須藤英毅、筌場大介、陶山隆史、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、渡部正利喜、伊佐次美津子、松崎有未 (4)公開された発明の内容 須藤英毅、筌場大介、陶山隆史、山田勝久、辻本武尊、岩崎倫政、渡部正利喜、伊佐次美津子及び松崎有未が、上記アドレスのウェブサイトで公開された第36回 日本整形外科学会基礎学術集会にて、須藤英毅、筌場大介、伊谷有未及び陶山隆史が発明した、「高純度同種間葉系幹細胞と硬化性ゲルを用いた変性椎間板に対する細胞治療法の開発」について公開した(演題番号:2-4-S14-4)。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療実現拠点ネットワークプログラム技術開発個別課題」「高純度同種間葉系幹細胞(REC)と硬化性ゲルを用いた腰部脊柱管狭窄症に対する細胞治療」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】516385996
【氏名又は名称】PuREC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】須藤 英毅
(72)【発明者】
【氏名】筌場 大介
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】浦 勝郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久崇
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 有未
(72)【発明者】
【氏名】陶山 隆史
(57)【要約】
【課題】椎間板の髄核再生促進用組成物の提供。
【解決手段】低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する、椎間板の髄核再生促進用組成物を提供する。特に、本発明の組成物は、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又はヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する、椎間板再生用組成物。
【請求項2】
間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞が、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、請求項3に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項5】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、請求項3又は4に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項6】
対象の椎間板に適用し、適用後に組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられ、当該適用時には流動性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
椎間板の髄核部位に適用するための請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤が2価以上の金属イオン化合物である、請求項6~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルギン酸の1価金属塩は、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞とを含む椎間板再生用組成物であって、対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用されるための椎間板再生用組成物。
【請求項16】
対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる請求項15に記載の椎間板再生用組成物。
【請求項17】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞が、適用時に未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに適用される請求項15~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、請求項15~18のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項20】
前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、請求項15~19のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項21】
前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、請求項15~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子 量(絶対分子量)が8万以上である、請求項15~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、請求項15~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、請求項15~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、慢性腰痛、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛を伴う、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
椎間板性疼痛を抑制するために用いる、請求項15~23のいずれか1項に記載の組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する、椎間板再生用組成物に関する。本発明は、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞を含有する椎間板再生用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の背骨(脊椎)は24個の骨(椎骨)で構成されており、その椎骨と椎骨との間のクッションの役割を果たす組織を椎間板という。椎間板は、加齢、外傷、疾病などにより変性、損傷が生じる。椎間板の変性は、椎間板の細胞数、水分含有量、細胞外マトリックス(タイプIIコラーゲン、アグリカンなど)等が低下している状態であり、進行すると椎間板のショック吸収体としての機能が果たせなくなる。椎間板変性および椎間板損傷は、具体的には、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、外傷などによる椎間板損傷などである。例えば、椎間板ヘルニアでは、髄核を覆う線維輪が変形または亀裂を生じることによってヘルニアを形成して椎間板外へ突出し、変形また生じた亀裂から逸脱した髄核が、脊髄神経を圧迫し、痛み、麻痺などを引き起こす。
【0003】
椎間板ヘルニアに対する治療の一つに椎間板髄核摘出(切除)術があり、一定の効果が確認されている。しかしながら、椎間板髄核摘出(切除)術では、椎間板髄核摘出術後の手術部位に処置を施さないため、椎間板の変性変化が進行することがあることが知られている。椎間板髄核摘出術で髄核の一部を取り除くと、髄核部位に空洞(本明細書において「欠損部」ともいう)ができる。髄核には自己修復能及び再生能が著しく低いため、髄核の空洞は物理的にも弱くなりやすい。また、空洞部分には、線維芽様細胞が集積して本来の髄核とは力学的特性の異なる組織が形成されることがある。このため、椎間板髄核摘出術後は、ヘルニアの再発率が高い。椎間板髄核摘出後の5年以内の再発率は4~15%程度といわれているが、最近の長期データでは10年後には過半数に再発することが分かってきた。ヘルニアが再発すると再手術が必要になるが、脊髄神経は、1回目の手術後に形成された瘢痕組織の中に埋没しており、脊髄神経の位置を確認することが困難となる。
【0004】
これまで、アルギン酸を基盤とした高純度硬化性ゲルを開発し、ゲル単独投与(無細胞)でも椎間板組織が自然修復することを実証し(特許6487110号、Tsujimoto et al., EBioMedicine 37 (2018) 521-534)、20~49歳の腰椎椎間板ヘルニア患者に対してヘルニア摘出術後にゲルを埋植する臨床試験が実施されている。
【0005】
ところで、間葉系幹細胞 (Mesenchymal Stem Cells:MSC)は、細胞採取に伴う倫理的問題が少なく、骨・軟骨・脂肪などへの多様な分化能を持つことから、造血幹細胞に次いで臨床応用が盛んに行われている体性幹細胞の一つである。MSCは、比較的簡単な手技により分離できることから、主に試験管内で軟骨や骨などへ分化誘導後に局所へ移植するなど、再生医療へ向けた材料として広く用いられている。そして、臨床応用を進める際には、一定の機能を維持する細胞を必要量製造できることが、製品化の必須条件となる。
【0006】
そして、本発明者らは、骨髄液からLNGFR、Thy-1共陽性細胞をフローサイトメトリーにより分離し、増殖の早いクローン(Rapidly Expanding Clone:REC)を得ており、ドナーに由来するMSCの増殖性の差を排除できる精製分離方法を確立した(特許第6463029号、WO2016/017795、Mabuchi Y. et al., Stem Cell Reports 1(2): 152-165, 2013)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6487110号
【特許文献2】特許第6463029号
【特許文献3】国際公開2016/017795号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tsujimoto T et al., An acellular bioresorbable ultra-purified alginate gel promotes intervertebral disc repair: A preclinical proof-of-concept study, EBioMedicine 37 (2018) 521-534
【非特許文献2】Mabuchi Y et al., LNGFR+ Thy-1+ Vcam-1hi+ cells reveal functionally distinct subpopulations in mesenchymal stem cells. Stem Cell Reports 1(2): 152-165, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の通り、これまで、アルギン酸を基盤とした高純度硬化性ゲルを開発し、腰椎椎間板ヘルニア患者に対してヘルニア摘出術後にゲルを埋植する探索的医師主導治験が実施されている。しかしながら、自己修復能及び再生能がほとんどないと言われている髄核は、中高年期ではさらに自己修復能が乏しく、そのような患者にはゲル単独治療では明らかな限界がある。
このため、椎間板組織が修復・再生できるさらなる組成物の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため検討を行った結果、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含む組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明の別の態様では、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞を含む組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する、椎間板再生用組成物。
[1-1] アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する、椎間板再生用組成物。
[2] 間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、[1]又は[1-1]に記載の組成物。
[3] 前記間葉系幹細胞が、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞である[1]~[2]のいずれか1項に記載の組成物。
[4] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[4-1] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、 [3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[4-2] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、 [3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[4-3] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[4-4] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、 [3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[4-5] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、 [3]に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[5] 対象の椎間板に適用し、当該適用時には流動性を有する、 [1]~[4-5]のいずれか1項に記載の組成物。
[5-1] 対象の椎間板髄核部位に適用し、適用後に組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられ、髄核部位への適用時に流動性を有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[5-2] 対象の椎間板髄核部位に適用し、適用後に一部分を硬化するように用いられ、髄核部位への適用時に流動性を有する、 [1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6] 前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、[5]~[5-2] のいずれか1項に記載の組成物。
[7] 前記一部分の硬化は、組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させることにより行われる、[5-2]又は[6]に記載の組成物。
[8] 前記架橋剤が2価以上の金属イオン化合物である、[5-1]又は[7]に記載の組成物。
[8-1] 前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[9] 前記低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、[1]~[8-1]のいずれか1項に記載の組成物。
[10] 低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11] 椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、[1]~[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症を伴う椎間板ヘルニア及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、[11]に記載の組成物。
[12-1] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛 を伴う、[11]又は[12]に記載の組成物。
【0011】
[13] ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞を含有する、対象の椎間板髄核部位に適用される、椎間板再生用組成物。
[14] ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又はヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、[13]に記載の組成物。
[15] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞が、適用時に未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに適用される [13]又は[14]に記載の組成物。
[16] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[16-1] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90) が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[16-2] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90) が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[16-3] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[16-4] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90) が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[16-5] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90) が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[13]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[17] 前記組成物が、細胞を包埋するための担体をさらに含む、[13]~[16-5]のいずれか1項に記載の組成物。
[18] 前記担体が、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびガラクトサミノグリクロングリカン硫酸、並びにこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選択される、[17]に記載の組成物。
[19] 前記担体が、アルギン酸の1価金属塩である[17]に記載の組成物。
[20] 対象の椎間板髄核部位に適用し、適用後に組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられ、髄核部位への適用時に流動性を有する、[13]~[19]のいずれか1項に記載の組成物。
[21] 対象の椎間板髄核部位に適用し、適用後に一部分を硬化するように用いられ、髄核部位への適用時に流動性を有する、[13]~[19]のいずれか1項に記載の組成物。
[22] 前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、[20]又は[21]に記載の組成物。
[23] 前記架橋剤が2価以上の金属イオン化合物である、[20]~[22]のいずれか1項に記載の組成物。
[24] 前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、[19]~[23]のいずれか1項に記載の組成物。
[25] 前記アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、[19]~[24]のいずれか1項に記載の組成物。
[26] 前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、[19]~[25]のいずれか1項に記載の組成物。
[27] 椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、[13]~[26]のいずれか1項に記載の組成物。
[28] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、[27]に記載の組成物。
[28-1] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛を伴う、[27]又は[28]に記載の組成物。
[29] 椎間板性疼痛を抑制するために用いられる、[1]~[28-1]のいずれか1項に記載の組成物。
[30] 前記椎間板性疼痛が、慢性腰痛である[29]に記載の組成物。
【0012】
[31] アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞とを含む椎間板再生用組成物であって、対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用されるための椎間板再生用組成物。
[31-1] 対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、組成物を硬化させる処置を要しない使用のための、上記[31]に記載の椎間板再生用組成物。
[31-2] 対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる上記[31]又は[31-1]に記載の椎間板再生用組成物。
[32] ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又はヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、[31]~[31-2]のいずれか1項に記載の組成物。
[33] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞が、適用時に未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに適用される[31]~[32]のいずれか1項に記載の組成物。
[34] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[31]~[33]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[34-1] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[31]~[33]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[34-2] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[31]~[33]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[34-3] 前記変動係数が35%以下である、[34]~[34-2]のいずれか1項に記載の組成物。
[35] 前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、[31]~[34] のいずれか1項に記載の組成物。
[36] 前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、[31]~[35]のいずれか1項に記載の組成物。
[37] 前記アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、[31]~[36]のいずれか1項に記載の組成物。
[38] 前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、[31]~[37]のいずれか1項に記載の組成物。
[39] 椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、[31]~[38]のいずれか1項に記載の組成物。
[40] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、慢性腰痛、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、[39]に記載の組成物。
[41] 前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛を伴う、[39]又は[40]に記載の組成物。
[42] 椎間板性疼痛を抑制するために用いられる、[31]~[41]のいずれか1項に記載の組成物。
[43] 前記椎間板性疼痛が、慢性腰痛である[42]に記載の組成物。
【0013】
[44] アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞とを含む、椎間板性疼痛抑制用組成物であって、対象の髄核部位に流動性を有する状態で適用されるための組成物。
[44-1] 対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、組成物を硬化させる処置を要しない使用のための、上記[44]に記載の椎間板性疼痛抑制用組成物。
[44-2] 対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる上記[44]又は[44-1]に記載の椎間板性疼痛抑制用組成物。
[45] 前記疼痛が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種を伴う疼痛である、[44]~[44-2]のいずれか1項に記載の組成物。
[46] 前記疼痛が、慢性腰痛である、[44]~[45]に記載の組成物。
[47] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞が、適用時に未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに適用される [44]~[46]のいずれか1項に記載の組成物。
[48] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[44]~[47]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[48-1] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[44]~[47]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[48-2] 前記ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞は、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の細胞に由来する高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団であって、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす細胞集団である、[44]~[47]のいずれか1項に記載の組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
[48-3] 前記変動係数が35%以下である、[48]~[48-2]のいずれか1項に記載の組成物。
[48-4] 前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、[44]~[48-3] のいずれか1項に記載の組成物。
[49] 前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、[44]~[48-4]のいずれか1項に記載の組成物。
[50] 前記アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、[44]~[49]のいずれか1項に記載の組成物。
[51] 前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、[44]~[50]のいずれか1項に記載の組成物。
[52] 対象の椎間板髄核部位に、X線透視下で適用し、髄核部位への適用時に流動性を有し、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる [31]~[51]のいずれか1項に記載の組成物。
[53] 対象の椎間板髄核部位に、X線透視下で圧力計シリンジを用いて適用し、髄核部位への適用時に流動性を有し、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる[52]に記載の組成物。
【0014】
[54] ヒツジ重度椎間板変性モデルを用いて、当該モデルの椎間板に適用した組成物における椎間板の再生能を評価する方法であって、以下の(a1)又は(a2)の工程、及び(b1)又は(b2) の工程を含む方法により作製された重度椎間板変性モデルの椎間板に、細胞含有組成物を投与する工程を含む、前記評価方法。
(a1)ヒツジ椎間板からヒツジ体重の0.00004%~0.00005%に相当する量の髄核組織を除去し、変性椎間板を作製する工程
(a2)ヒツジ椎間板から20mgの髄核組織を除去し、変性椎間板を作製する工程
(b1)前記工程(a1)又は(a2)の4週後に、さらにヒツジ体重の0.00014%~0.000175%に相当する量の髄核組織を除去する工程
(b2)前記工程(a1)又は(a2)の4週後に、さらに70mgの髄核組織を除去する工程
[55] 組成物を投与する工程が、工程(b1)又は(b2)の後に行われる、[54]に記載の方法。
[56] 評価は、組成物投与後に、変性モデルから採取した椎体及び椎間板に対して、MRI、組織染色、免疫組織化学染色(IHC)からなる群から選択される少なくとも1つの評価方法により行う、[54]又は[55]に記載の方法。
【0015】
また本発明は、以下の態様を含む。
[57] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための方法であって、
アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する組成物を、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含む、前記方法。
[58] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための方法であって、
ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞を、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含む、前記方法。
[59] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための方法であって、
ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞及びアルギン酸の1価金属塩を含む組成物を、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含み、前記組成物は、当該髄核部位への適用時に流動性を有する、前記方法。
[60] 椎間板性疼痛の治療、予防または再発抑制のための方法であって、
ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞及びアルギン酸の1価金属塩を含む組成物を、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含み、前記組成物は、当該髄核部位への適用時に流動性を有する、前記方法。
[61] アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞を含有する組成物を、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用し、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制において使用されるためのアルギン酸の1価金属塩および間葉系幹細胞。
[62] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制に使用するための、アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞とを含有する組成物。
[63] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制に使用するための、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞。
[64] 椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制に使用するための、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞及びアルギン酸の1価金属塩を含む組成物であって、当該組成物は、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含み、前記組成物は、当該髄核部位への適用時に流動性を有する、前記組成物。
[65] 椎間板性疼痛の治療、予防または再発抑制に使用するための、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞及びアルギン酸の1価金属塩を含む組成物であって、当該組成物は、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用することを含み、前記組成物は、当該髄核部位への適用時に流動性を有する、前記組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、椎間板の髄核の再生を促進することが可能な髄核補填用組成物が提供される。本発明の組成物によれば、椎間板髄核のみならず線維輪も含めた椎間板組織全体の変性変化も抑制することも可能となる。また、本発明の組成物は、髄核におけるタイプIIコラーゲン陽性の硝子軟骨様細胞の割合を増加させる効果を有する。そして、中高年期の自己修復作用の弱い症例、例えば50歳以上の中高年期に多くみられる混合性の腰部脊柱管狭窄症(脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアを合併)に対しても、再生促進効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、組成物投与時の簡便性、身体への侵襲の低減を考慮し、細胞を包埋するための担体を硬化するための処置なしに用い、椎間板性疾患に伴う疼痛、特に腰痛、より好ましくは慢性的な腰痛を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アルギン酸ナトリウム溶液(以下、「UPAL」(低エンドトキシン高純度アルギン酸ゲル(Ultra-purified alginate gel)という場合がある)を用いた7日間の共培養後の、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA‐SE)で標識した骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)及び非標識髄核細胞(NPC)の分離のための細胞選別データを示す図。(a) : 共培養細胞の二次元(2D)ドットプロット。P1ゲートは、単一の生細胞の周りに配置された。(b): 分類されたP2ゲート中の非標識NPC及びP3ゲート中のCFDA-SE標識BMSCの2Dドットプロット。FSC-A:前方散乱領域; FSC-W:前方散乱幅; SSC-A:側方散乱領域; CFDA-SE-A: CFDA-SE-領域。各細胞の遺伝子発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHを基準とし、対数スケール(y軸)でプロットした。データは、4つの異なるウサギNPC系統の平均値である。(c) : HIF-1α、(d): GLUT-1、(e): Brachyury、(f): CDMP-1、(g): TGF-β、(h): IGF-1、(i):II型コラーゲン、及び(j):アグリカン。データは平均値±標準誤差で表し、p値はTukey-Kramerの事後検定を用いた一元配置分散分析により求めた。
図2】骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)が椎間板(IVD)で生存することを示す図。 カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA‐SE)で標識した移植後の骨由来間葉系幹細胞(BMSC)は、術後4週目及び12週目の椎間板(IVD)で生存する。IVDの凍結切片を4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。画像は、4回の反復試験(無傷対照及びBMSC+Gel、n = 4; 4週間及び12週間)の代表である。スケールバー=50μm。
図3】骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と組み合わせたゲルは、椎間板切除後の変性椎間板(IVD)の水分含量を保存することを示す図。(a): 術後4週目と12週目の変性IVDのT2強調、正中矢状断像。画像は、8回の撮像の代表画像である。(b): IVD変性のPfirrmann分類。データは平均値±標準誤差(無傷の対照、穿刺, 椎間板切除,ゲル, 及びBMSC +ゲル, n=8; 4週及び12週)である。(c)NPの変性変化に対する磁気共鳴イメージング(MRI)index(髄核(NP)面積×平均信号強度)。数値は、無傷の対照IVDと比較した割合(%)として表される。データは平均値±標準誤差であり、Tukey-Kramer検定を用いて事後解析を伴う一元配置分散分析によりp値を求めた。
図4】骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と組み合わせたゲルは、椎間板切除後の椎間板(IVD)変性を予防することを示す図。(a, b):ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)又はサフラニンOで染色されたIVDの正中矢状断切片画像(8回の実験画像の代表例) (無傷対照(Intact control)、穿刺(Puncture)、椎間板切除(Discectomy)、ゲル、BMSC+ゲル、n = 8; 4及び12週間)。AF: 線維輪、NP:髄核。スケールバー=(A):500μm(上から1番目及び3番目のセクション)、50mm(上から2番目及び4番目のセクション)、及び(B):500μm。(c) : 4週目と12週目の組織学的変性度を示す。データは平均値±標準誤差であり、p値はTukey-Kramerの事後検定を用いた一元配置分散分析により求めた。
図5】ウサギ髄核(NP)におけるII型コラーゲン陽性細胞を示す図。(a):ウサギ椎間板(IVD)の正中矢状断切片をII型コラーゲンに対して染色した。画像は、8回の反復実験結果 (無傷対照、穿刺、椎間板切除、ゲル、BMSC+ゲル、n= 8; 4及び12週間)の代表画像である。矢印は、II型コラーゲンに対して陽性の細胞を示す。スケールバー=500μm (上から1番目及び3番目のセクション)及び20μm (上から2番目及び4番目のセクション)。(b): II型コラーゲン陽性細胞の割合。データは平均値±標準誤差であり、p値はTukey-Kramerの事後検定を用いた一元配置分散分析により求めた。
図6】ウサギNPにおける髄核(NP)マーカー陽性細胞を示す図。(a-c):1、7、28日目にHIF-1α、GLUT-1、Brachyury染色したウサギ椎間板(IVD)の水平切片。画像は4回の反復実験(無傷対照、椎間板切除、及びBMSC+ゲル、n=4; day 1、7、28)の代表画像である。スケールバー=50μm。(d-f):全細胞に対するNPマーカー陽性細胞の割合。(g-i):CFDA-SE陽性細胞(移植されたBMSCを代表する)に対するNPマーカー陽性細胞の割合。データは平均±標準誤差であり、p値は対応のあるt検定を用いて決定した。
図7】椎間板(IVD)再生のメカニズムを示す図。 移植された骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)は、既存の髄核細胞(NPC)の活性化をもたらす成長因子と細胞外マトリックス(ECM)を産生する。既存のNPC活性化はまた、増殖因子及びECMの産生を増加させる。移植されたBMSCはNPCに分化する。UPAL:超精製アルギン酸塩(低エンドトキシン高純度アルギン酸塩ともいう)。
図8】RECクローンの網羅的解析結果を示す図である。
図9】ヒトの健常椎間板髄核細胞(NPC)及び高純度間葉系細胞(REC)における各種遺伝子の発現量を示す図。
図10】移植後4週目のヒツジモデルにおける椎間板のMRIの結果を示す図。
図11】移植後4週目のヒツジモデルにおける椎間板の組織学的検査結果を示す図。
図12】移植後4週目のヒツジモデルにおける椎間板の組織学的検査結果を示す図。
図13】3D共培養の7日後のヒトNPC及びRECの発現プロフィールを示す図。(A) REC単離を示す概略図。CD271(LNGFR)及びCD90(THY-1)について染色したヒト骨髄細胞のフローサイトメトリープロフィール。1ウェルから収集した細胞を35mm培養皿に播種し、14日まで増殖させて、高い分化能及び増殖能を有する均一な細胞集団を得る。(B及びC) 細胞選別データを用いて、CFDA-SE標識RECと非標識NPCとを区別する。(B) P1ゲートは、死細胞及び残屑生細胞を排除する。(C) P2ゲートでのラベルなしNPCとP3ゲートでのCFDA-SE標識RECを示す2Dドットプロット。(D~K) 各細胞の遺伝子発現レベルをハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現レベルに対して正規化し、対数スケール(y軸)でプロットした。4つの異なるヒトNPC株から得られたデータを平均化した。(D)HIF‐1α, (E)GLUT‐1,(F)brachyury,(G)CDMP‐1,(H)TGF‐β,(I)IGF‐1,(J)II型コラーゲン、(K)アグリカン データは、平均± SD値(n = 4)として表す。有意差は、post hoc Tukey-Kramer検定による一元配置分散分析で評価した。 NPC:髄核細胞 REC:急速に増殖するクローン CFDA-SE:5,6-カボキシフルオレセインジアクタトスクシニミジルエステル ANOVA:分散分析 FSC-A:前方散乱面積 FSC-W:前方散乱幅 SSC-A:側方散乱面積 CFDA-SE-A:CFDA-SE面積
図14】2種類のゲルの弾性比を示す図。(A) CaCl2で誘導させたゲル化(直径、4.5mm;厚さ、2mm)後の円盤状UPAL及びREC + UPALゲルの形成。(B及びC) 引張圧縮機械試験装置。サンプルを0.5mm/分の一定速度で圧縮した。(D) 応力歪曲線。ヤング率は、圧縮値10~20%の間の接線の傾きに従って計算した。4つの反復試験を行い、代表的な画像を示す。(E) 2種類のゲルのヤング率。データは、平均± SD値(n = 4)を示す。有意差はWelchの検定後、Student's t-testにより評価した。 N.S:有意差なし UPAL:超精製アルギン酸塩(低エンドトキシン高純度アルギン酸塩ともいう) REC:迅速に増殖するクローン SD:標準偏差
図15】各群の実験スケジュール及び治療の詳細を示す図。(A及びB) 最初の手術で20mgの新鮮なNP組織を処置IVDから除去して、重度の変性IVDモデルを確立した。(C) 最初の手術の4週間後、70mgの変性NP組織を変性IVDからさらに除去した。(D) 変性NPの除去後、UPAL又はREC + UPAL溶液を椎間板内の空隙に移植した。 NP:髄核 UPAL:超精製アルギン酸(低エンドトキシン高純度アルギン酸ともいう) IVD:椎間板
図16】埋植後4週目及び24週目における治療したIVDのMRI評価を示す図。(A) ヒツジにおける術後4週目及び24週目のIVDのT2強調、正中矢状断画像。画像は、6又は8回の反復結果の代表である。(B) PfirrmannグレードのIVD変性。(C) NPの変性変化に対するMRI指数(NP面積×平均シグナル強度)値。数値は、無処置の対照IVDについての値に対する割合(%)として表される。(D) IVD治療のための椎間板高さ指数。数値は、無処置の対照IVDの数値に対する割合(%)として示す。データは、平均 ± SD値として表す (無処置対照, n = 6; 椎間板切除, n = 6; ゲル, n = 8; REC + gel, n =8)。有意差は、Tukey‐Kramer検定を用いたpost hoc解析による一元配置ANOVAにより評価した。 NP:髄核 MRI:磁気共鳴画像法 IVD:椎間板 ANOVA:分散分析 SD:標準偏差
図17】埋植4週後及び24週後の治療したIVDの組織学的評価を行った結果を示す図。(A及びB) H&E又はサフラニン-O染色によって染色された処理IVDの代表的な正中矢状切片(無処置対照、n=6;椎間板切除術、n=6;ゲル、n=8; REC +ゲル、n = 8)。スケールバー(A);50μm(上から2番目及び4番目の部分)又は1mm(上から1番目及び3番目の部分)(B);1mm。(C) 組織学的グレードは、改変Boos分類を介して決定した。データは平均値±標準偏差で表す。有意差はpost hoc Tukey-Kramer検定による一元配置分散分析で評価した。 IVD:椎間板 H&E:ヘマトキシリン&エオシン SD:標準偏差 AF:線維輪 NP:髄核
図18】埋植4週後及び24週後の処置IVDにおけるII型又はI型コラーゲン陽性細胞を示す図。(A及びB) II型コラーゲン又はI型コラーゲンについて染色された処置IVDの代表的な正中矢状切片(無処置対照、n=6;椎間板切除術、n=6;ゲル、n=8; REC +ゲル、n = 8)。スケールバー、1mm(第1及び第3のライン)又は50μm(第2及び第4のライン)。(C及びD) 処置されたIVD中の総細胞に対するII型又はI型コラーゲン陽性細胞の割合。データは平均値±標準偏差で表す。有意差はpost hoc Tukey-Kramer検定による一元配置分散分析で評価した。 IVD:椎間板 REC:急速増殖クローン SD:標準偏差 ANOVA:分散分析
図19】NP組織除去後4週目の組織学的評価を示す図。(A) IVDから除去したNP組織(無処置対照、又は20、50、100、200mg除去)の中矢状部(H&E又はサフラニン-Oで染色)。ヒツジモデルにおいて、4週間後にNP組織の20mg以上の除去に伴ってIVD変性が生じた。スケールバー; 1mm(全て)。(B)組織学的グレードは、改変Boos分類を介して決定した。データは平均値±標準偏差。 NP:髄核 IVD:椎間板 H&E:ヘマトキシリン及びエオシン SD:標準偏差
図20】T2強調中間矢状画像を用いた、隣接する椎骨の椎間板高さに対する椎間板高さの測定結果を示す図。BCとEFはそれぞれ前方及び後方椎間板高であり、ABとDEは頭側の隣接椎体高である。椎間板高さ(BC + EF)と椎体高さ(AB + DE)との比としてDHI値を計算し、無処置対照IVDのDHIに対する処置IVDのDHIの比として相対DHI値を計算した。 DHI:椎間板高さ指数 IVD:椎間板
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.概要
本発明は、アルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞(例えばヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞)とを含有する、椎間板再生用組成物に関する。本発明の一態様において、本発明は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩と間葉系幹細胞(例えばヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞)とを含有する、椎間板再生用組成物に関する。本発明の組成物は、間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する。本発明の組成物は、対象の髄核部位に適用し、適用後に一部分を硬化するように用いられる。本発明のいくつかの態様では、本発明の組成物は、対象の髄核部位に適用し、表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられる。
【0020】
本発明においては、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)とゲルとの併用によって、ゲル単独よりも組織修復効果が有意に促進されたことをウサギ由来の間葉系幹細胞を用いたin vivo試験で実証し、そのメカニズムとして、ゲル包埋のBMSCsと髄核細胞の共培養によって、1)成長因子産生による両細胞の相互活性化、2)BMSCsの髄核細胞への分化、3)両細胞からの細胞外基質産生能の向上を明らかにした。
【0021】
本発明の組成物に含まれるアルギン酸は、カジメ、アラメ、コンブなどの褐藻類から抽出される多糖類であり、カルシウムなどの2価の金属イオンを加えると架橋し硬化する性質を有する。この性質を利用して、患部で金属イオンと接触させることにより、表面を硬化させ、患部へ留めることが可能となる。本発明において、低エンドトキシンアルギン酸ナトリウムを含む組成物をゾル状態で椎間板髄核部位に注入し、注入口に架橋剤を接触させて組成物の一部を硬化させると、髄核の変性を抑制し、髄核再生に好ましいタイプIIコラーゲン陽性細胞の割合を増加させ、椎間板髄核の再生を促進することを見出した。
【0022】
本発明において、間葉系幹細胞をアルギン酸(例えば低エンドトキシンアルギン酸)の1価金属塩で包埋することで、埋植された間葉系幹細胞は患部にとどまり長期的に効果を発揮する。すなわち、埋植された高純度間葉系幹細胞が成長因子や細胞外基質を産生し、髄核細胞を活性化する。そして、活性化された髄核細胞は成長因子や細胞外基質を産生する。その結果、埋植された間葉系幹細胞は髄核細胞へと分化し、髄核細胞と間葉系幹細胞との相互作用を介して障害部の再生が促進される。本発明の別の態様では、ヒアルロン酸などの生体適合性材料に細胞を包埋し得る。
【0023】
また、本発明の組成物に含まれる間葉系幹細胞において、その一態様であるヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞(REC)は、2種類の抗体とセルソータにより骨髄から直接分離する技術により作製される超高純度ヒト間葉系幹細胞である。セルソーターを用いた分離によって均一な細胞集団が得られるため品質管理が容易であり、かつ増殖性が極めて高いため大量培養による製剤化が可能である。
【0024】
本発明は、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞を含有する、椎間板再生用組成物にも関する。本発明の一態様では、本発明の組成物は、未分化状態で及び/又は分化誘導の処置なしに椎間板髄核に適用される。本発明の組成物は、ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する。本発明の組成物は、対象の髄核部位に適用し、表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられ得る。本発明の一態様では、本発明の組成物は、対象の髄核部位に適用し、適用後に一部分を硬化するように用いられ得る。
【0025】
2.定義
「低エンドトキシン」、「アルギン酸の1価金属塩」は後述する。
「椎間板」は、脊椎に連なる椎骨と椎骨との間にある円柱状の組織である。椎間板は、円板状の無血管組織であり、髄核を中心にして周りを線維輪が取り巻き、さらに上下に終板が配置された構造をしている。
「髄核」は、椎間板の中心に存在するゲル状の組織であり、髄核細胞と、主にプロテオグリカンとII型コラーゲンで構成される細胞外基質と、水を主として含有する。髄核には、自己修復能・再生能が著しく低いと考えられている。
【0026】
「髄核補填」とは、加齢、外傷、感染、およびそれらに対する外科的手術(例えば、椎間板髄核摘出(切除)術)などにより、変性、縮小、または除去した髄核の変性分、縮小分、または除去分を補填することをいう。なお、本明細書において「髄核充填」の語は、「髄核補填」と同じ意味で用いられ、本発明の「髄核補填用組成物」は「髄核充填用組成物」と同義である。
「髄核部位」とは、髄核が存在する部位、髄核の変性若しくは縮小が生じている部位、又は、髄核の少なくとも一部を除去することで形成された髄核の欠損部をいい、髄核が存在する部位の周辺部も含む。
【0027】
「対象」は、ヒト、またはヒト以外の生物、例えば、トリおよび非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、イヌ、ウサギ、ヒツジ、およびウマ)である。
「適用」とは、本発明の組成物を椎間板の髄核部位の変性分、縮小分、除去分、欠損部などを埋めるのに十分な量で髄核部位に充填することを意味する。
「包埋する」とは、生体適合性材料、好ましくは、アルギン酸の1価金属塩の溶液に細胞を懸濁又は混合することをいう。
「一部分を硬化する」とは、後述の通りである。
【0028】
「低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含有する」とは、本発明の組成物が、適用された髄核部位において、髄核を再生するのに十分な量の低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含有することを意味する。
「流動性を有する」とは、後述の通りである。
「椎間板変性および/または椎間板損傷」、「治療、予防または再発抑制」とは、後述の通りである。
「椎間板性疼痛」とは、椎間板に起因して生じる疼痛のことを意味する。
「腰痛」とは、椎間板の周囲に生じる疼痛であり、背部痛・臀部痛を含む。
「慢性腰痛」とは、腰痛の発症から12週以上続く腰痛を意味する。
【0029】
本発明の組成物は、溶媒を用いて溶液状態で提供されてもよいし、凍結乾燥体(特には、凍結乾燥粉体)などの乾燥状態で提供されてもよい。乾燥状態として提供される場合、本発明の組成物は、適用時には溶媒を用いて、溶液状などの流動性を有する状態で使用される。溶媒は、生体へ適用可能な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、注射用水、精製水、蒸留水、イオン交換水(または脱イオン化水)、ミリQ水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。好ましくは、ヒトおよび動物の治療に用いることが可能な注射用水、蒸留水、生理食塩水などである。
【0030】
3.アルギン酸の1価金属塩
本発明において、担体として使用される「アルギン酸の1価金属塩」は、アルギン酸の6位のカルボン酸の水素原子を、NaやKなどの1価金属イオンとイオン交換することでつくられる水溶性の塩である。アルギン酸の1価金属塩としては、具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどを挙げることができるが、特に、市販品により入手可能なアルギン酸ナトリウムが好ましい。アルギン酸の1価金属塩の溶液は、架橋剤と混合したときにゲルを形成する。
【0031】
本発明に用いる「アルギン酸」は、生分解性の高分子多糖類であって、D-マンヌロン酸(M)とL-グルロン酸(G)という2種類のウロン酸が直鎖状に重合したポリマーである。より具体的には、D-マンヌロン酸のホモポリマー画分(MM画分)、L-グルロン酸のホモポリマー画分(GG画分)、およびD-マンヌロン酸とL-グルロン酸がランダムに配列した画分(MG画分)が任意に結合したブロック共重合体である。アルギン酸のD-マンヌロン酸とL-グルロン酸の構成比(M/G比)は、主に海藻等の由来となる生物の種類によって異なり、また、その生物の生育場所や季節による影響を受け、M/G比が約0.4の高G型からM/G比が約5の高M型まで高範囲にわたる。
【0032】
アルギン酸の1価金属塩は高分子多糖類であり、分子量を正確に定めることは困難であるが、分子量が低すぎると粘度が低くなり、適用した部位の周辺組織への密着性が弱くなる恐れがあり、また、分子量が高すぎるものは製造が困難であるとともに、溶解性が低下する、溶液状にした際に粘度が高すぎて取扱いが悪くなる、長期間の保存で物性を維持しにくい等の問題を生じるため、一般的に重量平均分子量で1万~1000万、好ましくは2万~800万、より好ましくは5万~500万の範囲である。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0033】
一方、天然物由来の高分子物質の分子量測定では、測定方法により値に違いが生じうることが知られている。例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又はゲルろ過クロマトグラフィー(これらを合わせてサイズ排除クロマトグラフィーともいう)により測定した重量平均分子量は、本発明の実施例で示された効果によれば、好ましくは10万以上、より好ましくは50万以上であり、また好ましくは、500万以下、より好ましくは300万以下である。その好ましい範囲は、10万~500万であり、より好ましくは50万~350万である。
【0034】
また、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と多角度光散乱検出器(Multi Angle Light Scattering:MALS)とを組み合わせたGPC-MALS法によれば、絶対重量平均分子量を測定することができる。GPC-MALS法により測定した重量平均分子量(絶対分子量)は、本発明の実施例で示された効果によれば、好ましくは1万以上、より好ましくは8万以上、さらに好ましくは9万以上であり、また好ましくは、100万以下、より好ましくは80万以下、さらに好ましくは70万以下、とりわけ好ましくは50万以下である。その好ましい範囲は、1万~100万であり、より好ましくは8万~80万であり、よりさらに好ましくは9万~70万、とりわけ好ましくは9万~50万である。
【0035】
通常、高分子多糖類の分子量を上記のような手法で算出する場合、10~20%以上の測定誤差を生じうる。例えば、40万であれば32~48万、50万であれば40~60万、100万であれば80~120万程度の範囲で値の変動が生じうる。
【0036】
アルギン酸の1価金属塩の分子量の測定は、常法に従い測定することができる。
分子量測定にゲル浸透クロマトグラフィーを用いる場合の代表的な条件は、本明細書の実施例に記載のとおりである。カラムは、例えば、GMPW-XL×2+G2500PW-XL(7.8mm I.D.×300mm)を用いることができ、溶離液は、例えば、200mM硝酸ナトリウム水溶液とすることができ、分子量標準としてプルランを用いることができる。
【0037】
分子量測定にGPC-MALSを用いる場合の代表的な条件は、本明細書の実施例に記載のとおりである。検出器として、例えば、RI検出器と光散乱検出器(MALS)を用いることができる。
【0038】
アルギン酸の1価金属塩は、褐藻類から抽出された当初は、分子量が大きく、粘度が高めだが、熱による乾燥、精製などの過程で、分子量が小さくなり、粘度は低めとなる。製造工程の温度等の条件管理、原料とする褐藻類の選択、製造工程における分子量の分画などの手法により分子量の異なるアルギン酸の1価の金属塩を製造することができる。さらに、異なる分子量あるいは粘度を持つ別ロットのアルギン酸の1価金属塩と混合することにより、目的とする分子量を有するアルギン酸の1価金属塩とすることも可能である。
【0039】
本発明に用いられるアルギン酸の1価金属塩は、好ましくは、アルギン酸の1価金属塩をMilliQ水に溶解して1w/w%濃度の溶液とし、コーンプレート型粘度計を用いて、20℃の条件で、粘度測定を行ったときの見掛け粘度が、40mPa・s~800mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、50mPa・s~600mPa・sであることが望ましい。見掛け粘度の測定条件は、後述の条件に従うことが望ましい。なお、本明細書において「見掛け粘度」を単に「粘度」という場合がある。
【0040】
本発明に用いるアルギン酸は、天然由来でも合成物であってもよいが、天然由来であるのが好ましい。天然由来のアルギン酸としては、例えば、褐藻類から抽出されるものを挙げることができる。アルギン酸を含有する褐藻類は世界中の沿岸域に繁茂しているが、実際にアルギン酸原料として使用できる海藻は限られており、南米のレッソニア、北米のマクロシスティス、欧州のラミナリアやアスコフィラム、豪のダービリアなどが代表的なものである。アルギン酸の原料となる褐藻類としては、例えば、レッソニア(Lessonia)属、マクロシスティス(Macrocystis)属、ラミナリア(Laminaria)属(コンブ属)、アスコフィラム(Ascophyllum)属、ダービリア(Durvillea)属、アラメ(Eisenia)属、カジメ(Ecklonia)属などがあげられる。
【0041】
本発明の別の態様では、細胞を包埋するための担体として、他の生体適合性材料を用いてもよい。たとえば、その薬学的に許容可能な塩(生理学的塩)を含む、ヒアルロン酸(HA)、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ガラクトサミノグリシロングリカン(galactosaminoglycuronglycan)硫酸(GGGS)などの1つもしくは複数の天然もしくは合成グリコサミノグリカン(GAG)またはムコ多糖類を、細胞を包埋するための担体として用いてもよい。本発明の別の態様では、細胞を包埋するための担体として、特に限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、アガロース、キチン、キトサン、でんぷん、ペクチン等の多糖類、ゼラチン、コラーゲン、ポリペプチド等のタンパク質、アミノ酸誘導体およびこれらの共重合体並びにこれらの誘導体から選択されるものであって、いずれか1つもしくは複数が用いられてもよい。本発明の別の態様では、担体としてコラーゲンやゼラチン様組成物といったハイドロゲルを使用してもよい。
【0042】
4.低エンドトキシン処理
本発明で用いるアルギン酸の1価金属塩は特に限定されるものではなく、例えば低エンドトキシンのアルギン酸の1価金属塩である。本発明の一態様では、細胞を包埋するための担体は、低エンドトキシンであることが好ましい。すなわち、本発明で用いるアルギン酸の1価金属塩は、低エンドトキシンのアルギン酸の1価金属塩であることが好ましい。低エンドトキシンとは、実質的に炎症、または発熱を惹起しない程度にまでエンドトキシンレベルが低いことをいう。より好ましくは、低エンドトキシン処理されたアルギン酸の1価金属塩であることが望ましい。
【0043】
低エンドトキシン処理は、公知の方法またはそれに準じる方法によって行うことができる。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムを精製する、菅らの方法(例えば、特開平9-324001号公報など参照)、β1,3-グルカンを精製する、吉田らの方法(例えば、特開平8-269102号公報など参照)、アルギネート、ゲランガム等の生体高分子塩を精製する、ウィリアムらの方法(例えば、特表2002-530440号公報など参照)、ポリサッカライドを精製する、ジェームスらの方法(例えば、国際公開第93/13136号パンフレットなど参照)、ルイスらの方法(例えば、米国特許第5589591号明細書など参照)、アルギネートを精製する、ハーマンフランクらの方法(例えば、Appl Microbiol Biotechnol (1994)40:638-643など参照)等またはこれらに準じる方法によって実施することができる。本発明の低エンドトキシン処理は、それらに限らず、洗浄、フィルター(エンドトキシン除去フィルターや帯電したフィルターなど)によるろ過、限外ろ過、カラム(エンドトキシン吸着アフィニティーカラム、ゲルろ過カラム、イオン交換樹脂によるカラムなど)を用いた精製、疎水性物質、樹脂または活性炭などへの吸着、有機溶媒処理(有機溶媒による抽出、有機溶剤添加による析出・沈降など)、界面活性剤処理(例えば、特開2005-036036号公報など参照)など公知の方法によって、あるいはこれらを適宜組合せて実施することができる。これらの処理の工程に、遠心分離など公知の方法を適宜組み合わせてもよい。アルギン酸の種類などに合わせて適宜選択するのが望ましい。
【0044】
エンドトキシンレベルは、公知の方法で確認することができ、例えば、リムルス試薬(LAL)による方法、エントスペシー(登録商標)ES-24Sセット(生化学工業株式会社)を用いる方法などによって測定することができる。
【0045】
本発明の組成物に含有されるアルギン酸の1価金属塩のエンドトキシンの処理方法は特に限定されないが、その結果として、アルギン酸の1価金属塩のエンドトキシン含有量が、リムルス試薬(LAL)によるエンドトキシン測定を行った場合に、500エンドトキシン単位(EU)/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは、100EU/g以下、とりわけ好ましくは50EU/g以下、特には30EU/g以下である。低エンドトキシン処理されたアルギン酸ナトリウムは、例えば、Sea Matrix(登録商標)(持田製薬株式会社)、PRONOVATMUP LVG(FMC BioPolymer)など市販品により入手可能である。
このように低エンドトキシン処理されたアルギン酸ナトリウムを、本明細書では「高純度アルギン酸ナトリウム」(UPAL)ともいう。
【0046】
5.アルギン酸の1価金属塩の溶液の調製
本発明の組成物は、アルギン酸の1価金属塩の溶液を用いて調製してもよい。アルギン酸の1価金属塩の溶液は、公知の方法またはそれに準じる方法により調製することができる。すなわち、本発明で用いられるアルギン酸の1価金属塩は、前述の褐藻類を用いて、酸法、カルシウム法など公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、これらの褐藻類から、炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いて抽出した後、酸(例えば、塩酸、硫酸など)を添加することによってアルギン酸を得ることができ、アルギン酸のイオン交換によりアルギン酸の塩を得ることができる。前述のとおり、低エンドトキシン処理を行う。アルギン酸の1価金属塩の溶媒は、生体へ適用可能な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、ミリQ水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。これらは、滅菌されていることが好ましく、低エンドトキシン処理されたものが好ましい。例えば、ミリQ水をろ過滅菌して用いることができる。
【0047】
本発明の組成物が、凍結乾燥体などの乾燥状態で提供される場合にも、上記の溶媒を用いて流動性のある溶液に調製することができる。
また、本発明の組成物を得るための操作は全てエンドトキシンレベル、および、細菌レベルの低い環境下で行うことが望ましい。例えば、操作はクリーンベンチで、滅菌器具を使用して行うことが好ましく、使用する器具を市販のエンドトキシン除去剤で処理してもよい。
【0048】
6.本発明の組成物の見掛け粘度
本発明のいくつかの態様の組成物は、流動性のある液体状、すなわち、溶液状である。本発明の組成物は、髄核部位への適用時に流動性を有する。本発明の態様の1つでは、好ましくは、本発明の組成物は、組成物を20℃で1時間静置した後に、21Gの注射針で注入できる流動性を有する。この態様の本発明の組成物の見掛け粘度は、本発明の効果が得られれば、特に限定されないが、粘度が低すぎると適用した部位の周辺組織への密着性が弱くなる恐れがあるため、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは200mPa・s以上、とりわけ好ましくは500mPa・s以上である。見掛け粘度が高すぎると取扱性が悪くなる恐れがあるため、好ましくは50000mPa・s以下、より好ましくは20000mPa・s以下であり、さらに好ましくは10000mPa・s以下である。見掛け粘度が20000mPa・s以下のときシリンジ等での適用がより容易に行える。しかし、見掛け粘度が20000mPa・s以上であっても加圧型や電動型の充填器具やその他の手段を用いて適用可能である。本発明の組成物の好ましい範囲は、10mPa・s~50000mPa・s、より好ましくは、100mPa・s~30000mPa・s、さらに好ましくは200mPa・s~20000mPa・s、またさらに好ましくは500mPa・s~20000mPa・s、とりわけ好ましくは700mPa・s~20000mPa・sである。別の好ましい態様では、500mPa・s~10000mPa・s、あるいは2000mPa・s~10000mPa・sであってもよい。本発明のいくつかの態様の組成物は、シリンジ等で対象に適用することもできる粘度である。
【0049】
アルギン酸類の水溶液などアルギン酸の1価金属塩を含有する組成物の見掛け粘度の測定は、常法に従い測定することができる。例えば、回転粘度計法の、共軸二重円筒形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)、円すい-平板形回転粘度計(コーンプレート型粘度計)等を用いて測定することができる。好ましくは、日本薬局方(第16版)の粘度測定法に従うことが望ましい。本発明において粘度測定は20℃の条件で行うことが望ましい。後述のように本発明の組成物が細胞など溶媒に溶解しないものを含有する場合には、粘度測定を正確に行うため、組成物の見掛け粘度は、細胞などを含有しない状態の見掛け粘度とすることが好ましい。
【0050】
本発明においては、アルギン酸の1価金属塩を含有する組成物の見掛け粘度の測定は、特に、コーンプレート型粘度計を用いて測定することがより望ましい。例えば、以下のような測定条件で測定することが望ましい。試料溶液の調製は、MilliQ水を用いて行う。測定温度は20℃とする。コーンプレート型粘度計の回転数は、アルギン酸1価金属塩の1%溶液測定時は1rpm、2%溶液測定時は0.5rpmとし、これを目安にして決定する。読み取り時間は、アルギン酸1価金属塩の1%溶液測定の場合は2分間測定し、開始1分から2分までの平均値とする。2%溶液測定の場合は2.5分間測定し、開始0.5分から2.5分までの平均値とする。試験値は3回の測定の平均値とする。
【0051】
本発明の組成物の見掛け粘度は、例えば、アルギン酸の1価金属塩の濃度、分子量、又はM/G比等を制御することにより調整することができる。
アルギン酸の1価金属塩の溶液の見掛け粘度は、溶液中のアルギン酸1価金属塩濃度が高い場合に粘度が高く、濃度が低い場合に粘度が低くなる。またアルギン酸1価金属塩の分子量が大きい場合に粘度が高く、分子量が小さい場合に粘度が低くなる。
【0052】
アルギン酸の1価金属塩の溶液の見掛け粘度は、M/G比によって影響を受けるため、例えば、溶液の粘度等により好ましいM/G比を有するアルギン酸を適宜選択することができる。本発明に用いるアルギン酸のM/G比は、約0.1~5.0であり、好ましくは約0.1~4.0、より好ましくは約0.2~3.5である。
前述のように、M/G比が主に海藻の種類によって決まることなどから、原料として用いられる褐藻類の種類はアルギン酸の1価金属塩の溶液の粘度に影響を及ぼす。本発明で用いられるアルギン酸としては、好ましくは、レッソニア属、マクロシスティス属、ラミナリア属、アスコフィラム属、ダービリア属の褐藻由来であり、より好ましくはレッソニア属の褐藻由来であり、特に好ましくはレッソニア・ニグレッセンズ(Lessonia nigrescens)由来である。
【0053】
7.間葉系幹細胞
本発明において使用される間葉系幹細胞は、中胚葉性組織(間葉)に由来する体性幹細胞であり、骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されている。
間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、歯髄又は臍帯組織等の種々の組織から取得できる。その精製プロセスは、例えば以下のとおりである。
ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、イヌ、ウサギ、ヒツジ、およびウマヤギ、ウサギ等 )から採取した少量の脂肪片を酵素処理して得られる細胞型の混合集団から、遠心分離によって浮遊性の脂肪細胞集団を分離し、培養液を満たした培養器の天井面に接触させた状態で静置したときに下床面に沈降して増殖する線維芽様細胞を継代培養によって増殖させる。
また、本発明においては、iPS細胞由来の間葉系幹細胞や、市販の間葉系幹細胞を使用することも可能である。本発明において、間葉系幹細胞は、好ましくは未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに髄核に適用される。未分化状態とは、分化能を有する幹細胞が分化していない状態が維持されていることをいう。「分化誘導の処置なしに」とは、例えば、分化能を有する幹細胞を分化誘導培地を用いて特定の細胞に分化させる等の処置をしないことを指す。
【0054】
8.ヒト骨髄由来高純度間葉系幹細胞
(1)RECクローン
本発明者は、以前の研究により、LNGFR(CD271)が陽性の間葉系幹細胞(CD271+細胞)、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の間葉系幹細胞(CD271+CD90+細胞)の中から、増殖が早い高速増殖性の細胞クローン(Rapidly Expanding Clone:REC)を単離することに成功した。
【0055】
このRECは、96ウェルプレートに1個ずつ細胞を播種して培養したときに、2週間でコンフルエントに達することができる細胞であり、従来法で得た間葉系幹細胞と比較し、増殖能、分化能及び遊走能の全てが1000倍以上の能力を有する。そして、特に遊走能を保持しているため、経静脈内投与が可能となり、骨・軟骨形成不全症等の重篤な全身性疾患への応用が期待できる。
本発明においては、上記RECクローンのうち、分化能や増殖能においてばらつきの少ない細胞クローンを使用することができる。
【0056】
本発明の細胞クローンを含む細胞集団は、LNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であり、かつ、増殖が早い間葉系幹細胞クローンの集団であり、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴を満たす。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である。
(b)平均細胞サイズが20μm以下である。
【0057】
(2)ヒト間葉系幹細胞濃縮方法
本発明において、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の間葉系幹細胞を得るには、例えばWO2009/31678号に記載の方法に従うことができる。
その方法の概要は以下の通りである。
【0058】
まず、ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団から、LNGFR(CD271)が陽性(CD271+)、又はCD271及びCD90が共陽性(CD271+CD90+)の細胞分画を選別することにより、間葉系幹細胞を高度に濃縮する。なお、ヒト間葉系幹細胞が含まれる細胞集団に血球系細胞が含まれる場合は、非血球系の細胞を選別するために、CD45及びCD235aが共陰性(CD45-CD235a-)の細胞を選別する工程を加えてもよい。
【0059】
間葉系幹細胞が含まれる細胞集団は、フローサイトメトリーやアフィニティー・クロマトグラフィーによって調製することができる。
この細胞集団を得るための材料は特に限定されないが、例えば、骨髄、脂肪組織、臍帯血、末梢血(G-CSF投与後の末梢血を含む)等が挙げられる。なお、骨髄は、脊椎、胸骨、腸骨等の骨髄を用いればよい。また、細胞として、ES細胞およびiPS細胞を挙げることもできる。
【0060】
細胞調製の際、材料が間葉系幹細胞を巻き込んだ細胞塊になっている場合には、必要により、材料に対してピペッティング等による物理的処理や、トリプシン、コラゲナーゼ等による酵素処理を行うことができる。また、材料に赤血球が混入している場合には、予め赤血球を溶血しておくことが好ましい。
上記の通り調製された細胞集団を用い、CD271+細胞又はCD271+CD90+細胞を選別する。
【0061】
CD271+細胞又はCD271+CD90+細胞を選別する方法としては、例えば、抗体を用いる方法が挙げられる。
抗体は、CD271+細胞又はCD271+CD90+細胞を選別することが可能な、抗CD271抗体及び/又は抗CD90抗体である。選別にフローサイトメトリーを用いる場合には、FITC、PE、APC等の異なる蛍光色素で標識された抗CD271抗体、又は抗CD271抗体と抗CD90抗体を、適宜組み合わせて用いることにより、生細胞を短時間で選別することが可能になる。また、フローサイトメトリー以外にも、磁気ビーズを用いる方法やアフィニティー・クロマトグラフィーを用いる方法によって、CD271+CD90+細胞を選別することが可能である。
なお、これらの方法を用いる前に、予め、死細胞を染色する蛍光色素(例えば、PI)を細胞集団と反応させ、蛍光で染色された細胞を除去することにより、死細胞を除去してもよい。
【0062】
(3)REC細胞濃縮
次に、選別したLNGFR陽性細胞、又はLNGFR及びThy1共陽性細胞を単一細胞(クローン)培養し、増殖が速いロットを選択することで、増殖能・分化能・遊走能にすぐれた高純度ヒト間葉系幹細胞(REC: Rapidly Expanding Clone)を得る。
【0063】
ヒト骨髄又は脂肪・胎盤絨毛膜から単核細胞を調製し、骨髄単核細胞を抗LNGFR単独、又は抗LNGFR及び抗Thy1で染色する。次に、フローサイトメトリー(セルソータ)を用い、LNGFR陽性細胞、又はLNGFR陽性及びThy1陽性細胞を96穴培養プレートにクローンソートする。すなわち、1ウェルに細胞1個ずつ播種する。単一細胞培養2週間後に培養プレートを顕微鏡下で撮影し、コンフルエント又はセミコンフルエントになったウェルを選別し、当該ウェルに含まれる細胞をRECとする。
【0064】
ここで、「増殖が速い」、「高速増殖性」とは、96穴培養プレートの1ウェルに細胞1個ずつ播種して培養したときに、培養開始2週間後又はそれ以前に培養プレートがコンフルエント又はセミコンフルエントになる程度の増殖速度(倍加時間(ダブリングタイム)が26±1時間)を有することを意味する。
【0065】
コンフルエントとは、培養容器表面(培養面)の90%以上を培養細胞が覆っている状態である。また、セミコンフルエントとは、培養容器表面(培養面)の70~90%を培養細胞が覆っている状態である。使用する培養器具のサイズ及び種類は、細胞の増殖速度に応じ適宜変更可能である。遅れて増殖している細胞(Moderately/Slowly Expanding Cells)、すなわち単一細胞培養2週後になってもセミコンフルエント又はコンフルエントにならなかった細胞は破棄する。RECとして選別した各ウェルから回収したRECを各ウェル毎に培養フラスコに移入し、さらにコンフルエントになるまで培養する(拡大培養)。その後、拡大培養した細胞を別々に回収する。1ウェル由来のRECを1ロットとする。
【0066】
本発明において使用されるRECは、1ウェルに細胞1個ずつ播種するクローンソートにより得られたものであるから、増殖した細胞同士の遺伝形質はすべて同じである。従って、本発明においては細胞集団全体を「クローン」と言うことも、細胞集団を構成する個々の細胞を「クローン」ということもある。
【0067】
また、本発明において、選別に使用するためのRECは、RECマーカー(抗Ror2)により予め評価しておくこともできる。例えば、前記拡大培養後、全ロットから付着増殖した細胞を回収し、各ロットの一部 (1~3×105個程度)の細胞をとりわけて、抗Ror2に対するモノクローナル抗体で単一染色を行う。抗Ror2に対するモノクローナル抗体で単一染色を行う手法は公知である(WO2016/17795)。要約すると、RECマーカーを用いたフローサイトメトリー解析により、回収細胞におけるRECマーカー陽性細胞の比率を求める。比率は、定量的PCRを用いてRor2のmRNA発現を定量してもよいし、顕微鏡により同比率をマニュアルにより求めてもよい。上記陽性比率が一定値(例えば65%)以上のロット(細胞集団)を合格とし、これを後述の選別に使用することもできる。
【0068】
(4)幹細胞集団の選別
本発明においては、個々のロットのRECクローンについて、細胞の増殖能、脂肪分化能、REC特異的マーカー発現量、細胞サイズの均一性を調べ、それぞれの相関性を解析することにより、高純度でより細胞性能の高いRECを選別することが可能となった。
本発明においては、前方散乱光の変動係数(Coefficient of Variation:CV値)及び細胞の平均サイズを選別の指標とする。
前方散乱光(Forward Scatter)とは、レーザー光の軸に対して前方向の小さい角度で散乱する光である。前方散乱光は、細胞表面で生じるレーザー光の散乱光、回折光及び屈折光からなり、サンプルの大きさに関する情報が得られる。
【0069】
変動係数(Coefficient of Variation:CV)は、標準偏差を平均値で割った値のことで、単位の異なるデータのばらつきや、平均値に対するデータとばらつきの関係を相対的に評価する際に用いる数値である。
本発明においては、上記CV値が40%以下、好ましくは35%以下のものを選別する。CV値が40%以下の細胞集団、より好ましくは35%以下の細胞集団は、大きさが均一な細胞により構成されている細胞集団である。好ましくは、CV値は30%以下、25%以下、又は20%以下である。 また、本発明により選別された細胞集団における細胞の平均サイズは、20μm以下である。好ましくは18μm以下であり、14μm~18μmの範囲の大きさである。
【0070】
本発明は、LNGFR陽性細胞、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団の品質を評価する方法も提供する。本発明においては、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴、好ましくは両方の特徴を満たす細胞集団を、高品質であると判定する。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である。
(b)平均細胞サイズが20μm以下である。
このようにして評価及び選別された細胞集団は、当該集団を構成する細胞クローンの数が限定されるものではなく、例えば1mlの溶液に0.8X107~1.2X107個程度の細胞を有する。
【0071】
また、本発明の好ましい態様においては、以下の(a)及び(b)の少なくとも1つの特徴、好ましくは両方の特徴を満たす細胞集団を、高品質であると判定する。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が35%以下である。
(b)平均細胞サイズが20μm以下である。
このようにして評価及び選別された細胞集団は、当該集団を構成する細胞クローンの数が限定されるものではなく、例えば1mlの溶液に0.8X107~1.2X107個程度の細胞を有する。
【0072】
9.本発明の組成物の調製
本発明の組成物は、例えば低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩、及び上記間葉系幹細胞を有効成分として含有することを特徴とする。本発明者らは、本発明の組成物を生体の髄核部位に充填した場合に、アルギン酸の1価金属塩自体が髄核組織の再生または治療効果を発揮することを初めて見出した。有効成分として含有するとは、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩が患部に適用された際に、髄核組織の再生または治療効果を発揮できる量で含有されていればよく、少なくとも、組成物全体の0.1w/v%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5w/v%以上、さらに好ましくは、1w/v%である。本発明の組成物中の好ましいアルギン酸の1価金属塩濃度は、好ましくは0.5w/v%~5w/v%、より好ましくは1w/v%~5w/v%であり、さらに好ましくは、1w/v%~3w/v%で、とりわけ好ましくは1.5w/v%~2.5w/v%である。また、別の態様では、本発明の組成物中のアルギン酸の1価金属塩濃度は、好ましくは、0.5w/w%~5w/w%、より好ましくは1w/w%~5w/w%であり、さらに好ましくは、1w/w%~3w/w%で、とりわけ好ましくは1.5w/w%~2.5w/w%であってもよい。
【0073】
好ましいエンドトキシンレベルを示すまで精製したアルギン酸の1価金属塩を用いて、上記のように組成物を作製した場合には、組成物のエンドトキシン含有量は、通常、500EU/g以下であり、より好ましくは300EU/g以下、さらに好ましくは150EU/g以下であり、とりわけ好ましくは100EU/g以下である。
【0074】
本発明の組成物中に含有させる細胞数(細胞濃度)は、例えば、1×10個/ml以上、または1×10個/ml以上、好ましくは、1×10個/ml~1×10個/mlの細胞である。
【0075】
本発明の組成物は、細胞の成長を促進する因子を含ませることもできる。そのような因子としては、例えば、BMP、FGF、VEGF、HGF、TGF-β、IGF-1,PDGF,CDMP(cartilage-derived-morphogenetic protein),CSF,EPO、IL、PRP(Platelet Rich Plasma)、SOXおよびIF等が挙げられる。これらの因子は、組み換え法により製造してもよく、あるいは蛋白組成物から精製してもよい。尚、本発明のいくつかの態様の組成物は、これらの成長因子を含まない。成長因子を含まない場合でも、髄核の再生は十分に良好であるし、積極的に細胞の成長を促す場合と比較してより安全性も高い。
【0076】
本発明の組成物は、細胞死を抑制する因子を含ませることもできる。細胞死を引き起こす因子としては、例えば、Caspase、TNFα等が挙げられ、これらを抑制する因子としては、抗体やsiRNA等が挙げられる。これらの細胞死を抑制する因子は、組み換え法により製造してもよく、あるいは蛋白組成物から精製してもよい。尚、本発明のいくつかの態様の組成物は、これらの細胞死を抑制する因子を含まない。細胞死を抑制する因子を含まない場合でも、髄核の再生は十分に良好であるし、積極的に細胞死を抑制する場合と比較してより安全性も高い。
【0077】
尚、本発明の1つの態様では、本発明の組成物は、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩以外に、椎間板の髄核組織に対し薬理作用を発揮する成分を含まない。低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩のみを有効成分として含有する組成物においても、充分な髄核の再生または治療効果を発揮しうる。
本発明のいくつかの態様では、必要に応じて、他の医薬活性成分や、慣用の安定化剤、乳化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤、着色剤等、通常医薬に用いられる成分を本発明の組成物に含有させることもできる。
【0078】
10.本発明の組成物の硬化
本発明の組成物は、髄核部位への適用後に一部分を硬化するように用いられる。
「一部分を硬化する」とは、流動性を有する本発明の組成物の一部分に架橋剤を接触させて、架橋剤と接触した組成物の全体ではなく一部分をゲル化し、固めることをいう。好ましくは、流動性を有する本発明の組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させることで本発明の組成物の一部分を硬化する。本発明では、使用する担体に適した架橋剤や硬化手段を選択できる。
【0079】
本発明のいくつかの態様では、「組成物を髄核部位への適用後に一部分を硬化させる」とは、髄核部位への充填と同様の架橋剤の使用方法および使用比率を用いて、in vitroで、直径6mmの試験管に低エンドトキシンアルギン酸ナトリウム500μLおよび架橋剤を充填して1時間静置後に、試験管内の組成物の容量の少なくとも5割はゲル化しておらず、ゲル化していない部分は、試験管内の組成物の容量の少なくとも5割が21Gの注射針をつけたシリンジで吸引できることで示されてもよい。
【0080】
組成物が髄核部位への充填後にもこのような性状を示すことにより、充填後に椎間板の頭尾側から圧縮力をかけた場合でも組成物が逸脱することがないと考えられる。「組成物の表面の少なくとも一部分」は、例えば、髄核へつながる椎間板の表面の開口部であり、好ましくは、髄核部位に組成物を適用するのに使用した椎間板の表面の開口部、すなわち組成物の充填口である。組成物の表面の少なくとも一部分をゲル化して固めることで、椎間板から組成物が漏れ出すのを効果的に防ぐことができる。椎間板表面の組成物の充填口は、例えば、椎間板の表面にシリンジの針やメスで作製した組成物の充填に用いられた開口部、あるいは、椎間板ヘルニア摘出時にメス等により作製された椎間板表面の開口部であることが好ましい。この態様における椎間板とは好ましくは線維輪である。
【0081】
本発明の組成物は、好ましくは、対象の髄核部位に適用する前に、組成物を硬化させる量の架橋剤を含有しない。このため、本発明の組成物には、一定時間経過後も組成物を硬化させない量の架橋剤が含まれていてもよい。ここでの一定時間とは、特に限定されないが、好ましくは30分~12時間程度である。「組成物を硬化させる量の架橋剤を含有しない」ことは、例えば、組成物を20℃で1時間静置した後に、21Gの注射針をつけたシリンジで注入できることで示されてもよい。本発明のいくつかの態様の組成物には、架橋剤が含まれていない。
【0082】
架橋剤としては、アルギン酸の1価金属塩の溶液を架橋することにより、その表面を固定化することができるものであれば、特に限定されない。架橋剤として、例えば、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+などの2価以上の金属イオン化合物、分子内に2~4個のアミノ基を有する架橋性試薬などが挙げられる。より具体的には、2価以上の金属イオン化合物として、CaCl、MgCl、CaSO、BaCl等を、分子内に2~4個のアミノ基を有する架橋性試薬として、窒素原子上にリジル(lysyl)基(-COCH(NH)-(CH-NH)を有することもあるジアミノアルカン、すなわちジアミノアルカンおよびそのアミノ基がリジル基で置換されてリジルアミノ基を形成している誘導体が包含され、具体的にはジアミノエタン、ジアミノプロパン、N-(リジル)-ジアミノエタン等を挙げることができるが、入手しやすいこと、ゲルの強度等の理由から、特に、CaCl溶液とするのが好ましい。
【0083】
本発明のいくつかの態様の1つでは、本発明の組成物の表面に架橋剤を接触させるタイミングは、好ましくは、本発明の組成物を髄核部位へ適用した後である。本発明の組成物の一部分に架橋剤(例えば、2価以上の金属イオン)を接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、シリンジ、噴射器(スプレー)などで、2価以上の金属イオンの溶液を組成物表面にかける方法などを挙げることができる。例えば、架橋剤は、ゆっくりと数秒~10数秒、椎間板に形成された組成物の充填口にかけ続けてもよい。その後は、必要に応じて、充填口付近に残存する架橋剤を除去する処理を加えてもよい。架橋剤の除去は、例えば、生理食塩水等による適用部位の洗浄であってもよい。
【0084】
架橋剤の使用量は、本発明の組成物の適用量、椎間板表面の組成物の充填口の大きさ、椎間板の髄核の適用部位サイズ、などを考慮して適宜調節するのが望ましい。組成物の充填口の周囲組織に架橋剤の影響を強く及ぼさないためには、架橋剤の使用量を過剰にならないよう調節する。2価以上の金属イオンの使用量としては、アルギン酸の1価金属塩を含有する組成物の表面を固めることができる量であれば、特に限定されない。しかし、例えば、100mMのCaCl2溶液を用いる場合には、椎間板の表面の充填口が直径1mm程度の場合には、CaCl2溶液の使用量は0.3ml~5.0ml程度であることが好ましく、より好ましくは0.5ml~3.0ml程度である。椎間板表面の充填口が椎間板ヘルニア摘出時にメス等により作製され、辺縁が5mm×10mm程度の場合には、100mMのCaCl2溶液の使用量は、0.3ml~10ml程度であることが好ましく、より好ましくは、0.5ml~6.0ml程度である。適用部位における本発明の組成物の状態を見ながら、適宜増減できる。
【0085】
架橋剤にカルシウムが含まれる場合、カルシウムの濃度が高い方が、ゲル化が早く、また、より硬いゲルを形成することができることが知られている。しかし、カルシウムには細胞毒性があるため、濃度が高すぎると、本発明の組成物の椎間板の髄核再生作用に悪影響を及ぼす恐れもある。そこで、アルギン酸の1価金属塩を含有する組成物の表面を固めるのに、例えばCaCl2溶液を用いる場合には、好ましくは、25mM~200mM、より好ましくは、50mM~150mMの濃度とするのが望ましい。
【0086】
本発明においては、好ましくは、組成物に架橋剤を添加後、一定時間静置した後に、添加した部位に残存する架橋剤を洗浄などにより除去することが望ましい。静置する一定時間は特に限定されないが、好ましくは、約1分間以上、より好ましくは約4分間以上静置して組成物の表面をゲル化させることが望ましい。あるいは、約1分~約10分間、より好ましくは約4分~約10分間、約4分間~約7分間、さらに好ましくは約5分間静置することが好ましい。この一定時間の間は、組成物と架橋剤とを接触させた状態にすることが望ましく、組成物の液面が乾かないように、架橋剤を適宜追加してもよい。
【0087】
例えば、アルギン酸ナトリウム溶液をCaCl2溶液中に滴下し、ゲル化して作成したものにアルギン酸ビーズがある。しかし、アルギン酸ビーズは、適用部位に押し付けて適用する必要があるが、適用部位の大きさにあったものを作成する必要があり、実際の臨床で使うには、技術的に困難である。また、CaCl2溶液を架橋剤として用いた場合、ビーズ表面のCaイオンが周囲組織に接触するため、カルシウムの細胞毒性の問題もある。これに対して、本発明の組成物は、溶液状であるから、いずれの形状の適用部位へも容易に適用することができるし、適用部位の全体を本組成物で覆うことができ、周囲組織への密着性も良い。本発明の組成物の周囲組織に接触する部分は、カルシウム濃度を低く保つことが可能であり、カルシウムの細胞毒性の問題も少ない。本発明の組成物の周囲組織に接触する部分は、架橋剤の影響が少ないから、本発明の組成物は、容易に適用部位の細胞や組織にコンタクトできる。好ましくは、本発明の組成物は、髄核部位に適用した後、約4週間も経過すれば、適用した部位において識別できなくなるほど生体の組織と融合し、生体への親和性も高い。
【0088】
本発明の組成物を髄核部位に適用する際に、架橋剤により一部分をゲル化させると、本発明の組成物は患部で一部分が硬化し、周囲組織に密着した状態で局在し、髄核部位からの漏出を防ぐことができる。加えて、本発明の組成物が周囲組織に密着することにより、本発明の組成物の髄核再生効果がより強力に発揮される。
【0089】
髄核部位へ充填した補填材全体をゲル化させ硬化させた場合には、椎間板に頭尾側から圧縮力をかけると椎間板表面の組成物充填口から硬化ゲルが逸脱する現象がみられたのに対し、本発明の溶液状の組成物を髄核部位に充填した場合には、頭尾側から圧縮力をかけた場合にも椎間板表面の充填口からの逸脱はない。すなわち、実際に本発明の組成物により髄核補填を行った場合、椎間板に対する上下からの圧力に対しても、補填した組成物が漏れ出る恐れが低いといえる。
【0090】
また、硬化したゲルを髄核部位へ充填する場合には、硬化したゲルが脊柱管内に突出し、重大な神経障害を引き起こす危険性がある。一方、本発明の溶液状の組成物は、そのような危険性は低く、合併症発症の危険が低い。
【0091】
本発明の一態様では、細胞を包埋する担体を硬化せず用いてもよい。臨床症状や損傷部の大きさ・形状に合わせて、架橋剤を用いずに適用することもできる。
【0092】
11.本発明の組成物の適用
本発明の組成物は、ヒト、またはヒト以外の生物、例えば、トリおよび非ヒト哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、イヌ、ウサギ、ヒツジ、およびウマ)の椎間板の髄核部位に適用し、髄核の再生を促進するために用いられる。
【0093】
本発明の組成物の形態は、好ましくは流動性のある液体状、すなわち、溶液状である。本発明において「流動性を有する」とは、その形態を不定形に変化させる性質を持つことを意味し、例えば溶液のように、常に流れ動く性質を持つことを必要としない。好ましくは、例えば、組成物をシリンジなどに封入し、椎間板の髄核部位へ注入することができるような流動性を有することが望ましい。また、本発明のいくつかの態様の1つでは、組成物を20℃で1時間静置した後に、14G~26Gの注射針をつけたシリンジで椎間板の髄核部位へ注入できるような流動性を有することが望ましく、さらに好ましくは21Gの注射針で注入できることが望ましい。本発明の組成物が凍結乾燥体などの乾燥状態で提供される場合には、適用時に溶媒などを用いて上述のような流動性のある組成物とすることができる。
【0094】
溶液状である本発明の組成物は、シリンジ、ゲル用ピペット、専用注射器、専用注入器、充填器具などで椎間板の髄核部位に容易に適用することができる。
本発明の組成物の粘度が高い場合には、シリンジで適用するのが困難になるため、加圧型や電動型などのシリンジを用いてもよい。シリンジなどを使用しなくても、例えば、へら、棒などで髄核部位の欠損部へ適用してもよい。シリンジで注入する場合、例えば、14G~27Gまたは14G~26Gの針を使用するのが好ましい。
【0095】
本発明の組成物の髄核部位への適用方法は、特に限定されないが、好ましくは、公知の外科的手法により患部を直視下に露出した後に、あるいは、顕微鏡下又は内視鏡下で、シリンジ、充填器具等を用いて、本発明の組成物を髄核部位に適用することができる。好ましい態様の一つでは、例えば、線維輪表面から髄核部位へ向かって充填器具の針などを挿入し、本発明の組成物を適用してもよい。
【0096】
本発明の組成物は溶液状であるため、髄核の縮小、髄核部位の空洞や欠損部など、いずれの形状の髄核部位にも適合することができ、髄核の縮小、空洞または欠損部の全体を充填することもできる。髄核の縮小、髄核部位の空洞や欠損部は、椎間板の変性または損傷により生じたものであり得るし、あるいは、外科的手術で髄核の少なくとも一部を除去または吸引することにより生じたものでもあり得る。好ましくは、髄核の少なくとも一部を除去することで形成した髄核欠損部に、本発明の組成物を適用することが望ましい。
【0097】
髄核の少なくとも一部の除去は、特に限定されず、例えば、直視下、経皮的、顕微鏡視下、又は内視鏡的に行われる椎間板髄核摘出術等であってもよい。また例えば、背中に2cm~10cmの切開を加え、筋肉を椎弓という脊椎の後方要素後面から剥離し、椎弓間の靭帯を切除し、神経と椎間板ヘルニアを確認し、神経を圧迫しているヘルニアを摘出する方法(ラブ法)であってもよい。また、髄核にレーザーを照射し、髄核の容量を減少させる方法であってもよい。
【0098】
本発明の組成物の髄核部位への適用後は、前術のとおり、架橋剤により組成物の一部を硬化させることができる。
本発明の組成物の適用量は、適用する対象の髄核の適用部位の容積に応じて決めれば良く、特に限定されないが、例えば、0.01ml~10ml、より好ましくは、0.1ml~5mlであり、さらに好ましくは0.2ml~3mlである。本発明の組成物を髄核欠損部に適用する場合は、髄核部位の欠損部容積を十分に満たすように注入されるのが望ましい。
【0099】
本発明の組成物の適用回数・頻度は、症状と効果に応じて増減可能である。例えば、1回のみの適用であってもよいし、1月~1年に1回の適用を継続して行ってもよい。
アルギン酸は動物の体内に元来存在しない物質であるため、動物はアルギン酸を特異的に分解する酵素を保有していない。アルギン酸は動物体内においては、通常の加水分解により徐々に分解されるが、ヒアルロン酸等のポリマーに比べ体内の分解が緩やかであり、また髄核内には血管が存在しないため、髄核内に充填した場合、長期間の効果持続が期待できる。
【0100】
本発明の組成物が、前述のような細胞や成長因子とともに提供されない場合でも、本発明の組成物が髄核部位へ適用される際に、前述の細胞や成長因子、細胞死抑制因子、後述の他の薬剤などが併用して用いられてもよい。
本発明の組成物は、髄核部位へ適用することにより、椎間板組織全体及び髄核の変性変化を抑制し、再生を促進する効果を発揮する。そのため、本発明の組成物は、椎間板の髄核補填用組成物として好ましく用いられる。
【0101】
本発明の組成物の好ましい態様の1つは、椎間板の変性抑制のための組成物、より好ましくは、椎間板髄核の変性抑制のための組成物である。「椎間板又は髄核の変性」とは、加齢などにより椎間板の細胞数、水分含有量、細胞外マトリックス(タイプIIコラーゲン、アグリカン等)等が低下して形態的な変化が生じ、機能低下をきたす状態をいい、進行すると椎間板のショック吸収体としての機能が果たせなくなる。本明細書において「変性の抑制」は、未処置の場合と比較して、変性変化が抑制されていればよく、必ずしも変性のない状態にすることを意味するものではない。
【0102】
本発明の組成物の態様の1つは、髄核再生のための組成物である。髄核再生とは、線維芽様細胞の集積を防ぎ、髄核細胞の比率が高い髄核が再生されることを目的とするものであり、II型コラーゲンやプロテオグリカンに富む髄核組織が再生されることを意図するものである。この髄核再生の語には、髄核の変性を抑制することも包含される。本発明の好ましい態様のひとつは、本発明の組成物を適用して再生された髄核の組成が、天然の正常な髄核の組成に近いことが望ましい。
【0103】
また、本発明の好ましい態様の組成物は、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のために用いられる。本明細書において「治療、予防または再発抑制」は、治療、予防、再発抑制、低減、抑制、改善、除去、発症率の減少、発症時期の遅延、進行抑制、重症度の軽減、再発率の低下、再発時期の遅延、臨床症状の緩和等を含む。本明細書において「治療、予防または再発抑制」は、(慢性的な)疼痛の緩和を含む。本発明の組成物の好ましい態様、特に細胞を包埋する担体を硬化せずに用いる場合は、椎間板変性および/または椎間板損傷に伴う(慢性的な)疼痛(特に腰痛)を抑制するために用いられる。
【0104】
これらの本発明の組成物の好ましい態様、組成物の使用方法等は、前記の記載に従う。
椎間板変性および/または椎間板損傷は、例えば、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、椎間板損傷、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症ともいう)からなる群から選択される少なくとも1種の状態または疾患である。椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、腰痛を伴うものであってもよい。
本発明の組成物は、臨床症状や損傷部の大きさ・形状に合わせて、細胞を包埋する担体を硬化せず用いてもよく、そのような態様において、椎間板変性および/または椎間板損傷に伴う疼痛、特に慢性的な腰痛を抑制するために用いられる。
【0105】
12.治療方法
本発明は、前記本発明の組成物を用いる、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための方法を提供する。好ましくは、本発明の治療方法は、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための方法であって、低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含有し、流動性を有する組成物を、前記治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用し、適用した前記組成物の一部分を硬化することを含む。
【0106】
本発明の治療方法は、本発明の組成物を髄核部位へ適用する前に、髄核の少なくとも一部を除去する工程を含んでもよい。
前記椎間板変性および/または椎間板損傷は、例えば、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種の状態または疾患である。本発明のいくつかの態様の治療方法では、前記椎間板変性および/または椎間板損傷は、椎間板ヘルニアであり、特には、腰椎椎間板ヘルニアである。本発明のいくつかの態様の治療方法では、前記椎間板変性および/または椎間板損傷は、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症ともいう)である。椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛であってもよい。椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、これらの状態または疾患の組み合わせであってもよい。
【0107】
また、本発明のいくつかの態様の1つでは、前記本発明の組成物を用いる、椎間板の変性変化を抑制する方法を提供する。また、本発明の好ましい態様の1つでは、前記本発明の組成物を用いる、椎間板の髄核を再生する方法を提供する。
これらの方法は、間葉系幹細胞及び低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含有し、流動性を有する組成物を、椎間板変性抑制または髄核再生を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用し、適用した組成物の一部を硬化することを含む。前記の方法は、本発明の組成物を髄核部位へ適用する前に、髄核の少なくとも一部を除去する工程を含んでもよい。
【0108】
本発明の組成物の好ましい態様、具体的な椎間板の髄核部位への適用方法、組成物の硬化方法、用語の意義等は、前述のとおりである。他の椎間板の治療方法や治療薬を適宜組み合せて本発明の治療方法を行ってもよい。
【0109】
また、髄核部位に本発明の組成物を適用する前に、あるいは同時に、あるいは後で、ストレプトマイシン、ペニシリン、トブラマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、およびアンホテリシンB等の抗生物質、アスピリン、非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)、アセトアミノフェン等の抗炎症薬、タンパク分解酵素、副腎皮質ステロイド薬、シンバスタチン、ロバスタチン等のHMG-CoA還元酵素阻害剤等の併用薬を充填するようにしても良い。これらの薬剤は本発明の組成物に混入して用いてもよい。または、経口あるいは非経口で併用して投与されてもよい。その他、筋弛緩薬、オピオイド鎮痛薬、神経性疼痛緩和薬等が必要に応じて経口あるいは非経口で併用して投与されてもよい。
【0110】
本発明は、本発明の組成物を製造するための低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の使用にも関する。
本発明の使用は、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制のための組成物を製造するための低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩の使用であって、前記組成物が、対象の髄核部位に適用し、適用後に一部分を硬化するように用いられ、髄核部位への適用時に流動性を有する。
【0111】
本発明は、さらに、間葉系幹細胞及び低エンドトキシンアルギン酸の1価金属塩を含有し、流動性を有する組成物を、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制を必要とする対象の椎間板の髄核部位に適用し、適用した組成物の一部を硬化する、椎間板変性および/または椎間板損傷の治療、予防または再発抑制において使用されるための低エンドトキシンアルギン酸の1価の金属塩を提供する。
【0112】
13.本発明の組成物の評価
本発明の組成物は、発明者らが新たに確立したヒツジ重度椎間板変性モデルを用いて評価することができる。重度椎間板変性モデルは、(a)1回目の手術において、ヒツジ椎間板からヒツジ体重の0.00004%~0.00005%に相当する量の髄核組織を除去し、変性椎間板を作製すること、および(b)1回目の手術の4週間後に、(a)で作製した変性椎間板からさらにヒツジ体重の0.00014%~0.000175%に相当する量の髄核組織を除去することで、重度椎間板変性ヒツジモデルを作製することができる。
【0113】
好ましい態様では、体重40~50kgのヒツジに対して、(a)1回目の手術において、ヒツジ椎間板から20mgの髄核組織を除去し、変性椎間板を作製すること、および(b)1回目の手術の4週間後に、(a)で作製した変性椎間板からさらに70mgの髄核組織を除去することで、重度椎間板変性ヒツジモデルを作製することができる。
本発明の組成物は、下記の(a)~(d)の手順で評価することができる。(a)1回目の手術において、ヒツジ椎間板から20mgの髄核組織を除去し、変性椎間板を作製すること、(b)2回目の手術として、1回目の手術の4週間後に、(a)で作製した変性椎間板からさらに70mgの髄核組織を除去することで重度椎間板変性ヒツジモデルを作製すること(c)2回目の手術の後、生じた空隙に対象の組成物を投与すること、および(d)組成物の投与後に、変性モデルから採取した椎体及び椎間板に対してMRI、組織染色、免疫組織染色(IHC)からなる群から選択される少なくとも1つの評価方法にて、椎間板の再生を評価する。
【0114】
従前の大型動物モデルでは、正常椎間板を部分摘出することで椎間板変性モデルを作製していたため椎間板が自然治癒する可能性があった。しかし、既に変性した椎間板を部分摘出するこの動物モデルによって、ヒトの変性椎間板に対する本実施例の効果をより正確に評価することができる。
【0115】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0116】
ウサギ椎間板障害モデルにおける椎間板障害治療試験
本実施例では、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と生体吸収性超精製アルギン酸塩(低エンドトキシン高純度アルギン酸塩、UPALともいう)ゲルとを含む組成物を用いて、椎間板(IVD)を切除した後の変性IVDに対するBMSCの移植の再生効果を試験した。
【0117】
1. 材料及び方法
1.1.動物実験
すべての動物に対する処置は、北海道大学の動物管理使用委員会(承認番号: 13-0051)によって承認され、承認されたガイドラインに従って実施した。オスの日本白色ウサギ(20週齢、3.2~3.5kg)は、三共ラボサービス株式会社(東京、日本)から入手した。
【0118】
1.2.ウサギ髄核細胞(NPC)の調製
髄核(NP)試料は、4匹のウサギを、静脈内ペントバルビタール過剰投与を介して安楽死させた後、腰部IVD(L1/2からL5/6まで;全部で20のIVD)から得た。NPCを髄核(NP)組織から単離し、既報の方法で培養した[2,5,7,8]。具体的には、無菌条件下で、ゼラチン状NP組織を、マイクロ鉗子を用いて線維輪(AF)から分離した。組織標本は、10%ウシ胎仔血清(Nichirei Bioscience, Tokyo, Japan)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び1.25mg/mlファンギゾン(Life Technologies, Waltham, MA, USA)をダルベッコ改変イーグル培地(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を含有する培養培地に入れた。外因性成長因子は使用しなかった。試料を、0.25%コラゲナーゼを補充した培地(和光純薬工業、大阪、日本)に再懸濁し、振盪インキュベーター中、37℃、20% O2及び5% CO2で4時間インキュベートし、酵素消化により単離した。NP組織から分離した細胞を培養皿中で増殖させ、加湿大気中、20% O2及び5% CO2を含む37℃で上記培地で培養した。培地は週2回交換し、NPCは継代2で使用した。
【0119】
1.3.ウサギ同種BMSCの調製
ウサギ同種BMSCとして、Cyagen(Santa Clara, CA, USA; カタログ番号: RBXMX-01,001、ロット番号: 151114I31)から購入したOriCellTMウサギ間葉系幹細胞を使用した。これらの細胞は、特徴、解凍後の生存性、細胞周期、未分化状態の検証、並びに骨形成、軟骨形成、及び脂肪形成系統に沿った多能性分化能について試験されている。BMSCは製造業者の説明書に従って培養し、培地は週2回交換し、BMSCを継代2で使用した。
【0120】
1.4.UPALゲル及び三次元(3D)培養物の調製
本実施例では、UPALゲル(Mochida Pharmaceutical Co. Ltd., Tokyo, Japan)を3D培養のためのアルギン酸塩足場として使用した[2]。UPALゲルの精製プロセスは、既報の通りである[2]。具体的には、海藻中のアルギン酸塩を、清澄化手順[2]によって水溶性アルギン酸ナトリウムに変換することによって抽出した。このアルギン酸塩溶液は、高粘性であったため大量の水で希釈した[2]。次に、抽出物を濾過して、繊維状残渣からアルギン酸ナトリウム溶液を分離した[2]。高品質のアルギン酸を単離するため、この溶液に酸を添加した[2]。
【0121】
リン酸緩衝生理食塩水(和光純薬工業)及び102mM CaCl2に溶解した2%(w/v)UPAL液をゲル化用に調製した。3D培養前に、最終濃度20mMの5,6カボキシフルオレセインジアクテートコハク酸イミジルエステル(CFDA-SE; CFDA-SE Cell Proliferation Assay Kit; BIO RAD, Hercules, CA, USA)を用いて、製造業者の説明書に従ってBMSCを蛍光標識した[9]。続いて、標識BMSC及び非標識NPCを、1:1(それぞれ1×106細胞/ml)[1,10]の比率でUPAL液中に包埋し、2×106細胞/mlの最終細胞濃度を得た[9,10]。UPAL/細胞混合物は、ゲル化のため、102mM CaCl2に22ゲージ針を通して入れた。ゲルビーズは、低酸素条件(5% O2及び5% CO2)下で7日間、上記培地で培養した[10]。さらに、NPC及びBMSCを、1×106細胞/mlの細胞濃度でUPAL液中に別々に包埋した。細胞濃度は、各群において異なる総細胞数を用いて効果を比較する既報の例[11]に基づいて設定した。ゲル化後、ゲルビーズを前記と同様に低酸素条件下で培養した。実験群は以下の通りである:(a)NPC単培養; (b)BMSC単培養; 及び(c)NPC + BMSC共培養。
【0122】
培養0日及び7日後に、全てのゲルビーズを、既報の方法[8]に従いゲル及び細胞が分離されるまで55mMクエン酸ナトリウムに溶解した。NPC + BMSC共培養群では、回収した細胞を、Divaソフトウェアversion7.0(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を有するBD FACSAria III High speed cell sorterを使用して選別した[1,12]。死細胞及び残渣を除去し、530nmで蛍光を発する細胞をBMSCとして同定し、非蛍光細胞をNPCとして同定した。
【0123】
1.5.RNA抽出及びリアルタイム定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)
回収したNPC及びBMSCを1mlのTRIzol(TM)(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に溶解し、RNeasy Miniキット(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いてサンプルから全RNAを抽出した。TaqManTM遺伝子表現アッセイとカスタムTaqManTM遺伝子表現アッセイ(表1)(Applied Biosystems, Waltham, MA, USA)を用いて、リアルタイムqRT-PCR解析を行った。各試料についてサイクル閾値 (Ct)を得、2-ΔCt 方法を用いて、ハウスキーピング遺伝子GAPDHのCt値を基準とした各標的遺伝子の相対的mRNA発現を計算した[1]。
【0124】
【表1】
【0125】
1.6.ウサギ変性IVDモデルを用いたin vivo試験
In vivo試験には合計48匹のウサギを用いた。サンプルサイズは、採用した2つの時点の各々について、以前の報告[2,7,8]に基づいて決定した。48匹のウサギのうち32匹を無作為に選択して、IVD変性の定性分析(磁気共鳴画像(MRI)、組織学、免疫組織化学(IHC))を行い、計80のIVDを、無傷対照(Intact control)群、穿刺(Puncture)群(変性作成のための穿刺のみ)、椎間板切除(Discectomy)群(変性IVDに対して空洞を作るための部分的椎間板切除)、ゲル群(変性IVDに対する部分的椎間板切除及びUPALゲル埋植)、BMSC+ゲル群(変性IVDに対する部分椎間板切除及びBMSCとUPALゲルの埋植)に、無作為に割り付けた(各群8のIVD)。
【0126】
4匹のウサギNP組織の凍結切片を用いて、移植したBMSCの生存評価を行い、合計8匹のIVDを、無傷対照群及びBMSC+ゲル群(1群あたり4匹のIVD)に無作為に割り当てた。残りの12匹のウサギを用いて、HIF-1a、GLUT-1、Brachyuryの発現評価を行った。これらのマーカーは、健康なヒトNPCに発現する主要なマーカーとして提唱されている[13](ウサギNP組織のパラフィン切片のIHCを用いている)。計36のIVDを無作為に、無傷対照群、椎間板切除群、BMSC+ゲル群(各群4のIVD)に割り付けた。
【0127】
1.7.UPAL溶液中のBMSC標識及び包埋
In vivo実験において、移植細胞としてin vitro実験と同様のOriCellTMウサギ間葉系幹細胞を継代2で用いた。BMSCは、移植前にCFDA-SEで標識し、2% UPAL液中に包埋し、1×106細胞/mlの最終細胞濃度に調製した[14]。
【0128】
1.8.IVD変性の作成及び細胞移植
20週齢ウサギは、高齢のヒト集団の状態を模倣するのに十分に老化しておらず、均一な老化を有する高齢ウサギを得ることは困難である。そこで本実施例では、変性IVDを得るためにウサギ椎間板の線維輪(AF)穿刺モデルを使用した[8,15,16]。ケタミン(10mg/kg)及びキシラジン(3mg/kg)の静脈内注射により全身麻酔を行い、自発換気でセボフルラン(2~3%)と混合したO2及び空気(3.0l/分)で麻酔維持した。IVD変性は、L2/3及びL4/5 IVDで18ゲージ針を使用するAF穿刺によって作成した。L3/4 IVDは、対照として無処置とした。
【0129】
IVD穿刺の4週間後、BMSCを含有するUPAL溶液を、L2/3及びL4/5の変性IVDの部位に移植した[8]。全身麻酔下に、前外側後腹膜アプローチで脊椎を露出させた。椎間板切除群、ゲル群、及びBMSC+ゲル群では、18ゲージ針を穿刺して刺入口を作成した後、変性NP組織を10mlシリンジを用いて吸引し、残りのNP組織をマイクロ鉗子(Nagashima Medical Instruments Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いてL2/3及びL4/5 IVD(IVD当たり約10~12mg湿重量)で除去して、IVD空洞を作製した。L3/4 IVDは、対照として無処置とした。
【0130】
ゲル群では27ゲージ針を装着したマイクロシリンジ(Hamilton Medical, Bonaduz, Switzerland)を使用して、IVD欠損を20μlの2% UPAL溶液で満たし、BMSC+ゲル群ではIVD欠損をBMSCを含有するUPAL溶液で満たした。特に、26ゲージ針が細胞生存率又は組織変性に影響を及ぼさないことが示されているので、27ゲージ針を用いた[2,7,8,17]。次に、1mLの102mM CaCl2をUPAL液の上に散布してゲル化を誘導した。5分後、手術創を生理食塩水で洗浄し閉じた。穿刺群では偽手術を行った。IVD変性の分析のために手術の4週後と12週後、又はNPCマーカーの発現評価のために、手術の1日後、7日後、及び28日後に、ウサギを静脈内ペントバルビタール過量投与により屠殺した。ヒトBMSCがウサギIVDに及ぼす効果を評価するため、骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(hMSC-BM; PromoCell, Heidelberg, Germany;カタログ番号: C-12974、ロット番号: 412Z022.4)を用いて同様の埋植実験も行った。
【0131】
1.9.移植されたBMSC生存の評価
埋植後4週目と12週目に、CFDA-SE蛍光標識[18,19]に基づいて埋植BMSCの生存確認した。IVD(無傷対照群及びBMSC+ゲル群)を半分に水平切断し、液体窒素中で凍結し、5mmスライスに切片化し、次いで対比染色として4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI; Invitrogen; P36935)で染色した。特に、DAPI陽性細胞は生存対死滅のNPC及びBMSCを特定できないため、移植BMSCの生存率を定量することはできなかった。
【0132】
1.10.MRI解析
術後4週目と12週目に、7.0-T MRスキャナー(Varian Unity Inova; Varian Medical Systems, Palo Alto, CA, USA)を用いてIVDのT2強調正中矢状断像を得た[2,8,16]。Pfirrmann分類(グレード5は重度変性として分類した)を用いて、IVD変性をグレード化した[20]。MRIindexを算出するために、分析ソフトウェアバージョン12.0(AnalyzeDirect, Overland Park, KS, USA)を用いて定量分析も行った。MRIindex(NP面積と平均信号強度との積)をNPの変性の定量化に適用し、定量データは、未処置対照IVDで得られたMRIindex(相対MRIindex)に対するパーセンテージとして表した[2,8,16]。
【0133】
1.11.組織学的分析
MRI分析後、各IVDを組織学的染色のために処理した。プロテオグリカン発現を評価するため、正中矢状断切片 (5mm厚)をヘマトキシリンとエオシン(H&E)並びにサフラニンO-ファストグリーンによって染色した[8]。IVDの半定量分析を行い、0(正常)から5(高度変性)に等級分けした[21,22]。具体的には、この組織学的尺度はAF構造の形態学的変化に焦点を当てている。
【0134】
1.12.IHC分析
術後4週目及び12週目にI型及びII型コラーゲンを検出するために免疫組織化学(IHC)染色を行い [8]、術後1日目、7日目、28日目にHIF-1α、GLUT-1及びBrachyuryを検出した。I型及びII型コラーゲン染色には、I型コラーゲン(Sigma-Aldrich; C2456, RRID: AB_476836)及びII型コラーゲン(Kyowa Pharma Chemical, Toyama, Japan; F-57)に対するマウスモノクローナル抗体を適用した。染色は、対比染色として3,3’-ジアミノベンジジン塩酸塩(Dako)及びMayer’sヘマトキシリン(Merck, Darmstadt, Germany)を用いて展開した。HIF-1α、GLUT-1、及びBrachyury染色については、HIF-1αに対するDyLight 550結合ウサギポリクローナル抗体(Novus Biologicals, Centennial, CO, USA; NB100-479R, RRID: AB_1642267)、GLUT-1に対するPE結合ウサギポリクローナル抗体(LS Bio, Seattle, WA, USA; LS-A109342-100)、及びBrachyuryに対する非結合ウサギポリクローナル抗体(LS Bio; LS-C31179-100, RRID: AB_911118)を適用した。さらに、Alexa Fluor 594結合ヤギ抗ウサギポリクローナル抗体(Invitrogen; A32740)をBrachyuryの二次抗体として使用した。染色は、対比染色としてDAPIを用いて展開した。
【0135】
I型及びII型コラーゲン、HIF-1α、GLUT-1及びBrachyuryの陽性細胞は、独立した無作為に選択した5視野で別々に計測した[2,8]。視野は、深い領域及び表面領域の両方を含むNPの幅に及ぶ。数値は、すべての評価項目における総細胞数に対する陽性細胞の割合で、また、NPCマーカー評価のためのCFDA-SE陽性細胞数に対する割合で表される。すべての実験は、I型及びII型コラーゲン評価のために8個のIVD、及び各処置群からのNPCマーカー評価のために4個のIVDについて、それぞれの時点で行った。
【0136】
1.13.統計解析
全てのデータは、平均±標準誤差(SE)として示される。多群比較についてはOne-way分散分析(ANOVA)及びTukey‐Kramer事後検定を行った。2群比較についてはPaired t検定を行った。すべての統計計算は、有意閾値p<0.05で、JMP Pro-version 14.0統計ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いて行った。
【0137】
2.結果
2.1.NPC及びBMSC共培養は、BMSCのNPCへの分化並びに成長因子及びECMの産生を促進する
各細胞型に対するNPC及びBMSC共培養の効果を調べるために、非標識NPC及びCFDA-SE標識BMSCを、3D培養のためにUPALゲル中に包埋した。本発明者は、共培養群において、細胞ソーターを用いて両方の細胞型を収集した。リン酸緩衝食塩水/細胞懸濁液分析は、前方散乱及び側方散乱を用いて行った。P1ゲートは2Dドットプロット(図1a)で描き、死細胞及び残渣を除外した。非標識NPC及びCFDA-SE標識BMSCを、蛍光対側方散乱ドットプロットにおいて異なるゲートを用いて選別した(図1b)。従って、P2ゲートを非標識細胞の上に設定し、P3ゲートをCFDA-SE標識細胞の上に設定し、交差汚染を回避するために2つのゲートの間に間隙を設けた[1]。ゲル溶解及び細胞選別に続いて、(a)NPC対照(day0)、(b)NPC単培養、(c)NPC共培養、(d)BMSC対照(day0)、(e)BMSC単培養、及び(f)BMSC共培養の6つのタイプの細胞を得た。BMSC分化の解析については、6種類の細胞において、NPCマーカーとしてHIF‐1α、GLUT‐1及びBrachyuryの遺伝子発現、成長因子としてCDMP‐1、TGF‐β及びIGF‐1の遺伝子発現、そして細胞外マトリックス(ECM)としてタイプIIコラーゲン及びアグリカンの遺伝子発現を、qRT‐PCRを用いて評価した。
【0138】
NPC共培養におけるHIF-1αの遺伝子発現は、NPC対照と比較して有意に増加し(p=0.0218、Tukey-Kramer検定)、BMSC共培養ではBMSC対照(p=0.0041、Tukey-Kramer検定)及び単培養(p= 0.0041、0.0116、Tukey-Kramer検定)と比較して有意に増加した(図1c)。
NPC共培養におけるGLUT‐1の発現は、NPC対照(p<0.0001、Tukey‐Kramer試験)及び単培養(p <0.0001、Tukey‐Kramer試験)と比較して有意な増加を示し、NPC単培養では、NPC対照(p <0.0001、Tukey‐Kramer試験)と比較して有意な増加を示した。BMSC共培養では、BMSC対照(p=0.0189、Tukey‐Kramer検定)と比較してGLUT‐1発現の有意な増加を示した(図1d)。これに対し、Brachyuryの遺伝子発現は、3種類のNPC間で統計的有意差を示さなかった。さらに、Brachyuryの遺伝子発現は、BMSC共培養においてのみ観察され、BMSC対照及び単培養のいずれにおいても観察されなかった(図1e)。
【0139】
NPC共培養におけるCDMP-1、TGF-β及びIGF-1の遺伝子発現は、NPC対照(p<0.0001、p<0.0001、p=0.0002、Tukey-Kramer試験)及び単培養(p<0.0001、p<0.0001、p=0.0082、Tukey-Kramer試験)と比較して有意に増加し、NPC単培養における発現は、NPC対照(p =0.0179、p<0.0001、p=0.0079、Tukey-Kramer試験)と比較して有意に増加した。BMSC共培養における発現は、BMSC対照(p =0.0011、p<0.0001、p<0.0001、Tukey-Kramer試験)及び単培養(p =0.0015、p=0.0386、p<0.0001、Tukey-Kramer試験)と比較して有意に増加した(図1f-h)。
【0140】
NPC共培養及び単培養におけるII型コラーゲンの発現は、NPC対照(p=0.0036、p=0.0035、Tukey-Kramer試験)と比較して有意に増加し、BMSC共培養における発現は、BMSC対照(p =0.004、Tukey-Kramer試験)及び単培養(p=0.0226、Tukey-Kramer試験)と比較して有意に増加した(図1i)。アグリカンについては、NPC共培養における遺伝子発現は、NPC対照(p = 0.0047、Tukey‐Kramer試験)及び単培養(p=0.0392、Tukey‐Kramer試験)と比較して有意に増加し、単培養における発現はNPC対照(p=0.0274、Tukey‐Kramer試験)と比較して有意に増加した。特に、アグリカンはBMSC共培養でのみ発現されたが、BMSC対照又は単一培養では発現しなかった(図1j)。
【0141】
2.2.移植BMSCの生存
In vivo試験において、BMSC + ゲル群ではCFDA-SE標識BMSCが観察されたが、術後4週目と12週目では無傷対照群では観察されなかった(図2)。ヒトBMSC群もBMSC+ゲル群(ウサギBMSC)と同様の所見を示し、移植されたBMSCが移植後12週目にIVDで生存したことが確認された。切開すると、ゲルの押し出しは認められなかった。
【0142】
2.3.BMSCとUPALゲルの併用は、変性IVDにおける椎間板切除後のIVD再生を促進する
治療されたIVDにおける変性変化をMRIによって定性的に分析し、T2強調正中矢状断画像を捕捉した(図3a)。BMSC+ゲル群におけるPfirrmannグレードは、4週目に椎間板切除群より有意に低く(p=0.003、Tukey‐Kramer検定)、12週目に穿刺群と椎間板切除群で有意に低かった(p=0.0009, p<0.0001, Tukey‐Kramer検定)。さらに、ゲル群の変性度も12週目に椎間板切除群より有意に低かった(p=0.0028、Tukey-Kramer検定)(図3b)。ゲル群とBMSC+ゲル群との間に有意差は観察されなかった。BMSC+ゲル群のMRIindexは、4週で椎間板切除群(p=0.0085、Tukey‐Kramer試験)及び12週での穿刺、椎間板切除及びゲル群 (p=0.0002, p<0.0001, p=0~0248, Tukey‐Kramer試験)よりも有意に高かった。また、12週後ではゲル群のindexが椎間板切除群よりも有意に高かった(p=0.0092、Tukey-Kramer検定)(図3c)。特に、ウサギBMSC群とヒトBMSC群との間では、Pfirrmannグレード又はMRIindexのいずれにおいても有意差は観察されなかった。
【0143】
組織学的変性度分類の前に、NP及びAFを含むIVDの全体構造を評価し、群間で肉眼的な違いを観察した。IVDの組織学的評価の結果、無傷の対照標本は、内部AFの構造的崩壊を伴わず、NP組織は典型的な楕円形を示した(図4a及びb)。椎間板切除群では、内側はAFが崩壊し、NP組織の線維性変化が4週目と12週目の両方で観察された。しかしながら、BMSC +ゲル群における内側AFは、NP組織の線維性変化は最小に止まり、4週目と12週目の両方の時点で良好に保存されているようであり、ゲル群における内側AFもまた、比較的良好に保存されているようであった(図4a及びb)。BMSC+ゲル群の組織学的変性スコアは、4週目及び12週目ともに、穿刺群(p=0.0006、p<0.0001、Tukey-Kramer検定)、椎間板切除群(p<0.0001、p<0.0001、Tukey-Kramer検定)、ゲル群(p=0.00,134、p<0.0001、Tukey-Kramer検定)よりも有意に低く、12週目にゲル群の変性のスコアは椎間板切除群よりも有意に低かった(p=0.0006、Tukey-Kramer)。また、ウサギBMSC群とヒトBMSC群との間に有意差は認められなかった。骨棘形成はいずれの群でも認められなかった。
【0144】
2.4.BMSCとUPALゲルの併用は、変性したIVDにおけるECM産生を促進する
次に、本発明者はIVDにおけるECM産生を評価した。特に、II型コラーゲンはIVD機能に必要な必須成分であるが、IVD変性過程ではI型コラーゲン合成の増加が観察される[23]。II型コラーゲン陽性細胞の割合は、BMSC+ゲル群では4週目において穿刺群及び椎間板切除群に比べ有意に高く(p=0.0001, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)、12週目において穿刺群、椎間板切除群及びゲル群よりも有意に高かった(p<0.0001, p<0.0001, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)。また、ゲル群は、4週目において椎間板切除群と比較して有意に高い割合を示し(p<0.0001, Tukey-Kramer検定)、12週目において穿刺群及び椎間板切除群と比較して有意に高かった(p=0.0231, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)(図5)。
【0145】
一方、I型コラーゲン陽性細胞の割合は、4週目及び12週目のいずれも、BMSC+ゲル群は穿刺群(p<0.0001, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)、椎間板切除群(p<0.0001, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)、ゲル群(p<0.0001, p<0.0001, Tukey-Kramer検定)より有意に低かった。また割合は、4週ではゲル群が椎間板切除群よりも有意に低く(p<0.0001、Tukey-Kramer検定)、12週では穿刺群及び椎間板切除群よりも有意に低かった (p=0.0007、p<0.0001、Tukey-Kramer検定)。IHC分析による両評価において、ウサギBMSC群とヒトBMSC群との間に有意差は観察されなかった。
【0146】
2.5.変性IVDにおける移植BMSCのNPCへの分化
最後に、HIF-1α、GLUT-1及びBrachyury陽性細胞を経時的に観察し、in vivoにおいて移植BMSCがNPCに分化するメカニズムを検討した(図6a-c)。無傷対照群では、ほとんどすべての細胞がすべての時点で3つのNPCマーカーについて陽性であった。BMSC+ゲル群ではHIF‐1α、GLUT‐1及びBrachyury陽性細胞が1日目に低レベルで観察されたが、陽性細胞数は経時的に増加した。全細胞数に対する3種類のNPCマーカー陽性細胞の割合は、1日目及び7日目と比較して28日目で有意に高かった(p<0.0001, p<0.0001, Studentのt検定)。これに対し、椎間板切除群では、約20%の細胞が全ての時点で陽性であった(図6d-f)。同様に、CFDA-SE陽性細胞数(移植BMSCを表す)に対する3種類のNPCマーカー陽性細胞の割合は、1日目及び7日目と比較して28日目で有意に高かった(p<0.0001、p<0.0001、Student's t-test)(図6g-i)。
【0147】
3.考察
IVDの再生能は著しく低いため、椎間板切除により生じた欠損は組織修復が不十分であり、さらなるIVD変性につながる可能性がある[2]。本実施例において、UPALゲル単独でも椎間板切除後と比較してIVD変性を抑制したが、BMSCとUPALゲルとを併用すると、IVD再生を誘導するより強力な効果を発揮した。さらに、ヒトBMSCとウサギBMSCでは、IVD再生は両群間で同等に観察された。いくつかの以前の研究においても、変性IVDにおける種々のBMSCの再生能力が実証されている[18、24、25]。さらに、UPALゲルは、高い生体適合性及び十分な生体力学的特性を示し内因性修復治療戦略を支持するため [2]、変性IVD部位にBMSCを移植した後のIVD再生及びさらなる変性予防のための最適な環境を提供する。
【0148】
本実施例では、NPCマーカー、成長因子及びECMの遺伝子発現は、in vitroでの各3D単培養と比較して、NPCとBMSCとの3D共培養で有意に増加した。これらの結果は、NPCとBMSCとの共培養がNPCへのBMSC分化を導き、その結果、NPCとBMSCとの間の相互活性を導き、両細胞型におけるECM産生の増強をもたらすことを示す。このことは、NPCとBMSCとの共培養がBMSCを刺激してNPC様表現型に分化させることを示している他のいくつかのin vitro研究の知見とも一致しており[1,12,26]、成長因子の産生[1,11,27]及びECM合成のアップレギュレーションを介したNPCとBMSCと間の相互活性化を支持する[1,5,10,26]。
【0149】
さらに、埋植されたBMSCにおけるNPCマーカーの発現の経時的増加、及び椎間板切除単独後の結果と比較してECM産生の増強を示す同様の結果が、in vivo試験において観察された。我々の知る限りでは、アルギン酸塩及びBMSCをin vivoで移植したときのBMSCがNPCに分化する際のメカニズムを検討した報告はないが、ある研究において、アテロコラーゲンに埋め込まれた移植されたMSCがNPCに分化できることが実証された[28]。具体的には、緑色蛍光タンパク質で標識した自家BMSCを成熟ウサギIVDに移植し、IHC分析により移植細胞の分化を測定した。移植後48週目に、移植BMSCはHIF-1α、GLUT-1及びMMP-2が陽性であることが示され、これは、BMSCがNPCの代表的表現型の特徴のいくつかを発現する細胞に分化したことを意味する [28]。
【0150】
In vivo試験では、組織学的解析により、ゲル単独の移植は椎間板切除後と比較してIVD変性を予防すること、及びBMSC+ゲルの併用は変性の予防により強力な効果を発揮することがさらに示された。これは、ゲル単独では椎間板切除術と比較してIVDの含水量を保存するが、BMSC+ゲルの組み合わせでは含水量保存に対してより強力な効果をもたらすことを示唆するMRI所見と一致する。IHCの結果はさらに、BMSC+ゲルの組み合わせは、変性NP組織におけるECM合成を促進することを示唆し、これは適切なIVD機能に重要であり、I型コラーゲンの産生の低下を介する変性進行の予防につながる。さらに、穿刺群(椎間板切除を伴わない変性IVD)と比較したBMSC+ゲルの組織学的結果は、BMSC移植がIVD再生につながることを示唆した。合わせて、これらの結果は、移植されたBMSCが経時的にNPCに分化し、in vivoでのIVD再生を生じることを示す。
【0151】
AF再生に関しては、ゲル群及びBMSC+ゲル群は、NPにおけるコラーゲンI産生を有意に減少させたが、ゲル及びBMSC+ゲルの充填で穿刺によるAF欠損は修復された。IVD変性はNP細胞外マトリックスの分解によって特徴づけられるため[2]、本実施例では主にNPの保存/再生に焦点を当てた。
【0152】
椎間板細胞治療においては、移植細胞の椎間板内での生着が得られず、注入部位から移植細胞が漏出するリスクが報告されており、その結果、骨棘が形成されるという報告もある[5,29,30]。従って、椎間板切除後のBMSC移植の場合、細胞漏出を防止するために担体材料が必要である。本発明においては、BMSC+ゲル群で骨棘形成は観察されなかった。UPALゲルとBMSCとを組み合わせて使用すると即時硬化性という重要な特徴を有し、その結果、細胞漏出を防ぐという点で臨床的に有用である。
【0153】
本発明の結果と以前の報告[1,11,12,26‐28]に基づき、本発明者は、IVD再生のメカニズムは以下の通りであると考えた。
1) 埋植されたBMSCは、UPALゲル中への包埋を介して、椎間板外へ漏れることなくIVDの空洞内に局在化することができる。
2) 埋植されたBMSCは、成長因子及びECMを産生し、既存のNPCの活性化をもたらす。
3) 活性化したNPCはまた、成長因子及びECMの産生を増加させる。
4) その結果、埋植されたBMSCはNPCに分化する。
5) さらに、BMSC及び既存のNPCは互いに活性化し、IVD再生を生じる(図7)。
【0154】
今回のin vitro実験においてBMSCとNPCが細胞融合していれば、細胞の分離が不可能であったと考えられるため、IVD変性の主な作用機序を細胞結合作用が構成している可能性は低いと考える。また、BMSCとNPCはin vivoで直接接触は認められなかった。従って、作用の基礎となるメカニズムは、成長因子及び/又はBMSCとNPCとの間の相互作用を調節するいくつかの重要な液性因子に起因し得る。
【0155】
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【実施例0156】
髄核細胞(NPC)と高純度間葉系幹細胞(REC)の共培養(in vitro)による遺伝子発現の変化
1.材料と方法
1.1.ヒトの健常椎間板髄核細胞(NPC)
ヒトの健常椎間板髄核細胞(NPC)は、北海道大学病院における思春期特発性側弯症の若年患者(15.3±3.3歳)の脊椎前方固定術の際に得られた細胞を用いた。
【0157】
1.2.高度に均一性を有する高純度間葉系幹細胞の調製
(1)フローサイトメトリーによる前方散乱光(FSC)のCV値測定
公知方法(WO2016/17795)により予め調製しておいた複数のRECクローンを、フローサイトメトリーによる前方散乱光のCV値測定に用いた。
フローサイトメトリーにおけるFSCは細胞の表面積又は大きさに比例する。本実施例では、FSCのCV値を指標として細胞サイズのばらつきを評価した。
(a)個々のRECクローンに対してPI染色を行い、PI陰性の生細胞集団にゲートを設定して、死細胞を解析の対象から除外した。
(b)PI陰性の生細胞集団をFSC/SSCのサイトグラムで展開し、メインの細胞集団にゲート(P1)を設定して、ゴミやノイズを解析の対象から除外した。
(c)P1ゲート内の細胞集団をFSCのヒストグラムで展開し、マーカー(M1)を設定して、CV値を計測した。
【0158】
(2)細胞増殖能及び脂肪分化能の評価
細胞増殖能の評価のため、1x105個のREC細胞を100mm培養皿に播種して、37℃、5%CO2環境下で5日間培養し、その後、セルカウンターを用いて細胞数及び平均細胞サイズを計測した。
培養液は、FBS、basic FGF、Hepes、Penicillin-Streptomycinを添加したDMEM培地(富士フイルム和光純薬社)を用いた。
また、脂肪分化能の評価のため、5x104個のREC細胞を24穴プレートに播種して、37℃、5%CO2環境下で2日間培養し、その後、脂肪分化誘導培地に置換して、さらに14日間培養した。培養14日後にオイルレッド0染色を行い、画像解析により脂肪滴面積を算出した。なお、脂肪分化誘導培地は、上記培養培地にDexamethasone、Indomethacin、IBMXを添加した培地を用いた。
【0159】
(3)網羅的解析
複数のRECクローンについて、FSCのCV値、細胞増殖率(増殖能)、平均細胞サイズ、脂肪分化能を調べたところ、FSCのCV値が低いRECクローン(CV=35%以下)は、増殖能、分化能が共に高く、平均細胞サイズが小さいことがわかった(平均細胞サイズ:20μm以下)(図8)。
【0160】
一方で、FSCのCV値が高いRECクローン(CV=35%以上)は、増殖能、分化能が共に低く、平均細胞サイズが大きいことがわかった。
CV値30%~35%のクローンの平均増殖率は6.4であり、CV値25%~30%のクローンの平均増殖率は9.2、CV値25%以下のクローンの平均増殖率は15.1であった。また平均細胞サイズが18μm~20μmのクローンの平均増殖率は7.0であり、平均細胞サイズが16μm~18μmのクローンの平均増殖率は12.7、平均細胞サイズが16μm以下のクローンの平均増殖率は21.3であった。
以下、本実施例ではFSCのCV値が低いRECクローン(CV=25%以下)を使用した。
【0161】
1.3.RECを含むUPAL組成物の調製
NPCと蛍光標識された高純度間葉系細胞(REC)を各単独群と混合群に群分けし、超高純度アルギン酸(UPAL:持田製薬提供)の3次元ゲル中で共培養又は単独培養し、培養前(day0)と培養7日後に、3次元ゲルを溶解後、セルソーターで下記の細胞に分離した。
(a)NPC 対照群(day0)
(b)NPC 単独培養群
(c)NPC 共培養群
(d)REC 対照群(day0)
(e)REC 単独培養群
(f)REC 共培養群
【0162】
上記6群の細胞につき定量的PCR解析(qRT-PCR)により下記の遺伝子発現を測定した。
髄核細胞のマーカー
HIF-1α
GLUT-1
Brachyury
成長因子
CDMP-1
TGF-β
IGF-1
細胞外基質
TypeII collagen
aggrecan
遺伝子発現量の測定法は、実施例1に準じて行った。
【0163】
2.結果
RECと髄核細胞を共培養すると、単独培養した場合と比較して分化指標(HIF-1α、GLUT-1,Brachrury)が髄核細胞、間葉系幹細胞の双方で上昇した(図9)。
成長因子(CDMP-1, TGFβ、IGF-1)、及び細胞外基質(TypeII collagen,Aggrecan)についても同様であった。
髄核細胞と高純度間葉系幹細胞は相互作用して活性化し、間葉系幹細胞は髄核細胞へと分化していくことが示唆される。
【実施例0164】
ヒツジ椎間板変性モデルにおける再生促進効果(MRI解析)と組織学的解析
1.材料と方法
7頭のヒツジ(40-50kg)はGLP準拠で施術した。
椎間板L1/L2(第1腰椎と第2腰椎の間の椎間板)、椎間板L2/L3(第2腰椎と第3腰椎の間の椎間板)、椎間板L3/L4(第3腰椎と第4腰椎の間の椎間板)、および椎間板L4/L5(第4腰椎と第5腰椎の間の椎間板)を以下の4群に分けた。
対照群(n=6):無処置群
Discectomy群(n=6):髄核組織の摘出のみ
ゲル群(n=8):髄核組織の摘出後、アルギン酸ゲルを埋植
REC+ゲル群(n=8):髄核組織の摘出後、RECとアルギン酸ゲルを埋植
【0165】
無処置群を除いて、各群の椎間板から20mgの髄核組織を麻酔下に摘出し、重度の椎間板変性を生じさせた。
最初の髄核組織摘出から4週間後、さらに70mgの髄核組織を麻酔下に摘出し、椎間板内の空隙に、最終細胞濃度1×106cell/ml(100μl)でUPALに懸濁されたREC(実施例2、1.2項で調製したREC)を注入した。
埋植手術の4週間後、ヒツジを安楽死させた。
処置椎間板の変性定量評価目的に3テスラの磁気共鳴画像法(MRI)を用いて分析し、その後、椎間板はH&E染色およびサフラニン-O染色による組織学的評価、また免疫組織化学的評価によるType II collagen発現の評価を行った。
すべてのデータは平均±標準誤差で示し、各群間の差は一元配置分散分析(ANOVA)とTukey-Kramer post hoc testで検定した。
【0166】
2.結果
ヒツジ椎間板の患部にゲルおよびREC+ゲルを埋植後、4週間後にMRIで椎間板変性を評価した結果、Pfirrmann分類では無治療群(Discectomy群)に比較してゲルおよびREC+ゲル群で有意に低く、またMRI indexでは無治療群(Discectomy群)に比較してREC+ゲル群で有意に高かった(図10)。組織染色による組織学的変性スコア(Boos分類)は無治療群(Discectomy群)に比較してゲルおよびREC+ゲル群で有意に低く、またゲル群とREC+ゲル群の比較ではREC+ゲル群が有意に低かった(図11)。免疫組織化学分析では、II型コラーゲン陽性細胞の割合が無治療群(Discectomy群)およびゲル群よりもREC+ゲル群で有意に高かった(図12)。
【0167】
RECを含むUPALゲルを埋植すると、高度に変性したIVDでは椎間板切除後のIVD変性を抑制し、type IIコラーゲン陽性細胞はREC+ゲル群で有意に高かった。従って、UPALゲルを併用したRECは、自発的IVD再生を促進することが示された。さらに、本発明者は、RECとUPALゲルとの併用が成長因子及びECM産生とともに内因性NPC活性化を促進し、NPCへの分化を促進し、IVD再生を増強することを実証した。
【実施例0168】
本実施例では、重度のIVD変性を示すヒツジモデルにおいて、骨髄由来高純度間葉系幹細胞(REC)とUPALゲルとの組み合わせが、椎間板切除後(24週まで)in situでIVD再生を増強することを実証した。さらに、本実施例では、健康なヒトNPC及びRECを、UPALゲル中の3Dシステム中で共培養して、IVD再生の基礎をなすメカニズムを評価した。またNPC及び市販のBMSCの共培養およびNPCとREC細胞の共培養を行い、NPCに対するREC及び市販のBMSCの効果を比較した。本発明者らの知見は、変性ヒトIVDにおけるヘルニアの治療のための、RECとin situ硬化性ゲルとの組み合わせの臨床応用性を示唆するものである。
【0169】
1.材料及び方法
1.1.試験デザイン
本実施例における試験デザインは、以下の内容で行った。
(i)in vitroでのヒトNPCとRECの3D共培養を介したIVD再生のメカニズムの検討
(ii) REC及び市販ヒトBMSCとNPCとの3D共培養を介した、NPCに対するRECと市販ヒトBMSCの効果の比較
(iii)UPALとREC + UPALゲルの力学特性の測定
(iv)in vivoでの椎間板切除後の重度変性IVDの再生能力の評価
(v)移植IVDにおける腫瘍形成の評価
【0170】
本発明者らは、椎間板切除後にUPALゲル中に包埋されたRECを移植することにより、自発的なIVD再生を促進すると仮定した。
北海道大学大学院医学研究科の倫理委員会により、健康なヒトIVDの使用が承認された。動物実験手順は、北海道大学及びHamri株式会社(茨城県)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認され、これらの委員会によって推奨されるガイドラインに従って実施した。
【0171】
健康なヒトNPC及びRECを、UPALゲル中の3Dシステム中で共培養して、IVD再生の基礎をなすメカニズムを評価した。培養0日後及び7日後に、NPCマーカー(HIF‐1α、GLUT‐1、及びbrachyuryを含む)、成長因子(CDMP‐1、TGF‐β、及びIGF‐1を含む)、ならびにECM成分(II型コラーゲン及びアグリカンを含む)の発現を、qRT‐PCR(n = 4)を用いて全細胞タイプにおいて分析した(2,9,30,31)。さらに、NPC及び市販のBMSCを共培養して、NPCに対するREC及び市販のBMSCの効果を比較した。
【0172】
次に、非拘束圧縮試験を用いて、UPAL及びREC + UPALゲルの力学特性を評価した。円板状ゲルを0.5mm/分の一定速度で圧縮し、ヤング率を計算した(n = 4)(3、15、32、33)。動物実験では、ヒツジ14頭(計56回のIVD)を以下の4群に分類した。4週間の結果は実施例3にも記載している。
無処置対照群(4週間、n =6; 24週間、n =6):無処置群
Discectomy群 (4週間、n =6; 24週間、n =6) :髄核組織の摘出のみ、 椎間板切除群ともいう
ゲル群(4週間、n = 8; 24週間、n = 8) :髄核組織の摘出後、アルギン酸ゲルを埋植
REC +ゲル群(4週間、n = 8; 24週間、n = 8) :髄核組織の摘出後、RECとアルギン酸ゲルを埋植
【0173】
重度に変性したIVDを作製するために、本発明者らは、処置したIVDから20mgのNP組織を除去した。本発明者らはさらに、最初の手術の4週間後に、変性IVDから70mgのNP組織を除去した。予備実験では、ヒツジモデルにおいて20mg以上のNP組織を除去すると4週間後にIVD変性が生じたため、除去する組織の初期量を20mgに設定した(図19)。第2回目の除去量は、以前のウサギモデルでの実験(2、3)による正常及び変性IVDの除去量の比に基づいて、70mgに設定した。2回目の椎間板切除後、UPAL又はRECとUPALとの組み合わせを含有する溶液を椎間板内の空隙に移植した。ヒツジは、移植の4週後(実施例3)及び24週後に安楽死させた。IVD変性を評価するために、3.0-T MRI(2,3,15,37,38)を用いてIVDを定性的に分析した。その後、組織学的分析のためにIVDをH&E及びサフラニン-Oで染色し、ECM成分の分析のために、II型及びI型コラーゲンのレベルをIHCにより評価した。最後に、組織標本(2,3,15)を用いて腫瘍形成解析を行った。
【0174】
1.2.統計解析
定量データのためのサンプルサイズは、Tukey-Kramer検定を用いて、αレベル0.05及び0.8のパワーでパワー分析によって決定した。統計解析はJMP Pro version 14.0ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いて行い、値は、p<0.05である場合に有意であるとみなした。全てのデータは、平均± SD値として示される。多群比較のために一元配置分散分析(ANOVA)とTukey‐Kramer事後検定を行った。2群間比較にはStudentのt検定又はMann-WhitneyのU検定及びWelchの検定を用いた。本発明者らは試料の無作為化を行い、試験される試料に対して盲検化した。
【0175】
1.3.in vitroでのREC及び市販ヒトBMSCとヒトNPCの3D共培養
RECの調製
本試験では、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングから提供された凍結GMP準拠RECを使用した。REC及び市販のヒトBMSCの比較分析において、RECの3つのクローン、すなわちREC‐02プロトタイプ#003‐P6‐191220、REC‐02 HLWF‐1‐P6‐210114、及びREC‐02 QRKF‐1‐P6‐210210を継代6で調製した。細胞は、3D培養の前に37℃の温浴中で解凍した。
【0176】
市販のヒトBMSCの調製
市販のヒトBMSC(hMSC-BM; PromoCell, Heidelberg, Germany; C-12974、ロット番号: 412Z022.4)は、既報に従い入手した(2)。骨形成、軟骨形成及び脂肪生成系統に属するこれらの細胞の特性、解凍後の生存性、細胞周期、未分化状態、多分化能を試験した。BMSCは、完全培養培地、すなわち、20% HyCloneウシ胎仔血清(FBS; Cytiva, Tokyo, Japan)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1.25mg/mLファンギゾン(Life Technologies, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)、1% HEPES(Life Technologies, Thermo Fisher Scientific)、及び0.1% bFGF(Kaken Pharmaceutical Co., Ltd., Tokyo, Japan)を補充した、L-グルタミン及びフェノールレッド(DMEM; FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation, Osaka, Japan)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(低グルコースレベル; 2mg/mL)を用い、製造業者の指示書に従って培養した。培地は週に2回交換し、第4継代プロセスからのBMSCを使用した(合計6継代はRECと同様であった)。
【0177】
UPALゲル及び3D培養物の調製
UPALゲル(Mochida Pharmaceutical Co. Ltd., Tokyo, Japan)は、3D培養のためのアルギン酸塩足場として使用した(2, 3)。
リン酸緩衝食塩水(PBS; FUJIFILM Wako Pure Chemical Industries)に溶解した2%(w/v)UPAL溶液を調製し、CaCl2溶液(102mM)を用いてゲル化した。REC又は市販のBMSCを、1×106細胞/mL(2、31、49)の最終細胞濃度でUPAL溶液と混合した。細胞-UPAL混合溶液を、ゲル化のために22ゲージ針を使用して、102mM CaCl2溶液中にピペットで入れた。ビーズ状に得られた2種類のゲルを、培地とともに加湿環境 (20% O2、5% CO2、37℃)中で7日間培養した。培地は3日毎に交換した。3D培養の7日後に細胞を回収するために、既報の通り(2、3、35)、55mMクエン酸ナトリウムを使用して溶解し、遠心分離(4℃で10分間110×g)した後、ゲルビーズから細胞を回収した。さらに、前述のように、正常条件下で7日間平面培養(2D培養)として調製したREC及び市販のBMSCを対照群として使用した(すなわち、以下の4群を実験群として設定した:1)2D培養REC、2)3D培養REC、3)2D培養BMSC、及び4)3D培養BMSC)。
【0178】
細胞増殖能の解析
2D又は3D培養の7日後、得られた4種類の細胞を二次培養のために再度播種した。細胞を集密状態となった段階で回収し、細胞数が倍加するのに必要な時間として定義される倍加時間(Td)に基づいて細胞増殖能を評価した。Tdは、以下の式を用いて計算した。
Td =(t2-t1)× ln(2)/ ln(N2/N1)
(ここで、N2及びN1は時間t2及びt1におけるセル数である。)
【0179】
フローサイトメトリー解析
PBS (2%のFBSを含む)を4つのタイプの細胞の各々に添加して、1×106細胞/mLの最終密度で細胞懸濁液を調製した。次いで、細胞を抗CD90抗体(PE抗ヒトCD90(Thy1)、BioLegend、San Diego、CA、USA)及び抗CD45抗体(FITC抗ヒトCD45、Beckman Coulter、Brea、CA、USA)で染色した。また、陰性対照としてマウスIgG1抗体(マウスIgG1-PE, BioLegend; mouse IgG1-FITC, Beckman Coulter)を用いて染色を行った。ヨウ化プロピジウム(PI)を用いて死細胞を検出した。フローサイトメトリー分析は、CytoFLEX System(Beckman Coulter)を使用して行い、細胞生存率ならびに各細胞表面抗原の均一性及び陽性を評価した。データの分析にはFlowJoソフトウェア(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)を使用した。
【0180】
健康なヒトNPCの調製
北海道大学病院で思春期特発性側弯症のため脊椎前方固定術を受けた9人の患者(平均年齢± SD、15.3±3.3歳)からヒトNPサンプルを得た。本研究に参加した参加者からインフォームドコンセントを取得し、同意書を作成し、保存した。サンプルは、外科手術の際に取得した。すべてのIVDはMRIを介して手術前に分析し、Pfirrmann分類 (36)を用いて変性変化について評価した。全てのIVDはグレード1に分類され、全てのサンプルが非変性IVDであることが示唆された。
【0181】
細胞をヒトNPサンプルから単離し、既報の通り培養した(2、3)。まず、各ゲル様NPを解剖顕微鏡下でAFから分離し、組織標本を培地中に置いた。調製物を遠心分離(1,000rpm、3分)により2回洗浄し、0.25%コラゲナーゼを補った培地に再懸濁した。細胞単離のために、調製物を振盪インキュベーター中でインキュベートし(37℃、4時間)、次いで遠心分離 (1,000rpm、3分) を2回行った。マトリックスから分離した細胞を10cmの組織培養皿に入れ、上記と同様にインキュベートした。培地は週に2回交換し、第4継代からのNPCを使用した。
【0182】
REC及び市販ヒトBMSCの調製
上記REC(REC-02_プロトタイプ#003-P6-191220)及び市販のヒトBMSCもまた、3D共培養に使用した。2つのタイプの細胞を、上記2D培養と同じ方法により製造業者の指示に従って培養した。培地は週に2回交換した。第2継代由来の細胞(REC、合計8継代; BMSC、合計4継代)の両方を使用した。
【0183】
3D共培養と単培養
本発明者らは2% UPAL溶液を調製し、既報の通り(2、3)、ゲル化のためにCaCl2溶液(102mM)を使用した。3D培養の前に、REC及びBMSCを、製造業者のマニュアル(2、15、29)を参照して、20mM CFDA-SE(CFDA-SE細胞増殖アッセイキット; BIO RAD, Hercules, CA, USA)で蛍光標識した。その後、標識細胞及び非標識NPCをUPAL溶液と同じ比率(各細胞1×106細胞/mL)(2、31、49)で混合し、最終細胞濃度を2×106細胞/mLとした。細胞-UPAL混合溶液は、22ゲージ針を用いて102mMのCaCl2溶液に入れてゲル化させた。得られたゲルを、低酸素条件(5% O2及び5% CO2)(2、49)下で7日間培養した。さらに、3つのタイプの細胞を、1×106細胞/mLの濃度でそれぞれ別々にUPAL溶液中に混合した。細胞濃度は、既報の結果(2)に基づいて選択した。ゲル化後、ゲルビーズを低酸素条件下で上記と同じ方法で培養し、以下の実験群を使用した(1群あたりn = 4)。
(a)単培養NPC
(b)単培養BMSC
(c)単培養REC
(d)共培養NPC+BMSC
(e)共培養NPC+REC。
【0184】
培養初日及び7日後に、全てのゲルビーズを55mMクエン酸ナトリウムに溶解し、ゲルを細胞から分離させた。共培養群では、回収した細胞を、Divaソフトウェアバージョン7.0(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を使用するBD FACSAria III High speed cell sorterを使用して選別した(2, 31)。残渣及び死細胞を除去した後、530nmの蛍光細胞をREC及びBMSCとして選択し、非蛍光細胞をNPCとして選択した。
【0185】
RNA抽出とqRT-PCR
回収した10種類の細胞タイプ(対照NPC、単培養NPC、市販のBMSCと共培養したNPC、RECと共培養したNPC、対照BMSC、単培養BMSC、共培養BMSC、対照REC、単培養REC、及び共培養REC)を、1mLのTRIzol(登録商標)(Invitrogen, Thermo Fisher Scientific)に溶解し、RNeasy Miniキット(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて試料から全RNAを抽出した。リアルタイムqRT-PCRは、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems, Thermo Fisher Scientific)(表3)を用いて行った。各サンプルについてサイクル閾値(Ct)値を得た。さらに、各標的遺伝子、NPCマーカー、増殖因子、及びECM成分の相対的mRNA発現レベルを2‐ΔCt法(2)を介して計算した。発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子GAPDH(2,31)の発現量により標準化した。
【0186】
1.4.非拘束圧縮試験を用いたゲルの弾性分析
UPAL及びREC-UPALゲルの力学特性を、非拘束圧縮試験を用いて評価した。直径4.5mm、厚さ2mmの2種類の円盤状ゲルを作製した(図14(a))。サンプルを引張-圧縮機械試験機(Autograph AG-X; Shimadzu Corporation, Kyoto, Japan)に入れ、ゲルが潰れるまで、100 Nロードセルを用いて0.5mm/分の一定速度で圧縮した(図14、B及びC)(3、15)。ヤング率は、得られた応力-歪曲線(図14D)に基づき、圧縮値10~20%(n = 4ゲル/群)の間の近似直線を用いて計算した(図14E)(3、15、32、33)。
【0187】
1.5.変性IVDのヒツジモデルにおけるin Vivo試験
本実施例では、ヒツジモデルを含む全ての手順を、医薬品GLP適合実験室(Hamri Co., Ltd.)で行った(3)。14頭の雄、サフォークヒツジ(2歳、体重40~60kg)を用い、IVD変性の定性分析を行った(3)。全部で56のIVDを無作為に無処置対照(4週、n = 6; 24週、n = 6)、椎間板切除(4週、n = 6; 24週、n = 6)、ゲル(4週、n = 8; 24週、n = 8)、及びREC +ゲル(4週、n = 8; 24週、n = 8)群に割り当てた。まず、NP組織除去手術を行い、重度に変性したIVDモデルを作成した。ケタミン(0.2mg/kg)及びキシラジン(20mg/kg)の4:1混合物を0.5mL/kgの速度で筋肉内注射することによって麻酔誘導を行い、吸入麻酔(イソフルラン)によって麻酔の維持を達成した。手術は右側方後腹膜アプローチで行い、L1からL5までの椎体とIVDを露出した。固形海綿質スクリュー(ZIMMER BIOMET, Warsaw, IN, USA)を、椎骨目印としてL2椎体に挿入した。椎間板切除群、ゲル群、REC + ゲル群ではAF切開(5×3mm)後にNP組織20mgを摘出し、IVD変性を惹起した(図15, A,B)(3,8)。
【0188】
変性したNP組織の除去と移植
初回手術から4週間後、同じアプローチを用いて椎体とIVDを露出した。本発明者らはさらに、上記のように、AF切開後にIVD空洞を作製するために、3つの処置群から得られた変性IVDから70mgのNP組織を抽出した(図15C)。椎間板切除後、椎間板内の空隙にゲル群には2% UPAL溶液110~120μLを移植し、REC +ゲル群には、RECとUPAL溶液との混合物(最終濃度、1×106細胞/mL)110~120μLを移植した(図15D)(2)。直ちに102mMのCaCl2溶液を混合物の表面に注入し、5分後にゲル化を確認した。埋植4週及び24週後に、ペントバルビタールを用いてヒツジを安楽死させ、腰部脊柱を一塊として摘出した(3)。
【0189】
MRI
3.0-T MRスキャナ(MAGNETOM Prisma; Siemens, Munich, Germany)を用いて、T2強調正中矢状切片画像を得た。処置されたIVDのシグナル変化を評価するために、本発明者らは、5つのグレード(1:正常~5:高度に変性)を含むPfirrmann分類(36)を使用して、IVD変性の程度をスコア化した。さらに、Analyze 14.0ソフトウェア(AnalyzeDirect, Overland Park, KS, USA)を使用して、MRI指数値(NPの平均シグナル強度とNP面積との積)を測定し、NP組織の輝度を定量化した。さらに、3つの処置群(2、3、15、37、38)のすべてにおいて、無処置対照群におけるMRIインデックスの比率である相対的MRIインデックスを評価した。頭蓋側の隣接する椎体の高さに対する椎間板の高さの比であるDHIも測定した(4、39)。無処置対照群のDHIのパーセンテージ値である相対DHIを決定した。
【0190】
組織学的分析
MRI撮影後、サンプルを10%ホルムアルデヒド中で固定し、10% EDTA(pH 7.5)で脱塩し、パラフィン中に包埋した。矢状5マイクロメートル厚のパラフィン切片をキシレンで脱パラフィンし、アルコールで処理し、水ですすぎ、H&E及びサフラニン-Oで染色した。IVD変性の程度を、改変Boos'分類(3、40、41)を使用して、0(正常)から36(高度に変性)までスコア化した。
【0191】
IHC
IVD中のII型及びI型コラーゲンの発現は、IHCにより決定した。切片をキシレン中で脱パラフィン化し、抗原活性化のために0.1%トリプシンで30分間処理した。次いで、切片をメタノール中の3% H2O2で10分間処理し、続いて、タンパク質ブロック無血清溶液(DAKO, Agilent, Santa Clara, CA, USA)を使用して30分間タンパク質のブロッキングを行った。ヤギ抗I型コラーゲン(1:40; Southern Biotech, Birmingham, AL, USA)を抗I型コラーゲン抗体と共に使用し、抗hCL(II)及び精製IgG(1:400; Kyowa Pharma Chemical Co., Ltd., Toyama, Japan)を抗II型コラーゲン抗体と共に一次抗体として使用した。細胞をPBSで洗浄した後、II型コラーゲンのためのEnVision+ System-HRP標識ポリマー抗マウス(DAKO)、及びI型コラーゲンのためのHistofine(登録商標)Simple Stain Max PO(G)(Nichirei Biosciences, Tokyo, Japan)を二次抗体として使用した。最後に、切片をDAB(DAKO)及びヘマトキシリンで染色した。II型及びI型コラーゲン陽性細胞の数を、5つの無作為に選択した視野で決定し、全細胞における陽性細胞率を計算した(2、3、15)。
【0192】
腫瘍形成分析
移植IVDにおける移植細胞及び既存細胞の腫瘍形成を評価するために、(i)浸潤性増殖、(ii)核分裂、(iii)二核細胞、及び(iv)核小体の評価を行った。
24週間の評価期間中、無処置対照及びREC +ゲル群におけるH&E染色標本を使用して、陽性細胞の総数を、15の無作為に選択された視覚化視野(400倍の倍率で15の視覚化視野;26.5の視覚化視野、総計5mm2)において決定し、平方ミリメートル当たりの数を計算した。
【0193】
2.結果
2.1.in vitroでのREC及び市販ヒトBMSCとヒトNPCの3D共培養の結果
RECと市販のヒトBMSCとの比較
ゲルに組み込む前後のREC及び市販のヒトBMSCについての安定性確認の結果の詳細を表2及び3に示す。
【0194】
細胞の総数に対するPI-未染色細胞の比率を、細胞生存率として定義した。RECとBMSCとの間の比に有意差はなかった(p = 0.6087、表2)。セル径に比例する前方散乱光の変動係数(CV)を計算し、セルサイズの均一性を評価した。%CV値は、BMSCよりもRECにおいて有意に低かった(p = 0.0366、表2)。細胞増殖能は、Tdを計算することによって評価した。Tdは、BMSCよりもRECにおいて有意に短かった(p = 0.0074、表2)。細胞表面抗原確認試験は、CD90陽性細胞の割合がBMSCよりもRECにおいて有意に高いことを示した(p = 0.0004)。群間でCD45陽性細胞に有意差は認められなかった(p = 0.0907、表2)。
【0195】
本発明者らはさらに、1週間の培養後にREC及び市販のBMSCを比較した(表3)。2D及び3D培養後のTdに関して、RECとBMSCとの間に有意差はなかった(それぞれ、p = 0.3339、p = 0.6996)。しかしながら、CD90陽性細胞率は、2D及び3D培養共に、BMSCよりもRECで有意に高かった(それぞれ、p = 0.0039、p = 0.0007)。CD45陽性細胞に関しては、その割合は2D培養後のBMSCよりRECで有意に低かった(p = 0.0038)。3D培養後のRECとBMSCの間に有意差はなかった(p = 0.3221)。椎間板内移植後の細胞環境をin vitroで模倣した状態であるアルギン酸塩との3D培養環境下において、RECはBMSCに比べて間葉系幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーの発現が維持されていたことから、RECはアルギン酸塩環境下においても安定的に間葉系幹細胞の形質を維持していることを示している。
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
RECとヒトNP細胞(NPC)との共培養
本発明者らは、RECとヒトNPCとの共培養の効果、及び異なる細胞型である市販のヒトBMSCとヒトNPCとの共培養の効果を検討し、両者を比較した。5,6‐カボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA‐SE)で標識したREC又はBMSC、及び非標識NPCを、UPALゲルに包埋し、3次元(3D)培養を行った(2,15,27)。7日間の培養後、ゲルを溶解し、細胞選別機を用いて残渣及び死細胞を除去した。次いで、細胞をCFDA-SE陽性細胞、REC、BMSC、非標識細胞、及びNPCに分類した。細胞選別後、以下の10種類の細胞を得た。
(a)対照NPC(非培養)
(b)単培養NPC
(c)市販のBMSCと共培養したNPC
(d)RECと共培養したNPC
(e)対照BMSC(非培養)
(f)単培養BMSC
(g)共培養BMSC
(h)対照REC(非培養)
(i)単培養REC
(j)共培養REC
【0199】
BMSC及びRECの分化、細胞間相互作用、並びにECM産生を分析するために、NPCマーカー(HIF-1α、GLUT-1、brachyuryを含む)、増殖因子(CDMP-1、TGF-β、IGF-1を含む)及びECM成分(II型コラーゲン及びアグリカンを含む)発現を、リアルタイム定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により測定した(表4)(2、9、30、31)。
【0200】
【表4】
【0201】
RECと共培養したNPCにおいて、3つのNPCマーカーであるHIF‐1α、GLUT‐1、及びbrachyuryの発現レベルは、対照NPC、単一培養NPC、及び市販BMSCと共培養したNPCにおける発現レベルよりも有意に高かった。GLUT‐1発現レベルは、市販BMSCと共培養したNPCにおいて、対照NPCよりも有意に高かった(図13、D~F)。CDMP‐1及びIGF‐1の発現レベルは、RECと共培養したNPCにおいて、対照NPC、単一培養NPC、及び市販BMSCと共培養したNPCと比較して有意に増加した。TGF‐β発現レベルは、RECと共培養したNPCにおいて、対照及び単一培養NPCにおける発現レベルと比較して有意に増加した。市販のBMSCと共培養したNPCは、対照NPC及び単培養NPCと比較して、CDMP-1及びIGF-1発現の有意な増加を示した(図13、G~I)。II型コラーゲン及びアグリカンの発現レベルは、RECと共培養したNPCにおいて、対照及び単培養NPCよりも有意に高く、市販のBMSCと共培養したNPCにおける発現レベルも、対照及び単培養NPCにおける発現レベルよりも有意に高かった(図13、J及びK)。
【0202】
共培養RECにおける3つのNPCマーカーすべての発現量は、対照及び単培養RECに比べて有意に高かった(図13、D~F)。CDMP-1、TGF-β、IGF-1の発現量も、共培養RECでは対照及び単培養RECに比べて有意に増加していた(図13、G~I)。同様に、II型コラーゲン及びアグリカンの発現レベルは、対照及び単培養RECよりも共培養RECにおいて有意に高かった(図13、J及びK)。
【0203】
2.2.非拘束圧縮試験を用いたゲルの弾性分析の結果
UPALゲルに埋め込まれたRECの効果
REC-UPAL及びUPALゲルの力学特性を評価及び比較するために、非拘束圧縮試験を行った(3、15、32、33)。2種類の円筒状ゲルサンプル(直径4.5mm、厚さ2mm)を調製し、軸圧縮応力対歪みの比(図14、A~C)を計算した。圧縮レベル10~20%で、ヤング率は、UPAL及びREC‐UPALゲルでそれぞれ18.0±3.5kPa及び18.8±2.1kPaであり、2群間で力学特性に有意差はなかった(p = 0.6942)(図14、D及びE)。さらに、これらの2つの値は正常なヒトNP組織の値(3、32)と同等であった。
【0204】
2.3.変性IVDのヒツジモデルにおけるin Vivo試験の結果
RECとUPALゲルとの併用はIVD再生を高める
IVDの再生能力は、ゲル、又はREC+ゲルの移植後のヒツジモデルで評価した(図15)。ヒツジは、生体材料を含む椎間板切除後のIVD研究に広く使用されている(3、34、35)。14頭のヒツジ由来の56のIVDを以下の群に分けた。
無処置対照群(n = 6 IVD)
Discectomy群(椎間板切除群)(n = 6 IVD)
ゲル群(n = 8 IVD)
REC +ゲル群(n = 8 IVD)
【0205】
IVD変性モデルを作製するために、最初の手術中に20mgのNP組織を除去し(図15、A及びB)、予備実験の結果に基づいて、除去すべき量を20mgに設定した(図19)。最初の手術の4週間後(変性変化の観察後)に、NP組織を再び除去した(図15C)。次いで、IVD欠損にUPAL又はREC + UPAL溶液を移植し、第2の椎間板切除後に102mMのCaCl2を曝露してゲル化させた(図15D)。移植した腰椎を、移植の4週間後及び24週間後に種々の分析のために採取した。
【0206】
治療されたIVDにおける変性変化は、MRIを介して得られたT2強調中央矢状断面画像を用いて評価した(図16A)。IVDの形態学的分析のために、埋め込みIVD(2、3、15、36~38)、及び椎間板高指数(DHI)における信号の変化を評価するために、Pfirrmannスコア及びMRI指数を評価した。Pfirrmannスコアに基づくと、ゲル群の変性スコアは24週目でDiscectomy群よりも有意に低く、REC + ゲル群の変性スコアは、4週目及び24週目ともにDiscectomy群、ゲル群よりも有意に低かった(図16B)。
【0207】
MRI indexは、4週目でREC + ゲル群がDiscectomy群より有意に高値であった。24週目では、Discectomy群に比べゲル群のMRI indexが有意に高く、REC + ゲル群はDiscectomy群、ゲル群に比べて有意に高かった(図16C)。
さらに、治療されたIVDの椎間板高さを、MRI画像を用いて測定した。椎間板の高さの、上部隣接椎体の高さに対する比、すなわちDHIを、IVDの前方及び後方で測定した。次いで、相対DHI、すなわち無処置対照群のDHI値に対する3つの処置群のDHI値の比を決定した(図20)(4、39)。3つの処置群のDHI値は、4週目及び24週目の両方で、無処置対照群のDHI値よりも有意に低かった。埋植4週後では3群間に有意差はなかったが、埋植24週後ではゲル群のDHIはDiscectomy群より有意に高く、REC + ゲル群はDiscectomy群、ゲル群より有意に高かった(図16D)。
【0208】
組織学的分析は、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)及びサフラニン-O染色を用いて行った。無処置対照群における4週間及び24週間の両方で、IVDは紡錘形を示し、NP組織における線維性変化はなく、線維輪(AF)は同心構造であり、サフラニン-Oで均一に染色された。Discectomy群では、顕著な瘢痕組織、線維性変化、組織欠損、終板の崩壊・破壊が認められ(図17, A, B)、ゲル群の改変Boos'分類(3, 40, 41)に基づいて判定した組織学的変性度は、4週、24週ともにDiscectomy群より有意に低く、4週、24週ともにREC + ゲル群がDiscectomy群、ゲル群より有意に低かった(図17C)。
【0209】
治療したIVDにおけるII型及びI型コラーゲンの発現レベルを免疫組織化学法(IHC)により評価した(図18、A及びB)。無作為に選択された5つの視覚化視野における、細胞の総数におけるII型及びI型コラーゲン陽性細胞率を、NP組織において評価した(2、3、15)。II型コラーゲンはNP組織における必須のECM成分であり、変性の進行に伴い、I型コラーゲンによって置換される。II型コラーゲンの分析では、NP組織が無処置対照群において均一に染色されたが、REC+ゲル群においては、わずかに減少していた。ゲル群では非染色領域が点在することが観察され、Discectomy群では広範な非染色領域が観察された。II型コラーゲン陽性細胞の割合は、4週、24週ともにREC + ゲル群がゲル群、Discectomy群より有意に高く、24週ではゲル群がDiscectomy群より有意に高かった(図18C)。反対に、I型コラーゲン陽性細胞の割合は、 4週間の評価期間においてREC + ゲル群がDiscectomy群より有意に低く、 24週間の評価期間においてDiscectomy群、 ゲル群より有意に低かった。また、これらの細胞の割合は、24週ではゲル群がDiscectomy群に比べて有意に低かった(図18D)。
【0210】
REC +ゲル注入のIVDに及ぼす影響
24週間の評価期間中、無処置対照とREC+ゲル群の組織学的標本で腫瘍形成を分析した。両群の全標本において、核分裂とともに浸潤性増殖を評価し、二核細胞数と平方ミリメートルあたりの核小体数を測定した。両群とも浸潤性増殖、核分裂像、核小体は認められなかった。無処置対照群及びREC +ゲル群の二核細胞数はそれぞれ0.03±0.07及び0.23±0.25であった。すなわち、値は<1/mm2であり、群間に有意差は観察されなかった(p = 0.3311)(表5)。
【0211】
【表5】
【0212】
3.考察
本実施例では、細胞増殖能、細胞サイズ均一性、及び細胞表面抗原の発現に関して、市販品として入手可能なヒトBMSCと比較して、RECの優れた特性が示された。さらに、本実施例は、NPCマーカー、成長因子、及びECM成分の発現レベルに関し、市販のBMSCとのNPCの3D共培養において観察される発現レベルと比較して、ヒトNPC及びRECの3D共培養において有意に増加したことを実証した。RECとUPALゲルとの併用の有効性は、ヒツジ腰椎モデルのIVD変性部位で観察された。UPALゲル単独では、椎間板切除群と比較してIVD変性を抑制したが、RECとゲルとの併用はIVD再生をより効果的に増強した。
【0213】
本実施例において、RECのNPCとの共培養によりRECのNPCへの分化をもたらし、それによって両方の細胞型におけるECM成分産生を改善することが示唆された。ウサギにおける結果(実施例1)でも同様の結果が観察されている。すなわち、実施例1ではUPALゲル中に包埋されたBMSCの移植後にNPCマーカーの発現が増加したこと、及び椎間板切除群と比較して、BMSC+UPALゲル群ではECMの産生が増加していたことが明らかになった(2)。
【0214】
上記結果及び以前の研究(2、31、47、48、50~52)の結果に基づくと、UPALゲル中に包埋されたRECの移植によるIVD再生の基礎をなすメカニズムとして、以下の可能性が示唆された。
1)RECがゲルに包埋されてIVD欠損に移植され得る。
2)RECは成長因子及びECM成分を産生し、それによって、既存のNPCを活性化する(パラクリンメカニズム)。
3)NPCはより多くのECM及び成長因子を産生する。
4)結果として、RECはNPCに直接分化する。
5)最後に、REC及びNPCはIVD再生をもたらす正の細胞間フィードバックループを有する。
【0215】
IVD修復に使用される生体材料/ヒドロゲルは、生物学的及び機械的に適したものである必要がある。
本実施例では、腰部IVDの生体力学と幾何学的配置がヒトのものと同等であることから(3,4,34)、候補ヒドロゲルを前臨床動物モデルに移植するためのヒツジ腰椎モデルを選択した。本発明者らは、これまでに、椎間板切除後のヒツジ腰部IVDに埋め込んだUPALゲルが適切な生体力学的特性を示し、材料の突出をもたらさず、椎間板切除後のAFの縫合を必要としないことを示した(3)。本実施例において、非拘束圧縮試験はUPAL群とREC-UPAL群との間のヤング率に有意差がないことを明らかにし、UPALゲルに埋め込まれたRECがゲルの力学特性を変化させなかったことを示した。迅速な治癒をもたらすその決定的な能力のために、UPALゲルとRECとの組み合わせは、AFを縫合することなく細胞漏出を防ぐという点で臨床的利点を提供する。
【0216】
UPALゲルを移植した(及び移植しなかった)動物におけるMRI及び組織学的評価は、UPALゲル単独の移植後にIVD変性が抑制されたことを示す。さらに、RECとUPALゲルの組み合わせは、UPALゲル単独と比較し、さらに効果的に変性を防止した。また、無処置群とREC +ゲル群の間で二核細胞数に有意差はなく、RECとゲルの組み合わせは腫瘍形成を誘導しないことが示唆された。さらに、IHCの結果は、RECとゲルの併用が正常なIVDの機能に必須であるECM合成を増強し、I型コラーゲンの産生を抑制することによってIVD変性の進行を抑制したことを示唆する。これらの結果は、IVD変性のウサギモデルを用いて得られた結果(実施例1)と一致し、UPALゲル中に包埋されたBMSCがより効果的に変性を抑制したことを実証した(2)。実施例1でも、AF針穿刺を介して変性したIVDを作成した椎間板切除を受けなかった動物と比較して、BMSC + UPALゲル移植後の変性の組織学的悪性度スコアが低いことが示された。これは、BMSC移植がIVD再生をもたらしたことを示唆する(2)。総合すると、本発明者らの知見は、UPALゲル中に包埋されたRECの移植がin vivoでのIVD再生を増強することを示すものである(2)。
【0217】
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【実施例0218】
ラット椎間板髄核欠損モデルにおけるアルギン酸ナトリウムおよび間葉系幹細胞の補填による炎症抑制および疼痛抑制効果
1. ラット椎間板穿刺変性モデルの作成
ラット椎間板穿刺変性モデル(Mohd Isa et al. Sci Adv 2018)を被験物質投与に係る実験(IHC分析、組織学的分析、疼痛関連行動分析)に使用する。計60匹の12週齢雌SDラット(260-300 g)を、皮膚切開のみの群(sham群)、椎間板穿刺のみの群(punch群)、椎間板穿刺後にUPALを埋植する群(UPAL群)、椎間板穿刺後にUPALとRECを埋植する群(REC群)に無作為に割り付ける(n=3、各時点・各群)。5% isoflurane吸入による麻酔導入の後に、ketamineとmedetomidineの混合物(ketamine:medetomidine=75 mg/kg : 0.5 mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔を維持する。鉗子を用いた尾部つまみ試験で麻酔深度を確認した後、Co4/5 -5/6の背側皮膚を切開する。結合組織を剥離してCo4/5 -5/6を露出し、19 G針を用いてCo4/5 -5/6の椎間板を損傷する(径1 mm、深さ2 mm)。
【0219】
Gel群、REC群においては、乾燥した繊維状のUPAL(400-600mPa/s, Mochida Pharma Co. Ltd., Tokyo, Japan)を生理食塩水(0.9 %, Otsuka)に溶解して2%(w/v)に調製し、4μl のUPAL溶液を26 G針を取り付けたマイクロシリンジ(Hamilton)を用いて穿刺部とは別の経路で椎間板内中心部に注入する。REC群は濃度を1x106/mlに設定する。手術部位を生理食塩水で洗浄し、筋膜、結合組織、皮膚を縫合閉鎖する。
【0220】
2. 免疫組織学的評価
ラット椎間板の免疫組織学的評価を実施し、術後1、4、7および28日後のTNF-α、IL-6およびTrkA陽性細胞を検出する。ラット(各時点・各群n=3)をisoflurane吸入によって深く麻酔し、頸椎脱臼で安楽死させる。
【0221】
尾全体(Co 4/5-Co 5/6)を外科的に摘出し、無菌条件下で軟部組織を除去して尾椎と椎間板のみを採取する。採取した椎間板は、4 %(w/v)パラホルムアルデヒドで固定し(室温で48時間)、パラフィンに包埋する。椎間板中央で検体を横断し、冠状断中央の横断面切片(厚さ5μm)を得る。切片をxyleneで脱パラフィン化した後、proteinase K(Dako, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)中で培養する(37℃、15分間)。続いて、1 %過酸化水素メタノール(w/v)でブロッキングし(37℃、30分間)、2 %(w/v)ウシ血清アルブミン中で培養(室温、30分間)した後、一次抗体と4 ℃で一晩培養する。抗TNF-αマウスモノクローナル抗体(ab220210、Abcam)、抗IL-6マウスモノクローナル抗体(ab9324、Abcam)、抗TrkAウサギモノクローナル抗体(ab86474、Abcam)を用いる。
【0222】
発色には、TNF-α分析ではHistofine(登録商標) Fast Red II(Nichirei Bioscience)、IL-6分析ではHistoGreen Substrate kit for Peroxidase(Cosmo Bio Co., Ltd., Tokyo, Japan)、TrkA分析ではHistofine(登録商標) DAB(Nichirei Bioscience)を用いる。視認性を向上させる目的で細胞核の対比染色を行い、TNF-αまたはTrkA染色ではヘマトキシリンを、IL-6染色ではファストレッドをそれぞれ使用する。光顕微鏡(Olympus, Tokyo, Japan)を用いて、TNF-α、IL-6、またはTrkA陽性細胞を無作為に選択された5視野で個別に計数し、各染色における陽性髄核または線維輪細胞数を、視野中の全髄核または線維輪細胞数に対する百分率として計算する。全評価は、盲検化された2人の独立した観察者によって行う。各観察者は、1検体について3回の評価を実施して検体ごとの平均値を算出し、各群間の比較を行う。
【0223】
3. 組織学的評価
術後28日の椎間板組織変性を評価する。ラット(n=3)を免疫組織学的評価と同じ方法で安楽死させ、椎間板を採取する。採取した椎間板を4%(w/v) paraformaldehydeで48時間固定し、Kristensen脱灰液で2週間脱灰した後、水道水で24時間洗浄し、パラフィン包埋する(Mohd Isa et al. Sci Adv 2018)。ラット椎間板の矢状断正中標本(厚さ5 μm)を用いて組織学的スコア(Rutges et al. Osteoarth Carti 2013)を評価するためにヘマトキシリン&エオジン、サフラニンO、または、アルシアンブルー(AB)で染色する。AB染色は点数に直接関与しないが、細胞外基質の評価に適した染色であるため補助目的に実施する。全ての評価は、盲検化された2人の独立した観察者によって行う。各観察者は、1検体について3回の評価を実施して個体の平均値を算出した上で、各群間を比較する。
【0224】
4. 疼痛関連行動分析
免疫組織学的評価で術後28日目まで生存させたラット12匹(各群n=3)、および、組織学的分析に使用したラット12匹(各群n=3)の、計24匹のラット(各群n=6)を疼痛関連行動分析に使用する。全ラットにHargreaves、von Frey、tail flick試験を実施する。各試験の24時間前および試験直前に、20分間各ラットを個別に試験環境で過ごさせて環境に慣れさせる。全ての試験は、盲検化された同一の検者によって行う。各ラットで複数回の測定を行って平均値を算出し、得られた結果を群間で比較する。
【0225】
4.1 Hargreaves試験
Hargreaves試験は、Hargreaves試験装置(Ugo Basile Biological Instruments、Gemonio、Italy)を使用して、術前2日目(Day-2)と術後2、7、14、27日目に実施する( Mohd Isa et al. Sci Adv 2018)。ラットはガラス板(Ugo Basile Biological Instruments)上に四方および上方を囲われた個別の小部屋(上方に空気孔あり)に入れる。熱刺激として赤外線ビームを皮膚切開部の腹側に照射する。熱刺激に対する逃避行動を示すまでの潜時を記録する。ビームの強度は最大出力の50 %に設定する。組織損傷を防ぐ目的で、カットオフ時間を20秒間に設定する。同一ラットにおいて各時点で4回の測定を実施するが、各測定間に少なくとも1分の休憩を挟む。
【0226】
4.2 von Frey試験
von Frey試験は、dynamic plantar aesthesiometer (Ugo Basile Biological Instruments)を用いて、術前2日目(Day-2)と術後2、7、14、27日目に実施する。金網の上にHargreaves試験で用いたものと同じ小部屋を設置してラットを入れる。直径0.5 mmのフィラメントを皮膚切開部の腹側に当て、0 gから開始して5 gまで直線的に増加する力を10秒間かけて加えていき、その後は5 gの力を試験開始から30秒後まで一定の力で加える。ラットが何らかの逃避行動を示すまでの潜時を記録する。同一ラットにおいて各時点で5回の測定を実施するが、各測定間に少なくとも10秒の休憩を挟む。
【0227】
4.3 tail flick試験
tail flick試験はheat flux radiometer(Ugo Basile Biological Instruments社製)を用いて行う。Hargreaves試験と同一日程で施行されたことによる過度の熱刺激による組織損傷を避けるために、術前1日目(Day-1)と術後3、8、15、28日目に実施する( Mohd Isa et al. Sci Adv 2018)。各ラットをタオルにくるんだ状態で10分間落ち着かせた後、体部はタオルで覆ったまま尾だけを装置の上に置き、尾の遠位端から5cm近位部腹側に赤外線ビームを照射する。熱刺激に対する尾振り払い反応までの潜時を記録する。組織損傷を防ぐ目的で、カットオフ時間を20秒間に設定する。同一ラットにおいて各時点で4回の測定を実施するが、各測定間に少なくとも15秒の休憩を挟む。
【0228】
5. 統計分析
全てのデータは、平均±標準誤差(SE)として表記する。多群間比較にはone-way ANOVAを使用する。2群比較には対応のないStudent-t検定を用いる。すべてのANOVAの結果は、Tukey-Kramer post-hoc検定またはKruskal-Wallis検定を用いてさらに評価する。差については、5 %の有意水準で統計的に有意とみなす(P < 0.05)。
【0229】
6.結果
UPALとRECを埋植する群(REC群)において、疼痛抑制効果が確認されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2025-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団とを含有する、椎間板再生用組成物であって、
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団は、細胞の倍加時間が51.9hrより短い細胞集団であって、
以下の(a)の特徴、又は(a)と(b)との組み合わせの特徴を満たす細胞集団である、前記組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項2】
アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団とを含有する、椎間板再生用組成物であって、
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団は、3次元化されたアルギン酸ゲル内で1週間培養した場合のCD90陽性細胞比率が、49.0%より高い陽性細胞率を維持する細胞集団であって、
以下の(a)の特徴、又は(a)と(b)との組み合わせの特徴を満たす細胞集団である、前記組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項3】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団が、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団が、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
対象の椎間板に適用し、適用後に組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられ、当該適用時には流動性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
椎間板の髄核部位に適用するための請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記髄核部位への適用は、髄核欠損部への前記組成物の充填である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤が2価以上の金属イオン化合物である、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤が、25mM~200mMの濃度のCaCl溶液である、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルギン酸の1価金属塩は、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物中に含有するアルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物中に含有する細胞濃度が、1×10個/ml~1×10個/mlである、請求項1~12に記載の組成物
【請求項14】
椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、椎間板ヘルニアを併発する腰部脊柱管狭窄症に対する外科的手術により除去された対象の椎間板の髄核欠損部に適用され、適用後に組成物の表面の少なくとも一部分に架橋剤を接触させるように用いられる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団とを含む、対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用されるための椎間板再生用組成物であって、
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団は、細胞の倍加時間が51.9hrより短い細胞集団であって、
以下の(a)の特徴、又は(a)と(b)との組み合わせの特徴を満たす細胞集団である、前記組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項18】
アルギン酸の1価金属塩とヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団とを含む、対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用されるための椎間板再生用組成物であって、
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団は、3次元化されたアルギン酸ゲル内で1週間培養した場合のCD90陽性細胞比率が、49.0%より高い陽性細胞率を維持する細胞集団であって、
以下の(a)の特徴、又は(a)と(b)との組み合わせの特徴を満たす細胞集団である、前記組成物。
(a)フローサイトメトリーの前方散乱光の変動係数が40%以下である
(b)平均細胞サイズが20μm以下である
【請求項19】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団が、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性の高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の細胞集団が、LNGFR(CD271)が陽性、又はLNGFR(CD271)及びThy-1(CD90)が共陽性であることを指標に分離された、高速増殖性間葉系幹細胞クローンの細胞集団である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項21】
対象の椎間板髄核部位に流動性を有する状態で適用された後に、該組成物に架橋剤を接触させることなく用いられる請求項17~20のいずれか1項に記載の椎間板再生用組成物。
【請求項22】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞による髄核細胞の活性化及び/又は前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の髄核細胞への分化を介して、椎間板の髄核再生を促進する、請求項17~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ヒト骨髄由来間葉系幹細胞が、適用時に未分化状態である及び/又は誘導分化の処置なしに適用される請求項17~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記アルギン酸の1価金属塩が、低エンドトキシンアルギン酸1価金属塩である、請求項17~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記アルギン酸の1価金属塩は、GPC-MALS法により測定された重量平均分子量(絶対分子量)が8万以上である、請求項17~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記アルギン酸の1価金属塩の濃度が0.5w/w%~5.0w/w%である、請求項17~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物中に含有する細胞濃度が、1×10個/ml~1×10個/mlである、請求項17~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
椎間板変性及び/又は椎間板損傷の治療、予防又は再発抑制のために用いられる、請求項17~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、椎間板ヘルニア、椎間板症、脊椎変性辷り症、化膿性椎間板炎、慢性腰痛、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症に伴う椎間板ヘルニア(混合性腰部脊柱管狭窄症)及び椎間板損傷からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記椎間板変性及び/又は椎間板損傷が、慢性腰痛を伴う、請求項28又は29に記載の組成物。
【請求項31】
椎間板性疼痛を抑制するために用いる、請求項17~30のいずれか1項に記載の組成物。